JP5392377B2 - 肌装着用シートおよびその装着方法 - Google Patents
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Description
(1)親水性短繊維層と極細繊維層を含む伸縮性の積層シートに、該積層シート100質量部に対して100〜1500質量部の薬液又は化粧料が含浸されてなる湿潤シートであって、該湿潤シートの少なくとも一方向における10%伸長モジュラス強度が0.1〜4.0N/25mmの範囲であり、同方向における30%伸長時の伸長回復率が30〜100%の範囲である肌装着用シートを、肌に装着後に、該肌装着用シートの伸縮性によって縮もうとする力が作用するように、肌に装着することを特徴とする、肌装着用シートの装着方法。
(2)肌に装着後に、肌装着用シートの縮もうとする力によって肌が引っ張られることに起因する引き締め感を生じる、前記(1)記載の肌装着用シートの装着方法。
(3)肌装着用シートを、顔に装着することを特徴とする、前記(1)または前記(2)記載の肌装着用シートの装着方法。
(4)前記(1)〜(3)のいずれか1に記載の装着方法を含む、肌装着用シートの使用方法。
(5)肌装着用シートを、美容シート、肌パック用シート、または、フェイスマスクに用いる、前記(4)記載の肌装着用シートの使用方法。
(6)前記(1)〜(3)のいずれか1に記載の装着方法に用いられる、肌装着用シート。
(7)前記(4)または前記(5)記載の使用方法に用いられる、肌装着用シート。
また、本発明の肌装着用シートの構成によれば、親水性繊維層と極細繊維層とが、例えば、部分的に熱圧着されて一体化していることで、耐層間剥離性等の積層シートに求められる強度を充分に担保でき、よって、特に、この積層シートに薬液や化粧料が含浸された肌装着用シートとしての優れた伸縮性の発現を可能とする。また、液体成分が肌等の対象物にもたらす効能や効果を効率よく高めることを可能とする。
本発明の肌装着用シートは、例えば美容シート、肌パック用シート、フェイスマスク、絆創膏、湿布材、プラスター材などとして好適に用いることができる。
本発明の肌装着用シートは、親水性繊維層と極細繊維層を含む積層シートである。
本発明で用いる親水性繊維層としては、少なくとも1方向に伸長性を有する親水性短繊維層または親水性長繊維層が好適に用いられる。さらに好ましく用いられる繊維層としては、短繊維が一方向に配列してなるカードウェブ、短繊維がランダムに集積しているエアレイウェブや湿式抄紙ウェブ、及び、これらの繊維をニードルパンチやスパンレース(水流交絡)等によって三次元交絡させて得られる不織布などを挙げることができる。肌装着用シートの装着感や装着安定性の点で好ましいのは、湿式抄紙ウェブまたはスパンレース不織布である。特に、短繊維が一方向に配列してなるカードウェブに水流交絡処理を行って当該繊維を三次元交絡させて得られたスパンレース不織布は、特に、エラストマー繊維を含む極細繊維層と積層して薬液や化粧料を含浸して得られる肌装着用シートへ好適な伸縮性を担保し、肌への優れた装着感と装着安定性をもたらす。
本発明において、親水性繊維層が、長繊維や連続繊維で構成されていると、繊維間相互の干渉や絡まり等により繊維個々の自由度が阻害されやすく、一体化される極細繊維層中に特にエラストマー繊維が含まれる場合において、その伸縮性に追随可能な程度の伸長性を呈し難くなる場合がある。親水性繊維層が短繊維で構成されていることにより、繊維相互の干渉は軽減され、繊維個々の自由度は高まりやすい。その結果、親水性繊維層が、極細繊維層の伸縮性を積層シートに充分反映させることができる程度の追随性(伸長性)を奏することが容易となるのである。
積層シートへの薬液又は化粧料の保持能や浸透速度を高める目的においては、親水性繊維層が、これら親水性繊維、特に、これら親水性短繊維のみで構成されていることが好ましい。積層シートにおける薬液又は化粧料の保持能と積層シートへの浸透速度を適宜効率的に調整する目的等において、親水性繊維層に、その質量基準で、70%を超えない範囲で前記親水性繊維以外の繊維を混合してもよい。そのように混合する繊維としては、ポリエステル、ポリオレフィン、もしくは、ポリアミドなどを用いて得られた繊維、または、これらを2種類以上組み合わせた複合繊維などの、撥水性の合成繊維を例示することができる。
