以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。なお、ここでは電源装置を車両に搭載した場合について説明する。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における電源装置のブロック回路図である。図2は本発明の実施の形態1における電源装置の入出力電圧Vdと蓄電部電圧Vcの経時特性図である。なお、図1において太線は電力系配線を、細線は信号系配線を、二重線は機械的接続を、それぞれ示す。
図1において、車両に搭載されるエンジン11にはスタータ13が機械的に接続されている。スタータ13はエンジン11を始動するために用いられる。また、エンジン11には発電機15も機械的に接続されている。発電機15はエンジン11の回転により電力を発生する。なお、発電機15の発電電圧Vaは一定値(14.5V)のものを使用した。また、発電機15は車両側制御回路(図示せず)からの発電信号ALTにより、発電電力の出力、停止が制御される構成を有する。
スタータ13および発電機15には主電源17が電気的に接続される。主電源17は定格電圧が12.5Vの鉛バッテリで構成される。また、主電源17には負荷21が電気的に接続される。負荷21は各種電装品であり、ここでは駆動するための許容電圧範囲が広いものと狭いものの両方を含む。
以上より、負荷21は主電源17と発電機15に電気的に接続される構成となる。
負荷21には入出力端子23を介してDC/DCコンバータ25が電気的に接続される。また、DC/DCコンバータ25の蓄電部端子27には蓄電部29が電気的に接続される。ここで、蓄電部29は定格電圧2.5Vの電気二重層キャパシタを4個直列に接続した構成とした。従って、蓄電部29の上限電圧Vcuは10Vとなる。なお、蓄電部29の過放電を防ぐために、下限電圧Vckは5Vと決定した。ゆえに、通常は蓄電部電圧Vcが5Vから10Vまでの間を変化する。
これらのことから、DC/DCコンバータ25の入出力端子23に電気的に接続される発電機15の発電電圧Vaが14.5Vであり、主電源17の定格電圧が12.5Vである一方、蓄電部電圧Vcは10Vまでであるので、DC/DCコンバータ25は入出力端子23の電圧を降圧して蓄電部29を充電するとともに、蓄電部電圧Vcを昇圧して入出力端子23から放電する双方向コンバータ構成を有する。
なお、蓄電部29の構成(電気二重層キャパシタの4個直列構成)は、これに限定されるものではなく、使用する電気二重層キャパシタの定格電圧等の仕様や必要とされる蓄電容量に応じて、適宜数量を変えたり直並列接続構成としてもよい。
入出力端子23には、その入出力電圧Vdを検出する入出力電圧検出回路31が電気的に接続されている。同様に、蓄電部端子27には蓄電部電圧Vcを検出する蓄電部電圧検出回路33が電気的に接続されている。
DC/DCコンバータ25、入出力電圧検出回路31、蓄電部電圧検出回路33および前記車両側制御回路は、信号系配線により制御回路35と電気的に接続されている。制御回路35は入出力電圧検出回路31で検出した入出力電圧Vdと蓄電部電圧検出回路33で検出した蓄電部電圧Vcに基いて、DC/DCコンバータ25の制御信号contを出力する。さらに、制御回路35は前記車両側制御回路との間で発電機15の動作、停止の制御要求等の様々なデータ信号dataのやり取りを行う。
ここで、制御回路35は入出力電圧Vdと蓄電部電圧Vcの、それぞれの各種基準電圧(詳細は後述する)との比較回路や論理回路、DC/DCコンバータ25をスイッチング動作させるパルス波形発生回路等(いずれも図示せず)により構成されている。なお、制御回路35はマイクロコンピュータと周辺回路によるデジタル回路構成としてもよい。
次に、このような電源装置の動作について図2を参照しながら説明する。なお、図2の横軸は時刻を、縦軸は電圧を、それぞれ示す。また、図2中に記載される制御信号contの基となる電圧とは、前記各種基準電圧における、どの基準電圧に基いてDC/DCコンバータ25が制御されるかを示したものである。
図2において、時刻t0で前記車両は発進し加速を行う。この時、前記車両側制御回路は前記車両の加速性を向上するために、エンジン11にとって機械的負担となる発電機15の発電を停止するよう発電信号ALTを出力する。これを受け、発電機15は非発電状態となる。その結果、負荷21へは主電源17と蓄電部29からの電力が供給されるのであるが、制御回路35は入出力電圧検出回路31で検出された入出力電圧Vdが制御電圧VstになるようにDC/DCコンバータ25を制御している。ここで、制御電圧Vstは、蓄電部電圧Vcが上限電圧Vcu(=10V)未満で下限電圧Vck(=5V)より高い時における入出力電圧Vdの目標とする既定の前記基準電圧のことで、本実施の形態1では制御電圧Vstを主電源17の定格電圧(=12.5V)と同じ値に設定した。なお、このように設定することで、蓄電部電圧Vcが上限電圧Vcu未満で下限電圧Vckより高い間は、電圧検出や制御の誤差範囲内で実質的に入出力電圧Vdが主電源17の定格電圧と等しくなる。従って、蓄電部29から主電源17への充電を抑制でき、負荷21へ蓄電部29の電力を優先的に供給できる。
このような動作により、時刻t0以降でDC/DCコンバータ25は入出力電圧Vdが制御電圧Vstになるように制御するので、主に蓄電部29の電力が負荷21に供給される。その結果、図2に示すように、蓄電部電圧Vcは経時的に低下し、入出力電圧Vdは制御電圧Vstを維持する。ゆえに、発電機15が非発電中の時刻t0から時刻t1では入出力電圧Vd、すなわち負荷21への印加電圧が安定化される。
