JP5393119B2 - 幹細胞の褐色脂肪細胞への分化誘導方法 - Google Patents

幹細胞の褐色脂肪細胞への分化誘導方法 Download PDF

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Description

本発明は、哺乳動物の幹細胞を、褐色脂肪細胞へと選択的に分化誘導する方法に関する。
脂肪組織は、生体に存在する重要な臓器の一つであり、白色脂肪組織と褐色脂肪組織の2つのタイプに大別される。白色脂肪組織は、エネルギーを中性脂質として細胞内に貯蓄する白色脂肪細胞から構成されており、生体内の余剰エネルギーを蓄える働きがある。また、この細胞は、運動や飢餓時等、生体がエネルギーを必要とする際に、蓄積した中性脂質を遊離脂肪酸へと分解し、ミトコンドリアに存在する電子伝達系を介してアデノシン3リン酸(ATP)を合成することで、エネルギーを生体へ補給する役割を担っている。
一方、褐色脂肪細胞も、白色脂肪細胞と同様に細胞内に中性脂質を貯蓄するが、ミトコンドリア脱共役タンパク質1(uncoupling protein−1:以降、UCP1と略す)の働きにより、電子伝達系におけるATP合成を経ずに、中性脂質を熱へと変換し、直接的にエネルギーを消費させる役割を担っている。
したがって、生体内において、白色脂肪細胞がエネルギーを貯蔵及び必要時に補給し、これに対して、褐色脂肪細胞が、熱産生によりエネルギーを消費することで、バランスを調節していることになる(非特許文献1〜3)。
審良 静男,医学のあゆみ,1998,184,513−517 斉藤 昌之,肥満の科学,第124回日本医学会シンポジウム,62−70 香川 靖雄,医学のあゆみ,1998,184,529−533
近年の研究成果から、これら白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞の役割のバランス異常によって生じる脂肪の蓄積が、肥満やメタボリックシンドロームの発症に密接に関与していることが明らかとなっている(非特許文献4、5)。特に、過剰に摂取したエネルギーが白色脂肪組織に貯蓄されることによって肥満が生じ、これがメタボリックシンドローム発症の主な原因と考えられており、これを解消するにはエネルギーを効率的に消費する必要がある。
青木茂久ら、日本臨床、2006、64巻、増刊9、175−179 小川佳宏ら、実験医学、2007、25、増刊15、54−60
したがって、このような肥満やメタボリックシンドロームなどの疾患の予防や治療には、生体内でエネルギーを過剰に貯蔵する白色脂肪細胞を減らし、エネルギーの消費を行う褐色脂肪細胞を増加させることが必要であり、これら細胞のバランスをいかに制御するかが課題である。特に、褐色脂肪細胞の働きは重要であり、この細胞を生体内で効率よく増加させる技術の開発は、今後の肥満やメタボリックシンドロームの改善において、直接的に応用できる可能性がある。
現在までに、いくつかの脂肪細胞への分化誘導技術が、特許として開示されている。しかし、ほとんどが白色脂肪細胞への分化誘導技術であり、褐色脂肪細胞をターゲットにした、分化誘導技術及びその分化誘導剤に関するものでは無い(特許文献1〜3)。その他、褐色脂肪細胞への分化誘導方法に関しては、いくつか報告がみられるが、いずれも、遺伝子導入や直接的に生体から分離する方法など、操作が複雑で、汎用性に欠けるものである。
特開2000−157260 特開2005−328806 特開2006−199647
例えば、褐色脂肪細胞への分化を誘導する試みとしては、白色脂肪の前駆脂肪細胞へ、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体γ(PPARγ)コアクチベーター−1α(PGC−1α)や、レチノブラストーマタンパク質(Rb)の遺伝子を導入し、強制的に高発現させることにより、褐色脂肪細胞マーカーであるUCP1の発現を促したり(非特許文献6、7)、また、寒冷環境下でマウスを飼育し、さらにβ3アドレナリン受容体のリガンドを投与することで、マウスの白色脂肪組織中にUCP1タンパク質を発現する褐色脂肪細胞を誘導できると報告されている(非特許文献8、9)。
Claire G.T.,et al.,J Biol Cem,2003,278,33370−33376 Jacob B.H.,et al.,PNAS,2004,101,4112−4117 Young P,et al.,FEBS Lett,1984,167,10−14 Nagase I,et al.,J.Clin Invest,1996,97,2898−2904
以上の方法は、遺伝子導入など複雑な技法を用い、強制的に遺伝子を発現させること、また、その分化誘導効率が低いことから、褐色脂肪細胞への分化誘導方法としては、決して満足いくものではなかった。
また、褐色脂肪細胞が成熟するには、UCP1遺伝子の発現とともに、その他の因子としてPPARγ、PGC−1α、レチノイドX受容体(RXR)や甲状腺ホルモン受容体(TR)など、多くの因子が複雑に協調し合い、進行すると考えられている(非特許文献10〜13)。
Jacob B.H.,et al.,Biochem. J.,2006,398,153−168 Takeshi I.,PNAS,2004,101,4543−4547 Anthony S,et al.,Cell Metabolism,2005,2,283−295 Rosa A.,et al.,Biochem. J.,2000,345,91−97
また、近年の報告から、生体内には、幹細胞と呼ばれる未分化な細胞が存在し、様々な細胞へと分化する能力を持った細胞であることが報告されており、褐色脂肪細胞も、幹細胞から、分化すると考えられる(非特許文献14)。
