以下、本発明の構成につき詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものである。
まず、本発明の粘着剤組成物について説明する。
本発明の粘着剤組成物は、HLBが6.8以上のアクリル系樹脂(A)(以下、単に「アクリル系樹脂(A)」と記すことがある)と、シアノ基含有アニオンを有するイオン性化合物(B)を含有してなるものである。
本発明におけるアクリル系樹脂(A)は、HLBが6.8以上という条件を満たすアクリル系樹脂であればよく、例えば親水性基を通常より多く含有させることにより得られる。
本発明におけるHLB(Hydrophilie-Lipophile Balance)とは、Daviesの理論によるHLB値であり、HLB=Σ(親水基の基数)+Σ(親油基の基数)+7で表される値である。
かかる親水基、親油基の種類および親水基、親油基の基数の値の例としては、下記[表1]に記載するものが挙げられるが、詳細に関しては、文献「新版界面活性剤ハンドブック」(日本油脂株式会社著、工学図書株式会社版)の第234〜242頁の5.1.5.〜5.1.7.に記載されている。
本発明におけるHLBの値は、6.8以上であることが必要であるが、好ましくは6.8〜10、特に好ましくは7.0〜8.2、更に好ましくは7.2〜8.0である。かかるHLBの値が大きすぎるとアクリル系樹脂の耐湿熱性が低下する傾向があり、小さすぎると後述のイオン性化合物(B)との相溶性が低下して帯電防止能が低下する傾向がある。。
かかるアクリル系樹脂(A)のHLBの値は、共重合成分として使用するアクリル系モノマーの種類、配合割合を変更することによって調整することができるのである。
本発明におけるアクリル系樹脂(A)としては、側鎖にオキシアルキレン構造を含有するものであることが好ましく、例えば、オキシアルキレン構造を含有するモノマーを共重合させる方法、官能基を含有するアクリル系樹脂の官能基にオキシアルキレン構造を有する化合物を反応させる(後変性させる)方法などによって製造されるものが挙げられる。
上記オキシアルキレン構造を含有するモノマーを共重合させて得られるアクリル系樹脂(A)としては、下記一般式(1)で示される(メタ)アクリル系モノマー(a1)を10重量%以上含有する共重合成分を、その他の共重合成分と共重合させたり、あるいはアクリル系モノマー(a1)を単独重合させたりしたものを用いることがアクリル系樹脂の親水性を上げ、シアノ基含有イオン性化合物の帯電防止性能を生かす点で好ましい。
(式中、Xはアルキレン基、Yは水素またはアルキル基、R1は水素原子またはメチル基、nは1以上の整数である。)
上記、一般式(1)中のXはアルキレン基であり、中でも、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、特には、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基等の炭素数1〜4のアルキレン基が好ましく、特にはエチレン基が好ましい。また、nが2以上のポリオキシアルキレン構造部位の場合は、同一オキシアルキレン構造のホモ重合体でもよいし、相異なるオキシアルキレン構造がランダム或いはブロック状に共重合したものでもよい。
上記、一般式(1)中のYは水素原子またはアルキル基である。アルキル基の炭素数としては、具体的には1〜15が好ましく、特に好ましくは1〜10、更に好ましくは1〜5である。かかる炭素数が長すぎるとHLBが下がってしまい、親油性となることによって、帯電防止性能が低下する傾向がある。Yの具体的な構造としては、水素原子、メチル基であることが、帯電防止能の向上の点で特に好ましい。
上記一般式(1)中のR1は、水素原子またはメチル基である。
上記一般式(1)中のnは1以上の整数であり、好ましくは1〜10、特に好ましくは1〜2あり、更に好ましくは1である。かかるnの値が大きすぎるとアクリル系樹脂の耐湿熱性が低下する傾向があり、また、調達できる原料の中で、不純物が少なくアクリル系樹脂を作りやすい点でもnが小さいことが好ましい。
上記一般式(1)中のYが水素原子の場合に、n=1のモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチルアクリレート等のアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン変性モノマー等の1級水酸基含有モノマー;2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の2級水酸基含有モノマー;2,2−ジメチル−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の3級水酸基含有モノマーが挙げられ、nが2以上のモノマーとしては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコール誘導体、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリプロピレングリコール誘導体、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−モノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記一般式(1)中のYがアルキル基である場合には、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の脂肪族系の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
上記(メタ)アクリル系モノマー(a1)の中でも、効果的に親水性を与える点で水酸基含有モノマーおよびメトキシ基含有モノマーが好ましく、特には一級水酸基含有モノマー、メトキシ基含有モノマーが好ましく、更には2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
本発明のアクリル系樹脂(A)では、かかる(メタ)アクリル系モノマー(a1)を単独重合またはその他共重合成分と共重合させたものであり、共重合させる場合の含有量は、共重合成分全体に対して10重量%以上含有することが好ましく、特に好ましくは10〜90重量%、更に好ましくは15〜70重量%、殊に好ましくは20〜55重量%である。(メタ)アクリル系モノマー(a1)の含有量が多すぎるとアクリル系樹脂の保存安定性が低下する傾向があり、少なすぎると帯電防止性能が不十分になる傾向がある。
上記(メタ)アクリル系モノマー(a1)と共重合させる共重合成分としては、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a2)、必要に応じて(メタ)アクリル系モノマー(a1)以外の官能基含有モノマー(a3)やその他の共重合性モノマー(a4)が挙げられる。
かかる(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a2)としては、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。かかる(メタ)アクリル酸アルキルエステルについては、アルキル基の炭素数が、通常1〜20、特には1〜12、更には1〜8、殊には4〜8であることが好ましく、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。その他(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしてはフェニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併せて用いることができる。
かかる(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a2)の中でも、共重合性、粘着物性、取り扱いやすさ及び原料入手しやすさの点で、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく用いられ、更に好ましくは帯電防止性能が優れる点でn−ブチル(メタ)アクリレートが用いられる。
かかる官能基含有モノマー(a3)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、アクリルアミドN−グリコール酸、ケイ皮酸、(メタ)アクリル酸のミカエル付加物(例えば、アクリル酸ダイマー、メタクリル酸ダイマー、アクリル酸トリマー、メタクリル酸トリマー、アクリル酸テトラマー、メタクリル酸テトラマー等)、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジカルボン酸モノエステル(例えば、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸モノエステル、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸モノエステル、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸モノエステル、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸モノエステル、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル等)等のカルボキシル基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−(n−ブトキシアルキル)アクリルアミド、N−(n−ブトキシアルキル)メタクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、アクリルアミド−3−メチルブチルメチルアミン、ジメチルアミノアルキルアクリルアミド、ジメチルアミノアルキルメタクリルアミド等のアミド基含有モノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;アクリロイルモルフォリン等の窒素含有モノマー;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸あるいはその塩等のスルホン酸基含有モノマー;等が挙げられ、単独又は2種以上併用して用いられる。
かかる官能基含有モノマー(a3)の中でも、カルボキシル基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、窒素含有モノマーが好適に用いられ、更にはカルボキシル基含有モノマーが、剥離物性に優れ、また耐久性にも寄与する点で、特に好適に用いられる。
その他の共重合性モノマー(a4)としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アルキルビニルエーテル、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、イタコン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、アリルアルコール、アクリルクロライド、メチルビニルケトン、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルビニルケトン等のモノマーが挙げられる。
(メタ)アクリル系モノマー(a1)以外の重合成分の含有割合としては、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a2)が0〜90重量%、特には10〜85重量%、更には30〜80重量%であることが好ましく、(メタ)アクリル系モノマー(a1)以外の官能基含有モノマー(a3)が0〜40重量%、特には0〜30重量%、更には0〜20重量%であることが好ましく、その他の共重合モノマー(a4)が0〜50重量%、特には0〜40重量%、更には0〜30重量%であることが好ましい。
