《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態を、図1〜図11(D)に基づいて説明する。図1には、第1の実施形態の露光装置100の構成が概略的に示されている。
露光装置100は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、いわゆるスキャナである。後述するように、本実施形態では投影光学系PLとプライマリアライメント系AL1(図4、図5等参照)が設けられている。以下においては、投影光学系PLの光軸AXと平行な方向をZ軸方向、これに直交する面内で光軸AXとプライマリアライメント系AL1の検出中心を結ぶ直線と平行な方向をY軸方向、Z軸及びY軸に直交する方向をX軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。
露光装置100は、図1に示されるように、照明系10、レチクルステージRST、投影ユニットPU、局所液浸装置8、ウエハステージWST及び計測ステージMSTを有するステージ装置50、並びにこれらの制御系等を備えている。図1において、ウエハステージWST上には、ウエハWが載置されている。
照明系10は、例えば米国特許出願公開第2003/0025890号明細書などに開示されるように、光源と、オプティカルインテグレータ等を含む照度均一化光学系、及びレチクルブラインド等(いずれも不図示)を有する照明光学系と、を含む。照明系10は、レチクルブラインド(マスキングシステム)で規定されたレチクルR上のスリット状の照明領域IARを、照明光(露光光)ILによりほぼ均一な照度で照明する。ここで、照明光ILとして、一例として、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)が用いられる。
レチクルステージRST上には、そのパターン面(図1における下面)に回路パターンなどが形成されたレチクルRが、例えば真空吸着により固定されている。レチクルステージRSTは、例えばリニアモータ等を含むレチクルステージ駆動系11(図1では不図示、図7参照)によって、XY平面内で微小駆動可能であるとともに、走査方向(図1における紙面内左右方向であるY軸方向)に所定の走査速度で駆動可能となっている。
レチクルステージRSTのXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報を含む)は、レチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」という)116によって、移動鏡15(実際には、Y軸方向に直交する反射面を有するY移動鏡(あるいは、レトロリフレクタ)とX軸方向に直交する反射面を有するX移動鏡とが設けられている)を介して、例えば0.25nm程度の分解能で常時検出される。レチクル干渉計116の計測値は、主制御装置20(図1では不図示、図7参照)に送られる。
投影ユニットPUは、レチクルステージRSTの図1における下方に配置されている。投影ユニットPUは、鏡筒40と、鏡筒40内に保持された投影光学系PLと、を含む。投影光学系PLとしては、例えば、Z軸方向と平行な光軸AXに沿って配列される複数の光学素子(レンズエレメント)から成る屈折光学系が用いられる。投影光学系PLは、例えば両側テレセントリックで、所定の投影倍率(例えば1/4倍、1/5倍又は1/8倍など)を有する。このため、照明系10によってレチクルR上の照明領域IARが照明されると、投影光学系PLの第1面(物体面)とパターン面がほぼ一致して配置されるレチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系PL(投影ユニットPU)を介してその照明領域IAR内のレチクルRの回路パターンの縮小像(回路パターンの一部の縮小像)が、その第2面(像面)側に配置される、表面にレジスト(感応剤)が塗布されたウエハW上の前記照明領域IARに共役な領域(以下、露光領域とも呼ぶ)IAに形成される。そして、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとの同期駆動によって、照明領域IAR(照明光IL)に対してレチクルRを走査方向(Y軸方向)に相対移動させるとともに、露光領域IA(照明光IL)に対してウエハWを走査方向(Y軸方向)に相対移動させることで、ウエハW上の1つのショット領域(区画領域)の走査露光が行われ、そのショット領域にレチクルRのパターンが転写される。すなわち、本実施形態では照明系10、レチクルR及び投影光学系PLによってウエハW上にパターンが生成され、照明光ILによるウエハW上の感応層(レジスト層)の露光によってウエハW上にそのパターンが形成される。
本実施形態の露光装置100には、液浸方式の露光を行うために、前述の如く、局所液浸装置8が設けられている。局所液浸装置8は、液体供給装置5、液体回収装置6(いずれも図1では不図示、図7参照)、液体供給管31A、液体回収管31B、及びノズルユニット32等を含む。ノズルユニット32は、図1に示されるように、投影光学系PLを構成する最も像面側(ウエハW側)の光学素子、ここではレンズ(以下、「先端レンズ」ともいう)191を保持する鏡筒40の下端部周囲を取り囲むように、投影ユニットPUを保持する不図示のメインフレームに吊り下げ支持されている。本実施形態では、ノズルユニット32は、図1に示されるように、その下端面が先端レンズ191の下端面とほぼ同一面に設定されている。また、ノズルユニット32は、液体Lqの供給口及び回収口と、ウエハWが対向して配置され、かつ回収口が設けられる下面と、液体供給管31A及び液体回収管31Bとそれぞれ接続される供給流路及び回収流路とを備えている。液体供給管31Aと液体回収管31Bとは、図4に示されるように、平面視(上方から見て)でX軸方向及びY軸方向に対してほぼ45°傾斜し、投影光学系PLの光軸AXとプライマリアライメント系AL1の検出中心とを結ぶY軸に平行な直線(以下、基準軸と呼ぶ)LVに関して対称な配置となっている。図4において、符号UPはウエハステージWST上のウエハのアンロード時にウエハステージWSTの中心が位置するアンローディングポジションを示し、符号LPはウエハステージWST上へのウエハのロード時にウエハステージWSTの中心が位置するローディングポジションを示す。