また、親水性繊維層の乾燥状態での伸度は、肌装着用シートの好適な伸縮性を担保するうえで、20〜250%であることが好ましく、更に好ましくは20〜200%の範囲である。
本発明で使用する極細繊維層は、特にエラストマー繊維を含むのが好ましい。特に、繊維径が15μm以下のエラストマー繊維が好ましく、10μm以下のエラストマー長繊維を含むのがより好ましい。エラストマー長繊維の繊維径が10μm以下であると、その極細繊維層を含む肌装着用シートはより柔軟性を帯びたものとなり、肌等への装着感がより優れたものとなる。
2種以上のエラストマー繊維の混合物としては、例えば、1〜99質量%のスチレン系エラストマー繊維と、99〜1質量%のオレフィン系エラストマー繊維との混合、1〜99質量%のウレタン系エラストマー繊維と、99〜1質量%のオレフィン系エラストマー繊維との混合物などを挙げることができる。これら混合するエラストマー繊維の種類や量比によって、肌装着用シートの柔軟性や伸縮性に伴う装着感、及び、伸縮性等に伴う装着安定性を、比較的高い水準において、所望の範囲に調整することが可能となる。
スチレン系エラストマー繊維は、一般に、柔軟性に優れるが、やや粘着性が高いことから、含浸させる液体成分や、装着される肌等の部位によっては、肌等への密着性が強すぎると感じる場合がある。また、スチレン系エラストマー繊維は、伸縮性が十分に高いことから、肌へ装着後のシートの縮みに追随して肌等が引っ張られることによるツッパリ感を生じさせ、含浸させる液体量や装着する肌の部位によっては、心地よい装着感が得られにくくなる場合もある。そこへオレフィン系エラストマー繊維を上記範囲内の特定の比率で混合することによって、敏感・繊細な肌の装着部位に、優しい、極めて心地良い装着感を付与することが可能となる。
「繊維径が15μm以下のエラストマー長繊維」以外の繊維としては、繊維径が15μmを超えて50μm以下であるエラストマー繊維や、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミドなどの非エラストマー繊維を挙げることができる。「繊維径が15μm以下のエラストマー長繊維」に、繊維径が1〜15μmの非エラストマー繊維を1〜50質量%の割合で併用することは、前記のように異種のエラストマー繊維を特定割合で混合する場合ほどには繊細ではないものの、得られる肌装着用シートの柔軟性や伸縮性に伴う装着感や装着安定性を適宜効率的に調整するうえで有効である。併用する繊維径が1〜15μmの非エラストマー繊維としては、ポリエステルテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン6、ナイロン66などの各繊維を例示することができる。
極細繊維層の親水性が、親水性繊維層の親水性より高くはならないという条件のもと、極細繊維層を構成する繊維の少なくとも一部が親水性を有する繊維であることを排除しない。使用できる親水性を有する繊維としては、コットン、麻等のセルロース繊維、ウール、シルク、レーヨン、キュプラ、及び、セルロースなどを用いて得られる半合成繊維、ならびに、合成繊維に親水化処理を施したものなどを例示できる。
エラストマー長繊維は、メルトブロー法で製造された長繊維であることが好ましく、極細繊維層は、メルトブロー法で製造されてランダムに集積してなる繊維径15μm以下のエラストマー長繊維を含んでいるのが好ましい。繊維層の製造工程で発生する繊維の帯電による不具合を防止するために繊維表面に界面活性剤を付着させて行う一般の製造法に比べ、メルトブロー法は、その製造法ゆえに、界面活性剤の付着を必要としない。このため、メルトブロー法を採用することによって、極細繊維層に好適に用いられる撥水性の繊維を効率良く製造することが可能となる。
