JP5383541B2 - 銅張樹脂複合セラミックス板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、大電流用のプリント配線板の製造などに好適に使用される厚い銅板を張った新規な銅張樹脂複合セラミックス板の製造方法であり、熱膨張率差に基づく過大な応力発生の抑制およびその分布を制御し、銅板のはがれ、基板のひび割れや歪みの発生を抑制したものである。
従来、銅張ガラスエポキシ積層板等では、銅とガラスエポキシ基板との熱膨張率が前者約17ppm、後者約15ppmであって比較的近く、また、弾性率もそれほど高くないことから、厚い銅箔を張った銅張ガラスエポキシ積層板の製造およびこれを用いた大型のプリント配線板の製造などにおいては、熱膨張率の差が特に問題となることはなかった。ところが、大電流、高発熱の用途に使用する場合、基板の熱伝導率が小さいことから、放熱は別途、放熱部品を取り付けて行う方法によらなければならないために、小型化、高密度化の要求には対応できないものであった。
熱伝導率の高いセラミックスを基板とする場合、放熱性、耐熱性などの点での課題は要求値から適宜選択できる。しかし、熱膨張率がアルミナ基板では約7ppm、窒化アルミウム基板では約4ppm、窒素化珪素では約3ppmであり、それぞれ弾性率も高いことから、銅との大きな熱膨張率差により大きい応力が発生するため、大型の銅張板の製造は極めて困難であり、窒化アルミウム基板では精々2インチ角程度が限界であった。
これらから、大電流用のセラミックス・プリント配線板の製造は、実用的には、プリント配線パターン形状とした金属板を、接着剤として無機酸化物や活性金属などを介して張り付ける方法などによる(特許文献1)。しかしながら、これらの間には熱膨張率差が10ppm以上もあり、かつ、弾性率はセラミックス200〜300GPa、銅110GPaもあることから、温度差に基づく発生応力は中途半端なものではなく、特に、温度サイクル性の改善は永遠の課題と言えるものである。
また、樹脂含浸したマシンナブル・セラミックスに銅箔を識別可能な接着層を無くするように接着してなる銅張樹脂複合セラミックス板は、セラミックスの高い熱伝導率、寸法安定性等を活かし、マシンナブル・セラミックスよりも精密な機械加工が可能であり、後加工を伴う用途に好適に適用できる(特許文献2、特許文献3)。
しかし、厚さ50μm以上、特に0.1mm以上の銅を両面に張った100mm角以上の銅張板を作製し、保存しておくと銅が周囲から剥離してくることが観察された。樹脂複合セラミックス層は、熱膨張率が3〜8ppm、弾性率が50〜80GPa、接着温度が約200℃であり、上記セラミックスとの比較では発生応力は大幅に小さいが、100mm角板の製品化は不可能であった。
特開平4−317473号公報 特開平8−244163号公報 特開平9−314732号公報
銅張樹脂複合セラミックス板として、厚さ50μm以上、特に0.1mm以上の銅箔或いは銅板を両面に張った100mm角以上の銅張板の製品化を可能とする。
そこで、本発明者は、室温と製造温度との温度差に基づく発生応力の可能な限りの低減、および、大型であるが故の大きな応力発生の解消につき、鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、連続気孔セラミックス板に熱硬化性樹脂を含侵した基板の片面或いは両面に金属箔を重ねて積層成形してなる金属箔張樹脂複合セラミックス板の製造方法において、少なくとも片面の前記金属箔が、厚み50μm以上の銅板であって、前記銅板の接着面側に所望のプリント配線パターンの機能を障害しないように溝を形成したものであり、少なくとも前記銅板と直接接触する熱硬化性樹脂が、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との接着用の樹脂組成物であることを特徴とする銅張樹脂複合セラミックス板の製造方法である。