液体供給管31Aは液体供給装置5(図1では不図示、図7参照)に、液体回収管31Bは液体回収装置6(図1では不図示、図7参照)に接続されている。ここで、液体供給装置5には、液体を貯蔵するタンク、加圧ポンプ、温度制御装置、液体の流量を制御するためのバルブ等が備えられている。液体回収装置6には、回収した液体を貯蔵するタンク、吸引ポンプ、液体の流量を制御するためのバルブ等が備えられている。
主制御装置20は、液体供給装置5(図7参照)を制御して、液体供給管31Aを介して先端レンズ191とウエハWとの間に液体を供給するとともに、液体回収装置6(図7参照)を制御して、液体回収管31Bを介して先端レンズ191とウエハWとの間から液体を回収する。このとき、主制御装置20は、供給される液体の量と回収される液体の量とが常に等しくなるように、液体供給装置5と液体回収装置6を制御する。従って、先端レンズ191とウエハWとの間には、一定量の液体Lq(図1参照)が常に入れ替わって保持され、これにより液浸領域14(図4参照)が形成される。なお、投影ユニットPUの下方に後述する計測ステージMSTが位置する場合にも、同様に先端レンズ191と計測テーブルとの間に液浸領域14を形成することができる。
本実施形態では、上記の液体として、ArFエキシマレーザ光(波長193nmの光)が透過する純水(以下、特に必要な場合を除いて、単に「水」と記述する)を用いるものとする。なお、ArFエキシマレーザ光に対する水の屈折率nは、ほぼ1.44であり、水の中では、照明光ILの波長は、193nm×1/n=約134nmに短波長化される。
ステージ装置50は、図1に示されるように、ベース盤12の上方に配置されたウエハステージWST及び計測ステージMST、両ステージWST,MSTの位置情報を計測する計測システム200(図7参照)、及び両ステージWST,MSTを駆動するステージ駆動系124(図7参照)等を備えている。計測システム200は、図7に示されるように、干渉計システム118、エンコーダシステム150、及び面位置計測システム180などを含む。
ウエハステージWST及び計測ステージMSTは、不図示の非接触軸受、例えばエアベアリングなどにより、数μm程度のクリアランスを介して、ベース盤12の上方に支持されている。また、両ステージWST,MSTは、リニアモータ等を含むステージ駆動系124(図7参照)によって、独立して駆動可能である。
ウエハステージWSTは、図1に示されるように、ステージ本体91と、該ステージ本体91上に搭載されたウエハテーブルWTBとを含む。ウエハテーブルWTB及びステージ本体91は、リニアモータ及びZ・レベリング機構(ボイスコイルモータなどを含む)を含む駆動系によって、ベース盤12に対し、6自由度方向(X,Y,Z,θx,θy,θz)に駆動可能に構成されている。
ウエハテーブルWTBの上面の中央には、ウエハWを真空吸着等によって保持するウエハホルダ(不図示)が設けられている。ウエハホルダ(ウエハの載置領域)の外側には、図2(A)に示されるように、ウエハW(ウエハホルダ)よりも一回り大きな円形の開口が中央に形成され、かつ矩形状の外形(輪郭)を有するプレート(撥液板)28が設けられている。プレート28の表面は、液体Lqに対して撥液化処理されている(撥液面が形成されている)。なお、プレート28は、その表面の全部(あるいは一部)がウエハWの表面と同一面となるようにウエハテーブルWTB上面に固定されている。
プレート28は、中央に上述の円形の開口が形成された矩形の外形(輪郭)を有する第1撥液領域(第1撥液板)28aと、その周囲に配置された矩形枠状(環状)の第2撥液領域(第2撥液板)28bと、を有する。
第1撥液板28aの+Y側の端部には、長方形の切り欠きが形成され、該切り欠きの内部にその表面がプレート28とほぼ同一面となる状態で計測プレート30が設けられている。この計測プレート30には、中央に基準マークFMが設けられ、基準マークFMのX空間像計測スリットパターン(スリット状の計測用パターン)SLが、設けられている。そして、各空間像計測スリットパターンSLに対応して、それらを透過する照明光ILを、ウエハステージWST外部(後述する計測ステージMSTに設けられる受光系)に導く送光系(不図示)が設けられている。
第2撥液板28bには、後述するエンコーダシステムで用いられるスケールが形成されている。詳述すると、第2撥液板28bのX軸方向(図2(A)における紙面内左右方向)の一側と他側の領域には、それぞれYスケール39Y1,39Y2が形成されている。Yスケール39Y1,39Y2は、例えば、X軸方向を長手方向とする格子線38が所定ピッチでY軸方向に配列された、Y軸方向を周期方向とする反射型の格子(例えば回折格子)RG(図8参照)によって構成されている。格子線38の長さは、一例として約76mmに設定されている。
同様に、第2撥液板28bのY軸方向(図2(A)における紙面内上下方向)の一側と他側の領域には、Yスケール39Y1及び39Y2に挟まれた状態で、Xスケール39X1,39X2がそれぞれ形成されている。Xスケール39X1,39X2は、例えば、Y軸方向を長手方向とする格子線37が所定ピッチでX軸方向に配列された、X軸方向を周期方向とする反射型の格子(例えば回折格子)によって構成されている。
なお、格子線37,38のピッチは、例えば1μmと設定される。図2(A)及びその他の図において、図示の便宜のため、格子のピッチは実際のピッチよりも大きく図示されている。
また、回折格子RGは、撥液性をそなえた低熱膨張率のガラス板CG(図8参照)でカバーされ、保護されている。ここで、ガラス板(カバーガラスとも呼ばれる)CGとしては、厚さがウエハと同程度、例えば厚さ1mmのものを用いることができ、そのカバーガラスCGの表面がウエハ面と同じ高さ(同一面)になるよう、ウエハテーブルWST上面に設置されている。
また、ウエハテーブルWTBの−Y端面,−X端面には、図2(A)に示されるように、後述する干渉計システムで用いられる反射面17a,反射面17bが形成されている。
計測ステージMSTは、図1に示されるように、不図示のリニアモータ等によってXY平面内で駆動されるステージ本体92と、ステージ本体92上に搭載された計測テーブルMTBとを含んでいる。計測ステージMSTも、不図示の駆動系によりベース盤12に対し、少なくとも3自由度方向(X,Y,θz)に駆動可能に構成されている。
