本発明の第1の発明に係る給水機は、水を収容する水容器と、水容器に収容される水を、自然流下および吸引の少なくとも一方によって運搬する運搬手段と、運搬手段で運搬される水を冷却する冷却手段を有し、得られる冷水を一時的に貯留する冷水タンクと、運搬手段で運搬される水および冷水タンクから供給される水の少なくとも一方を予備的に加熱する予熱タンクと、予熱タンクから供給される予備的に加熱された水(以下、「中温水」と言う)を加熱する加熱手段を有し、得られる温水を一時的に貯留する温水タンクと、予熱タンクから温水タンクに中温水を供給する管路と、を備え、予熱タンクは、外気温および管路を介して温水タンクから伝導する熱によって、水を予備的に加熱する。
この構成により、温水タンクにおける加熱に要する消費電力が低減する。これは、温水タンクで加熱する水の温度が、室温や冷水温度よりも高い状態であるからである。
本発明の第2の発明に係る給水機では、第1の発明に加えて、予熱タンクは、管路を介して温水タンクから逆流する温水によって、水を予備的に加熱する。
この構成により、予熱タンクは、温水タンクの温水を利用して予備的に加熱をする。
本発明の第3の発明に係る給水機では、第1又は第2の発明に加えて、予熱タンクは、その外周の一部もしくは全部を覆う保温部材を備える。
この構成により、予熱タンクは、保温部材によって予備的な加熱の効率を向上させる。
本発明の第4の発明に係る給水機では、第1から第3のいずれかの発明に加えて、温水タンクは、その外周の上方部のみを覆う保温部材を備える。
この構成により、温水タンクの保温性が高まり、加熱に要する消費電力が削減できる。
本発明の第5発明に係る給水機では、第1から第4のいずれかの発明に加えて、管路は、予熱タンクと温水タンクとの圧力差によって、中温水を温水タンクに供給する。
この構成により、中温水が予熱タンクから温水タンクに供給される。
本発明の第6の発明に係る給水機では、第1から第5のいずれかの発明に加えて、冷水タンクから冷水を供給する冷水供給手段と、温水タンクから温水を供給する温水供給手段と、を更に有し、温水タンクの温水が減少する場合に、予熱タンクは、温水タンクに中温水を供給する。
この構成により、外部に冷水や温水が供給される。また、温水タンクには、常に予熱された中温水が供給されるので、温水タンクにおける加熱に要する消費電力を削減できる。
本発明の第7の発明に係る給水機では、第1から第6のいずれかの発明に加えて、冷却手段は、受熱面で冷水タンクと熱的に接触するペルチェ素子であって、ペルチェ素子は受熱面で得た熱を逆側の面である放熱面に伝導し、放熱面は熱を放散する放熱ファンを備えており、放熱ファンから放熱される熱が、予熱タンクに伝導される。
この構成により、冷水タンクは、ペルチェ素子によって効率的に冷却される。加えて、冷却の過程で生じる余分な熱は、予熱タンクの加熱に用いられるので熱量の効率的な再利用が可能となる。更には、予熱タンクで加熱されて得られる中温水が温水タンクに供給されるので、温水タンクにおける加熱に必要な消費電力が削減できる。
本発明の第8の発明に係る給水機では、第7の発明に加えて、放熱ファンと予熱タンクとは、相互に隙間を有している。
この構成により、予熱タンクからの熱が冷水タンクに逆流しない。
本発明の第9の発明に係る給水機では、第7又は第8の発明に加えて、予熱タンクは、予熱タンクの周囲に設けられ、放熱ファンからの熱を取り込む外壁を更に備える。
この構成により、予熱タンクでの加熱の効率が向上する。
本発明の第10の発明に係る給水機では、第9の発明に加えて、外壁は、予熱タンクおよび温水タンクの双方の周囲に設けられる。
この構成により、温水タンクでの加熱に要する消費電力を低減できる。
本発明の第11の発明に係る給水機では、第7から第10のいずれかの発明に加えて、放熱面の温度が所定値以上の場合には、放熱ファンを回転させ、放熱面の温度が所定値未満の場合には、放熱ファンの回転を停止させる、放熱ファン制御手段を更に備える。
この構成により、放熱ファンの電力を削減できる。加えて、放熱が必要なときのみに放熱できる。
本発明の第12の発明に係る給水機では、第7から第11のいずれかの発明に加えて、予熱タンク、温水タンク、冷水タンクの少なくとも一つに、水を押し出す空気を供給する空気管を備え、放熱ファンの熱は、空気管に伝導される。
この構成により、空気管を通る空気が殺菌される。
本発明の第13の発明に係る給水機では、第1から第12のいずれかの発明に加えて、加熱手段は、加熱ヒーターであって、温水タンクの温度を測定する温度測定部を更に備え、温度測定部で測定される温度が第1の所定値未満である場合に加熱ヒーターは作動し、第2の所定値以上である場合には加熱ヒーターは停止する。
この構成により、加熱に要する消費電力を更に削減できる。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
(実施の形態1)
まず、図1、図2を用いて実施の形態1における給水機の全体概要を説明する。
図1、図2は、本発明の実施の形態1における給水機の側面図である。図1、図2共に、給水機1の内部を可視状態として示している。
(全体概要)
給水機1は、水を収容する水容器3と、水容器3に収容される水を運搬する運搬手段と、冷水タンク5と、予熱タンク9と、温水タンク10と、予熱タンク9から中温水を温水タンク10に供給する管路14とを備える。運搬手段は、自然流下および吸引の少なくとも一方によって水容器3の水を運搬するが、図1に示される給水機1では、供給管4が水容器3の水を自然流下によって冷水タンク5と予熱タンク9とに供給する。すなわち、供給管4が運搬手段である。
給水機1全体は、筐体2で形成されている。
冷水タンク5は、水容器3から得られた水を冷却する冷却手段を備えている。冷却手段は、蒸発管6、蒸発管6につながる凝縮器7とコンプレッサ8を備えており、蒸発管6、凝縮記およびコンプレッサ8によって冷水タンク5内部の水を冷却する。冷水タンク5は、冷却されて得られる冷水を一時的に貯留し、冷水供給手段11から冷水を供給する。
水容器3は、供給管4を介して、冷水タンク5と並列して予熱タンク9に水を供給する。また図3のように、予熱タンク9は、水容器3と直接的ではなく冷水タンク5を経由して水を供給されてもよい。すなわち、予熱タンク9は、運搬手段によって水容器3から供給される水および冷水タンク5から供給される水の少なくとも一方を得る。
