JP5386146B2 - グリシドールの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、グリセリンカーボネートからグリシドールを製造する方法に関する。
グリシドールは、ポリグリセリン、(ポリ)グリセリンエステル、ジヒドロキシプロピルアミン等や、香粧品、洗浄剤、医薬品、塗料、半導体用UV硬化剤等の原料として有用な物質である。
グリシドール類の製造方法としては、酸化剤の存在下でアリルアルコールを酸化する方法が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。また、グリセリンカーボネートを無触媒又は硫酸ナトリウム等の中性塩の存在下で脱炭酸する方法等が知られている(例えば、特許文献3及び4参照)。
一方、グリセリンカーボネートを製造する方法としては、ホスゲンを用いる方法の他に、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等とグリセリンとの交換反応によって製造する方法、グリセリンと尿素から得る方法等が知られている。
このうち、グリセリンと尿素を用いる方法は、簡便で安価にグリセリンカーボネートを得ることができる点で工業的に有利と思われる。この方法においては、反応は無触媒でも進行するが、硫酸亜鉛や硫酸マンガンのようなルイス酸を触媒として用いるとグリセリンカーボネートが高収率で得られることが知られている(特許文献5参照)。また、脱水剤の存在下で反応させることも知られている(特許文献6参照)。
しかしながら、公知の方法においては、脱炭酸反応の反応温度が200℃前後であるため、化学的に不安定なグリシドール同士の反応、又はグリシドールと原料であるグリセリンカーボネートとの反応等の副反応を誘発し、収率が低下する等の問題があった。
グリセリンカーボネートからグリシドールを得る公知の方法(例えば特許文献3及び4)には副反応の抑制に関してはほとんど開示されていない。したがって、グリセリンカーボネ−トから脱炭酸反応によってグリシドールを得る製造方法に関し、副反応を抑制して高選択的にグリシドールを得る技術的課題も知られていない。
特開2001−106680号公報 特開昭57−52341号公報 米国特許第2856413号明細書 特開平6−157509号公報 欧州特許出願公開第0955298号明細書 特開2000−247967号公報
本発明は、グリセリンカーボネートを原料として高選択的にグリシドールを製造する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、活性水素を有しない溶媒の存在下でグリセリンカーボネートを脱炭酸させることにより、化学的に不安定なグリシドールを高選択的に製造できることを見出した。
すなわち、本発明は活性水素を有しない溶媒の存在下で、グリセリンカーボネートから脱炭酸反応によってグリシドールを得る製造方法を提供する。
本発明によれば、グリセリンカーボネートを原料として高選択的にグリシドールを製造する方法を提供することができる。
本発明のグリシドールの製造方法は、活性水素を有しない溶媒の存在下で、グリセリンカーボネートから脱炭酸反応によってグリシドールを得ることを特徴とする。
(グリセリンカーボネートの製造)
本発明方法に用いられる原料のグリセリンカーボネートとしては、例えば、下記の反応式で示されるように、式(1)で表されるグリセリンと、式(2)で表される尿素との反応により得られた、式(3)で表されるグリセリンカーボネートを用いることができる。下記反応に際しては、予め反応系を脱水しておくことが好ましい。
Figure 0005386146
グリセリンと尿素との反応は触媒を用いなくても可能であるが、硫酸亜鉛、硫酸マンガン、硫酸マグネシウム等の各種硫酸塩等のルイス酸触媒を用いることが反応を良好に進行させるうえで好ましい。
(脱炭酸反応前の前処理)
本発明においては、上記のようにして得られたグリセリンカーボネートを脱炭酸反応させるが、脱炭酸反応前の前処理として、必要に応じて蒸留等により精製処理を施してもよく、精製処理を施さずにそのまま脱炭酸反応させてもよい。
グリセリンカーボネート製造時に使用するルイス酸触媒が脱炭酸反応時に残存すると、グリシドールをより選択的に得られないことから、ルイス酸触媒は予め低減しておくことが好ましい。
ルイス酸触媒の含有量は、グリシドールの反応収率の観点から、原料グリセリンカーボネートに対して、好ましくは1500質量ppm以下、より好ましくは1000質量ppm以下、更に好ましくは500質量ppm以下、特に好ましくは1〜200質量ppmである。
(グリシドールの製造)