なお、図7では、ウエハステージWSTの駆動系と計測ステージMSTの駆動系とを含んで、ステージ駆動系124として示されている。
計測テーブルMTB(及びステージ本体92)には、各種計測用部材が設けられている。この計測用部材としては、例えば、図2(B)に示されるように、照度むらセンサ94、空間像計測器96、波面収差計測器98、照度モニタ(不図示)などが設けられている。また、ステージ本体92には、前述の一対の送光系(不図示)に対向する配置で、一対の受光系(不図示)が設けられている。本実施形態では、ウエハステージWSTと計測ステージMSTとがY軸方向に関して所定距離以内に近接した状態(接触状態を含む)において、ウエハステージWST上の計測プレート30の各空間像計測スリットパターンSLを透過した照明光ILを各送光系(不図示)で案内し、計測ステージMST内の各受光系(不図示)の受光素子で受光する、空間像計測装置45(図7参照)が構成される。
また、計測テーブルMTBの+Y端面、−X端面には、干渉計用の反射面19a,19bが形成されている。
計測テーブルMTBの−Y側の面には、図2(B)に示されるように、X軸方向に延びるフィデューシャルバー(以下、「FDバー」と略述する)46が取り付けられている。FDバー46の長手方向の一側と他側の端部近傍には、センターラインCLに関して対称な配置で、Y軸方向を周期方向とする基準格子(例えば回折格子)52がそれぞれ形成されている。また、FDバー46の上面には、複数の基準マークMが形成されている。各基準マークMとしては、後述するアライメント系によって検出可能な寸法の2次元マークが用いられている。なお、FDバー46の表面及び計測テーブルMTBの表面も撥液膜で覆われている。
本実施形態の露光装置100では、図4及び図5に示されるように、前述の基準軸LV上で、投影光学系PLの光軸AXから−Y側に所定距離隔てた位置に検出中心を有するプライマリアライメント系AL1が設けられている。プライマリアライメント系AL1は、不図示のメインフレームの下面に固定されている。図5に示されるように、プライマリアライメント系AL1を挟んで、X軸方向の一側と他側には、基準軸LVに関してほぼ対称に検出中心が配置されるセカンダリアライメント系AL21,AL22と、AL23,AL24とがそれぞれ設けられている。セカンダリアライメント系AL21〜AL24は、可動式の支持部材を介してメインフレーム(不図示)の下面に固定されており、駆動機構601〜604(図7参照)を用いて、X軸方向に関してそれらの検出領域の相対位置が調整可能となっている。
本実施形態では、アライメント系AL1,AL21〜AL24のそれぞれとして、例えば画像処理方式のFIA(Field Image Alignment)系が用いられている。アライメント系AL1,AL21〜AL24のそれぞれからの撮像信号は、不図示の信号処理系を介して主制御装置20に供給される。
干渉計システム118は、図3に示されるように、反射面17a又は17bにそれぞれ干渉計ビーム(測長ビーム)を投射し、その反射光を受光して、ウエハステージWSTの位置を計測するY干渉計16、及び3つのX干渉計126〜128、並びに計測ステージMSTの位置を計測するY干渉計18、及びX干渉計130等を備えている。詳述すると、Y干渉計16は、基準軸LVに関して対称な一対の測長ビームB41,B42を含む少なくとも3つのY軸に平行な測長ビームを反射面17a、及び後述する移動鏡41に投射する。また、X干渉計126は、図3に示されるように、光軸AXと基準軸LVとに直交するX軸に平行な直線(以下、基準軸と呼ぶ)LH(図4参照)に関して対称な一対の測長ビームB51,B52を含む少なくとも3つのX軸に平行な測長ビームを反射面17bに投射する。また、X干渉計127は、アライメント系AL1の検出中心にて基準軸LVと直交するX軸に平行な直線(以下、基準軸と呼ぶ)LAを測長軸とする測長ビームB6を含む少なくとも2つのY軸に平行な測長ビームを反射面17bに投射する。また、X干渉計128は、Y軸に平行な測長ビームB7を反射面17bに投射する。
干渉計システム118の上記各干渉計からの位置情報は、主制御装置20に供給される。主制御装置20は、Y干渉計16及びX干渉計126又は127の計測結果に基づいて、ウエハテーブルWTB(ウエハステージWST)のX,Y位置に加え、θx方向の回転情報(すなわちピッチング情報)、θy方向の回転情報(すなわちローリング情報)、及びθz方向の回転情報(すなわちヨーイング情報)も求めることができる。
また、図1に示されるように、ステージ本体91の−Y側の側面に、凹形状の反射面を有する移動鏡41が取り付けられている。移動鏡41は、図2(A)からわかるように、X軸方向の長さがウエハテーブルWTBの反射面17aよりも、長く設計されている。
移動鏡41に対向して、干渉計システム118(図7参照)の一部を構成する一対のZ干渉計43A,43Bが配置されている(図1及び図3参照)。Z干渉計43A,43Bは、移動鏡41を介して、例えば投影ユニットPUを支持するフレーム(不図示)に固定された固定鏡47A,47Bにそれぞれ2つの測長ビームB1,B2を投射する。そして、Z干渉計43A,43Bは、それぞれの反射光を受光して、測長ビームB1,B2の光路長を計測する。その結果より、主制御装置20は、ウエハステージWSTの4自由度(Y,Z,θy,θz)方向の位置を算出する。
本実施形態では、ウエハステージWST(ウエハテーブルWTB)のXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報を含む)は、主として、後述するエンコーダシステム150を用いて計測される。干渉計システム118は、ウエハステージWSTがエンコーダシステム150の計測領域外(例えば、アンローディングポジション又はローディングポジション付近)に位置する際に、使用される。また、干渉計システム118はエンコーダシステム150の計測結果の長期的変動(例えばスケールの経時的な変形などによる)を補正(較正)する場合などに補助的に使用される。勿論、干渉計システム118とエンコーダシステム150とを併用して、ウエハステージWST(ウエハテーブルWTB)の全位置情報を計測することとしても良い。