Puiqserver P,et al.,Endocr. Rev.,2003,24,78−90
しかしながら、幹細胞から褐色脂肪細胞への分化においては、どのような因子が分化誘導過程に重要であるかは未だ不明であり、また、それを培養レベルで制御し、最終的に褐色脂肪細胞へと分化誘導する方法については確立されていない。また、分化誘導に関わる多くの因子の中で、どれが最も重要であり、また、その組み合わせや、具体的な方法に関しては解明されていないのが現状である。
この褐色脂肪細胞への分化誘導が、培養レベルあるいは生体レベルで制御することが可能となれば、脂肪細胞の分化異常又はエネルギー代謝異常に起因する、肥満やメタボリックシンドロームなどの疾病の予防、改善に大きく貢献できると考えられているが、未だ、このような技術の開発は進んでいなかった。
かかる状況に鑑み、本発明は、上記のような従来技術における問題点を解決し、哺乳動物の幹細胞から、効率よく選択的に褐色脂肪細胞へ分化誘導する方法を提供することを目的とする。
このような事情により、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、幹細胞を培養する過程で、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体α(PPARα)、PPARγ、PPARδ、レチノイドX受容体(RXR)、レチノイン酸受容体(RAR)、甲状腺ホルモン受容体(TR)のリガンドを1種又は2種類以上組み合わせて添加することにより、褐色脂肪細胞へと選択的に分化誘導する技術を見出した。このことから、これらリガンドを組み合わせることで、効率よく、培養レベルまたは生体レベルで褐色脂肪細胞の分化誘導を促進させることで、褐色脂肪細胞によるエネルギー消費を促す技術として、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)
ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体α(PPARα)、PPARγ、PPARδ、レチノイドX受容体(RXR)、レチノイン酸受容体(RAR)、甲状腺ホルモン受容体(TR)のリガンドから1種又は2種以上選択されるリガンドの存在下で幹細胞を分化誘導培養することを特徴とする褐色脂肪細胞。
(2)
PPARαのリガンドとしては、遊離脂肪酸、ロイコトリエンB4、フェノフィブラート(Ff)、クロフィブラート(Cf)、GW7647、WY14643(WY)から選択され、PPARγのリガンドとしては、トログリタゾン(Tg)、ピオグリタゾン(Pg)、シグリタゾン(Cg)、GW1929、nTZDpa、プロスタグランジンJ2(PGJ)、15−デオキシ−Δ12,14−プロスタグランジンJ(15d−PGJ)から選択され、PPARδのリガンドとしては、GW0742、L−165041(L16)から選択され、RXRのリガンドとしては、ドコサヘキサエン酸(DHA)、9−シスレチノイン酸(9RA)、有機スズ化合物から選択され、RARのリガンドとしては、全トランスレチノイン酸(tRA)、RR110から選択され、TRのリガンドとしては、トリヨードサイロニン(T3)、サイロキシン(T4)から選択されることを特徴とする(1)記載の褐色脂肪細胞。
(3)
ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体γ(PPARγ)のリガンド及びレチノイドX受容体(RXR)のリガンド存在下で幹細胞を分化誘導培養することを特徴とする褐色脂肪細胞。
(4)
ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体α(PPARα)のリガンド、PPARγのリガンド、レチノイドX受容体(RXR)のリガンド及び甲状腺ホルモン受容体(TR)のリガンド存在下で幹細胞を分化誘導培養することを特徴とする褐色脂肪細胞。
(5)
ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体α(PPARα)、PPARγ、PPARδ、レチノイドX受容体(RXR)、レチノイン酸受容体(RAR)、甲状腺ホルモン受容体(TR)のリガンドから1種又は2種以上選択されるリガンドの存在下で幹細胞を分化誘導培養することを特徴とする褐色脂肪細胞の製造方法。
(6)
(1)〜(4)いずれか一項に記載の褐色脂肪細胞を含有することを特徴とする、メタボリックシンドローム及び/又は肥満に対する予防又は改善剤。
(7)
(1)〜(4)のいずれか一項に記載の褐色脂肪細胞を成体に移植することを特徴とする、メタボリックシンドローム及び/又は肥満を予防及び/又は改善する方法。
(8)
ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体α(PPARα)、PPARγ、PPARδ、レチノイドX受容体(RXR)、レチノイン酸受容体(RAR)、甲状腺ホルモン受容体(TR)のリガンドから1種又は2種以上選択されるリガンドを含有することを特徴とする幹細胞の褐色脂肪細胞への分化誘導促進剤。
(9)
(8)に記載の分化誘導剤を成体に投与することを特徴とする、メタボリックシンドローム及び/又は肥満を予防及び/又は改善する方法。
