JP4076288B2 - 光学的異方性材料、異方導電性材料、それらの製造方法およびディスコティック液晶性分子 - Google Patents
光学的異方性材料、異方導電性材料、それらの製造方法およびディスコティック液晶性分子 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ホメオトロピック配向性のディスコティック液晶及びその液晶からなる光学的異方性材料または異方導電性材料およびそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の液晶ディスプレーは、CRTの画質を凌駕するため、動画にも対応できる高画質が求められている。高画質を表示するため、OCBモードやVAモードのような新たな液晶モードが開発されている。それに伴って、光学補償シートにも、液晶モードに対応する様々な光学特性が要求されている。OCBモードやVAモードの液晶セルでは、光軸の傾斜しない負の大きな複屈折を有する光学補償シートが要求されている。そのような光学補償シートとして、ポリイミドフィルム(Polymer,Vol.37,No.23,pp.5321(1996)記載)や二軸延伸したポリカーボネートフィルムが提案されている。ただし、ポリイミドやポリカーボネートでは、充分な光学的均一性を有するフィルムを製造することは難しい。また、ポリイミドフイルムやポリカーボネートフイルムは、寸度安定性や耐薬品性についても改良が必要である。
ディスコティック液晶性分子は、一般的に負の複屈折性を有している。ディスコティック液晶性分子を基板平面に対しホメオトロピック配向させた薄膜は、光軸の傾斜しない負の大きな複屈折を有することが予測される。
【0003】
ディスコティック液晶性分子は光学的特性だけでなく、電子的性質に関しても非常に注目されている。ディスコティック液晶性分子が一次元にカラム状に積層したディスコティックカラムナー相は、隣接する分子のπ電子共役系の重なりがカラム方向に最も大きくなる配置となっている。そのため、ディスコティック液晶性分子を含む層内では、一次元の電子移動が高速であることが予想される。例えば、よう素や塩化アルミニウムでディスコティックカラムナー相を化学ドーピングすることによりキャリア濃度を増加させた試料では、10-3(Ωcm)-1/Vs程度の大きな伝導度をもつことが報告されている(Boden 他)。また、ポルフィリン系液晶性分子をマイクロ波で伝導度を測定した結果から、電子移動度が6×10-6cm2 /Vs以上の高い値となる可能性が指摘されている(Schouten他)。これらの報告から、異方導電性材料の製造にディスコティック液晶性分子を用いることが考えられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、ディスコティック液晶性分子をホメオトロピック配向させた薄膜は、光学的異方性材料または異方導電性材料として有用であることが予想される。しかし、ディスコティック液晶性分子を、基板平面に対しホメオトロピック配向させる適当な手段がなかった。
本発明の目的は、ディスコティック液晶性分子がホメオトロピック配向している光学的異方性材料および異方導電性材料を提供することである。
また、本発明の目的は、簡単な手段によりディスコティック液晶性分子をホメオトロピック配向させる光学的異方性材料および異方導電性材料の製造方法を提供することでもある。
さらに、本発明の目的は、簡単な手段でホメオトロピック配向するディスコティック液晶性分子を提供することでもある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、ディスコティック液晶性分子の配向形態を検討した結果、簡単な手段でホメオトロピック配向するディスコティック液晶性分子を開発することに成功した。
上記の目的は、下記(1)〜(3)の光学的異方性材料または異方導電性材料、下記(4)〜(6)の光学的異方性材料または異方導電性材料の製造方法、および下記(7)のディスコティック液晶性分子により達成された。
(1)基板およびディスコティック液晶性分子を含む層からなる光学的異方性材料または異方導電性材料であって、下記式(I)で表される化合物またはその金属錯体であるディスコティック液晶性分子が基板平面に対しホメオトロピック配向している状態でカラムナー相を形成しており、そのカラムナー相が固定されていることを特徴とする光学的異方性材料または異方導電性材料。
【0006】
【化4】
【0007】
式中、Z1、Z2、Z3およびZ4は、それぞれ独立に、芳香族環であり;n1、n2、n3およびn4は、それぞれ独立に、1乃至8の整数であり;L1、L2、L3およびL4は、それぞれ独立に、単結合または−O−、−S−、−CO−、−NH−およびそれらの組み合わせから選ばれる二価の連結基であり;R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素原子数が1乃至30のアルキル基または−Ar1−(L5−R5)m で表される置換芳香族環基であり;Ar1は、二価の芳香族環残基であり;mは1乃至5の整数であり;L5は、単結合または−O−、−S−、−CO−、−NH−およびそれらの組み合わせから選ばれる二価の連結基であり;R5は、ハロゲン原子または炭素原子数が1乃至30のアルキル基であって、m個のR5の少なくとも一つは、重合性官能基で置換された炭素原子数が1乃至30のアルキル基である。
(2)カラムナー相がテトラゴナル相である(1)に記載の光学的異方性材料または異方導電性材料。
(3)ディスコティック液晶性分子が有機金属錯体化合物である(1)または(2)に記載の光学的異方性材料または異方導電性材料。
