JP5393239B2 - 光学的立体造形物の処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、光硬化性樹脂組成物を用いて光学的立体造形を行って得られる光学的立体造形物の処理方法に関する。より詳細には、光硬化性樹脂組成物を用いて光学的立体造形を行って得られる光学的立体造形物の色調を、光学的立体造形物の力学的特性やその他の物性を良好に維持しながら、短時間の処理で速やかに改善することのできる処理方法および当該処理より得られる光学的立体造形物に関する。
近年、三次元CADに入力されたデータに基づいて光硬化性樹脂組成物を光硬化させて立体造形物を製造する光学的立体造形方法および装置が実用化されている。
この光学的立体造形技術では、光硬化性樹脂組成物よりなる造形面に、コンピューターで制御された光を選択的に照射して所定の厚みに光硬化させて所定の形状パターンを有する硬化樹脂層を形成し、その硬化樹脂層の上に更に1層分の光硬化性樹脂組成物を施して造形面を形成させ、その造形面にコンピューターで制御された光を選択的に照射して所定の厚みに光硬化させて所定の形状パターンを有する硬化樹脂層を形成するという造形操作を、所定の寸法および形状の立体造形物が得られるまで多数回繰り返す方法が一般に広く採用されている。
上記した光学的立体造形技術で得られる立体造形物は、設計の途中で各種工業製品の外観デザインを検証するためのモデル、部品の機能性をチェックするためのモデル、鋳型を製作するための樹脂型、金型を製作するためのベースモデルなどとして広く利用されており、近年では、美術品の復元、模造や現代アート、ガラス張りの建築物のデザインプレゼンテーションモデルのような美術工芸品などにも用いられるようになっている。
光学的立体造形物の用途の拡大に伴って、黄変などの変色がなくて無色透明性に優れる光学的立体造形物、また染料や顔料などの着色剤を用いて製造した光学的立体造形物では変色などによる色調の悪化がなくて着色剤本来の良好な色調に着色された光学的立体造形物が求められるようになっている。
しかし、従来の光学的立体造形物の多くは、多少なりとも黄変などの変色が生じていて無色透明性に劣っていたり、着色剤を用いたものでは黄変などの変色によって色調の低下が生じていた。
光学的立体造形物における黄変などの変色や色調不良の原因は未だ十分に解明されていないが、光硬化性樹脂組成物中に含まれているラジカル重合性有機化合物、カチオン重合性有機化合物、光感受性ラジカル重合開始剤、光感受性カチオン重合開始剤などの化合物や、光硬化によって生成した樹脂成分などが、光学的立体造形時の光(特に紫外線)の照射によって化学的に不安定になって変質した結果、共役二重結合などの発色団・助色団を有する構造部分や成分が光学的立体造形物中に生成することによるものと推測される。
黄変などの変色が少なくて透明性に優れる光学的立体造形物の提供を目的として、グリシジル型のエポキシ化合物の含有量が0〜30重量%未満であるエポキシ化合物、ヒドロキシル基を含まないかまたはヒドロキシル基の含有量の少ない多官能(メタ)アクリレート、ポリエーテルポリオール化合物、カチオン重合開始剤およびラジカル重合開始剤を含有する光硬化性樹脂組成物が提案されている(特許文献1を参照)。しかしながら、この光硬化性樹脂組成物から得られる光学的立体造形物は、必ずしも無色透明性の点で十分に優れているとは言い難い。しかも、この光硬化性樹脂組成物では、特定の成分を組み合わせて用いることが必要であるため、硬化性樹脂組成物の配合設計や、得られる立体造形物の物性(力学的特性、寸法安定性、寸法精度、耐熱性など)に制約があり、目的とする力学的特性、造形精度、寸法精度、耐熱性などの特定を備える立体造形物を必ずしも製造することができない。
また、高温環境下における黄変の少ない立体造形物を得ることを目的として、(A)ジフェニル(フェニルチオフェニル)スルホニウム系カチオン重合開始剤、(B)フェノール系酸化防止剤、(C)カチオン重合性化合物、(D)ラジカル重合開始剤、(E)ラジカル重合性化合物、(F)2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(4−モルフォリノジチオ)ベンゾチアゾール、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドおよびジフェニルジスルフィドからなる群から選択される1種以上の化合物および(G)ポリエーテルポリオール化合物を含有する光学的立体造形用樹脂組成物が提案されている(特許文献2を参照)。
しかしながら、この特許文献2には、光造形直後の立体造形物の黄色度(イエローインデックス)と、立体造形物を80℃で2時間加熱した後の黄色度との差が示されているだけであり、光造形して得られた加熱前の立体造形物自体の色調(例えば黄色度など)については記載されておらず、そのため、光造形して得られた立体造形物自体の色調が不良である場合に、その色調を改善する方法については何ら開示されていない。
しかも、この特許文献2の発明では、光学的立体造形用樹脂組成物を上記特定の成分(A)〜(G)を組み合わせて調製することが必要なため、やはり、光学的立体造形用樹脂組成物の配合設計、得られる立体造形物の物性などにおける制約が大きい。
また、造形時の積層厚みを小さくしたり、レーザー出力を下げるかおよび/または走査速度を速くすることによって照射エネルギーを小さくすることで黄変を防ぐことも行われている。しかし、積層厚みを小さくすると、造形物の層が増えるため造形時間が長くなるばかりか、表面張力や泡によって生ずる層厚の不均一に対する許容範囲が小さくなるために造形が失敗する危険が高くなる。また、照射エネルギーを小さくすると、造形物の硬化度が低下して柔らかくなることで造形物の機械的強度が低下する上、層間密着性が低下して層間剥離が起こり易くなり、やはり造形が失敗しやすくなるという欠点があった。
さらに、光造形して得られる光学的立体造形物の黄変などの変色を隠蔽するために、蛍光増白剤や染料などの使用も行われている。
しかし、蛍光増白剤は、一般に紫外部に吸収を持つため、光硬化性樹脂組成物中に配合すると、光造形時に光硬化性樹脂組成物に照射された紫外線のエネルギーの減少を招いて、光硬化性樹脂組成物の光硬化感度の低下や硬化厚みの変動が生じ、物性に優れる光学的立体造形物を製造することが困難になり易い。
また、染料も、蛍光増白剤と同様に、光硬化性樹脂組成物の光硬化感度を低下させる恐れがあり、さらに経時変化して望ましくない変退色を引き起こすことがあり、しかも淡色に着色したい場合には黄変などの変色を完全には隠蔽することができない。
また、造形物を長時間放置した場合に脱色が進んで無色となったり、または黄変したりする現象は知られていたものの、その原因については明らかではなく、脱色する場合でも数日以上を要していた。光学的立体造形法はラピッドプロトタイピングと呼ばれる技術の一つであり、造形物を数時間から一日以内で作製して即座に利用できることが求められているため、脱色するまでに数日放置することは実用性に大きく欠ける。
上記の点から、光造形して得られる光学的立体造形物に黄変などの変色が生じていて、無色透明性に劣っていたり、色調が不良である場合に、光学的立体造形物の力学的特性やその他の物性を良好に維持しながら、光学的立体造形物の黄変などの変色を簡単に且つ速やかに解消または低減して、無色透明性に優れるか、または着色剤を用いたものでは着色剤本来の優れた色調を有する光学的立体造形物にすることができる技術が求められている。
特表2007−516318号公報 特許第3930888号公報
ポール・エフ・ヤコブ(Paul F. Jacobs)著、「Rapid Prototyping & Manufacturing, Fundamentals of Stereo-Lithography」,"Society of Manufacturing Engineers",1992年,p28−39
本発明の目的は、光硬化性樹脂組成物を用いて光造形して得られる光学的立体造形物に黄変などの変色が生じていた場合に、光学的立体造形物の力学的特性やその他の物性を良好に維持しながら、黄変などの変色を、簡単な操作で、短時間に速やかに解消または低減して、無色透明性に優れるか、または着色剤を用いたものでは着色剤本来の優れた色調を有する光学的立体造形物に変えることのできる方法およびそのための装置を提供することである。
上記の目的を達成すべく本発明者らは鋭意検討を重ねてきた。その結果、光硬化性樹脂組成物を用いて光学的立体造形を行って得られる光学的立体造形物に黄変などの変色が生じていた場合に、当該光学的立体造形物に対して、430〜500nmの範囲内の波長を有する光(青色光)を含み且つ波長が400nm以下の光、特に紫外線を含まない光を、430〜500nmの波長を有する光の合計照射強度が特定の値になるようにして照射すると、光学的立体造形物本来の力学的特性やその他の物性を良好に維持しながら、黄変などの変色を短時間に速やかに解消または低減して、無色透明性に優れるか、または着色剤を用いたものでは着色剤本来の優れた色調を呈する光学的立体造形物が得られることを見出した。
そして、本発明者らは、波長が400nm以下の光、特に紫外線を含まず、波長430〜500nmの光(青色光)を含む光を照射して光学的立体造形物の色調を改善する前記した処理方法は、光学的立体造形後に紫外線の照射および/または加熱を行って後硬化処理を施した光学的立体造形物、並びに光学的立体造形後に紫外線照射および/または加熱による後硬化処理を施さない光学的立体造形物の両方に対して有効であることを見出した。
また、本発明者らは、光学的立体造形物の色調を改善するための前記方法を、光造形して得られる立体造形物に紫外線を照射して後硬化した立体造形物に対して実施するに当っては、
・紫外線を含む光を放射する光源(A)および430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含み且つ波長が400nm以下の光を含まない光を放射する光源(B)を備える後処理装置を使用し、光硬化性樹脂組成物を用いて光学的立体造形を行って得られる光学的立体造形物に、光源(A)からの光を照射して光学的立体造形物を紫外線で後硬化処理した後に、光源(B)からの光を、光学的立体造形物の表面での波長430〜500nmの光の合計照射強度が特定の値になるようにして照射する方法;
・紫外線および430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含む光を放射する光源(C)を備える後処理装置を使用し、光硬化性樹脂組成物を用いて光学的立体造形を行って得られる光学的立体造形物に、光源(C)からの光を照射して光源(C)から放射される光に含まれる紫外線で光学的立体造形物を後硬化処理した後に、光源(C)から放射される光から波長が400nm以下の光、特に紫外線を除いた光を光学的立体造形物の表面での波長430〜500nmの光の合計照射強度が特定の値になるようにして照射する方法;
などが好ましく採用できることを見出した。
さらに、本発明者らは、本発明者らの見出した光学的立体造形物の上記した色調の改善方法は、ラジカル重合性有機化合物および光感受性ラジカル重合開始剤を含有する光硬化性樹脂組成物を用いて得られる光学的立体造形物、並びにラジカル重合性有機化合物、光感受性ラジカル重合開始剤、カチオン重合性有機化合物および光感受性カチオン重合開始剤を含有する光硬化性樹脂組成物を用いて得られる光学的立体造形物のいずれに対しても有効であることを見出し、それらの種々の知見に基づいて本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1) 光硬化性樹脂組成物を用いて光学的立体造形を行って得られる光学的立体造形物に、430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含み且つ波長が400nm以下の光を含まない光を、光学的立体造形物の表面での波長430〜500nmの光の合計照射強度が15W/m2以上となるように照射することを特徴とする、光学的立体造形物の処理方法である。
そして、本発明は、
(2) 光学的立体造形物が、光学的立体造形後に紫外線の照射および/または加熱を行って後硬化処理を施した光学的立体造形物であるか、または光学的立体造形後に紫外線の照射および/または加熱による後硬化処理を施さない光学的立体造形物である前記(1)の処理方法;および、
(3) 光学的立体造形物の処理に用いる光が、430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含み且つ波長が400nm以下の光を含まない光を放射する光源から放射された光であるか、または430〜500nmの範囲内の波長を有する光および波長が400nm以下の光を含む光を放射する光源から放射された光から波長が400nm以下の光を除いた光である前記(1)または(2)の処理方法;
である。
さらに、本発明は、
(4) 紫外線を含む光を放射する光源(A)、および430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含み且つ波長が400nm以下の光を含まない光を放射する光源(B)を備える後処理装置を使用し、光硬化性樹脂組成物を用いて光学的立体造形を行って得られる光学的立体造形物に、光源(A)からの光を照射して光学的立体造形物を紫外線で後硬化処理した後に、光源(B)からの光を、光学的立体造形物の表面での波長430〜500nmの光の合計照射強度が15W/m2以上となるように照射することを特徴とする、光学的立体造形物の処理方法;および、
(5) 紫外線および430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含む光を放射する光源(C)、並びに光源(C)から放射される光から紫外線を除去する紫外線カット手段(D)を備える後処理装置を使用し、光硬化性樹脂組成物を用いて光学的立体造形を行って得られる光学的立体造形物に、光源(C)から放射される光をそのまま照射して光源(C)から放射される光に含まれる紫外線で光学的立体造形物を後硬化処理した後に、光源(C)から放射される光から紫外線カット手段(D)によって波長が400nm以下の光除いた光を光学的立体造形物の表面での波長430〜500nmの光の合計照射強度が15W/m2以上となるように照射することを特徴とする光学的立体造形物の処理方法;
である。
そして、本発明は、
(6) 430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含み且つ波長が400nm以下の光を含まない光を光学的立体造形物に照射する処理が、光学的立体造形物の変色を解消または低減させるための処理である前記(1)〜(5)のいずれかの処理方法;及び、
(7) 光学的立体造形物が、ラジカル重合性有機化合物、光感受性ラジカル重合開始剤、カチオン重合性有機化合物および光感受性カチオン重合開始剤を含有する光硬化性樹脂組成物を用いて得られる光学的立体造形物である前記(1)〜(6)のいずれかの処理方法;
である。
また、本発明は、
(8) 紫外線を含む光を放射する光源(A)、および430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含み且つ波長が400nm以下の光を含まない光を放射する光源(B)を備えることを特徴とする、前記(4)の処理方法で用いるための光学的立体造形物の処理装置;
