JP5381130B2 - 湿式紡糸用口金およびアクリル系炭素繊維用前駆体繊維束ないし炭素繊維の製造方法 - Google Patents

湿式紡糸用口金およびアクリル系炭素繊維用前駆体繊維束ないし炭素繊維の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、強度の高い炭素繊維を製造するのに適したアクリル系前駆体繊維束を安定して紡糸することができる湿式紡糸用口金と、それを用いたアクリル系炭素繊維用前駆体繊維束の製造方法に関するものである。
アクリル系炭素繊維は、その優れた力学特性等により炭素繊維強化樹脂複合材料(CFRP)として、航空機部品、プレミアムスポーツ用具部品および産業用機器部品等として広く活用されているが、更に用途を拡大するために、力学特性の向上やコスト低減が求められている。炭素繊維の力学特性の向上やコスト低減には、その前駆体繊維であるアクリル系繊維の製造方法の改良が大きな効果を奏するものとして期待されている。
アクリル系繊維の紡糸方法としては、湿式紡糸法、乾式紡糸法および乾湿式紡糸法が工業的に実用化されているが、特に生産性に優れている湿式紡糸法が最も一般的な紡糸方法である。
この湿式紡糸法は、紡糸原液であるアクリル系重合体溶液を溶剤と水の混合液である凝固液中に吐出・凝固して繊維を形成する方法であり、乾湿式紡糸法や乾式紡糸法に比較して紡糸口金の吐出孔密度を高くすることができるため、生産性を向上する上で有利と考えられている。
湿式紡糸法において、アクリル系重合体溶液は紡糸口金の吐出孔から凝固液中に吐出され、繊維状に形成された単繊維の集合体である繊維束となって引き取られるが、紡糸口金の吐出孔密度を増加させ、繊維束の構成本数が増加すると繊維束内への凝固液の流入が阻害される。このため吐出孔群の外周部と中央部で凝固液の濃度や温度に差異が生じ、凝固速度に差異が発生する原因となる。また、紡糸口金の吐出孔密度を増加すると、生産性の向上の観点からは効果を有するが、さらに高強度化および多ホール化する場合には、効果が乏しくなるという問題点があった。
この解決策として、多数の微細な吐出孔を有し、かつその多数の吐出孔が分割帯にて複数のブロックに分割配列される紡糸口金において、前記吐出孔の各ブロックの口金中心部に吐出孔を有しない逆扇形状部分を形成した紡糸口金が提案されている(特許文献1参照。)。しかしながら、この提案のように口金中央部に吐出孔を有しない部分が形成されると、繊維束に囲まれた内部は滞留領域を形成し、逆に凝固液の侵入が阻害されて凝固液濃度が上昇するという問題がある。
また、別の解決策として、3個/mm以上の吐出孔密度を持つ吐出孔群が分割帯を介して6ブロック以上の扇形状に区画されてなる円形口金であって、前記分割帯の幅が口金中心部で狭く、口金外周部で広くなるように途中で切り替えられてなる湿式紡糸用口金が提案されている(特許文献2参照。)。しかしながら、この提案のようにブロック数を一定にした吐出孔密度を大きくした場合、ブロックの外周と中央部とで凝固液の置換が遅くなり凝固液濃度および温度の差が生じるという問題がある。
さらに別の解決策として、口金円の中心から放射状に伸びる6〜18個の第1の2等辺扇形非穿孔領域と、それによって区画された6〜18個の特定の位置に、第2の2等辺扇形非穿孔領域を内在させた複数の吐出孔の穿孔された2等辺扇形穿孔領域を有し、各々の穿孔領域において、その第2の非穿孔領域は該穿孔領域の中心角の2等分線上の口金円中心から口金半径の5/12〜1/5範囲の距離の点を頂点として該2等分線を共有して立つ2等辺扇形をなし、かつ該穿孔領域総面積、第1の非穿孔領域総面積、および第2の非穿孔領域総面積の該口金円面積に対する比が、それぞれ50〜77%、15〜25%、および8〜25%である湿式紡糸用口金が提案されている(特許文献3参照。)。しかしながら、この提案のように吐出孔数を増やした場合、自ずと口金サイズが大きくなり、併せて凝固浴槽およびそれに関わる設備も大きくなり設備費が高くなるという問題がある。