(4)基板上に前記式(I)で表される化合物またはその金属錯体であるディスコティック液晶性分子を含む層を形成する工程;ディスコティック液晶性分子を含む層をカラムナー相形成温度に加熱して、ディスコティック液晶性分子が基板平面に対しホメオトロピック配向している状態でカラムナー相を形成する工程;そして、カラムナー相を固定する工程からなる光学的異方性材料または異方導電性材料の製造方法。
【0008】
(5)カラムナー相がテトラゴナル相である(4)に記載の光学的異方性材料または異方導電性材料の製造方法。
(6)光重合反応によってカラムナー相またはテトラゴナル相を固定する(4)または(5)に記載の製造方法。
(7)後述する式(II)で表される化合物またはその金属錯体からなるディスコティック液晶性分子。
【0009】
本明細書において、「ホメオトロピック配向」とは、ディスコティック液晶性分子の円盤面が、基板平面(ディスコティック液晶性分子を含む層側の基板の表面からなる平面)と実質的に平行な位置関係にあることを意味する。
また、本明細書において、「芳香族環」とは、芳香族炭化水素環(縮合環であってもよい)に加えて、芳香族性を有する複素環(縮合環であってもよい)を含む。
【0010】
【発明の実施の形態】
ディスコティック液晶性分子は、その母核に円盤状の部分構造を有する。側鎖部を除いた母核部分の円盤状構造は、下記(1)〜(4)または下記(1)、(2)、(3’)〜(5’)により得られる長さa、b、cで定義できる。
(1)ディスコティック液晶性分子の円盤状構造について、できる限り平面に近い分子構造を構築する。結合距離および結合角としては、軌道の混成に応じた標準値を用いることが好ましい。標準値については、日本化学会編、化学便覧改定4版基礎編、第II分冊15章(1993年刊 丸善)に記載がある。
(2)上記(1)で得られた構造を初期値として、分子軌道法や分子力場法により構造を最適化する。最適化方法としては、Gaussian92、MOPAC93 、CHARMm/QUANTA およびMM3 が適用できる。特に好まい方法はGausian92 である。
(3)構造が最適化された円盤状構造中の各原子に、ファンデルワールス半径で定義される球を付与し、これによって分子の形状を記述する。
(4)上記(3)で形状が得られた円盤状構造が入り得る最小の直方体の三個の稜をa、b、cとする。
【0011】
任意性を小さくするためには、上記(3)〜(4)に代えて、下記(3’)〜(5’)を行うことが好ましい。
(3’)構造最適化によって得られた構造の重心を原点に移動させ、座標軸を慣性主軸(慣性テンソル楕円体の主軸)にとる。
(4’)各原子にファンデルワールス半径で定義される球を付与し、これによって分子の形状を記述する。
(5’)ファンデルワールス表面上で各座標軸方向の長さを計測し、それらそれぞれをa、b、cとする。
以上の手順により求められたa、b、cを用いて定義すると、好ましい円盤状構造では、a≧b>cかつa≧b≧a/2の関係を満足する。さらに好ましい円盤状構造は、a≧b>cかつa≧b≧0.7aの関係を満足する。また、b/2>cであることも好ましい。
【0012】
ディスコティック液晶性分子としては、既に様々な化合物が提案されている(例えば、C .Destradeらの研究報告、Mol .Cryst .Liq .Cryst .71巻、111 頁(1981 年);日本化学会編、季刊化学総説No.22液晶の化学第5 章及び第10章(1994年刊) ;B .Kohne らの研究報告、Angew .Chem.96巻、70頁(1984年)J .M .Lehnらの研究報告、J .Chem.Soc .Chem.Commun.、1794頁(1985年);J .Zhang 、J .S .Moore らの研究報告、J .Am.Chem.Soc .、116 巻、2655頁(1994 年) に記載)。
中心部分の円盤状構造の例には、ベンゼン環、シクロヘキサン環、トリフェニレン環、トルキセン環、コロネン環、フタロシアニン環、ポルフィリン環、アザクラウン環、アセチレンマクロサイクル環およびβ−ジケトン系金属錯体環が含まれる。円盤状構造の例は、日本化学会編、“化学総説No.15、新しい芳香族の化学”(1977年 東京大学出版会刊)にも記載がある。また、金属錯体のように、水素結合や配位結合により、複数の分子の集合体を形成して円盤状構造を形成してもよい。
【0013】
ディスコティック液晶性分子は、中心部分の円盤状構造から放射状に、複数個の互いに同一または異なる側鎖部分が伸びた構造を有する化合物である。
側鎖部分の例としては、アルカノイルオキシ基、アルキルスルホニル基、アルキルチオ基、アルコキシ基、2−(4−アルキルフェニル)エチニル基、末端ビニルアルコキシ基、4−アルコキシフェニル基、アルコキシメチル基、アルキルチオメチル基、2−アルキルチオエトキシメチル基、2−アルコキシエトキシメチル基、2−アルコキシカルボニルエチル基、コレステリルオキシカルボニル、4−アルコキシフェノキシカルボニル基、4−アルコキシベンゾイルオキシ基、4−アルキルベンゾイルオキシ基、4−アルコキシベンゾイル基、4−アルコキシシンナモイルオキシ基、4−アルキルシンナモイルオキシ基および4−アルコキシシンナモイル基が挙げられる。
【0014】
アルカノイルオキシ基の例には、ヘキサノイルオキシ、ヘプタノイルオキシ、オクタノイルオキシ、ノナノイルオキシ、デカノイルオキシおよびウンデカノイルオキシが含まれる。
アルキルスルホニル基の例には、ヘキシルスルホニル、ヘプチルスルホニル、オクチルスルホニル、ノニルスルホニル、デシルスルホニルおよびウンデシルスルホニルが含まれる。