グリシドールは、下記の反応式で示されるように、活性水素を有しない溶媒の存在下で、式(1)で表されるグリセリンカーボネートを脱炭酸反応させることにより、式(2)で表されるグリシドールが得られる。
Figure 0005386146
(活性水素を有しない溶媒)
活性水素を有しない溶媒は、化学的に不安定なグリシドール同士の反応、又はグリシドールと原料であるグリセリンカーボネートとの反応等の副反応を抑制するため、反応系を低濃度化する観点から用いられる。ポリオール等の活性水素を有する溶媒は、グリセリンカーボネートやグリシドールと反応し収率を低下させるおそれがあるので、活性水素を有する溶媒を用いないか、又は仮に用いる場合には必要最小限の量で用いることがより好ましい。本発明で用いられる活性水素を有しない溶媒の沸点は、グリシドールの沸点よりも高いことが好ましく、グリシドールの沸点より10℃以上、より好ましくは20℃以上、更に好ましくは50℃以上高いことが好ましい。
活性水素を有しない溶媒としては、エーテル系溶媒、飽和炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲン含有炭化水素系溶媒、窒素含有炭化水素系溶媒等の炭化水素系溶媒、アミド系溶媒、ニトリル系溶媒等が挙げられる。溶媒とグリセリンカーボネート又はグリシドールとの反応をことごとく避けるためには、エーテル系溶媒、飽和炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒を用いることが好ましい。
エーテル系溶媒としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリアルキレングリコールジアルキルエーテル等が挙げられる。
ポリアルキレングリコールジアルキルエーテルとしては、ポリメチレングリコールジメチルエーテル、ポリメチレングリコールジエチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジエチルエーテル、ポリプロピレングリコールジメチルエーテル、ポリプロピレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。ポリアルキレングリコールジアルキルエーテルの質量平均分子量に特に制限はないが、通常100〜2000、好ましくは150〜1500、より好ましくは200〜1000の範囲である。
飽和炭化水素系溶媒としては、好ましくは炭素数6〜25、好ましくは炭素数8〜222のものが挙げられ、その具体例としては、デカン、ドデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン等の他、流動パラフィンが挙げられる。用いる流動パラフィンに制限は特になく常温で液体であればよい。
芳香族炭化水素系溶媒としては、好ましくは炭素数8〜20、好ましくは炭素数10〜16のものが挙げられ、その具体例としては、1−フェニルヘプタン、1−フェニルオクタン等のフェニルアルカン、ナフタレン等が挙げられる。
これらの中では、反応系を低濃度化して副反応を抑制する観点から、エーテル系溶媒、及び飽和炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒等の炭化水素系溶剤が好ましい。これらの中でも、ポリアルキレングリコールジメチルエーテル及び流動パラフィンがより好ましく、より具体的には、質量平均分子量が100〜2000、好ましくは150〜1500、より好ましくは200〜1000のポリエチレングリコールジメチルエーテル又は流動パラフィンが特に好ましい。
これらの溶媒は1種単独で、又は2種以上を混合しても用いることができる。
活性水素を有しない溶媒中の水分は、原料であるグリセリンカーボネート、及び反応生成物であるグリシドールの加水分解を引き起こすおそれがあるため、用いる溶媒は予め脱水し精製したものを用いることが好ましい。脱水方法は特に限定されないが、例えば金属水素化物等の乾燥剤を用いる等の常法により脱水乾燥することができる。
用いる溶媒の量は、原料のグリセリンカーボネート100質量部(g)に対して、好ましくは1〜500質量部(g)、より好ましくは10〜400質量部(g)、特に好ましくは20〜300質量部(g)である。なお、活性水素を有する溶媒は、前述した理由により、これら溶媒を用いないか、又は仮に用いる場合には必要最小量の量を用いることがより好ましい。ここで、活性水素を有する溶媒を用いる場合においてもその量は、原料のグリセリンカーボネート100質量部(g)に対して、好ましくは10質量部(g)以下、より好ましくは5質量部(g)以下であり、特に好ましくは実質的に含まないことが望ましい。
(脱炭酸反応の条件)