極細繊維層が、0〜10質量%の非エラストマー長繊維と、100〜90質量%のエラストマー長繊維を含む場合、特に、エラストマー長繊維のみで構成されて当該エラストマー長繊維が2種以上のエラストマー長繊維の混合繊維である場合、また特に、30〜70質量%のスチレン系エラストマー長繊維と、70〜30質量%のオレフィン系エラストマー長繊維との混合繊維である場合には、それら2種以上の繊維を、上記混繊用ノズルを用いてメルトブロー法で紡糸するのが好ましい。
特に、高度な柔軟性や伸縮性に伴う極めて心地よい装着感や、極めて好適な伸縮性等に伴う優れた装着安定感など高水準な繊細さを要求される場合には、使用するエラストマー長繊維や、2種以上のエラストマー長繊維が、極細繊維層中で均一にランダムに集積・混合されていることが必要である。
これに対し、本発明の肌装着用シートは、後述の通り、特に、親水性繊維層と極細繊維層とが、部分的熱圧着によって一体化されているため、耐層間剥離性等の積層シートに求められる強度を充分に担保しうるものとなる。このため、製品に求められる強度に応じて、一般に、薄層化が可能である。これによって、積層シートに充填された薬液又は化粧料のうち、親水性繊維自体に吸収される絶対量を低減し、その有効量を肌等へ効率的に補給することができるようになる。
これらの方法によれば、薬液又は化粧料の保持量や浸透速度を所望の範囲に維持しつつ、肌装着用シートに含まれる親水性繊維の総量を低減することが可能であり、よって、薬液や化粧料の有効活用、コスト低減に資することができる。
本発明の肌装着用シートにおいて、特に、部分的熱圧着法を採用するのが好ましい。部分的熱圧着は、ロール表面が凹凸形状に彫刻された加熱ロール(以降、「加熱エンボスロール」という場合がある。)を用いて好適に行うことができる。本発明の肌装着用シートの製造において、エンボスロールを用いた部分的熱圧着を行うとき、加熱エンボスロールを、積層シートの一方の面に露出する親水性繊維層側の表面に圧着することによって行うことが好ましい。このとき、積層シートの他方の面、すなわち、積層シートのもう一方の面に露出する極細繊維層側の表面は、加熱されていても良い平滑形状または凹凸形状に彫刻された表面を有するロール等に接して行われる。本発明の積層シートの一方の面に露出する親水性繊維層の表面には、この部分的熱圧着に起因する不連続で規則的な凹凸形状が形成されるのが好ましい。一方、積層シートの他方の面に露出する極細繊維層の表面は、平滑ロールに接すること等に起因する平滑表面を形成していることが好ましい。
また、積層シート表面における凹部の深さは、積層時の層間強度と風合いの点で、0.1〜1mm、個々の凹部の面積は0.15〜15mm2、凹部間距離が0.5〜20mmであるのが好ましい。
本発明の肌装着用シートを構成する積層シートは、乾燥状態である場合に比べて、湿潤状態である場合において、特に、親水性短繊維層が伸長性を有する方向への格段に優れた伸縮性を発現しうるという特徴を持つ。この特徴は、湿潤することによって、親水性短繊維による、或いは、親水性短繊維同士による干渉・絡まり合いが緩和されることがその一因になっているものと推測される。一方、この親水性短繊維間の干渉・絡まり合いが緩和されることに伴って、同時に、親水性短繊維層自体の強度が弱まることとなり、繊維層が容易に破断されやすくなる場合がある。
このような強固な接合を介した一体化によって、高度に伸縮させても破断しにくい積層シートの提供が可能となる。このように、本発明においては、少なくとも、親水性繊維層が短繊維で構成され、極細繊維層がエラストマー繊維を含んでおり、そして、両層が部分的熱圧着によって一体化されることが好ましい。
また、スパンレース法(水流交絡法)やニードルパンチ法を用いて一体化を行った場合、使用する高圧水や針が積層体を貫通もしくは通過することによって、その周囲に繊維が押し寄せられて繊維が再配列することとなり、一般に、当該貫通または通過部における繊維間距離の広がりに伴って、一体化される前に比べて一体化後の積層体の通気度が高くなる。
本発明の肌装着用シートは、部分的熱圧着法で一体化されていることが好ましい。この方法で一体化されることによって、その通気度が効果的に低下する結果、肌に装着した場合に、高いマスキング効果やラップ効果を奏することとなり、含浸された薬液や化粧料が肌にもたらす効能や効果を効率良く高めることが可能となるのである。本発明の積層シートの通気度は、10〜100cm3/cm2・secであるのが好ましく、20〜80cm3/cm2・secであるのが更に好ましい。また、通気度がこのような範囲を満たす場合には、肌装着用シートに含浸されている液体成分の蒸散等が低減されて乾燥が抑制される結果、含浸させた薬液や化粧料による効果の持続性も改善されうる。