さらに、口金の外形を略長方形とし、多数のノズル孔を、複数のノズル孔密集領域に区画し、各ノズル孔密集領域の周囲には無孔領域を形成することにより、ノズル孔の高密度化を確保し、且つアクリル系繊維を安定して、高い生産性で紡糸することのできる紡糸口金が提案されている(特許文献4参照。)。しかしながら、特に生産性良く繊度が小さいアクリル系炭素繊維用前駆体繊維を製造しようとすると、浴液の流れが未だ不十分であるという問題があった。
特公平2−445号公報 特開2003−301317号公報 特開平8−134712号公報 特開2000−328347号公報
本発明の目的は、かかる従来の問題点を解決し、単繊維間の断面積斑や構造斑が改善されて高強度のアクリル系炭素繊維製造に適した前駆体繊維束を安定して紡糸可能な湿式紡糸口金と、その口金を用いたアクリル系炭素繊維用前駆体繊維束の製造方法を提供することにある。
前述の目的を達成するために、本発明者等が鋭意検討した結果、本発明に到達したものである。
すなわち本発明の第一の実施態様は、吐出孔が3000〜16000ホールの合成繊維を湿式紡糸するための紡糸口金であって、吐出孔群が第一の分割帯によって複数の吐出孔群の大ブロックに分割配置されてなり、さらに、前記大ブロック内が前記第一の分割帯より幅が狭い第二の分割帯によって複数の吐出孔群の小ブロックに分割されており、第一の分割帯の幅が最も狭い部分で5〜15mmであり、小ブロック内の吐出孔群の孔密度が4〜12個/mm であり、かつ該小ブロック内の吐出孔数が200〜500ホールであることを特徴とする湿式紡糸口金である。
また本発明の第二の実施態様は、吐出孔が3000〜16000ホールの合成繊維を湿式紡糸するための紡糸口金であって、吐出孔群が第一の分割帯によって複数の吐出孔群の大ブロックに分割配置されてなり、さらに、前記大ブロック内が前記第一の分割帯より幅が狭い第二の分割帯によって複数の吐出孔群の小ブロックに分割されており、第一の分割帯の幅が最も狭い部分で5〜15mmであり、紡糸口金の外形が矩形であり、大ブロックの各々の外形が円形または多角形で、その中心が前記矩形の長辺方向に等間隔に配置され、前記矩形の短辺方向にも長辺方向と同一の間隔または異なる間隔で等間隔に配置されたことを特徴とする湿式紡糸口金である。
また、その他の好ましい実施態様としては、前記の第二の分割帯の幅が1〜3mmであることを特徴とする上記の湿式紡糸口金である
さらに、本発明の好ましい実施態様は、前記の吐出孔の孔径が0.03〜0.08mmであり、かつ吐出孔の長さをL(mm)、直径をD(mm)としたときの比L/Dが0.3〜5であり、より好ましくは孔径が0.04〜0.07mm、L/Dが1.5〜4.5である上記いずれかに記載の湿式紡糸口金からなる。
さらに本発明の好ましい実施態様は前記の第二の実施態様において、大ブロックの各々にその中心を通る幅が1〜3mmの第二の分割帯が配置され、該第二の分割帯のうち、少なくとも一つが矩形の長辺または短辺に平行に配置されている湿式紡糸口金である。
本発明の別の好ましい実施態様は、前記の第一の実施態様において、口金の外形が円形であり、前記の大ブロックの各々の外形が、扇形、円形または多角形で、その中心が前記の口金の外形の同心円上に均等に配置された湿式紡糸口金であり、前記の大ブロックの各々が、口金の外形と同心円をなす第二の分割帯と、口金の中心を通る放射線状の第二の分割帯を有し、前記の第二の分割帯の幅が各々1〜3mmの湿式紡糸口金である。