(9) 紫外線および430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含む光を放射する光源(C)、並びに光源(C)から放射される光から波長が400nm以下の光を除く紫外線カット手段(D)を備えることを特徴とする、前記(5)の処理方法で用いるための光学的立体造形物の処理装置;
である。
そして、本発明は、
(10) 前記(1)〜(7)のいずれかの処理方法を施してなる光学的立体造形物である。
黄変などの変色が生じている光学的立体造形物を本発明の方法で処理することによって、光学的立体造形物が本来有する力学的特性やその他の物性を良好に維持しながら、光学的立体造形物に生じていた黄変などの変色を、簡単に且つ短時間に速やかに解消または低減して、無色透明性に優れるか、または着色剤を用いたものでは着色剤本来の優れた色調を呈する光学的立体造形物に変えることができる。
本発明の処理方法は、光学的立体造形後に紫外線の照射および/または加熱を行って後硬化処理を施した光学的立体造形物、並びに光学的立体造形後に紫外線照射および/または加熱による後硬化処理を施さない光学的立体造形物の両方に対して有効である。
本発明の処理方法は、ラジカル重合性有機化合物および光感受性ラジカル重合開始剤を含有する光硬化性樹脂組成物を用いて得られる光学的立体造形物、並びにラジカル重合性有機化合物、光感受性ラジカル重合開始剤、カチオン重合性有機化合物および光感受性カチオン重合開始剤を含有する光硬化性樹脂組成物を用いて得られ光学的立体造形物のいずれに対しても有効に実施することができる。
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明では、光硬化性樹脂組成物を用いて光学的立体造形を行って得られる光学的立体造形物に、「430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含み且つ波長が400nm以下の光を含まない光」[以下、これを「光(α)」ということがある]を照射して処理を行う。
本発明で用いる光(α)は、「430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含み且つ波長が400nm以下の光(特に紫外線)を含まない光」である限りは、特に制限されない。
430〜500nmの波長を有する光は青色を呈する可視光であり、ここで、本発明において光学的立体造形物の処理に用いる光(α)に係る、「430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含む」とは、光学的立体造形物の処理に用いる光(α)が、430〜500nmの範囲内の波長の光(波長が430〜500nmの範囲内にある青色光)を少なくとも含んでいることを意味する。
光(α)は、「430〜500nmの波長範囲内に1つまたは2つ以上のエネルギー強度のピークを有し且つ波長が400nm以下の光を含まない光」であってもよいし、「430〜500nmの波長範囲内に光エネルギー強度のピークを持たないが、430〜500nmの波長範囲内に少なくとも光のエネルギーが分布していて且つ波長が400nm以下の光を含まない光」であってもよいし、または前記2つの光の併用であってもよい。
光学的立体造形物の処理に用いる光(α)が、「430〜500nmの波長範囲内に1つまたは2つ以上のエネルギー強度のピークを有し且つ波長が400nm以下の光を含まない光」である場合は、430〜500nmの波長範囲における光エネルギー強度のピーク形状は、なだらかな山形形状および尖った山形形状のいずれであってもよい。光(α)が430〜500nmの波長範囲内に2つ以上の光エネルギー強度のピークを有している場合は、個々のピークの形状および高さは同じであってもよいし、または異なっていてもいずれでもよい。
また、光学的立体造形物の処理に用いる光(α)が、「430〜500nmの波長範囲内に光エネルギー強度のピークを持たないが、430〜500nmの波長範囲内に少なくとも光のエネルギーが分布していて且つ波長が400nm以下の光を含まない光」である場合は、430〜500nmの波長範囲では、当該430〜500nmの波長範囲の全体にわたって光エネルギー強度が均一またはほぼ均一に分布していてもよいし(波長を横軸および光エネルギー強度を縦軸にとった場合に430〜500nmの波長範囲にわたって平坦またはほぼ平坦な光エネルギー強度分布を有し且つ波長が400nm以下の光を含まない光であってもよいし)、430〜500nmの波長範囲の一方から他方に向かって(430nmから500nmに向かってまたは500nmから430nmに向かって)光エネルギー強度がテーパー状をなして増加または低下していて且つ波長が400nm以下の光を含まない光であってもよい。場合によっては、光(α)は、430〜500nmの波長範囲のいずれかの波長箇所において光エネルギー強度が低くなった谷形の光エネルギー強度の分布を有し且つ波長が400nm以下の光を含まない光であってもよい。
本発明で用い得る光(α)としては、例えば、
・波長が400nm以下の光を含まない波長430〜500nmの光(青色光);
・波長が400nm以下の光を含まない波長450〜500nmの光(青色光);
・430〜500nmの波長範囲内の光(青色光)と共に、500nmを超える波長を有する光[例えば、波長500〜570nmの光(緑色光)、波長530〜590nmの光(黄緑色光)、波長570〜590nmの光(黄色光)、波長590〜620nmの光(橙色光)、波長620〜750nmの光(赤色光)の1種または2種以上]を含み、且つ波長が400nm以下の光を含まない光;
・波長が400nm以下の光を含まない白色光;
などを挙げることができる。
本発明では、黄変などの変色が生じた光学的立体造形物に、430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含み且つ波長が400nm以下の光を含まない光(α)を照射することによって、黄変などの変色が解消または低減されて、無色透明性に優れた光学的立体造形物、また着色剤を含有する光学的立体造形物では着色剤本来の優れた色調の光学的立体造形物を得ることができる。
本発明の処理方法は、黄変した光学的立体造形物の色調の改善に特に有効であるが、黄変した光学的立体造形物に限らず、例えば、褐色、黄橙色、黄褐色などに変色した光学的立体造形物の色調の改善方法としても有効である。
光学的立体造形物の処理に用いる光が、430〜500nmの範囲内の波長を有する光(青色光)を含む光であっても、波長が400nm以下の光、特に紫外線を含んでいると、光学的立体造形物に照射したときに、光学的立体造形物の黄変などの色調不良が増幅されたり、脱色と競合して脱色速度が遅くなるので、光(α)は波長が400nm以下の光、特に紫外線を含まないことが必要である。
また、波長が400nm以下の光を含まない光であっても、430〜500nmの範囲内の波長を有する光(青色光)を含まない光を光学的立体造形物に照射した場合には、光学的立体造形物の黄変などの変色の改善効果が小さく、場合によっては色調不良が増大することがある。波長が400〜430nmの光を含んでいてもよいが、紫外線領域に近いため、脱色(色調改善)に対する寄与が小さい。
本発明では、光学的立体造形物に光(α)を照射して処理するに当って、光(α)が照射される光学的立体造形物の表面[すなわち光(α)が直接照射される表面]での、波長が430〜500nmの範囲内の光の合計照射強度が15W/m2以上となるようにして、立体造形物に光(α)を照射する。
光学的立体造形物の照射表面での波長が430〜500nmの範囲内の光の合計照射強度が低いと、脱色はある程度進行するものの、速度が遅いため、光学的立体造形物の黄変などによる色調不良を短時間で効率よく改善することができなくなる。
光学的立体造形物の照射表面での波長が430〜500nmの範囲内の光の合計照射強度は25W/m2以上であることが好ましく、30W/m2以上あることがより好ましく、40W/m2以上あることが更に好ましい。光学的立体造形物の照射表面での波長が430〜500nmの範囲内の光の合計照射強度の上限値は特に制限されないが、当該照射強度が大きすぎる場合は、光源からの発熱や光学的立体造形物の温度上昇に対する対策を講じる必要がある(なお、波長が430〜500nmの範囲内の光の合計照射強度が1000W/m2を超えるような光を広範囲にわたって連続的に照射できるような光源は入手が困難である)。
ここで、本発明における光学的立体造形物における光を照射される表面での波長が430〜500nmの範囲内の光の合計照射強度は、以下の《1》または《2》の方法で求めることができる。
《1》 光学的立体造形物への光照射処理時に、分光照度計を使用して、光を照射されている光学的立体造形物の表面での波長ごとの分光照射強度P(λ)(単位:W/m2・nm)を430〜500nmの波長範囲について測定して、430〜500nmの波長範囲における分光照射強度P(λ)を積分(合計)して、光学的立体造形物の光を照射されている表面での波長が430〜500nmの範囲内の光の合計照射強度(W/m2)を求める方法[430〜500nmの波長領域について波長ごとの分光照射強度P(λ)をそのまま直接測定できる分光照度計を用いる場合]。
《2》 光学的立体造形物への光照射処理時に、放射照度計を使用して、光学的立体造形物における光を照射されている表面での380〜780nmの波長範囲(可視光域)の光の合計光照射強度Q(単位:W/m2)を測定すると共に、光スペクトラムアナライザーを使用して、光学的立体造形物における光を照射されている表面での380〜780nmの波長範囲(可視光域)における相対分光強度曲線Fを求め、当該相対分光強度曲線Fから、380〜780nmの波長範囲(可視光域)での相対分光強度の積分値LAおよび430〜500nmの波長範囲での相対分光強度の積分値LBをそれぞれ算出し、式:Q×(LB/LA)から、光学的立体造形物の光を照射されている表面での波長が430〜500nmの範囲内の光の合計照射強度を求める方法[430〜500nmの波長領域について波長ごとの分光照射強度P(λ)をそのまま直接測定する分光照度計を使用しない場合]。
本発明では、光学的立体造形物に光(α)を照射するための光源の種類は特に制限されず、430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含み且つ波長が400nm以下の光を含まない光を、光学的立体造形物の表面での波長が430〜500nmの範囲内の光の合計照射強度が15W/m2以上となるように照射することのできる光源であればいずれも使用できる。
光学的立体造形物に光(α)を照射するのに用い得る光源としては、例えば、
・波長が400nm以下の光を放射せず、波長430〜500nmの光を放射する光源(好ましくは青色発光ダイオードなど);
・波長が400nm以下の光を放射せず、波長430〜500nmの光を含む光を放射する光源[430〜500nmの波長範囲内の光と共に、500nm以上の波長を有する光、例えば、波長500〜570nmの光(緑色光)、波長530〜590nmの光(黄緑色光)、波長570〜590nmの光(黄色光)、波長590〜620nmの光(橙色光)、波長620〜750nmの光(赤色光)の1種または2種以上を含む光を放射する光源];
・波長が400nm以下の光を含まない白色光を放射する光源(好ましくは白色灯など);
・紫外線および波長430〜500nmの光を含む光を放射する光源(例えば、蛍光灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプなど)と、当該光源から放射される光に含まれる波長が400nm以下の光を除くための紫外線カット手段(例えば、紫外線吸収コーティングを施すかまたは紫外線吸収フィルムを貼付したガラス板、アクリル板、ポリカーボネート板、石英板や、紫外線吸収剤を添加して樹脂組成物を用いて製造した樹脂板などの、波長430〜500nmの光を通し、波長400nm以下の光を吸収する紫外線フィルターなど)を組み合わせたもの;
などを挙げることができる。
光学的立体造形では、力学的特性、寸法安定性、耐熱性、耐擦性、表面硬度、平滑性などを向上させ、表面のべとつきをなくすために、光造形して得られた立体造形物に紫外線の照射および/または加熱処理を施して後硬化することが広く行われているが、紫外線の照射および/または加熱処理を行って後硬化させた光学的立体造形物は、紫外線の照射および/または加熱による後硬化処理を行っていない光学的立体造形物に比べて黄変などの変色の度合が大きいことがある。また、紫外線および/または加熱による後硬化処理を施してない光学的立体造形物であっても、使用した光硬化性樹脂組成物の種類や組成、光硬化性樹脂組成物中に含まれる成分の種類、光造形条件などによって光学的立体造形物に黄変などの変色が生じている場合がある。
そのため、光学的立体造形物に光(α)を照射する本発明の処理方法は、光学的立体造形後に紫外線の照射および/または加熱による後硬化処理を施した黄変などの変色の生じた光学的立体造形物、紫外線の照射や加熱による後硬化処理を施してない黄変などの変色の生じた光学的立体造形物のいずれに対しても有効に実施することができる。
光学的立体造形物への光(α)の照射時間は、光学的立体造形物の変色の度合、光学的立体造形物の表面での光(α)の照射強度、光学的立体造形物のサイズ、形状、光学的立体造形物を形成している樹脂の種類、光学的立体造形物の製造に用いた光硬化性樹脂組成物に含まれる成分の種類や成分組成などによって異なり得るが、430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含み且つ波長が400nm以下の光を含まない光(α)を、光学的立体造形物の表面での波長430〜500nmの光の合計照射強度が本発明で規定している15W/m2以上、好ましくは25W/m2以上、より好ましくは30W/m2以上、更に好ましくは40W/m2以上になるようにして照射すると、通常30分〜8時間程度、特に1時間〜5時間程度の照射で、光学的立体造形物の黄変などの変色を大幅に低減させることができ、それによって無色透明性に優れる光学的立体造形物、また着色剤を使用した光学的立体造形物では着色剤本来の優れた色調を有する光学的立体造形物を得ることができる。
光学的立体造形物に光(α)を照射する際の温度(光学的立体造形物の温度および/または雰囲気温度)は特に制限されないが、一般的には、15〜50℃の雰囲気温度、特に20〜40℃の雰囲気温度で光(α)による照射処理を行うことが、光(α)の照射操作の簡便性、光学的立体造形物における変色の改善効果、熱による光学的立体造形物の変形防止などの点から好ましい。
光学的立体造形に光(α)を照射する処理を、光学的立体造形後に紫外線の照射および/または加熱を行って後硬化処理した光学的立体造形物に対して行う場合には、紫外線の照射および/または加熱による光学的立体造形物の後硬化処理と切り離して光(α)の照射処理を別途行ってもよいし、または紫外線の照射および/または加熱による後硬化処理に引き続いて光(α)の照射処理を行ってもよい。
光(α)の照射処理を行う光学的立体造形物が、光学的立体造形後に紫外線の照射および/または加熱を行って後硬化処理したものである場合は、当該後硬化処理の際の処理方法や条件は、光学的立体造形において従来から採用されている後硬化処理におけるのと同様の方法および条件とすることができる。
限定されるものではないが、例えば、紫外線を照射して後硬化処理を行う場合は、波長400nm以下の光、好ましくは波長340〜380nmの紫外線を用いて、0.5〜10mW/cm2、特に1〜5mW/cm2のエネルギー強度で後硬化処理を行うことができる。