その後、非発電中の時刻t1で蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckに至る。これにより、制御回路35は蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckを下回らないようにDC/DCコンバータ25を制御する。その結果、DC/DCコンバータ25の制御対象は入出力電圧Vdから蓄電部電圧Vcに切り替わり、同時に制御信号contの基となる電圧(前記基準電圧)は制御電圧Vstから下限電圧Vckに切り替わる。このことから、制御電圧Vstより下限電圧Vckの優先度が高いことがわかる。
このような動作により、時刻t1で蓄電部29から負荷21への電力供給が停止する。この際、発電機15は非発電状態なので、負荷21へは主電源17の電力が供給されることになる。その結果、主電源17の電圧は経時的に徐々に低下していくので、入出力電圧Vdも同様に低下する。但し、主電源17の蓄電容量は蓄電部29に比べ桁違いに大きいので、その入出力電圧Vdの低下は僅かである。
次に、時刻t2で運転者が例えば交差点等で前記車両を大きく旋回させるためにハンドル(図示せず)を操作したとする。これにより、前記車両に搭載された電動パワーステアリング(図示せず)が駆動する。前記電動パワーステアリングは操舵トルクを得るために、操舵開始直後に大電流が流れ、その後定常電流に低下するという負荷電流特性を有する。従って、短期間(例えば1秒)に大電流を消費する負荷21となる。
前記電動パワーステアリングが動作開始する時刻t2では、主電源17から急峻に大電流が流れるので、主電源17の電圧(入出力電圧Vd)は急低下する。その結果、ほぼ時刻t2で入出力電圧Vdが負荷下限電圧Vdkに至る。ここで、負荷下限電圧Vdkは負荷21を正常に動作させることができる下限の電圧のことで、本実施の形態1では各種電装品の中で最も下限の電圧が高い11.5Vと決定した。ゆえに、このまま主電源17から電力を供給し続けると、入出力電圧Vdが負荷下限電圧Vdkよりも低下するので、負荷21の動作が不安定になる可能性が大きくなる。そこで、本実施の形態1では、このような場合に蓄電部29の電力により入出力電圧Vdの安定化を図っている。なお、時刻t2までで蓄電部電圧Vcは下限電圧Vckに至っているので、本来であればこれ以上の放電はできない。ゆえに、既定期間tk(図2の時刻t2から時刻t3)に亘ってのみ蓄電部29の電力による入出力電圧Vdの安定化を行う。すなわち、時刻t2の動作をまとめると、制御回路35は、発電機15の非発電時に蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckに至り(既に至っている場合も含む)、かつ入出力電圧Vdが負荷下限電圧Vdkに至れば、既定期間tkに亘り入出力電圧Vdが負荷下限電圧Vdkを下回らないようDC/DCコンバータ25を制御している。ここで、既定期間tkは負荷21(ここでは前記電動パワーステアリング)が短期間に大電流を消費する期間(1秒)をあらかじめ求めて決定した。このことから、本実施の形態1における蓄電部29は蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckに至っていても、既定期間tk(1秒)の間は入出力電圧Vdが負荷下限電圧Vdkを下回らないようにすることができる蓄電容量Cを有する構成としている。これにより、蓄電部29がこれ以上放電するとDC/DCコンバータ25の動作が停止してしまう最下限電圧Vcm(本実施の形態1では3V)には至らないようにすることができる。なお、具体的には、負荷21(前記電動パワーステアリング)の最大消費電流をIpとすると、C×(Vck2−Vcm2)/2≧Vdk×Ip×tkを満たすように蓄電容量Cを決定する。
このような動作により、図2に示すように蓄電部電圧Vcは時刻t2から時刻t3までの既定期間tkにおいて急激に低下するが、DC/DCコンバータ25の制御が入出力電圧Vdを負荷下限電圧Vdkとするように切り替わっているので、入出力電圧Vdは既定期間tkの間も負荷下限電圧Vdkを下回らないように制御される。ゆえに、前記電動パワーステアリングの駆動中も他の負荷21を安定して動作させ続けることができる。なお、このような動作から、下限電圧Vckより負荷下限電圧Vdkによる制御の優先度が高いことがわかる。
その後、時刻t3で既定期間tkが経過する。この時点では上記したように前記電動パワーステアリングの消費電流は前記定常電流となる。しかし、蓄電部29は最下限電圧Vcmには至っていないものの下限電圧Vckを下回っているので、このまま放置しておくと、再度蓄電部29が放電した時に蓄電部電圧Vcが最下限電圧Vcmに至りDC/DCコンバータ25が停止してしまう可能性がある。そこで、早期に蓄電部29を下限電圧Vck以上に充電する必要がある。一方で、前記車両は旋回走行中であるので、前記電動パワーステアリングは前記定常電流を消費している。従って、主電源17の電力で蓄電部29を充電すると、それによる入出力電圧Vdの安定性が悪くなる可能性がある。
これらのことから、安定性確保のために制御回路35は時刻t3で前記車両側制御回路に発電機15が発電を行うように要求するデータ信号dataを出力する。これを受け、前記車両側制御回路は発電機15が発電を行うように発電信号ALTを出力し、発電機15が発電を行う。この際、発電機15の発電電圧Vaは14.5V、主電源17の定格電圧は12.5Vであり、DC/DCコンバータ25の制御は入出力電圧Vdが負荷下限電圧Vdk(=11.5V)を下回らないように切り替わっているので、DC/DCコンバータ25は一部主電源17から電力が持ち出されるものの、主に発電機15の電力を蓄電部29に充電するように動作する。その結果、時刻t3以降で蓄電部電圧Vcは経時的に上昇する。この際、入出力電圧Vdは負荷下限電圧Vdk(=11.5V)を下回らないように制御されるので、負荷21を安定して動作させることができる。