本発明の別の実施態様は、アクリル系炭素繊維前駆体束製造用である上記湿式紡糸口金であり、また別の実施態様は、上記いずれかに記載の湿式紡糸口金を用いることを特徴とするアクリル系炭素繊維用前駆体繊維束の製造方法であり、さらに別の実施態様は、上記の方法で製造されたアクリル系炭素繊維用前駆体繊維束に、耐炎化処理および炭化処理を施す、炭素繊維の製造方法である。
本発明によれば、紡糸口金の各吐出孔周辺における凝固液濃度、温度の均一性が大幅に改善されるため、単繊維間の断面積斑や構造斑の改善された高強度アクリル系炭素繊維製造に適した前駆体繊維束を安定して紡糸することを達成することができる。
図1は、本発明にかかる紡糸口金の1例を示す概略平面図である。 図2は、本発明にかかる紡糸口金の別の1例を示す概略平面図である。 図3は、比較例3で使用した紡糸口金の概略平面図である。
次に、本発明の最良の実施形態を、図面に基づいて具体的に説明する。図1は、本発明にかかる紡糸口金の1例を示す概略平面図であり、図2は、本発明にかかる紡糸口金の別の1例を示す概略平面図である。
本発明の湿式紡糸口金は、図1および図2に一例を示すように、吐出孔数が3000〜16000ホールの紡糸口金1であって、3000〜16000ホールの吐出孔2からなる吐出孔群が、第一1の分割帯3により複数の吐出孔群の大ブロック4に分割されている。各大ブロック4は、第一の分割帯3より幅が狭い第二の分割帯5により複数の吐出孔群の小ブロック6に分割されている。吐出孔群が第一の分割帯3と第二の分割帯5で小ブロック6に分割されているため、3000本以上のアクリル系繊維束を紡糸する際にも、凝固液が第一の分割帯3と第二の分割帯5を通じて均等に侵入し易く各吐出孔2の周囲の濃度・温度の均一性が確保される。本発明において、紡糸口金の吐出孔数は、生産性の面から3000ホール以上であり、設備の大きさ、設備費の面から16000ホール以下である。
本発明において、第二の分割帯5の幅は第一の分割帯3の幅よりも狭く設定することができる。本発明によれば、複数の群から成る分割帯を設けることによって、第二の分割帯5の幅を第一の分割帯3の幅より狭くしても、生産効率を保ったまま得られる糸条の均一性が損なわれず、高品質の繊維が得られる特徴がある。
本発明において、紡糸口金の外形は、矩形または円形であることが好ましい。これは、矩形または円形の紡糸口金は、取り扱い性に優れ、紡糸された繊維束において単繊維間の断面積や構造の均一性確保の面からも有利であるためである。
本発明において、第一の分割帯の幅は5〜15mmの範囲であることが好ましい。第一の分割帯の幅が15mmより大きいと口金が大型化するため生産性の面から好ましくなく、5mmより小さいと凝固液が口金内部まで侵入し難くなる。
本発明において、第二の分割帯の幅は、1〜3mmの範囲であることが好ましい。第二の分割帯の幅が3mmより大きいと紡糸口金が大型化し、また、第二の分割帯の幅が1mmより小さいと凝固液が吐出孔群の大ブロック内部まで侵入し難くなる。第二の分割帯の幅のより好ましい範囲は、1.2〜2.0mmである。
紡糸口金の外形が矩形の場合、第二の分割帯は、吐出孔群の大ブロックを分割する形として口金外形に対して、少なくとも一つは矩形の外形のいずれかの辺と平行に配することが好ましい。第二の分割帯は、紡糸口金のブロックの中心を通ることが好ましく、複数の溝が、その一つが矩形の外形のいずれかの辺と平行に配され、全体の分離帯が放射線状で分割することがさらに好ましい態様である。
また、紡糸口金の外形が円形の場合、第二の分割帯は、吐出孔群の大ブロックを分割する形として口金外形に対して同心円上に配することが好ましい。さらに、口金中心を通る放射線状の分割帯で分割することがさらに好ましい態様である。