また、加熱して後硬化処理をする場合は、例えば、40〜180℃、好ましくは40〜80℃の加熱温度を採用することができる。
光学的立体造形により得られる光学的立体造形物に紫外線を照射して後硬化処理を行い、それに続いて光(α)を照射する処理を行う場合には、例えば、
(1) 紫外線を含む光を放射する光源(A)、および430〜500nmの範囲内の波長を有する光(青色光)を含み且つ波長が400nm以下の光を含まない光(α)を放射する光源(B)の両方を備える後処理装置を使用し、光硬化性樹脂組成物を用いて光学的立体造形を行って得られる光学的立体造形物に、光源(A)からの光を照射して光学的立体造形物を紫外線で後硬化処理した後に、光源(B)から光(α)を、光学的立体造形物の表面での波長430〜500nmの光の合計照射強度が15W/m2以上となるように照射する方法;
(2) 紫外線および430〜500nmの範囲内の波長を有する光(青色光)を含む光を放射する光源(C)、並びに光源(C)から放射される光から波長が400nm以下の光を除く紫外線カット手段(D)を備える後処理装置を使用し、光硬化性樹脂組成物を用いて光学的立体造形を行って得られる光学的立体造形物に、光源(C)からの光をそのまま照射して光源(C)から放射される光に含まれる紫外線で光学的立体造形物を後硬化処理した後に、光源(C)から放射される光から波長が400nm以下の光を紫外線カット手段(D)によって除いた光を光学的立体造形物の表面での波長430〜500nmの光の合計照射強度が15W/m2以上となるように照射する方法;
などを採用することができる。
上記(1)の方法における光源(A)としては、蛍光灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、紫外線ランプなどを挙げることができる。また、上記(1)の方法における光源(B)としては、波長が400nm以下の光を含まず波長430〜500nmの光を含む光を放射する光源であればいずれも使用でき、例えば青色発光ダイオード、白色ダイオード、青色灯、白色灯、有機ELなどを挙げることができる。
また、上記(2)の方法における光源(C)としては、紫外線および波長430〜500nmの光の両方を含む光を放射する光源であればいずれも使用でき、具体例としては上記した蛍光灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプなどを挙げることができる。
さらに、上記(2)の方法における紫外線カット手段(D)としては、波長430〜500nmの光を遮蔽せず、紫外線を含めて、波長が400nm以下の光を確実に除くことのできる手段であればいずれも使用でき、例えば、上記した紫外線吸収コーティングを施すかまたは紫外線吸収フィルムを貼付したガラス板、アクリル板、ポリカーボネート板、石英板、紫外線吸収剤を添加した樹脂組成物を用いて製造した樹脂板などからなる紫外線吸収フィルターなどを挙げることができる。
本発明の処理方法を施す光学的立体造形物としては、光硬化性樹脂組成物を使用し、当該光硬化性樹脂組成物よりなる造形面に、光を選択的に照射して所定の厚みに光硬化させて所定の形状パターンを有する硬化樹脂層を形成し、その硬化樹脂層の上に更に1層分の光硬化性樹脂組成物を施して造形面を形成させ、その造形面に光を選択的に照射して所定の厚みに光硬化させて所定の形状パターンを有する硬化樹脂層を形成する造形操作を多数回繰り返えして行う光造形方法によって得られる光学的立体造形物、または当該光学的立体造形物を紫外線の照射および/または加熱して後硬化した光学的立体造形物であって、黄変などの変色による色調不良が生じている光学的立体造形物であればいずれでもよい。
本発明の処理を施す光学的立体造形物は、(a)ラジカル重合性有機化合物および光感受性ラジカル重合開始剤を含有する光硬化性樹脂組成物、(b)カチオン重合性有機化合物および光感受性カチオン重合開始剤を含有する光硬化性樹脂組成物、または(c)ラジカル重合性有機化合物、カチオン重合性有機化合物、光感受性ラジカル重合開始剤および光感受性カチオン重合開始剤を含有する光硬化性樹脂組成物のいずれから製造されていてもよい。そのうちでも、光学的立体造形物は、前記(c)の光硬化性樹脂組成物、すなわちラジカル重合性有機化合物、カチオン重合性有機化合物、光感受性ラジカル重合開始剤および光感受性カチオン重合開始剤を含有する光硬化性樹脂組成物を用いて製造されていることが、光学的立体造形物を製造する際の造形速度が速く、しかも光学的立体造形物の力学的特性および造形精度などに優れることから好ましい。
前記(b)および(c)の光硬化性樹脂組成物、特に前記(c)の光硬化性樹脂組成物において、光硬化性樹脂組成物中に含まれるカチオン重合性有機化合物の一部として、オキセタン基を1個有するモノオキセタン化合物およびオキセタン基を2個以上有するポリオキセタン化合物から選ばれる少なくとも1種のオキセタン化合物を含有させると、光硬化性樹脂組成物の光硬化感度が向上すると共に、硬化時の体積収縮率の低減による寸法精度の向上、耐水性および耐湿性の改良による寸法安定性の向上などを図ることができる。
前記(a)および(c)の光硬化性樹脂組成物で用いるラジカル重合性有機化合物としては、光感受性ラジカル重合開始剤の存在下に光を照射したときに重合反応および/または架橋反応を生ずる化合物のいずれもが使用でき、代表例としては、(メタ)アクリレート系化合物、不飽和ポリエステル化合物、アリルウレタン系化合物、ポリチオール化合物などを挙げることができ、前記したラジカル重合性有機化合物の1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、1分子中に少なくとも1個の(メタ)アクリル基を有する化合物が好ましく用いられ、具体例としては、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応生成物、アルコール類の(メタ)アクリル酸エステル、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
上記したエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応生成物としては、芳香族エポキシ化合物、脂環族エポキシ化合物および/または脂肪族エポキシ化合物と、(メタ)アクリル酸との反応により得られる(メタ)アクリレート系反応生成物を挙げることができる。芳香族エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応により得られる(メタ)アクリレート系反応生成物の具体例としては、ビスフェノールAやビスフェノールFなどのビスフェノール化合物またはそのアルキレンオキサイド付加物とエピクロルヒドリンなどのエポキシ化剤との反応によって得られるグリシジルエーテルを、(メタ)アクリル酸と反応させて得られる(メタ)アクリレート、エポキシノボラック樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させて得られる(メタ)アクリレート系反応生成物などを挙げることができる。
また、上記したアルコール類の(メタ)アクリル酸エステルとしては、分子中に少なくとも1個の水酸基をもつ芳香族アルコール、脂肪族アルコール、脂環族アルコールおよび/またはそれらのアルキレンオキサイド付加体と、(メタ)アクリル酸との反応により得られる(メタ)アクリレートを挙げることができる。
より具体的には、例えば、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート[ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなど]、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、前記したジオール、トリオール、テトラオール、ヘキサオールなどの多価アルコールのアルキレンオキシド付加物の(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
そのうちでも、アルコール類の(メタ)アクリレートとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸との反応により得られる1分子中に2個以上の(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
また、前記した(メタ)アクリレート化合物のうちで、メタクリレート化合物よりも、アクリレート化合物が重合速度の点から好ましく用いられる。
また、上記したウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとイソシアネート化合物を反応させて得られる(メタ)アクリレートを挙げることができる。前記水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、脂肪族2価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応によって得られる水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。また、前記イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのような1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物が好ましい。
さらに、上記したポリエステル(メタ)アクリレートとしては、水酸基含有ポリエステルと(メタ)アクリル酸との反応により得られるポリエステル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
また、上記したポリエーテル(メタ)アクリレートとしては、水酸基含有ポリエーテルとアクリル酸との反応により得られるポリエーテルアクリレートを挙げることができる。
上記(b)および(c)の光硬化性樹脂組成物で用い得るカチオン重合性有機化合物としては、例えば、《1》脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、芳香族エポキシ樹脂などのエポキシ化合物;《2》環状エーテルまたは環状アセタール化合物(オキセタン化合物、テトラヒドロフラン、2,3−ジメチルテトラヒドロフランのようなオキソラン化合物、トリオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3,6−トリオキサンシクロオクタンなど);《3》環状ラクトン化合物(β−プロピオラクトン、ε−カプロラクトンなど);《4》チイラン化合物(エチレンスルフィド、チオエピクロロヒドリンなど);《5》チエタン化合物(1,3−プロピンスルフィド、3,3−ジメチルチエタンなど);《6》ビニルエーテル化合物[エチレングリコールジビニルエーテル、アルキルビニルエーテル、3,4−ジヒドロピラン−2−メチル(3,4−ジヒドロピラン−2−カルボキシレート)、トリエチレングリコールジビニルエーテルなど];《7》エポキシ化合物とラクトンとの反応によって得られるスピロオルソエステル化合物;《8》ビニルシクロヘキサン、イソブチレン、ポリブタジエンのようなエチレン性不飽和化合物などを挙げることができる。
上記したうちでも、カチオン重合性有機化合物としては、エポキシ化合物[特に1分子中に2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物(エポキシ樹脂)]が好ましく用いられ、当該エポキシ化合物とオキセタン化合物の併用がより好ましい。特に、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する脂環式ポリエポキシ化合物(脂環族エポキシ樹脂)とオキセタン化合物を併用すると、光硬化性樹脂組成物の粘度が低くなって造形が円滑に行われ、しかもカチオン重合速度、厚膜硬化性、解像度、紫外線透過性などが良好になり、得られる光学的立体造形物の体積収縮率が小さくなる。
上記した脂環族エポキシ樹脂(脂環式ポリエポキシ化合物)としては、少なくとも1個の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル、或いはシクロヘキセンまたはシクロペンテン環含有化合物を過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化して得られるシクロヘキセンオキサイドまたはシクロペンテンオキサイド含有化合物などを挙げることができる。より具体的には、脂環族エポキシ樹脂(脂環式ポリエポキシ化合物)として、例えば、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)などを挙げることができる。
また、上記した脂肪族エポキシ樹脂としては、例えば、脂肪族多価アルコールまたはそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートのホモポリマー、コポリマーなどを挙げることができる。より具体的には、例えば、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステルなどを挙げることができる。
また、上記した芳香族エポキシ樹脂としては、例えば少なくとも1個の芳香核を有する1価または多価フェノール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のモノまたはポリグリシジルエーテルを挙げることができ、具体的には、例えばビスフェノールAやビスフェノールFまたはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、フェノール、クレゾール、ブチルフェノールまたはこれらにアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
また、上記したオキセタン化合物としては、分子中にオキセタン基を1個有するモノオキセタン化合物(OXm)および分子中にオキセタン基を2個以上有するポリオキセタン化合物(OXp)の1種または2種以上を用いることができる。
モノオキセタン化合物(OXm)としては、1分子中にオキセタン基を1個有する化合物であればいずれも使用でき、例えば、トリメチレンオキシド、3,3−ジメチルオキセタン、3,3−ジクロロメチルオキセタン、3−メチル−3−フェノキシメチルオキセタン、分子中にオキセタン基1個とアルコール性水酸基1個を有するモノオキセタンモノアルコールなどを挙げることができ、そのうちでも、反応性、光硬化性樹脂組成物の粘度などの点からモノオキセンタンモノアルコール化合物が好ましく用いられる。
特に、モノオキセタンモノアルコール化合物のうちでも、下記の一般式(I−a)で表されるモノオキセタン化合物(I−a)および下記の一般式(I−b)で表されるモノオキセタン化合物(I−b)から選ばれる少なくとも1種のモノオキセタン化合物が、入手容易性、反応性などの点から好ましく用いられる。特に、モノオキセタン化合物(OXm)として、下記の一般式(I−b)で表されるモノオキセタン化合物(I−b)を用いると、光造形用樹脂組成物およびそれから得られる立体造形物の耐水性がより良好になる。
Figure 0005393239