予熱タンク9は、得られた水を予備的に加熱し、予備的に加熱された中温水を生成し、一時的に貯留する。中温水は、最終的に温水タンク10より得られる温水よりは水温が低いが、冷水での温度や室温よりは高い水温を有する。予熱タンク9は、外気温や筐体2の内部に生じている熱を用いて水容器3や冷水タンク5から供給される水を加熱する。また、予熱タンク9と温水タンク10とは管路14で接続されているので、温水タンク10の温水が管路14を通じて逆流することもありうる。このような逆流によっても予熱タンク9は、一定の温度まで水を加熱できる。結果として、予熱タンク9は、中温水を得る。
あるいは、温水タンク10の内部を加熱する加熱ヒーター15から漏れる熱を用いて、予熱タンク9は水を加熱して中温水を得る。例えば、加熱ヒーター15の一部が予熱タンク9にまで届くように加熱ヒーター15の形状を形成したり、温水タンク10の外部を覆う加熱ヒーター15の熱を伝える伝熱部材が加熱ヒーター15から予熱タンク9に届いたり、加熱ヒーター15と予熱タンク9との外周を一緒に覆う外周材を設けたりすることで、予熱タンク9に加熱ヒーター15の熱が届く。
管路14は、予熱タンク9の中温水を温水タンク10に供給する。温水タンク10は、加熱ヒーター15のような加熱手段を備えており、温水タンク10に供給される中温水を温水にする。ここで、温水タンク10は、外部に温水を供給する温水供給手段12を備えており、温水供給手段12から温水が供給されることで温水タンク10内部の温水が減少すると、予熱タンク9より管路14を介して中温水が温水タンク10に供給される。
温水タンク10は、中温水を加熱して、温水を生成する。この温水は、一般的には90℃程度であり、温水供給手段12より得られる温水は、そのままお茶やコーヒーに用いることができる。
このとき、温水タンク10は、中温水から温水まで加熱すればよいので、室温や冷水から加熱するよりも加熱にかかわる熱量が少ない。この結果、給水機1は、温水を得るための加熱に必要な熱量が少なくて済む。すなわち、給水機1は、加熱に必要な消費電力を低減できる。
(吸引による給水機)
また、給水機1は、図2に示されるように、水容器3が筐体2の底部に備えられ、吸引ポンプ20のような吸引手段によって、水容器3から冷水タンク5へ水が運搬される構造であっても良い。
自然流下ではなく吸引手段を用いることで、水容器が収縮可能な素材である場合に、吸引に合わせて水容器3が収縮して水容器3内部に空気が入り込まなくなる。水容器3に空気が入り込まないことで、水容器3内部の水に雑菌が混入しないメリットがある。
図2に示される給水機1では、底部に備えられた水容器3から吸引ポンプ20で水を吸い上げて、冷水タンク5および予熱タンク9に水を運搬する。冷水タンク5は、図1に示される場合と同様に、コンプレッサおよび蒸発管を用いて内部の水を冷却して冷水を得る。なお、図2では、コンプレッサや蒸発管の図示は省略されている。冷水タンク5の先には冷水供給手段11が接続されており、冷水コックや蛇口が開かれると、冷水タンク5が冷水を供給する。
予熱タンク9も、水容器3から吸引で運搬された水を一時的に貯留する。この貯留において、予熱タンク9は、加熱ヒーター15から漏れる熱を用いて水を加熱したり、給水機1内部の温度を用いて水を加熱したりして、室温よりは高く温水の温度よりは低い程度の温度を有する中温水を得る。あるいは、温水タンク10と接続される管路14を通じて逆流する温水によって予熱タンク9内部の水の温度が上昇して、内部の水は中温水になる。
このように、予熱タンク9は、冷水の温度や室温よりも高いが温水の温度よりは低い温度を有する中温水を生成して、温水タンク10に供給できるようになる。
管路14は、予熱タンク9から温水タンク10へ中温水を供給する。
温水供給手段12によって、外部に温水が供給されることで、温水タンク10内部の温水が減少すると温水タンク10へ管路14から中温水が供給される。この供給により温水タンク10内部は水で充填される。温水タンク10は、その外周を覆う加熱ヒーター15を備えており、加熱ヒーター15は温水タンク10を加熱して内部の中温水を温水にする。
この加熱の際においては、冷水の温度や室温よりも高い温度を有する中温水から温水(90℃前後である)に加熱するだけであるので、従来の給水機よりも少ない熱量(すなわち消費電力)で、温水を得ることができる。
なお、発明者の実験においては、中温水は50℃〜60℃程度であり、室温水の20℃前後や冷水10℃前後よりも高く、加熱に必要な温度の差分値が非常に小さくなっており加熱における消費電力が低減することが分かる。
また、図1や図2に示される温水タンク10には、温度測定部13が備えられており、温度測定部13は、温水タンク10の温度を測定する。温水タンク10の温度は温水タンク10内部の温水の温度を示しており、温度測定部13は、温水の温度を測定できる。
このとき、温水(温水タンク10)の温度が第1の所定値未満である場合に、加熱ヒーター15は作動して温水タンク10を加熱する。加熱しなければ、温水としては不十分な状態になっているからである。一方、温水(温水タンク10)の温度が第2の所定値以上である場合に、加熱ヒーター15は、動作を停止させる。温水が十分な温度を有する状態であるので、加熱の必要は少ないからである。このように温度測定部13の測定結果によって加熱ヒーター15の作動と停止を制御することで、加熱に必要な消費電力を更に低減できる。
(冷水タンクから予熱タンクに水が供給される給水機)
次に、図3に示されるように、予熱タンク9が冷水タンク5より水を供給される場合について説明する。
図3は、本発明の実施の形態1における給水機の側面図である。
図3は、図1に示される給水機と同様に、筐体2の上部に水容器3が設置され、水容器3からの自然流下で水が運搬される。ただし、図1に示される給水機と異なり、図3の給水機1は、水容器3から冷水タンク5にのみ水が運搬され、予熱タンク9は、冷水タンク5より水を得る。このため、予熱タンク9には、水容器3の水が冷水タンク5を経由して供給されることになる。
予熱タンク9に供給される水は、冷水タンク5を経由するので、室温より低い温度を有している。
