JP5383219B2 - レーザ溶接装置およびレーザ溶接方法 - Google Patents
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Description
アーク溶接により大型部材を溶接する場合には、溶接入熱により部材に歪みが発生するため、この歪みを修正する作業が不可欠となっていた。
しかしながら、この溶接方法では、小径に集光されたビームなどを用いるため、部材の合わせ精度の要求が高いという問題があった。
例えば、ギャップを0.2mm程度以内にする必要があった。
もしくは、大型部材に対して機械加工などの前処理を施すことにより、ギャップを0.2mm程度以内に収め、その後に溶接作業を行う必要があった。
さらに、溶接に伴う熱により銅板が変形する場合もあり、取り扱いが難しいという問題があった。
本発明のレーザ溶接装置は、一方の側からレーザビームが照射される溶接対象物における他方の側に押し当てられる粒状のフラックスと、流体の供給を受けて膨らみ、前記溶接対象物における他方の側に向かって前記フラックスを押し付ける押付け部と、が設けられ、前記溶接対象物を貫通した前記レーザビームは、前記フラックスを突き抜けないことを特徴とする。
つまり、貫通したレーザビームがフラックスを突き抜けないようにしているため、レーザビームがフラックスを貫通する場合と比較して、レーザビームにより加熱されるフラックスの量が抑制される。そのため、加熱より溶融されるフラックスの量が抑制され、ガスを発生させるフラックスの量が抑制され、発生するガスの量が抑制される。
さらに、フラックスより生成するスラグが溶接金属中に巻き込まれた欠陥の発生が抑制される。
溶接対象物に存在するギャップの部分を溶接する場合であっても、フラックスにより溶融金属が受け止められるため、溶加材を加えながら溶接することができる。
つまり、熱を加えられるとガスを発生する熱硬化性樹脂の含有量が少ないため、フラックス全体から発生するガスの量を抑制することができる。
予めガスを発生させる方法としては、熱硬化性樹脂を予熱する方法を例示することができる。
特に、レーザビームと溶接対象物とを相対移動させる駆動装置などが故障すると、レーザビームが同一箇所に照射され続ける場合が考えられる。このような場合に、溶接対象物およびフラックスを貫通したレーザビームが、押付け部に照射されることを防止することができる。
さらに、溶接対象物にフラックスを押し付けて溶接を行うため、溶接対象物の板厚などが厚い場合であっても、レーザビームにより溶けた溶接対象物(つまり溶融金属)がフラックスにより受け止められ、下方に垂れ落ちることや、裏波が過度に凸形状になることを防止できる。そのため、溶接部の品質低下を防止することができるという効果を奏する。
以下、本発明の第1の実施形態に係るレーザ溶接に用いられる裏波保持装置ついて図1から図8を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る裏波保持装置の構成を説明する模式図である。
本実施形態の裏波保持装置(レーザ溶接装置)1は、船舶などの大型構造物である溶接対象物Wをレーザ溶接する際に、裏波Bを保持するために用いられるものである。例えば、図1に示すように、ギャップGを有する溶接対象物Wを溶接する際に用いられるものである。
筐体2には、溶接対象物WのギャップGに沿って(図1の紙面に対して垂直方向に)延びる溝部21と、溝部21の開口端から溶接対象物Wに沿って延びるツバ部22と、が設けられている。
ツバ部22は、裏波保持装置1を溶接対象物Wに配置した際に、溶接対象物Wと当接される部分である。
例えば、溶接対象物Wの板厚が薄い場合には、フラックス3の層の厚さを薄くすることができる一方で、溶接対象物Wの板厚が厚い場合には、フラックス3の層の厚さを厚くする必要がある。
つまり、フラックス3は溶接を行うごとに交換され、再利用ができないため、フラックス3の層の厚さを必要以上に厚くすると、フラックス3の交換する手間が増加するとともに、再利用できないフラックス3が増加する。このことから、フラックス3の層の厚さを適宜調節することが好ましい。
このように、SiO2にMgO等を含有させてスラグ粘度、剥離性、および、融点を調節したフラックス3を用いることが望ましい。
下砂4としては、公知のものを用いることができ、特に限定するものではない。
例えば流体として圧縮空気を用いる場合、ホース5に供給される流体の圧力としては、約19.6kPaから約196kPa(約0.2kgf/cm2から約2.0kgf/cm2)の範囲、より好ましくは、約49kPaから約98kPa(約0.5kgf/cm2から約1.0kgf/cm2)の範囲を例示することができる。
その一方で、圧力が低い場合には、溶接時に形成される裏波Bが過度に凸形状になることを防止することができない。
反力付与部6は、ホース5により発生されたフラックス3を溶接対象物Wに押し付ける力に対する反力を発生させるものである。反力付与部6を設けることにより、溶接による溶接対象物Wの変形や移動を抑制することができる。
溶接対象物Wのレーザ溶接を行う場合には、まず、図1に示すように、溶接対象物Wを所定の位置に配置する。
具体的には、溶接線となるギャップGに沿ってフラックス3が押し当てられるように、裏波保持装置1が配置される。
つまり、ホース5は、所定圧力の流体が供給されることにより膨らみ、下砂4およびフラックス3を溶接対象物Wに向けて押し上げる。これにより、フラックス3は溶接対象物に押し当てられる。
ここで、反力とは、フラックス3が溶接対象物Wに押し当てられる力に対する力のことを意味している。
このようにして形成された裏波Bの表面には、フラックス3から形成されたスラグの層が形成されている。
言い換えると、レーザビームによる入熱量は、溶接対象物Wの板厚に比例するように調節されている。
図2は、レーザビームが突き抜けていないフラックスの状態を説明する模式図である。図3は、図2のフラックスの状態を説明する断面視図である。図4は、レーザビームが突き抜けていないフラックスの状態を示す写真である。
凝固スラグ31には、図2および図4に示すように、後述するレーザビームが突き抜けたフラックス3において形成されている気泡33がない。さらに、凝固スラグ31における窪みの深さも、所望の深さになっている。言い換えると、所望の高さの裏波Bを形成する深さの窪みになっている。
その一方で、レーザビームが突き抜けた後のフラックス3には、図5および図6に示すように、フラックス3における溶融金属、言い換えると裏波Bと接触する領域に凝固スラグ31が形成されている。