本発明において、吐出孔群の小ブロックの吐出孔密度は4〜12個/mmの範囲であることが好ましい。吐出孔密度が4個/mmより小さいと紡糸口金が大型化するため好ましくなく、12個/mmより大きいと単繊維間への凝固液の侵入がし難くなるため好ましくない。
本発明において、吐出孔群の小ブロックのホール数は、200〜500ホールの範囲であることが好ましい。ホール数が200より少ないと紡糸口金が大型化し、ホール数が500ホールより多いと単繊維間への凝固液の侵入が難しくなる。
また、大ブロック中の小ブロックの数は、単繊維間への凝固液の侵入の観点から2〜6ブロックが好ましく、より好ましくは4ブロックである。
本発明において、吐出孔群の小ブロックの外形は、多角形とくに正方形または円形であることが好ましい。これは、小ブロックの外形が多角形、とくに正方形または円形であると、小ブロック外周部から小ブロック中心部までの距離がほぼ均等であるため、紡糸された繊維束における単繊維間の均一性の確保に有利であるためである。
本発明で用いられる紡糸口金の吐出孔の孔径は、好ましくは0.03〜0.08mmの範囲であり、さらに好ましくは0.04〜0.07mmである。また、吐出孔の長さをL(mm)とし、直径をD(mm)としたときの比L/Dは、好ましくは0.3〜5の範囲であり、さらに好ましくは1.5〜4.5の範囲である。
本発明の湿式紡糸口金のブロックの形状、ホール数、孔径およびL/Dなどを特定の範囲とすることによって、紡糸の生産性と糸条の均一性をさらに向上できるばかりでなく、これらの糸条を炭素繊維用の前駆体繊維束として用いて得られた炭素繊維の引張強さが改善される効果が得られることが判明した。
本発明において吐出孔群の大ブロックは、口金全体と一体となって形成されていても良いが、吐出孔群の大ブロックの口金面が口金ベースより突出した構造をなし、大ブロック単位で口金ベースから取り外し可能な構造となっていても良い。後者の構造とすることによって、紡糸口金の製作コストを抑え、保全が容易となるという利点がある。
このようにして得られた紡糸口金を用いてアクリル系重合体溶液を湿式紡糸することによって、単繊維間の断面積斑や構造斑の改善された高強度炭素繊維に適した前駆体繊維束を製造することが可能となる。
次に、本発明におけるアクリル系炭素用前駆体繊維束の製造方法の実施形態について説明する。
本発明で用いられるアクリル系重合体溶液とは、アクリロニトリル92重量%以上からなる重合体であって、8重量%以内で他のコモノマーと共重合されていても良い。コモノマーとしては、アクリル酸のメチルエステル、エチルエステル、メタクリル酸のメチルエステル、エチルエステル、イタコン酸、イタコン酸のアンモニウム塩およびアクロレイン等を挙げることができる。また、アクリル系重合体溶液の溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、塩化亜鉛水溶液、チオシアン酸塩水溶液および硝酸等が好ましく用いられる。
紡糸は、上記のアクリル系重合体溶液をギアポンプで、本発明の湿式紡糸口金から凝固液中に吐出することによって行われ、次いで繊維束は延伸、水洗および乾燥緻密化処理が施される。
本発明で得られるアクリル系炭素用前駆体繊維束を構成する単繊維の繊度は、通常は0.5〜1.5dtexである。また、その前駆体繊維束を構成する単繊維の本数は、通常は1000〜50000本であり、より好ましくは1000〜24000本である。
本発明の吐出孔が3000ホール以上の紡糸口金を用いて、単繊維が3000本より少ない本数の繊維束を紡糸する場合は、紡糸の安定性の面から、紡糸口金から吐出された繊維束を紡糸口金の大ブロック単位の繊維束に分割して製造することが好ましい。また、紡糸口金の吐出孔数より多い本数の単繊維からなる繊維束を製造する場合は、複数の紡糸口金から吐出された繊維束を合糸すれば良い。合糸する工程は、紡糸直後、延伸後、水洗後、乾燥緻密化後等特に限定されず適宜選択することができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。まず、繊維束を構成する単繊維の断面形状のバラツキ、アクリル系前駆体繊維束からの炭素繊維の作成方法、浴中において紡糸口金から吐出した繊維束内と浴中の温度差および濃度差、走行毛羽、炭素繊維の強度、および弾性率の測定方法を次に示す。