本発明においては、該銅板が、接着面側に所望のプリント配線パターンの機能を障害しないように溝を形成したものである。
この溝の深さは、通常、銅板厚みの20〜90%から選択される。該溝は、(1).所望のプリント配線パターン領域の周囲であって、基板の外周囲から5〜30mmに相当する位置に形成してなるものであること、(2).その一部が、所望のプリント配線パターンのパターン間隙に相当する位置から選択した所望位置に形成してなるものである銅張樹脂複合セラミックス板の製造方法である。
また、該接着用の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂20〜95wt%と熱硬化性樹脂80〜5wt%範囲である。熱硬化性樹脂の熱可塑性樹脂による可撓性の付与、または、熱可塑性樹脂の熱硬化性樹脂による架橋性の付与のいずれかの主目的により主成分を選択する。
厚さ50μm以上の厚い銅板を張った新規な銅張樹脂複合セラミックス板の製造を可能とし、これをエッチング加工などすることにより、高熱伝導率基板を用いた大電流用のプリント配線板の製造などが好適に実施可能とした。
以下、本発明の構成を説明する。
本発明の銅張樹脂複合セラミックス板の製造方法で使用するセラミックス基板、熱硬化性樹脂は、先に示した本発明者らによる特許文献2、特許文献3、その他に開示したものが使用できる。
セラミックス基板としては、無機連続気孔焼結体からなる基板であって、マシーンナブル−セラミックスとして公知のものが挙げられ、熱伝導率が5W/(mK)以上、好ましくは15W/(mK)以上、特に20W/(mK)以上が好ましい。連続気孔率としては、5〜35体積%、好ましくは10〜25体積%の範囲で、曲げ強度40MPa以上である。また、広さは用いる銅板の厚さにもよるが25mm×50mm角以上で通常250mm×300mm角の範囲である。
具体的には、窒化アルミニウム−窒化硼素(AlN−h−BN)、アルミナ−窒化硼素(Al23−h−BN)、酸化ジルコニア−窒化アルミニウム−窒化硼素(ZrO2−AlN−h−BN)、窒化珪素−窒化硼素(Si34−h−BN)、アルミナ−酸化チタン−窒化硼素(Al23−TiO2−h−BN)などの窒化硼素(h−BN)が8〜40%の焼結体からなる基板、アルミナ-酸化ケイ素(Al23−SiO2)、高純度アルミナを用いた基板などが挙げられる。特性面からは、電気特性の温度依存性が小さく、熱衝撃につよく、熱伝導率が大きい窒化アルミニウム−窒化硼素(AlN−h−BN)系の焼結体が好適であり、価格の点からは、高純度アルミナを用いた基板が好ましい。
本発明において、銅板の接着は、熱硬化性樹脂に熱可塑性樹脂を添加した熱硬化性の樹脂組成物を用いる。
熱可塑性樹脂としては、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテル・エーテル・ケトン、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリイミドなどが挙げられ、樹脂溶液を容易に入手でき、耐熱性の高いものが好適である。具体的には、ユピタイト(登録商標)UPA−N111,N221(商品名、宇部興産(株)製)、リカコート(登録商標)EN20(商品名、新日本理化(株)製)が好適なポリイミド樹脂溶液として例示できる。
熱硬化性樹脂としては、付加重合或いは架橋型の耐熱性の樹脂となる熱硬化性樹脂が好ましく、エポキシ樹脂、オレフィン性不飽和二重結合或いは三重結合により架橋硬化するポリイミド系の熱硬化性樹脂(マレイミド樹脂など)、分子中にシアナト基を複数有する芳香族多官能性シアン酸エステル化合物類(シアナト樹脂)などが挙げられ、エポキシ樹脂、シアナト樹脂が好ましい。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素−ホルムアルデヒド樹脂変性ノボラック・エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂(4,4’−ジグリシドキシビフェニル)などが具体的に例示される。シアナト樹脂としては、ビスフェノールA型シアナト樹脂(三菱瓦斯化学株式会社製、品名:BT−2000)、フェノールノボラック型シアナト樹脂(チバ・ガイギー社製、:REX−371)などが具体的に例示される。