その後、前記車両は時刻t4に至るまでに旋回走行を終了し、直進の定速走行を行うが、この時のDC/DCコンバータ25の制御は時刻t3と同じである。
時刻t3以降で蓄電部29の充電が進行すると、図2に示すように蓄電部電圧Vcは時刻t4で下限電圧Vckに至る。ここで、制御回路35は本来なら蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckを下回らないように動作するのであるが、時刻t4の時点では既に前記車両が定速走行中であり、発電機15も発電を行っているので、蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckよりも低い状態から蓄電部29の充電が行われた際には、蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckを下回らないような制御を行わずに、引き続き蓄電部29の充電を行うように制御する。但し、蓄電部電圧Vcは下限電圧Vckに至っているので、DC/DCコンバータ25における制御信号contの基となる電圧は負荷下限電圧Vdkから制御電圧Vstに切り替わる。これにより、時刻t4以降では入出力電圧Vdが制御電圧Vst(=12.5V)になるように制御されるので、図4に示すように、入出力電圧Vdが12.5Vに上がる。その結果、主電源17の定格電圧とほぼ等しくなるので、蓄電部29への充電は主に発電機15からの電力により行われ、主電源17の負担が軽減される。また、蓄電部電圧Vcは引き続き経時的に上昇する。
その後、時刻t5で蓄電部電圧Vcは上限電圧Vcu(=10V)に至る。これにより、次回の加速時における負荷21の安定動作に必要な電力の一部を蓄電部29に備えることができる。時刻t5では、制御回路35によりDC/DCコンバータ25の制御対象が入出力電圧Vdから蓄電部電圧Vcに切り替わり、同時に制御信号contの基となる電圧が制御電圧Vstから上限電圧Vcuに切り替わる。これにより、蓄電部電圧Vcは上限電圧Vcuを上回らないように制御される。また、入出力電圧VdがDC/DCコンバータ25の制御対象ではなくなったので、入出力電圧Vdは発電電圧Va(=14.5V)に上昇する。ゆえに、負荷21へは発電機15の電力が主に供給され、その動作を継続することができる。
その後、時刻t6で再び前記車両が加速する。この時、発電機15は停止するので非発電状態となり、入出力電圧Vdや蓄電部電圧Vcの状態は時刻t0と同じであるので、時刻t0以降の動作を繰り返す。
以上のことから、制御回路35によるDC/DCコンバータ25の制御項目をまとめると次のようになる。
1)第1制御項目:蓄電部電圧Vcが下限電圧Vck(=5V)より高く上限電圧Vcu(=10V)未満の場合・・・制御対象が入出力電圧Vdに、前記基準電圧が制御電圧Vstになり、入出力電圧Vdが制御電圧Vst(=12.5V)となるように制御
2)第2制御項目:蓄電部電圧Vcが下限電圧Vck(=5V)、または上限電圧Vcu(=10V)に至った場合・・・制御対象が蓄電部電圧Vcに、前記基準電圧が下限電圧Vck、または上限電圧Vcuになり、蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckを下回らないように、または上限電圧Vcuを上回らないように制御
3)第3制御項目:蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckに至り、かつ入出力電圧Vdが負荷下限電圧Vdkに至る場合・・・既定期間tkに亘り制御対象が入出力電圧Vdに、前記基準電圧が負荷下限電圧Vdkになり、入出力電圧Vdが負荷下限電圧Vdk(=11.5V)を下回らないよう制御
以上のDC/DCコンバータ25における第1制御項目から第3制御項目については、上記の説明からも明らかなように、第3制御項目の制御が最も優先度が高く、順次第2制御項目、第1制御項目の順に優先度が下がることになる。ゆえに、本実施の形態1の特徴となる動作は、蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckに至り、かつ入出力電圧Vdが負荷下限電圧Vdkに至れば、DC/DCコンバータ25の制御が下限電圧Vckを下回らないような前記第2制御項目の動作に優先して、入出力電圧Vdが負荷下限電圧Vdkを下回らないような前記第3制御項目の動作に切り替わることである。
以上の構成、動作により、制御回路35は、蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckに至り、かつ入出力電圧Vdが負荷下限電圧Vdkに至れば、入出力電圧Vdが負荷下限電圧Vdkを下回らないようにDC/DCコンバータ25を制御するので、前記電動パワーステアリングのように短期間に大電流が消費されても負荷21に蓄電部29から電力を供給し続けられ、負荷21の動作が不安定になる可能性を低減することが可能な電源装置を実現できる。
なお、本実施の形態1では、発進、加速時以外の走行中は発電機15が常に発電するように制御しているが、これは主電源17が十分に充電されている状態であれば、走行中であっても適宜発電機15の発電を停止するように制御してもよい。これにより、発電停止中は発電機15がエンジン11にかける機械的負担が軽減されるので、省燃費化が可能となる。