グリセリンカーボネートの脱炭酸反応は、触媒を用いなくても可能であるが、反応を良好に進行せしめるうえで触媒を用いることが好ましい。触媒としては、無水硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、アルミノ珪酸塩(A3型、A4型、A5型等のA型ゼオライト、Y型ゼオライト等)等のアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩等の中性塩が好ましい。硫酸亜鉛、硫酸マンガン、硫酸水素ナトリウム等の弱酸性塩では、グリセリンカーボネートの転化率が著しく低下するおそれがあるので、これらの弱酸性塩を全く用いないか、又は仮に用いる場合には必要最小限の量で用いることがより好ましい。また、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸マグネシウム等の塩基性塩を触媒として使用することもできるが、反応系内での重合が起こって収率が低下し易いため、これらの塩基性塩を全く用いないか、又は仮に用いる場合には必要最小限の量を用いることがより好ましい。
化学的に不安定なグリシドール同士の反応、又はグリシドールと原料であるグリセリンカーボネートとの反応等の副反応を避けるため、グリセリンカーボネートは反応系に滴下することが好ましい(以下、「滴下式」ともいう)。グリセリンカーボネートの滴下速度は反応温度、反応圧力等により異なるが、生成するグリシドールが反応系中に滞留せず一定に留出する状態となる速度であればよい。
また、反応の形式は滴下式だけではなく、一括式又は連続式でも行うことができる。
一括式としては、グリセリンカーボネート及び触媒を反応開始時より容器内に投入するバッチ反応方式等が挙げられる。
連続式としては、触媒を充填固定化し、そこにグリセリンカーボネートを通液することで反応を進行させる固定床反応方式、又は不均一触媒や均一触媒を原料とともに反応器に供給する方式等が挙げられる。
脱炭酸反応では、反応を促進しつつ、加熱源との接触時間を短くして副反応を抑制し、高純度のグリシドールを得る観点から、生成するグリシドールを迅速に反応場から取り出すことが好ましい。この観点から、薄膜式反応器を用いて半回分式又は連続式で反応を行うことがより好ましい。
薄膜式反応器を用いる場合は、薄膜の厚みの調整や伝熱面の更新を行うことが好ましい。また、生成したグリシドールの分離を促進するために、窒素等の不活性ガスを反応器内に導入することや減圧下で行うことも好ましい態様である。
薄膜式反応器としては、例えば、化学工学便覧(改訂五版、社団法人 化学工学会編、1988年)406頁に記載の撹拌膜型蒸発装置や、同じく493頁に記載の流下膜型分子蒸留装置等が挙げられる。
また、上記以外のその他の公知の反応器を採用することもできる。
薄膜式反応器において、薄膜を形成させる方式は特に限定されず、グリセリンカーボネート、活性水素を有しない溶媒、及び必要に応じて触媒を含む混合液を、加熱面に薄膜状に通過させることのできる方式であればよい。例えば、流下式、上昇液膜式、ワイパー式、撹拌式、回転式、遠心式等が挙げられる。
流下式とは、反応器の加熱された内壁面に上記混合液を自然流下させて薄膜を形成させる方式であり、上昇液膜式とは、反応器の底部よりガスを導入して液膜を押上げて薄膜を形成させる方式である。
ワイパー式とは、反応器の内壁面に上記混合液を自然流下させ、更にワイパーブレードを用いてワイピングすることにより薄膜を形成させる方式であり、撹拌式とは、反応器に供給された上記混合液をスクレーパー等によって攪拌することにより薄膜を形成させる方式である。
回転式とは、回転する円盤表面に原料を伝い流し薄膜を形成させる方式、又は外筒と回転する内筒との間で薄膜を形成させる方式であり、遠心式とは、外筒と内筒の間の両壁に遠心力で薄膜を形成させる方式であり、
これらの中では、流下式、ワイパー式、撹拌式が好ましい。
滴下式又は一括仕込みで反応を行う場合において、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩等の中性塩等の触媒を使用する場合は、その触媒量は、グリセリンカーボネート1モルに対して、好ましくは0.01〜10モル倍量、より好ましくは0.02〜8モル倍量、特に好ましくは0.02〜5モル倍量である。
脱炭酸反応の温度は、好ましくは155〜300℃、より好ましくは160〜280℃、更に好ましくは170〜260℃である。反応圧力は特に限定はないが、好ましくは2.5〜50kPa、より好ましくは2.7〜30kPaである。
反応時間は、原料や溶媒の量、反応温度、反応圧力等により異なるが、通常0.5〜100時間、好ましくは1〜10時間である。