少なくとも銅板と直接接触する接着用の樹脂組成物は、通常、上記した熱可塑性樹脂溶液に、熱硬化性樹脂を添加混合することにより製造する。液状の無溶剤の熱硬化性樹脂液に熱可塑性樹脂の微粉末を添加し均一に溶解混合する方法も選択する熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂の種類、添加量などによっては使用可能であり、適宜、選択できる。
接着用の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂20〜95wt%と熱硬化性樹脂80〜5wt%範囲であり、実用的には、熱可塑性樹脂25〜40wt%と熱硬化性樹脂75〜60wt%の熱硬化性樹脂の熱可塑性樹脂による可撓性の付与、または、熱可塑性樹脂60〜90wt%と熱硬化性樹脂40〜10wt%の熱可塑性樹脂の熱硬化性樹脂による架橋性の付与のいずれかの方法を選択することとなる。また、耐熱性の高いポリイミドを用いる場合、ポリイミド単独使用では、成形(接着)に高温、通常、300〜350℃を必要とするが、熱硬化性樹脂との組成物とすることにより、より低温、250〜200℃程度乃至それ以下での成形が可能となる利点がある。
銅板の接着に用いる本樹脂含浸セラミックス板の製造方法は、下記並びにこれらに準じた方法によって形成する。
(1).セラミックス基板に無溶剤の熱硬化性樹脂液を含浸した後、表面の熱硬化性樹脂を取り除き、この上に熱可塑性樹脂・熱硬化性樹脂組成物(=接着用の樹脂組成物)の溶液を塗布し、乾燥して溶剤を除く方法。
(2).含浸用の樹脂組成物として、接着用の樹脂組成物の溶液を調製し、これをセラミックス基板に含浸し、溶剤を乾燥除去すること、並びにこれを適宜、複数回繰り返す方法。
(3).含浸用の樹脂組成物として、無溶剤の接着用の樹脂組成物液を調製し、これをセラミックス基板に含浸する方法。
銅を張った状態における表面の樹脂接着層の厚みは、そのまま銅板上からの熱伝導率(熱放散性)の良否に大きく関与し、識別可能な接着層を無くすることが最も好ましい。この観点から、表面の樹脂層の厚さは、5〜20μmであり、好ましくは15μm以下とする。
通常の熱硬化性樹脂の場合、この方法は、殆ど予備反応していない高流動性の未反応の樹脂を用い、表面層における流動排出と連続気孔を通じたピストンフローによる排出とにより達成する。しかし、熱可塑性樹脂の流動性は、熱硬化性樹脂に比較すると殆どないものと言えるものであり、その場で最大で10〜15μm程度、連続気孔内に押し込まれるように挙動する。
したがって、特に、熱可塑性樹脂主体の接着を必要とする場合には、表面の樹脂層の厚みをプレス温度・圧力・時間にて押し込み可能な値程度になるように厳密に制御するようにする。なお、溝を剥離性の詰め物にて埋め込まない場合に、接着面側に周囲まで続く溝を形成した銅板を用いると、この溝が樹脂の排出路となり排出を促進して接着層を薄くする効果を奏する。
本発明においては、厚み50μm以上で、その接着面側に所望のプリント配線パターンの機能を障害しないように溝を形成した銅板を用いる。
銅板の厚みは通常、0.05〜1.5mm、好ましくは0.1〜1mmである。また、大きさは、用いるセラミックス板と同じか、やや大きいものが好ましい。また、通常、接着面側は、接着用の表面処理を施したものを使用する。