また、高分子量化を目的とする場合、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン等のエチレン性不飽和基を二つ以上有する化合物等を併用することもできる。
本発明においては、上記(a1)〜(a4)のモノマー成分を重合することによりアクリル系樹脂(A)を製造するのであるが、かかる重合に当たっては、従来公知の方法により行うことができる。例えば、有機溶媒中に、上記(メタ)アクリル系モノマー(a1)、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a2)、その他の官能基含有モノマー(a3)、その他の共重合性モノマー(a4)等の重合モノマー、重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、過酸化ベンゾイル等)を混合あるいは滴下し、還流状態あるいは50〜90℃で2〜20時間重合する。
アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量については、通常10万〜300万、好ましくは30万〜250万、特に好ましくは60万〜200万である。重量平均分子量が小さすぎると、後述の活性エネルギー線照射によっても十分な凝集力が得られない傾向があり、大きすぎると希釈溶剤を大量に必要とし、塗工性やコストの面で好ましくない傾向となる。
また、アクリル系樹脂(A)の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、特に限定されないが、20以下であることが好ましく、特には15以下が好ましく、更には10以下が好ましく、殊には7以下が好ましい。かかる分散度が高すぎると粘着剤層の、耐湿熱性や光漏れなどの耐久性能が劣る傾向にある。なお、分散度の下限は、製造の限界の点から、通常2である。
更に、アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度は一概には特定されないが、−80〜−20℃、特には−75〜−25℃、更には−60〜−30℃が好ましく、ガラス転移温度が高すぎるとタックが不足する傾向があり、低すぎると耐熱性に劣る傾向がある。
尚、上記の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフィー(日本Waters社製、「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF−806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100〜2×107、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)の3本直列を用いることにより測定されるもので、また分散度は重量平均分子量と数平均分子量より求められる。またガラス転移温度はFoxの式より算出されるものである。
本発明におけるシアノ基含有アニオンを有するイオン性化合物(B)(以下、単にイオン性化合物(B)と記すことがある)としては、公知一般のシアノ基含有イオン性化合物を用いることが、帯電防止性能に優れるだけでなく光学部材用粘着剤として用いた際の耐久性にも優れる点で好ましい。また、架橋剤による架橋を行う場合には架橋を促進する効果もあり好ましい。
シアノ基含有イオン性化合物中のシアノ基含有アニオンとしては、下記一般式(2)で示されるシアノ基含有アニオンを用いることも好ましい。
(式中、Xは、ホウ素、炭素、窒素、アルミニウム、ケイ素、リン、砒素及びセレンからなる群より選ばれるいずれか1種の元素を表す。Yは、水素原子、アルキル基、トリフルオロメチル基。L1およびL2 は、同一または異なっていてもよい有機連結基を表す。aは、1以上の整数であり、b、c及びdは、0以上の整数である。)
上記一般式(2)中のXは、ホウ素、炭素、窒素、硫黄、アルミニウム、ケイ素、リン、砒素及びセレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、これらの中でもホウ素、炭素、窒素、硫黄が好ましい。
上記一般式(2)中のYは、水素原子、アルキル基、またはトリフルオロメチル基を表す。上記アルキル基としては炭素数1〜10であることが好ましく、より好ましくは炭素数1〜4であり、具体例としては、メチル基、エチル基等が好ましく用いられる。上記Yとしては、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基であることが特に好ましい。
上記一般式(2)中のL1およびL2は有機連結基であり、好ましくは−S−、−O−、−SO2−、−CO−であり、特には−SO2−、−CO−が好ましい。かかるL1およびL2は同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
上記一般式(2)中のaは1以上の整数、b、c及びdは0以上の整数であるが、アニオンの価数が−1であるので、元素Xの原子価がxであるときには、x−1=(a+d)の関係を満足するようにaおよびcの値は決められるものである。
かかる一般式(2)で示されるシアノ基含有アニオンの具体例としては、S−(CN)、N−(CN)2、N−(−SO2−CN)2、C−(CN)3、B−(CN)4等が挙げられ、これらの中でも、S−(CN)、N−(CN)2が好ましく用いられる。
また、シアノ基含有アニオンを有するイオン性化合物(B)中のシアノ基含有アニオンの分子量としては、通常30〜300であり、好ましくは50〜250である。
イオン性化合物(B)のカチオン成分としては、特に限定されるものではなく、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、希土類金属等の金属系カチオンや、ヘテロ環式化合物のカチオン類、特には1〜5個のヘテロ原子を含む1〜6員環のヘテロ環式化合物のカチオン類、殊にはヘテロ原子として窒素原子を含む1〜5個のヘテロ原子を含む1〜5員環のヘテロ環式化合物のカチオン類等、鎖状の第四級アンモニウムカチオン、第四級ホスホニウムカチオンを用いることも好ましい。
これらの中でも、イミダゾリウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、第四級アンモニウムカチオン、第四級ホスホニウムカチオンが好ましく、特にはイミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、第四級アンモニウムカチオン、第四級ホスホニウムカチオン、更にはイミダゾリウムカチオンを用いることが良好な帯電防止性能を示す点で好ましく、殊にはトリアルキルイミダゾリウムカチオンを用いることが好ましい。
また、イオン化合物(B)のカチオン成分の中でイミダゾリウムカチオンとしては、(メタ)アクリル系イミダゾリウムカチオンや、ビニル系イミダゾリウムカチオン等の重合性不飽和基含有イミダゾリウムカチオンを用いることもできる。
上記のカチオンおよびアニオンからなるイオン性化合物(B)の具体例としては、1,3−ジメチルイミダゾリウムジシアナミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアナミド、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムジシアナミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムジシアナミド、1−メチル−3−ペンチルイミダゾリウムジシアナミド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムジシアナミド、1−ヘプチル−3−メチルイミダゾリウムジシアナミド、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムジシアナミド、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムジシアナミド、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムジシアナミド、1−エチル−3−プロピルイミダゾリウムジシアナミド、1−ブチル−3−エチルイミダゾリウムジシアナミド等のジアルキルイミダゾリウムジシアナミド、3−エチル−1,2−ジメチル−イミダゾリウムジシアナミド、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムジシアナミド、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムジシアナミド、1,2−ジメチル−3−ヘキシルイミダゾリウムジシアナミド、1,2−ジメチル−3−オクチルイミダゾリウムジシアナミド、1−エチル−3,4−ジメチルイミダゾリウムジシアナミド、1−イソプロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウムジシアナミド等のトリアルキルイミダゾリウムジシアナミド、1,3−ジメチルイミダゾリウムチオシアネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネート、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムチオシアネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネート、1−メチル−3−ペンチルイミダゾリウムチオシアネート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネート、1−ヘプチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネート、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムチオシアネート、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネート、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネート、1−エチル−3−プロピルイミダゾリウムチオシアネート、1−ブチル−3−エチルイミダゾリウムチオシアネート等のジアルキルイミダゾリウムチオシアネート、3−エチル−1,2−ジメチル−イミダゾリウムチオシアネート、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムチオシアネート、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムチオシアネート、1,2−ジメチル−3−ヘキシルイミダゾリウムチオシアネート、1,2−ジメチル−3−オクチルイミダゾリウムチオシアネート、1−エチル−3,4−ジメチルイミダゾリウムチオシアネート、1−イソプロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウムチオシアネート等のトリアルキルイミダゾリウムチオシアネートが挙げられる。
これらの中でも、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムジシアナミド、1−エチル−2,3ジメチルイミダゾリウムチオシアネートが高純度のイオン化合物を作りやすい点で好ましく用いられ、また、固体のイミダゾリウム塩を使うことが精製で再結晶ができることにより、高純度のイオン化合物を作りやすくなる点で好ましい。
なお、これらイオン性化合物(B)は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、イオン性化合物(B)としては、常温(25℃)において固体および液体のどちらを用いてもよいが、固体のものを用いる方が、精製で再結晶ができることにより、高純度のイオン化合物を造りやすくなる点で好ましい。