予熱タンク9は、図1や図2の場合と同様に、加熱ヒーター15の一部が予熱タンク9に接触したり、加熱ヒーター15が生じさせる熱が予熱タンク9に到達したり、筐体2内部の温度によって予熱タンク9が加熱されたり、管路14を介して温水タンク10から温水が逆流したりすることで、予熱タンク9は、冷水を加熱して中温水を生成する。予熱タンク9に供給される水は冷水であるが、加熱ヒーター15から漏れる熱や筐体2内部に籠もっている熱を利用して、予熱タンク9は冷水を加熱するので、冷水の温度より高く通常は室温よりも高い温度を有する中温水を生成できる。
水容器3が冷水タンク5のみに水を供給して、冷水タンク5が予熱タンク9に水を供給する構造である場合には、予熱タンク9に冷水が供給されることになるので、予熱タンク9における加熱負担が大きくなることもある。
しかし、図1に示されるように、水容器3と予熱タンク9とが直接接続される構造であると、予熱タンク9から水容器3に中温水が逆流することもありえるので、水容器3と予熱タンク9とを接続するよりも、図3に示されるように水容器3と冷水タンク5のみが接続され、冷水タンク5が予熱タンク9に水を供給する構造が採用されることも適当である。同様に、従来の給水機においても、水容器から冷水タンクのみに水が供給され、冷水タンクが温水タンクに水を供給する構造が採用されることも多い。
このように、冷水タンク5から予熱タンク9に水が供給される構造の場合でも、予熱タンク9での加熱負担の増加は、冷水タンク5での冷却負担の減少によって相殺されるので、構造上の容易性から、図3に示される給水機1の構造が採用されることもある。
予熱タンク9は、中温水を生成し、中温水を温水タンク10に供給する。温水タンク10は、管路14を介して中温水の供給を受け、中温水を加熱して温水を生成する。得られた温水は温水タンク10内部に貯留され、温水供給手段12によって外部に温水が供給される。
このときも図1や図2に示される給水機と同様に、加熱ヒーター15は、冷水の温度や室温よりも高い程度の温度から温水として必要な90℃前後の温度まで加熱するだけでよい。この結果、加熱に必要な消費電力が低減する。
ここで、加熱ヒーター15が、温度測定部で測定された温水タンク10の温度によって作動や停止を切り替える機能を有することも好適であり、これは図1や図2で示される給水機の場合と同様である。
なお、冷水供給手段11および温水供給手段12は、蛇口やコックを備えている。
(従来技術との比較)
次に、従来技術との比較の上で、実施の形態1の給水機の消費電力削減効果を説明する。
図4、図5は、比較例としての従来技術における給水機の側面図である。
図4に示される給水機は、水容器から冷水タンクと温水タンクとの両方に水が供給される構造であり、これに比較される実施の形態1の給水機は図1に示される給水機である。
図5に示される給水機は、水容器から冷水タンクに水が供給され、冷水タンクから温水タンクに水が供給される構造であり、これに比較される実施の形態1の給水機は図3に示される給水機である。
図4に示される給水機100は、筐体102、水容器103、冷水タンク105、温水タンク110を備えており、冷水タンク105から冷水を供給する冷水供給手段111と、温水タンク110から温水を供給する温水供給手段112と、を備えている。
水容器103から供給管104を通じて、冷水タンク105および温水タンク110に水が供給される。冷水タンク105は、水容器103から得られた水を冷却する冷却手段を備えている。冷却手段は、蒸発管106、蒸発管106につながる凝縮器107とコンプレッサ108を備えている。蒸発管106、凝縮器107およびコンプレッサ108によって冷水タンク105内部の水を冷却する。
温水タンク110は、加熱手段を備えており、加熱手段は、加熱ヒーター115を備えている。加熱ヒーター115は、温水タンク110の外周を覆っており、電力を受けて発生する熱によって温水タンク110を加熱する。この加熱によって温水が生成される。生成された温水は温水供給手段112より供給される。
図4に示される従来の給水機100では、温水タンク110には水容器103から室温を有する水が供給される。このため、加熱ヒーター115は、室温から温水の温度まで加熱する必要がある。このため、加熱における負担が大きく加熱における消費電力が大きい。
一方、図4と比較される図1に示される実施の形態1の給水機1は、予熱タンク9に室温を有する水が供給され、予熱タンク9では、加熱ヒーター15から漏れる熱や筐体内部での熱によって一定温度まで加熱されている。加えて、温水タンク10から逆流する温水によっても予熱タンク9が貯留する水は一定温度まで加熱されている。すなわち、予熱タンク9から温水タンク10に供給される水は、図4の従来技術の場合と異なり室温よりも高い中温水である。このため、加熱ヒーター15は中温水(室温よりも高い)の温度から温水の温度まで加熱するだけで澄む。
特に、温水タンク10に予熱タンク9から水が供給されるのは、温水タンク10からの温水が温水供給手段12を介して供給されたときであり、温水タンク10には常に中温水が供給されることになる。言い換えると、温水タンク10の温水が減少すると、水容器3からではなく、必ず予熱タンク9を経由して中温水が温水タンク10に供給される。このため、温水タンク10における加熱は、中温水の温度(室温より高い)から温水である温度までである。すなわち、温水を得るための温度差が、従来技術の給水機100よりも小さい。
このように、図1に示される実施の形態1の給水機は、図4に示される従来技術の給水機100に比較して、温水を得るための加熱に必要な消費電力を低減できる。
次に、図5に示される従来技術の給水機と図3に示される実施の形態1における給水機1との比較について説明する。
図5に示される給水機200は、水容器103から冷水タンク105に自然流下で水を供給する。冷水タンク105は、給水機100と同じく冷却手段を備えており、冷水を生成する。冷水タンク105と温水タンク110とは管路で接続されており、冷水タンク105は温水タンク110に管路を経由して水を供給する。この供給される水は、冷水タンク105からであるので、冷水である。
温水タンク110は、冷水タンク105から供給された冷水を加熱して温水を得る。加熱ヒーター115を備える加熱手段が温水タンク110を加熱して、内部に貯留されている水を温水にする。