(式中、R1およびR2は炭素数1〜5のアルキル基、R3はエーテル結合を有していてもよい炭素数2〜10のアルキレン基、qは1〜6の整数を示す。)
上記の一般式(I−a)において、R1の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルを挙げることができる。また、上記の一般式(I−a)において、qは1〜6のうちのいずれでもよいが、1であることが、入手性、反応性の点から好ましい。
モノオキセタン化合物(I−a)の具体例としては、3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−プロピルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−ノルマルブチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−プロピルオキセタンなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、入手の容易性、反応性などの点から、3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタンがより好ましく用いられる。
上記の一般式(I−b)において、R2の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルを挙げることができる。
また、上記の一般式(I−b)において、R3は炭素数2〜10のアルキレン基であれば、鎖状のアルキレン基または分岐したアルキレン基のいずれであってもよく、或いはアルキレン基(アルキレン鎖)の途中にエーテル結合(エーテル系酸素原子)を有する炭素数2〜10の鎖状または分岐状のアルキレン基であってもよい。R3の具体例としては、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、エトキシエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、3−オキシペンチレン基などを挙げることができる。そのうちでも、R3はトリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘプタメチレン基またはエトキシエチレン基であることが、合成の容易性、化合物が常温で液体であり、取り扱い易いなどの点から好ましい。
ポリオキセタン化合物(OXp)としては、オキセタン基を2個以上有する化合物、例えばオキセタン基を2個、3個または4個以上有する化合物のうちのいずれもが使用でき、そのうちでもオキセタン基を2個有するジオキセタン化合物が好ましく用いられる。
特に、ジオキセタン化合物としては、下記の一般式(b);
Figure 0005393239

(式中、2個のR4は互いに同じかまたは異なる炭素数1〜5のアルキル基、R5は芳香環を有しているかまたは有していない2価の有機基、rは0または1を示す。)
で表されるジオキセタン化合物(II)が、入手の容易性、反応性、低吸湿性、得られる硬化物の力学的特性などの点から好ましく用いられる。
上記の一般式(b)において、R4の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルを挙げることができる。また、R5の例としては、炭素数1〜12の直鎖状または分岐状のアルキレン基(例えばエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ネオペンチレン基、n−ペンタメチレン基、n−ヘキサメチレン基など)、式:−CH2−Ph−CH2−または−CH2−Ph−Ph−CH2−で表される2価の基、水素添加ビスフェノールA残基、水素添加ビスフェノールF残基、水素添加ビスフェノールZ残基、シクロヘキサンジメタノール残基、トリシクロデカンジメタノール残基などを挙げることができる。
上記の一般式(II)で表されるジオキセタン化合物(b)の具体例としては、下記の式(II−a)または式(II−b)で表されるジオキセタン化合物を挙げることができる。
Figure 0005393239

(式中、2個のR4は互いに同じか又は異なる炭素数1〜5のアルキル基、R5は芳香環を有しているかまたは有していない2価の有機基を示す。)
上記の式(II−a)で表されるジオキセタン化合物の具体例としては、ビス(3−メチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ビス(3−プロピル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ビス(3−ブチル−3−オキセタニルメチル)エーテルなどを挙げることができる。
また、上記の式(II−b)で表されるジオキセタン化合物の具体例としては、上記の式(II−b)において2個のR4が共にメチル、エチル、プロピル、ブチルまたはペンチル基で、R5がエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ネオペンチレン基、n−ペンタメチレン基、n−ヘキサメチレン基など)、式:−CH2−Ph−CH2−または−CH2−Ph−Ph−CH2−で表される2価の基、水素添加ビスフェノールA残基、水素添加ビスフェノールF残基、水素添加ビスフェノールZ残基、シクロヘキサンジメタノール残基、トリシクロデカンジメタノール残基であるジオキセタン化合物を挙げることができる。
光造形用樹脂組成物は、前記したジオキセタン化合物のうちの1種または2種以上を含有することができる。
そのうちでも、ポリオキセタン化合物(OXp)として、上記の式(II−a)において、2個のR4が共にメチル基またはエチル基であるビス(3−メチル−3−オキセタニルメチル)エーテルおよび/またはビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテルが、入手の容易性、低吸湿性、硬化物の力学的特性などの点から好ましく用いられ、特にビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテルがより好ましく用いられる。
上記(b)および(c)の光硬化性樹脂組成物では、光硬化性樹脂組成物中に含まれるカチオン重合性有機化合物の質量に基づいて、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物(エポキシ樹脂)を30質量%以上、更には40質量%以上、特に50質量%以上の割合で含有することが好ましい。
また、上記(b)および(c)の光硬化性樹脂組成物が、カチオン重合性有機化合物の一部としてオキセタン化合物を含有する場合は、オキセタン化合物の含有量は、カチオン重合性有機化合物の質量に基づいて、1〜70質量%であることが好ましく、1〜60質量%であることがより好ましい。
また、上記(c)の光硬化性樹脂組成物では、ラジカル重合性有機化合物:カチオン重合性有機化合物の含有割合が、質量比で、9:1〜1:9であることが好ましく、8:2〜2:8であることがより好ましい。
上記(a)および(c)の光硬化性樹脂組成物が含有する光感受性ラジカル重合開始剤(以下「光ラジカル重合開始剤」という)としては、光を照射したときにラジカル重合性有機化合物のラジカル重合を開始させ得る重合開始剤のいずれもが使用でき、例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトンなどのフェニルケトン系化合物、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどベンジルまたはそのジアルキルアセタール系化合物、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシメチル−1−フェニルプロパン−1−オン、4′−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、p−アジドベンザルアセトフェノンなどアセトフェノン系化合物、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインノルマルブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインまたはそのアルキルエーテル系化合物、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、ミヒラースケトン、4,4′−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4′−ジクロロベンゾフェノンなどベンゾフェノン系化合物、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンなどチオキサントン系化合物などを挙げることができる。
上記(a)および(c)の光硬化性樹脂組成物は、光硬化性樹脂組成物の質量に基づいて、光ラジカル重合開始剤を0.5〜10質量%の割合で含有することが好ましく、1〜5質量%の割合で含有することがより好ましい。
上記(b)および(c)の光硬化性樹脂組成物が含有する光感受性カチオン重合開始剤(以下「光カチオン重合開始剤」という)としては、光を照射したときにカチオン重合性有機化合物のカチオン重合を開始させ得る重合開始剤のいずれもが使用でき、例えば、テトラフルオロホウ酸トリフェニルフェナシルホスホニウム、ヘキサフルオロアンチモン酸トリフェニルスルホニウム、ビス−[4−(ジフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドビスジヘキサフルオロアンチモネート、ビス−[4−(ジ4’−ヒドロキシエトキシフェニルスルフォニォ)フェニル]スルフィドビスジヘキサフルオロアンチモネート、ビス−[4−(ジフェニルスルフォニォ)フェニル]スルフィドビスジヘキサフルオロフォスフェート、テトラフルオロホウ酸ジフェニルヨードニウムなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
また、反応速度を向上させる目的で、必要に応じて、カチオン重合開始剤と共に光増感剤、例えばベンゾフェノン、ベンゾインアルキルエーテル、チオキサントンなどを用いてもよい。
上記(b)および(c)の光硬化性樹脂組成物は、光硬化性樹脂組成物の質量に基づいて、光カチオン重合開始剤を1〜10質量%の割合で含有することが好ましく、2〜6質量%の割合で含有することがより好ましい。
光学的立体造形物の製造に用いる光造形用樹脂組成物は、必要に応じて、顔料や染料等の着色剤、消泡剤、レベリング剤、増粘剤、難燃剤、酸化防止剤、充填剤(架橋ポリマー粒子、シリカ、ガラス粉、セラミックス粉、金属粉等)、改質用樹脂などの1種または2種以上を適量含有していることができる。
本発明の処理方法の対象である光学的立体造形物は、光造形用樹脂組成物を用いて従来既知の光学的立体造形方法および装置を使用して製造することができる。その際に好ましく採用される光学的立体造形法の代表例としては、液状をなす光硬化性樹脂組成物に所望のパターンを有する硬化層が得られるように光を選択的に照射して硬化層を形成し、次いでこの硬化層に未硬化の液状の光硬化性樹脂組成物を供給し、同様に活性エネルギー線を照射して前記の硬化層と連続した硬化層を新たに形成する積層操作を繰り返すことによって最終的に目的とする立体的造形物を得る方法を挙げることができる。
その際の光としては、紫外線、電子線、X線、放射線、高周波などを挙げることができる。そのうちでも、300〜400nmの波長を有する紫外線が経済的な観点から好ましく用いられ、その際の光源としては、紫外線レーザー(例えば半導体励起固体レーザー、Arレーザー、He−Cdレーザーなど)、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、紫外線LED(発光ダイオード)、紫外線蛍光灯などを使用することができる。
光硬化性樹脂組成物よりなる造形面に光を照射して所定の形状パターンを有する各硬化樹脂層を形成するに当たっては、レーザー光などのような点状に絞られた光を使用して点描または線描方式で硬化樹脂層を形成してもよいし、または液晶シャッターまたはデジタルマイクロミラーシャッター(DMD)などのような微小光シャッターを複数配列して形成した面状描画マスクを通して造形面に光を面状に照射して硬化樹脂層を形成させる造形方式を採用してもよい。
430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含み且つ波長400nm以下の光を含まない光(α)を光学的立体造形物に照射する本発明の処理方法によって、光学的立体造形物に生じていた黄変などの変色が解消または低減して、無色透明性に優れる光学的立体造形物または着色剤を含むものでは着色剤本来の優れた色調を有する光学的立体造形物が簡単に且つ短時間で円滑に得られる理由は明確ではないが、以下のように推測される。
すなわち、光学的立体造形物の黄変などの変色を起こす原因物質として種々のものが考えられるが、ラジカル重合性有機化合物、カチオン重合性有機化合物、光感受性ラジカル重合開始剤、光感受性カチオン重合開始剤として用いられる化合物に、紫外線などを照射すると黄色などに着色した物質に変化する化合物が存在し、光学的立体造形時の紫外線照射によって当該物質が青色領域に吸収を有するために黄変などの変着色を生ずる物質に変化して、光学的立体造形して得られる光学的立体造形物に黄変などの変色が生じ、そのような黄変などの変色を生じた当該光学的立体造形物に対して、430〜500nmの範囲内の波長を有する光(青色光)を含み且つ波長400nm以下の光を含まない光(α)を照射すると、黄変などの変着色の原因物質が青色光を吸収して光分解・光異性化などの反応を起こして、無色の物質に変化し、光学的立体造形物に生じていた黄変などの変色が解消または低減して、無色透明性に優れた光学的立体造形物または着色剤を含むものでは着色剤本来の優れた色調を有する光学的立体造形物になるものと推測される。
その際に、黄変などの変着色の原因の1つとして、ベンゾイル基を有する化合物、芳香族化合物、アクリロイル基を有する化合物などに紫外線が照射されて生成した共役二重結合構造や、ポリマーネットワークに閉じ込められて孤立したラジカル種などが考えられる。
本発明の方法で処理して得られる光学的立体造形物は、種々の分野で幅広く用いることができ、何ら限定されるものではないが、代表的な応用分野としては、設計の途中で外観デザインを検証するための形状確認モデル、部品の機能性をチェックするための機能試験モデル、鋳型を制作するためのマスターモデル、金型を制作するためのマスターモデル、試作金型用の直接型、美術工芸品などとして用いることができる。より具体的には、例えば、精密部品、電気・電子部品、家具、建築構造物、自動車用部品、各種容器類、鋳物などのモデル、母型、加工用のモデル、複雑な熱媒回路の設計用の部品、複雑な構造の熱媒挙動の解析企画用の部品、美術品の復元、模造や現代アート、ガラス張りの建築物のデザインプレゼンテーションモデルのような美術工芸品などの用途に有効に用いることができる。
以下に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は実施例に何ら限定されるものではない。