なお、精製が不完全であると、目的外のイオン等が含まれることにより、耐湿熱性に悪影響を及ぼしたり、帯電防止性能がやや劣ったりする傾向がある。
本発明におけるイオン性化合物(B)としては、60℃における導電率が25mS/cm以上のものを用いることも優れた帯電防止性能を発揮しやすい点で好ましく、特に好ましくは40mS/cm以上、更に好ましくは50mS/cm以上、殊に好ましくは55mS/cmである。60℃における導電率の上限値としては通常100mS/cmである。なお、60℃における導電率とは、下記の方法により測定したものである。
<測定方法>
測定用セル(東亜DKK社製、「CG−511B型セル」)をイオン性化合物(B)に60℃で5時間浸漬させた後、電気化学測定システム「ソーラートロン1280Z」(英国ソーラートロン社製)を用い、交流インピーダンス法(交流振幅は5mV、周波数範囲は20k〜0.1Hz)にて60℃における液抵抗Rsolnを測定した。次いで、下記式より導電率κを求めた。
(式中、Rsolnは液抵抗、κは導電率、Kcellは容器定数(cell constant、m-1)である)
ここで、イオン性化合物(B)の60℃における導電率(κ)に関して、例えばカチオン成分が1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイミダゾリウムの場合の導電率は、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアンアミド(κ=57.9)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネート(κ=54.0)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(κ=21.6)である。
イオン性化合物(B)の含有量としては、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜20重量部であることが好ましく、特には0.1〜10重量部が好ましく、更には0.3〜5重量部が好ましい。かかる含有量が多すぎると耐湿熱性が低下する傾向があり、少なすぎると帯電防止性能が不十分な傾向がある。
つぎに、本発明の粘着剤について説明する。
本発明の粘着剤は、上述したHLBが6.8以上のアクリル系樹脂(A)とシアノ基含有アニオンを有するイオン性化合物(B)を含有する粘着剤組成物[I]が架橋されてなるものである。この架橋に際しては、必要に応じて不飽和基含有化合物(C)、重合開始剤(D)、架橋剤(E)を存在させることが好ましい。
なお、本発明においては、粘着剤組成物[I]が、アクリル系樹脂(A)を主成分とするものであることが好ましく、ここで「主成分とする」とは、上記アクリル系樹脂(A)が粘着剤組成物[I]全量に対して、通常、50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上含有することを意味する。なお、上限としては通常99.9重量%である。
上記粘着剤組成物[I]を架橋する方法としては、〔α〕不飽和基含有化合物(C)および重合開始剤(D)を含有させ、活性エネルギー線および/または熱により架橋する方法、〔β〕架橋剤(E)を用いて架橋する方法があげられる。そして、その架橋度合いに関しては、上記〔α〕の方法のみでも充分なものが得られるが、可能であれば、粘着剤の架橋をより一層密とし、光漏れ防止性を向上させるという点から、上記〔α〕および〔β〕の各方法を併用することが特に好ましい。
まず、上記〔α〕の方法である、不飽和基含有化合物(C)および重合開始剤(D)を含有させ、粘着剤組成物[I]を活性エネルギー線および/または熱(活性エネルギー線照射および/または加熱)により架橋する方法について説明する。
上記活性エネルギー線および/または熱(活性エネルギー線照射および/または加熱)により架橋する場合には、粘着剤組成物[I]として、前述のアクリル系樹脂(A)、イオン性化合物(B)に加えて、更に不飽和基含有化合物(C)および重合開始剤(D)を含有する粘着剤組成物[I]を用いる。このように、不飽和基含有化合物(C)を含有することにより、硬化を調整することができ、光学部材用途に適した粘着物性を実現することが可能となるのである。また、上記重合開始剤(D)を含有することにより、活性エネルギー線照射時および/または加熱時の反応を安定化させることができる。
上記架橋の場合は、不飽和基含有化合物(C)が活性エネルギー線および/または熱により重合(ポリマー化)されて、アクリル系樹脂(A)との架橋(物理架橋)が行なわれる。アクリル系樹脂(A)が、不飽和基含有アクリル系樹脂である場合には、活性エネルギー線および/または熱による不飽和基含有化合物(C)のポリマー化に限らず、不飽和基含有アクリル系樹脂(A)と不飽和基含有化合物(C)とのポリマー化等に伴う架橋も生じることとなる。
本発明で用いられる不飽和基含有化合物(C)としては、1分子中に1つの不飽和基を有する単官能の不飽和基含有化合物であってもよいし、1分子中に2つ以上の不飽和基を有する多官能の不飽和基含有化合物であってもよいが、好ましくは2つ以上の不飽和基を有する不飽和基含有化合物、より好ましくは3つ以上の不飽和基を有する不飽和基含有化合物であることが活性エネルギー線照射時の硬化性の点で好ましい。
上記不飽和基含有化合物(C)としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物、エポキシ(メタ)アクリレート系化合物、ポリエステル(メタ)アクリレート系化合物や、1分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を含有するエチレン性不飽和モノマー、例えば、単官能モノマー、2官能モノマー、3官能以上のモノマー等を用いることができる。これらの中でも、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(c1)、エチレン性不飽和モノマー(c2)を用いることが硬化速度や到達物性の安定性に優れる点で好ましい。
また、上記不飽和基含有化合物(C)は、オキシアルキレン構造や水酸基、または酸塩基のイオン対および/またはベタイン構造などの親水性を示す構造部位を含有することも帯電防止性能からより好ましい。
上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(c1)は、分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート系化合物であり、水酸基を含有する(メタ)アクリル系化合物と多価イソシアネート化合物を反応させて製造できる。
上記水酸基を含有する(メタ)アクリル系化合物としては、特に限定されず、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等があげられ、中でも3個以上のアクリロイル基を有する水酸基含有(メタ)アクリル系化合物が好ましく用いられる。また、これらは1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
上記多価イソシアネート化合物としては、特に限定されることなく、例えば芳香族系、脂肪族系、脂環式系等のポリイソシアネートがあげられ、中でもトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、フェニレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等のポリイソシアネートあるいはこれらポリイソシアネートの3量体化合物または多量体化合物、ビュレット型ポリイソシアネート、水分散型ポリイソシアネート(例えば、日本ポリウレタン工業社製の「アクアネート100」、「アクアネート110」、「アクアネート200」、「アクアネート210」等)、または、これらポリイソシアネートとポリオールの反応生成物等があげられる。中でも、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートや、それらの3量体化合物または多量体化合物が好ましく用いられる。
上記ポリオールとしては、特に限定されることなく、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリブチレングリコール等のアルキレングリコール系化合物、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA、ポリカプロラクトン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ポリトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、グリセリン、ポリグリセリン、ポリテトラメチレングリコール等の多価アルコール;ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドのブロックまたはランダム共重合の少なくとも1種の構造を有するポリエーテルポリオール;該多価アルコールまたはポリエーテルポリオールと無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、無水イタコン酸、イタコン酸、アジピン酸、イソフタル酸等の多塩基酸との縮合物であるポリエステルポリオール;カプロラクトン変性ポリテトラメチレンポリオール等のカプロラクトン変性ポリオール;ポリオレフィン系ポリオール;水添ポリブタジエンポリオール等のポリブタジエン系ポリオール等があげられる。これらの中でも、ポリエチレングリコール誘導体が好ましく用いられ、特にはポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルが好ましく用いられる。
さらには、上記ポリオールとして、例えば、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、酒石酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシプロピル)プロピオン酸、ジヒドロキシメチル酢酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、ホモゲンチジン酸等のカルボキシル基含有ポリオールや、1,4−ブタンジオールスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸基またはスルホン酸塩基含有ポリオール等もあげられる。
ポリイソシアネートとポリオールの反応生成物を用いる場合は、例えば、上記ポリオールと上記ポリイソシアネートを反応させて得られる末端イソシアネート基含有ポリイソシアネートとして用いればよい。上記ポリイソシアネートとポリオールの反応においては、反応を促進する目的でジブチルスズジラウレートのような金属触媒や、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7のようなアミン系触媒等を用いることも好ましい。
なお、上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(c1)として、オキシアルキレン鎖含有ウレタン(メタ)アクリレート系化合物を用いることも優れた帯電防止性能を示す点で好ましい。
上記オキシアルキレン鎖含有ウレタン(メタ)アクリレート系化合物は、上記ポリオールの中でも、アルキレングリコール系化合物を使用することによって得られるものであり、上記オキシアルキレン鎖含有ウレタン(メタ)アクリレート系化合物の構造としては、アルキレングリコール系化合物の両末端の水酸基のうち一方がイソシアネート基と反応し、他方は水酸基のまま残っているオキシアルキレン鎖構造を有するウレタン(メタ)アクリレートであることが、活性エネルギー線照射により硬化した後でも、オキシアルキレン鎖の自由度が大きくイオンの運搬が起こりやすいために優れた帯電防止性能を示す点で好ましい。