厚いもの、例えば2mm厚銅板を使用する場合、銅板のみの単独での加工においても専用加工機の使用、その後のバリ取りなどが通常必須である。厚い銅板を用いた銅張樹脂複合セラミックス板の場合、通常、銅板と樹脂複合セラミックス板とを同時に機械加工することは困難であり、また、樹脂複合セラミックス板の無い部分の過剰な銅板を除くことも煩わしい。ゆえに、機械加工を行う部分は、可能な限り少なくすることが好ましく、機械加工が必要な場合も、厚銅板のままでの加工を行わない形態、例えば、当該部分を予め機械加工が容易に可能な厚みにしておくこと、部分的に最終加工形状に仕上げたものとするなどの工夫をすることが好ましい。
本発明においては、該銅板が、接着面側に所望のプリント配線パターンの機能を障害しないように溝を形成したものである。
この溝の深さは、通常、銅板厚みの20〜90%から選択される。また、幅はこれらの溝を形成する方法に都合のよいもので十分であり、特に広くする必要も狭くする必要もない。また、銅板の取り扱いの容易さを考慮したもの、例えば、破損を起こしにくくする、との点から溝は、全周囲全体に渡って実質的に均一である必要は無く、補強用として一部の溝を無くする事や他の部分よりも浅い溝とすることなどを適宜選択する。作成方法から、溝が基板の外側まで伸びたものとすることなども適宜選択できる。
溝を形成した銅板を使用する本発明では、好ましくは、溝の位置を示す基準マークを形成した銅板を使用する。なお、溝の位置は、特にプリント配線パターン部分の場合、通常、表裏で異なる位置に形成するので、基準マークはこの識別も可能とする。なお、溝の作成の位置や幅などは位置合わせの精度を考慮したものとする。さらに、薄い銅箔を用いる場合には問題とならないが、厚い銅板を用いることから、セラミックス板の外部に相当する部分の余分の銅板の除去も、通常、容易ではない。そこで、除去の不要な大きさとする方法や容易とするための工夫を適宜施すことが好ましい。
溝の作成方法は、切削などの機械加工、放電加工、エッチングなどいずれでもよい。エッチングを用いる方法を簡単に説明すると、レジスト膜を全面に形成し、基準マークに基づいて機械加工を含む方法にて、エッチング部のレジスト膜を除去する。所定量のエッチングにて溝などを形成し、乾燥した後、適宜、必要な場合には離形性の溝埋めの材料にて穴埋めし、その後、残りのレジスト膜を除去して溝形成の銅板とする。
Vカット・ルータなどで銅板を切削した場合は、回路の短絡の原因となる加工銅粉やバリは、完全に除去する必要がある。
本発明の接着面側に形成する溝は、所望のプリント配線パターンの機能を障害しないものであれば使用できる。より具体的な溝の位置或いは形は、以下の通りである。
(1).全面均一に、熱伝導率および電気特性を阻害しない範囲で多数の溝を形成する。
(2).所望のプリント配線パターン領域の周囲であって、基板の外周囲から5〜30mmに相当する位置に溝を形成する。
(3).前記(2)において、その一部の溝を、所望のプリント配線パターンのパターン間隙に相当する位置から選択した所望位置に形成する。
(4).該所望のプリント配線パターンが長さ100mmを超える場合において、該溝を該プリント配線パターン内で、かつ、該プリント配線パターンの狭幅部分の電気容量を損なわないように選択した位置に形成する。
(5).前記(4)において該溝が、該プリント配線パターン内で、かつ、該プリント配線パターンの長手方向に平行に形成する。
(6).該溝は、プレス時に、過剰な樹脂分が熱溶融して排出されるように、可能な限り、連結する。
上記の銅板をそのまま用いた場合、溝内部は接着用樹脂で埋め込みされた状態の銅張板となる。溝を埋めている樹脂の弾性率は、3〜5GPa程度であり、銅や樹脂複合セラミックス層の1/10以下と小さく、銅と樹脂複合セラミックス層との間で発生する応力との比較では無視でき、応力の分割を達成できる。ここで、前記の溝の位置或いは形の例示について、
(1)の場合、最も汎用性のある方法として、電気特性を考慮した深さの溝を格子状に形成する方法が典型例として例示される。