このとき、加熱ヒーター115は、冷水から温水までに加熱する必要があるので、その温度差は非常に大きい。このため、加熱ヒーター115が消費する電力も大きくなる。
一方、図5の従来技術の給水機200と比較される図3に示される実施の形態1における給水機1は、冷水タンク5から予熱タンク9を経由して温水タンク10に水が供給される。このとき、予熱タンク9において冷水は中温水に加熱されているので、温水タンク10には冷水よりも温度の高い水が必ず供給される。予熱タンク9は、加熱ヒーター15から漏れる熱を利用した加熱を行なうので、予熱タンク9内部の冷水は一定の温度まで上昇する。また、予熱タンク9は、筐体2内部に籠もっている温度を利用して冷水を加熱するので、予熱タンク9内部の水は少なくとも室温程度にまでは上昇している。結果として、温水タンク10に供給される水は少なくとも室温以上となっており、図5に示される従来技術に比較して、温水タンク10で上昇させなければならない温度差は、従来技術の給水機200よりも小さい。
この結果、図3に示される構造を有する給水機1であっても、温水を得るための消費電力を低減できる。
なお、予熱タンク9は、専用の加熱ヒーターを用いたりするわけではなく、温水タンク10に用いられる加熱ヒーターから漏れる熱や逆流する温水、あるいは一定期間貯留されることでの自然な温度上昇に基づいて水を加熱するので、予熱タンク9への専用の消費電力は不要である。
以上のように、実施の形態1の給水機1は、水容器3から冷水タンク5および温水タンク10に水が供給される構造であっても、水容器3から冷水タンク5に水が供給され、予熱タンク9(温水タンク10)に冷水タンク5から水が供給される構造であっても、従来技術に比べて温水を得るための加熱に要する消費電力を低減できる。
次に、各部の詳細について説明する。
(水容器)
水容器3の詳細について説明する。
水容器3は、樹脂、ビニール、金属などの素材で形成されており、所定形状と所定の容量を有する。容量は適宜定められれば良いが、家庭やオフィスでの使用あるいは配達は回収の容易性などから10リットル〜50リットル程度の大きさが適当である。また所定形状も適宜定められれば良いが、方形や筒型などが使用や保管の容易性から適当である。
また、水容器3は変形可能な柔軟性を有していても良い。水容器2が変形可能な柔軟性を有することで、水容器3に収容される水が吸引されて減少するのに合わせて、水容器3は収縮できる。水容器3が、収容する水の減少に合わせて収縮できることで、水容器3に外部から空気が入らず水容器3に収容される水が、空気中の雑菌と接触せずに済む。この結果、水が衛生的に保たれる。
水容器3が、図1に示されるように給水機1の上部に設置されて自然流下による場合であっても、水容器1の底部に設置されて吸引による場合であっても同様である。
水容器3がこのような柔軟性を有するために、水容器3の素材としては、柔軟フイルム(ポリプロピレンフイルムやポリエチレンラミネートフイルム等)が用いられ、又、人体に害を及ぼす(例えば環境ホルモンの溶出等)ことがないような素材が用いられる。
なお、水容器3は、水が収容された状態で家庭やオフィスに配達され、水が無くなったら回収されても良い。このように使用者が水容器に水道水や天然水を自分で詰めることをしないことで、給水機1が供給する水の衛生面や安全性が維持できる。
また、水容器3が管路に接続される際には、管路の先端に抗菌帯が取り付けられており、管路の先端を水容器3の口に差し込む際にこの抗菌帯が移動する。このような構造を有することで、管路と水容器2とが接続される際に、水容器2の収容している水へ雑菌が混入する可能性が低くなる。
(運搬手段)
運搬手段は、水容器3の水を冷水タンク5(場合によっては予熱タンク9)に水を運搬する。このとき、運搬手段は、自然流下および吸引の少なくとも一方の手段によって水を運搬する。
図1に示されるように、供給管4によって、運搬手段は自然流下を用いた運搬を行なう。あるいは図2に示されるように、吸引ポンプ20による吸引によって、水容器3から冷水タンク5に水が供給される。
ここで、吸引ポンプ20は、冷水タンク5の水位の変位によって、作動したり停止したりしてもよい。例えば、冷水タンク5の内部には水位検知器が備えられ、水位検知器からの検知信号が吸引ポンプ20に出力される。水位検知器が、冷水タンク5内部の水位が所定未満になったら吸引ポンプ20は、作動して水容器3から水を吸引する。吸引ポンプ20の作動によって水容器3から冷水タンク5に水が供給されて、冷水タンク5の水位が上昇する。
水位検知器(例えばフロート)は、冷水タンク5の水位が所定以上になれば、吸引ポンプ20に通知して、通知を受けた吸引ポンプ20は吸引を停止する。吸引ポンプ20が吸引を停止しなければ、冷水タンク5から冷水が溢れるからである。水位検知器は、吸引ポンプ20に電気的に接続されることで、水位に関する情報を電気信号として通知する。勿論、水位検知器と吸引ポンプ20とが無線によって電気信号をやり取りしても良い。
(冷水タンク)
冷水タンク5は、水容器3から供給された水を冷却手段によって冷却する。冷却手段は、蒸発管6、蒸発管6につながる凝縮器7とコンプレッサ8を備えており、蒸発管6、凝縮記およびコンプレッサ8によって冷水タンク5内部の水を冷却する。冷水タンク5は、冷却されて得られる冷水を一時的に貯留し、冷水供給手段11から冷水を供給する。
冷水供給手段11は、冷水タンク5の上部から延伸するパイプとこれにつながる蛇口やコックによって冷水を供給しても良いし、冷水タンク5の底面から延伸するパイプとこれにつながる蛇口やコックによって冷水を供給しても良い。
冷水タンク5においては底面に近い領域の水のほうが、より冷たい冷水となっているので、冷水供給手段11は、冷水タンク5の底面に近いところから冷水を供給することが好ましい。
冷水タンク5は、冷却されるため、金属製であることが熱伝導率のよさから好ましい。なお、金属以外でも樹脂、ビニール、陶器などでもよい。
冷水タンク5内部には殺菌用紫外線ランプが設けられても良い。殺菌用紫外線ランプは、常時点灯でもよいし所定期間のみ点灯しても良い。また、上述の通り吸引ポンプ20の作動と停止の基準となる水位検知器を備えていても良い。
冷水タンク5の外周には、一対の磁石が対向状態で取り付けられ、この磁石は、磁場を水の中を通すことで水分子(クラスタ)を活性化させて、水の腐食を防止し、雑菌の繁殖を抑えることもできる。
