JP5388050B2 - 新規有機金属錯体化合物 - Google Patents

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Description

本発明は、ディスコティック液晶性を示す有機金属錯体化合物に関する。詳しくはディスコティック液晶層として、基板に対してホメオトロピック配向することを特徴とする有機金属錯体化合物に関する。
ディスコティック液晶性化合物はフタロシアニンを用いたディスコティック液晶性化合物などで、一次元性のカラムナー相を示すものが知られており、この種の化合物はカラム内での円盤状のディスコティック液晶性分子がお皿を積み重ねたように重なることで、分子間の相互作用が高く、分子の積層方向すなわちカラムの軸と同一方向の伝導度が非常に大きくなることが知られている(非特許文献1、2)。さらに、ディスコティック液晶性を示すディスコティック液晶性分子のうちいくつかは、平面性の基板上に塗布あるいは平行な平面性基板間に挟みこんだ場合に、分子の積層方向すなわちカラムの軸が基板面に対して垂直である、ホメオトロピック配向性を示すものがある。これらホメオトロピック配向性を示す、ディスコティック液晶性分子は、フタロシアニン類やトリフェニレン類などであり、その多くが電子的には電子供与性を示し、ドナー性の化合物である場合が多い。一方で、電子受容性を有し、アクセプター性を示す化合物が、ディスコティック液晶性分子の電子デバイスへの応用などの観点から望まれている。しかしながらアクセプター性を示すディスコティック液晶性化合物についてはその報告例は少なく、さらにホメオトロピック配向性を示すアクセプター性のディスコティック液晶性分子は非常に少ない。
グロウミ(A.Gouloumis)外,「ケミストリー・ヨーロピアン・ジャーナル(Chemistry - A European Journal)」,2000年,第6巻,p.3600 アントニエッタ(M. Antonietta Loi)外,「ジャーナル・オブ・マテリアルズ・ケミストリー(Journals of Materials Chemistry)」,2003年,第13巻,p.700
本発明の目的はホメオトロピック配向性を示すディスコティック液晶性材料を提供することである。さらには当該液晶性化合物を用いて作製した配向型機能性材料およびそれを用いて作製した配向型機能性デバイスを提供することである。
すなわち、本発明は、ディスコティック液晶性を示す有機金属錯体化合物であって、ホメオトロピック配向することを特徴とする有機金属錯体化合物に関する。
また、本発明は、下記一般式(1)で表わされる化合物であることを特徴とする前記記載の有機金属錯体化合物に関する。
(ここで、Mは金属カチオンであって、該金属カチオンは、Mg、Al、Si、P、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、PbおよびBiから選ばれる金属のカチオンを示し、Rは全て同じでもまたは異なっていても良く、水素、ハロゲン、または1〜100の炭素を含む置換基から選ばれ、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、芳香族基、置換芳香族基、オキシ芳香族基、オキシ置換芳香族基、チオ芳香族基およびチオ置換芳香族基から選ばれる基を示す。)
また本発明は、前記一般式(1)において、置換基Rの芳香族基、置換芳香族基、オキシ芳香族基、オキシ置換芳香族基、チオ芳香族基、およびチオ置換芳香族基の芳香族基に対応する芳香族が、ベンゼン、ナフタレン、ピレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イミダゾール、インドール、ピリジン、ピリミジン、アニリン、ベンゾアニリン、カルバゾール、ベンズイミダゾール、およびキノキサリンから選ばれることを特徴とする前記記載の有機金属錯体化合物に関する。
また本発明は、前記一般式(1)において、置換基Rが置換フェノキシ基または置換ナフタロキシ基を含むことを特徴とする有機金属錯体化合物に関する。
また本発明は、置換フェノキシ基が、2−アルキルフェノキシ基、2−アルコキシフェノキシ基、3−アルキルフェノキシ基、3−アルコキシフェノキシ基、4−アルキルフェノキシ基、4−アルコキシフェノキシ基、2,4−ジアルキルフェノキシ基、2,4−ジアルコキシフェノキシ基、2,6−ジアルキルフェノキシ基、2,6−ジアルコキシフェノキシ基、2,3−ジアルキルフェノキシ基、2,3−ジアルコキシフェノキシ基、3,4−ジアルキルフェノキシ基、3,4−ジアルコキシフェノキシ基、2,4,6−トリアルキルフェノキシ基、2,4,6−トリアルコキシフェノキシ基、3,4,5−トリアルキルフェノキシ基、および3,4,5−トリアルコキシフェノキシ基から選ばれる置換フェノキシ基であることを特徴とする前記記載の有機金属錯体化合物に関する。
