JP5386435B2 - 電解ユニットを製造する方法及び装置 - Google Patents

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この発明は、棒状陽極の外周に、シート状の隔膜をらせん状に配置し、この隔膜の外周に、線状部材をらせん状に配置して陰極を構成してなる電解ユニット、特に水を電気分解してオゾン等の電解生成物が溶解した電解水を得るための電解ユニットを製造する方法及び装置に関する。
従来、殺菌消毒剤としては、価格、入手のしやすさ、効果の点から、次亜塩素酸ナトリウム等の塩素系殺菌剤が広範な用途に用いられている。しかし、塩素系殺菌剤を多量に使用すると、腐食や臭気の問題、さらにはトリハロメタンを増大させる危険性が生じている。
近年、塩素系殺菌剤の代替品として、特に農業及び食品の分野において、水の電気分解により生成される電解水の使用が広まっている。特に、オゾン水は既に食品添加物として認められており、米国においても、食品の殺菌剤として安全性に問題がないGRAS(一般安全認定)に分類され、FDA(食品医薬局)においても、食品貯蔵、製造工程での殺菌剤として承認されている。
オゾン水の製造方法としては、放電型のオゾンガス発生器を用いることが一般的であり、数ppmのオゾン水を容易に製造できることから、浄水処理や食品洗浄の分野で広く利用されている。また、高濃度のオゾンガス及び水が容易に得られる方法として、電解法が知られており、特に電子部品洗浄等の分野で利用がされている。また、電極近傍の溶液に十分な流速を与えることで、ガス化する前にオゾンを水に溶解する直接合成方式と呼ばれるものも知られている。
しかし、これらのいずれもが、装置が比較的大規模となり、例えば、医療現場や家庭での簡易な殺菌及び消毒等の用途には適していなかった。こうした用途に対する要求から、携帯可能な小型化した電解水スプレー装置が提案されている(特許文献1及び2)。
これらの電解水スプレー装置では、特許文献3に示されるような、棒状陽極の外周に、シート状の隔膜をらせん状に配置し、この隔膜の外周に、線状部材をらせん状に配置して陰極を構成してなる電解ユニットが用いられている。
特開2008−73604号公報 特開2008−1275834号公報 特許第4410155号公報
特許文献3に示されるような電解ユニットに用いられる隔膜は、比較的に腰(剛性)が大きく、棒状陽極の外周にらせん状に巻き回しただけでは、隔膜の有する復元性により巻き解けてしまうという問題があった。このため、隔膜と同時に陰極を構成する線状部材をも同時に巻付け、陰極を塑性変形させておくことで、隔膜のいわば押さえとして機能させ、隔膜をらせん巻付け状態に固定するのが一般的であった。この巻付け操作は手作業で行われることが多く、巻付けピッチをある程度大きくせざるを得ないが、陰極を構成する線状部材の巻付けピッチが大きくなるほど電解効率、すなわちオゾン水の生成効率は低下するという問題があった。
したがって、この発明は、従来技術が抱えるこのような問題点を解決することを課題とするものであり、その目的は、陰極を構成する線状部材の巻付けピッチを小さくして、電解効率を高めた電解ユニットを製造する方法及び装置を提供することにある。
上記の目的を達成するため、この発明に従う電解ユニットの製造方法は、棒状陽極の外周に、シート状の隔膜をらせん状に配置し、前記隔膜の外周に、線状部材をらせん状に配置して陰極を構成してなる電解ユニットを製造するに当たり、前記棒状陽極を、回転可能なチャックに、前記棒状陽極の軸線と前記チャックの回転軸線とを一致させた状態で固定し、前記隔膜の一端を、前記棒状陽極に固定し、前記線状部材の一端を、前記チャックに設けた固定手段により固定するとともに、前記線状部材に張力を付与し、前記チャックを回転させつつ、前記隔膜及び前記線状部材を、前記棒状陽極の軸線方向に沿って、前記チャックから遠ざかる向きに移動させ、前記線状部材を塑性変形させつつ、前記棒状陽極と前記線状部材の間に前記隔膜を挟みこむようにして、前記棒状陽極の外周に前記隔膜及び前記線状部材を巻付けることを特徴とするものである。かかる構成を採用することにより、棒状陽極を回転させつつ、隔膜及び線状部材を軸線方向に円滑に移動できることから、比較的小さな巻付けピッチで隔膜及び線状部材を棒状陽極の外周に巻付けることが可能となり、結果として得られる電解ユニットの電解効率を高めることができる。
また、この発明に従う電解ユニットの製造方法は、線状部材の巻付けピッチが線状部材の直径の2〜5倍、より好ましくは2〜4倍となるように隔膜及び線状部材の巻付けを行うことが好ましい。