以下の例において、光硬化性樹脂組成物の粘度、硬化深度(Dp)、臨界硬化エネルギー(Ec)および作業硬化エネルギー(E10)の測定、光造形して得られた光学的立体造形物の力学的特性[引張り特性(引張破断強度、引張破断伸度、引張弾性率)、降伏強度、曲げ特性(曲げ強度、曲げ弾性率)、衝撃強度]、収縮率、硬度、熱変形温度、光学的立体造形物における光を照射されている表面での380〜780nmの波長範囲(可視光域)の光の合計光照射強度Q(以下「可視光の合計照射強度Q」ということがある)、露光装置から放射される光の波長範囲、光学的立体造形物における光を照射されている表面での波長430〜500nmの光の合計照射強度(以下「光(430〜500nm)の合計照射強度」ということがある)並びに光学的立体造形物の黄色度の測定または算出は以下にようにして行った。
(1)光硬化性樹脂組成物の粘度:
光硬化性樹脂組成物を25℃の恒温槽に入れて、光硬化性樹脂組成物の温度を25℃に調節した後、B型粘度計(株式会社東機産業製)を使用して回転速度20rpmで測定した。
(2)光硬化性樹脂組成物の硬化深度(Dp)、臨界硬化エネルギー(Ec)及び作業硬化エネルギー(E10):
非特許文献1に記載されている理論にしたがって測定した。具体的には、光硬化性樹脂組成物よりなる造形面(液面)に、半導体励起固体レーザのレーザ光(波長355nmの紫外光、液面レーザ強度100mW)を、照射スピードを6段階変化(照射エネルギー量を6段階変化)させて照射して光硬化膜を形成させた。生成した光硬化膜を光硬化性樹脂組成物液から取り出して、未硬化樹脂を取り除き、6段階のエネルギーに対応する部分の硬化膜の厚さを定圧のノギスで測定した。光硬化膜の厚さをY軸、照射エネルギー量をX軸(対数軸)としてプロットし、プロットして得られた直線の傾きから硬化深度[Dp(mm)]を求めると共に、X軸の切片を臨界硬化エネルギー[Ec(mJ/cm2)]とし、0.25mmの厚さに硬化させるのに必要な露光エネルギー量を作業硬化エネルギー[(E10/(mJ/cm2)]とした。
(3)光学的立体造形物の引張り特性(引張破断強度、引張破断伸度、引張弾性率):
以下の実施例または比較例で作製した光学的立体造形物(JIS K−7113に準拠したダンベル形状の試験片)[紫外線(高圧水銀灯)(波長365nm;強度30W/m2)を20分間照射して後硬化したもの]を用いて、JIS K−7113にしたがって、試験片の引張破断強度(引張強度)、引張破断伸度(引張伸度)および引張弾性率を測定した。
(4)光学的立体造形物の降伏強度:
上記(3)の引張り特性の試験において、光学的立体造形物が弾性から塑性に移る点における強度を降伏強度とした。
(5)光学的立体造形物の曲げ特性(曲げ強度、曲げ弾性率):
以下の実施例または比較例で作製した光学的立体造形物(JIS K−7171に準拠したバー形状の試験片)[紫外線(高圧水銀灯)(波長365nm;強度30W/m2)を20分間照射して後硬化したもの]を用いて、JIS K−7171にしたがって、試験片の曲げ強度および曲げ弾性率を測定した。
(6)光学的立体造形物の衝撃強度:
以下の実施例または比較例で作製した光学的立体造形物(JIS K−7110に準拠した直方体形状の試験片)[紫外線(高圧水銀灯)(波長365nm;強度30W/m2)を20分間照射して後硬化したもの]を用いて、JIS K−7110にしたがって、試験片のノッチ付きアイゾット衝撃強度を測定した。
(7)収縮率:
光硬化させる前の光硬化性樹脂組成物(液体)の比重(d0)と、光硬化して得られた光硬化物を紫外線(高圧水銀灯)(波長365nm;強度30W/m2)を20分間照射して後硬化したものの比重(d1)から、下記の数式により収縮率を求めた。

収縮率(%)={(d1−d0)/d1}×100
(8)光学的立体造形物の硬度(ショアD硬度):
以下の実施例および比較例で作製した光学的立体造形物(JIS K−7113に準拠したダンベル形状の試験片)[紫外線(高圧水銀灯)(波長365nm;強度30W/m2)を20分間照射して後硬化したもの]の硬さ(ショアD硬度)を、25℃で、高分子計器社製の「アスカーD型硬度計」を使用して、JIS K−6253に準拠してデュロメーター法により測定した。
(9)光学的立体造形物の熱変形温度:
以下の実施例または比較例で作製した光学的立体造形物(JIS K−7171に準拠したバー形状の試験片)[紫外線(高圧水銀灯)(波長365nm;強度30W/m2)を20分間照射して後硬化したもの]を用い、東洋精機社製「HDTテスタ6M−2」を使用して、試験片に1.81MPaの荷重を加えるJIS K−7207(A法)に準拠して、試験片の熱変形温度を測定した。
(10)可視光の合計照射強度Q:
光学的立体造形物(縦×横×厚さ=50mm×30mm×5mmの直方体)[紫外線(高圧水銀灯)(波長365nm;強度30W/m2)を20分間照射して後硬化したもの]を、平らな台上に、縦×横=50mm×30mmの2つの方形表面が上面と下面になるようにして載置し、光学的立体造形物の縦×横=50mm×30mmの方形の上面における対角線のほぼ交点に相当する位置に、放射照度計(鶴賀電気社製「HD2302」)のプローブを取り付け、光学的立体造形物の上方から光学的立体造形物に対して光を照射して光学的立体造形物の光を照射された表面での380〜780nmの波長範囲(可視光域)における合計照射強度Q(W/m2)を測定した。
(11)光(430〜500nm)の合計照射強度:
(11−i) 上記(10)における光学的立体造形物への光照射時に、光スペクトラムアナライザ(安藤電機社製「AQ−6311」)のプローブを、光学的立体造形物の縦×横=50mm×30mmの方形の上面における対角線のほぼ交点に相当する位置に前記した放射照度計(鶴賀電気社製「HD2302」)のプローブと並べて取り付け、光学的立体造形物の光を照射された表面での340〜850nmの波長範囲(可視光域)にわたって、5nm刻みで相対分光強度を測定して、相対分光強度曲線Fを求めた。
(11−ii) 上記(11−i)で求めた相対分光強度曲線Fから、380〜780nmの波長範囲(可視光域)での相対分光強度の積分値LAおよび430〜500nmの波長範囲での相対分光強度の積分値LBをそれぞれ算出し、式:Q×(LB/LA)から、光学的立体造形物の光を照射されている表面での波長430〜500nmの光の合計照射強度(W/m2)を求めた。
(12)光源から放射される光の波長範囲およびピーク強度:
上記(11−i)で求めた相対分光強度曲線Fから、光源から放射される光の波長範囲およびピーク強度を求めた。
(13)黄色度の測定:
下記の実施例および比較例において光学的立体造形を行って得られた光学的立体造形物(縦×横×厚さ=50mm×30mm×5mmの直方体)[紫外線(高圧水銀灯)(波長365nm;強度30W/m2)を20分間照射して後硬化したもの]について、光照射による後処理を施す前の黄色度および所定の時間にわたって光照射による後処理を施した後の黄色度を、直径60mmの積分球を備えた分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製「U−3900H」)に取り付け、板厚5mmの分光透過率を測定し、これにより得られた分光透過率を、当該分光光度計に付属したソフトウェア(UV Solutions)を用いてJIS−K7373に規定された方法で数値計算することによって、補助イルミナントC、視野2度の条件における黄色度を求めた。
《実施例1》
(1)光硬化性樹脂組成物の調製:
(i) 水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル(新日本理化株式会社製「HBE−100」)60質量部、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン(東亞合成株式会社製「OXT−101」)5質量部、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(東亞合成株式会社製「OXT−221」)15質量部、4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(サンアプロ株式会社製「CPI−101A」)(カチオン重合開始剤)4質量部、ジペンタエリスリトールポリアクリレート(新中村化学工業株式会社製「A−9550」)10質量部、ラウリルアクリレート(新中村化学工業株式会社製)6質量部および1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャリティケミカル社製「Irgacure 184」)(ラジカル重合開始剤)3質量部をよく混合して光硬化性樹脂組成物を調製し、これを遮光したタンクに収容した。
(ii) 上記(i)で得られた光硬化性樹脂組成物の粘度を上記した方法で測定したところ、200mPa・sであった。
(iii) 上記(i)で得られた光硬化性樹脂組成物について、その硬化深度(Dp)、臨界硬化エネルギー(Ec)および作業硬化エネルギー(E10)を上記した方法で求めたところ、硬化深度(Dp)=0.2mm、臨界硬化エネルギー(Ec)=22mJ/cm2、および作業硬化エネルギー(E10)=79mJ/cm2であった。
(2)物性測定用の光学的立体造形物の製造:
(i) 上記(1)の(i)で調製した光硬化性樹脂組成物を用いて、超高速光造形システム(ナブテスコ株式会社製「SOLIFORM500B」)を使用して、スペクトラフィジックス社製「半導体励起固体レーザーBL6型」(出力1000mW;波長355nm)を表面に対して垂直に照射して、照射エネルギー100mJ/cm2の条件下に、スライスピッチ(積層厚み)0.10mm、1層当たりの平均造形時間2分で光学的立体造形を行って力学的特性[引張り特性(引張破断強度、引張破断伸度、引張弾性率)、降伏強度、曲げ特性(曲げ強度、曲げ弾性率)、衝撃強度]、収縮率、硬度(ショアD硬度)および熱変形温度を測定するための光学的立体造形物をそれぞれ製造し、得られた光学的立体造形物(試験片)に紫外線(高圧水銀灯)(波長365nm;強度30W/m2)を20分間照射して後硬化した。
(ii) 上記(i)で得られた光学的立体造形物(紫外線で後硬化したもの)を用いて、上記した方法で各種物性を測定したところ、引張破断強度=49MPa、引張破断伸度=6.8%、引張弾性率=1690MPa、降伏強度=43MPa、曲げ強度=65MPa、曲げ弾性率=2010MPa、衝撃強度=1.6kJ/m2、収縮率=5.4%、硬度(ショアD硬度)=84および熱変形温度=50℃であった。
(3)光学的立体造形物の光照射処理:
(i) 上記(1)の(i)で調製した光硬化性樹脂組成物を用いて、上記(2)の(i)と同じ光造形条件を採用して光学的立体造形物(縦×横×厚さ=50mm×30mm×5mmの直方体)を製造し、次いでこの光学的立体造形物に紫外線(高圧水銀灯)(波長365nm;強度30W/m2)を20分間照射して後硬化した。
これにより得られた紫外線による後硬化後の光学的立体造形物は、全体として透明であったが、黄変しており、上記した方法で測定した黄色度は2.9であった。
(ii) 上記(i)で得られた黄変した光学的立体造形物(紫外線照射して後硬化したもの)を、平らな台上に、縦×横=50mm×30mmの2つの方形表面が上面と下面になるようにして載置し、青色光を放射する光源(発光ダイオード)(LEDパラダイス社製「LP−R5B40」、放射光の波長範囲=420〜505nm、ピーク波長=455nm、波長400nm以下の光を放射せず)の100個を方形に集積して各々に15mAを通電したものを用いて、光学的立体造形物の上方から青色光を延べ5時間にわたって照射した。
(iii) 上記(ii)の青色光の照射の際に、光学的立体造形物の表面での380〜780nmの波長範囲(可視光域)における合計照射強度Q(W/m2)を上記した方法で測定すると共に、光学的立体造形物の光を照射されている表面での380〜780nmの波長範囲(可視光域)での相対分光強度の積分値LAおよび430〜500nmの波長範囲での相対分光強度の積分値LBを上記した方法で求めて、式:Q×(LB/LA)から、光学的立体造形物の光を照射されている表面での波長430〜500nmの光の合計照射強度(W/m2)を求めたところ、下記の表1に示すとおりであった。
(iv) また、上記(ii)の青色光の照射の際に、青色光を30分間照射した後、2時間照射した後および5時間照射した後の時点で、光学的立体造形物の黄色度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
《実施例2》
(1) 実施例1の(1)の(i)で調製したのと同じ光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1の上記(2)の(i)と同じ光造形条件を採用して光学的立体造形物(縦×横×厚さ=50mm×30mm×5mmの直方体)を製造し、次いでこの光学的立体造形物に紫外線(高圧水銀灯)(波長365nm;強度30W/m2)を20分間照射して後硬化した。
これにより得られた紫外線による後硬化後の光学的立体造形物は、全体として透明であったが、黄変しており、上記した方法で測定した黄色度は2.7であった。
(2) 上記(1)で得られた黄変した光学的立体造形物(紫外線照射して後硬化したもの)を、平らな台上に、縦×横=50mm×30mmの2つの方形表面が上面と下面になるようにして載置し、青緑光を放射する光源(発光ダイオード)(LEDパラダイス社製「AQ−L5030BGC」、放射光の波長範囲=455〜565nm、ピーク波長=505nm、波長400nm以下の光を放射せず)の100個を方形に集積して各々に15mAを通電したものを用いて、光学的立体造形物の上方から青緑光を延べ5時間にわたって照射した。
(3) 上記(2)の青緑光の照射の際に、光学的立体造形物の表面での380〜780nmの波長範囲(可視光域)における合計照射強度Q(W/m2)を上記した方法で測定すると共に、光学的立体造形物の光を照射されている表面での380〜780nmの波長範囲(可視光域)での相対分光強度の積分値LAおよび430〜500nmの波長範囲での相対分光強度の積分値LBを上記した方法で求めて、式:Q×(LB/LA)から、光学的立体造形物の光を照射されている表面での波長430〜500nmの光の合計照射強度(W/m2)を求めたところ下記の表1に示すとおりであった。
(4) また、上記(2)の青緑光の照射の際に、青緑光を30分間照射した後、2時間照射した後および5時間照射した後の時点で、光学的立体造形物の黄色度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
《実施例3》
(1) 実施例1の(1)の(i)で調製したのと同じ光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1の上記(2)の(i)と同じ光造形条件を採用して光学的立体造形物(縦×横×厚さ=50mm×30mm×5mmの直方体)を製造し、次いでこの光学的立体造形物に紫外線(高圧水銀灯)(波長365nm;強度30W/m2)を20分間照射して後硬化した。
これにより得られた紫外線による後硬化後の光学的立体造形物は、全体として透明であったが、黄変しており、上記した方法で測定した黄色度は2.7であった。
(2) 上記(1)で得られた黄変した光学的立体造形物(紫外線照射して後硬化したもの)を、平らな台上に、縦×横=50mm×30mmの2つの方形表面が上面と下面になるようにして載置し、白色光を放射する光源(発光ダイオード)(LEDパラダイス社製「LP−508H196WC−1」、放射光の波長範囲=415〜740nm、ピーク波長=450nmおよび540nm、波長400nm以下の光を放射せず)の100個を方形に集積して各々に15mAを通電したものを用いて、光学的立体造形物の上方から白色光を延べ5時間にわたって照射した。