また、肌装着用シートのもう一方の面に露出する極細繊維層の表面は、平滑形状を有しているほうが、肌への装着感、密着性に優れたものとなるので好ましい。
本発明の肌装着用シートは、薬液や化粧料を含浸する前の積層シートに比べて、格段に優れた伸度、伸縮性を発現しうる。このように、薬液や化粧料を含浸する前においては、優れた伸度、伸縮性能が発現しないという特性は、液体成分を含浸させる工程以前の製造工程で加わる予期せぬ応力等に対する耐変形性に優れるという点で工業的には優れた効果を有している。より詳しくは、特に、体や顔の部位毎に装着する目的で、積層シートを適宜適切な形状・大きさに型抜きをしたり、せん断する工程等において、得られるシートの形状が型崩れせず、所望の形状が忠実に製品に再現されやすいという効果をもたらしている。
本発明の肌装着用シートに含浸される薬液や化粧料の成分として、ポリペプチド、例えばコラーゲン様ポリペプチドなども挙げられる。ポリペプチドの例として、特開2003−321500号公報及び特開2005−60314号公報などに開示されているものが挙げられる。ポリペプチドの別の具体例として、式:R1-(X-Hyp-Gly)n-R2又は式:R1(Pro-Y-Gly)n-R2(式中、XとYはアミノ酸残基であり、R1はH又はその他の官能基であり、R2はOR3又はその他の官能基であり、R3はH又は一価の金属であり、nは整数である。)で表されるポリペプチドが挙げられる。
本発明の肌装着用シートの伸度は、薬液や化粧料を含浸させる前の積層シートの伸度に対し、積層された親水性繊維層が伸長性を有する方向とは直角する方向において、1.1〜2.0倍の範囲であるのが好ましく、1.2〜2.0倍の範囲であるのが更に好ましい。
本発明において、薬液や化粧料を含浸させる前の積層シートは、少なくとも一方向における10%伸長モジュラス強度が、0.2〜5.0N/25mmの範囲であるのが好ましい。特に、一体化された親水性繊維層が伸長性を有する方向とは直角する方向、好ましくは、一体化された親水性繊維層に含まれるスパンレース不織布を構成する一方向に配列した繊維の長さ方向、における10%伸長モジュラス強度が、0.2〜5.0N/25mmの範囲であるのが好ましい。さらに、この10%伸長モジュラス強度が、、0.5〜3.0N/25mmの範囲であるのが好ましい。
一方、本発明の肌装着用シートは、少なくとも一方向における10%伸長モジュラス強度が0.1〜4.0N/25mmの範囲である。本発明の肌装着用シートは、一体化された親水性繊維層が伸長性を有する方向とは直角する方向、好ましくは、一体化された親水性繊維層に含まれるスパンレース不織布を構成する一方向に配列した繊維の長さ方向、における10%伸長モジュラス強度が、0.1〜4.0N/25mmの範囲であるのが好ましい。10%伸長モジュラス強度は、0.2〜2.5N/25mmの範囲であるのがさらに好ましい。また、薬液や化粧料を含浸させる前の積層シートの10%伸長モジュラス強度に対する肌装着用シートの10%伸長モジュラス強度の比が、0.1〜0.9倍の範囲であるのが好ましく、0.2〜0.8倍の範囲であるのが更に好ましい
本発明においては、極細繊維層が、細い繊維で構成されていることに加えて、特に弾性を有するエラストマー繊維を含むことによってもたらされる柔軟性が、心地良い装着感を付与する一因となりうる。また、エラストマー繊維の粘着性に起因する適度なグリップ効果によって、さらに、フィット感、引き締め感や、装着安定性が好ましいものとなりうる。また、極細繊維層が、細い繊維によって、比較的高い目付けに構成されることに加え、肌等に接するその繊維層表面が平滑であることによって、肌等への密着性が高まり、マスキング効果やラップ効果が生じ、薬液や化粧料による効果を向上させることができる。