また、本実施の形態1では、図2の時刻t0から時刻t1に示すように、前記車両の発進、加速中に蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckに至る例について説明したが、蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckに至る前に前記車両が定速走行を行えば、発電機15の発電が開始されるので、DC/DCコンバータ25の制御は前記第1制御項目の状態を継続すればよい。これにより、定速走行までに消費された蓄電部29の電力を再充電でき、次の加速に備えることが可能となる。さらに、加速時において主に蓄電部29の電力が負荷21に供給されるので、主電源17の電力を維持することができる。その結果、主電源17の充放電回数を減らすことが可能となるため、長寿命化が図れる。
また、本実施の形態1において、図2の時刻t1から時刻t2まで、すなわち前記電動パワーステアリングを駆動する前に主電源17の電圧(入出力電圧Vd)が負荷下限電圧Vdkに至れば、前記第3制御項目の条件が成立するので、制御回路35は前記第3制御項目の制御を行うとともに、蓄電部電圧Vcが最下限電圧Vcmに至らないようにするために、本来は非発電状態であっても発電機15を発電させるように制御する。これにより、負荷21は主電源17の電圧が負荷下限電圧Vdkに至った後、既定期間tkの間は蓄電部29の電力が負荷21に供給されるので動作を継続でき、その間に発電機15の発電が開始される。その後、既定期間tkが経過すると、蓄電部29は主に発電機15の電力により充電されるとともに、その間に前記電動パワーステアリングが駆動されても発電機15の電力が供給されるので、負荷21の不安定動作の可能性を低減できる。
また、本実施の形態1では、図2の時刻t3から時刻t4までで蓄電部電圧Vcを下限電圧Vckまで充電しているが、この間に再び操舵が行われ前記電動パワーステアリングが動作する可能性がある。しかし、時刻t3の時点では発電機15が動作しているので、その電力が前記電動パワーステアリングに供給される。ゆえに、負荷21には主に発電機15から安定して電力が供給され、再度蓄電部29から電力供給を行う必要はないので、制御回路35は時刻t3でのDC/DCコンバータ25の制御を変えずに継続して蓄電部29への充電を行えばよい。
(実施の形態2)
図3は本発明の実施の形態2における電源装置のブロック回路図である。図4は本発明の実施の形態2における電源装置の入出力電圧Vdと蓄電部電圧Vcの経時特性図である。なお、図3において太線は電力系配線を、細線は信号系配線を、二重線は機械的接続を、それぞれ示す。
本実施の形態2では電源装置がアイドリングストップ車に搭載された場合について、その特徴となる構成、動作を説明する。
まず、本実施の形態2における電源装置の特徴となる構成は、実施の形態1の構成(図1)に対しスイッチ41を主電源17と負荷21との間に電気的に接続したことである。スイッチ41は前記車両側制御回路から出力されるオンオフ信号SWに応じてオン状態とオフ状態が制御される構成を有し、具体的にはリレーを用いた。なお、前記リレーはFET等の半導体スイッチ素子であってもよい。
上記以外の構成は図1と同じであるので、詳細な説明を省略する。なお、本実施の形態2ではエンジン11の動作時には常に発電機15が発電を行うように前記車両側制御回路が発電信号ALTを出力している構成とする。
次に、このような電源装置の動作について図4を参照しながら説明する。なお、図4の横軸は時刻を、縦軸は電圧を、それぞれ示す。また、各種電圧を示す記号や電圧絶対値は実施の形態1と同じである。
図4において、時刻t10までは前記車両は走行しており、時刻t10で前記車両がアイドリングストップを開始したとする。これにより、エンジン11は停止するので、発電機15による発電電力が得られない。また、スイッチ41は既定期間tkの間はオフとなり、それ以外ではオン状態を維持する構成としているので、時刻t10の時点ではスイッチ41はオン状態である。さらに、蓄電部29は前記車両の走行中にDC/DCコンバータ25によって充電され、上限電圧Vcu(=10V)を上回らないように制御されている。ゆえに、蓄電部29は満充電状態である。
これらのことから、負荷21へは主電源17から電力が供給されるとともに、現在の負荷21の消費電力量によっては主電源17の電力が低下し、アイドリングストップ後のスタータ13の駆動が十分に行えなくなる可能性があるので、制御回路35は満充電状態の蓄電部29の電力も負荷21に供給するように制御信号contを出力する。具体的には、時刻t10で前記車両がアイドリングストップを行い発電機15からの発電が停止すると、入出力電圧Vdは主電源17の定格電圧である12.5Vに低下するが、この時に制御回路35は入出力電圧Vdが制御電圧VstになるようにDC/DCコンバータ25を制御する。従って、実施の形態1の時刻t0と同様に、蓄電部29から主電源17への充電を抑制でき、負荷21へ蓄電部29の電力を優先的に供給できる。
このような動作により、時刻t10以降では主に蓄電部29の電力が負荷21に供給される。その結果、図4に示すように、蓄電部電圧Vcは経時的に低下し、入出力電圧Vdは制御電圧Vstを維持する。ゆえに、アイドリングストップ中の時刻t10から時刻t11では入出力電圧Vd、すなわち負荷21への印加電圧が安定化される。
その後、アイドリングストップ中の時刻t11で蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckに至る。これにより、制御回路35は蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckを下回らないようにDC/DCコンバータ25を制御する。その結果、DC/DCコンバータ25の制御対象は入出力電圧Vdから蓄電部電圧Vcに切り替わり、同時に制御信号contの基となる電圧(前記基準電圧)は制御電圧Vstから下限電圧Vckに切り替わる。これは、前記第1制御項目から優先度の高い前記第2制御項目に切り替わったことになる。