また、生成したグリシドールを反応系外へ効率的に留出させるため、液相中に窒素等の不活性ガスを導入してもよい。不活性ガスの導入量は反応温度、反応圧力等により異なるが、生成するグリシドールが反応系中に滞留せず略一定に留出する状態となる量であればよい。
以下の実施例及び比較例における、ガスクロマトグラフィーの分析条件は以下のとおりである。
・ヒューレット・パッカード社製、HP−6850シリーズ
・カラム:Agilent19091J−433E(HP−5 5%フェニルメチルシロキサン、キャピラリー30.0m×250μm×0.25μm
・入口温度:270℃、検出器温度:300℃
・オーブン:50℃(2分)、300℃(10℃/分)、300℃(5分)
製造例1
1000mlの4つ口フラスコに、グリセリン 301.1g(3.27mol)、尿素 235.3g(3.91mol)を秤量し、80℃まで昇温して均一に溶解させた。その後減圧下で脱水処理を行った。
その後、硫酸亜鉛20.7g(0.13mol)を投入して130℃まで昇温した。昇温後、反応溶液中に窒素を吹き込みながら、系内圧力を2.7〜4.0kPaにして反応を10時間行った。反応終了後、常圧に戻して放冷し、401.9gの反応物を得た(グリセリンカーボネートの純度:84%)。
上記で得られた反応終了物に含有された不溶固体をろ別したのち、薄膜蒸留装置(神鋼バンテック(株)製、型番:2−03型、伝熱面積:0.03m2)を用いて、170℃、0.4kPaで薄膜蒸留し、精製グリセリンカーボネート276.6gを得た(グリセリンカーボネート純度:96%、グリセリン4%含有)。
実施例1
(グリシドールの製造)
分留塔、リービッヒ冷却管、窒素導入管を取付けた300mlの4つ口フラスコに無水硫酸ナトリウム20.0g(0.14mol)、ポリエチレングリコールジメチルエーテル(PEG、メルク社製、平均分子量500)100.3gを入れ、6.7kPaで徐々に200℃まで昇温した。また、分留塔を100℃に保温した。その後、製造例1で得られたグリセリンカーボネート210.3g を4時間かけて滴下した。滴下終了後、2.7kPaで2時間熟成を行った。グリセリンカーボネートの滴下中及び滴下後の熟成中は窒素を50ml/minで液相中に導入した。ガスクロマトグラフィー分析の結果、グリシドールの収量は101.5g、選択率は80%であった。また、反応終了後の残渣中にはグリセリンカーボネートは確認されなかった。
実施例2
分留塔、リービッヒ冷却管、窒素導入管を取り付けた300mlの4つ口フラスコに無水硫酸ナトリウム23.7g(0.17mol)、ポリエチレングリコールジメチルエーテル(メルク社製、平均分子量500)118.3gを入れ6.7kPaで徐々に200℃まで昇温した。また、分留塔を100℃に保温した。その後、グリセリンカーボネート(東京化成工業(株)製)236.9g(2.00mol)を4時間かけて滴下した。滴下終了後、2.7kPaで2時間熟成を行った。グリセリンカーボネートの滴下中及び滴下後の熟成中は窒素を50ml/minで液相中に導入した。ガスクロマトグラフィー分析の結果、グリシドール収量は116.0g、選択率は78%であった。また、反応終了後の残渣中にはグリセリンカーボネートは確認されなかった。
実施例3
分留塔、リービッヒ冷却管を取り付けた300mlの4つ口フラスコに無水硫酸ナトリウム20.0g(0.14mol)、ポリエチレングリコールジメチルエーテル(メルク社製、平均分子量500)100.0gを入れ6.7kPaで徐々に200℃まで昇温した。また、分留塔を100℃に保温した。その後、グリセリンカーボネート(東京化成工業(株)製)99.4g(0.84mol)を2時間かけて滴下した。滴下終了後、3.3kPaで1時間熟成を行った。ガスクロマトグラフィー分析の結果、グリシドール収量は44.5g、選択率は71%であった。また、反応終了後の残渣中にはグリセリンカーボネートは確認されなかった。
実施例4
分留塔、リービッヒ冷却管を取り付けた300mlの4つ口フラスコに無水硫酸ナトリウム20.0g(0.14mol)、流動パラフィン20.0gを入れ6.7kPaで徐々に200℃まで昇温した。また、分留塔を100℃に保温した。その後、グリセリンカーボネート(宇部興産(株)製)100.5g(0.85mol)を2時間かけて滴下した。滴下終了後、4.0kPaで1時間30分熟成を行った。ガスクロマトグラフィー分析の結果、グリシドール収量は42.4g、選択率は68%であった。また、反応終了後の残渣中にはグリセリンカーボネートは確認されなかった。
比較例1