(1)単繊維の断面形状のバラツキ
繊維束の断面写真を撮影し、ランダムに単繊維100本の断面形状を○型(円形型)、楕円型およびβ型の3形状に分け、形状毎に個数をカウントし、凝固が均一に行われなかった単繊維の割合を○型(円形型)の割合として算出する。
(2)アクリル系炭素繊維用前駆体繊維束からの炭素繊維の作製方法
本発明により得られたアクリル系炭素繊維用前駆体繊維束に、耐炎化処理および炭素化処理を施すことによって、高性能な炭素繊維を製造する。
(3)浴中において紡糸口金から吐出した繊維束内と浴中の温度差および濃度差
紡糸口金面から3cm離れた口金中心部の浴液および口金側面から横方向に2cm離れたポイントの浴液を採取し、屈折計を用いて濃度を測定し差を求める。また、温度に関しては、濃度と同場所の温度を測定し差を求める。
(4)走行毛羽
高圧スチームチューブ(中空部材)で延伸された走行糸条を肉眼で10分間観察し、毛羽数をカウントし、1分間当たりの毛羽数に換算する。
(5)炭素繊維の強度と弾性率
JIS R7608:2007「炭素繊維―樹脂含浸ヤーン試料を用いた引張特性試験方法」に従って求める。測定する炭素繊維の樹脂含浸ストランドは、3、4−エポキシシクロヘキシルメチル−3、4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(100重量部)/3フッ化ホウ素モノエチルアミン(3重量部)/アセトン(4重量部)を、炭素繊維または黒鉛化繊維に含浸させ、130℃の温度で30分間硬化させて作製する。また、ストランドの測定本数は6本とし、各測定結果の平均値を、引張強度と引張弾性率とする。実施例では、3、4−エポキシシクロヘキシルメチル−3、4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレートとして、ダウケミカル(株)製ERL4221を用いた。
(実施例1)
アクリロニトリル99.7モル%とイタコン酸0.3モル%を用い、ジメチルスルホキシドを溶媒とする溶液重合法により重合を行い紡糸原液とした後、凝固液としてジメチルスルホキシド水溶液を用いて湿式紡糸法により紡糸を行った。紡糸口金として、図1に示したタイプの吐出孔が12000ホールで、幅が8mmの第一分割帯で吐出孔が1500ホールの外形が円形の8ブロックに分割され、さらに各大ブロックの幅は2mmの第二の分割帯により4ブロックに分割された紡糸口金を用いた。各小ブロックにおける吐出孔密度は7.5個/mmで、孔径が0.050mmで、L/Dは3であった。
この紡糸口金を用いた製糸状態は、きわめて多数のホール数を有するにも拘わらず安定しており、この前駆体繊維束から作成した炭素繊維の引張強度は5.70GPaであり、引張弾性率は294GPaと優れたものであった。
(実施例2)