以下に、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明で用いることのできる幹細胞は、本発明の目的に沿うものであれば、胚性の幹細胞(ES細胞)、もしくは、骨髄、血液、皮膚、脂肪、脳、肝臓、膵臓、腎臓、筋肉やその他の組織に存在する、未分化な状態の細胞(総称して、体性幹細胞と記す)、さらには遺伝子導入などにより人工的に作製された幹細胞を示しており、また、これら幹細胞は、初代培養細胞、継代培養細胞、凍結細胞いずれであってもよい。しかし、好ましくは、骨髄、血液、皮膚、脂肪組織由来の幹細胞を用いることができる。また、哺乳動物における、分化の方向性、および、分化の過程等について同等の特性を持っていれば、全ての哺乳動物に応用が可能である。例えば、ヒト、サル、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ等の哺乳動物から得られた当該細胞を用いることができる。
これら哺乳動物から得られた幹細胞について、以下の褐色脂肪細胞分化誘導培地を用いて分化誘導を行うが、限定されるものではない。
褐色脂肪細胞分化誘導培地は、細胞の生存増殖に必要な成分(無機塩、炭水化物、ホルモン、必須アミノ酸、非必須アミノ酸、ビタミン)を含む基本培地(例えば、Dulbeco‘s Modifide Eagle Medium(D−MEM),Minimum Essential Medium(MEM),RPMI1640,Basal Medium Eagle(BME),Dulbeco‘s Modifide Eagle Medium:Nutrient Mixture F−12(D−MEM/F−12),Glasgow Minimum Essential Medium(Glasgow MEM))に、脂肪細胞分化誘導因子として、デキサメタゾン(DEX)、イソブチルメチルキサンチン(IBMX)、インドメタシン(IDM)、インスリン(Ins)、ビオチンの1種以上を添加し、さらに、PPARα、PPARγ、PPARδ、RXR、TRのリガンドを1種又は2種以上添加する。また、必要に応じて、抗生物質を添加してもよい。
PPARαのリガンドとしては、遊離脂肪酸、ロイコトリエンB4、フェノフィブラート(Ff)、クロフィブラート(Cf)、GW7647、WY14643(WY)、イコサペント酸エチル、TAK−559、GW1536が挙げられ、同等の特性を持っていれば、本発明への応用が可能であるが、遊離脂肪酸、ロイコトリエンB4、フェノフィブラート(Ff)、クロフィブラート(Cf)、GW7647、WY14643(WY)が好ましい。
PPARγのリガンドとしては、トログリタゾン(Tg)、ピオグリタゾン(Pg)、シグリタゾン(Cg)、GW1929、nTZDpa、プロスタグランジンJ2(PGJ)、15−デオキシ−Δ12,14−プロスタグランジンJ(15d−PGJ)、エイコサペンタエン酸(EPA)、9−ヒドロキシオクタデカジエン酸(9HODE)、13−ヒドロキシオクタデカジエン酸(13−HODE)が挙げられ、同等の特性を持っていれば、本発明への応用が可能であるが、中でもトログリタゾン(Tg)、ピオグリタゾン(Pg)、シグリタゾン(Cg)、GW1929、nTZDpa、プロスタグランジンJ2(PGJ)、15−デオキシ−Δ12,14−プロスタグランジンJ(15d−PGJ)が好ましい。
PPARδのリガンドとしては、GW0742、L−165041(L16)、GW2433、GW2331が挙げられ、同等の特性を持っていれば、本発明への応用が可能であるが、GW0742、L−165041(L16)が好ましい。
RXRのリガンドとしては、ドコサヘキサエン酸(DHA)、9−シスレチノイン酸(9RA)、有機スズ化合物、GW0791、AGN−194204が挙げられ、同等の特性を持っていれば、本発明への応用が可能であるが、ドコサヘキサエン酸(DHA)、9−シスレチノイン酸(9RA)、有機スズ化合物が好ましい。
RARのリガンドとしては、全トランスレチノイン酸(tRA)、RR110、ノニルフェノール、オクチルフェノールが挙げられ、同等の特性を持っていれば、本発明への応用が可能であるが、全トランスレチノイン酸(tRA)、RR110が好ましい。
TRのリガンドとしては、トリヨードサイロニン(T3)、サイロキシン(T4)、ビスフェノールA酢酸、トリヨードサイロプロピオン酸、トリヨードサイロ酢酸が挙げられ、同等の特性を持っていれば、本発明への応用が可能であるが、トリヨードサイロニン(T3)、サイロキシン(T4)が好ましい。
上記ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体α(PPARα)、PPARγ、PPARδ、レチノイドX受容体(RXR)、レチノイン酸受容体(RAR)、甲状腺ホルモン受容体(TR)のリガンドは、単独でも幹細胞の褐色脂肪細胞への分化誘導効果を発揮するが、より好ましくは2種以上を組み合わせることでより高い効果を発揮し、その組み合わせとしては、PPARγのリガンド及びRXRのリガンドが好ましく、PPARαのリガンド、PPARγのリガンド、RXRのリガンド及びTRのリガンドが最も好ましい。
また、上記培養液には、1〜20%の含有率で血清が含まれることが好ましい。しかし、血清はロットの違いにより成分が異なり、その効果にバラツキがあるため、ロットチェックを行った後に使用することが好ましい。
以上の培地により、37℃、5%炭酸ガスの環境下で、培養を行い、1〜3日毎の培地交換を行うことが好ましい。この方法により、効率よく幹細胞から褐色脂肪細胞への分化誘導を促進させることができる。
また、幹細胞から分化誘導した褐色脂肪細胞の成体への移植方法としては、生理食塩水や培養液に褐色脂肪細胞を1×10〜1×10個/mLとなるように調整し、腹腔内や皮下などへ注射やカテーテルなどにより局所注入することができる。