アルキルチオ基の例には、ヘキシルチオ、ヘプチルチオ、オクチルチオ、ノニルチオ、デシルチオ、ウンデシルチオおよびドデシルチオが含まれる。
アルコキシ基の例には、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシおよびウンデシルオキシが含まれる。
2−(4−アルキルフェニル)エチニル基の例には、2−(4−メチルフェニル)エチニル、2−(4−エチルフェニル)エチニル、2−(4−プロピルフェニル)エチニル、2−(4−ブチルフェニル)エチニル、2−(4−ペンチルフェニル)エチニル、2−(4−ヘキシルフェニル)エチニル、2−(4−ヘプチルフェニル)エチニル、2−(4−オクチルフェニル)エチニルおよび2−(4−ノニルフェニル)エチニルが含まれる。
末端ビニルアルコキシ基の例には、4−ビニルブトキシ、5−ビニルペンチルオキシ、6−ビニルヘキシルオキシ、7−ビニルヘプチルオキシ、8−ビニルオクチルオキシおよび9−ビニルノニルオキシが含まれる。
【0015】
4−アルコキシフェニル基のアルコキシ部分の例は、上記アルコキシ基の例と同様である。
アルコキシメチル基のアルコキシ部分の例は、上記アルコキシ基の例と同様である。
アルキルチオメチル基のアルキルチオ部分の例は、上記アルキルチオ基の例と同様である。
2−アルキルチオエトキシメチル基のアルキルチオ部分の例は、上記アルキルチオ基の例と同様である。
2−アルコキシカルボニルエチル基のアルコキシ部分の例は、上記アルコキシ基の例と同様である。
4−アルコキシフェノキシカルボニル基のアルコキシ部分の例は、上記アルコキシ基の例と同様である。
4−アルコキシベンゾイルオキシ基のアルコキシ部分の例は、上記アルコキシ基の例と同様である。
4−アルキルベンゾイルオキシ基の例には、4−メチルベンゾイルオキシ、4−エチルベンゾイルオキシ、4−プロピルベンゾイルオキシ、4−ブチルベンゾイルオキシ、4−ペンチルベンゾイルオキシ、4−ヘキシルベンゾイルオキシ、4−ヘプチルベンゾイルオキシ、4−オクチルベンゾイルオキシおよび4−ノニルベンゾイルオキシが含まれる。
4−アルコキシベンゾイル基のアルコキシ部分の例は、上記アルコキシ基の例と同様である。
【0016】
4−アルコキシシンナモイルオキシ基のアルコキシ部分の例は、上記アルコキシ基の例と同様である。
4−アルキルシンナモイルオキシ基の例には、4−メチルシンナモイルオキシ、4−エチルシンナモイルオキシ、4−プロピルシンナモイルオキシ、4−ブチルシンナモイルオキシ、4−ペンチルシンナモイルオキシ、4−ヘキシルシンナモイルオキシ、4−ヘプチルシンナモイルオキシ、4−オクチルシンナモイルオキシおよび4−ノニルシンナモイルオキシが含まれる。
4−アルコキシシンナモイル基のアルコキシ部分の例は、上記アルコキシ基の例と同様である。
側鎖部分は、上記各例のフェニルの部分が、他のアリール基(例、ナフチル、フェナンスリル、アントラセニル)に置き換わっていてもよい。以上の各例は、さらに置換基を有していてもよい。でもよしい、また前述の置換基に加えて更に置換されていても良い。また、側鎖部分は、上記各例のフェニルの部分が、芳香族性を有する複素環基(例、ピリジル、ピリミジル、トリアジニル、チエニル、フリル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、キノリル、イソキノリル)に置き換わっていてもよい。
【0017】
有機金属錯体からなるディスコティック液晶性分子には、ジイソブチルシランジオールのような有機ケイ素系金属錯体(Eaborn他、J .Chem.Soc .、 549頁、1955年)、β−ジケトン系金属錯体(太田他、J .Chem.Soc .、Chem.Commun.、1099頁、1984年)、長鎖置換フタロシアニン系金属錯体(Simon 他、J .Amer.Chem.Soc .、104 巻、5244頁、1982年)、ジチオレン系金属錯体(太田他、J .Chem.Soc .、Chem.Commun.、 883頁、1986年)、ポルフィリン系金属錯体(清水他、Chem.Lett.、1041頁、1986年)、金属(II)カルボキシレート系複核錯体(Giroud他、J .Phys.Lett.、45巻、L-681 頁、1984年)、イミン系のPd複核錯体(Simon 他、Liq .Cryst .、 4巻、707 頁、1989年)およびビス(グリオキシマート)金属(II)系錯体(太田他、Mol .Cryst .Liq .Cryst .、203 巻、43頁、1991年)が含まれる。有機金属錯体系の液晶は、従来の液晶にはない新規な物性を利用して、(1)サーモクロミズムやエレクトロクロミズムのような変色性の利用、(2)錯体本来がもつ濃厚な有色性を利用した色素液晶への応用、(3)一次元電導体への応用および(4)強磁性体への応用のような、新たな用途の可能性を有している。
【0018】
ディスコティック液晶相は、ディスコティックネマティック相とカラムナー相に分類され、カラムナー相は、さらにヘキサゴナル相、レクタンギュラー相およびテトラゴナル相に分類される(H。Zimmerman らの研究報告Israel Journal of Chemistry 、23巻、341 頁(1983年)に記載)。最近ではさらに、ディスコティックラメラ相やカイラルディスコティックネマティック相も報告されている。本発明では、ディスコティック液晶性分子は、ディスコティックカラムナー相を形成することが好ましく、テトラゴナル相を形成することが特に好ましい。
【0019】
図1は、ディスコティック液晶性分子が基板平面に対しホメオトロピック配向している状態でテトラゴナルカラムナー相を形成している状態を示す模式図である。