実施例1と同様の方法で紡糸を行い、その際口金として、図2に示したタイプの吐出孔が6000ホールで幅が最も狭いところで6mmの第一の分割帯で吐出孔が1500ホールの4個の円形の大ブロックに分割され、さらに各大ブロックは幅が1.5mmの第二の分割帯により4個の小ブロックに分割された口金を用いた。各小ブロックにおける吐出孔密度は7.5個/mmで、孔径が0.055mmで、L/Dは3であった。紡出された糸条は凝固浴出側に設けられたガイドにより3000フィラメント単位に分割されて延伸工程に導いた。延伸は70℃の温度のジメチルスルホキシド水溶液中で行い、延伸率は6倍であった。延伸された糸条は、バイブロ水洗装置を備えた直列する8段の水洗機でイオン交換水を向流させながら水洗し、シリコン系の工程油剤を付与した後、ドラム型加熱ローラによって乾燥緻密化した。乾燥緻密化された繊維束は、出入口にラビリンスを設けた高圧スチームチューブ中で2.5倍の延伸を行い、次いでヒートセットし3000フィラメント単位の前駆体繊維束としてワインダーで巻き取った。結果を表1に示す。
Figure 0005381130
(比較例1)
紡糸口金として、図1に示したタイプの吐出孔が12000ホールで、幅が8mmの第一分割帯で吐出孔が1500ホールの外形が円形の8ブロックに分割されているが、各部ロックには第二の分割帯を有しない紡糸口金を用いた。各小ブロックにおける吐出孔密度は7.5個/mmで、孔径が0.050mmで、L/Dは3と、実施例2と同等とし、3000フィラメント単位の前駆体繊維束を作製した。
この紡糸口金を用いた製糸状態は、走行毛羽が増加し、この前駆体繊維束から作成した炭素繊維の引張強度は5.30GPaであり、引張弾性率は294GPaとやや劣る結果を得た。
(実施例3)
紡糸口金として、図2に示したタイプの吐出孔が6000ホールで、幅が8mmの第一の分割帯で吐出孔が1500ホールの4個の大ブロックに分割され、さらに各大ブロックは幅が2.0mmの第二の分割帯により4個の小ブロックに分割され孔径が0.055mmでL/Dは3の口金を用いた以外は実施例1と同様にして3000フィラメント単位の前駆体繊維束を作製した。なお、各小ブロックにおける吐出孔密度は11個/mmであった。
この紡糸口金の紡糸結果および得られた前駆体繊維束を用いた炭素繊維の強度と弾性率は、実施例1と同等の結果が得られた。結果を表2に示す。
Figure 0005381130
(実施例4)
紡糸口金として、孔径が0.060mm、L/Dが2として、同等のブロック配置の口金を用いたこと以外は、実施例3と同様として、前駆体繊維束を作成した。この前駆体繊維から得られた炭素繊維の引張強度は5.60GPa、引張弾性率は296GPaと優れた特性を得た。
(比較例2)
紡糸口金として図2に示したタイプの吐出孔が6000ホールで、幅が最も狭いところで10mmの第一の分割帯で吐出孔が1500ホールの4個の大ブロックに分割され、さらに各大ブロックは幅が0.5mmの第二の分割帯により4個の小ブロックに分割され孔径が0.055mmでL/Dは3の口金を用いた以外は実施例1と同様にして3000フィラメント単位の前駆体繊維束を作製した。
なお、各小ブロックにおける吐出孔密度は14個/mmであった。
該口金の紡糸結果および得られた前駆体繊維束を用いた炭素繊維の強度、弾性率は実施例1に対して、濃度差が大きく、走行毛羽も増加した。また炭素繊維の強度、弾性率も低下する結果となった。結果を表3に示す。
Figure 0005381130
(比較例3)
紡糸口金として、図2に示したタイプの吐出孔が6000ホールで、幅が最も狭いところで4mmの第一の分割帯で吐出孔が1500ホールの4個の大ブロックに分割され、さらに各大ブロックは幅が2.5mmの第二の分割帯により4個の小ブロックに分割され孔径が0.055mmで、L/Dは3の口金を用いたこと以外は、実施例1と同様にして3000フィラメント単位の前駆体繊維束を作製した。各小ブロックにおける吐出孔密度は10個/mmであった。
該口金の紡糸結果および得られた前駆体繊維束を用いた炭素繊維の強度、弾性率は比較例2と同様に、濃度差が大きく、走行毛羽も増加した。また炭素繊維の強度が低下する結果となった。結果を表4に示す。
Figure 0005381130
(比較例4)