また、上記オキシアルキレン鎖含有ウレタン(メタ)アクリレート系化合物は、上記複数個の水酸基を有するポリオール系のアルキレングリコール系化合物に替えて、水酸基を1つのみ有するアルキレングリコール系化合物を使用して得られるものであってもよい。上記水酸基を1つのみ有するアルキレングリコール系化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールラウリルエーテル、ポリエチレングリコールセチルエーテル、ポリエチレングリコールステアリルエーテル、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールトリデシルエーテル、ポリエチレングリコールオレイルエーテル、ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルセチルエーテル等のポリエチレングリコール誘導体、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のポリプロピレングリコール誘導体等のアルキル基含有ポリアルキレングリコール誘導体があげられる。
上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物の製造方法としては、特に制限されず、例えば、水酸基含有(メタ)アクリル系化合物と多価イソシアネート化合物を混合し、30〜80℃、2〜10時間反応させる方法があげられる。この反応では、オクテン酸スズ、ジラウリン酸ジ−n−ブチルスズ、オクチル酸鉛、オクチル酸カリウム、酢酸カリウム、スタナスオクトエート、トリエチレンジアミン等のウレタン化触媒を用いるのが好ましい。
上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物の重量平均分子量は、好ましくは300〜4000、より好ましくは400〜3000、特に好ましくは500〜2000である。すなわち、上記重量平均分子量が小さすぎると硬化後に凝集力不足となる傾向があり、大きすぎると粘度が高くなりすぎ、製造が困難となる傾向がある。
また、本発明におけるウレタン(メタ)アクリレート系化合物としては、分子内に4級アンモニウム塩構造やイミダゾリウム塩を有するウレタン(メタ)アクリレート系化合物を用いることも好ましい。
本発明で用いられるエチレン性不飽和モノマー(c2)としては、単官能モノマー、2官能モノマー、3官能以上のモノマー等を用いることができる。
上記単官能モノマーとしては、エチレン性不飽和基を1つ含有するモノマーであればよく、例えば、スチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、α−メチルスチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールプロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート等のフタル酸誘導体のハーフエステル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、2−ビニルピリジン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートモノエステル等があげられる。
上記単官能モノマーとして、上記の他にアクリル酸のミカエル付加物あるいは2−アクリロイルオキシエチルジカルボン酸モノエステルもあげられ、上記アクリル酸のミカエル付加物としては、アクリル酸ダイマー、メタクリル酸ダイマー、アクリル酸トリマー、メタクリル酸トリマー、アクリル酸テトラマー、メタクリル酸テトラマー等があげられる。また、特定の置換基をもつカルボン酸である上記2−アクリロイルオキシエチルジカルボン酸モノエステルとしては、例えば2−アクリロイルオキシエチルコハク酸モノエステル、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸モノエステル、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸モノエステル、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸モノエステル、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル等があげられる。さらに、オリゴエステルアクリレートもあげられる。
上記2官能モノマーとしては、エチレン性不飽和基を2つ含有するモノマーであればよく、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートジエステル等があげられる。
上記3官能以上のモノマーとしては、エチレン性不飽和基を3つ以上含有するモノマーであればよく、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパン、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等があげられる。
一方、上記エチレン性不飽和モノマー(c2)にオキシアルキレン構造を含有させた化合物を用いることも好ましく、かかるオキシアルキレン構造含有エチレン性不飽和モノマーとしては、特に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するオキシアルキレン構造を含有する、単官能のエチレン性不飽和モノマー、2官能のエチレン性不飽和モノマー、3官能以上のエチレン性不飽和モノマーがあげられる。
上記オキシアルキレン構造を含有させた単官能のエチレン性不飽和モノマーとしては、下記の一般式(3)で表されるオキシアルキレン構造を含有する単官能のエチレン性不飽和モノマーがあげられる。
(式中、Xはアルキレン基、nは1以上の整数であり、Aは(メタ)アクリロイル基又はアルケニル基、Bは水素、アルキル基、フェニル基又はアシル基である。)
上記一般式(3)中のXはアルキレン基であり、中でも、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、特には、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基等の炭素数1〜4のアルキレン基が好ましい。また、nが2以上のポリオキシアルキレン構造部位の場合は、同一オキシアルキレン構造のホモ重合体でもよいし、相異なるオキシアルキレン構造がランダム或いはブロック状に共重合したものでもよい。
上記一般式(3)中のAは(メタ)アクリロイル基またはアルケニル基であり、アルケニル基としては、通常、炭素数2〜6のもの、例えば、ビニル基やアリル基が用いられる。これらの中でも、メタクリロイル基、アクリロイル基、アリル基が好ましく、特にはメタクリロイル基、アクリロイル基が好ましい。
上記一般式(3)中のBは水素原子、アルキル基、フェニル基またはアシル基であり、アルキル基としては、通常、炭素数1〜20、好ましくは1〜10のものが用いられる。これらの中でも、水素原子、メチル基、エチル基であることが好ましい。
上記一般式(3)中のnは1以上の整数であり、好ましくは1〜500、特に好ましくは2〜100、さらに好ましくは3〜50である。nの値が少なすぎると帯電防止能が不充分になる傾向があり、多すぎると耐久性が充分でなくなる傾向がある。
上記オキシアルキレン構造を含有する単官能モノマーの具体例としては
[A:(メタ)アクリロイル基の場合]
例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコール誘導体、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリプロピレングリコール誘導体、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−モノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等があげられる。
[A:アルケニル基の場合]
例えば、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル等のポリエチレングリコール誘導体、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル等のポリプロピレングリコール誘導体、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−モノアリルエーテル、等があげられる。
上記の中でもポリエチレングリコール誘導体のものが好ましく、エチレンオキサイド付加モル数nが5〜500、特には5〜100、さらには6〜30であることが帯電防止能と耐久性のバランスの点で好ましい。エチレンオキサイド付加モル数nが小さすぎると帯電防止能が劣る傾向があり、大きすぎると耐久性が悪化する傾向がある。さらには、硬化性への影響の点で、Aは(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。
また、上記一般式(3)で示されるオキシアルキレン構造を含有する単官能のエチレン性不飽和モノマーの重量平均分子量としては、通常100〜20000が好ましく、特には200〜10000、さらには300〜1000が好ましい。上記重量平均分子量が小さすぎると帯電防止能に劣る傾向があり、大きすぎると耐湿熱性が低下する傾向がある。
上記オキシアルキレン構造を含有させた2官能のエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート、等があげられる。
上記オキシアルキレン構造を含有させた3官能以上のエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、等があげられる。
上記不飽和基含有化合物(C)の中でも、優れた帯電防止性能を示す点で、オキシアルキレン鎖を含有するウレタン(メタ)アクリレート系化合物(c1)やエチレン性不飽和モノマー(c2)を用いることも好ましい。特には、オキシアルキレン鎖を含有し、かつ不飽和基を3個以上含有する不飽和基含有化合物が好ましい。
また、不飽和基含有化合物(C)として、分子中に酸塩基のイオン対および/またはベタイン構造を含有する(メタ)アクリレート系化合物を使用することも、帯電防止能をさらに向上させる点で好ましい。
なお、分子中に酸塩基のイオン対および/またはベタイン構造を含有する(メタ)アクリレート系化合物を製造する方法としては、例えば、カルボキシル基を含有する多官能(メタ)アクリレートモノマーに水酸化カリウムを反応させる方法があげられるが、これに限定されるものではない。具体的には、(メタ)アクリル酸カリウム等の(メタ)アクリル酸の中和物、東亞合成社製のM−510の水酸化カリウム中和物等が好適に用いられる。
また、不飽和基含有化合物(C)として、重合性不飽和基を含有するイオン液体を用いることもでき、例えば、1−(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)−3−オクチルイミダゾリウムブロミドや1−(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)−3−オクチルイミダゾリウムクロリド等の(メタ)アクリロイロキシエチル−3−アルキルイミダゾリウムのハロゲン塩、1−(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)−3−オクチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホンイミドや1−(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)−3−オクチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート等の(メタ)アクリロイロキシエチル−3−アルキルイミダゾリウムのフッ素含有塩等の(メタ)アクリル系イミダゾリウムカチオン系化合物や、1−ブチル−3−ビニルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(1B3VIBF4)、1−ブチル−3−ビニルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホンイミド(1B3VITFSI)等のビニルイミダゾリウムカチオン系化合物と、アニオン成分のハロゲンイオンやフッ素含有イオン、等からなるイオン液体があげられる。