図1に示すように、ディスコティック液晶性分子の円盤状構造の平面(DLPは、基板(Base)の平面(BSP)と実質的に平行な位置関係にある。これを、ホメオトロピック配向と称する。ディスコティック液晶性分子は、ディスコティックカラム(DC)を形成している。このような状態が、ディスコティックカラムナー相である。ディスコティックカラム(DC)は、基板平面(BSP)上で格子状に配置されている。このような状態が、テトラゴナルカラムナー相である。
【0020】
基板平面に対し、ディスコティック液晶がホメオトロピック配向した状態とは、分子の円盤面が基板平面と平行な位置関係にあることを意味する。ホメオトロピック配向状態は、基板平面のいかなる方向にも異方性をもたないので、配向欠陥が生じず、モノドメイン性である。従って、ホメオトロピック配向したディスコティック液晶性分子を含むフイルムは、ポリカーボネートフイルムやセルローストリアセテートフイルムと同様に、光軸の傾斜しない負の複屈折性光学的異方性材料になる。
液晶表示素子の動作モードとして新たに開発されたOCBやVAでは、セル内で立った棒状液晶性分子の視野角への影響が大きい。OCBやVAモードの視野角を改良するためには、光軸の傾斜しない負の複屈折性光学的異方性材料が必要である。しかし、従来のフイルムでは、膜厚が厚すぎたり、必要とされる光学特性を得ることが困難であったり、寸度安定性が低く液晶表示装置の耐久性劣化の原因となったりしていた。ディスコティック液晶性分子を用いれば、光学特性を膜厚の制御だけで調節できる。
【0021】
ディスコティック液晶性分子については、π−電子共役平面のカラムナー相による高密度スタッキングによる異方高導電性材料としての研究も進められている。現状では、ディスコティックカラムを全て一次元方向に並べる技術がない。しかし、そのような状況でも、カラムナー相内部での電子伝導性が充分に高いことが検証されつつある。ディスコティックカラムを一次元配向させれば、電子伝導性がさらに優れた異方導電性材料が得られることが予想される。
また、可視域に吸収をもつフタロシアニン系の液晶性分子は、光導電性材料としても注目されている。光導電性材料の用途でも、一次元配向性の効果が期待されている。
【0022】
本発明者等は、基板上への液晶性分子の塗布による薄膜の形成、およびテトラゴナル相形成温度への加熱、さらにその状態の固定という大量製造が可能な方法で、ディスコティック液晶がカラムナー相でホメオトロピック配向した異方性材料を簡単に製造することに成功した。薄膜の形成は、塗布以外の方法(例、蒸着、CVD)でも実施可能である。
基板は、表面が平滑である必要がある。光学異方性材料の場合は、光透過率が80%以上であることが好ましい。基板を正面から見たときに、光学的等方性を有することが好ましい。基板としては、市販品(例えば、日本ゼオン(株)製のゼオネックス、日本合成ゴム(株)製のARTON、富士写真フィルム(株)製)を用いてもよい。ポリカーボネートフイルム、ポリアリレートフイルム、ポリスルホンフイルムやポリエーテルスルホンフイルムには、固有複屈折率の大きいとの問題がある。ただし、これらのフイルムでも、フイルム形成(溶液流延や溶融押し出し)の処理条件や延伸(縦、横方向)の処理条件を調節することで、基板として使用することができる。また、ガラス板も好ましい基板である。
異方性導電材料には、導電性基板が用いられる。導電性基板の例には、ITO、ネサガラスあるいは金属を蒸着した基板、無機酸化物をスパッタリングした基板、金属めっきした基板、金属めっきをパターン化した基板、導電性ポリマーを被覆した基板および酸化チタンのような半導体を薄膜として被覆した基板が含まれる。酸化チタンのような半導体の薄膜は、そのまま基板として用いることもできる。
【0023】
異方性層を形成するための塗布液は、ディスコティック液晶性分子を適当な溶媒に溶解することにより調製する。溶媒の例には、アミド(例、ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、芳香族ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)およびエーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の溶媒を併用してもよい。
【0024】
溶液の塗布方法としては、カーテンコーティング、押し出しコーティング、ロールコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、印刷コーティング、スプレーコーティング及びスライドコーティングがある。連続塗布が可能な塗布方法、すなわち、カーテンコーティング、押し出しコーティング、ロールコーティングおよびスライドコーティングが好ましい。塗布後、乾燥し、ついで好ましい液晶相への転移温度以上に加熱し、その配向を固定化し、冷却することにより、熱的耐久性が高い異方性材料が得られる。異方性層の厚みは、0.01乃至200μmであることが好ましく、0.1乃至10μmであることがさらに好ましく、0.5乃至3μmであることが最も好ましい。
【0025】
配向を固定化するには、基板上に液晶性分子の薄膜を形成し、乾燥後、液晶相形成温度範囲内の温度で、カラムナー相を形成させつつ一定時間熱処理し、そのまま続いて熱重合させるか、たは光架橋重合させてから、冷却する。これにより、室温下でのホメオトロピック配向性を維持し、熱的耐久性の高い異方性材料を得ることができる。