本発明の幹細胞の褐色脂肪細胞への分化誘導剤は、多様な形態を取ることが出来、腸溶性コーティングされた組成物、徐放性組成物又は持効性組成物、溶液である組成物、局所用組成物、吸入剤である組成物などが挙げられるが、限定されるものではない。分化誘導剤の投与方法としては、経口投与、非経口投与、粘膜投与、局所投与などがあり、非経口である場合、皮下、静脈内、皮内、腹腔内へ投与できる。
本発明は、哺乳動物の骨髄、血液、脂肪または皮膚組織をはじめとする生体組織における幹細胞又は、胚性の幹細胞を用いて、選択的に褐色脂肪細胞へと分化誘導する方法及びその分化誘導剤を提供することができる。また、本発明により、生体における脂肪細胞や褐色脂肪細胞の分化異常に起因する肥満やメタボリックシンドロームなどの疾病の予防及び/又は改善が可能であると期待される。
以下、次に本発明を詳細に説明するため、具体的且つ詳細な実施例を挙げるが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
以下の方法で遠心分離法により分離した骨髄、血液、脂肪または皮膚組織由来幹細胞、胚性の幹細胞、株化細胞を、下記の褐色脂肪細胞の分化誘導方法を用いて培養し、褐色脂肪細胞特異的マーカーである脱共役タンパク質1(uncoupling protein−1:UCP1)の発現について、下記の方法にて評価した。
培養液1の調製(細胞増殖用培地)
細胞増殖用培養液として、D−MEM(Gibco)に、ウシ胎児血清(FBS、10%)、10UのESGRO(CHEMICON)、100unit/mLのペニシリン(シグマ)と100μg/mLのストレプトマイシン(ベーリンガー)を添加した培養液を用いた(以降、培養液1と記す)。
培養液2の調製(褐色脂肪細胞分化誘導培地1)
褐色脂肪細胞分化誘導培地として、D−MEM(Gibco)に、ウシ胎児血清(FBS、10%)、100unit/mLのペニシリン(シグマ)と100μg/mLのストレプトマイシン(ベーリンガー)、1μMのデキサメタゾン(DEX、Sigma)、0.5mMのイソブチルメチルキサンチン(IBMX、Sigma)、0.2mMのインドメタシン(IDM、Sigma)、10μg/mLのインスリン(Ins、Sigma)、33μMのビオチン(Sigma)を添加した培養液を用いた(以降、培養液2と記す)。
培養液3の調製(褐色脂肪細胞分化誘導培地2)
褐色脂肪細胞分化促進培地として、D−MEM(Gibco)に、ウシ胎児血清(FBS、10%)、100unit/mLのペニシリン(シグマ)と100μg/mLのストレプトマイシン(ベーリンガー)、10μg/mLのインスリン(Ins、Sigma)、33μMのビオチン(Sigma)を添加した培養液を用いた(以降、培養液3と記す)。
骨髄由来幹細胞の準備
ICRマウス(雄性、4週齢)の大腿骨を無菌的に摘出し、周囲の結合組織を出来る限り除去した後、両骨端を骨尖刃刀にて切り落とした。その後、25G針付の注射筒を一方の骨端に突き刺し、PBS(−)を注入し骨髄を50mL容の遠沈管(Falcon製)に押し出した。セルストレーナー(Falcon製)を通しながら別の50mL容の遠沈管に移し、遠心分離した。上清を除去し、新たに培養液2を加えて細胞を分散させ洗浄した。この洗浄操作を2回繰り返した。洗浄後、遠心分離法により幹細胞を分離し、褐色脂肪細胞への分化誘導に用いた。
血液由来幹細胞の準備
ICRマウス(雄性、4週齢)から採血し、赤血球用血液(ミルティニーバイオ製)にて7分間処理を行った。その後、遠心分離し、上清を除去した後、新たに培養液2を加えて細胞を分散させ洗浄した。この洗浄操作を2回繰り返した。洗浄後、遠心分離法により幹細胞を分離し、褐色脂肪細胞への分化誘導に用いた。
皮膚由来幹細胞の準備
ICRマウス(雄性、4週齢)を刈毛処理した後、皮膚組織をそれぞれ別々に無菌的に摘出し、PBS(−)で3回洗浄した後、直径6cmの組織培養ディッシュ(Falcon製)に移した。それぞれの組織を、尖刃刀により約2mm角に細切し、0.2%コラゲナーゼ溶液(新田ゼラチン製)を加え、プラスチックディッシュを上下左右に揺らして溶液中に拡散させた。これらを、37℃で30分間インキュベートすることで細胞外マトリックスを消化した後、穏やかにピペッティングし細胞を分散させた。この細胞分散液を50mL容の遠沈管(Falcon製)にセルストレーナー(Falcon製)を通しながら移した。さらに、培養液1を適量添加し、よくピペッティングした後、5分間遠心分離した。遠心後、上清画分を除去し、新たに培養液1を加えて細胞を分散させ洗浄した。この洗浄操作を2回繰り返した。洗浄後、遠心分離法により幹細胞を分離し、褐色脂肪細胞への分化誘導に用いた。
脂肪由来幹細胞の準備
ICRマウス(雄性、4週齢)を刈毛処理した後、腹部皮下脂肪組織をそれぞれ別々に無菌的に摘出し、PBS(−)で3回洗浄した後、直径6cmの組織培養ディッシュ(Falcon製)に移した。それぞれの組織を、尖刃刀により約2mm角に細切し、0.2%コラゲナーゼ溶液(新田ゼラチン製)を加え、プラスチックディッシュを上下左右に揺らして溶液中に拡散させた。これらを、37℃で30分間インキュベートすることで細胞外マトリックスを消化した後、穏やかにピペッティングし細胞を分散さ せた。この細胞分散液を50mL容の遠沈管(Falcon製)にセルストレーナー(Falcon製)を通しながら移した。さらに、培養液1を適量添加し、よくピペッティングした後、5分間遠心分離した。遠心後、上清画分を除去し、新たに培養液1を加えて細胞を分散させ洗浄した。この洗浄操作を2回繰り返した。洗浄後、遠心分離法により幹細胞を分離し、褐色脂肪細胞への分化誘導に用いた。
マウス胚性幹細胞(ES細胞)の準備