これら不飽和基含有化合物(C)は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記不飽和基含有化合物(C)の含有量としては、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して5〜99重量部が好ましく、より好ましくは5〜50重量部、さらに好ましくは8〜30重量部である。上記不飽和基含有化合物(C)の含有量が多すぎると、樹脂との相溶性が悪くなり、塗膜の白化する傾向が見られ、少なすぎると粘着剤の架橋密度が不充分となり、光漏れ防止性や耐久性が低下する傾向がある。
前記重合開始剤(D)としては、例えば、光重合開始剤(d1)、熱重合開始剤(d2)等の種々の重合開始剤を用いることが可能であるが、特には光重合開始剤(d1)を使用することが、ごく短時間の紫外線等の活性エネルギー線照射により架橋(硬化)させることが可能となる点で好ましい。
また、上記光重合開始剤(d1)を用いるときは、活性エネルギー線照射により粘着剤組成物[I]を架橋させ、熱重合開始剤(d2)を用いるときは、加熱により粘着剤組成物[I]を架橋させるのであるが、必要に応じて、両方を併用することも好ましい。
上記光重合開始剤(d1)としては、特に限定されるものではなく、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロリド等のチオキサントン類;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフォンオキサイド類;等があげられる。なお、これら光重合開始剤(d1)は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
また、これらの助剤として、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4′−ジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4′−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等を併用することも可能である。
これらの中でも、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイルイソプロピルエーテル、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンを用いることが好ましい。
また、上記熱重合開始剤(d2)としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセテートパーオキサイド、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、α,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキサイド、m−トルオイルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−s−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、α,α′−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノオエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメトルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−m−トルイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン等の有機過酸化物系開始剤;2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[N−(4−クロロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドリドクロリド、2,2′−アゾビス[N−(4−ヒドロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(フェニルメチル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(2−プロペニル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−1,3−ジアゼピン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−(5−ヒドロキシ−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド]、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド]、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)、2,2′−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2′−アゾビス(2−メチルプロパン)、ジメチル−2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4′−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2′−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等のアゾ系開始剤;等があげられる。なお、これらの熱重合開始剤は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
上記重合開始剤(D)の含有量については、前記アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜10重量部、特には0.1〜7重量部、さらには0.3〜3重量部であることが好ましい。上記重合開始剤(D)の含有量が少なすぎると、硬化性に乏しく物性が安定しなくなる傾向がみられ、多すぎてもそれ以上の効果が得られない傾向がみられる。
上記活性エネルギー線照射に際しては、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波の他、電子線、プロトン線、中性子線等が利用できるが、硬化速度、照射装置の入手のし易さ、価格等から紫外線照射による硬化が有利である。なお、電子線照射を行なう場合は、上記光重合開始剤(d1)を用いなくても硬化可能である。
そして、上記紫外線照射を行なう時の光源としては、高圧水銀灯、無電極ランプ、超高圧水銀灯カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライドランプ、ケミカルランプ、ブラックライト等が用いられる。上記高圧水銀ランプの場合は、例えば、5〜3000mJ/cm2、好ましくは10〜1000mJ/cm2の条件で行われる。また、上記無電極ランプの場合は、例えば、2〜1500mJ/cm2、好ましくは5〜500mJ/cm2の条件で行われる。そして、照射時間は、光源の種類、光源と塗布面との距離、塗工厚、その他の条件によっても異なるが、通常は、数秒〜数十秒、場合によっては数分の1秒でもよい。一方、上記電子線照射の場合には、例えば、50〜1000Kevの範囲のエネルギーを持つ電子線を用い、2〜50Mradの照射量とするのがよい。
また、上記重合開始剤(D)として、熱重合開始剤(d2)を用いる場合には加熱により重合反応を開始し、進行させる。加熱による架橋時の処理温度や処理時間は、使用する熱重合開始剤(d2)の種類によって異なるものであり、通常、開始剤の半減期より計算されるものであるが、処理温度は、通常70℃〜170℃であることが好ましく、処理時間は、通常0.2〜20分が好ましく、特には0.5〜10分が好ましい。
つぎに、前記〔β〕架橋剤(E)を用いて架橋する方法について説明する。
上記架橋剤(E)を用いて架橋する場合は、粘着剤組成物[I]として、前記アクリル系樹脂(A)およびイオン性化合物(B)に加え、さらに架橋剤(E)を含有する粘着剤組成物[I]を用いる。
上記架橋剤(E)を用いる場合には、アクリル系樹脂(A)は官能基を有するものであることが好ましく、この官能基と架橋剤が反応することにより架橋(化学架橋)が行なわれる。
上記架橋剤(E)としては、前記アクリル系樹脂(A)に含まれる官能基と反応する官能基を有する化合物であればよく、例えば、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、メラミン系化合物、アルデヒド系化合物、アミン系化合物、金属キレート系化合物が挙げられる。これらの中でも、基材との密着性を良くできる点やベースポリマーとの反応性の点で、イソシアネート系化合物が好適に用いられる。
上記イソシアネート系化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、およびこれらのポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、これらポリイソシアネート化合物のビュレット体やイソシアヌレート体等が挙げられる。
上記エポキシ系化合物としては、例えば、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエリスリトール、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
上記アジリジン系化合物としては、例えば、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N′−ジフェニルメタン−4,4′−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N′−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)等が挙げられる。
上記メラミン系化合物としては、例えば、へキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサプトキシメチルメラミン、ヘキサペンチルオキシメチルメラミン、ヘキサヘキシルオキシメチルメラミン、メラミン樹脂等が挙げられる。
上記アルデヒド系化合物としては、例えば、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、マレインジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
上記アミン系化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、トリエチルジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラアミン、ジエチレントリアミン、トリエチルテトラアミン、イソフォロンジアミン、アミノ樹脂、ポリアミド等が挙げられる。
上記金属キレート系化合物としては、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、パナジウム、クロム、ジルコニウム等の多金属のアセチルアセトンやアセトアセチルエステル配位化合物等が挙げられる。
また、これらの架橋剤(E)は、単独で使用しても良いし、2種以上併用してもよい。