さらに、線状部材の他端に0.98〜9.8Nの荷重を負荷することにより線状部材に張力を付与することが好ましい。
さらにまた、隔膜の軸線方向間隙が0.5〜1.0mmとなるように隔膜及び線状部材の巻付けを行うことが好ましい。
この発明に用いる線状部材としては、直径が0.6〜1.2mmのものが好ましい。また、この発明に用いる隔膜としては、線状部材の直径の2〜4倍の幅を有するもの、線状部材の直径の0.1〜0.5倍の厚さを有するもの、長手方向に延びる繊維により補強されたものがそれぞれ好ましい。
そして、この発明に従う電解ユニットを製造する装置は、棒状陽極の外周に、シート状の隔膜をらせん状に配置し、前記隔膜の外周に、線状部材をらせん状に配置して陰極を構成してなる電解ユニットを製造する装置において、前記棒状陽極を回転可能に支持するチャックと、前記線状部材の一端を固定する、前記チャック上に設けられた固定手段と、前記線状部材に張力を付与する張力付与手段と、前記隔膜及び前記線状部材を、前記チャックの回転軸線方向に沿って、前記チャックから遠ざかる向きに移動させる案内手段とを備えることを特徴とするものである。かかる構成を採用することにより、チャックにより棒状陽極を回転させつつ、案内手段により隔膜及び線状部材の巻付け位置を円滑に軸線方向に移動できることから、比較的小さな巻付けピッチで隔膜及び線状部材を棒状陽極の外周に巻付けることが可能となり、結果として得られる電解ユニットの電解効率を高めることができる。
この発明によれば、棒状陽極の回転に連動して隔膜及び線状部材を軸線方向に移動させることで、陰極を構成する線状部材の巻付けピッチを小さくして、電解効率を高めた電解ユニットを製造する方法及び装置を提供することが可能となる。
この発明に従う装置の概略全体図である。 この発明に従う装置の要部をチャックに棒状電極を固定した状態で示す概念図である。 この発明に従う装置の要部をチャックに線状部材を固定する前の状態で示す概念図である。 この発明に従う装置の要部をチャックに線状部材を固定した後の状態で示す概念図である。 この発明に従う装置の要部の巻付け開始時の状態を示す概念図である。 この発明に従う装置の要部の巻付け終了時の状態を示す概念図である。
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態を説明する。図1は、この発明に従う装置の概略を示す全体図である。
この発明に従う電解ユニットの製造装置1は、棒状陽極を回転可能に支持するための一対のチャック2、3と、隔膜及び線状部材を、チャック2、3の回転軸線方向に沿って移動させる案内手段4とを備える。図示の例では、駆動ハンドル5の回転を、ギア6、7を介してチャック2に伝達するとともに、ギア6、8を介して案内手段4の軸線方向への駆動力としても用いている。なお、図示の例では、チャック2、3に支持された棒状陽極の回転軸線に対する案内手段4からの線状部材の供給角度を変更するための角度調整機構9を有する。
このようにして構成してなる製造装置1のチャック2、3の間に、図2に示すように、ダイヤモンド電極等の棒状電極10を、その軸線がチャック2、3の回転軸線と一致させた状態で固定する。次いで、イオン交換樹脂膜等の隔膜11の一方の端部12を、チャック2の近傍で、棒状電極10に固定する。チャック2には、線状部材を固定するための固定手段として固定穴13が設けられており、図3に示すように、ステンレス鋼線等の線状部材14の一方の端部15をこの固定穴13に押し込むことで固定する。そして、図4に示すように、隔膜11の上に線状部材14を載置した状態で、隔膜11及び線状部材14を案内手段4に取り付ける。線状部材14の図示しない他方の端部には、おもり、ばね等の図示しない張力付与手段により一定の荷重が加えられており、これによって線状部材14に張力を付与している。なお、張力支持手段としては、これらに限定されず、例えば、図示は省略するが、案内手段4の出口側に一対のローラを設け、このローラ間に線状部材を通し、ローラに回転摩擦を生じさせることで、線状部材に張力を付与することもできる。最後に、図5に示すように、隔膜11及び線状部材14を覆うカバー16を取り付ける。