(2)の場合には、通常、取り扱い性からの配慮で十分である。
(3)の場合には、電気特性からの溝の深さ制限はない。また、実用的なプリント配線パターンの位置精度などを考慮して、パターン間隙内の配置(溝の数、深さ、幅など)を決定する。また、この溝加工を曲線とする場合、エッチングによる方法が最も簡便である。(4)および(5)の場合、(1)と同様に電気特性を考慮した深さの溝を形成する方法となる。(6)の場合、過剰な熱溶融樹脂の排出の為、溝は外周に、適度に分布させる。
上記を用いて、本銅張樹脂複合セラミックス板を製造する。
製造方法は、本発明者による特許文献2、特許文献3、その他に開示した方法が使用できる。そして、製造方法としては、応力緩和のために、通常、プレス圧力を接触圧程度として徐冷することなどを行うことが好ましい。また、接着面側に溝を形成した銅板を使用する場合は、表裏に重ねる銅板の溝の位置を示す基準マークを用いて位置合わせして製造し、また、この基準マークを考慮して、その他の基準マークの作製、スルーホール穴あけ、スルーホールめっき、さらに、両面のプリント配線網の形成を行う。また、銅板や、スルーホール銅めっきの保護として、イミダゾール処理やニッケルめっき、金めっき等の防錆や耐はんだ付け性処理等を行う。
以下、実施例、比較例などにより本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
厚み2.0mm、120mm×150mmの窒化アルミニウム−窒化ホウ素系気孔焼結体(h−BN20wt%、嵩密度2.70g/cm3、開気孔率15vol%、平均気孔径0.48μm、熱伝導率60w/mK、熱膨張率4.2×10-6/℃)に、アルミニウムトリス(エチルアセチルアセトネート)(品名:ALCH−TR、川研ファインケミカル(株)製)5%の混合キシレン/イソプロパノール(30/70比)溶液を含浸し、乾燥、加熱処理し、更に熱分解させてアルミニウム酸化物を表面(気孔内を含む)に生成させ、処理基板1とした。
2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパンを120℃に加熱し、滴下用容器の中で液状化して含侵用の樹脂液1とした。また、ユピタイト(登録商標)UPA−221(商品名、宇部興産(株)製、濃度20wt%、溶媒THA)150部に、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン70部を20℃の室温下で溶解させ、接着用の樹脂組成物(以下、接着液1と記す。)を準備した。
前記の処理基板1を真空乾燥機中の含浸容器に入れ、含浸容器と共に120℃に保温した。また、樹脂液1を同じ真空乾燥機にセットし、120℃に保つと共に、真空乾燥機内を5torrの真空にした後、10分間保ち、その後、含浸容器中に、処理基板1が充分に覆われる量の樹脂液1を滴下し、処理基板1に含浸させた。滴下後、15分間含浸させ、その後、真空乾燥機内に窒素ガスを導入して大気圧に戻した。
そして、含浸容器から含侵処理基板1を取り出し、基板表面の樹脂液1をポリプロレン製のこてで、かき落とし、除去して、表面樹脂除去含浸基板を得た。
次に、真空低温機内の含浸容器に、表面樹脂除去含浸基板を入れ、次に接着液1も入れた後、10℃まで冷却し、20torrまでの減圧とした。次に、真空低温機内に窒素ガスを導入して大気圧に戻した後、表面樹脂除去含浸基板を真空低温機内から室内に取り出し、自然乾燥し、樹脂含浸セラミックス板1を得た。
接着面にブラックオキサイド処理した0.5mm×125mm×155mmの銅板を二枚準備し、いずれも接着剤面側の基板外周の加工用の捨て基板に相当する箇所に、最深部0.4mmのV字型の溝を線状に入れた。具体的には、樹脂含浸セラミックス板1の120mmの辺の側は、外端より各20mm、同じく150mmの辺の側は、外端より各10mmに相当する位置に計4本のVカットラインを入れた。また、エッチングの銅パターン回路領域の中の銅配線が無く、余裕のある箇所を選んでVカットラインを入れ、さらに、溝位置の基準マークを形成して溝形成銅板を作成した。