ES細胞(コスモバイオ社製)は、ES細胞用培養液(コスモバイオ社製)を用い、シャーレ上で培養して増殖させ、その後、トリプシン処理にてシャーレから剥離し、遠心分離法によりES細胞を分離し、褐色脂肪細胞への分化誘導に用いた。
各幹細胞の褐色脂肪細胞への分化誘導方法
上記の方法にて骨髄、血液、皮膚及び脂肪組織から得られた幹細胞、また、ES細胞を、最初に、それぞれ準備した細胞を培養液1を用いて培養した。具体的には、まず、培養液1に各細胞を懸濁し、組織培養用24穴プレートに播種し、5%CO、37℃のインキュベーター内でコンフルエントになるまで培養した。コンフルエントな状態を確認後、次に、培養液1を培養液2に交換し、各リガンドを添加して、14日間培養した。この時、3日間おきに、新しい培養液2に交換した。
本発明で添加したリガンドの選択
本発明で使用する分化誘導剤であるPPARα、PPARγ、PPARδ、RXR、RAR、TRのリガンドには、以下に示すようなものがあり、前記各幹細胞の分化誘導にはこれらリガンドを1種類又は2種類以上組み合わせて培養液に添加した。
具体的には、分化誘導剤は、PPARαのリガンドとして、遊離脂肪酸、ロイコトリエンB4、フェノフィブラート(Ff)、クロフィブラート(Cf)、GW7647、WY14643(WY)、PPARγのリガンドとして、トログリタゾン(Tg)、ピオグリタゾン(Pg)、シグリタゾン(Cg)、GW1929、nTZDpa、プロスタグランジンJ2(PGJ)、15−デオキシ−Δ12,14−プロスタグランジンJ(15d−PGJ)、PPARδのリガンドとして、GW0742、L−165041(L16)、RXRのリガンドとして、ドコサヘキサエン酸(DHA)、9−シスレチノイン酸(9RA)、有機スズ化合物、RARのリガンドとして、全トランスレチノイン酸(tRA)、RR110、TRのリガンドとして、トリヨードサイロニン(T3)、サイロキシン(T4)から選択され、1種類又は2種類以上組み合わせて使用した。
本実施例では、以下のリガンドを選択し、その結果について示すが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
・PPARαのリガンドとしては、WY14643(WY)を選択し、培養液2及び3中に、最終濃度が1μMとなるように添加した。
・PPARγのリガンドとしては、トログリタゾン(Tg)を選択し、培養液2及び3中に、最終濃度が1μMとなるように、添加した。
・PPARδのリガンドとしては、L−165041(L16)を選択し、培養液2及び3中に、最終濃度が1μMとなるように添加した。
・RXRのリガンドとしては、9−シスレチノイン酸(9RA)を選択し、培養液2及び3中に、最終濃度が1μMとなるように添加した。
・RARのリガンドとしては、全トランスレチノイン酸(tRA)を選択し、培養液2及び3中に、最終濃度が1μMとなるように添加した。
・TRのリガンドとしては、トリヨードサイロニン(T3)を選択し、培養液2及び3中に、最終濃度が1μMとなるように添加した。
比較対照として添加したリガンド
本発明に用いたリガンドの比較対照として、幹細胞の分化に大きく関与する因子と考えられているc−Kit受容体のリガンドであるStem Cell Factor(SCF)を前記の分化誘導方法と同様にして、培養液2及び3中に、最終濃度が1μMとなるように添加し、評価した。
成熟した褐色脂肪細胞(陽性対照細胞)の準備
本実施例では、成熟した褐色脂肪細胞を調製し、幹細胞から分化誘導した褐色脂肪細胞に対する陽性対照細胞として用いた。具体的には、ICRマウス(雄性、4週齢)より、肩甲骨上の褐色脂肪組織を無菌的に摘出し、PBS(−)で3回洗浄した後、直径6cmの組織培養ディッシュ(Falcon製)に移した。組織を尖刃刀により約2mm角に細切し、0.2%コラゲナーゼ溶液(新田ゼラチン製)を加え、プラスチックディッシュを上下左右に揺らして溶液中に拡散させた。これを、37℃で30分間インキュベートすることで細胞外マトリックスを消化した後、穏やかにピペッティングし細胞を分散させた。この細胞分散液を50mL容の遠沈管(Falcon製)にセルストレーナー(Falcon製)を通しながら移した。さらに、PBS(−)を適量添加し、よくピペッティングした後、5分間遠心分離した。遠心後、上清画分を除去し、新たにPBS(−)を加えて細胞を分散させ洗浄した。この洗浄操作を2回繰り返した。洗浄後、遠心分離法により得た細胞を、前記と同様の分化誘導方法で培養し、成熟した褐色脂肪細胞(陽性対照細胞)を得た。
UCP1遺伝子発現を指標とした幹細胞から褐色脂肪細胞への分化誘導効率の評価方法
前記の方法にて、幹細胞から褐色脂肪細胞へ分化誘導させた細胞と、成熟した褐色脂肪細胞(陽性対照細胞)を比較し、本発明により分化誘導させた褐色脂肪細胞への分化誘導効率を確認した。具体的には、褐色脂肪細胞の特異的マーカーである脱共役タンパク質1(uncoupling protein−1、UCP1)の発現を以下の方法にて評価した。