冷水タンク5と予熱タンク9とは、並列して水容器3から水を供給されても良いし(図1に示される構成)、冷水タンク5が水容器3から水を供給され、冷水タンク5が予熱タンク9に水を供給してもよい(図3に示される構成)。
冷水タンク5は、一時的に冷水を貯留し、冷水供給手段11から冷水が外部に供給されて冷水タンク5が貯留する冷水が減少すると、吸引ポンプ20による吸引や自然流下によって水容器3から水が供給されて、冷水タンク5には水が充填される。
(温水タンク)
温水タンク10は、予熱タンク9から供給される中温水を加熱して温水を生成する。
温水タンク10も冷水タンク5と同様に、金属製であることが熱伝導率のよさから好ましい。なお、金属以外でも樹脂、ビニール、陶器などでもよい。また温水タンク10内部には殺菌用紫外線ランプが設けられても良い。殺菌用紫外線ランプは、常時点灯でもよいし所定期間のみ点灯しても良い。
温水タンク10は、加熱手段を有しており、加熱手段が中温水を加熱して温水を生成する。生成された温水は温水タンク10で一時的に貯留される。貯留されている温水は、温水供給手段12より外部に供給される。温水供給手段12より外部に温水が供給されると、温水タンク10内部の温水が減少する。温水が減少することで、予熱タンク9から中温水が温水タンク10に供給される。このとき、温水タンク10には、中温水が供給されるので、冷水の温度や室温よりも高い温度を有する水が供給される。この中温水が供給されることで、温水タンク10で必要となる温度上昇の幅は、室温や冷水を基準とする場合よりも小さくなる。
温水タンク10は、加熱手段を備えており、加熱手段の例として加熱ヒーター15が用いられる。
温水タンク10と予熱タンク9とは、管路14で接続されており、管路14は、予熱タンク9から温水タンク10へ中温水を供給する。このとき、管路14は、温水タンク10の底面に近い位置まで延伸していることが好ましい。例えば、温水タンク10の底面から15mmくらいの位置にまで管路14が延伸していることが好ましい。底面に近い位置にまで延伸することで、温水タンク10の底面付近の温水(沸騰近くではないが、中温水よりは高い温度を有する温水)が、管路14を通じて逆流し、予熱タンク9内部の水が加熱されやすくなる。
加熱ヒーター15は、温水タンク10の周囲に設置され、電力に基づいた加熱によって温水タンク10を加熱する。この加熱ヒーター15は、電力を消費するが、中温水から温水までの加熱で済むので、必要となる電力は従来技術よりも少ない。加熱ヒーター15は、温水タンク10を外部から加熱して温めるので、加熱ヒーター15は、温水タンク10の外部にまかれている状態であることが好適である。
加熱ヒーター15は、温水タンク10の外周に取り付けられる加熱バンドであってもよく、加熱バンドは、温水タンク10の下部に取り付けられることが好適である。温度の高い水は上昇するので、加熱バンドが下部に取り付けられることで、未だ十分に熱くなっていない水を加熱できて効率が良いからである。加えて、加熱バンドが下部に位置することで、温水タンク10内部での対流を促進でき、効率的に温水を得ることができるからである。また、温水タンク10は、樹脂、ビニール、陶器、金属など様々な素材で形成されればよいが、加熱バンドによる効率的な加熱のために、熱伝導率の高い金属で形成されるのが好ましい。
また、温水タンク10には、温水供給手段12が給水路を介して接続される。温水供給手段12は、冷水供給手段11と同じく、蛇口のようにひねって開閉する構造でもよく、コックのように上下に蓋を開閉する構造でも良い。ここで温水供給手段12は、温水タンク10の上面(あるいは上面に近い側面)に接続し、温水タンク10の内部でより温度の高い温水が、温水供給手段12から供給されるようにしておくことが好ましい。
温水タンク10および加熱ヒーター15の少なくとも一方に、温度センサーが設けられ、温度センサーからの通知を受けて加熱ヒーター15の作動と停止が制御されることも好適である。これは、上述の温度測定部13による制御と同じである。
温水タンク10は、中温水を加熱して温水を得るだけで済むので、従来技術よりも加熱における消費電力を低減できる。
また、温水タンク10は、その外周の上方部のみを覆う保温部材30を備えることも好適ある。
図6は、保温部材を備えた状態を示す。図6は、本発明の実施の形態1における給水機の側面図である。図6に示される給水機1では、温水タンク10の周囲および予熱タンク9の周囲が、保温部材30および保温部材31によって覆われている。
まず、温水タンク10の外周を覆う保温部材30を説明する。
保温部材30は、保温性の高い金属繊維や繊維質部材によって形成され、温水タンク10の外周を覆う。ここで、保温部材30は、温水タンク10の上部を中心に取り付けられる。
保温部材30が取り付けられることで、温水タンク10が貯留する温水が保温され、加熱ヒーター15の負担が低減されて加熱に要する消費電力が低減できる。
(予熱タンク)
次に、予熱タンク9について説明する。
予熱タンク9は、水容器3もしくは冷水タンク5より水を供給されて、室温と温水温度との間の温度まで水を加熱する(予熱する)。予熱タンク9は、この加熱(予熱)によって、室温と温水温度との間である(発明者の実験では、50℃前後である)温度を有する中温水を生成する。中温水は、冷水温度や室温よりも高いが温水温度までではない。
予熱タンク9は、温水タンク10のように専用の加熱手段を必要としないので、加熱において余分な電力を消費しない。予熱タンク9は、(1)筐体2内部に籠もっている熱を利用して水を加熱する、(2)加熱ヒーター15から漏れる熱を利用して水を加熱する(中温水までに加熱できれば良いので、漏れる熱で十分である)、(3)加熱ヒーター15の一部が予熱タンク9に接触することを利用して加熱する、(4)管路14(金属製であることが多い)を伝導する熱を利用して加熱する、(5)温水タンク10から逆流する温水が混じることを利用して加熱する、などの態様によって、冷水や室温水を、中温水に加熱する。これらは、いずれも特別な加熱手段を利用するものではなく、余分な電力を消費しない。
また、予熱タンク9は、その外周の一部もしくは全部を覆う保温部材31を備えることも好適である。これは図6に示されている。