このような動作により、時刻t11で蓄電部29から負荷21への電力供給が停止する。この際、発電機15はまだ止まった状態なので、負荷21へは主電源17の電力が供給されることになる。その結果、主電源17の電圧は経時的に僅かに低下していくので、入出力電圧Vdも同様に低下する。
次に、時刻t12で運転者がブレーキペダルからアクセルペダル(いずれも図示せず)に踏みかえて前記車両を走行させる操作をする。これにより、前記車両側制御回路はスタータ13を駆動するのであるが、この時のスタータ13への電力は、蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckに至っているので、蓄電部29から供給できず主電源17から供給しなければならない。ここで、スタータ13の駆動初期は、実施の形態1で述べた前記電動パワーステアリング以上に大きな駆動トルクを必要とするため、短期間に大電流を消費する。なお、本実施の形態2ではスタータ13の駆動期間を1秒とした。従って、時刻t12の時点でスタータ13が駆動するとほぼ直ちに入出力電圧Vdは負荷下限電圧Vdk(=11.5V)に至る。主電源17の電圧は負荷下限電圧Vdkよりもさらに低下し、6V程度まで至るので、このままでは入出力電圧Vdが負荷下限電圧Vdkを下回り、負荷21の動作が不安定になる。そこで、制御回路35は入出力電圧Vdが負荷下限電圧Vdkに至ると直ちに前記車両側制御回路に対しスイッチ41をオフにするよう要求するデータ信号dataを出力する。これにより、スイッチ41がオフになると、主電源17の電力はスタータ13のみに供給され、その電圧降下の影響が負荷21に及ばないようにしている。
なお、上記したように、スイッチ41は既定期間tkの間はオフとなればよいので、時刻t12と同時、すなわち前記運転者が前記ブレーキペダルから前記アクセルペダルに踏みかえた時に直ちに前記車両側制御回路がスイッチ41をオフにするように制御してもよい。この場合はスイッチ41をオフにする際の遅れを低減することができる。
このような制御により、負荷21へは蓄電部29のみから電力が供給されなければならない。しかし、時刻t12の直前には既に蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckに至っているので、本来であればこれ以上の放電はできない。そこで、蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckに至り(既に至っている場合も含む)、かつ入出力電圧Vdが負荷下限電圧Vdkに至れば、制御回路35によりDC/DCコンバータ25の制御対象は蓄電部電圧Vcから入出力電圧Vdに切り替わり、同時に制御信号contの基となる電圧が下限電圧Vckから負荷下限電圧Vdkに切り替わる。これは、前記第2制御項目から優先度の高い前記第3制御項目に切り替わったことになる。
これらにより、制御回路35は時刻t12で入出力電圧Vdが負荷下限電圧Vdkを下回らないようにDC/DCコンバータ25を制御する。その結果、図4に示すように、入出力電圧Vdは11.5Vまで低下するものの、スタータ13の駆動中も負荷21を動作させ続けることができる。
また、この動作により蓄電部電圧Vcは経時的に下限電圧Vckよりも低下していく。しかし、上記したようにスタータ13の駆動期間(時刻t12から時刻t13まで)、すなわち既定期間tkは1秒であるので、蓄電部29だけの電力でも負荷21を安定に駆動し続けられる。なお、蓄電部29の蓄電容量Cは、実施の形態1と同様に、スタータ13の駆動期間中に負荷21へ十分に電力を供給できる容量としている。すなわち、スタータ13の最大消費電流をIsとすると、C×(Vck2−Vcm2)/2≧Vdk×Is×tkを満たすように蓄電容量Cを決定する。
その後、既定期間tkが経過した時刻t13でエンジン11が始動し、スタータ13の駆動が完了する。これにより、前記車両側制御回路は上記したようにエンジン11の動作時には常に発電機15が発電を行うように制御しているので、スタータ13の駆動完了とともに発電機15は発電を開始する。その後、前記車両側制御回路は発電機15を発電させた後にスイッチ41を再びオンにするようにオンオフ信号SWを出力する。これは、先にスイッチ41をオンにすると、主電源17のみから蓄電部29に電力が持ち出され、主電源17の負担が大きくなるためである。また、発電機15はスタータ13の駆動が完了するまで発電されず応答が遅い。従って、上記したように既定期間tkの経過までは蓄電部29の電力を負荷21に供給することで負荷21の安定動作が可能となる。
スイッチ41がオンになる時刻t13の時点では蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckに至っており、かつ入出力電圧Vdが負荷下限電圧Vdkに至っているので、DC/DCコンバータ25は時刻t12から時刻t13までの既定期間tkにおける動作と同様に、時刻t13以降も入出力電圧Vdが負荷下限電圧Vdkを下回らないように制御する。従って、優先度の最も高い前記第3制御項目による制御が継続される。その結果、一部主電源17からの電力を含むものの、主に発電機15からの電力が蓄電部29に充電される。また、この時に負荷21へは発電機15や主電源17からの電力が供給されるため、安定した動作を継続できる。