本実施例により幹細胞から褐色脂肪細胞への分化誘導を完了した細胞を、PBS(−)にて2回洗浄し、Trizol Reagent(Invitrogen)によって細胞からRNAを抽出した。2−STEPリアルタイムPCRキット(Applied Biosystems)を用いて、RNAをcDNAに逆転写後、ABI7300(Applied Biosystems)により、リアルタイムPCRを実施した。UCP1遺伝子のプライマーとしては、5’GCAGCCTACAGAGGTCGTGAA3’(配列番号1)及び5’GGGTTTGATCCCATGCAGAT3’(配列番号2)を用いた。また、内部標準として使用したグリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)のプライマーとしては、5’TGCACCACCAACTGCTTAGC3’(配列番号3)及び5’TCTTCTGGGTGGCAGTGATG3’(配列番号4)を用いた。各細胞の褐色脂肪細胞への分化誘導効率については、リガンドを添加せずに分化誘導した細胞におけるUCP1遺伝子相対発現量(UCP1遺伝子の発現量/GAPDH発現量)の値を1.0とし、これに対し、リガンドを添加して分化誘導した各細胞におけるUCP1遺伝子相対発現量の値を算出し、評価した。脂肪由来幹細胞から分化誘導した結果を表1〜3に示した。なお、表の欄外に参考データとして成熟した褐色脂肪細胞(陽性対照細胞)のUCP1遺伝子の相対発現量を示した(完全に褐色脂肪細胞へ分化誘導した場合のUCP1遺伝子の相対発現量)。
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以上の表1〜3より、脂肪由来幹細胞において、リガンド未添加の場合と比較し、PPARα、PPARγ、PPARδ、RXR、RAR、TRのリガンドである、WY、Tg、L16、9RA、tRA、T3を添加することにより、UCP1遺伝子の相対発現量が増加することを確認した。さらに、2種以上リガンドを組み合わせて添加することにより、UCP1遺伝子の相対発現量がさらに増加した。一方、比較対照として用いたc−KitのリガンドであるSCFを添加しても、UCP1遺伝子の発現は増加しなかった。
その他、PPARαのリガンドとして、遊離脂肪酸、ロイコトリエンB4、フェノフィブラート(Ff)、クロフィブラート(Cf)、GW7647、PPARγのリガンドとして、ピオグリタゾン(Pg)、シグリタゾン(Cg)、GW1929、nTZDpa、プロスタグランジンJ2(PGJ)、15−デオキシ−Δ12,14−プロスタグランジンJ(15d−PGJ)、PPARδのリガンドとして、GW0742、RXRのリガンドとして、ドコサヘキサエン酸(DHA)、有機スズ化合物、RARのリガンドとして、RR110、TRのリガンドとして、サイロキシン(T4)についても、同様の試験を実施した結果、UCP1遺伝子の相対発現量は、同様に増加することを確認した。
また、脂肪由来幹細胞以外の幹細胞(骨髄由来幹細胞、血液由来幹細胞、皮膚由来幹細胞、ES細胞)においても、同様の試験を実施した結果、UCP1遺伝子の相対発現量は、同様に増加することを確認した。
メタボリックシンドローム及び肥満の改善効果の評価
実施例1で用いた分化誘導剤を用いて、メタボリックシンドローム及び肥満の改善効果を確認した。実験には肥満マウス(Yellow KKマウス、雌性、4週齢)を1群6匹として使用した。市販の飼料(オリエンタル酵母工業製:マウス・ラット飼育用−MF)を用いて飼育し、腹腔内及び鼠径部の皮下に、分化誘導剤として選択した各リガンドを4週間投与した。コントロール群(陰性対照)には、同量の生理食塩水を投与した。投与開始28日目に、精巣周囲の内臓脂肪組織及び鼠径部の皮下脂肪組織を摘出した後、重量を測定し、メタボリックシンドローム及び肥満の改善効果を評価した。
本発明で投与したリガンドの選択
本発明で使用する分化誘導剤であるPPARα、PPARγ、PPARδ、RXR、RAR、TRのリガンドには、以下に示すようなものがあり、前記各幹細胞の分化誘導にはこれらリガンドを1種類又は2種類以上組み合わせて、マウスの皮下脂肪組織に直接注射により投与した。
具体的には、分化誘導剤は、PPARαのリガンドとして、遊離脂肪酸、ロイコトリエンB4、フェノフィブラート(Ff)、クロフィブラート(Cf)、GW7647、WY14643(WY)、PPARγのリガンドとして、トログリタゾン(Tg)、ピオグリタゾン(Pg)、シグリタゾン(Cg)、GW1929、nTZDpa、プロスタグランジンJ2(PGJ)、15−デオキシ−Δ12,14−プロスタグランジンJ(15d−PGJ)、PPARδのリガンドとして、GW0742、L−165041(L16)、RXRのリガンドとして、ドコサヘキサエン酸(DHA)、9−シスレチノイン酸(9RA)、有機スズ化合物、RARのリガンドとして、全トランスレチノイン酸(tRA)、RR110、TRのリガンドとして、トリヨードサイロニン(T3)、サイロキシン(T4)から選択され、1種類又は2種類以上組み合わせて使用した。
本実施例では、以下のリガンドを選択し、その結果について示すが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
・PPARαのリガンドとしては、WY14643(WY)を選択し、生理食塩水に溶解して最終濃度が0.1 mg/kgとなるように投与した。
・PPARγのリガンドとしては、トログリタゾン(Tg)を選択し、生理食塩水に溶解して最終濃度が0.1 mg/kgとなるように投与した。
・PPARδのリガンドとしては、L−165041(L16)を選択し、生理食塩水に溶解して最終濃度が0.1 mg/kgとなるように投与した。
・RXRのリガンドとしては、9−シスレチノイン酸(9RA)を選択し、生理食塩水に溶解して最終濃度が0.1 mg/kgとなるように投与した。
・RARのリガンドとしては、全トランスレチノイン酸(tRA)を選択し、生理食塩水に溶解して最終濃度が0.1 mg/kgとなるように投与した。
・TRのリガンドとしては、トリヨードサイロニン(T3)を選択し、生理食塩水に溶解して最終濃度が0.1 mg/kgとなるように投与した。
比較対照として投与したリガンド