本発明の肌装着用シートは、人体のあらゆる部分、顔全体、鼻、目元、口元、首、腕、手、指、腰、腹部、太股、脹脛、膝、足首等に装着するのに適しており、具体的には、美容シート、肌パック用シート、フェイスマスク、絆創膏、湿布材の基布、プラスター材の基布等に好適に用いることができる。
各実施例及び比較例で製造した伸縮性積層シートについて調べた、各種物性の定義及び測定方法を以下に記す。
尚、以下の説明において、「MD」とあるのは、使用した親水性繊維層のスパンレース不織布を構成する一方向に配列している繊維の長さ方向と一致する方向を意味し、「CD」とあるのは、それと直角する方向を意味する。
(1)平均繊維径
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、不織布表面の拡大写真を撮影し、100本の繊維の直径を測定し、その算術平均値を平均繊維径とした。
(2)圧着面積率
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、不織布表面の拡大写真を撮影し、圧着点が単位圧着点ピッチあたりの面積を占める割合を圧着面積率とした。
圧着面積率(%)=(単位ピッチを占める圧着点面積/単位ピッチの面積)×100
JIS L1096「一般織物試験方法」に準拠して測定した。シートから、幅25mm、長さ200mmの試験片を、その長さ方向が、親水性繊維層のスパンレース不織布を構成する繊維が一方向に配列している長さ方向とは直角する方向(CD方向)に一致するように裁断して作成した。
この試験片と、試験片が充分浸漬する量の保湿化粧水(商品名:モイスタージュ エッセンスローション、クラシエホームプロダクツ製)をポリエチレン製の袋に入れて、そのまま10分間放置し、袋を通して試験片の両面を3回手で押さえたのち取り出すことによって、試験片が少なくとも自重の2倍以上になるように化粧水を含浸させた。この試験片を、引張試験機オートグラフAG-G(商品名、(株)島津製作所製)を用い、チャック間を100mmに設定して固定した。引張速度300mm/分で30mmまで伸長させた後、同じ速度で戻し、試験片に掛かる負荷を0とした。その直後、再び同じ速度で30%まで伸長させ、負荷が再び始まる時の伸びた長さをLmmとした。伸長回復率は下記式に従って求めた。
30%伸長時の伸長回復率(%)={(30※1−L)/30※1}×100
※1:試験片を伸長させた長さ(mm)
JIS L1906「一般長繊維不織布 試験方法」に準拠して測定した。幅25mm、長さ200mmの試験片を作成した。試験片は、シートから、その試験片の長さ方向を、親水性繊維層のスパンレース不織布を構成する繊維が一方向に配列している長さ方向(MD方向)と一致するように裁断して作成したもの、および、試験片の長さ方向を、MD方向とは直角する方向(CD方向)と一致するように裁断して作成したものとからなる2種の試験片を準備した。引張試験機オートグラフAG-G(商品名、(株)島津製作所製)を用いて、チャック間を100mmに設定し試験片を固定した。引張速度300mm/分で伸長させ破断するまでの最大強度および最大伸度をそれぞれ破断強度および破断伸度とした。また、10%伸長時の強度を10%伸長モジュラス強度とした。
(5)肌装着用シートの破断強伸度(薬液や化粧料を含浸後の湿潤状態)
JIS L1906「一般長繊維不織布 試験方法」に準拠して測定した。シートから、幅25mm、長さ200mmの試験片を、上記(4)の要領で、その長さ方向が、MD方向と一致するように裁断したもの、および、CD方向と一致するように裁断したものとからなる2種の試験片を準備した。この試験片と、試験片が充分浸漬する量の保湿化粧水(商品名:モイスタージュ エッセンスローション、クラシエホームプロダクツ製)をポリエチレン製の袋に入れて、そのまま10分間放置し、袋を通して試験片の両面を3回手で押さえたのち取り出すことによって、試験片が少なくとも自重の2倍以上になるように化粧水を含浸させた。この試験片を、引張試験機オートグラフAG-G(商品名、(株)島津製作所製)を用い、チャック間を100mmに設定して固定した。引張速度300mm/分で伸長させ破断するまでの最大強度および最大伸度をそれぞれ破断強度および破断伸度とした。また、10%伸長時の強度を10%伸長モジュラス強度とした。