液晶配向の固定化は、重合性化合物を使用する方法、ディスコティック液晶性分子に重合性官能基を導入する方法または両者を併用する方法で実施できる。と共存させ、重合性化合物を使用する方法では、重合性化合物をディスコティック液晶性分子と共存させ、重合性化合物を重合により液晶性分子を固定化する。ディスコティック液晶性分子に重合性官能基を導入する方法では、液晶性分子そのものの重合反応により固定化する。両者を併用する方法では、主に重合性化合物と液晶性分子との反応により配向を固定化する。液晶性分子の光学特性あるいは導電性を維持するためには、重合性化合物の使用量をなるべく削減し、ただし、が、好ましくは第二物質の含量をできるだけ低減し、液晶性分子そのものの反応性基により配向を固定化することが好ましい。
【0026】
重合性官能基としては、光重合性基をもちいることが好ましい。光重合性基の例には、アクリロイル基、メタアクリロイル基、クロトニル基、ビニルオキシ基およびエポキシ基が含まれる。
【0027】
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル化合物(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素で置換された芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとP−アミノフェニルケトンとの組合わせ(米国特許3549367号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(特開昭60−105667号公報および米国特許4239850号明細書記載)が含まれる。光重合開始剤の使用量は、光の遮断や液晶相の破壊を生じない程度に調節する。光重合開始剤の量は、溶媒を除いた塗布液組成の0.01乃至20重量%の範囲であることが好ましく、0.5乃至5重量%の範囲であることがさらに好ましい。
重合反応を促進するため、アミンを使用してもよい。アミンの例には、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルおよびミヒラーケトンが含まれる。アミン化合物の量は、光重合開始剤の量の50乃至200重量%が好ましい。
水素供与性化合物を用いて、光重合開始剤を促進してもよい。水素供与性化合物の例には、N−フェニルグリシン、2−メルカプトベンゾチアゾールおよびN,N−ジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステルが含まれる。また、酸素による重合阻害を抑制するため、界面活性剤を少量添加してもよい。
エポキシ基の重合には、紫外線活性化カチオン触媒を用いる。カチオン触媒の例には、アリルジアゾニウム塩(例、アリルジアゾニウムヘキサフルオロフォスフェート、アリルジアゾニウムテトラフルオロボラート)、ジアリルヨードニウム塩、VIa族アリーロニウム塩が含まれる。VIa族アリーロニウム塩のアニオンの例には、PF6 -、AsF6 -およびSbF6 -が含まれる。
【0028】
光重合反応は、電子線、紫外線、可視光線あるいは赤外線(熱線)で実施できる。一般には、紫外線が用いられる。紫外線の光源としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)あるいはショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)を用いることができる。
【0029】
ディスコティック液晶性分子として、下記式(I)で表される化合物またはその金属錯体を用いることが特に好ましい。
【0030】
【化5】
【0031】
式(I)において、Z1 、Z2 、Z3 およびZ4 は、それぞれ独立に、芳香族環である。芳香族環には、芳香族炭化水素環、その縮合環、芳香族性を有する複素環およびその縮合環が含まれる。芳香族炭化水素環の例には、ベンゼン環が含まれる。芳香族炭化水素縮合環の例には、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環およびピレン環が含まれる。芳香族性を有する複素環の例には、ピリジン環、ピラジン環、トリアジン環、チオフェン環、フラン環、ピロール環およびチアゾール環が含まれる。芳香族性を有する複素縮合環の例には、キノリン環およびベンゾチアゾール環が含まれる。
式(I)において、n1、n2、n3およびn4は、それぞれ独立に、1乃至8の整数である。n1、n2、n3およびn4は、それぞれ独立に、1乃至6の整数であることが好ましく、1、2または3であることがより好ましく、1または2であることがさらに好ましく、1であることが最も好ましい。
式(I)において、L1 、L2 、L3 およびL4 は、それぞれ独立に、単結合または−O−、−S−、−CO−、−NH−およびそれらの組み合わせから選ばれる二価の連結基である。組み合わせの例には、−CO−NH−、−CO−O−および−O−CO−NH−が含まれる。
【0032】
式(I)において、R1 、R2 、R3 およびR4 は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素原子数が1乃至30のアルキル基または−Ar1 −(L5 −R5 )m で表される置換芳香族環基である。
アルキル基は、分岐を有していてもよい。アルキル基の例には、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシルおよびノナデシルが含まれる。