図6に示されるように、温水タンク10と同様に、保温部材31が予熱タンク9の外周を覆うことで、予熱タンク9は、余分な電力を消費することなく水の温度を維持したり温めたりできる。結果として、予熱タンク9は、容易に中温水を生成できる。
温水タンク10には、冷水タンク5や水容器3から直接的に水が供給されることが無くなり、必ず予熱タンク9を経由して中温水が供給されるので、温水タンク10が必要とする加熱負担は、従来技術よりもずっと小さくなる。結果として、給水機1は、加熱における消費電力を低減できる。
また、管路14は、予熱タンク9と温水タンク10との圧力差によって中温水を供給してもよい。また、管路14が物理的に予熱タンク9と温水タンク10とを接続しており、温水タンク10内部の温水が減少した場合に、この減少を埋めるように中温水が供給されることでも良い。
予熱タンク9は、筐体2内部に籠もっている熱、加熱ヒーター15から漏れる熱、加熱ヒーター15の一部と接触することで得られる熱、管路14を通じて伝導する熱、温水タンク10から伝わる熱、温水タンク10から管路14を通じて逆流する温水などの種々の手段によって水を予備的に加熱する。
(予熱タンクの位置)
また、予熱タンク9は、温水タンク10の側面に設置されることで、加熱ヒーター15から漏れる熱を効率的に受け取って水を予熱することも好適である。
図7、図8は、本発明の実施の形態1における給水機の内部構成図である。
図7は、内部構成を側面から見た状態を示しており、図8は、内部構成を上から見た状態を示している。
図7、図8に示されるように、予熱タンク9が温水タンク10の側面に設置されることで、温水タンク10の周囲に設けられる加熱ヒーター15が予熱タンク9の側面に近づく。この近づく加熱ヒーター15によって予熱タンク9は加熱されて内部の水が室温や冷水温度よりも高い温度を有する中温水となる。
図7、8に示される給水機では、水容器3から供給管4を通じて水が冷水タンク5に供給される。冷水タンク5は、蒸発管6などを利用して水を冷却して冷水を生成し、冷水を一時的に貯留する。冷水タンク5から管路40を通じて、冷水が予熱タンク9に供給される。
予熱タンク9は、温水タンク10の側面に位置する。温水タンク10は、その外部に加熱ヒーター15を備えている。好適には、加熱ヒーター15は、温水タンク10の外周に装着されている。この加熱ヒーター15は、予熱タンク9とは接触していないとしても、加熱ヒーター15から漏れる熱は、予熱タンク9に到達する。もちろん、加熱ヒーター15の一部が予熱タンク9に接触していれば、加熱ヒーター15の熱が予熱タンク9に到達する。図8の矢印41に示すような熱伝導によって加熱ヒーター15の熱が予熱タンク9に到達する。
この加熱ヒーター15の熱が予熱タンク9に到達することで、予熱タンク9は、この熱を利用して水を加熱し、中温水を生成できる。
図8は、この形態を上から見た状態を示す。図8から明らかな通り、予熱タンク9には、加熱ヒーター15の熱が到達しやすい。加熱ヒーター15の熱によって予熱タンク9は、中温水を得ることができる。この加熱ヒーター15は、温水タンク10における温水までの加熱に用いられるものであるので、予熱タンク9のために余分に設けられたものではない。
すなわち、予熱タンク9は、温水タンク10に必要な加熱を流用しているものであって余分な電力を消費しない。
以上のように、予熱タンク9が温水タンク10の側面に設置されることで、予熱タンク9での予熱が効率的になる。
(変形例)
また、図9に示されるような変形例の構成を有する給水機も選択される。
図9は、本発明の実施の形態1における給水機の側面図である。
図9に示される給水機1は、筐体2の上から、冷水タンク5、予熱タンク9、温水タンク10の順番で配置され、それぞれの間は管路によって水が移動する。
このような構成を有する給水機1は、全体としてスリムな形状になる。
その他の点においては、上述の通りである。
また、冷水タンク5、予熱タンク9および温水タンク10の少なくとも一つに水を押し出す空気を供給する空気管を備える場合には、この空気管が加熱ヒーター15からの熱を受け取ることで、空気管内部を通る空気を殺菌できる。
以上のように、実施の形態1における給水機は、温水タンクに供給される水が必ず中温水にまで加熱された予熱タンクを経由しているので、温水タンクにおける加熱に必要な消費電力を削減できる。結果として、地球環境にもやさしい給水機が実現できる。
なお、発明者の実験によれば、従来の給水機に比べて80%以上の消費電力の削減が確認された。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。
実施の形態2における給水機は、ペルチェ素子を用いて冷水タンクの水を冷却する。ペルチェ素子とは、物体の熱を移動させる。この機能を利用して、ペルチェ素子は物体の有する熱を吸い上げてこの熱を移動させ、結果として物体を冷却する。この冷却機能を冷却機能に用いることで、給水機は、冷水タンクを冷却して冷水を得ることができる。
図10は、本発明の実施の形態2における給水機の側面図である。図10は、給水機50の内部を可視状態にして表している。
給水機50は、筐体2、水容器3、水容器3の水を自然流下および吸引の少なくとも一方によって運搬する運搬手段(図10では、供給管4が運搬手段の例として表されている)、供給管4で供給される水を冷却する冷却手段によって得られる冷水を一時的に貯留する冷水タンク5、供給管4で供給される水を中温水まで加熱する(予熱する)予熱タンク9、予熱タンク9から中温水を供給する管路14、中温水を加熱して温水を得る温水タンク10とを備える。
冷水タンク5が貯留する冷水を外部に供給する冷水供給手段11と、温水タンク10が貯留する温水を外部に供給する温水供給手段12とを、給水機50は、更に備える。
なお、図10においては、水容器3から冷水タンク5および予熱タンク9の両方に供給管4が接続されて、並列に水が供給されるが、図3に示されるように、水容器3からは冷水タンク5のみに水が供給され、冷水タンク5が予熱タンク9に水を供給する構成であっても良い。
水容器3、冷水タンク5、温水タンク10、予熱タンク9については、実施の形態1で説明した通りである。実施の形態2の給水機は、冷却手段として、ペルチェ素子60を用いる。このペルチェ素子60の熱移動の機能によって、冷水タンク5から熱を奪って冷水タンク5を冷却する。