分留塔、リービッヒ冷却管を取り付けた300mlの4つ口フラスコに無水硫酸ナトリウム20.0g(0.14mol)、グリセリン20.1g(0.22mol)を入れ、6.7kPaで徐々に200℃まで昇温した。また、分留塔を100℃に保温した。その後、グリセリンカーボネート(宇部興産(株)製)100.5g(0.85mol)を2時間かけて滴下した。滴下終了後、4.0kPaで1時間30分熟成を行った。ガスクロマトグラフィー分析の結果、グリシドール収量は31.7g、選択率は51%であった。また、反応終了後の残渣中にはグリセリンカーボネートは確認されなかった。
比較例2
リービッヒ冷却管を取り付けた300mlの4つ口フラスコに無水硫酸ナトリウム23.6g(0.17mol)、を入れ6.7kPaで徐々に200℃まで昇温した。その後、グリセリンカーボネート(東京化成工業(株)製)236.2g(2.00mol)を6時間かけて滴下した。滴下終了後、2.7kPaで2時間熟成を行った。ガスクロマトグラフィー分析の結果、グリシドール収量は31.7g、選択率は55%であった。また、反応終了後の残渣中にはグリセリンカーボネートは確認されなかった。
Figure 0005386146
実施例5
内径28mmφ、長さ500mmHの反応管にゼオライトA3(1.40〜2.36mm(8〜12mesh)通過、和光純薬工業(株)製)を203ml(167.2g)充填した。テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEG、和光純薬工業(株)製)を75wt%含有するグリセリンカーボネート(宇部興産(株)製)を反応器上部より供給し、反応温度180℃、LHSV0.5下で窒素を3600ml/minで流通させながら反応を行った。(LHSV[l/h]とは、液流量[ml/h]/触媒充填体積[ml]である。)反応後の溶液をガスクロマトグラフィー分析した結果、転化率は36%、選択率は60%であった。
比較例3
供給する反応液をグリセリンカーボネート(宇部興産(株)製)単独にした以外は実施例5と同様にして反応を行った。反応後の溶液をガスクロマトグラフィー分析した結果、転化率は56%、選択率は14%であった。
Figure 0005386146
実施例6
グリセリンカーボネート(宇部興産(株)製)100g、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(和光純薬工業(株)製)100g、ゼオライトA3(75μm(200mesh)、和光純薬工業(株)製)20gを300mLのフラスコで混合し、フラスコボトムよりスラリー溶液を抜き出した。抜き出した溶液を内部攪拌器の付いた伝熱面積352cm2の薄膜式反応器に、上方から3.8g/minでフィードし、250℃、常圧条件下で反応を行った。また、反応中は下方から窒素1000ml/minを流通し、生成するグリシドールを上方に留分させた。薄膜式反応器のボトムは連続的にフラスコに回収し、再度反応させた。270分循環した後、ガスクロマトグラフィーで分析を行った結果、転化率は94%、選択率は74%であった。
比較例4
供給する反応液をグリセリンカーボネート(宇部興産(株)製)単独にした以外は実施例6と同様にして反応を行った。160分循環した後、ガスクロマトグラフィーで分析を行った結果、転化率は80%、選択率は66%であった。
Figure 0005386146
表1〜3において、反応形式、触媒が同じ実施例、比較例を対比すると、活性水素を有しない溶媒の存在下でグリセリンカーボネートから脱炭酸反応を行うと、活性水素を有しない溶媒を用いない比較例に比べて、選択率が大幅に向上していることが分かる。

Claims (7)

  1. 活性水素を有しない溶媒、及び不均一触媒の存在下で、グリセリンカーボネートを脱炭酸反応させることによるグリシドールの製造方法。
  2. 活性水素を有しない溶媒が、エーテル系溶媒及び/又は炭化水素系溶媒である、請求項1に記載のグリシドールの製造方法。
  3. 活性水素を有しない溶媒が、ポリアルキレングリコールジメチルエーテル及び/又は流動パラフィンである、請求項1又は2に記載のグリシドールの製造方法。
  4. 脱炭酸反応を、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩の中性塩からなる触媒の存在下で行う、請求項1〜3のいずれかに記載のグリシドールの製造方法。
  5. 前記触媒が、無水硫酸ナトリウム又はアルミノ珪酸塩である、請求項4に記載のグリシドールの製造方法。
  6. 脱炭酸反応を、薄膜式反応器を用いて行う、請求項1〜のいずれかに記載のグリシドールの製造方法。
  7. グリセリンカーボネートが、酸触媒の存在下でグリセリンと尿素との反応により得られたものである、請求項1〜のいずれかに記載のグリシドールの製造方法。
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