JIS L1906「一般長繊維不織布 試験方法」に準拠して測定した。不織布の任意5箇所から20cm×20cmのサイズの試験片を切り出した後、各試験片の重量を電子天秤にて測定し、その平均値を1m2当たりの質量に換算して目付とした。
(7)積層シートの厚み、各構成層の厚み比率(%)
JIS L1906「一般長繊維不織布 試験方法」に準拠して測定した。
(i) 積層シート、もしくは、乾燥させた肌装着用シートの厚みL1(mm)を測定する。
(ii) 親水性繊維層と極細繊維層を剥離させて、極細繊維層の厚みL2(mm)を測定する。
(iii) 下記式により親水性繊維層の厚みL3(mm)を算出する。
L3(mm)=L1−L2
(iv) 下記式により積層シート基準の極細繊維層の厚み比率R1、親水性繊維層の厚み比率R2を算出する。
R1(%)=L2/L1×100
R2(%)=L3/L1×100
積層シートをフェイスマスク型に切り出し、この切り出したシートと、このシートが充分浸漬する量の保湿化粧水(商品名:モイスタージュ エッセンスローション、クラシエホームプロダクツ製)をポリエチレン製の袋に入れて、そのまま10分間放置し、袋を通して試験片の両面を3回手で押さえたのち取り出すことによって、試験片が少なくとも自重の2倍以上になるように化粧水を含浸させて、フェイスマスクを作成した。また、これとは別に、同じ要領で、同じフェイスマスク型に切り出したシートに、上記保湿化粧水に代えて、保湿乳液(商品名:モイスタージュ エッセンスミルク、クラシエホームプロダクツ製)を含浸させて、フェイスマスクを作成した。この2種類のフェイスマスクを、パネラーに対し、顔に10分間装着してもらい、その2種類の結果を総合して、それぞれ、密着性、乾燥性、肌の引き締め感を、○、△、×の3段階で評価した。
○:良い
△:やや劣る
×:劣る
(9)通気度
積層シート、もしくは、乾燥させた肌装着用シートについて、JIS L1906「一般長繊維不織布 試験方法」のフラジール形法に準拠して測定した。200mm×200mmの試験片を採取し、通気性試験機(東洋精機製)を用いて測定した。
A:スチレン−エチレンブチレン−スチレンブロック共重合体、クレイトンMD6705NS((商品名)、クレイトンポリマー製)
B:プロピレン・エチレン共重合体、VM2125((商品名)、エクソンモービル製)C:熱可塑性ポリウレタン、パンデックスT−1180((商品名)、DIC-Bayer製)
D:ポリプロピレン三井ポリプロS119((商品名)、プライムポリマー製)
極細繊維層に原料樹脂としてAを用いたメルトブローン不織布を使用した。メルトブローン装置としてスクリュー(30mm径)、加熱体およびギアポンプを有する押出機、紡糸口金(孔径0.3mm、孔数501ホール、有効幅500mm)、圧縮空気発生装置、空気加熱機、ポリエステル製ネットを備えた捕集コンベアー、巻取機からなる装置を用いた。押出機にAを投入し、加熱体により230℃で加熱溶融させて、紡糸口金から単孔当たり0.45g/分の紡糸速度で吐出させ、吐出した繊維を400℃に加熱した98kPa(ゲージ圧)の圧縮空気によって、走行速度22m/分で走行しているポリエステル製ネットの捕集コンベアー上に吹き付けることによって、繊維がランダムに集積したメルトブローン不織布を得た。捕集コンベアーは、紡糸口金から25cmの距離に設置した。吹き付けた空気は捕集コンベアーの裏側に設けた吸引装置で除去した。
極細繊維層に原料樹脂としてAとBを用いたメルトブローン不織布を使用した。メルトブローン装置としてスクリュー(30mm径)、加熱体およびギアポンプを有する2機の押出機、混繊用紡糸口金(孔径0.3mm、異なる成分の繊維を吐出するための紡糸孔が、一列毎に交互に並んだ紡糸孔、孔数501ホール、有効幅500mm)、圧縮空気発生装置、空気加熱機、ポリエステル製ネットを備えた捕集コンベアー、巻取機からなる装置を用いた。それぞれの押出機にAとBを別々に投入し、加熱体によりそれぞれ230℃で加熱溶融させて、A/Bの比率(重量%)が50/50になるようにギアポンプを設定して、紡糸口金から単孔当たりA、B共に0.45g/分の紡糸速度で吐出させ、吐出した繊維を400℃に加熱した98kPa(ゲージ圧)の圧縮空気によって、走行速度22m/分で走行しているポリエステル製ネットの捕集コンベアー上に吹き付けることによって、Aからなる繊維とBからなる繊維が均一にランダムに集積したメルトブローン不織布を得た。捕集コンベアーは、紡糸口金から25cmの距離に設置した。吹き付けた空気は捕集コンベアーの裏側に設けた吸引装置で除去した。