この状態で、オペレータがハンドル5を回すと、チャック2の回転と連動して案内手段4が、チャック2の回転軸線すなわち棒状陽極10の軸線方向に沿って、固定手段13から遠ざかり、チャック3に向かう向きに移動する。これに伴い、隔膜11及び線状部材14は、棒状陽極10上の巻付け位置を、固定手段13から遠ざかり、チャック3に向かう向きに変えつつ、案内手段4から送り出される。この結果、図6に示すように、棒状陽極10と線状部材14の間に隔膜11が挟み込まれながら、棒状陽極10の外周に隔膜11と線状部材14とがらせん状に巻付けられる。この際、線状部材14は、塑性変形を受けるので、製造装置1から取り外してもコイル状の形態を維持し、その内側でらせん巻付け状態にある隔膜11が、その復元力によりらせんの径方向外側に拡張するのを抑止する。すなわち、線状部材14が隔膜11のいわば押さえとして機能するのである。
その後、棒状陽極10、隔膜11及び線状部材14を装置1から外し、隔膜11及び線状部材14を所要の長さに切断すると、電解ユニットが得られる。このように、棒状陽極10をハンドル5からの駆動力により回転しつつ、この回転に連動して隔膜11及び線状部材14を案内手段により軸線方向に円滑に移動させることで、比較的小さな巻付けピッチで隔膜及び線状部材を棒状陽極の外周に巻付けることが可能となり、結果として得られる電解ユニットの電解効率を高めることができる。
図示の実施態様では、一つの動力源(ハンドル5)からの駆動力を、ギア6により分岐して、チャック2の回転と案内手段4の移動の双方に利用しているが、チャック2と案内手段4とが異なる動力源により駆動されてもよい。また、動力源としては、図示の実施態様のような人力の他、例えばモータ、サーボモータ等を用いることもできる。
棒状陽極上10での線状部材14の巻付けピッチを均一にする観点からは、装置1がチャック2の回転と案内手段4の移動とを同期させる同期手段を備えることが好ましい。図示の実施態様ではギア6がこの同期手段に相当する。なお、同期手段は、図示の実施態様のような機械的手段に限定されず、例えば、チャック2及び案内手段4の動力源としてサーボモータを用い、これらを電気的に同期させることもできる。
本発明では、チャックの回転速度と案内手段の移動速度との比により線状部材の巻付けピッチが決まり、その巻付けピッチは比較的容易に変更可能である。線状部材の巻付けピッチの好ましい範囲は、線状部材の直径の2〜4倍である。これは、線状部材の巻付けピッチがそれの直径の2倍未満の場合には、線状部材相互の間隔、ひいては隔膜相互の間隔が狭くなりすぎ、陽極で発生したオゾンの逃げ場が失われ、陽極と隔膜の間にガスとして滞留する結果、電解効率が低下するおそれがあるからであり、4倍超の場合には、単位長さ当たりの陰極の本数(陰極の配設密度)が低くなりすぎる結果、やはり電解効率が低下するおそれがあるからである。
線状部材を塑性変形させ、確実に隔膜の押さえとして機能させる観点からは、巻付けの際に線状部材に張力を付与することが好ましく、線状部材14の他端に0.98〜9.8Nの荷重を負荷することがさらに好ましい。荷重を0.98〜9.8Nの範囲とするのは、これが0.98N未満の場合には張力不足により線状部材の十分な塑性変形が得られないおそれがあるからであり、9.8N超の場合には線状部材の巻付けに要する回転トルクが過大となるおそれがあるからである。
陽極で発生したオゾンの気泡が、電解ユニットの外に円滑に排出されるためには、隔膜相互の間には間隙があることが好ましく、軸線方向に沿って測った間隙が0.5〜1.0mmの範囲内であることが特に好ましい。間隙が0.5mm未満の場合には、オゾンの気泡が電解ユニットの外に排出されにくく、陽極と隔膜の間にガスとして滞留する結果、電解効率が低下するおそれがあるからであり、1.0mm超とすると、これに伴って線状部材の巻付けピッチも大きくなり、単位長さ当たりの陰極の本数(陰極の配設密度)が低くなりすぎる結果、やはり電解効率が低下するおそれがあるからである。
線状部材としては、入手が容易で安価なステンレス鋼(SUS)製のものが好ましく、その直径は0.6〜1.2mmであることが好ましい。線状部材の直径が0.6mm未満の場合には、電気抵抗が大きくなりすぎ、電解効率を確保するためにより高い電圧を必要とする上、陰極線からの発熱量が大きくなりすぎるおそれがあるからであり、1.2mm超の場合には、線状部材の巻付け作業に必要なエネルギーが過大となるおそれがあるからである。
隔膜としては、線状部材の直径の2〜4倍の幅を有するものを用いることが好ましい。この幅が線状部材の直径の2倍未満と小さい場合には、外力などにより線状部材が隔膜からずれ落ち、陽極と接触(短絡)する可能性が大きくなる。一方、線状部材の直径の4倍超の幅の隔膜を用いると、線状部材の巻付けピッチも大きくなり、単位長さ当たりの陰極の本数(陰極の配設密度)が低くなりすぎる結果、電解効率が低下するおそれがある。