また本発明は、置換基Rの少なくとも一つがハロゲンであることを特徴とする前記記載の有機金属錯体化合物に関する。
また本発明は、下記一般式(2)で表わされる化合物であることを特徴とする前記記載の有機金属錯体化合物に関する。
(ここで、Mは金属カチオンであって、該金属カチオンは、Mg、Al、Si、P、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、PbおよびBiから選ばれる金属のカチオンを示し、Xはハロゲンを示し、nは1〜20の整数を示す。)
また本発明は、前記記載の有機金属錯体化合物をホメオトロピック配向させて得られる配向型機能性材料に関する。
また本発明は、前記記載の配向型機能性材料を用いて作製した配向型機能性デバイスに関する。
本発明のホメオトロピック配向性を示すディスコティック液晶性の有機金属錯体は、一次元性のカラムナー相を示し、高い移動度を示すと同時にアクセプター性を示す材料である。また、本発明は簡単な手段により、ディスコティック液晶性分子がホメオトロピック配向した配向型機能性材料を作製でき、エレクトロルミネッセンス素子材料、イメージスキャナー材料、ホトリソグラフティブ材料、太陽電池材料、強磁性材料、ガスセンサー、触媒等に有用に適用することができる。
以下、本発明の有機金属錯体化合物について説明する。
本発明の有機金属錯体化合物は、ディスコティック液晶性を示す。
ディスコティック液晶性を示すディスコティック液晶性化合物とは、一般に中心に堅い平面状コアを持ち、その周辺にフレキシブルなアルキル長鎖を持つ液晶化合物のことである。ディスコティック液晶性とは、中心の平面状コア分子同士にπ−π相互作用とその周辺のアルキル長鎖が揺らぐことによって液体のような構造柔軟性を持ちながらも、固体固有の構造配向性を示すことである。
さらにディスコティック液晶性をもつ分子は、分子自身が図1のように自発的に積み重なってカラムを形成する。これをディスコティックカラムナー相といい、カラム内では分子間を電子やホールが移動する、「ホッピング伝導」と呼ばれる事象を持つため、一次元伝導体として応用できることが報告されている。
ディスコティックカラムナー液晶性の確認方法は、偏光顕微鏡(POM)観察と、加熱X線構造解析が主である。ディスコティックカラムナー液晶性化合物を偏光顕微鏡で観察すると、その化合物がもつ液晶相特有のテクスチャーを観察することができる。またスパチュラなどで擦ると柔らかい感触が得られることも確認方法の一つである。そして、ディスコティックカラムナー液晶性を示す化合物をX線構造解析すると、液晶相特有の回折ピークを観察することができる。
ホメオトロピック配向とは、ディスコティック液晶分子が自発的かつ大面積に完璧なカラムをガラス基板上に垂直に形成するように配向することである。
ホメオトロピック配向の確認方法は偏光顕微鏡観察で確認することができる。ディスコティック液晶分子がホメオトロピック配向すると、直交ニコル下では暗視野となる。しかし、スパチュラなどで暗視野な部分を擦ると、分子の配向が乱れ、透過してくる光が複屈折をし、偏光を示す。
本発明の有機金属化合物としては、安定的に酸化還元特性を示すような平面状構造を有するものが好適に用いられる。
例えば、ポルフィリン類、アザポルフィリン類、フタロシアニン類、ナフタロシアニン類、ジチオレン類、サレン類、キサンテンナド類、β−ジケトン類、金属カルボキシレート類、ビス(グリオキシマート)金属類などが挙げられる。
より具体的な構造としては、下記のような機能性化合物が挙げられるが、本発明の目的に適うものであれば、これに制限されるものではない。
上記式中、Mは金属カチオンを表す。例えば、Mg、Al、Si、P、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Pb、Biなどのカチオンを1つまたは2つ以上用いることができる。好ましくは、プロトン2個か2価の金属カチオンを一つ用いた場合であって、2価カチオンとしてはMg2+ 、M2+、Fe2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+を用いたものである。
さらに、上記機能性化合物は、目的の性能を示すために適当な修飾基を水素原子の代わりに置換して結合することが出来る。修飾基としては、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などが挙げられる。これらの基はさらに置換基を有していても良い。