ペルチェ素子60は、冷水タンク5に熱的に接触するように取り付けられる。ペルチェ素子は、2種類の金属の接合部に電流を流すと、一方の金属から他方の金属に熱が移動する機能を有する半導体素子であり、ペルチェ素子60を冷水タンク5の外周に取り付けて、ペルチェ素子60に適当な電流を流すことで、冷水タンク5からの熱がペルチェ素子60内部を移動する。この熱移動で冷水タンク5から熱が奪われて、内部の水が冷却されて冷水タンク5は、冷水を得る。
ペルチェ素子60は、板状の部材であり、一方の面を冷水タンク5に熱的に接触させている。この冷水タンク5側の面からペルチェ素子60内部を熱が移動して、ペルチェ素子60の冷水タンク5と逆側の面(放熱面)に熱が到達する。この到達した熱は、外部に放散される必要がある。このため、放熱面には、放熱ファン61が取り付けられる。
放熱ファン61は、ファンを回転させたりヒートシンクを設けたりして、放熱面に伝わった熱を放散する。この結果、冷水タンク5が冷却され続ける。
放熱ファン61は、外部に熱が放散されるので、放熱ファン61と対向する領域には熱が伝導される。実施の形態2の給水機50は、図10に示されるとおり、予熱タンク9の外周には、放熱ファン61からの熱が当てられており、放熱ファン61から放散される熱が予熱タンク9に伝導される。言い換えれば、冷水タンクから奪われた熱が予熱タンク9に伝導される。放熱ファン61から放散される熱は、冷水タンク5の冷却によって生じる余分な熱であり、電力を消費した上で生じさせた熱ではない。矢印62は、放熱ファン61から予熱タンク9に熱が伝導する状態を示している。
予熱タンク9は、この冷却によって生じる余分な熱(本来は捨てるだけの熱)によって、内部に貯留する水を加熱できる。このとき、放熱ファン61が放散する熱は、ペルチェ素子60が伝導する程度の熱に過ぎないので、加熱ヒーター15ほど大きな熱量を持つものではない。この程度の熱によって、予熱タンク9は、温水ほどの温度ではないが、室温や冷水温度よりも高い程度の温度を有する中温水を得ることができる。
ペルチェ素子60が、冷却手段として用いられることで、冷水タンク5を冷却して冷水を得るだけでなく、冷却を通じて排出される余分な熱が、予熱タンク9での予備的な加熱に用いられる。無駄の無い効率的な熱量の利用ができる。
また、放熱ファン61と予熱タンク9とは、相互に隙間を有していることが好ましい。ペルチェ素子60は、2種類の金属で形成されており、一方から他方へ熱を伝える。このため、ペルチェ素子60の一方の面は受熱面として冷水タンク5に接触していることは好ましいが(冷水タンク5の熱を奪うことが目的であるので)、他方の面である放熱面が予熱タンク9と接触していることは好ましくない。ペルチェ素子60の放熱面が予熱タンク9と接触していると、予熱タンク9の熱がペルチェ素子60を逆流して冷水タンク5に伝導する可能性があるからである。このため、放熱面や放熱ファン61と予熱タンク9とは隙間を有していることが好適である。
予熱タンク9で加熱されて得られる中温水は、管路14を介して温水タンク10に供給される。温水タンク10は、中温水を温水に加熱するための加熱手段である加熱ヒーター15を備えている。加熱ヒーター15は、温水タンク10の外周に取り付けられており、加熱ヒーター15が温水タンク10に熱量を与えることで、温水タンク10を加熱して温水を得る。
このとき、加熱ヒーター15は、室温や冷水温度よりも高い温度を有する中温水を加熱して温水を生成すればよいので、加熱に必要な熱量(消費電力)は少なくて済む。これは実施の形態1で説明したのと同様である。中温水は、発明者の実験では50℃前後であり、温水は90℃前後であって、その差分は40℃程度である。これは、20℃程度の室温や10℃前後の冷水を基準とするよりも、差分が小さい。結果として、温水までに加熱するのに必要な消費電力は小さくなる。
温水供給手段12から温水が外部に供給されると温水タンク10の温水が減少する。この減少を埋めるように予熱タンク9から中温水が温水タンク10に供給される。温水タンク10は、再び供給される中温水を加熱するだけでよいので、加熱における消費電力も少なくて済む。
以上のように、図10に示される給水機50は、冷水を得るための冷却手段にペルチェ素子60を用い、このペルチェ素子60から排出される余分な熱を利用して予熱タンク9内部の水を加熱して、中温水を得る。この中温水が、加熱手段で加熱されて温水タンク10で温水にされる。この構成によって、無駄の無い熱設計に基づいた給水機50が実現されると共に、加熱における消費電力が大きく削減できる。
(変形例)
また、図11に示されるように、予熱タンク9は、放熱ファン61から伝導される熱を取り込みやすい外壁70を更に備えることも好適である。図11は、本発明の実施の形態2における給水機の側面図である。
外壁70は、放熱ファン61からの熱を受ける部分に開口部を有し、それ以外の部分においては予熱タンク9を覆っている。このような構造を有することで、外壁70は、放熱ファン61からの熱を外壁70の内部に取り込みつつ、外壁内部に熱を蓄積させる。この蓄積された熱によって、予熱タンク9は、放熱ファン61からの熱を効率的に利用して内部の水を加熱できる。この加熱によって、中温水を得ることができる。
放熱ファン61からの熱が、外壁70によって不要な場所に逃れることなく、必要とする予熱タンク9のみに集まることで、予熱タンクでの加熱効率が向上し、中温水の温度が高まって、温水タンク10の加熱ヒーター15の消費電力を更に低減できる。
外壁70は、放熱ファン61からの熱を受ける部分に開口部を備えつつ、予熱タンク9と他の部材(例えば温水タンク10)と接続する部分においても開口部を有している。
また、図12に示されるように、外壁70は、予熱タンク9と温水タンク10の双方を覆うように設けられても良い。図12は、本発明の実施の形態2における給水機の側面図である。
図12に示される給水機50は、外壁70が、予熱タンク9と温水タンク10との双方を覆っている。外壁70は、放熱ファン61からの熱が伝わる領域において開口部を有しており、この開口部から外壁70の内部に熱を取り込む。この取り込まれた熱によって外壁内部が加熱される。外壁70によって周囲を囲まれていることで、内部に熱を蓄積できる。