言い換えると、上記の構成によれば、レーザビームがフラックス3を貫通する場合と比較して、レーザビームにより加熱、もしくは溶融されるフラックス3の量が抑制されている。そのため、加熱よりガスを発生させるフラックス3の量が抑制され、発生するガスの量が抑制される。その結果、溶接金属中に、上述のガスに起因するブローホールが発生すること防止し、品質の低下を防止することができる。
フラックス3に存在するギャップGの部分を溶接する場合であっても、フラックスにより溶融金属が受け止められるため、溶加材を加えながら溶接することができる。
さらに、熱硬化性樹脂が多く含有されたフラックス3であっても、本実施形態の裏波保持装置1に用いることができる。
次に、本発明の第2の実施形態について図9から図12を参照して説明する。
本実施形態の裏波保持装置の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、フラックスの層の近傍における構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図9から図12を用いてフラックスの周辺の構成のみを説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
図9は、本実施形態における裏波保持装置の構成を説明する模式図である。図10は、図9のスペーサの配置位置を説明する模式図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素に付いては同一の符号を付して、その説明を省略する。
スペーサ107は、レーザビームの熱により加熱されたフラックスから発生したガスを、フラックスにおける加熱されていない領域に導くものであって、図11に示すように、筒状に形成された金属または樹脂からなる部材である。
なお、上述の実施形態のように筒状のスペーサ107を用いてもよいし、図12に示すように、半円筒状のスペーサ(誘導部)107Aを用いてもよく、特に限定するものではない。
次に、本発明の第3の実施形態について図13から図15を参照して説明する。
本実施形態の裏波保持装置の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、フラックスとホースとの間の構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図13から図15を用いてフラックスとホースとの間の構成のみを説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
図13は、本実施形態における裏波保持装置の構成を説明する模式図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素に付いては同一の符号を付して、その説明を省略する。
金属薄板207は、ホース5の上方を覆うように設置された金属板であって、ホース5の近傍の下砂4の内部に配置されたものであり、図13に示すように断面が円弧状であっても平面上であってもよい。
そのため、ホース5によりフラックス3を溶接対象物Wに押し当て続けることができ、安定した裏波Bを形成することができる。
なお、上述の実施形態のように、金属薄板207を用いてレーザビームによるホース5の損傷を防止してもよいし、金属薄板207の代わりに、図14に示すように、セラミックス板(遮蔽部)207Aを用いてもよく、特に限定するものではない。
さらに、上述の実施形態のように、金属薄板207を用いてレーザビームによるホース5の損傷を防止してもよいし、金属薄板207の代わりに、図15に示すように、粒状遮蔽物(遮蔽部)207Bを用いてもよく、特に限定するものではない。
3 フラックス
4 下砂(支持部)
5 ホース(押付け部)
107,107A スペーサ(誘導部)
207 金属薄板(遮蔽部)
207A セラミックス板(遮蔽部)
207B 粒状遮蔽物(遮蔽部)
W 溶接対象物
Claims (8)
- 一方の側からレーザビームが照射される溶接対象物における他方の側に押し当てられる粒状のフラックスと、
流体の供給を受けて膨らみ、前記溶接対象物における他方の側に向かって前記フラックスを押し付ける押付け部と、
が設けられ、
前記溶接対象物を貫通した前記レーザビームは、前記フラックスを突き抜けないことを特徴とするレーザ溶接装置。 - 前記フラックスには、熱硬化性樹脂が含まれていない、または、約2wt%以下の前記熱硬化性樹脂が含まれていることを特徴とする請求項1記載のレーザ溶接装置。
- 前記フラックスには、予めガスを発生させた後の熱硬化性樹脂が含まれていることを特徴とする請求項1記載のレーザ溶接装置。
- 前記レーザビームの熱により加熱された前記フラックスから発生したガスを、前記フラックスにおける加熱されていない領域に導く誘導部が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のレーザ溶接装置。
- 前記押付け部と前記フラックスとの間には、前記レーザビームを遮蔽する遮蔽部が設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のレーザ溶接装置。
- 前記押付け部と前記フラックスとの間には、粒状物の集合であって、前記前記裏当てフラックスを支持する支持部が設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のレーザ溶接装置。
- 請求項1から請求項6のいずれかに記載のレーザ溶接装置に溶接対象物を配置する配置工程と、
前記押当て部に流体を供給して、前記フラックスを前記溶接対象物に押し当てる押当て工程と、
前記溶接対象物にレーザビームを照射して溶接を行う溶接工程と、
を有することを特徴とするレーザ溶接方法。 - 粒状のフラックスに溶接対象物を配置する配置工程と、
前記溶接対象物に前記フラックスを押し当てる押当て工程と、
前記溶接対象物にレーザビームを照射する際に、前記溶接対象物を貫通した前記レーザビームが前記フラックスを突き抜けないように、前記レーザビームによる入熱量を前記溶接対象物の板厚に比例するように調節して前記フラックスの溶融を抑制して溶接を行う溶接工程と、
を有することを特徴とするレーザ溶接方法。
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