ハロゲン原子としてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を挙げることができる。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、2−エチルプロピル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。アルコシキ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、ブトキシ基、t−ブチルオキシ基、2−エチルプロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等を挙げることができる。アルキル基やアルコシキ基の水素の一部または全部を、不飽和結合を含む基、フェニル基など芳香環を含む置換基などとしても良い。また上記アルキル基等の末端が、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、シアノ基、イソシアナート基、アルデヒド基、アミノ基などであっても良い。また、アルキル鎖の途中に、エステル結合(−COO−)、酸アミド結合(−NH−CO−)、ウレタン結合(−NH−COO−)、エーテル結合(−O−)などを含んでも良く、繰り返し単位が1から15のエチレンオキシド基でも良い。2つの置換基が末端で結合をつくり環状となっていても良い。例えば、環状エーテル、環状エステル、酸無水物、カルボジイミドなどを挙げることができる。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。それらはまた置換基を有していても良い。かかる置換基としては、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、フェノキシ基、ナフタロキシ基などが挙げられる。それらの置換基もさらに置換基を有することも可能である。
酸化還元電位の測定を行う際はそれぞれを単体分子の状態で測定すればよい。その方法は、例えば、A.J.Bardら著『Electrochemical Methods: Fundamentals and Applications』のCHAPTER6(p.226〜)に記載されているように、可溶な溶媒中でサイクリックボルタンメトリー測定等を行うことで決定することができる。
本発明の有機金属化合物として、より具体的な構造例を挙げると、ジチオレン構造を含む、次の一般式(1)で表わされるディスコティック液晶性化合物が好適に用いられるが、特にこれに制限されるものではない。
ここで、Mは金属カチオンであって、例えば、Mg、Al、Si、P、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Pb、Biなどのカチオンを1つまたは2つ以上用いることができる。好ましくは、プロトン2個、または2価の金属カチオンを一つ用いた場合であって、2価カチオンとしては、Mg2+、Al2+、Mn2+、Fe2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+などを用いたものが挙げられる。
Rは全て同じでもまたは異なっても良く、上記構造から任意の数を組み合わせて選ぶことが出来る。Rとしては、水素、ハロゲン、または1〜100、好ましくは1〜60、さらに好ましくは1〜40の炭素を含む置換基から選ばれ、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、芳香族基、置換芳香族基、オキシ芳香族基、オキシ置換芳香族基、チオ芳香族基およびチオ置換芳香族基から選ばれる基を示す。かかる芳香族基に対応する芳香族としては、ベンゼン、ナフタレン、ピレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イミダゾール、インドール、ピリジン、ピリミジン、アニリン、ベンゾアニリン、カルバゾール、ベンズイミダゾール、およびキノキサリンから選ばれる芳香族が挙げられる。
ハロゲン原子としてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を挙げることができる。アルキル基としては、炭素数1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、ペンチル基、2−エチルプロピル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。アルコシキ基としては、炭素数1〜30、好ましくは1〜20のアルコシキ基が挙げられ、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、ブトキシ基、t−ブチルオキシ基、2−エチルプロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等を挙げることができる。