干渉計システム118のY干渉計18、X干渉計130は、図3に示されるように、反射面19a,19bに、干渉計ビーム(測長ビーム)を投射して、それぞれの反射光を受光することにより、計測ステージMSTの位置情報(例えば、少なくともX軸及びY軸方向の位置情報とθz方向の回転情報とを含む)を計測し、その計測結果を、主制御装置20に供給する。
本実施形態の露光装置100には、干渉計システム118とは独立に、ウエハステージWSTのXY平面内での位置(X,Y,θz)を計測するためのエンコーダシステム150を構成する複数のヘッドユニットが設けられている。
図4に示されるように、ノズルユニット32の+X側、+Y側、−X側、及びプライマリアライメント系AL1の−Y側に、4つのヘッドユニット62A、62B、62C、及び62Dが、それぞれ配置されている。また、図5に示されるように、アライメント系AL1、AL21〜AL24のX軸方向の両外側にヘッドユニット62E、62Fが、それぞれ配置されている。これらのヘッドユニット62A〜62Fは、支持部材を介して、投影ユニットPUを保持するメインフレーム(不図示)に吊り下げ状態で固定されている。
ヘッドユニット62A及び62Cは、図5に示されるように、それぞれ複数(ここでは5個)のYヘッド651〜655及びYヘッド641〜645を備えている。ここで、Yヘッド652〜655及びYヘッド641〜644は、基準軸LH上に間隔WDで配置されている。Yヘッド651及びYヘッド645は、基準軸LHから−Y方向に所定距離離れたノズルユニット32の−Y側の位置に配置されている。Yヘッド651,652間、及びYヘッド644,645間のX軸方向の間隔もWDに設定されている。なお、Yヘッド651〜655とYヘッド645〜641は、基準軸LVに関して対称に配置されている。以下では、必要に応じて、Yヘッド651〜655及びYヘッド641〜645を、それぞれ、Yヘッド65及びYヘッド64とも記述する。
ヘッドユニット62Aは、Yスケール39Y1を用いて、ウエハステージWST(ウエハテーブルWTB)のY軸方向の位置(Y位置)を計測する多眼(ここでは5眼)のYリニアエンコーダ70A(図7参照)を構成する。同様に、ヘッドユニット62Cは、Yスケール39Y2を用いて、ウエハステージWST(ウエハテーブルWTB)のY位置を計測する多眼(ここでは5眼)のYリニアエンコーダ70C(図7参照)を構成する。なお、以下では、Yリニアエンコーダを、適宜、「Yエンコーダ」又は「エンコーダ」と略述する。
ここで、ヘッドユニット62A,62Cがそれぞれ備える5個のYヘッド65,64(より正確には、Yヘッド65,64が発する計測ビームのスケール上の投射点)のX軸方向の間隔WDは、Yスケール39Y1,39Y2のX軸方向の幅(より正確には、格子線38の長さ)より僅かに狭く設定されている。従って、例えば、露光の際などにはそれぞれ5個のYヘッド65,64のうち、少なくとも各1つのYヘッドが、常に、対応するYスケール39Y1,39Y2に対向する(計測ビームを投射する)。
ヘッドユニット62Bは、図5に示されるように、基準軸LV上に間隔WDで配置された複数(ここでは4個)のXヘッド665〜668を備えている。また、ヘッドユニット62Dは、基準軸LV上に間隔WDで配置された複数(ここでは4個)のXヘッド661〜664を備えている。以下では、必要に応じて、Xヘッド665〜668及びXヘッド661〜664をXヘッド66とも記述する。
ヘッドユニット62Bは、Xスケール39X1を用いて、ウエハステージWST(ウエハテーブルWTB)のX軸方向の位置(X位置)を計測する、多眼(ここでは4眼)のXリニアエンコーダ70B(図7参照)を構成する。また、ヘッドユニット62Dは、Xスケール39X2を用いて、ウエハステージWST(ウエハテーブルWTB)のX位置を計測する多眼(ここでは4眼)のXリニアエンコーダ70D(図7参照)を構成する。なお、以下では、Xリニアエンコーダを、適宜、「エンコーダ」と略述する。
ここで、ヘッドユニット62B,62Dがそれぞれ備える隣接するXヘッド66(より正確には、Xヘッド66が発する計測ビームのスケール上の投射点)のY軸方向の間隔WDは、Xスケール39X1,39X2のY軸方向の幅(より正確には、格子線37の長さ)よりも狭く設定されている。また、ヘッドユニット62Bの最も−Y側のXヘッド665とヘッドユニット62Dの最も+Y側のXヘッド664との間隔は、ウエハステージWSTのY軸方向の移動により、その2つのXヘッド間で切り換え(つなぎ)が可能となるように、ウエハテーブルWTBのY軸方向の幅よりも狭く設定されている。従って、例えば、露光の際などには、ヘッドユニット62B,62Dが備えるXヘッド66のうち少なくとも1つが、常に、対応するXスケール(39X1又は39X2)に対向する(計測ビームを投射する)。
ヘッドユニット62Eは、図5に示されるように、複数(ここでは4個)のYヘッド671〜674を備えている。ここで、3個のYヘッド671〜673は、セカンダリアライメント系AL21の−X側に、基準軸LA上に間隔WDとほぼ同一間隔で配置されている。Yヘッド674は、基準軸LAから+Y方向に所定距離離れたセカンダリアライメント系AL21の+Y側に配置されている。なお、Yヘッド673,674間のX軸方向の間隔もWDと設定されている。
ヘッドユニット62Fは、複数(ここでは4個)のYヘッド681〜684を備えている。これらのYヘッド681〜684は、基準軸LVに関して、Yヘッド674〜671と対称な位置に配置されている。以下では、必要に応じて、Yヘッド671〜674及びYヘッド681〜684を、それぞれYヘッド67及びYヘッド68とも記述する。
アライメント計測の際には、少なくとも各1つのYヘッド67,68が、それぞれYスケール39Y2,39Y1に対向する。このYヘッド67,68(すなわち、これらYヘッド67,68によって構成されるYエンコーダ70E,70F)によってウエハステージWSTのY位置(及びθz回転)が計測される。
また、本実施形態では、セカンダリアライメント系のベースライン計測時などに、セカンダリアライメント系AL21,AL24にX軸方向で隣接するYヘッド673,682が、FDバー46の一対の基準格子52とそれぞれ対向し、その一対の基準格子52と対向するYヘッド673,682によって、FDバー46のY位置が、それぞれの基準格子52の位置で計測される。以下では、一対の基準格子52にそれぞれ対向するYヘッド673,682によって構成されるエンコーダをYリニアエンコーダ(適宜、「Yエンコーダ」又は「エンコーダ」とも略述する)70E2,70F2(図7参照)と呼ぶ。また、識別のため、Yスケール39Y2,39Y1に対向するYヘッド67,68によって構成されるYエンコーダを、Yエンコーダ70E1、70F1と呼ぶ。