得られた積層シートに薬液又は化粧料を含浸したもの(肌装着用シート)は、特に優れた伸度と伸縮性を有していた。また、得られた肌装着用シートを美容用のフェイスマスクとして用いたところ、親水性繊維層、極細繊維層のいずれを肌側にしても顔への装着安定性は良好であった。
極細繊維層にBとCを原料樹脂として用いたメルトブローン不織布を用いた以外は、実施例2に準拠して、積層シートを得た。得られた積層シートは、凹部の面積率が25%、個々の凹部の面積が0.46mm、深さが0.55mm、凹部間距離が縦1.36mm、横2.72mmであり、積層シートの厚みは0.411mmで、その厚み基準で、極細繊維層が30%、親水性繊維層が70%を占めていた。この積層シートの物性等を表1に示す。得られた積層シートに薬液又は化粧料を含浸したもの(肌装着用シート)は、特に優れた伸度と伸縮性を有していた。また、得られた肌装着用シートを美容用のフェイスマスクとして用いたところ、親水性繊維層、極細繊維層のいずれを肌側にしても顔への装着安定性は良好であった。
実施例1で親水性繊維層として使用したスパンレース不織布のみを単層で用いた。その結果を表2に示す。このものは、湿潤時においては伸縮性に劣るものであった。得られた積層シート美容用のフェイスマスクとして用いたところ、不織布に伸縮性がないため、装着安定性は劣るものであった。
極細繊維層にDを原料樹脂として用いたメルトブローン不織布を用いた以外は実施例1に準拠して、積層シートを得た。その結果を表2に示す。このものは、湿潤時において伸度、伸縮性に劣るものであった。得られた積層シートを美容用のフェイスマスクとして用いたところ、不織布に伸縮性がないため、装着安定性は劣るものであった。
極細繊維層にポリエチレン/ポリエステルテレフタレート系分割繊維(商品名:セパ、ダイワボウポリテック製)を用い、実施例1で親水性繊維層として使用したスパンレース不織布を用いた、積層シートを得た。その結果を表2に示す。このものは、湿潤時において伸度、伸縮性に劣るものであった。得られた積層シーを美容用のフェイスマスクとして用いたところ、不織布に伸縮性がないため、装着安定性は劣るものであった。
Claims (7)
- 親水性短繊維層と極細繊維層を含む伸縮性の積層シートに、該積層シート100質量部に対して100〜1500質量部の薬液又は化粧料が含浸されてなる湿潤シートであって、該湿潤シートの少なくとも一方向における10%伸長モジュラス強度が0.1〜4.0N/25mmの範囲であり、同方向における30%伸長時の伸長回復率が30〜100%の範囲である肌装着用シートを、肌に装着後に、該肌装着用シートの伸縮性によって縮もうとする力が作用するように、肌に装着することを特徴とする、肌装着用シートの装着方法。
- 肌に装着後に、肌装着用シートの縮もうとする力によって肌が引っ張られることに起因する引き締め感を生じる、請求項1記載の肌装着用シートの装着方法。
- 肌装着用シートを、顔に装着することを特徴とする、請求項1または請求項2記載の肌装着用シートの装着方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の装着方法を含む、肌装着用シートの使用方法。
- 肌装着用シートを、美容シート、肌パック用シート、または、フェイスマスクに用いる、請求項4記載の肌装着用シートの使用方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の装着方法に用いられる、肌装着用シート。
- 請求項4または請求項5記載の使用方法に用いられる、肌装着用シート。
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