また、アルキル基の水素の一部または全部を、不飽和結合を含む基、フェニル基など芳香環を含む置換基などとしても良い。カルボニル基、カルボニルオキシ基またはオキシカルボニル基、アミノ基等を用いて上記アルキル基等を結合しても良い。また上記アルキル基等の末端が、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、シアノ基、イソシアナート基、アルデヒド基、アミノ基などであっても良い。また、アルキル鎖の途中に、エステル結合(−COO−)、酸アミド結合(−NH−CO−)、ウレタン結合(−NH−COO−)、エーテル結合(−O−)などを含んでも良く、繰り返し単位が1から15のエチレンオキシド基でも良い。2つの置換基が末端で結合をつくり環状となっていても良い。例えば、環状エーテル、環状エステル、酸無水物、カルボジイミドなどを挙げることができる。また、さらに芳香環が縮環している構造でもよい。
芳香族基、置換芳香族基、オキシ芳香族基、オキシ置換芳香族基、チオ芳香族基、チオ置換芳香族基としては、例えば、フェニル基、置換フェニル基、ナフチル基、置換ナフチル基、フェノキシ基、置換フェノキシ基、ナフタロキシ基、置換ナフタロキシ基、置換フェニルチオ基、置換ナフチルチオ基などが挙げられる。
上記修飾基のうち、特に好ましいのはフェノキシ構造およびナフタロキシ構造を持つ基である。フェノキシ基あるいはナフタロキシ基はさらに置換基を有することが可能であり、ベンゼン環あるいはナフタレン環を炭素数1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基、アルコキシル基で置換したアルキル置換フェノキシ基、アルコキシ置換フェノキシ基、アルキル置換ナフタロキシ基、アルコキシ置換ナフタロキシ基などが好適に用いられる。その置換数および置換位置は、1つ以上で、目的の性能が得られれば特に制限されるものでは無く、例えば、2−アルキル、2−アルコキシ、3−アルキル、3−アルコキシ、4−アルキル、4−アルコキシなどの1置換体、2,4−ジアルキル、2,4−ジアルコキシ、2,6−ジアルキル、2,6−ジアルコキシ、2,3−ジアルキル、2,3−ジアルコキシ、3,4−ジアルキル、3,4−ジアルコキシの2置換体、2,4,6−トリアルキル、2,4,6−トリアルコキシ、3,4,5−トリアルキル、3,4,5−トリアルコキシの3置換体などが用いられるが、特に、3−アルキル、3−アルコキシの1置換体、2,4−ジアルキル、2,4−ジアルコキシ、3,4−ジアルキル、3,4−ジアルコキシの2置換体が好ましい。置換基のアルキル鎖については直鎖アルキルの他、分岐鎖、不飽和結合があっても特に制限されず、また鎖長についても本目的を達成できる範囲であれば特に制限されないが、例えばアルキル鎖部分は炭素数1以上30以下が好ましく、より好ましくは25以下、さらに好ましくは20以下である。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、直鎖及び分岐鎖型のペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基などが挙げられる。また上記アルキル基等の末端が、水素の他、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、シアノ基、イソシアナート基、アルデヒド基、アミノ基などであっても良い。また、アルキル鎖の途中に、エステル結合、酸アミド結合、ウレタン結合、エーテル結合などを含んでも良く、繰り返し単位が1から15のエチレンオキシド基でも良い。2つの置換基が末端で結合をつくり環状となっていても良い。例えば、環状エーテル、環状エステル、酸無水物、カルボジイミドなどを挙げることができる。また、さらに芳香環が縮環している構造でもよい。末端が水酸基やアミノ基などのヘテロ元素を持つ反応性置換基、例えば、エステル基、エーテル基等を有していても良い。
本発明においては、前記一般式(1)における置換基Rとして、置換フェノキシ基または置換ナフタロキシ基を少なくとも含む有機金属錯体化合物が好ましい。
また、上記置換基Rの少なくとも一つはハロゲンであることが好ましい。
本発明の有機金属錯体化合物としては、一般式(1)で表わされる化合物の中でも、特に下記一般式(2)で表わされるディスコティック液晶性化合物が特に好ましい。
一般式(2)中、Mは一般式(1)のMと同じものを示し、Xはハロゲン、nは1〜20、好ましくは8〜18の整数を示す。
次に本発明の有機金属錯体化合物を用いて作製される配向型機能性材料を形成する方法、より具体的には本発明の有機金属錯体化合物であるディスコティック液晶性化合物を基板に対してホメオトロピックに配向させた配向型機能性材料を形成するための方法について説明する。