上述したリニアエンコーダ70A〜70Fの計測値は、主制御装置20に供給され、主制御装置20は、リニアエンコーダ70A〜70Dのうちの3つ、又はリニアエンコーダ70E1,70F1,70B及び70Dのうちの3つの計測値に基づいて、ウエハテーブルWTBのXY平面内の位置を制御するとともに、リニアエンコーダ70E2,70F2の計測値に基づいて、FDバー46(計測ステージMST)のθz方向の回転を制御する。
本実施形態の露光装置100には、図4及び図6に示されるように、ウエハステージWSTに載置されるウエハWの全面の面位置を計測するための多点焦点位置検出系(90a,90b)と、ウエハステージWSTのZ軸方向と傾斜方向の位置を計測するための面位置計測システム180を構成する複数のZセンサのヘッド(以下、Zヘッドと略述する)72a〜72d,741〜745,761〜765が設けられている。Zヘッド(72a〜72d,741〜745,761〜765)は、図7に示されるように、該Zヘッド共に面位置計測システム180を構成する信号処理・選択装置170を介して主制御装置20に接続される。多点焦点位置検出系(90a,90b)としては、例えば米国特許第5,448,332号明細書等に開示されるものと同様の構成の斜入射方式の多点焦点位置検出系が用いられている。
多点AF系(90a,90b)の複数の検出点は、被検面上でX軸方向に沿って所定間隔で配置される。図4及び図6では、それぞれ検出ビームが照射される複数の検出点が、個別に図示されず、照射系90a及び受光系90bの間でX軸方向に延びる細長い検出領域(ビーム領域)AFとして示されている。
Zヘッド72a,72b、及び72c,72dは、図6に示されるように、多点AF系(90a,90b)の検出領域AFの両端部近傍に、基準軸LVに関して対称に配置されている。また、Zヘッド76j,74i(i,j=1〜5)は、前述のヘッドユニット62A,62Cの内部に、5つのYヘッド65j,64i(i,j=1〜5)と同じX位置に、ただしY位置をずらして、それぞれ配置されている。ヘッドユニット62A,62Cがそれぞれ備える5つのZヘッド76j,74i(より正確には、Zヘッドが発する計測ビームのスケール上の投射点)のX軸方向の間隔は、Yヘッドの65j,64iのX軸方向の間隔WDと等しく設定されている。従って、Yヘッド65,64と同様に、例えば露光時などには、それぞれ5個のZヘッド76j,74iのうち、少なくとも1つのヘッドが、常に、対応するYスケール39Y1,39Y2に対向する(計測ビームを投射する)。
Zヘッド72a〜72d、76j,74iとしては、例えば、CDドライブ装置などで用いられる光ピックアップと同様の光学式変位センサのヘッドが用いられる。Zヘッド72a〜72d、76j,74iは、ウエハテーブルWTBに対し上方から計測ビームを投射し、その反射光を受光して、投射点におけるウエハテーブルWTBの面位置を計測する。なお、本実施形態では、Zヘッドの計測ビームは、前述のYスケール39Y1,39Y2(反射型回折格子)によって反射される構成を採用している。
図7には、露光装置100の制御系の主要な構成が示されている。この制御系は、装置全体を統括的に制御するマイクロコンピュータ(又はワークステーション)から成る主制御装置20を中心として構成されている。なお、図7においては、前述した照度むらセンサ94、空間像計測器96、及び波面収差計測器98など、計測ステージMSTに設けられた各種センサが、纏めてセンサ群99として示されている。
本実施形態では、主制御装置20は、エンコーダシステム150(図7参照)を用いることにより、ウエハステージWSTの有効ストローク領域、すなわちアライメント及び露光動作のためにウエハステージWSTが移動する領域において、その3自由度(X,Y,θz)方向の位置座標を計測することができる。
エンコーダシステム150(図7参照)を構成するエンコーダ70A〜70Fのヘッド(641〜645,651〜655,661〜668,671〜674,681〜684)として、次に説明するような回折干渉型のエンコーダヘッドが用いられている。
図8には、エンコーダ70A〜70Fを代表して、エンコーダ70Cの構成が示されている。図8では、エンコーダ70Cを構成するヘッドユニット62Cの1つのYヘッド64からYスケール39Y2に対し計測ビームが照射されている。
Yヘッド64は、大別すると、照射系64a、光学系64b、及び受光系64cの3部分から構成されている。照射系64aは、レーザビームLB0をY軸及びZ軸に対して45度を成す方向に射出する光源、例えば半導体レーザLDと、該半導体レーザLDから射出されるレーザビームLB0の光路上に配置されたレンズL1とを含む。光学系64bは、その分離面がXZ平面と平行である偏光ビームスプリッタPBS、一対の反射ミラーR1a,R1b、レンズL2a,L2b、四分の一波長板(以下、λ/4板と記述する)WP1a,WP1b、及び反射ミラーR2a,R2b等を備えている。受光系64cは、図9に示されるように、第1及び第2光検出器ED1,ED2、ビームスプリッタBS、及び反射ミラーR等を含む。
半導体レーザLDから射出されたレーザビームLB0はレンズL1を介して偏光ビームスプリッタPBSに入射し、2つの計測ビームLB1,LB2に偏光分離される。ここで「偏光分離」とは、入射ビームをP偏光成分とS偏光成分に分離することを意味する。偏光ビームスプリッタPBSを透過した計測ビームLB1は反射ミラーR1aを介してYスケール39Y2に形成された反射型回折格子RGに到達し、偏光ビームスプリッタPBSで反射された計測ビームLB2は反射ミラーR1bを介して反射型回折格子RGに到達する。
計測ビームLB(LB1,LB2)として、本実施形態では、図10(A)に示される円形の断面、又は図10(B)に示される回折格子RGの周期方向に長く延びる楕円形の断面、を有する計測ビームLBが用いられるものとする。
計測ビームLB1、LB2の照射によって回折格子RGから発生する所定次数の回折ビーム、例えば1次回折ビームは、それぞれ、レンズL2b、L2aを介してλ/4板WP1b、WP1aにより円偏光に変換された後、反射ミラーR2b、R2aにより反射されて再度λ/4板WP1b、WP1aを通り、往路と同じ光路を逆方向に辿って偏光ビームスプリッタPBSに向かう。