上記Ar1 は、二価の芳香族環残基である。芳香族環残基の芳香族環には、芳香族炭化水素環、その縮合環、芳香族性を有する複素環およびその縮合環が含まれる。芳香族炭化水素環の例には、ベンゼン環が含まれる。芳香族炭化水素縮合環の例には、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環およびピレン環が含まれる。芳香族性を有する複素環の例には、ピリジン環、ピラジン環、トリアジン環、チオフェン環、フラン環、ピロール環およびチアゾール環が含まれる。芳香族性を有する複素縮合環の例には、キノリン環およびベンゾチアゾール環が含まれる。
上記mは1乃至5の整数である。mは、1乃至4の整数であることが好ましく、2、3または4であることがさらに好ましく、2または3であることが最も好ましい。
上記L5 は、単結合または−O−、−S−、−CO−、−NH−およびそれらの組み合わせから選ばれる二価の連結基である。組み合わせの例には、−CO−NH−、−CO−O−および−O−CO−NH−が含まれる。
【0033】
上記R5 は、ハロゲン原子または炭素原子数が1乃至30のアルキル基であって、m個のR5 の少なくとも一つは、重合性官能基で置換された炭素原子数が1乃至30のアルキル基である。
アルキル基は、分岐を有していてもよい。アルキル基の例には、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシルおよびノナデシルが含まれる。
重合性官能基の例には、アクリロイル基、メタアクリロイル基、クロトニル基、ビニルオキシ基およびエポキシ基が含まれる。m個のR5 の全てが、重合性官能基で置換された炭素原子数が1乃至30のアルキル基であることが好ましい。
【0034】
式(I)で表される化合物は、金属原子または酸化イオンと金属錯体を形成することができる。通常のフタロシアニン系金属錯体と同様に、金属原子または酸化イオンは核の中心に位置する。金属原子の場合、核の内側の二つの窒素原子に結合している二つの水素原子が除かれ、金属原子は窒素原子と直接結合する。金属原子は、核の内側の残り二つの窒素原子とは配位結合する。
金属原子は、周期律表第1族〜第15族から選ばれる金属元素である。金属原子および酸化イオンの例には、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Ba、Sc、Y、ランタノイド系原子(Ce、Eu、Lu)、アクチノイド系原子の酸化イオン(UO2 )、Ti、Zr、Hf、TiO、VO、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、BCl、Al(OH)、In、Si、Sn、Pb、SbおよびBiが含まれる。
以下に、式(I)で表される化合物の具体例を示す。
【0035】
【化6】
【0036】
【化7】
【0037】
【化8】
【0038】
【化9】
【0039】
【化10】
【0040】
【化11】
【0041】
【化12】
【0042】
【化13】
【0043】
【化14】
【0044】
下記式(II)で表される化合物またはその金属錯体からなるディスコティック液晶性分子は、テトラゴナル相を形成し、支持体上で自発的にホメオトロピック配向する。
【0045】
【化15】
【0046】
式(II)において、Rは、炭素原子数1乃至30のアルキル基である。
アルキル基は、分岐を有していてもよい。アルキル基の例には、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシルおよびノナデシルが含まれる。
式(II)で表される化合物も、金属原子または酸化イオンと金属錯体を形成することができる。通常のフタロシアニン系金属錯体と同様に、金属原子または酸化イオンは核の中心に位置する。金属原子の場合、核の内側の二つの窒素原子に結合している二つの水素原子が除かれ、金属原子は窒素原子と直接結合する。金属原子は、核の内側の残り二つの窒素原子とは配位結合する。
金属原子は、周期律表第1族〜第15族から選ばれる金属元素である。金属原子および酸化イオンの例には、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Ba、Sc、Y、ランタノイド系原子(Ce、Eu、Lu)、アクチノイド系原子の酸化イオン(UO2 )、Ti、Zr、Hf、TiO、VO、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、BCl、Al(OH)、In、Si、Sn、Pb、SbおよびBiが含まれる。
以下に、式(II)で表される化合物の具体例を示す。
【0047】
【化16】
【0048】
【化17】
【0049】
【実施例】
[実施例1]
厚さ0.7mmのガラス板を基板とし、その上に下記組成の塗布液をバーコーターを用いて塗布し、室温下で乾燥した。
【0050】
【0051】
ディスコティック液晶層の厚さは1.7μmであった。
この塗布膜を120℃の加熱ゾーンに入れ、均一な配向を確認後、600mJ/cm2 の紫外光(高圧水銀灯)を照射し、ディスコティック液晶の有するビニル基を重合、架橋させてその配向を固定化した薄膜を作成した。こうして得られた本発明の薄膜について、膜面に垂直な面内であらゆる方向からのレタデーション値をエリプソメーター(島津製作所製AEP−100、使用波長=632。8nm)で測定し、その光学特性を評価したが、方位角方向の依存性はなかった。光軸の傾斜角は、平均で5゜未満であり、モノドメイン性のホメオトロピック配向をしていることが分かった。
【0052】
[実施例2]
2cm×2cmのITOコートガラス(一部電極とするためテープでマスクした)上に、実施例1で用いた塗布液を1000rpmにてスピンコート塗布し、同様の処理を行い、配向を固定化した薄膜を形成した。膜厚は8.5μmであった。これに対抗電極として金を1000A真空蒸着して、正孔ドリフト移動度測定用試料を作成した。