最も簡便な方法としては、本発明の有機金属錯体化合物を二枚の平滑な基板間に挟むことにより、この目的は達成される。用いる基板としては、形成する配向型機能性材料の厚みに比べて充分平滑であれば特に限定されず、材質、厚さ、寸法、形状等は目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無色あるいは有色ガラス、網入りガラス、ガラスブロック等が用いられる他、無色あるいは有色の透明性を有する樹脂でも良い。かかる樹脂としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、トリ酢酸セルロース、ポリメチルペンテンなどが挙げられる。なお、本発明における基板とは、常温において平滑な面を有するものであり、その面は平面あるいは曲面であってもよく、また応力によって変形するものであってもよい。また、例えば金属板のように不透明であっても良く、金、銀、クロム、銅、タングステン、アルミニウム、クロムやステンレスなどの平滑な金属板などが挙げられる。二枚の基板に挟む際には、必要に応じて加熱・加圧等を行っても良い。
また、本発明の有機金属錯体化合物を溶解可能な溶媒に溶解して溶液とし、基板に塗布した後、溶媒を除去する方法も可能である。用いる溶媒は本発明の有機金属錯体化合物を溶解し得るものであれば特に制限されるものではなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、四塩化炭素、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、プロピルベンゼン、二塩化エチレン、塩化メチル等を挙げることができる。また、溶液中の有機金属錯体化合物の濃度については特に制限はないが、作製上の観点から0.1〜5質量%程度が好ましい。また、有機金属錯体化合物が溶解し難い場合には、撹拌、加熱等の操作を行ってもよい。
次いで、有機金属錯体化合物溶液を基板表面に塗布する。基板としては、先に示した基板と同様で、適度に平滑性があれば問題はない。本発明の有機金属錯体化合物の溶液を基板表面に塗布する方法としては特に制限はなく、例えば、キャスト、スピンコート、スプレーコート、バーコート等の方法によって実施することができる。また、塗布量については特に制限はないが、通常は基板1cm当たり0.002〜0.1ml程度が好ましい。次いで、上記溶媒を蒸発させることにより有機金属錯体化合物による配向型機能性材料を形成することができる。溶媒を蒸発させる方法としては、例えば、基板を加熱する方法が挙げられる。
作製法および用いた有機金属錯体化合物の構造によっては、基板に挟むことで、あるいは溶液状態の有機金属錯体化合物を塗布することで、自然に基板に対してホメオトロピックなディスコティックカラムナー液晶状態が達せられる場合もある。しかしながら、自然に基板に対してホメオトロピックなディスコティックカラムナー液晶状態が達せられない場合には、必要に応じて配向させるための操作を行うことができる。
配向させる手段としては、例えば配向型機能性材料を基板ごと加熱するなどにより、一旦液晶相における等方相が得られるまで昇温させた後、ゆっくりと冷却する方法などをとることが出来る。
有機金属錯体化合物が基板面に対してホメオトロピックなディスコティックカラムナー液晶相をとって配向していることの確認方法は、例えばX線回折測定法によって配向型機能性材料にディスコティックカラムナー相特有の規則構造があることを確認した後、偏光顕微鏡観察によって、基板との鉛直方向からクロスニコル下では暗視野、基板を傾けることにより明るくなることを観察することにより確認できる。
また、補助的には偏光顕微鏡によりカラムナー層に固有のホメオトロピックに配向したディスコティックカラムナー液晶相に特徴的なデンドリックなテクスチャー構造が観察される場合もある。
次に、本発明の有機金属錯体化合物により形成された配向型機能性材料を用いた配向型機能性デバイスについて説明する。
本発明の配向型機能性デバイスとしては、例えば、透明導電性基板上に光吸収剤として本発明の有機金属錯体化合物であるディスコティック液晶性化合物によるディスコティック液晶配向物、対極を順次積層配置した構造をもつものが挙げられる。あるいは、本発明のディスコティック液晶配向物による薄膜を作製した導電性基板上と対極の間に適当な電解質を有する形を挙げることができる。本配向型機能性デバイスは、例えば配向型機能性材料が光吸収による電荷発生を行うことで、光照射により取り出し電荷量、すなわち電流値の変化する光電変換素子としての特性を示す。