(3) 上記(2)の白色光の照射の際に、光学的立体造形物の表面での380〜780nmの波長範囲(可視光域)における合計照射強度Q(W/m2)を上記した方法で測定すると共に、光学的立体造形物の光を照射されている表面での380〜780nmの波長範囲(可視光域)での相対分光強度の積分値LAおよび430〜500nmの波長範囲での相対分光強度の積分値LBを上記した方法で求めて、式:Q×(LB/LA)から、光学的立体造形物の光を照射されている表面での波長430〜500nmの光の合計照射強度(W/m2)を求めたところ、下記の表1に示すとおりであった。
(4) また、上記(2)の青緑光の照射の際に、白色光を30分間照射した後、2時間照射した後および5時間照射した後の時点で、光学的立体造形物の黄色度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
《実施例4》
(1) 実施例1の(1)の(i)で調製したのと同じ光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1の上記(2)の(i)と同じ光造形条件を採用して光学的立体造形物(縦×横×厚さ=50mm×30mm×5mmの直方体)を製造し、次いでこの光学的立体造形物に紫外線(高圧水銀灯)(波長365nm;強度30W/m2)を20分間照射して後硬化した。
これにより得られた紫外線による後硬化後の光学的立体造形物は、全体として透明であったが、黄変しており、上記した方法で測定した黄色度は3.0であった。
(2) 上記(1)で得られた黄変した光学的立体造形物(紫外線照射して後硬化したもの)を、平らな台上に、縦×横=50mm×30mmの2つの方形表面が上面と下面になるようにして載置し、光源としてメタルハライドランプ(ウシオライティング社製「GL−30201BF」、放射光の波長範囲:下限360nmおよび上限780nmを超え、ピーク波長=365nm、405nm、420nm、435nm、545nm、580nm、640nm)を使用し、光源の下方にアクリル製紫外線カット板(三菱レイヨン株式会社製「アクリライトN549」、光源から放射される光に含まれる波長400nm以下の光の除去率=99.92%)を配置して、光学的立体造形物の上方から紫外線をカットした後の光を延べ5時間にわたって照射した。
(3) 上記(2)の光の照射の際に、光学的立体造形物の表面での380〜780nmの波長範囲(可視光域)における合計照射強度Q(W/m2)を上記した方法で測定すると共に、光学的立体造形物の光を照射されている表面での380〜780nmの波長範囲(可視光域)での相対分光強度の積分値LAおよび430〜500nmの波長範囲での相対分光強度の積分値LBを上記した方法で求めて、式:Q×(LB/LA)から、光学的立体造形物の光を照射されている表面での波長430〜500nmの光の合計照射強度(W/m2)を求めたところ、下記の表1に示すとおりであった。
(4) また、上記(2)の光の照射の際に、光を30分間照射した後、2時間照射した後および5時間照射した後の時点で、光学的立体造形物の黄色度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
《比較例1》
(1) 実施例1の(1)の(i)で調製したのと同じ光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1の上記(2)の(i)と同じ光造形条件を採用して光学的立体造形物(縦×横×厚さ=50mm×30mm×5mmの直方体)を製造し、次いでこの光学的立体造形物に紫外線(高圧水銀灯)(波長365nm;強度30W/m2)を20分間照射して後硬化した。
これにより得られた紫外線による後硬化後の光学的立体造形物は、全体として透明であったが、黄変しており、上記した方法で測定した黄色度は2.9であった。
(2) 上記(1)で得られた黄変した光学的立体造形物(紫外線照射して後硬化したもの)を、平らな台上に、縦×横=50mm×30mmの2つの方形表面が上面と下面になるようにして載置し、赤色光を放射する光源(発光ダイオード)(株式会社東芝製「TLRE180AP」、放射光の波長範囲=600〜675nm、ピーク波長=645nm、波長400nm以下の光を放射せず)の100個を方形に集積して各々に15mAを通電したものを用いて、光学的立体造形物の上方から赤色光を延べ5時間にわたって照射した。
(3) 上記(2)の赤色光の照射の際に、光学的立体造形物の表面での380〜780nmの波長範囲(可視光域)における合計照射強度Q(W/m2)を上記した方法で測定すると共に、光学的立体造形物の光を照射されている表面での380〜780nmの波長範囲(可視光域)での相対分光強度の積分値LAおよび430〜500nmの波長範囲での相対分光強度の積分値LBを上記した方法で求めて、式:Q×(LB/LA)から、光学的立体造形物の光を照射されている表面での波長430〜500nmの光の合計照射強度(W/m2)を求めたところ、下記の表2に示すとおりであった。
(4) また、上記(2)の赤色光の照射の際に、赤色光を30分間照射した後、2時間照射した後および5時間照射した後の時点で、光学的立体造形物の黄色度を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
《比較例2》
(1) 実施例1の(1)の(i)で調製したのと同じ光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1の上記(2)の(i)と同じ光造形条件を採用して光学的立体造形物(縦×横×厚さ=50mm×30mm×5mmの直方体)を製造し、次いでこの光学的立体造形物に紫外線(高圧水銀灯)(波長365nm;強度30W/m2)を20分間照射して後硬化した。
これにより得られた紫外線による後硬化後の光学的立体造形物は、全体として透明であったが、黄変しており、上記した方法で測定した黄色度は2.9であった。
(2) 上記(1)で得られた黄変した光学的立体造形物(紫外線照射して後硬化したもの)を、平らな台上に、縦×横=50mm×30mmの2つの方形表面が上面と下面になるようにして載置し、黄緑光を放射する光源(発光ダイオード)(株式会社東芝製「TLGE183P」、放射光の波長範囲=530〜595nm、ピーク波長=570nm、波長400nm以下の光を放射せず)の100個を方形に集積して各々に15mAを通電したものを用いて、光学的立体造形物の上方から黄緑光を延べ5時間にわたって照射した。
(3) 上記(2)の黄緑光の照射の際に、光学的立体造形物の表面での380〜780nmの波長範囲(可視光域)における合計照射強度Q(W/m2)を上記した方法で測定すると共に、光学的立体造形物の光を照射されている表面での380〜780nmの波長範囲(可視光域)での相対分光強度の積分値LAおよび430〜500nmの波長範囲での相対分光強度の積分値LBを上記した方法で求めて、式:Q×(LB/LA)から、光学的立体造形物の光を照射されている表面での波長430〜500nmの光の合計照射強度(W/m2)を求めたところ、下記の表2に示すとおりであった。
(4) また、上記(2)の黄緑光の照射の際に、黄緑光を30分間照射した後、2時間照射した後および5時間照射した後の時点で、光学的立体造形物の黄色度を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
《比較例3》
(1) 実施例1の(1)の(i)で調製したのと同じ光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1の上記(2)の(i)と同じ光造形条件を採用して光学的立体造形物(縦×横×厚さ=50mm×30mm×5mmの直方体)を製造し、次いでこの光学的立体造形物に紫外線(高圧水銀灯)(波長365nm;強度30W/m2)を20分間照射して後硬化した。
これにより得られた紫外線による後硬化後の光学的立体造形物は、全体として透明であったが、黄変しており、上記した方法で測定した黄色度は2.7であった。
(2) 上記(1)で得られた黄変した光学的立体造形物(紫外線照射して後硬化したもの)を、平らな台上に、縦×横=50mm×30mmの2つの方形表面が上面と下面になるようにして載置し、緑色光を放射する光源(発光ダイオード)(豊田合成株式会社製「E1L53−AG0A2−04」、放射光の波長範囲=465〜610nm、ピーク波長=525nm、波長400nm以下の光を放射せず)の100個を方形に集積して各々に15mAを通電したものを用いて、光学的立体造形物の上方から緑色光を延べ5時間にわたって照射した。
(3) 上記(2)の緑色光の照射の際に、光学的立体造形物の表面での380〜780nmの波長範囲(可視光域)における合計照射強度Q(W/m2)を上記した方法で測定すると共に、光学的立体造形物の光を照射されている表面での380〜780nmの波長範囲(可視光域)での相対分光強度の積分値LAおよび430〜500nmの波長範囲での相対分光強度の積分値LBを上記した方法で求めて、式:Q×(LB/LA)から、光学的立体造形物の光を照射されている表面での波長430〜500nmの光の合計照射強度(W/m2)を求めたところ、下記の表2に示すとおりであった。
(4) また、上記(2)の緑色光の照射の際に、赤色光を30分間照射した後、2時間照射した後および5時間照射した後の時点で、光学的立体造形物の黄色度を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
《比較例4》
(1) 実施例1の(1)の(i)で調製したのと同じ光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1の上記(2)の(i)と同じ光造形条件を採用して光学的立体造形物(縦×横×厚さ=50mm×30mm×5mmの直方体)を製造し、次いでこの光学的立体造形物に紫外線(高圧水銀灯)(波長365nm;強度30W/m2)を20分間照射して後硬化した。
これにより得られた紫外線による後硬化後の光学的立体造形物は、全体として透明であったが、黄変しており、上記した方法で測定した黄色度は2.9であった。
(2) 上記(1)で得られた黄変した光学的立体造形物(紫外線照射して後硬化したもの)を、平らな台上に、縦×横=50mm×30mmの2つの方形表面が上面と下面になるようにして載置し、近紫外光を放射する光源(発光ダイオード)(LEDパラダイス社製「LP−R5UV400」、放射光の波長範囲=380〜435nm、ピーク波長=400nm)の100個を方形に集積して各々に15mAを通電したものを用いて、光学的立体造形物の上方から近紫外光を延べ5時間にわたって照射した。
(3) 上記(2)の近紫外光の照射の際に、光学的立体造形物の表面での380〜780nmの波長範囲(可視光域)における合計照射強度Q(W/m2)を上記した方法で測定すると共に、光学的立体造形物の光を照射されている表面での380〜780nmの波長範囲(可視光域)での相対分光強度の積分値LAおよび430〜500nmの波長範囲での相対分光強度の積分値LBを上記した方法で求めて、式:Q×(LB/LA)から、光学的立体造形物の光を照射されている表面での波長430〜500nmの光の合計照射強度(W/m2)を求めたところ、下記の表2に示すとおりであった。
(4) また、上記(2)の近紫外光の照射の際に、近紫外光を30分間照射した後、2時間照射した後および5時間照射した後の時点で、光学的立体造形物の黄色度を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
《比較例5》
(1) 実施例1の(1)の(i)で調製したのと同じ光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1の上記(2)の(i)と同じ光造形条件を採用して光学的立体造形物(縦×横×厚さ=50mm×30mm×5mmの直方体)を製造し、次いでこの光学的立体造形物に紫外線(高圧水銀灯)(波長365nm;強度30W/m2)を20分間照射して後硬化した。
これにより得られた紫外線による後硬化後の光学的立体造形物は、全体として透明であったが、黄変しており、上記した方法で測定した黄色度は2.9であった。
(2) 上記(1)で得られた黄変した光学的立体造形物(紫外線照射して後硬化したもの)を、平らな台上に、縦×横=50mm×30mmの2つの方形表面が上面と下面になるようにして載置し、光源としてメタルハライドランプ(ウシオライテジング社製「GL−30201BF」、放射光の波長範囲=360〜780nm、ピーク波長=365nm、405nm、420nm、435nm、545nm、580nm、640nm、)を使用し、光学的立体造形物の上方から、光源からの光(紫外線を含む光)をそのまま延べ2時間にわたって照射した。
(3) 上記(2)の光の照射の際に、光学的立体造形物の表面での380〜780nmの波長範囲(可視光域)における合計照射強度Q(W/m2)を上記した方法で測定すると共に、光学的立体造形物の光を照射されている表面での380〜780nmの波長範囲(可視光域)での相対分光強度の積分値LAおよび430〜500nmの波長範囲での相対分光強度の積分値LBを上記した方法で求めて、式:Q×(LB/LA)から、光学的立体造形物の光を照射されている表面での波長430〜500nmの光の合計照射強度(W/m2)を求めたところ、下記の表2に示すとおりであった。
(4) また、上記(2)の光の照射の際に、光を30分間照射した後および2時間照射した後の時点で、光学的立体造形物の黄色度を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
Figure 0005393239
Figure 0005393239
上記の表1にみるように、実施例1〜4では、光硬化性樹脂組成物を用いて製造してなる黄変の生じた光学的立体造形物に対して、430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含み且つ波長が400nm以下の光を含まない光を、光学的立体造形物の表面での波長430〜500nmの光の合計照射強度が15W/m2以上となるように照射したことによって、5時間照射後に光学的立体造形物の黄色度がいずれも2.4以下になっていて、黄色度は当初の黄色度の18.5%以上減少した。5時間照射後の実施例1〜4の光学的立体造形物を目視で観察したところ、黄変の割合が極めて低くなっていて無色透明に近いものであった。
それに対して、表2にみるように、比較例1〜3では波長が400nm以下の光(特に紫外線)を含まない光を光学的立体造形物に照射したが、波長430〜500nmの光の合計照射強度が15W/m2未満であったために、5時間照射後の黄色度は当初の約3〜10%しか減少しておらず、黄変の改善効果が極めて小さい。
また、比較例4および5では、波長が400nm以下の光(特に紫外線)を含む照射したことにより、波長430〜500nmの光の合計照射強度の大小に拘わらず、光学的立体造形物の黄色度が照射前よりも大幅に高くなっており、黄変の度合がむしろ大きく増している。
《実施例5》
(1) 実施例1の(1)の(i)で調製したのと同じ光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1の上記(2)の(i)と同じ光造形条件を採用して光学的立体造形物(縦×横×厚さ=50mm×30mm×5mmの直方体)を複数製造し、次いでそれらの光学的立体造形物に紫外線(高圧水銀灯)(波長365nm;強度30W/m2)を20分間照射して後硬化した。