この結果、放熱ファン61が放散する熱を外壁70内部に効率的に取り込むことができ、予熱タンク9は、この放熱ファン61からの熱によって内部の水を加熱して中温水を生成できる。加えて、外壁70が、温水タンク10までを覆っているので、外壁70内部に蓄積される熱は温水タンク10をも温める。結果として、加熱ヒーター15が要する消費電力を更に低減できる。
加えて、予熱タンク9と温水タンク10が外壁70で覆われることで、加熱ヒーター15から外壁70内部に伝わる熱が、予熱タンク9に伝導する。この伝導された熱によって、予熱タンク9も加熱され、中温水の温度が更に高くなる。高い温度を有する中温水が温水タンク10に供給されることで、加熱ヒーター15が要する消費電力が更に低減できる。
更に、図13に示されるように、放熱ファン61の回転を制御する機能を備えても良い。
図13は、実施の形態2における給水機の側面図である。給水機50は、放熱ファン61の回転を制御する制御手段80を更に備えている。制御手段80は、放熱ファン61に接続されており、ペルチェ素子60の放熱面の温度が所定値以上の場合には、放熱ファン61を回転させ、所定値未満の場合には、放熱ファン61の回転を停止させる。
放熱ファン61は、ペルチェ素子60の放熱面の温度が上がりすぎる場合に、熱を放散することでペルチェ素子60の冷却効果を高めるためであり、加えて放熱ファン61からの熱を予熱タンク9に伝導させるために回転する。
このとき、放熱面の温度が所定値以上であれば、ペルチェ素子60の冷却効果の向上と予熱タンク9への熱伝導とを考慮して放熱ファン61を回転させることが好ましい。放熱ファン61が回転することで、ペルチェ素子60からの熱が放散されると共に熱が予熱タンク9に伝導するからである。
一方、放熱面の温度が所定値未満(この所定値は、回転させる基準の所定値と同じでも低い温度でもよい)である場合には、ペルチェ素子60の冷却効果は十分である上、放熱ファン61からの風によって予熱タンク9が却って冷却されることもありうる。
このため、所定値未満の場合には、放熱ファン61の回転を停止させる。
このように、放熱ファン61の回転を制御する制御手段80が備わっていることにより、ペルチェ素子60の冷却機能の向上や、予熱タンク9への熱伝導が効率化できる。
以上のように、実施の形態2の給水機は、ペルチェ素子を用いて冷水タンクの冷却と、ペルチェ素子から伝わる熱を利用した予熱タンクの加熱(予熱)とを両立させ、余分な電力などを用いることなく、加熱における消費電力を低減できる。特に、ペルチェ素子を利用することで、給水機を小型化できる。
なお、図14に示されるとおり、底部に設置された水容器3から吸引ポンプ20によって吸引された水が、冷水タンク5に供給される構造でも良い。図14は、本発明の実施の形態2における給水機の側面図である。
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について説明する。
実施の形態3の給水機は、予熱タンク、冷水タンク、温水タンクの少なくとも一つに水を押し出すための空気を供給する空気管を、放熱ファンからの熱によって殺菌する。
図15は、本発明の実施の形態3における給水機の側面図である。
給水機90は、底部に水容器3を設置しており、吸引ポンプ20で水容器3の水を吸引して冷水タンク5に水を運搬する。冷水タンク5は、管路92を通じて水を予熱タンク9に供給する。予熱タンク9は、水を中温水まで加熱して、この中温水を温水タンク10に供給する。温水タンク10は、加熱ヒーター15を備えており、加熱ヒーター15は温水タンクを加熱して温水を生成する。
冷水供給手段11は、冷水タンク5から冷水を外部に供給し、温水供給手段12は、温水タンク10から温水を外部に供給する。
ここで、冷水タンク5は、吸引によって供給される水を貯留する。加えて冷水タンク5は、この貯留した水を予熱タンク9に供給する必要がある。
このため、冷水タンク5には、水を押し出すために空気が供給される。空気管91は、外部から空気を取り込んで冷水タンク5に空気を供給する。冷水タンク5、予熱タンク9および温水タンク10は、外周が密封されているので、冷水タンク5から予熱タンク9にかけては、空気圧力が掛からなければ水を供給しにくい。このため、空気管91は、冷水タンク5に挿入されており空気を内部に供給する。この空気管91からの空気によって冷水タンク5の水が押し出されて、冷水タンク5から予熱タンク9に水が移動する。
このように、空気管91からの空気供給を受けて冷水タンク5から予熱タンク9への水の供給が行なわれる。一方で、外部から取り込まれた空気が冷水タンク5内部に入り込むので、空気に含まれる雑菌の混入が心配される。実施の形態3の給水機90は、空気管91を放熱ファン61およびペルチェ素子60の放熱面の少なくとも一方と熱的に接触する。言い換えると、空気管91は、放熱ファン61やペルチェ素子60の放熱面からの熱を受ける。この熱によって、空気管91の内部を通る空気は殺菌される。ペルチェ素子60は、冷水タンク5を冷却するために設置されるものであり、その過程において熱を発生させるだけである。空気管91の殺菌は、この発生する熱を有効利用するだけであり、この熱は実施の形態2で説明されたように予熱タンク9の加熱にも用いられる。
すなわち、冷水タンク5を冷却する過程で生まれた余分な熱は、予熱タンク9での加熱にも用いられると共に空気管91の殺菌にも用いられる。
予熱タンク9の水が、放熱ファン61からの熱(すなわちペルチェ素子60から生じる熱)によって加熱されて中温水となることで、温水タンク10での加熱に要する消費電力を低減できる。
図15では示されていないが、空気管91は、加熱ヒーター15と熱的に接触することで内部を通る空気を殺菌しても良い。また、殺菌フィルタや紫外線による殺菌作用などと併せて用いられることも好適である。
以上、実施の形態3における給水機90は、冷却の過程で生じる熱を有効利用して冷水タンク5に取り込まれる空気を殺菌できる。結果として、消費電力を低減できるだけでなく、飲用水を衛生的に保つことができる。
なお、実施の形態1〜3で説明された給水機は、本発明の趣旨を説明する一例であり、将来の技術進歩に伴って、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。