上記架橋剤(E)の含有量は、前記アクリル系樹脂(A)中に含まれる官能基の量、アクリル系樹脂(A)の分子量、用途目的により適宜選択できるが、通常は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.1〜15重量部であることが好ましく、さらには0.2〜12重量部、特には1.5〜10重量部であることが好ましい。上記架橋剤(E)が少なすぎると、凝集力が不足し、充分な耐久性が得られない傾向がみられ、多すぎると柔軟性、および粘着力が低下し、耐久性が悪くなり、剥離が起こりやすくなるため光学フィルムと貼り合わせることが困難となる傾向がみられる。
また、本発明においては、粘着剤組成物[I]が架橋されて得られる粘着剤の帯電防止性能をより一層向上させるために、架橋剤(E)の一部に、帯電防止性能を有する構造部位が導入された架橋剤を用いることも好ましい。
このような架橋剤に帯電防止性能を有する構造部位を導入する方法としては、例えば、架橋剤としてポリイソシアネート系化合物を用いる際には、帯電防止性能を有する化合物として、その構造中に水酸基を有する化合物を使用すればよく、上記水酸基とイソシアネート基が反応することにより、一部に帯電防止性能を有する構造部位が導入された架橋剤を製造することができる。
なお、架橋剤への帯電防止性能を有する構造部位の導入に関しては、架橋剤にあらかじめ帯電防止性能を有する構造部位を導入しておき、アクリル系樹脂(A)と混合させてもよいし、アクリル系樹脂(A)、架橋剤(E)との混合時に、帯電防止性能を有する化合物を同時に添加して、架橋剤(E)と反応させてもよい。
本発明においては、上記の〔α〕活性エネルギー線および/または熱(活性エネルギー線照射および/または加熱)による架橋のみでも充分なものが得られるが、さらに、〔β〕架橋剤による架橋とを併用することが好ましく、粘着剤の架橋密度を上げ、凝集力を上げて光漏れ防止と耐久性に関してより一層優れたものが得られるようになる。
また、本発明においては、粘着剤形成材料である粘着剤組成物[I]として、さらにシランカップリング剤(F)を含有することが、光学部材に対する密着性が向上する点で好ましい。上記シランカップリング剤(F)の含有量としては、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、通常、0.001〜10重量部に設定され、より好ましくは0.01〜1重量部、特に好ましくは0.03〜0.8重量部である。上記シランカップリング剤(F)の含有量が少なすぎると、添加効果が得られない傾向があり、多すぎるとアクリル系樹脂(A)との相溶性が悪くなり接着力や凝集力が得られなくなる傾向がある。
上記シランカップリング剤(F)としては、例えば、エポキシ系シランカップリング剤、アクリル系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤、水酸基系シランカップリング剤、カルボキシル基系シランカップリング剤、アミノ基系シランカップリング剤、アミド基系シランカップリング剤、イソシアネート基系シランカップリング剤等をあげることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、エポキシ系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤が好ましく用いられ、エポキシ系シランカップリング剤とメルカプト系シランカップリング剤を併用することも、湿熱耐久性の向上と粘着力が上がり過ぎない点で好ましい。
上記エポキシ系シランカップリング剤の具体例としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリ(グリシジル)シラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等があげられるが、中でも好ましいのはγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランである。
上記メルカプト系シランカップリング剤の具体例としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等があげられる。
本発明においては、粘着剤形成材料である粘着剤組成物[I]として、さらに上述したイオン性化合物(B)以外の帯電防止剤(G)を含有することも、得られる粘着剤の帯電防止性能をより一層優れたものとする点で好ましい。上記帯電防止剤(G)としては、例えば、テトラアルキルアンモニウムスルホン酸塩等の第4級アンモニウム塩のカチオン型帯電防止剤、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物硫酸エステル塩、高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールアルコールアルキレンオキサイド付加物リン酸エステル塩等のアニオン型帯電防止剤、過塩素酸リチウムや塩化リチウム等の有機酸または無機酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル等があげられる。
上記帯電防止剤(G)の含有量としては、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、通常、0.001〜20重量部に設定され、より好ましくは0.01〜10重量部、特に好ましくは0.02〜5重量部である。上記帯電防止剤(G)の含有量が少なすぎると、添加効果が得られない傾向があり、多すぎると耐久性が悪化したり、帯電防止剤がブリードアウトする可能性がある。
本発明において、粘着剤形成材料である粘着剤組成物[I]には、本発明の効果を損なわない範囲において、さらに、他のアクリル系粘着剤、その他の粘着剤、ウレタン樹脂、ロジン、ロジンエステル、水添ロジンエステル、フェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂等の粘着付与剤、着色剤、充填剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、機能性色素等の従来公知の添加剤や、紫外線あるいは放射線照射により呈色あるいは変色を起こすような化合物を添加することができる。
また、上記添加剤の他にも、粘着剤組成物[I]の構成成分の製造原料等に含まれる不純物等が少量含有されたものであっても良い。
このようにして、本発明では、上記粘着剤組成物[I]が架橋されてなる粘着剤が得られる。
また、アクリル系樹脂(A)を主成分とし、イオン性化合物(B)を含有する粘着剤組成物[I]の架橋方法としては、粘着剤組成物[I]に実質的に不飽和基を含有させず、粘着剤組成物[I]に、活性エネルギー線を照射する方法により架橋させることもできる。なお、このときに重合開始剤(D)、架橋剤(E)、シランカップリング剤(F)、帯電防止剤(G)を含有することが、上記と同様の理由で好ましい。
そして、上記粘着剤からなる粘着剤層を光学部材(光学積層体)上に積層形成することにより、粘着剤層付き光学部材を得ることができる。
上記粘着剤層付き光学部材には、粘着剤層の光学部材面とは逆の面に、さらに離型シートを設けることが好ましい。
上記粘着剤層付き光学部材の製造方法としては、粘着剤組成物[I]が、活性エネルギー線照射および加熱の少なくとも一方による架橋を行なう場合には、〔1〕光学部材上に、粘着剤組成物[I]を塗布、乾燥した後、離型シートを貼合し、活性エネルギー線照射および加熱の少なくとも一方による処理を行なう方法、〔2〕離型シート上に、粘着剤組成物[I]を塗布、乾燥した後、光学部材を貼合し、活性エネルギー線照射および加熱の少なくとも一方による処理を行なう方法、〔3〕光学部材上に粘着剤組成物[I]を塗布、乾燥し、さらに活性エネルギー線照射および加熱の少なくとも一方による処理を行なった後、離型シートを貼合する方法、〔4〕離型シート上に粘着剤組成物[I]を塗布、乾燥し、さらに活性エネルギー線照射および加熱の少なくとも一方による処理を行なった後、光学部材を貼合する方法などがある。これらの中でも、〔2〕の方法で活性エネルギー線照射を行なう場合が基材を痛めない点、作業性や安定製造の点で好ましい。
上記粘着剤組成物[I]の塗布に際しては、この粘着剤組成物[I]を溶剤に希釈して塗布することが好ましく、希釈濃度としては、好ましくは8〜60重量%、特に好ましくは11〜30重量%である。また、上記溶剤としては、粘着剤組成物[I]を溶解させるものであれば特に限定されることなく、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、メタノール、エタノール、プロピルアルコール等のアルコール系溶剤を用いることができる。これらの中でも、溶解性、乾燥性、価格等の点から酢酸エチル、メチルエチルケトンが好適に用いられる。
また、上記粘着剤組成物[I]の塗布に関しては、ロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、スクリーン印刷等の慣用の方法により行なわれる。
上記方法により製造される粘着剤層のゲル分率については、耐久性能と光漏れ防止性能の点から80%以上であることが好ましく、特には90%以上が好ましい。ゲル分率が低すぎると凝集力が不足することに起因する耐久性不足や光漏れ現象が悪化する傾向がある。なお、通常、ゲル分率の上限値は100%である。
なお、光学部材用粘着剤のゲル分率を上記範囲に調整するにあたっては、例えば、活性エネルギー線の照射量や照射強度を調整すること、不飽和基含有化合物の種類と量を調整すること、重合開始剤の種類およびその併用割合を調整すること、重合開始剤の配合量を調整すること、架橋剤の種類と量を調整すること等により達成される。また、上記活性エネルギー線の照射量や照射強度、重合開始剤の組成比、添加量は、それぞれの相互作用によりゲル分率が変化するので、それぞれバランスをとることが必要になる。
上記ゲル分率は、架橋度の目安となるもので、例えば、以下の方法にて算出される。すなわち、基材となる高分子シート(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等)に粘着剤層が形成されてなる粘着シート(セパレーターを設けていないもの)を200メッシュのSUS製金網で包み、トルエン中に23℃×24時間浸漬し、金網中に残存した不溶解の粘着剤成分の重量百分率をゲル分率とする。ただし、基材の重量は差し引いておく。
また、得られる粘着剤層付き光学部材における粘着剤層の厚みは、特に限定されないが、5〜300μmが好ましく、特には10〜50μmが好ましく、更には12〜30μmが好ましい。この粘着剤層の厚みが薄すぎると粘着物性が安定しにくい傾向があり、厚すぎると光学部剤全体の厚みが増しすぎてしまう傾向がある。
本発明の粘着剤層付き光学部材は、直接あるいは離型シートを有するものは離型シートを剥がした後、粘着剤層面をガラス基板に貼合して、例えば液晶表示板に供されるのである。
本発明の粘着剤層の初期粘着力は、被着体の材料等に応じて適宜決定される。例えば、ガラス基板に貼着する場合には、0.2N/25mm〜20N/25mmの粘着力を有することが好ましく、さらには0.5N/25mm〜10N/25mmが好ましい。
上記初期粘着力は、つぎのようにして算出される。粘着剤層付き偏光板について、幅25mm幅に裁断し、離型フィルムを剥離して、粘着剤層側を無アルカリガラス板(コーニング社製、「コーニング1737」)に押圧して、偏光板とガラス板とを貼合する。その後、オートクレーブ処理(50℃、0.5MPa、20分)を行った後、23℃・50%R.H.で24時間放置後に、180℃剥離試験を行なう。
本発明における光学部材としては、特に限定されることなく、液晶表示装置、有機EL表示装置、PDP等の画像表示装置に好適に用いられる光学フィルム、例えば、偏光板や位相差板、楕円偏光板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、さらにはこれらが積層されているもの等があげられる。中でも特に偏光板であることが本発明では有効である。