また、隔膜の厚さは、線状部材の直径の0.1〜0.5倍の範囲にあることが好ましい。隔膜の厚さが線状部材の直径の0.1倍未満の場合には、膜の破損部分、ピンホールから短絡するという問題があり、0.5倍超の場合には電気抵抗が高くなり、オゾンの発生効率が低下するという問題があるからである。
さらに、隔膜としては、長手方向に延びる繊維により補強された隔膜を用いることが好ましい。長手方向に繊維補強された隔膜は、強度の点からは好ましいが、腰(剛性)が一層大きくなり、従来の製造方法では使用が困難であったが、本発明に従えば、このように繊維補強された隔膜からであっても問題なく電解ユニットを製造することができる。
なお、上述したところは、この発明の実施形態の一部を示したにすぎず、この発明の趣旨を逸脱しない限り、これらの構成を相互に組み合わせたり、種々の変更を加えたりすることができる。
以上の説明から明らかなように、この発明により、陰極を構成する線状部材の巻付けピッチを小さくして、電解効率を高めた電解ユニットを製造する方法及び装置を提供することが可能となった。
1 製造装置
2、3 チャック
4 案内手段
5 ハンドル
6、7、8 ギア
9 角度調整機構
10 棒状電極
11 隔膜
12 隔膜の一方の端部
13 固定穴
14 線状部材
15 線状部材の一方の端部
16 カバー

Claims (10)

  1. 棒状陽極の外周に、シート状の隔膜をらせん状に配置し、前記隔膜の外周に、線状部材をらせん状に配置して陰極を構成してなる電解ユニットを製造するに当たり、
    前記棒状陽極を、回転可能なチャックに、前記棒状陽極の軸線と前記チャックの回転軸線とを一致させた状態で固定し、
    前記隔膜の一端を、前記棒状陽極に固定し、
    前記線状部材の一端を、前記チャックに設けた固定手段により固定するとともに、前記線状部材に張力を付与し、
    前記チャックを回転させつつ、前記隔膜及び前記線状部材を、前記棒状陽極の軸線方向に沿って、前記固定手段から遠ざかる向きに移動させ、
    前記線状部材を塑性変形させつつ、前記棒状陽極と前記線状部材の間に前記隔膜を挟みこむようにして、前記棒状陽極の外周に前記隔膜及び前記線状部材を巻付けることを特徴とする電解ユニットの製造方法。
  2. 前記線状部材の巻付けピッチが前記線状部材の直径の2〜4倍となるように前記隔膜及び前記線状部材の巻付けを行う、請求項1に記載の電解ユニットの製造方法。
  3. 前記線状部材の他端に0.98〜9.8Nの荷重を負荷することにより前記線状部材に張力を付与する、請求項1又は2に記載の電解ユニットの製造方法。
  4. 前記隔膜の軸線方向間隙が0.5〜1.0mmとなるように前記隔膜及び前記線状部材の巻付けを行う、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電解ユニットの製造方法。
  5. 直径が0.6〜1.2mmの線状部材を用いる、請求項1〜4の何れか一項に記載の電解ユニットの製造方法。
  6. 前記線状部材の直径の2〜4倍の幅を有する隔膜を用いる、請求項1〜5の何れか一項に記載の電解ユニットの製造方法。
  7. 前記線状部材の直径の0.1〜0.5倍の厚さを有する隔膜を用いる、請求項1〜6の何れか一項に記載の電解ユニットの製造方法。
  8. 長手方向に延びる繊維により補強された隔膜を用いる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の電解ユニットの製造方法。
  9. 棒状陽極の外周に、シート状の隔膜をらせん状に配置し、前記隔膜の外周に、線状部材をらせん状に配置して陰極を構成してなる電解ユニットを製造する装置において、
    前記棒状陽極を回転可能に支持するチャックと、
    前記線状部材の一端を固定する、前記チャック上に設けられた固定手段と、
    前記線状部材に張力を付与する張力付与手段と、
    前記隔膜及び前記線状部材を、前記チャックの回転軸線方向に沿って、前記固定手段から遠ざかる向きに移動させる案内手段と
    を備えることを特徴とする電解ユニットの製造装置。
  10. 前記チャックの回転と前記案内手段の移動とを同期させる同期手段を備える、請求項9に記載の製造装置。
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