溝形成面を上にした溝形成銅板の上に、樹脂含浸セラミックス板1を位置合わせして乗せ、その周囲に2.0mm厚のリンター紙からなるクッション紙を2枚重ねし、樹脂含浸セラミックス板1に接触する側面に10mm幅のセロファンテープを張ったものを逆クッションとして配置し、その上に溝形成面を下にした溝形成銅板を位置合わせして重ね、厚み3.0mmの高耐熱鋼板で挟んだ構成として、これを真空ホットプレスの熱盤間にセットした。
該熱盤の加熱および雰囲気の減圧を開始し、雰囲気圧力を0.6kPa以下とした。セットした樹脂含浸セラミックス板1の基板温度が120℃の時点で、2.5MPaのプレス圧力を負荷し、そのまま180℃まで昇温し、1時間保持した後に210℃まで昇温し、30分間プレス成形した。加圧を保持した状態で加熱から冷却に変更し、樹脂含浸セラミックス板1の基板温度が60℃に下がった時点で取り出し、銅張樹脂複合セラミックス板1を得た。
空冷と両面の導通を兼ねた4.0mm径の穴を8個、両面銅板の電流の為に0.6mm径の穴を88個、部品足と導通を兼ねた1.7mm径の穴を30個、それぞれルータを用いて加工した。ルータ機(碌々産業株式会社製)と、0.6mm径、1.7mm径及び4.0mm径の超硬ドリルビット(ユニオンツール株式会社製)とを用い、回転数は、30,000r.p.m.で行った。
その後、スルーホールめっきを行った。めっきは25μm厚であった。
次に、パターン形成工程で、スルーホールめっき穴を保護した後、塩化銅エッチングにより、不要部分の銅板を除去した。
更に、四隅に取り付け用の5.0mm径の穴を同様にして開けた。外周をルータ機により、2.0mm径のエンドミル(ユニオンツール製)を使用して79mm×125mmの指定のサイズに切断した。最後に、表面処理として、イミダゾール処理を行い、プリント配線基板(C−PWB1)を得た。
(比較例1)
実施例1において、片面にVカットラインを入れないブラックオキサイド処理銅板を使用し、実施例1と同様に減圧積層成形し、室温へ冷却したところ、冷却時に異音が発生した。取り出して観察したところ、樹脂複合セラミックス板のセラミックス端面にクラックが見つかった。
(実施例2)
本実施例では、基板の最終サイズが60mm×100mmであるプリント配線回路基板を田の字型に四面付けとする銅張樹脂複合セラミックス板を作成した。
厚み1.6mm、150mm×240mmの酸化アルミニウム−シリカ−窒化ホウ素系気孔焼結体(Al2379%、h−BN13%、SiO28%、嵩密度2.32g/cm3、開気孔率24.4%、熱伝導率 5.4w/mK、熱膨張率7.5×10−6/℃)を用いて、実施例1と同様に表面処理し、処理基板2とした。
実施例1の接着用の樹脂液1を20℃の室温下で準備した。
次に、10℃に冷却したステンレス製の含浸容器を真空低温機に入れ、次に樹脂液1も入れた後に、10℃まで冷却し、20torrまでの減圧とした。次に、真空低温機内に窒素ガスを導入して大気圧に戻した後、真空低温機内から室内に取り出し、自然乾燥し、樹脂含浸セラミックス板2を得た。
接着面にブラックオキサイド処理した0.4mm×155mm×245mmの銅板を二枚準備した。
この銅板のブラックオキサイド処理面の155mmの辺と平行に外端より各15mm、中央部120mmと125mm、また、245mmの辺と平行に外端より各10mm、中央部75mmと80mmに相当する位置に、計8本の深部0.3mmのVカットラインを入れた。また、エッチングの銅パターン回路領域の中の銅配線が無く、余裕のある箇所を選んで深部0.2mmの短いVカットラインを入れた。さらに、溝位置の基準マークを形成して溝形成の銅板を作成した。