本発明で用いられる偏光板は、通常、偏光フィルムの両面に三酢酸セルロース系フィルムを保護フィルムとして積層したものであり、上記偏光フィルムとしては、平均重合度が1,500〜10,000、ケン化度が85〜100モル%のポリビニルアルコール系樹脂からなるフィルムを原反フィルムとして、ヨウ素−ヨウ化カリウムの水溶液あるいは二色性染料により染色された一軸延伸フィルム(通常、2〜10倍、好ましくは3〜7倍程度の延伸倍率)が用いられる。
上記ポリビニルアルコール系樹脂としては、通常、酢酸ビニルを重合したポリ酢酸ビニルをケン化して製造されるが、少量の不飽和カルボン酸(塩、エステル、アミド、ニトリル等を含む)、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸塩等、酢酸ビニルと共重合可能な成分を含有していても良い。また、ポリビニルアルコールを酸の存在下でアルデヒド類と反応させた、例えば、ポリブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂等のいわゆるポリビニルアセタール樹脂およびポリビニルアルコール誘導体があげられる。
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
まず、下記のようにして各種アクリル系樹脂、各種不飽和基含有化合物を調製した。なお、アクリル系樹脂の重量平均分子量、分散度、ガラス転移温度の測定に関しては、前述の方法にしたがって測定した。
なお、粘度の測定に関しては、JIS K5400(1990)の4.5.3回転粘度計法に準じて測定した。
〔アクリル樹脂(A)の調製〕(表2参照。)
[アクリル系樹脂(A−1)]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a1)10部、ブチルアクリレート(a2)89.5部、アクリル酸(a3)0.5部及び酢酸エチル100部、アセトン45部を仕込み、加熱還流開始後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.03部を加え、酢酸エチル還流温度で3時間反応後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A−1)溶液(重量平均分子量(Mw)158万、分散度(Mw/Mn)3.7、ガラス転移温度−50℃、固形分18%、粘度8,000mPa・s(25℃))を得た。
なお、アクリル系樹脂(A−1)のHLBに関しては、以下の計算により求めた。
・重合時の2−ヒドロキシエチルアクリレートを各構成部分に分解すると、
(CH2:−0.475)(CH:−0.475)(COO:2.4)(CH2:−0.475)(CH2:−0.475)(OH:1.9)であるので、
HLB値=Σ疎水機の基数+Σ親水基の基数+7
={(−0.475)×4}+{(2.4)+(1.9)}+7
=9.4
・同様に、アクリル酸(CH2:−0.475)(CH:−0.475)(COOH:2.1)についても計算すると、
HLB値={(−0.475)×2}+(2.1)+7
=8.15
・同様に、ブチルアクリレート(CH2:−0.475)(CH:−0.475)(COO:−2.4)(CH2:−0.475)(CH2:−0.475)(CH2:−0.475)(CH3:−0.475)についても計算すると、
HLB値={(−0.475)×6}+(2.4)+7
=6.55
・アクリル系樹脂(A−1)
=BA/HEA/AAc
=89.5/10/0.5であるので、上記計算値に各モノマーの含有割合を掛け合わせると、
HLB値=(6.55×89.5+9.4×10+8.15×0.5)/100
=6.84
[アクリル系樹脂(A−2)]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、酢酸エチル100部を仕込み、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.05部を加え、攪拌しながら昇温し、78℃で、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a1)30部、ブチルアクリレート(a2)69部、アクリル酸(a3)1部の混合物を2時間にわたって滴下した。重合途中に酢酸エチル10部にAIBN0.05部を溶解させた重合開始剤液を逐次追加しながら、酢酸エチル還流温度で3.5時間重合させた後、希釈してアクリル系樹脂(A−2)溶液(重量平均分子量(Mw)85万、分散度(Mw/Mn)4.5、ガラス転移温度−43℃、固形分35%、粘度7,000mPa・s(25℃))を得た。
なお、アクリル系樹脂(A−2)のHLBは7.42であった。
[アクリル系樹脂(A−3)]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、酢酸エチル120部を仕込み、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.05部を加え、攪拌しながら昇温し、78℃で、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a1)50部、ブチルアクリレート(a2)49部、アクリル酸(a3)1部の混合物を2時間にわたって滴下した。重合途中に酢酸エチル10部にAIBN0.05部を溶解させた重合開始剤液を逐次追加しながら、酢酸エチル還流温度で3.5時間重合させた後、希釈してアクリル系樹脂(A−3)溶液(重量平均分子量(Mw)76万、分散度(Mw/Mn)4.4、ガラス転移温度−35℃、固形分27%、粘度3,000mPa・s(25℃))を得た。
なお、アクリル系樹脂(A−3)のHLBは7.98であった。
[アクリル系樹脂(A−4)]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、酢酸エチル100部を仕込み、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.05部を加え、攪拌しながら昇温し、78℃で、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a1)30部、2−メトキシエチルアクリレート(a1)30部、ブチルアクリレート(a2)39部、アクリル酸(a3)1部の混合物を2時間にわたって滴下した。重合途中に酢酸エチル10部にAIBN0.05部を溶解させた重合開始剤液を逐次追加しながら、酢酸エチル還流温度で3.5時間重合させた後、希釈してアクリル系樹脂(A−4)溶液(重量平均分子量(Mw)98万、分散度(Mw/Mn)4.3、ガラス転移温度−42℃、固形分32%、粘度7,000mPa・s(25℃))を得た。
なお、アクリル系樹脂(A−4)のHLBは7.95であった。
[アクリル系樹脂(A−5)]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、酢酸エチル100部を仕込み、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.05部を加え、攪拌しながら昇温し、78℃で、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a1)30部、2−メトキシエチルアクリレート(a1)69部、アクリル酸(a3)1部の混合物を2時間にわたって滴下した。重合途中に酢酸エチル10部にAIBN0.05部を溶解させた重合開始剤液を逐次追加しながら、酢酸エチル還流温度で3.5時間重合させた後、希釈してアクリル系樹脂(A−5)溶液(重量平均分子量(Mw)73万、分散度(Mw/Mn)4.6、ガラス転移温度−40℃、固形分34%、粘度9,000mPa・s(25℃))を得た。
なお、アクリル系樹脂(A−5)HLBは8.63であった。
[アクリル系樹脂(A−6)]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、2−メトキシエチルアクリレート(a1)40部、ブチルアクリレート(a2)49部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a3)10部、アクリル酸(a3)1部及び酢酸エチル140部、アセトン45部を仕込み、加熱還流開始後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.03部を加え、還流温度で3時間反応後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A−6)溶液(重量平均分子量(Mw)123万、分散度(Mw/Mn)3.5、ガラス転移温度−49℃、固形分20%、粘度3,500mPa・s(25℃))を得た。
なお、アクリル系樹脂(A−6)のHLBは7.55であった。
[アクリル系樹脂(A−7)]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、酢酸エチル100部を仕込み、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.05部を加え、攪拌しながら昇温し、78℃で、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a1)30部、ブチルアクリレート(a2)70部の混合物を2時間にわたって滴下した。重合途中に酢酸エチル10部にAIBN0.05部を溶解させた重合開始剤液を逐次追加しながら、酢酸エチル還流温度で3.5時間重合させた後、希釈してアクリル系樹脂(A−7)溶液(重量平均分子量(Mw)85万、分散度(Mw/Mn)4.4、ガラス転移温度−43℃、固形分35%、粘度5,500mPa・s(25℃))を得た。
なお、アクリル系樹脂(A−7)のHLBは7.41であった。
[アクリル系樹脂(A’−1)]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a1)1.5部、ブチルアクリレート(a2)98部、アクリル酸(a3)0.5部及び酢酸エチル75部、アセトン45部を仕込み、加熱還流開始後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.03部を加え、酢酸エチル還流温度で3時間反応後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A’−1)溶液(重量平均分子量(Mw)200万、分散度(Mw/Mn)3.1、ガラス転移温度−54℃、固形分16%、粘度8,000mPa・s(25℃))を得た。
なお、アクリル系樹脂(A’−1)のHLBは6.60であった。
[アクリル系樹脂(A’−2)]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、酢酸エチル100部を仕込み、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.05部を加え、攪拌しながら昇温し、78℃で、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a1)5部、ブチルアクリレート(a2)94.5部、アクリル酸(a3)0.5部の混合物を2時間にわたって滴下した。重合途中に酢酸エチル10部にAIBN0.05部を溶解させた重合開始剤液を逐次追加しながら、酢酸エチル還流温度で3.5時間重合させた後、希釈してアクリル系樹脂(A’−2)溶液(重量平均分子量(Mw)86万、分散度(Mw/Mn)4.5、ガラス転移温度−43℃、固形分43%、粘度16,800mPa・s(25℃))を得た。
なお、アクリル系樹脂(A’−2)のHLBは6.70であった。