本発明で用いたリガンドの比較対照として、幹細胞の分化に大きく関与する因子と考えられているc−Kit受容体のリガンドであるStem Cell Factor(SCF)を生理食塩水に溶解し、前記の投与方法と同様にして、最終濃度が0.1 mg/kgとなるように投与し、評価した。
メタボリックシンドロームの改善効果の評価基準
メタボリックシンドロームの改善効果については、内臓脂肪組織重量を指標とした。メタボリックシンドロームの改善効果の評価基準として、内臓脂肪組織の重量が、それぞれコントロール群に対して、95〜100%に減少した場合を−、90〜95%に減少した場合を+、80〜90%に減少した場合を++、70〜80%に減少した場合を+++、60〜70%に減少した場合を++++、60%未満に減少した場合を+++++として、結果を表4〜6に示した。
肥満の改善効果の評価基準
肥満改善効果については、皮下脂肪組織重量を指標とした。肥満の改善効果の評価基準として、皮下脂肪組織の重量が、それぞれコントロール群に対して、95〜100%に減少した場合を−、90〜95%に減少した場合を+、80〜90%に減少した場合を++、70〜80%に減少した場合を+++、60〜70%に減少した場合を++++、60%未満に減少した場合を+++++として、結果を表4〜6に示した。
Figure 0005393119
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以上の表4〜6の結果より、マウスに生理食塩水を投与した場合と比較し、PPARα、PPARγ、PPARδ、RXR、RAR、TRのリガンドである、WY、Tg、L16、9RA、tR、T3を投与することにより、内臓脂肪及び皮下脂肪組織重量が減少することを確認した。さらに、2種以上投与することにより、内臓脂肪及び皮下脂肪重量がさらに減少した。一方、比較対照として用いたc−KitのリガンドであるSCFを投与しても、内臓脂肪及び皮下脂肪組織重量は減少しなかった。
その他、PPARαのリガンドとして、遊離脂肪酸、ロイコトリエンB4、フェノフィブラート(Ff)、クロフィブラート(Cf)、GW7647、PPARγのリガンドとして、ピオグリタゾン(Pg)、シグリタゾン(Cg)、GW1929、nTZDpa、プロスタグランジンJ2(PGJ)、15−デオキシ−Δ12,14−プロスタグランジンJ(15d−PGJ)、PPARδのリガンドとして、GW0742、RXRのリガンドとして、ドコサヘキサエン酸(DHA)、有機スズ化合物、RARのリガンドとして、RR110、TRのリガンドとして、サイロキシン(T4)についても、同様の試験を実施した結果、内臓脂肪及び皮下脂肪組織重量は、同様に減少することを確認した。
移植によるメタボリックシンドローム及び肥満の改善効果の評価
実施例1で示した、脂肪由来幹細胞から分化誘導した褐色脂肪細胞を移植することで、メタボリックシンドローム及び肥満の改善効果を確認した。実験にはヌードマウス(雄性、4週齢)を1群6匹として使用した。市販の飼料(オリエンタル酵母工業製:マウス・ラット飼育用−MF)を用いて飼育し、腹腔内及び鼠径部の皮下に、各リガンドを添加して幹細胞から分化誘導した褐色脂肪細胞を1×10個/匹となるように移植した。コントロール群(陰性対照)としては、生理食塩水を投与した。投与14日後に、精巣周囲の内臓脂肪組織及び鼠径部の皮下脂肪組織を摘出した後、重量を測定し、メタボリックシンドローム及び肥満の改善効果を評価した。
メタボリックシンドロームの改善効果の評価基準
メタボリックシンドロームの改善効果については、内臓脂肪組織重量を指標とした。メタボリックシンドロームの改善効果の評価基準として、内臓脂肪組織の重量が、それぞれコントロール群に対して、95〜100%に減少した場合を−、90〜95%に減少した場合を+、80〜90%に減少した場合を++、70〜80%に減少した場合を+++、60〜70%に減少した場合を++++、60%未満に減少した場合を+++++として、結果を表7〜9に示した。
肥満の改善効果の評価基準
肥満改善効果については、皮下脂肪組織重量を指標とした。肥満の改善効果の評価基準として、皮下脂肪組織の重量が、それぞれコントロール群に対して、95〜100%に減少した場合を−、90〜95%に減少した場合を+、80〜90%に減少した場合を++、70〜80%に減少した場合を+++、60〜70%に減少した場合を++++、60%未満に減少した場合を+++++として、結果を表7〜9に示した。
Figure 0005393119
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以上の表7〜9の結果より、コントロール(生理食塩水)に比べ、PPARα、PPARγ、PPARδ、RXR、RAR、TRのリガンドである、WY、Tg、L16、9RA、tR、T3を添加して培養し、分化誘導した褐色脂肪細胞を移植することにより、内臓脂肪及び皮下脂肪組織重量が減少することを確認した。さらに、2種以上添加して培養し、分化誘導した褐色脂肪細胞を移植することにより、内臓脂肪及び皮下脂肪重量がさらに減少した。一方、比較対照として用いたc−KitのリガンドであるSCFを添加して培養した細胞を移植しても、内臓脂肪及び皮下脂肪組織重量は減少しなかった。
その他、PPARαのリガンドとして、遊離脂肪酸、ロイコトリエンB4、フェノフィブラート(Ff)、クロフィブラート(Cf)、GW7647、PPARγのリガンドとして、ピオグリタゾン(Pg)、シグリタゾン(Cg)、GW1929、nTZDpa、プロスタグランジンJ2(PGJ)、15−デオキシ−Δ12,14−プロスタグランジンJ(15d−PGJ)、PPARδのリガンドとして、GW0742、RXRのリガンドとして、ドコサヘキサエン酸(DHA)、有機スズ化合物、RARのリガンドとして、RR110、TRのリガンドとして、サイロキシン(T4)についても、同様の試験を実施した結果、内臓脂肪及び皮下脂肪組織重量は、同様に減少することを確認した。