透明導電性基板は、通常、透明基板上に透明電極層を積層させて製造される。透明基板としては特に限定されず、材質、厚さ、寸法、形状等は目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無色あるいは有色ガラス、網入りガラス、ガラスブロック等が用いられる他、無色あるいは有色の透明性を有する樹脂でも良い。かかる樹脂としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、トリ酢酸セルロース、ポリメチルペンテンなどが挙げられる。なお、本発明における透明とは、10〜100%の透過率を有することであり、また、本発明における基板とは、常温において平滑な面を有するものであり、その面は平面あるいは曲面であってもよく、また応力によって変形するものであってもよい。
また、電極の導電層を形成する透明導電膜としては、本発明の目的を果たすものである限り特に限定されることはなく、例えば、金、銀、クロム、銅、タングステンなどの金属薄膜、金属酸化物からなる導電膜などが挙げられる。金属酸化物としては、例えば、酸化錫や酸化亜鉛に、他の金属元素を微量ドープしたIndium Tin Oxide(ITO(In:Sn))、Fluorine doped Tin Oxide(FTO(SnO:F))、Aluminum doped Zinc Oxide(AZO(ZnO:Al))などが好適なものとして用いられる。
膜厚は通常、1nm〜50μm、好ましくは10nm〜10μmである。また、表面抵抗(抵抗率)は、本発明の基板の用途により適宜選択されるところであるが、通常、0.01〜500Ω/sq、好ましくは0.1〜50Ω/sqである。
対極は、通常、金、白金、銀、銅、アルミニウム、マグネシウム、リチウム、カリウムなどの金属、あるいはカーボン電極などを用いることができる。対極の設置方法については、真空蒸着法、電子ビーム真空蒸着法、スパッタリング法や、溶媒に分散した金属微粒子を塗布し、溶媒を揮発除去する等の公知の方法で成膜しても良い。
また、本発明の有機金属錯体化合物を用いたデバイスとしては、本発明の配向型機能性材料を形成した導電性基板を一つの電極として、もう一つの電極として上記透明導電性基板または上記対極を用い、中間に電解質を設けた電気化学デバイスを用いることも可能である。
素子特性の評価については、透明電極および対極にそれぞれ電流測定用の端子を取り付け、光照射の有無による電流値の変化について測定することにより実施できる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
3,3’-Dichloro-4,4’-bis(3,4-didodecyloxyphenoxy)benzil (0.615 g, 0.51 mmol)、五硫化二リン (0.296 g, 1.33 mmol)、dry 1,4-dioxane (10ml)の混合物を5時間還流した。反応溶液中の未反応の五硫化二リンを熱ろ過で取り除いた。このろ液に、エタノールに溶解した塩化ニッケル六水和物 (0.393 g, 0.165 mmol)を加え、2時間還流した。反応溶液をクロロホルムで抽出し、水で洗浄した。有機層を芒硝で乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー (silica gel, chloroform, Rf = 0.98)、メタノール、エタノールで固液抽出して精製した。さらにこれをアセトンで再結晶して化合物1b(Bis{1,2-bis[3-chloro-4-(3,4-didodecyloxyphenoxy)phenyl]ethane-1,2-dithiolene}nickel: Cl-[p,m-(C12O)2PhO]4DTNi) の固体0.152gを得た。収率は24%であった。
[実施例2]
3,3’-Dichloro-4,4’-bis(3,4-didodecyloxyphenoxy)benzil に代えて、3,3’-Dichloro-4,4’-bis(3,4-didecyloxyphenoxy)benzil (0.51 mmol)を原料として用いる以外は実施例1と同様の方法により化合物1aを得た。
[実施例3]
3,3’-Dichloro-4,4’-bis(3,4-didodecyloxyphenoxy)benzil に代えて、3,3’-Dichloro-4,4’-bis(3,4-ditetradecyloxyphenoxy)benzil(0.51 mmol)を原料として用いる以外は実施例1と同様の方法により化合物1cを得た。
[実施例4]
3,3’-Dichloro-4,4’-bis(3,4-didodecyloxyphenoxy)benzil に代えて、3,3’-Dichloro-4,4’-bis(3,4-dihexadecyloxyphenoxy)benzil(0.51 mmol)を原料として用いる以外は実施例1と同様の方法により化合物1dを得た。