これにより得られた紫外線による後硬化後の光学的立体造形物は、全体として透明であったが、黄変しており、上記した方法で測定した黄色度はいずれも2.9であった。
(2) 上記(1)で得られたそれぞれの光学的立体造形物(紫外線照射して後硬化したもの)に対して、実施例1の(3)で用いたのと同じ青色光を放射する光源(LEDパラダイス社製「LP−R5B40」)の100個を方形に集積して各々に15mAを通電したものを使用して青色光を照射し、その際に、パルス幅変調装置(PWM装置)(Audio−Q社製「AQP−224W−K」、24V用2Aパルス式LED減光キット)と定電圧電源を使用して、光学的立体造形物に照射する青色光の調光(照射強度の変更)を行って、光学的立体造形物の表面での波長430〜500nmの光の合計照射強度を40.8W/m2、15.1W/m2および2.8w/m2に変更して照射実験を実施し、光を30分間照射した後、2時間照射した後および5時間照射した後の時点で、光学的立体造形物の黄色度を上記した方法で測定した。
その結果を、上記した実施例1の結果と併せて下記の表3に示す。
Figure 0005393239
《実施例6》
(1)光硬化性樹脂組成物の調製:
(i) 3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(ダウケミカル社製「UVR−6105」)40質量部、エトキシ化ビスフェノールAジグリシジルエーテル(新日本理化株式会社製「BPO−20E」)20質量部、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン(東亞合成株式会社製「OXT−101」)10質量部、4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(サンアプロ株式会社製「CPI−101A」)(カチオン重合開始剤)4質量部、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(新中村化学工業株式会社製「A−DCP」)10質量部、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(新中村化学工業株式会社製「A−BPE−4)10質量部、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業株式会社製「ATM−4P」)10質量部および1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャリティケミカル社製「Irgacure 184」)(ラジカル重合開始剤)1.5質量部をよく混合して光硬化性樹脂組成物を調製し、これを遮光したタンクに収容した。
これにより得られた光硬化性樹脂組成物の粘度を上記した方法で測定したところ、340mPa・sであった。
(ii) 上記(i)で得られた光硬化性樹脂組成物について、その硬化深度(Dp)、臨界硬化エネルギー(Ec)および作業硬化エネルギー(E10)を上記した方法で求めたところ、硬化深度(Dp)=0.23mm、臨界硬化エネルギー(Ec)=21mJ/cm2、および作業硬化エネルギー(E10)=65mJ/cm2であった。
(2)物性測定用の光学的立体造形物の製造:
(i) 上記(1)の(i)で調製した光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1の(2)の(i)と同様にして光学的立体造形を行って力学的特性[引張り特性(引張破断強度、引張破断伸度、引張弾性率)、降伏強度、曲げ特性(曲げ強度、曲げ弾性率)、衝撃強度]、収縮率、硬度(ショアD硬度)および熱変形温度を測定するための光学的立体造形物をそれぞれ製造し、得られた光学的立体造形物(試験片)に紫外線(高圧水銀灯)(波長365nm;強度30W/m2)を20分間照射して後硬化した。
(ii) 上記(i)で得られた光学的立体造形物(紫外線で後硬化したもの)を用いて、上記した方法で各種物性を測定したところ、引張破断強度=61MPa、引張破断伸度=5.1%、引張弾性率=2050MPa、降伏強度=54MPa、曲げ強度=84MPa、曲げ弾性率=2820MPa、衝撃強度=1.5kJ/m2、収縮率=5.4%、硬度(ショアD硬度)=87および熱変形温度=47℃であった。
(3)光学的立体造形物の光照射処理:
(i) 上記(1)の(i)で調製した光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1の(2)の(i)と同じ光造形条件を採用して光学的立体造形物(縦×横×厚さ=50mm×30mm×5mmの直方体)を製造し、次いでこの光学的立体造形物に紫外線(高圧水銀灯)(波長365nm;強度30W/m2)を20分間照射して後硬化した。
これにより得られた紫外線による後硬化後の光学的立体造形物は、ほぼ透明であったが、黄変しており、上記した方法で測定した黄色度は6.0であった。
(ii) 上記(i)で得られた黄変した光学的立体造形物(紫外線照射して後硬化したもの)を、平らな台上に、縦×横=50mm×30mmの2つの方形表面が上面と下面になるようにして載置し、青色光を放射する実施例1で使用したのと同じ光源(LEDパラダイス社製「LP−R5B40」、放射光の波長範囲=420〜505nm、ピーク波長=455nm、波長400nm以下の光を放射せず)の100個を方形に集積して各々に15mAを通電したものを用いて、光学的立体造形物の上方から青緑光を延べ2時間にわたって照射し、2時間照射した後の時点で、光学的立体造形物の黄色度を上記した方法で測定したところ、下記の表4に示すとおりであった。
その際に、光学的立体造形物の光を照射されている表面における、380〜780nmの波長範囲(可視光域)における合計照射強度Q(W/m2)、380〜780nmの波長範囲(可視光域)での相対分光強度の積分値LAおよび430〜500nmの波長範囲での相対分光強度の積分値LBは、実施例1と同じであった。
《実施例7》
(1)光硬化性樹脂組成物の調製:
(i) 水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル(新日本理化株式会社製「HBE−100」30.75質量部、エトキシ化ビスフェノールAジグリシジルエーテル(新日本理化株式会社製「BPO−20E」)22質量部、4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(サンアプロ株式会社製「CPI−101A」)(カチオン重合開始剤)4質量部、ジペンタエリスリトールポリアクリレート(新中村化学工業株式会社製「A−9550」)8質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製「カヤラドDPHA」)4質量部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャリティケミカル社製「Irgacure 184」)(ラジカル重合開始剤)3質量部、2−メルカプトベンゾチアゾール(東京化成株式会社製)1質量部、プロポキシ化グリセリン(三洋化成株式会社製「GP−400」)9質量部、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバスペシャリティケミカル社製「Irganox 1010」)1.25質量部および蒸留水1質量部をよく混合して光硬化性樹脂組成物を調製し、これを遮光したタンクに収容した。
これにより得られた光硬化性樹脂組成物の粘度を上記した方法で測定したところ、540mPa・sであった。
(ii) 上記(i)で得られた光硬化性樹脂組成物について、その硬化深度(Dp)、臨界硬化エネルギー(Ec)および作業硬化エネルギー(E10)を上記した方法で求めたところ、硬化深度(Dp)=0.07mm、臨界硬化エネルギー(Ec)=14mJ/cm2、および作業硬化エネルギー(E10)=650mJ/cm2であった。
(2)物性測定用の光学的立体造形物の製造:
(i) 上記(1)の(i)で調製した光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1の(2)の(i)と同様にして光学的立体造形を行って力学的特性[引張り特性(引張破断強度、引張破断伸度、引張弾性率)、降伏強度、曲げ特性(曲げ強度、曲げ弾性率)、衝撃強度]、収縮率、硬度(ショアD硬度)および熱変形温度を測定するための光学的立体造形物をそれぞれ製造し、得られた光学的立体造形物(試験片)に紫外線(高圧水銀灯)(波長365nm;強度30W/m2)を20分間照射して後硬化した。
(ii) 上記(i)で得られた光学的立体造形物(紫外線で後硬化したもの)を用いて、上記した方法で各種物性を測定したところ、引張破断強度=26MPa、引張破断伸度=15.2%、引張弾性率=1130MPa、降伏強度=23MPa、曲げ強度=37MPa、曲げ弾性率=1320MPa、衝撃強度=1.6kJ/m2、収縮率=4.8%、硬度(ショアD硬度)=82および熱変形温度=35℃であった。
(3)光学的立体造形物の光照射処理:
(i) 上記(1)の(i)で調製した光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1の(2)の(i)と同じ光造形条件を採用して光学的立体造形物(縦×横×厚さ=50mm×30mm×5mmの直方体)を製造し、次いでこの光学的立体造形物に紫外線(高圧水銀灯)(波長365nm;強度30W/m2)を20分間照射して後硬化した。
これにより得られた紫外線による後硬化後の光学的立体造形物は、ほぼ透明であったが、黄変しており、上記した方法で測定した黄色度は7.0であった。
(ii) 上記(i)で得られた黄変した光学的立体造形物(紫外線照射して後硬化したもの)を、平らな台上に、縦×横=50mm×30mmの2つの方形表面が上面と下面になるようにして載置し、青色光を放射する実施例1で使用したのと同じ光源(LEDパラダイス社製「LP−R5B40」、放射光の波長範囲=420〜505nm、ピーク波長=455nm、波長400nm以下の光を放射せず)の100個を方形に集積して各々に15mAを通電したものを用いて、光学的立体造形物の上方から青緑光を延べ2時間にわたって照射し、2時間照射した後の時点で、光学的立体造形物の黄色度を上記した方法で測定したところ、下記の表4に示すとおりであった。
その際に、光学的立体造形物の光を照射されている表面における、380〜780nmの波長範囲(可視光域)における合計照射強度Q(W/m2)、380〜780nmの波長範囲(可視光域)での相対分光強度の積分値LAおよび430〜500nmの波長範囲での相対分光強度の積分値LBは、実施例1と同じであった。
《実施例8》
(1)光硬化性樹脂組成物の調製:
(i) 水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル(新日本理化株式会社製「HBE−100」50質量部、4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(サンアプロ株式会社製「CPI−200K)(カチオン重合開始剤)4質量部、ジペンタエリスリトールポリアクリレート(新中村化学工業株式会社製「A−9550」)15質量部、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(チバスペシャリティケミカル社製「Darocure 1173」)(ラジカル重合開始剤)2質量部およびシクロヘキサンジメタノール(新日本理化株式会社製「CHDM」)10質量部をよく混合して光硬化性樹脂組成物を調製し、これを遮光したタンクに収容した。
これにより得られた光硬化性樹脂組成物の粘度を上記した方法で測定したところ、352mPa・sであった。
(ii) 上記(i)で得られた光硬化性樹脂組成物について、その硬化深度(Dp)、臨界硬化エネルギー(Ec)および作業硬化エネルギー(E10)を上記した方法で求めたところ、硬化深度(Dp)=0.39mm、臨界硬化エネルギー(Ec)=26mJ/cm2、および作業硬化エネルギー(E10)=50mJ/cm2であった。
(2)光学的立体造形物の光照射処理:
(i) 上記(1)の(i)で調製した光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1の(2)の(i)と同じ光造形条件を採用して光学的立体造形物(縦×横×厚さ=50mm×30mm×5mmの直方体)を製造し、次いでこの光学的立体造形物に紫外線(高圧水銀灯)(波長365nm;強度30W/m2)を20分間照射して後硬化した。
これにより得られた紫外線による後硬化後の光学的立体造形物は、ほぼ透明であったが、黄変しており、上記した方法で測定した黄色度は4.2であった。
(ii) 上記(i)で得られた黄変した光学的立体造形物(紫外線照射して後硬化したもの)を、平らな台上に、縦×横=50mm×30mmの2つの方形表面が上面と下面になるようにして載置し、青色光を放射する実施例1で使用したのと同じ光源(LEDパラダイス社製「LP−R5B40」、放射光の波長範囲=420〜505nm、ピーク波長=455nm、波長400nm以下の光を放射せず)の100個を方形に集積して各々に15mAを通電したものを用いて、光学的立体造形物の上方から青緑光を延べ2時間にわたって照射し、2時間照射した後の時点で、光学的立体造形物の黄色度を上記した方法で測定したところ、下記の表4に示すとおりであった。
その際に、光学的立体造形物の光を照射されている表面における、380〜780nmの波長範囲(可視光域)における合計照射強度Q(W/m2)、380〜780nmの波長範囲(可視光域)での相対分光強度の積分値LAおよび430〜500nmの波長範囲での相対分光強度の積分値LBは、実施例1と同じであった。
《実施例9》
(1)光硬化性樹脂組成物の調製:
(i) 3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(ダウケミカル社製「UVR−6105」)50質量部、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン(東亞合成株式会社製「OXT−101」)50質量部および4−(2−クロロ−4−ベンソイルフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(ADEKA社製「SP−172)(カチオン重合開始剤)3質量部をよく混合して光硬化性樹脂組成物を調製し、これを遮光したタンクに収容した。
これにより得られた光硬化性樹脂組成物の粘度を上記した方法で測定したところ、48mPa・sであった。
(ii) 上記(i)で得られた光硬化性樹脂組成物について、その硬化深度(Dp)、臨界硬化エネルギー(Ec)および作業硬化エネルギー(E10)を上記した方法で求めたところ、硬化深度(Dp)=0.10mm、臨界硬化エネルギー(Ec)=12mJ/cm2、および作業硬化エネルギー(E10)=156mJ/cm2であった。
(2)光学的立体造形物の光照射処理:
(i) 上記(1)の(i)で調製した光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1の(2)の(i)と同じ光造形条件を採用して光学的立体造形物(縦×横×厚さ=50mm×30mm×5mmの直方体)を製造し、次いでこの光学的立体造形物に紫外線(高圧水銀灯)(波長365nm;強度30W/m2)を20分間照射して後硬化した。