また、脂肪由来幹細胞以外の幹細胞(骨髄由来幹細胞、血液由来幹細胞、皮膚由来幹細胞、ES細胞)から分化誘導した褐色脂肪細胞を移植した場合も、内臓脂肪及び皮下脂肪組織の重量がともに低下することを確認した。
以上の結果から、骨髄由来幹細胞、血液由来幹細胞、皮膚由来幹細胞、脂肪由来幹細胞、ES細胞から褐色脂肪細胞へ分化誘導する過程で分化誘導剤としてPPARα、PPARγ、PPARδ、RXR、RAR、TRのリガンドより1種類を選択したものを培養液中に添加することで、褐色脂肪細胞特異的遺伝子であるUCP1遺伝子の発現が増加し、幹細胞から褐色脂肪細胞への分化誘導が促進されることを明らかとした。また、これらリガンドから2種類以上を選択し組み合わせたものを培養液中に添加することで、より顕著な褐色脂肪細胞への分化誘導促進効果が得られ、幹細胞から褐色脂肪細胞への分化誘導効率が飛躍的に向上することを見出した。
また、PPARα、PPARδ、PPARγ、RXR、RAR、TRのリガンドを腹腔内または皮下脂肪組織に投与することにより、内臓脂肪、皮下脂肪組織ともに重量が低下し、メタボリックシンドロームの改善や肥満の改善効果を示すことを明らかとした。さらに、この場合、これらリガンドから2種類以上を選択して投与することで、より顕著なメタボリックシンドロームや肥満の改善効果が得られることを見出した。
次に、PPARα、PPARγ、PPARδ、RXR、RAR、TRのリガンドを添加して幹細胞から分化誘導した褐色脂肪細胞を、腹腔内または皮下脂肪組織に直接移植することにより、エネルギーの消費が促進され、内臓脂肪、皮下脂肪組織ともに重量が低下し、メタボリックシンドロームの改善や肥満の改善効果を示すことを明らかとした。また、これらリガンドから2種類以上を選択して、幹細胞から褐色脂肪細胞を製造することで、より顕著なメタボリックシンドロームや肥満の改善効果が得られることを見出した。
故に本発明は、今後のメタボリックシンドローム及び肥満の治療又は予防改善において、大きく貢献できるものと考える。
本発明の活用例として、メタボリックシンドローム及び肥満の治療又は予防改善への応用が期待される。例えば、本発明により骨髄、血液、皮膚および脂肪組織の幹細胞、ES細胞から分化誘導した褐色脂肪細胞を用いれば、幹細胞から褐色脂肪細胞へ分化機構の解明やそれを制御する素材のスクリーニング、さらには褐色脂肪細胞のエネルギー消費を制御する素材のスクリーニングなどが可能となる。
また、本発明の褐色脂肪細胞への分化誘導剤は、優れたメタボリックシンドローム及び肥満の改善効果を発揮する。よって、メタボリックシンドロームや肥満等の予防・改善を目的とする医薬品、医薬部外品、食品及び化粧品等に有用である。さらに、本発明の幹細胞から分化誘導した褐色脂肪細胞を直接成体に移植した場合にも、優れたメタボリックシンドローム及び肥満の改善効果を発揮する。よって、メタボリックシンドロームや肥満等の予防や改善を目的とする美容又は医療技術に有用である。
本発明は、従来の遺伝子導入等の複雑な技術を必要とせず、分化誘導剤を用いるだけで幹細胞から効率的に褐色脂肪細胞へ分化誘導する技術であり、これにより得られた褐色脂肪細胞や分化誘導に用いた分化誘導剤は、今後のメタボリックシンドローム及び肥満の治療又は予防改善技術への応用が可能である。

Claims (4)

  1. ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体α(PPARα)、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体γ(PPARγ)、レチノイドX受容体(RXR)、および甲状腺ホルモン受容体(TR)のリガンドを含有することを特徴とする、幹細胞の褐色脂肪細胞への分化誘導促進剤。
  2. ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体α(PPARα)、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体γ(PPARγ)、レチノイドX受容体(RXR)、および甲状腺ホルモン受容体(TR)のリガンドの存在下で幹細胞を分化誘導培養することを特徴とする、褐色脂肪細胞の製造方法。
  3. ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体α(PPARα)、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体γ(PPARγ)、レチノイドX受容体(RXR)、および甲状腺ホルモン受容体(TR)のリガンドの存在下で幹細胞を分化誘導培養した褐色脂肪細胞を含有することを特徴とする、メタボリックシンドローム及び/又は肥満に対する予防又は改善剤。
  4. ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体α(PPARα)、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体γ(PPARγ)、レチノイドX受容体(RXR)、および甲状腺ホルモン受容体(TR)のリガンドを含有することを特徴とする、局所投与用のメタボリックシンドローム及び/又は肥満に対する予防又は改善剤。
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