紡糸口金として、図3に示したタイプの吐出孔が6000ホールで、幅が8mmないし2mmの分割帯で6000ホールを6分割する。分割帯の幅は、8mmのものが一つと、口金の外周は5mmで口金中央の最も小さい幅が2mmであるものが2つである。そのほかの条件は、実施例2と同様にして3000フィラメント単位の前駆体繊維束を作製した。
この紡糸口金の紡糸結果および得られた前駆体繊維束を用いた炭素繊維の強度と弾性率は、実施例2に比して、濃度差が大きく、走行毛羽も増加した。また、炭素繊維の強度が低下する結果となった。結果を表5に示す。
Figure 0005381130
1 紡糸口金
2 吐出孔
3 第一の分割帯
4 吐出孔群の大ブロック
5 第二の分割帯
6 吐出孔群の小ブロック

Claims (11)

  1. 吐出孔が3000〜16000ホールの合成繊維を湿式紡糸するための紡糸口金であって、吐出孔群が第一の分割帯によって複数の吐出孔群の大ブロックに分割配置されてなり、さらに、前記大ブロック内が前記第一の分割帯より幅が狭い第二の分割帯によって複数の吐出孔群の小ブロックに分割されており、第一の分割帯の幅が最も狭い部分で5〜15mmであり、小ブロック内の吐出孔群の孔密度が4〜12個/mm であり、かつ該小ブロック内の吐出孔数が200〜500ホールであることを特徴とする湿式紡糸口金。
  2. 吐出孔が3000〜16000ホールの合成繊維を湿式紡糸するための紡糸口金であって、吐出孔群が第一の分割帯によって複数の吐出孔群の大ブロックに分割配置されてなり、さらに、前記大ブロック内が前記第一の分割帯より幅が狭い第二の分割帯によって複数の吐出孔群の小ブロックに分割されており、第一の分割帯の幅が最も狭い部分で5〜15mmであり、紡糸口金の外形が矩形であり、大ブロックの各々の外形が円形または多角形で、その中心が前記矩形の長辺方向に等間隔に配置され、前記矩形の短辺方向にも長辺方向と同一の間隔または異なる間隔で等間隔に配置されたことを特徴とする湿式紡糸口金。
  3. 第二の分割帯の幅が1〜3mmである請求項1または2記載の湿式紡糸口金。
  4. 吐出孔の孔径が0.03〜0.08mmであり、かつ吐出孔の長さをL(mm)、直径をD(mm)としたときの比L/Dが0.3〜5である請求項13のいずれかに記載の湿式紡糸口金。
  5. 吐出孔の孔径が0.04〜0.07mmであり、かつ比L/Dが1.5〜4.5である請求項4記載の湿式紡糸口金。
  6. 大ブロックの各々にその中心を通り幅が1〜3mmの第二の分割帯が配置され、該第二の分割帯のうち、少なくとも一つが矩形辺のいずれかに平行に配置されている請求項2〜5のいずれか記載の湿式紡糸口金。
  7. 紡糸口金の外形が円形であり、大ブロックの各々の外形が、扇形、円形または多角形で、その中心が前記紡糸口金の外形の同心円上に均等に配置された請求項1または3〜5のいずれかに記載の湿式紡糸口金。
  8. 大ブロックの各々が、紡糸口金の外形と同心円をなす第二の分割帯と、紡糸口金の中心を通る放射線状の第二の分割帯を有し、第二の分割帯の幅が各々1〜3mmである請求項記載の湿式紡糸口金。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の湿式紡糸口金がアクリル系炭素繊維用前駆体繊維束の製造用である湿式紡糸口金。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の湿式紡糸口金を用いることを特徴とするアクリル系炭素繊維用前駆体繊維束の製造方法。
  11. 請求項10に記載の方法で製造されたアクリル系炭素繊維用前駆体繊維束に、耐炎化処理および炭化処理を施す、炭素繊維の製造方法。
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