時刻t13以降で蓄電部29の充電が進行すると、図4に示すように蓄電部電圧Vcは経時的に増加し、時刻t14で下限電圧Vckに至る。ここで、制御回路35は本来なら蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckを下回らないように動作するのであるが、時刻t14の時点では既に車両が走行中であり、発電機15も発電を行っているので、実施の形態1と同様に、蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckよりも低い状態から蓄電部29の充電が行われた際には、蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckを下回らないような制御を行わずに、引き続き蓄電部29の充電を行うように制御する。但し、蓄電部電圧Vcは下限電圧Vckに至っているので、DC/DCコンバータ25における制御信号contの基となる電圧は負荷下限電圧Vdkから制御電圧Vstに切り替わる。この動作は、前記第3制御項目から前記第1制御項目に切り替わる動作となる。これにより、時刻t14以降では入出力電圧Vdが制御電圧Vst(=12.5V)になるように制御されるので、図4に示すように、入出力電圧Vdが12.5Vに上がる。その結果、主電源17の定格電圧とほぼ等しくなるので、蓄電部29への充電は主に発電機15からの電力により行われ、主電源17の負担が軽減される。また、蓄電部電圧Vcは引き続き経時的に上昇する。
その後、時刻t15で蓄電部電圧Vcは上限電圧Vcu(=10V)に至る。これにより、制御回路35によりDC/DCコンバータ25の制御対象は入出力電圧Vdから蓄電部電圧Vcに切り替わり、同時に制御信号contの基となる電圧は制御電圧Vstから上限電圧Vcuに切り替わる。これは、前記第1制御項目が優先度の高い前記第2制御項目に切り替わったことになる。これにより、蓄電部電圧Vcは上限電圧Vcuを上回らないように制御される。また、入出力電圧VdがDC/DCコンバータ25の制御対象ではなくなったので、入出力電圧Vdは発電電圧Va(=14.5V)に上昇する。ゆえに、負荷21へは発電機15の電力が主に供給され、その動作を継続することができる。
その後、時刻t16で再び車両が停止し、アイドリングストップが開始される。この時の入出力電圧Vdや蓄電部電圧Vcの状態は時刻t10と同じであるので、時刻t10以降の動作を繰り返す。
以上のことから、本実施の形態2の特徴となる動作をまとめると次のようになる。制御回路35は、発電機15の非発電時(アイドリングストップ時)に蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckに至り、かつ入出力電圧Vdが負荷下限電圧Vdkに至れば、既定期間tkに亘り入出力電圧Vdが負荷下限電圧Vdkを下回らないような制御をDC/DCコンバータ25に対して行う際に、スイッチ41をオフにするよう制御する。その後、既定期間tkが経過すると発電機15を発電させた後にスイッチ41をオンにするよう制御する。これにより、アイドリングストップ車であっても実施の形態1と同様に負荷21の安定動作が可能になるとともに、アイドリングストップ動作による前記車両の省燃費を図ることができる。
以上の構成、動作により、制御回路35は、実施の形態1の動作に加えて、既定期間tkに亘りスイッチ41をオフするとともに、既定期間tkが経過し発電機15を発電させた後にスイッチ41をオンにすることで、スタータ13の駆動時にも負荷21に蓄電部29から電力を供給し続けられ、負荷21の動作が不安定になる可能性を低減することが可能な電源装置を実現できる。
なお、本実施の形態2では、前記車両の走行中は発電機15が常に発電するように制御しているが、これは主電源17が十分に充電されている状態であれば、走行中であっても適宜発電機15の発電を停止するように制御してもよい。これにより、発電停止中は発電機15がエンジン11にかける機械的負担を軽減できるので、省燃費化が可能となる。
また、本実施の形態2では、図4の時刻t10から時刻t11に示すように、アイドリングストップ中に蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckに至る例について説明したが、蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckに至る前にスタータ13の駆動が行われた場合は、蓄電部29の電力に余力があることになるので、DC/DCコンバータ25の制御は前記第1制御項目の状態を継続すればよい。但し、スタータ13の駆動中(スイッチ41がオフの状態)に蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckに至れば、上記したように前記第2制御項目の動作に優先して前記第3制御項目の動作を行う。従って、負荷21の動作が不安定になる可能性を低減することができる。
また、本実施の形態2において、図4の時刻t11から時刻t12まで、すなわちスタータ13を駆動する前に主電源17の電圧(入出力電圧Vd)が負荷下限電圧Vdkに至れば、前記第3制御項目の条件が成立するので、制御回路35は前記第3制御項目の制御を行うと同時に、スイッチ41をオフにして主電源17の電力により強制的にスタータ13を駆動しエンジン11を始動するようデータ信号dataを前記車両側制御回路に出力する。これにより、アイドリングストップ中であっても図4の時刻t12から時刻t13までの動作を行うことで、スタータ13の駆動中は蓄電部29から既定期間tkに亘って負荷21に電力が供給され、安定動作が可能になる。また、それ以後は前記車両が停車中であっても発電機15が動作しているので、負荷21を停止させることなく電圧が低下した主電源17と蓄電部29の充電を行うことができる。