[アクリル系樹脂(A’−3)]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、酢酸エチル100部,エチルメチルケトン50部を仕込み、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.05部を加え、攪拌しながら昇温し、78℃で、2−エチルへキシルアクリレート(a2)67部、エトキシジエチレングリコールアクリレート(ビスコート#190:大阪有機化学工業製(a1)29部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a1)4部の混合物を2時間にわたって滴下した。重合途中に酢酸エチル10部にAIBN0.05部を溶解させた重合開始剤液を逐次追加しながら、酢酸エチル還流温度で3.5時間重合させた後、希釈してアクリル系樹脂(A’−3)溶液(重量平均分子量(Mw)45万、分散度(Mw/Mn)4.4、ガラス転移温度−65℃、固形分50%、粘度7,000mPa・s(25℃))を得た。
なお、アクリル系樹脂(A’−3)のHLBは5.86であった。
また、上記アクリル系樹脂(A’−3)と同様のモノマー組成で、下記の通り重量平均分子量約80万以上を目標にして重合を行なった場合には、ゲル化がおこってしまい、所望のアクリル系樹脂を得ることはできなかった。
<参考・製造例>
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、酢酸エチル80部を仕込み、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.05部を加え、攪拌しながら昇温し、78℃で、2−エチルへキシルアクリレート(a2)67部、エトキシジエチレングリコールアクリレート(ビスコート#190:大阪有機化学工業製(a1)29部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a1)4部の混合物を2時間にわたって滴下した。重合途中に酢酸エチル10部にAIBN0.05部を溶解させた重合開始剤液を逐次追加しながら、酢酸エチル還流温度で3.5時間重合させたところゲル化した。
(注)BA:ブチルアクリレート
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
AAc:アクリル酸
MEA:2−メトキシエチルアクリレート
EDEGA:エトキシジエチレングリコールアクリレート
※表中「―――」は配合しなかったことを表す。
[イオン性化合物(B)]
イオン性化合物(B−1)として、以下のものを用意した。
・1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムジシアンアミド
イオン性化合物(B−2)として、以下のものを用意した。
・1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムチオシアネート
イオン性化合物(B’−1)として、以下のものを用意した。
・1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド
イオン性化合物(B’−2)として、以下のものを用意した。
・1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド
イオン性化合物(B’−3)として、以下のものを用意した。
・トリフルオロスルホン酸リチウム
[不飽和基含有化合物(C−1)の製造]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、イソホロンジイソシアネート19.2部、ジ−t−ブチルヒドロキシフェノール0.05部、ジブチルスズジラウレート0.02部を仕込み、50℃以下で、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物(共栄社化学社製ライトアクリレートPE−3A、水酸基価120mgKOH/g)80.8部を、70℃で反応を継続し、不飽和基含有化合物(C−1)を得た。
[光重合開始剤(D)]
光重合開始剤(D−1)として、以下のものを用意した。
・ベンゾフェノンと1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとの質量比1:1の混合物(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、「イルガキュア500」)
[架橋剤(E)]
架橋剤(E−1)として、以下のものを用意した。
・トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物の55%酢酸エチル溶液(日本ポリウレタン社製、「コロネートL−55E」)
[シランカップリング剤(F)]
シラン系化合物(F−1)として、以下のものを用意した。
・γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、「KBM403」)
〔実施例1〜9、比較例1〜12〕
上記のようにして調製,準備した各配合成分を、下記の表3に示す割合で配合することにより光学部材用粘着剤形成材料となる粘着剤組成物を調製し、これをメチルエチルケトンにて希釈し(粘度〔1000〜10000mPa・s(25℃)〕)粘着剤組成物溶液を作製した。
注)(A)〜(F)における表中の数値は配合重量部である。
表中「―――」は配合しなかったことを表す。
そして、上記粘着剤組成物溶液を、ポリエステル系離型シートに、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、90℃で3分間乾燥した後、形成された粘着剤組成物層側をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み38μm)上に転写し、フュージョン社製無電極ランプ[LH6UVランプのHバルブ]にてピーク照度:600mW/cm2,積算露光量:240mJ/cm2で紫外線照射を行ない(120mJ/cm2×2パス)、23℃×65%R.H.の条件下で10日間エージングさせて粘着剤層付きPETフィルムを得た。
このようにして得られた粘着剤層付きPETフィルムを用いて、ゲル分率、表面抵抗値を下記に示す各方法に従って測定・評価した。これらの結果を上記の表3に併せて示した。
〔ゲル分率〕
得られた粘着剤層付きPETフィルムを40×40mmに切断した後、離型シートを剥がし粘着剤層側を50×100mmのSUSメッシュシート(200メッシュ)に貼合してから、SUSメッシュシートの長手方向に対して中央部より折り返してサンプルを包み込んだ後、トルエン250gの入った密封容器にて浸漬した際の重量変化にてゲル分率(%)の測定を行なった。
〔表面抵抗率〕
得られた粘着剤層付きPETフィルムを40×40mmの大きさに切断した後、これを温度23℃×相対湿度65%の条件下に3時間放置し調湿した後、離型シートを剥がして10〜20秒後の粘着剤層について、抵抗率計(三菱化学社製、ハイレスターUP)を用いて表面抵抗率(Ω/□)を測定した。なお、表面抵抗率が小さいほど帯電防止性能が高いことを意味する。
つぎに、実施例1〜4、8、比較例3、4、8の粘着剤組成物溶液を、ポリエステル系離型シートに、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、90℃で3分間乾燥した後、形成された粘着剤組成物層側を偏光板(厚み190μm)上に転写し、フュージョン社製無電極ランプ[LH6UVランプのHバルブ]にてピーク照度:600mW/cm2,積算露光量:240mJ/cm2で紫外線照射を行ない(120mJ/cm2×2パス)、23℃×65%R.H.の条件下で10日間エージングさせて粘着剤層付き偏光板を得た。
なお、上記偏光板には、膜厚30μmのポリビニルアルコール偏光フィルム(平均重合度1700、平均ケン化度99モル%、ヨウ素染色、4倍延伸)の両側を厚さ80μmの三酢酸セルロースフィルムで積層した偏光板(ポリビニルアルコール偏光フィルムの延伸軸方向を45°傾けて100mm×100mmに切断)を用いた。
このようにして得られた粘着剤層付き偏光板を用いて、耐久性(耐湿熱試験、ヒートサイクル試験、耐熱試験)、粘着力を下記に示す各方法に従って測定・評価した。これらの結果を後記の表4に併せて示す。
〔耐久性〕
得られた粘着剤層付き偏光板の離型シートを剥離して、粘着剤層側を無アルカリガラス板(コーニング社製、コーニング1737)に押圧して、偏光板とガラス板とを貼合した後、オートクレーブ処理(50℃、0.5MPa、20分)を行ない、その後、下記の耐久試験(耐湿熱試験、ヒートサイクル試験)における発泡、剥がれ、光漏れ現象の評価を行なった。
なお、耐熱試験のみは、偏光板がクロスニコルになるように表と裏の両面に同じサンプルを貼合し、光漏れ観察用とした。
なお、使用した試験片サイズは、耐湿熱・ヒートサイクルでは10cm×10cmを使用し、耐熱試験では20cm×15cmのものを使用した。
〔耐久試験〕
(1)耐湿熱試験
60℃、90%R.H.100時間の耐久試験
(2)ヒートサイクル試験
−40℃で30分間放置した後、85℃で30分間放置する操作を1サイクルとして、100サイクル行なう耐久試験
(3)耐熱試験
80℃、100時間の耐久試験
〔評価基準〕
(発泡)
○・・・発泡がほとんど見られない
△・・・発泡がわずかに見られる
×・・・発泡が多く見られる
(剥離)
○・・・0.5mm未満の剥がれ、もしくは浮き跡の発生
△・・・0.5mm以上10mm未満の剥がれ、もしくは浮き跡の発生
×・・・10mm以上の剥がれ、もしくは10mm以上の浮き跡の発生
(光漏れ)
上記(3)耐熱試験のみ光漏れに関する評価も行なった。
○・・・光漏れがほとんど見られない
△・・・光漏れが僅かに発生
×・・・4辺に光漏れが大きく発生
〔粘着力〕
調製した粘着剤層付き偏光板について、幅25mm幅に裁断し、離型フィルムを剥離して、粘着剤層側を無アルカリガラス板(コーニング社製、「コーニング1737」)に押圧して、偏光板とガラス板とを貼合した。その後、オートクレーブ処理(50℃、0.5MPa、20分)を行い、24時間後に180℃剥離試験を行った。剥離性においては粘着力が小さいことが望まれ、1日後で10N/25mm以下が目標となる。
上記[表3]の評価結果では、例えば、シアノ基含有アニオンを有するイオン性化合物(B−1)とHLBが6.8以上であるアクリル系樹脂(A−1)を用いた実施例1では、同じ樹脂(A−1)でイオン性化合物としてビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオンを用いた比較例2よりも高い帯電防止性能を示しており、その他のHLBが6.8以上のアクリル系樹脂(A−2〜A−7)を用いた場合においてもシアノ基含有アニオンを用いた方が高い帯電防止性能を示すという同様の結果が得られている。
一方、シアノ基含有アニオンを有するイオン性化合物(B−1)とHLBが6.8よりも小さいアクリル系樹脂(A’−1)を用いた比較例1では、同じ樹脂(A’−1)でイオン性化合物としてビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオンを用いた比較例9よりも低い帯電防止性能しか示さない結果となっており、その他のHLBが6.8よりも小さいアクリル系樹脂(A’−2)を用いた場合においても同様の結果(比較例10と比較例11を対比)が得られている。
このことから、シアノ基含有アニオンを有するイオン性化合物を、HLBが6.8以上のアクリル系樹脂と組み合わせて用いた際に、相溶性がよく本来有している高い帯電防止性能を発揮できるものであり、世間一般で用いられているHLBの低いアクリル系樹脂と組み合わせたとしても、良好な帯電防止性能は示さず、その高い帯電防止性能は発揮されないものであることがわかる。
更に、[表4]の結果より、比較例3、4、8では耐久性が不十分であるのに対し、実施例の粘着剤を用いて得られる偏光板は、実用に耐えうるレベルの優れた性能を有するものであり、本発明では帯電防止性能と耐久性能の両方について高い性能を発揮する粘着剤が得られているのである。