1枚目の銅板の接着面上に、樹脂含浸セラミックス板2を乗せ、乗せた樹脂含浸セラミックス板2の周囲に1.4mm厚のリンター紙からなるクッション紙を2枚重ねし、樹脂含浸セラミックス板2に接触する側面に10mm幅のセロファンテープを張ったものを逆クッションとして配置し、その上に残りの銅板の接着面を下にして位置あわせして重ね、高耐熱鋼板で挟んだ構成として、以下実施例1と同様に真空ホットプレスを最高温度210℃、約3時間の条件にて減圧積層成形して、4面付けの銅張樹脂複合セラミックス板2を得た。
空冷と両面の導通を兼ねた3.0mm径の穴を各8個(計32個)、両面銅板の電流の為に0.6mm径の穴を各44個(計176個)、部品取り付けと導通を兼ねた1.7mm径の穴を各20個(計80個)、それぞれルータ機を用いて実施例1と同様に加工した。その後、20μmのスルーホール銅めっきを行った。
次に、実施例1と同様にパターン形成を行った。さらに、取り付け穴加工をそれぞれ四面付けの基板に行った後、ルータにより、65mm×105mmの指定のサイズに各4枚を切削により切り離した後、銅表面のイミダゾール処理を行い、プリント配線基板(C−PWB2)4枚得た。
(比較例2)
実施例2において、Vカットラインを入れないブラックオキサイド処理銅板を使用し、実施例2と同様に減圧積層成形し、室温へ冷却したところ、冷却時に反りを発生した。取り出して観察したところ、樹脂複合セラミックスより、銅板が剥がれ、セラミックス表面にもクラックが見られた。
(実施例3)
厚み2.0mm×120mm×150mmの高純度アルミナ気孔焼結体(Al23 99.9%、密度3.02g/cm3、気孔率 18%、熱伝導率 17.08w/mK、熱膨張率6.8×10-6/℃)を乾燥機により、150℃/1時間の熱処理をした後、エポキシシランカップリング剤(日本ユニカー株式会社製、品番「A−187」)5%のイソプロピルアルコール溶液を真空含浸し、室温乾燥した後、120℃/15分加熱処理し、処理基板3とした。
実施例1の接着用の樹脂液1を20℃の室温下で準備した。
次に、10℃に冷却したステンレス製の含浸容器を真空低温機内に入れ、次に樹脂液1も入れた後に、10℃まで冷却し、20torrまでの減圧とした。次に、真空低温機内に窒素ガスを導入して大気圧に戻した後、真空低温機内から室内に取り出し、表面の過剰な樹脂をポリプロピレンのへらで除去した後に自然乾燥し、樹脂含浸セラミックス板3を得た。
0.4mm×125mm×155mmの大電流用厚箔(日鉱金属株式会社製、品番「JTC厚箔」)を2枚準備し、いずれも接着剤面側の基板外周の加工用の捨て基板に相当する箇所に、最深部0.3mmのV字型の溝を線状に入れた。実施例1と同様に樹脂含浸セラミックス板3の120mmの辺の側は、外端より各20mm、同じく150mmの辺の側は、外端より各10mmに相当する位置に計4本のVカットラインを入れた。また、エッチングの銅パターン回路領域の中の銅配線が無く、余裕のある箇所を選んでVカットラインを入れ、さらに、溝位置の基準マークを形成して溝形成銅板を作成した。
溝形成面を上にした溝形成銅板上に、樹脂含浸セラミックス板3を位置合わせして乗せ、その周囲に2.0mm厚のリンター紙からなるクッション紙を2枚重ねし、樹脂含浸セラミックス板3に接触する側面に10mm幅のセロファンテープを張ったものを逆クッションとして配置し、その上に溝形成面を下にした溝形成銅板を位置合わせして重ね、厚み2.0mmのステンレス板で挟んだ構成として、これを真空ホットプレス機の熱盤間にセットした。該熱盤の加熱および雰囲気の減圧を開始し雰囲気圧力を0.6kPa以下とした。セットした樹脂含浸セラミックス板3の基板が温度120℃の時点で2.5MPaのプレス圧力を負荷し、そのまま温度180℃まで昇温した後に1時間保持し、更に195℃まで昇温し50分間プレス成形した。加圧を保持した状態で加熱から冷却に変更し、樹脂含浸セラミックス板3の基板温度が60℃に下がった時点で取り出し銅張樹脂複合セラミックス板3を得た。