なお、化合物1a〜1dは下記式(3)で示される化合物であって、式中のnがそれぞれ以下に示すものである。得られた化合物1a〜1dの液晶相の温度変化を図2に示す。
化合物1a:n=10
化合物1b:n=12
化合物1c:n=14
化合物1d:n=16
化合物1a〜1dの元素分析のデータを表1に、電子スペクトルデータを表2に示す。
[実施例5]
液晶相の同定は加熱X線構造解析とDSC、偏光顕微鏡(POM)観察で行った。相転移挙動はホットステージつきの偏光顕微鏡NICON E-600 POL(Mettler FP-82HT hotstage, Mettler FP 90 Central Prcessor) を用いて観察した。スライドガラス上に化合物1cを少量のせ、カバーガラスをかぶせて137.4℃まで昇温し、等方相としたその後、137.4℃に保持すると、ホメオトロピックなヘキサゴナルカラムナー相に起因する、デンドリックなテクスチャー構造が生成した。さらに、ゆっくりと134.7℃まで温度を下げると、テクスチャーは全面に広がり、視野全体にわたってホメオトロピック配向を示す事が確認できた(図3)。
[実施例6]
短冊状にパターニングしたITO基板上に、実施例4により合成した化合物1dをクロロホルムに1wt%で溶解させ溶液とした。この溶液を、ITO付きガラス基板上に500rpmスピンコート法により塗布すると、光学的には均一な薄膜を形成した。なお、POMで観察すると、クロスニコル下、暗視野状態においても、光は透過しなかったことから、既にホメオトロピックな配向が出来上がった配向型機能性材料による薄膜が形成されていた。
[実施例7]
短冊状にパターニングしたITO基板上に、実施例6と同様の方法で配向型機能性材料による薄膜を塗布、作製した。次に300オングストローム銅フタロシアニン層を真空蒸着法によって形成した後、短冊状のITOパターンと直交し、一部が交差する長方形の窓をもった蒸着用マスクを用いて、その窓を通してアルミニウムを1000オングストロームの厚みで成膜した。基板上のITO端とアルミニウム端にそれぞれ導線をハンダで固定し、配向型機能性デバイスを作製した。デバイスを真空下、140℃まで加熱した後、134℃で一定に保った。その後、キセノンランプより光照射を行い、光照射の有無における電圧−電流特性を測定したところ、光照射により光電流の変化が観測され、本配向型機能性デバイスが、光電変換デバイスとして利用できることを確認した。
本発明により、ディスコティックカラムナー液晶性分子を基板上に塗布し、ホメオトロピック配向状態の配向型機能性材料による薄膜を形成することができた。この配向型機能性材料による薄膜を用いることで、配向型機能性デバイスを作成することができた。このデバイスは、配向型機能性材料による薄膜を用いることで、配向型機能性デバイスは光照射に対して光電流を変化させる、光電変換デバイスとして用いることができた。
一次元性のカラムナー相となったディスコティック液晶性分子の配置状態を示す図である。 化合物1a〜1dの液晶相の温度変化を示す図である。 ディスコティック液晶相の偏光顕微鏡写真である。

Claims (7)

  1. ディスコティック液晶性を示し、ホメオトロピック配向することを特徴とする下記一般式(2)で表わされる有機金属錯体化合物。
    (ここで、Mは、Mg、Mn、Fe、Ni、CuおよびZnから選ばれる2価の金属のカチオンを示し、Xはハロゲンを示し、nは18の整数を示す。)
  2. 前記一般式(2)において、Xが塩素を含むことを特徴とする請求項1に記載の有機金属錯体化合物。
  3. 前記一般式(2)において、nが10、12、14または16のいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載の有機金属錯体化合物。
  4. 前記一般式(2)において、MがNiのカチオンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機金属錯体化合物。
  5. 前記一般式(2)において、Xが塩素であり、nが10、12、14または16のいずれかであり、MがNiのカチオンであることを特徴とする請求項1に記載の有機金属錯体化合物。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の有機金属錯体化合物をホメオトロピック配向させて得られる配向型機能性材料。
  7. 請求項記載の配向型機能性材料を用いて作製した配向型機能性デバイス。
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