偏光ビームスプリッタPBSに向かう2つの回折ビームの偏光方向は、元の偏光方向から90度回転している。このため、先に偏光ビームスプリッタPBSを透過した計測ビームLB1に由来する回折ビームは、偏光ビームスプリッタPBSで反射される。一方、先に偏光ビームスプリッタPBSで反射された計測ビームLB2に由来する回折ビームは、偏光ビームスプリッタPBSを透過してビームLB1の1次回折ビームと同軸上に集光される。そして、これら2つの回折ビームが、出力ビームLB3として受光系64cに送光される。
受光系64cに送光された出力ビームLB3は、図9に示されるように、ビームスプリッタBSに入射し、主ビームLB4と副ビームLB5とに分離される。本実施形態では、説明の便宜上、ビームスプリッタBSとして、反射率0.5の光学素子(例えばハーフミラー)が用いられているものとする。ただし、ビームスプリッタBSの反射率は、0.5に限られるものではない。
主ビームLB4は、第1光検出器ED1によって受光される。主ビームLB4中の2つの回折ビーム(正確には、計測ビームLB1,LB2にそれぞれ由来する主ビームLB4のS,P偏光成分)は、第1光検出器ED1の内部において、検光子によって偏光方向が揃えられ、相互に干渉して干渉光となる。さらに、例えば特開2003−322551号公報に開示されているように、その干渉光は4つの光に分岐される。分岐された4つの光は、それぞれの位相が相対的に0,π/2,π,3π/2シフトされた後、光検出器ED1(内部のディテクタ)によって受光されて、それぞれの光強度I1,I2,I3,I4に応じた電気信号に変換される。
一方、副ビームLB5は、反射ミラーRを介して、第2光検出器ED2によって受光される。そして、光検出器ED2によって検出され、副ビームLB5の強度IRに応じた電気信号に変換される。ここで、副ビームLB5の強度IRは、副ビームLB5中の2つの回折ビーム(正確には、計測ビームLB1,LB2にそれぞれ由来する副ビームLB5のS偏光成分とP偏光成分)のそれぞれの強度の和に等しい。なお、第2光検出器ED2の内部に副ビームLB5をS偏光成分とP偏光成分とに分離する偏光ビームスプリッタを設け、一方の偏光成分の強度を計測することとしても良い。これは、2つの回折ビームの一方の強度を計測することに他ならない。
主ビームLB4のS及びP偏光成分から合成された干渉光(以下、適宜、主ビームと同じ記号を用いて干渉光LB4と表記する)の分岐光の強度I1,I2,I3,I4と副ビームLB5の強度IRとに応じた電気信号が、Yエンコーダ70Cの出力として、主制御装置20に送られる。主制御装置20は、Yエンコーダ70Cの出力から、Yヘッド64とスケール39Y2間の相対変位ΔYを求めるとともに、その求めた相対変位ΔYの信頼度の高低を判定する(すなわち信頼性の有無を判断、若しくは信頼性の評価を行う)。以下では、強度I1,I2,I3,I4と強度IRとに応じた電気信号を、エンコーダの出力I1,I2,I3,I4,IRとも表記する。
ここで、本実施形態における相対変位ΔYの算出方法について、その原理を含め、詳述する。ここで、簡単のため、計測ビームLB1,LB2の強度は互いに等しい、且つ出力I1,I2,I3,I4,IRの最大値は干渉光LB4の強度Iの最大値に等しくなるように定数倍されている、と仮定して、エンコーダの出力I1,I2,I3,I4,IRは、次式のように表されるとする。ここで、φは、計測ビームLB1,LB2(それらに由来する主ビームLB4のS,P偏光成分)の間の位相差である。
I1=A(1+cos(φ))=I …(1a)
I2=A(1+cos(φ+π/2)) …(1b)
I3=A(1+cos(φ+π)) …(1c)
I4=A(1+cos(φ+3π/2)) …(1d)
IR=A …(1e)
まず、主制御装置20は、Yエンコーダ70Cの出力I1,I2,I3,I4を用いて、次式(2a)、(2b)で表される差I13,I42を求める。
I13=I1−I3=2Acos(φ) …(2a)
I42=I4−I2=2Asin(φ) …(2b)
なお、差I13,I42は、光学回路(又は電気回路)を第1光検出器ED1内に導入し、それを用いて光学的(又は電気的)に求めても良い。そして、図11(A)に示されるように、横軸に関して原点Oからの距離が差I13、縦軸に関して原点Oからの距離が差I42、となる点ρ(I13,I42)をプロットする。図11(A)〜図11(D)では、点ρ(I13,I42)が、ベクトルρを用いて表され、点ρ(I13,I42)の位相がφと表記されている。ベクトルρの長さ、すなわち点ρ(I13,I42)の原点Oからの距離は2Aである。
ここで、理想状態、すなわちYエンコーダ70Cによる計測が正常に行われる状態における、点ρ(I13,I42)の動きを考える。理想状態では、干渉光LB4の強度Iの振幅Aは常に一定である。従って、出力I1,I2,I3,I4,IRの振幅Aも常に一定である。そのため、図11(A)に示されている点ρ(I13,I42)は、干渉光LB4の強度Iの変化(すなわち出力I1,I2,I3,I4の変化)とともに、原点からの距離(半径)が2Aの円周上を移動する。
また、理想状態では、干渉光LB4の強度Iは、Yスケール39Y2(すなわちウエハステージWST)が計測方向(回折格子の周期方向、すなわちY軸方向)に変位することにより、式(1a)のように、正弦的に変化する。同様に、4つの分岐光の強度I1,I2,I3,I4も、Yスケール39Y2の変位に伴い、それぞれ式(1a),(1b),(1c),(1d)のように、正弦的に変化する。この理想状態では、位相差φは、図11(A)における点ρ(I13,I42)の位相φと等価である。位相差φ(以下では、特に区別する必要がない限り、位相差と位相を区別することなく用いる)は、相対変位ΔYに対し、次式(3)のように変化する。
φ(ΔY)=2πΔY/(p/4n)+φ0 …(3)
式(3)において、pはスケール39Y2が有する回折格子のピッチ、nは回折次数(例えばn=1)、φ0は境界条件(例えば変位ΔYの基準位置の定義など)より定まる定位相項である。