【0053】
Time of Flight法により、正孔ドリフト移動度の測定を行った。この手法による測定については多くの文献、成書等に記載されているが、例えば電子写真学会誌第22巻第1号69頁(1983年)に詳しく記載されている。ITOガラスを負極に、金を正極につないで200Vの電圧(約4×105 V/cmの電場)を印可し、Q−スイッチNd:YAGレーザーの第二高調波(532nm)を光源として25℃にて金側から照射した。回路に2000Ωの抵抗とオシロスコープを接続し、得られた光電流の減衰曲線より正孔ドリフト移動度μ=L2 /V×trcm2 /VS(L:膜厚、V:電圧、tr:電荷移動時間)を求めた。
この薄膜の正孔ドリフト移動度μは6.1×10-3cm2 /VSであった。
【0054】
次にこの垂直方向すなわち基板平面方向の正孔ドリフト移動度μを求めた。HD−1の30%メチルエチルケトン溶液を調製し、1mm厚のガラスエポキシ樹脂板上に15μmの薄膜を得た。これを120℃の加熱ゾーンで紫外光600mJ/cm2 を照射し、実施例1と同様に配向を固定化させた。次に、この薄膜上にエポキシ樹脂接着剤を約1mm厚に塗布し、熱硬化させた。この薄膜をミクロトームで20μmの厚みでカットし、超薄切片を得た。その片面を金で1000A蒸着し、逆側をIXOでスパッタリングし、さらにその試料の周囲をミクロトームでカットし、2.5mm径の試料を作成した。
この試料のIXO側を負極に、金側を正極につないで200Vの電圧を印可し、Q−スイッチNd:YAGレーザーの第二高調波(532nm)を光源として25℃にて金側から照射した。回路に2000Ωの抵抗とオシロスコープを接続し、得られた光電流の減衰曲線より正孔ドリフト移動度μ=L2 /V×trcm2 /VS(L:膜厚、V:電圧、tr:電荷移動時間)を求めた。
この薄膜の正孔ドリフト移動度μは1.3×10-8cm2 /VSであり、極めて大きな移動度μの異方性が検証された。
【0055】
[実施例3]
下記の経路で2,3,9,10,16,17,23,24−オクタキス( 3,4−ジドデシルオキシフェノキシ) フタロシアニナト銅(II)錯体(HD−10)を合成した。
【0056】
【化18】
【0057】
3,4−ジドデシルオキシベンズアルデヒド(a)の合成
3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド(5.18g、37.5ミリモル)、ドデシルブロマイド(19.8ml、82.5ミリモル)を150mlの乾燥DMFに溶かした後、炭酸カリウム(37.13g、270ミリモル)を加え、窒素気流下で約7時間加熱還流した。室温まで冷却した後、水で希釈し、エーテルで抽出、飽和食塩水で洗浄し、NaSO4 上で乾燥させた。溶媒を留去後、残渣をエタノールで再結晶精製し、15.93gの白色結晶を得た。収率は89%であった。生成物の同定は、H−NMR(60MHz)スペクトル(日本電子JN−PMX60si高分解能NMR装置)および赤外線吸収スペクトル(日本分光A−100型赤外分光光度計)により行った。
Mp=71.0 〜71.6℃
IR(KBr)3000-2800(CH2/CH3) 、 2750 、 1690(CHO)、 1585 、 1515(Ar) 、 1275 、 1240(Ar-O-C) 、 865、 810(Ar-H)cm-1
1H-NMR(CDCl3) δ=9.86(s; 1H 、 CHO) 、 7.41(dd、 J1=8.96Hz、 J2=1.8Hz; Ar-H)、 7.39(d 、 J=1.8Hz; 1H、 Ar-H)、 6.94(d 、 J=9.00Hz; 1H 、 Ar-H)、 4.07(t 、 J=6.25Hz; 2H 、 -CH2O-)、 4.05(t 、 J=6.25Hz; 2H 、 -CH2O-)、 1.85-1.39(m; 40H 、 -(CH2)10-) 、 0.90(t 、 J=5.85Hz; 6H 、 -CH3)
【0058】
3,4−ジドデシルオキシフェノール(b)の合成
上記3,4−ジドデシルオキシベンズアルデヒド(1.07g、2.25ミリモル)をクロロホルム(5ml)に溶かし、これにメタノール(5ml)、33重量%H2 O2 を1.03g(0.309g、9.09ミリモル)、濃硫酸(二滴)を加え、室温で5時間撹拌した。その後、二層に分かれるまで水を加え、水層をクロロホルムで抽出、飽和食塩水で洗浄、NaSO4 上で乾燥させた。溶媒を留去後、残渣を石油エーテルで2回再結晶精製し0.65gの肌色結晶を得た。収率は61%であった。
Mp=82 〜83℃
IR(KBr)3300(OH) 、 3000-2800(CH2/CH3) 、 1600 、 1505(Ar) 、 1275 、 1215(Ar-O-C) 、 815、 785(Ar-H)cm-1
1H-NMR(CDCl3) δ=6.75(d 、 J=8.75Hz; 1H 、 Ar-H)、 6.43(d 、 J=2.86Hz; 1H 、 Ar-H)、 6.28(dd、 J1=8.57Hz、 J2=2.86Hz; 1H、 Ar-H)、 5.10(s(br) 、 1H 、 OH)、 3.91(t 、 J=6.37Hz; 4H 、 -OCH2-)、 1.75-1.26(m; 40H 、 -(CH2)10-) 、 0.88(t 、 J=5.94; 6H 、 -CH3)
【0059】
4,5−ビス (3 、 4- ジドデシルオキシフェノキシ )-1 、 2- ジシアノベンゼン(c)の合成