また、本実施の形態2では、図4の時刻t13から時刻t14までで蓄電部電圧Vcを下限電圧Vckまで充電しているが、この間に再び前記車両がアイドリングストップ状態になる可能性がある。この場合であっても、制御回路35は時刻t13でのDC/DCコンバータ25の制御を変えずに継続して主電源17から蓄電部29への充電を行う。これにより、再度スタータ13が駆動しても蓄電部29から負荷21に電力を供給でき、不安定動作の可能性を低減できる。
(実施の形態3)
図5は本発明の実施の形態3における電源装置の入出力電圧Vdと蓄電部電圧Vcの経時特性図である。なお、図5における横軸は時刻を、縦軸は電圧を、それぞれ示す。
本実施の形態3では電源装置が前記車両の制動時に発生する回生電力の回収機能を有するアイドリングストップ車に搭載された場合について、その特徴となる動作を説明する。なお、本実施の形態3における電源装置の構成は実施の形態2の図3と同じであるので、詳細な説明を省略する。また、以下の説明において、制動とは運転者のブレーキ操作を伴う減速走行のことであると定義する。また、本実施の形態3では、既定期間tkの経過後で蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckに至るまで蓄電部29が充電される期間、および制動時(以下、これらを発電条件という)に、発電機15の発電が行われる例について説明する。
まず、図5において時刻t10から時刻t14までの動作は実施の形態2と同じである。なお、時刻t13から時刻t14は前記車両が加速、定速走行を行っている。この期間は蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckを下回っているので、実施の形態1で述べたように早期に蓄電部29を下限電圧Vckまでは充電する必要がある。従って、実施の形態2と同様にして、主電源17の負担を軽減するために時刻t13で発電機15による発電が行われ、主に発電機15の電力で蓄電部29の充電が行われる。
次に、時刻t14で蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckに至ると、前記発電条件から外れるため、前記車両側制御回路は発電機15の発電を停止する。その結果、蓄電部29を早期に下限電圧Vckまで充電した後は発電機15によるエンジン11への機械的負担が軽減され、省燃費化が図れる。また、この時に制御回路35はDC/DCコンバータ25を前記第2制御項目となるように制御する。すなわち、DC/DCコンバータ25の制御対象は蓄電部電圧Vcとなり、蓄電部電圧Vcが下限電圧Vck(=5V)を下回らないように制御する。この状態は時刻t11から時刻t12までと同じであるので、負荷21には主電源17からのみ電力が供給され、その電圧(=入出力電圧Vd)は徐々に低下する。
その後、時刻t17で前記運転者がブレーキ操作を開始する。これにより、前記車両は制動される。このブレーキ操作が行われると、前記車両側制御回路は発電機15の発電を開始するよう発電信号ALTを出力する。これにより、制動中の回生電力が発電機15により発生するため、入出力電圧Vdは発電電圧Va(=14.5V)に上がろうとする。その結果、制御回路35はDC/DCコンバータ25を前記第2制御項目から前記第1制御項目となるように制御する。すなわち、DC/DCコンバータ25の制御対象は入出力電圧Vdとなり、入出力電圧Vdが制御電圧Vst(=12.5V)となるように制御する。これにより、発電電圧Vaに上がろうとする入出力電圧Vdは、DC/DCコンバータ25により制御電圧Vstになるように制御されるので、結果としてDC/DCコンバータ25は蓄電部29を充電するように動作する。ゆえに、入出力電圧Vdは制御電圧Vstになり、蓄電部電圧Vcは経時的に上昇する。また、この際に時刻t17までで徐々に低下した主電源17の電圧も12.5Vに至るまで充電される。
その後、時刻t18で蓄電部電圧Vcが上限電圧Vcu(=10V)に至ると、制御回路35はDC/DCコンバータ25を前記第2制御項目となるように制御する。すなわち、DC/DCコンバータ25の制御対象は蓄電部電圧Vcとなり、蓄電部電圧Vcが上限電圧Vcuを上回らないように制御する。これにより、入出力電圧VdはDC/DCコンバータ25の制御対象でなくなるので、発電機15の発電電圧Vaまで上昇する。これらの動作は図4の時刻t15と同じである。なお、時刻t18の時点では前記車両が制動中であるので、発電機15が発生する回生電力は時刻t18以降で主電源17と負荷21に供給される。
次に、時刻t19で前記車両が停止しアイドリングストップが開始される。この時の動作は図4の時刻t16と同じであるので説明を省略する。また、時刻t19の状態は時刻t10の状態と同じであるため、以後これらの動作を繰り返す。
なお、蓄電部電圧Vcが上限電圧Vcuに至るまでに時刻t19の状態(前記車両が停止しアイドリングストップが開始される)となれば、蓄電部29はその時点の電圧から放電を開始することになる。ゆえに、時刻t17以降の制動中においては、蓄電部電圧Vcが上限電圧Vcuに至るまでの範囲で蓄電部29が充電される。
以上より、本実施の形態3の特徴となる動作をまとめると、次のようになる。制御回路35は、前記車両の加速、または定速走行中は蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckを下回らないようにDC/DCコンバータ25を制御し、前記車両の制動中は蓄電部電圧Vcが上限電圧Vcuに至るまでの範囲で蓄電部29を充電するようにDC/DCコンバータ25を制御する。
以上の構成、動作により、スタータ13の駆動の間における負荷21の動作が不安定になる可能性を低減できるとともに、制動中に発生する回生電力で蓄電部29を充電するので、回生電力の発生に伴う負荷21への印加電圧(=入出力電圧Vd)の変動も低減することができる。さらに、回生電力を蓄電部29に充電することで有効利用が可能となるため、省燃費化も達成できる。