式(3)より、位相φは、計測ビームLB1,LB2の波長λに依存しないことがわかる。また、位相φは、変位ΔYが計測単位(計測ピッチとも呼ぶ)p/4n増加(減少)すると2π増加(減少)することがわかる。従って、干渉光LB4の強度I及び出力I1,I2,I3,I4は、変位ΔYが計測単位増加又は減少する毎に、振動することがわかる。
式(3)によって表わされる位相φと変位ΔYとの関係及び式(1a)〜(1d)によって表される出力I1〜I4と位相φとの関係(すなわち差I13,I42と変位ΔYとの関係)より、変位ΔYの増加に応じて、点ρ(I13,I42)は、半径2Aの円周上を、例えば図11(B)に示されるように点aから点bへと、左回りに回転する。逆に、変位ΔYの減少に応じて、点ρ(I13,I42)は、上記円周上を右回りに回転する。そして、点ρ(I13,I42)は、変位ΔYが計測単位増加(減少)する毎に、円周上を一周する。
そこで、主制御装置20は、予め定められた基準位相(例えば定位相φ0)を基準にして、点ρ(I13,I42)の周回数を数える。この周回数は、干渉光LB4の強度Iの振動回数に等しい。その計数値(カウント値)をcΔYと表記する。さらに、主制御装置20は、点ρ(I13,I42)の基準位相に対する位相の変位φ’=φ−φ0を求める。これらのカウント値cΔYと位相変位φ’から、変位ΔYの計測値CΔYが、次式(4)のように求められる。
CΔY=(p/4n)×(cΔY+φ’/2π) …(4)
ここで、定位相φ0を位相オフセット(ただし、0≦φ0<2πと定義する)とし、変位ΔYの基準位置での位相φ(ΔY=0)を保持することとする。
次に、エンコーダ70Cによる計測に異常が発生した状態、例えば、図10(A)又は図10(B)に示されるように、スケール39Y2の回折格子RG上に付着した異物DWによって、計測ビームLB(LB1,LB2)が遮られる状況(以下、スケールの異常とも呼ぶ)における点ρ(I13,I42)の動きを考える。
異常発生前には、図11(C)中に、点ρ(I13,I42)が、半径2Aの円周上の点aに位置している。この状態から、スケール39Y2(ウエハステージWST)がY軸方向に変位し、それに伴い異物DWがスケール39Y2上の計測ビームLBの照射領域内に侵入し、そして異物DWによって計測ビームLBが徐々に遮られるとする。この時、干渉光LB4の強度Iは、図11(E)に示されるように、スケール39Y2の変位ΔYとともに振動する。それと同時に、強度Iが取り得る最大値が小さくなる。すなわち、強度Iの振幅(破線を用いて表した包絡線)が、点aから点cへと減衰し、Aより小さくなる。この時、図11(C)において、点ρ(I13,I42)は、半径2Aの円周から外れて曲線acを辿って、点cに到達する。
本実施形態では、先に説明したように、点ρ(I13,I42)の位相φ、すなわち図11(C)における点cの位相φから、計測ビームLB1,LB2の間の位相差φを求める。ここで、上述のようなスケールの異常が発生し、干渉光LB4の強度Iの振幅が減衰したとしても、点ρ(I13,I42)の位相φは計測ビームLB1,LB2の間の位相差φと必ず一致する(図11(C)の点c参照)。従って、上述した本実施形態の相対変位ΔYの算出方法を適用することにより、上述のスケールの異常の発生時においても、正確に計測ビームLB1,LB2の間の位相差φを、ひいてはそのφを用いてスケール39Y2の変位ΔYを算出(計測)することができる。
ただし、第1光検出器ED1の内部で、干渉光LB4を4つの分岐光に分岐し、それぞれの強度I1,I2,I3,I4を検出する光学素子(さらには差I13,I42を求める光学回路(又は電気回路))の設計誤差などにより、出力I1,I2,I3,I4のそれぞれに時間に対して一定の誤差成分が含まれることがある。この場合、差I13,I42は、一般的に、次式(5a),(5b)のように振る舞う。
I13=2Acos(φ)+B13 …(5a)
I42=2Asin(φ)+B42 …(5b)
従って、図11(D)に示されるように、理想状態であっても、点ρ(I13,I42)の円軌道の中心O’は、座標原点Oからシフトする。すなわち、点ρ(I13,I42)の位相φは、計測ビームLB1,LB2間の位相差(この場合、図中のφ’に等しい)からずれる。
通常、上記B13,B42が振幅2Aと比べて無視できるほど小さくなるように、第1光検出器ED1が設計されているので、良い近似で点ρ(I13,I42)の位相φは位相差φ’に等しいとみなすことができる。しかし、得られる出力I1,I2,I3,I4(すなわちI13,I42)の強度が低すぎる場合には、B13,B42が振幅2Aに対して相対的に大きくなるため、点ρ(I13,I42)の位相φの位相差φ’からのずれが無視できなくなる。従って、点ρ(I13,I42)の位相φを用いて変位ΔYを求めたとしても、変位ΔYの算出結果(計測結果)が正しいことを保証できない。
そこで、主制御装置20は、副ビームLB5の強度IRを指標として、変位ΔYの算出結果(計測結果)の信頼度の高低を判定する。具体的には、主制御装置20は、副ビームLB5の強度IRが予め設定された閾強度Ith以上の場合には、位相φの変化から導かれるカウント値cΔYと位相変位φ’の計測結果(すなわちこれらから求められる変位ΔYの計測値CΔY)の信頼度は高いと判断する。逆に、副ビームLB5の強度IRが閾強度Ithを下回った場合には、主制御装置20は、カウント値cΔYと位相変位φ’の計測結果(すなわちこれらから求められる変位ΔYの計測値CΔY)の信頼度は低いと判断する。
信頼度は低いが補正が可能と判断された場合、副ビームLB5の強度IRを用いて、位相φを補正する。そこで、エンコーダ70Cの使用に先立って、上記の定数A,B13,B42を計測しておく。そして、差I13,I42の実測値に、式(2a)(2b)ではなく、式(5a)(5b)(ただし定数Aに対して式(1e)を適用する)を適用することにより、真の位相差φが求められる。
なお、環境の温度、気圧などの変化により、エンコーダヘッドの光源(半導体レーザ)LDから射出されるレーザビームLB0の強度が微小変化した場合、該強度変化に伴って副ビームLB5の強度IRも微小変化する。かかる場合には、上述したようなスケールの異常などがないにもかかわらず、図11(A)〜図11(C)において、点ρ(I13,I42)の軌道は半径2Aの円周から外れ、不安定な軌道上を点ρ(I13,I42)が移動することが起こり得る。そこで、主制御装置20は、レーザビームLB0の強度I0を計測し、副ビームLB5の強度IRを規格化し、規格化された強度IR/(I0/〈I0〉)を、上記の指標として用いることとしても良い。ただし、〈I0〉は、安定時におけるレーザビームLB0の強度である。