4,5−ジクロロフタロニトリル( 0.35g、1.80ミリモル)を乾燥DMSOに溶かし、上記3,4−ジドデシルオキシフェノール(1.83g、3.95ミリモル)を加え、窒素気流下、90℃で加熱撹拌した。その後、0.50gの炭酸カリウムを5分おきに8回加えた。全ての炭酸カリウムを加えてから3時間反応させた。室温まで冷却した後、クロロホルムで抽出、飽和食塩水で洗浄、NaSO4 上で乾燥させた。溶媒を留去後、残渣をエタノールで2回再結晶精製し、1.29gの肌色結晶を得た。収率は68%であった。
Mp=77 〜83℃
IR(KBr)3090(Ar) 、 3000-2800(CH2/CH3) 、 2250(CN-Ar)、 1600 、1500、1405(Ar)、 1230 、 1080(Ar-O-C)cm-1
1H-NMR(CDCl3) δ=7.09(s; 2H 、4,5-ジシアノ-1,2-フェニレン)、 7.04-6.53(m; 6H、3,4-ジアルコキシフェノキシ) 、 4.02(t 、 J=6.27Hz; 4H 、 -OCH2-)、 3.96(t 、 J=6. 。27Hz; 4H、 -OCH2-)、 2.02-1.28(m; 80H 、 -(CH2)10-) 、 0.88(t 、 J=5.83Hz; 12H、 -CH3)
【0060】
2,3,9,10,16,17,23,24−オクタキス ( 3,4−ジドデシルオキシフェノキシ ) フタロシアニナト銅( II )錯体(HD−10)の合成
4,5−ビス( 3,4−ジドデシルオキシフェノキシ) −1,2−ジシアノベンゼン(0.50g、0.48ミリモル)、塩化第二銅(0.04g、0.3ミリモル)、n−ペンタノール(15ml)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(二滴)を加え、窒素気流下で約30時間加熱還流した。室温まで冷却した後、クロロホルムで抽出、飽和食塩水で洗浄、NaSO4 上で乾燥させた。溶媒を留去後、残渣をエタノールで3回固液抽出し、酢酸エチルで3回再沈させた。さらに、カラムクロマトグラフィーで精製(クロロホルム、Rf=1.00)して0.36gの深緑色液晶を得た。収率は71%であった。
【0061】
最終生成物は、元素分析(元素分析計240B、パーキンエルマー社製)および紫外可視吸収スペクトル(日立330型自記分光光度計)で確認した。得られた化合物の相転移挙動は、温度制御装置(FP−80及びFP−82、メトラー社製)を装備した偏光顕微鏡(オリンパスBH2)、示差走査熱量計(理学サーモフレックスTG−DSC)を用い測定した。液晶相の同定は、温度制御装置(Chino model DB1250−BR00)を付与した自作のホットプレートを装備した、理学ガイガーフレックスを用い、Cu−Kα線による粉末X線回折装置により行った。
【0062】
元素分析結果を第1表に、紫外可視スペクトルの結果(λmax、クロロホルム中)を第2表に示す。熱的相転移挙動(相転移温度とエンタルピー)は、第3表に示す。加熱X線の解析結果は、第4表に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【0067】
ディスコティック液晶性分子(HD−10)から、ガラス基板上に形成した薄膜は、123.9℃以上でカラムナーのテトラゴナル相に転移することが加熱X線の解析結果から確認された。偏光顕微鏡下、クロスニコルで暗視野となり、試料を傾けることで明るくなることから、フタロシアニン環は支持体表面に平行にすなわち分子の光軸は垂直にモノドメイン性のホメオトロピック配向していることが確認された。
【0068】
【発明の効果】
本発明により、ディスコティック液晶製分子を基板上に塗布し、テトラゴナル相を形成し、モノドメイン性のホメオトロピック配向状態の薄膜を形成することができた。この薄膜は、熱または光エネルギーを加えることで固定化が可能であり、光学的及び電子的な異方性を示した。
【図面の簡単な説明】
【図1】ディスコティック液晶性分子が基板平面に対しホメオトロピック配向し、テトラゴナルカラムナー相を形成している状態を示す模式図である。
【符号の説明】
DLP ディスコティック液晶性分子の円盤状構造の平面
Base 基板
BSP 基板の平面
DC ディスコティックカラム
Claims (7)
- 基板およびディスコティック液晶性分子を含む層からなる光学的異方性材料または異方導電性材料であって、下記式(I)で表される化合物またはその金属錯体であるディスコティック液晶性分子が基板平面に対しホメオトロピック配向している状態でカラムナー相を形成しており、そのカラムナー相が固定されていることを特徴とする光学的異方性材料または異方導電性材料。
- カラムナー相がテトラゴナル相である請求項1に記載の光学的異方性材料または異方導電性材料。
- ディスコティック液晶性分子が有機金属錯体化合物である請求項1または請求項2に記載の光学的異方性材料または異方導電性材料。
- 基板上に下記式(I)で表される化合物またはその金属錯体であるディスコティック液晶性分子を含む層を形成する工程;ディスコティック液晶性分子を含む層をカラムナー相形成温度に加熱して、ディスコティック液晶性分子が基板平面に対しホメオトロピック配向している状態でカラムナー相を形成する工程;そして、カラムナー相を固定する工程からなる光学的異方性材料または異方導電性材料の製造方法。
- カラムナー相がテトラゴナル相である請求項4に記載の光学的異方性材料または異方導電性材料の製造方法。
- 光重合反応によってカラムナー相またはテトラゴナル相を固定する請求項4または請求項5に記載の製造方法。
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