なお、本実施の形態3では前記発電条件を満たす時のみに発電機15が発電するように制御した例を示した。これにより、蓄電部29や主電源17の充電の回生電力による割合が高くなるため省燃費効果が大きい。しかし、このような制御を常時行うためには、主電源17の蓄電容量が大きいか、負荷21の消費電力変化も含めた主電源17の充放電収支がつり合うような電源仕様でなければならない。従って、一般的には前記発電条件を満たす時のみに発電機15が発電するように制御すると、主電源17が過放電に至る可能性が高くなる。ゆえに、主電源17の蓄電残量(充電状態SOC)を常に監視しておき、充電状態SOCが十分大きい時は本実施の形態3で示したように前記発電条件を満たす時のみに発電を行い、充電状態SOCが小さければ実施の形態2と同様にエンジン11が再始動する時刻t13以降で発電機15が発電を行うように制御する構成とすればよい。このように実施の形態2、3の発電機15の動作を組み合わせることにより、できるだけ省燃費を図りつつ、必要に応じて主電源17の十分な充電も可能となる。
また、さらに簡易化した制御として、実施の形態2と同様にエンジン11の駆動中は常に発電機15による発電が行われるようにしてもよい。この場合は、図5の時刻t14で発電が開始されるものの、DC/DCコンバータ25は蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckを下回らないような制御、すなわち前記第2制御項目を優先する。この制御が実施の形態2とは異なる。従って、入出力電圧VdはDC/DCコンバータ25により制御されないので、発電電圧Vaまで上昇する。その後、時刻t17で制動が開始されると、その情報を前記車両側制御回路から入手する。これは、発電電力が制動によるものか力行によるものかを制御回路35のみでは判断できないためである。制動情報が制御回路35に入力されると、制御回路35により前記第2制御項目から前記第1制御項目に切り替わる。その結果、蓄電部29への充電を行うようにDC/DCコンバータ25が制御するので、入出力電圧Vdは制御電圧Vstに下がり、制動時の回生電力が蓄電部29に充電される。ゆえに、負荷21には負荷下限電圧Vdk以上の電圧が印加され動作が安定化するとともに、常に発電機15による発電が行われるようにしても蓄電部29には主に回生電力が充電されるので、実施の形態2に比べて省燃費化が図れる。但し、実施の形態1〜3の構成では、前記制動情報などの前記車両からの信号を得ることなくDC/DCコンバータ25の制御が可能であるので、制御が容易に、かつタイムリーに行えるという効果が得られるが、上記構成では前記制動情報が必要となるので、その分、回路や制御の複雑さが増す上、制御の応答性が遅くなる。ゆえに、省燃費化と、制御の容易さや応答性との、どちらを優先するかにより最適な構成を選択すればよい。
なお、上記構成では、前記運転者がブレーキ操作を行っているか否かによって前記車両の制動を判断し、前記回生電力を蓄電部29に充電するようにしているが、これは燃料カット信号に応じて発電機15の発電を制御してもよい。これにより、前記車両がブレーキ操作を伴わない減速走行(慣性走行)を行っている場合にも蓄電部29に前記回生電力を充電することができ、さらなる回収効率の向上が図れる。但し、前記回生電力の回収により、エンジン11への発電機15の機械的負担が増すので、慣性走行距離が短くなる。従って、前記回生電力の回収量を重視するか、前記慣性走行距離を重視するかで、前記慣性走行時の回生電力回収を行うか否か、あるいは前記回収量の程度を決定するようにすればよい。
また、実施の形態1〜3において、例えば車両保管中に蓄電部29が内部抵抗等により放電されると、次回の車両使用開始時に蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckより低くなることがある。この場合、制御回路35は、例えばエンジン11の始動後に蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckに至るまで蓄電部29を初期充電するようDC/DCコンバータ25を制御すればよい。
また、本実施の形態1〜3では、前記第1制御項目として入出力電圧Vdが制御電圧Vstとなるように制御しているが、これはDC/DCコンバータ25に流れる電流が既定の制御電流となるように定電流制御をしてもよい。この場合、前記制御電流は、蓄電部29の充電時制御電流Istcと放電時制御電流−Istdのように符号が異なる(ここでは蓄電部29を充電する際の電流の方向を正とした)。なお、充電時制御電流Istcと放電時制御電流−Istdの絶対値は同じであってもよいし、発電機15の発電仕様や負荷21の消費電流等に応じて異なる値としてもよい。このような構成により、発電機15の発電能力が小さい場合に、発電機15からの過大電流が流れる可能性を低減できる。さらに、DC/DCコンバータ25の発熱が一定となるので、熱衝撃が低減され高信頼性が得られる。
また、実施の形態1〜3において、スタータ13と発電機15を別体構成としたが、これは一体構成であるモータジェネレータであってもよい。これにより省スペース化が図れる。
また、実施の形態1〜3では、蓄電部29に電気二重層キャパシタを用いたが、これは電気化学キャパシタ等の他のキャパシタや二次電池であってもよい。
また、実施の形態1と2、または実施の形態1と3を組み合わせた構成としてもよい。これにより、短期間に大電流を消費する負荷21が複数ある構成でも不安定動作の可能性を低減できる。
また、実施の形態1〜3では、電源装置を車両に適用した場合について説明したが、これに限らずクレーン等の建設機械のように主電源17と蓄電部29の2つの蓄電源を有する装置に適用してもよい。