これにより得られた紫外線による後硬化後の光学的立体造形物は黄変の度合が大きく、上記した方法で測定した黄色度は35.4であった。
(ii) 上記(i)で得られた黄変した光学的立体造形物(紫外線照射して後硬化したもの)を、平らな台上に、縦×横=50mm×30mmの2つの方形表面が上面と下面になるようにして載置し、青色光を放射する実施例1で使用したのと同じ光源(LEDパラダイス社製「LP−R5B40」、放射光の波長範囲=420〜505nm、ピーク波長=455nm、波長400nm以下の光を放射せず)の100個を方形に集積して各々に15mAを通電したものを用いて、光学的立体造形物の上方から青緑光を延べ2時間にわたって照射し、2時間照射した後の時点で、光学的立体造形物の黄色度を上記した方法で測定したところ、下記の表4に示すとおりであった。
その際に、光学的立体造形物の光を照射されている表面における、380〜780nmの波長範囲(可視光域)における合計照射強度Q(W/m2)、380〜780nmの波長範囲(可視光域)での相対分光強度の積分値LAおよび430〜500nmの波長範囲での相対分光強度の積分値LBは、実施例1と同じであった。
《実施例10》
(1)光硬化性樹脂組成物の調製:
(i) 8官能ウレタンアクリレートメタクリレート(新中村化学工業株式会社製「U8−231」;プロポキシ化ペンタエリスリトール1分子、イソホロンジイソシアネート4分子およびグリセリンアクリレートメタクリレート4分子を反応させたもの)50質量部、アクリロイルモルホリン(新中村化学工業株式会社製「A−MO」)25質量部、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(新中村化学工業株式会社製「A−DCP」)25質量部およびベンジルジメチルケタール(チバスペシャリティケミカル社製「Irgacure 651」)(ラジカル重合開始剤)4質量部をよく混合して光硬化性樹脂組成物を調製し、これを遮光したタンクに収容した。
これにより得られた光硬化性樹脂組成物の粘度を上記した方法で測定したところ、540mPa・sであった。
(ii) 上記(i)で得られた光硬化性樹脂組成物について、その硬化深度(Dp)、臨界硬化エネルギー(Ec)および作業硬化エネルギー(E10)を上記した方法で求めたところ、硬化深度(Dp)=0.13mm、臨界硬化エネルギー(Ec)=2.8mJ/cm2、および作業硬化エネルギー(E10)=19.3mJ/cm2であった。
(2)光学的立体造形物の光照射処理:
(i) 上記(1)の(i)で調製した光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1の(2)の(i)と同じ光造形条件を採用して光学的立体造形物(縦×横×厚さ=50mm×30mm×5mmの直方体)を製造し、次いでこの光学的立体造形物に紫外線(高圧水銀灯)(波長365nm;強度30W/m2)を20分間照射して後硬化した。
これにより得られた紫外線による後硬化後の光学的立体造形物は黄変の度合が大きく、上記した方法で測定した黄色度は9.3であった。
(ii) 上記(i)で得られた黄変した光学的立体造形物(紫外線照射して後硬化したもの)を、平らな台上に、縦×横=50mm×30mmの2つの方形表面が上面と下面になるようにして載置し、青色光を放射する実施例1で使用したのと同じ光源(LEDパラダイス社製「LP−R5B40」、放射光の波長範囲=420〜505nm、ピーク波長=455nm、波長400nm以下の光を放射せず)の100個を方形に集積して各々に15mAを通電したものを用いて、光学的立体造形物の上方から青緑光を延べ2時間にわたって照射し、2時間照射した後の時点で、光学的立体造形物の黄色度を上記した方法で測定したところ、下記の表4に示すとおりであった。
その際に、光学的立体造形物の光を照射されている表面における、380〜780nmの波長範囲(可視光域)における合計照射強度Q(W/m2)、380〜780nmの波長範囲(可視光域)での相対分光強度の積分値LAおよび430〜500nmの波長範囲での相対分光強度の積分値LBは、実施例1と同じであった。
《実施例11》
(1)光硬化性樹脂組成物の調製:
(i) トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製「DCP」)50質量部、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製「BPE−200」)50質量部および1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャリティケミカル社製「Irgacure 184」)(ラジカル重合開始剤)4質量部をよく混合して光硬化性樹脂組成物を調製し、これを遮光したタンクに収容した。
これにより得られた光硬化性樹脂組成物の粘度を上記した方法で測定したところ、320mPa・sであった。
(ii) 上記(i)で得られた光硬化性樹脂組成物について、その硬化深度(Dp)、臨界硬化エネルギー(Ec)および作業硬化エネルギー(E10)を上記した方法で求めたところ、硬化深度(Dp)=0.37mm、臨界硬化エネルギー(Ec)=25mJ/cm2、および作業硬化エネルギー(E10)=49.5mJ/cm2であった。
(2)光学的立体造形物の光照射処理:
(i) 上記(1)の(i)で調製した光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1の(2)の(i)と同じ光造形条件を採用して光学的立体造形物(縦×横×厚さ=50mm×30mm×5mmの直方体)を製造し、次いでこの光学的立体造形物に紫外線(高圧水銀灯)(波長365nm;強度30W/m2)を20分間照射して後硬化した。
これにより得られた紫外線による後硬化後の光学的立体造形物は黄変の度合が大きく、上記した方法で測定した黄色度は61.3であった。
(ii) 上記(i)で得られた黄変した光学的立体造形物(紫外線照射して後硬化したもの)を、平らな台上に、縦×横=50mm×30mmの2つの方形表面が上面と下面になるようにして載置し、青色光を放射する実施例1で使用したのと同じ光源(LEDパラダイス社製「LP−R5B40」、放射光の波長範囲=420〜505nm、ピーク波長=455nm、波長400nm以下の光を放射せず)の100個を方形に集積して各々に15mAを通電したものを用いて、光学的立体造形物の上方から青緑光を延べ2時間にわたって照射し、2時間照射した後の時点で、光学的立体造形物の黄色度を上記した方法で測定したところ、下記の表4に示すとおりであった。
その際に、光学的立体造形物の光を照射されている表面における、380〜780nmの波長範囲(可視光域)における合計照射強度Q(W/m2)、380〜780nmの波長範囲(可視光域)での相対分光強度の積分値LAおよび430〜500nmの波長範囲での相対分光強度の積分値LBは、実施例1と同じであった。
Figure 0005393239
上記の表4の実施例6〜11の結果および上記した表1の実施例1〜4の結果から明らかなように、430〜500nmの範囲内の波長を有する光(青色光)を含み且つ波長が400nm以下の光を含まない光を、光学的立体造形物の表面での波長430〜500nmの光の合計照射強度が15W/m2以上となるように照射して光学的立体造形物の黄変などの変色を低減させる本発明の処理方法は、光学的立体造形物の樹脂の種類や成分など(光学的立体造形物の製造に用いた光硬化性樹脂組成物を構成する成分の種類や成分組成など)が異なっていても有効に実施することができる。
《参考例1》
(1) 実施例1の(1)の(i)で調製したのと同じ光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1の上記(2)の(i)と同じ光造形条件を採用して複数の光学的立体造形物(縦×横×厚さ=50mm×30mm×5mmの直方体)を製造し、次いでこれらの光学的立体造形物に紫外線(高圧水銀灯)(波長365nm;強度30W/m2)を20分間照射して後硬化した。
これにより得られた紫外線による後硬化後の光学的立体造形物は、いずれも、全体として透明であったが、黄変しており、上記した方法で測定した黄色度は2.9であった。
(2)(i) 上記(1)で得られた光学的立体造形物(紫外線照射して後硬化したもの)のうちの1つは、遮光した状態(アルミニウムをラミネートした遮光フイルムで包んだ後に、金属缶に収容)で室温下に2日間保存し、2日後に缶から取り出してその黄色度を上記した方法で測定したところ、下記の表5に示すとおりであった。
(ii) また、上記(1)で得られた光学的立体造形物(紫外線照射して後硬化したもの)のうちの別の1つは、室内(紫外線カット蛍光灯で照明した室内)の中央に、露出状態でそのまま2日間放置し、2日後にその黄色度を上記した方法で測定したところ、下記の表5に示すとおりであった。なお、この上記(ii)の実験では、室内に放置した光学的立体造形物の表面での380〜780nmの波長範囲(可視光域)における合計照射強度Q(W/m2)を上記した方法で測定すると共に、光学的立体造形物の光を照射されている表面での380〜780nmの波長範囲(可視光域)での相対分光強度の積分値LAおよび430〜500nmの波長範囲での相対分光強度の積分値LBを上記した方法で求めて、式:Q×(LB/LA)から、光学的立体造形物の光を照射されている表面での波長430〜500nmの光の合計照射強度(W/m2)を求めたところ、下記の表5に示すとおりであった。
(iii) 更に、上記(1)で得られた光学的立体造形物(紫外線照射して後硬化したもの)のうちの更に別の1つは、透明なガラス越しに太陽光が当たる南向の窓辺に露出した状態で2日間放置し、2日後にその黄色度を上記した方法で測定したところ、下記の表5に示すとおりであった。なお、この(iii)の実験では、窓辺に放置した光学的立体造形物の表面での380〜780nmの波長範囲(可視光域)における合計照射強度Q(W/m2)を上記した方法で測定すると共に、光学的立体造形物の光を照射されている表面での380〜780nmの波長範囲(可視光域)での相対分光強度の積分値LAおよび430〜500nmの波長範囲での相対分光強度の積分値LBを上記した方法で求めて、式:Q×(LB/LA)から、光学的立体造形物の光を照射されている表面での波長430〜500nmの光の合計照射強度(W/m2)を求めたところ、下記の表5に示すとおりであった。
Figure 0005393239
本発明の処理方法による場合は、光学的立体造形物が本来有する力学的特性やその他の物性を良好に維持しながら、光学的立体造形物に生じていた黄変などの変色を、簡単に且つ短時間に速やかに解消または低減して、無色透明性に優れるか、または着色剤を用いたものでは着色剤本来の優れた色調を呈する光学的立体造形物に変えることができ、本発明により得られる光学的立体造形物は、精密部品、電気・電子部品、家具、建築構造物、自動車用部品、各種容器類、鋳物などのモデル、母型などのためのモデル、加工用モデル、複雑な熱媒回路の設計用の部品、複雑な構造の熱媒挙動の解析企画用の部品、美術品の復元、模造や現代アート、ガラス張りの建築物のデザインプレゼンテーションモデルのような美術工芸品などの用途に有効に用いることができる。

Claims (9)

  1. 光硬化性樹脂組成物を用いて光学的立体造形を行って得られる光学的立体造形物に、430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含み且つ波長が400nm以下の光を含まない光を、光学的立体造形物の表面での波長430〜500nmの光の合計照射強度が15W/m2以上となるように照射することを特徴とする、光学的立体造形物の処理方法。
  2. 光学的立体造形物が、光学的立体造形後に紫外線の照射および/または加熱を行って後硬化処理を施した光学的立体造形物であるか、または光学的立体造形後に紫外線の照射および/または加熱による後硬化処理を施さない光学的立体造形物である請求項1に記載の処理方法。
  3. 光学的立体造形物の処理に用いる光が、430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含み且つ波長が400nm以下の光を含まない光を放射する光源から放射された光であるか、または430〜500nmの範囲内の波長を有する光および波長が400nm以下の光を含む光を放射する光源から放射された光から波長が400nm以下の光を除いた光である請求項1または2に記載の処理方法。
  4. 紫外線を含む光を放射する光源(A)、および430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含み且つ波長が400nm以下の光を含まない光を放射する光源(B)を備える後処理装置を使用し、光硬化性樹脂組成物を用いて光学的立体造形を行って得られる光学的立体造形物に、光源(A)からの光を照射して光学的立体造形物を紫外線で後硬化処理した後に、光源(B)からの光を、光学的立体造形物の表面での波長430〜500nmの光の合計照射強度が15W/m2以上となるように照射することを特徴とする、光学的立体造形物の処理方法。
  5. 紫外線および430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含む光を放射する光源(C)、並びに光源(C)から放射される光から紫外線を除去する紫外線カット手段(D)を備える後処理装置を使用し、光硬化性樹脂組成物を用いて光学的立体造形を行って得られる光学的立体造形物に、光源(C)から放射される光をそのまま照射して光源(C)から放射される光に含まれる紫外線で光学的立体造形物を後硬化処理した後に、光源(C)から放射される光から紫外線カット手段(D)によって波長が400nm以下の光除いた光を光学的立体造形物の表面での波長430〜500nmの光の合計照射強度が15W/m2以上となるように照射することを特徴とする、光学的立体造形物の処理方法。
  6. 430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含み且つ波長が400nm以下の光を含まない光を光学的立体造形物に照射する処理が、光学的立体造形物の変色を解消または低減させるための処理である請求項1〜5のいずれか1項に記載の処理方法。
  7. 光学的立体造形物が、ラジカル重合性有機化合物、光感受性ラジカル重合開始剤、カチオン重合性有機化合物および光感受性カチオン重合開始剤を含有する光硬化性樹脂組成物を用いて得られる光学的立体造形物である請求項1〜6のいずれか1項に記載の処理方法。
  8. 紫外線を含む光を放射する光源(A)、および430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含み且つ波長が400nm以下の光を含まない光を放射する光源(B)を備えることを特徴とする、請求項4の処理方法で用いるための光学的立体造形物の処理装置。
  9. 紫外線および430〜500nmの範囲内の波長を有する光を含む光を放射する光源(C)、並びに光源(C)から放射される光から波長が400nm以下の光を除く紫外線カット手段(D)を備えることを特徴とする、請求項5の処理方法で用いるための光学的立体造形物の処理装置。
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