空冷と両面の導通を兼ねた4.0mm径の穴を8個、両面銅板の電流の為に0.6mm径の穴を88個、部品足と導通を兼ねた1.4mm径の穴を30個、それぞれルータを用いて加工した。ルータ機(碌々産業株式会社製)と4.0mm径の超硬ドリルビット(ユニオンツール株式会社製)、及び0,6mm径と1.4mm径のダイヤモンドドリル(タンガロイ株式会社製)を用い、回転数は、30,000r.p.m.で行った。
その後、スルーホールめっきを行った。めっきは25μm厚であった。
次に、パターン形成工程で、スルーホールめっき穴を保護した後、塩化銅エッチングにより、不要部分の銅板を除去した。更に、ニッケルめっき5μm及び金めっき1μmのめっき処理を行った。
更に、四隅に取り付け用の5.0mm径の穴を同様にして開けた。外周をルータ機により、2.0mm径のエンドミル(ユニオンツール製)を使用し、79mm×125mmの指定のサイズに切断してプリント配線基板(C−PWB3)を得た。
(比較例3)
実施例3において、Vカットラインを入れない片面にブラックオキサイド処理銅板を使用し、実施例3と同様に減圧積層成形し、室温へ冷却したところ、冷却時に異音が発生した。取り出して観察したところ、樹脂複合セラミックスのセラミックス端面にクラックが見つかった。

Claims (8)

  1. 連続気孔セラミックス板に熱硬化性樹脂を含侵した基板の片面或いは両面に金属箔を重ねて積層成形してなる金属箔張樹脂複合セラミックス板の製造方法において、少なくとも片面の前記金属箔が、厚み50μm以上の銅板であって、前記銅板の接着面側に所望のプリント配線パターンの機能を障害しないように溝を形成したものであり、少なくとも前記銅板と直接接触する熱硬化性樹脂が、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との接着用の樹脂組成物であることを特徴とする銅張樹脂複合セラミックス板の製造方法。
  2. 前記溝の深さが、前記銅板厚みの20〜90%から選択される請求項1記載の銅張樹脂複合セラミックス板の製造方法。
  3. 前記溝が、前記プリント配線パターンの領域の周囲であって、前記基板の外周囲から5〜30mmに相当する位置に形成してなるものである請求項1または請求項2記載の銅張樹脂複合セラミックス板の製造方法。
  4. 前記溝の一部が、前記プリント配線パターンのパターン間隙に相当する位置から選択した所望位置に形成してなるものである請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の銅張樹脂複合セラミックス板の製造方法。
  5. 前記接着用の樹脂組成物が、熱可塑性樹脂20〜95wt%と熱硬化性樹脂80〜5wt%範囲である請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の銅張樹脂複合セラミックス板の製造方法。
  6. 前記熱可塑性樹脂が熱可塑性ポリイミド樹脂である請求項5記載の銅張樹脂複合セラミックス板の製造方法。
  7. 前記プリント配線パターンが長さ100cmを超える場合において、前記溝が前記プリント配線パターン内で、かつ、前記プリント配線パターンの狭幅部分の電気容量を損なわないように選択した位置にも形成してなる請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の銅張樹脂複合セラミックス板の製造方法。
  8. 前記溝が、前記プリント配線パターン内で、かつ、前記プリント配線パターンの長手方向に平行に形成してなる請求項7記載の銅張樹脂複合セラミックス板の製造方法。
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