ヘッドユニット62C内のその他のヘッド、ヘッドユニット62A,62B,62D,62E,62Fがそれぞれ備えるヘッド65,66,67,68も、ヘッド64(エンコーダ70C)と同様に構成されている。
また、本実施形態では、前述のようなエンコーダヘッドの配置を採用したことにより、常時、Xスケール39X1又は39X2に少なくとも1つのXヘッド66が、Yスケール39Y1に少なくとも1つのYヘッド65(又は68)が、Yスケール39Y2に少なくとも1つのYヘッド64(又は67)が、それぞれ対向する。スケールに対向しているエンコーダヘッドからは、上述の主ビーム(干渉光)LB4の分岐光の強度I1,I2,I3,I4と副ビームLB5の強度IRとに応じた出力信号(出力I1,I2,I3,I4,IR)が、主制御装置20に供給される。主制御装置20は、供給された出力I1,I2,I3,I4,IRから、それぞれのヘッドの計測方向についてのウエハステージWSTの変位(より正確には計測ビームが投射されるスケールの変位)を求める。その計測結果は、上述のエンコーダ70A、70C及び70B又は70D(又はエンコーダ70E1,70F1及び70B又は70D)の計測結果として、主制御装置20に供給される。
主制御装置20は、エンコーダ70A、70C及び70B又は70D(又はエンコーダ70E1,70F1及び70B又は70D)の計測結果が信頼できる場合、すなわち上述の副ビームLB5の強度IRを用いた信頼度の高低の判定の結果、信頼度が高いと判定された場合、それらを用いて、ウエハステージWSTのXY平面内での位置(X,Y,θz)を算出する。そして、その算出結果に基づいて、ウエハステージWSTをXY平面内で駆動制御する。ここで、Xヘッド66,Yヘッド65,64(又は68,67)の計測値(それぞれCX,CY1,CY2と表記する)は、ウエハステージWSTの位置(X,Y,θz)に対して、次式(6)〜(8)のように依存する。
CX= (pX−X)cosθz+(qX−Y)sinθz …(6)
CY1=−(pY1−X)sinθz+(qY1−Y)cosθz …(7)
CY2=−(pY2−X)sinθz+(qY2−Y)cosθz …(8)
ただし、(pX,qX),(pY1,qY1),(pY2,qY2)は、それぞれXヘッド66,Yヘッド65(又は68),Yヘッド64(又は67)のX,Y設置位置(より正確には計測ビームの投射点のX,Y位置)である。そこで、主制御装置20は、3つのヘッドの計測値CX,CY1,CY2を連立方程式(6)〜(8)に代入し、それらを解くことにより、ウエハステージWSTのXY平面内での位置(X,Y,θz)を算出する。
また、主制御装置20は、エンコーダ70E2,70F2の計測結果が信頼できる場合、すなわち上述の副ビームLB5の強度IRを用いた信頼度判定の結果、信頼度が高いと判定された場合、エンコーダ70E2,70F2の計測結果に基づいて、FDバー46(計測ステージMST)のθz方向の回転を制御する。ここで、エンコーダ70E2,70F2の計測値(それぞれCY1,CY2と表記する)は、FDバー46の(X,Y,θz)位置に対し、式(7)(8)のように依存する。従って、FDバー46のθz位置は、計測値CY1,CY2より、次式(9)のように求められる。
sinθz=−(CY1−CY2)/(pY1−pY2) …(9)
ただし、簡単のため、qY1=qY2を仮定した。
一方、エンコーダ70A、70C及び70B又は70D(又はエンコーダ70E1,70F1及び70B又は70D)の計測結果が信頼できない場合、主制御装置20は、エンコーダシステム150を用いるウエハステージWSTの位置計測を中断し、干渉計システム118を用いて位置計測を行う。そして、エンコーダ70A、70C及び70B又は70D(又はエンコーダ70E1,70F1及び70B又は70D)の信頼性が回復した際に、エンコーダシステム150を用いる位置計測を再開する。
本実施形態の露光装置100において、主制御装置20は、上述のように、エンコーダシステム150を用いてウエハステージWSTの(X,Y,θz)位置を計測し、その結果に従ってウエハステージWSTを駆動制御する。そして、国際公開第2007/097379号パンフレットの実施形態中に開示されている手順と同様の手順に従って、ウエハステージWSTと計測ステージMSTとを用いた並行処理動作を実行する。
以上詳細に説明したように、本実施形態の露光装置100によると、主制御装置20により、各エンコーダで計測された副ビームLB5の強度IRと干渉光LB4の強度I(より正確には分岐光の強度I1,I2,I3,I4)とに基づいて、ウエハステージWSTの計測方向に関する位置情報が算出され、該位置情報に基づいて、ウエハステージWSTが駆動される。ここで、例えばゴミなどの存在により干渉光の元となる回折光の強度が低下した場合、干渉光の強度変化のみに基づいてウエハステージWSTの位置情報を算出する場合と異なり、回折光の強度信号の振幅の減衰が考慮された正確な位置情報が算出される。従って、主制御装置20が、この算出された位置情報に基づいて、レチクルR(レチクルステージRST)に同期して、ウエハステージWSTを精度良く駆動することができ、これによりウエハステージWSTに保持されたウエハW上の各ショット領域に走査露光により、精度良くレチクルRのパターンを形成することが可能になる。
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2の実施形態を、図12、図10(A)、図10(B)、図13(A)〜図13(C)、及び図14(A)〜図14(C)に基づいて説明する。ここで、前述した第1の実施形態の露光装置100と同一若しくは同等の構成部分については、同一の符号を用いると共に、その説明を省略若しくは簡略する。
本第2の実施形態の露光装置は、エンコーダシステム150が備えるエンコーダヘッドの構成及びその計測結果の処理方法が、前述の第1の実施形態の露光装置100と多少異なるが、その他の部分の構成などは露光装置100と同様である。従って、以下では、相違点を中心に、第2の実施形態について説明する。
本第2の実施形態の露光装置が備える各ヘッドユニット内のエンコーダヘッド64,65、67,68は、図8に示される、第1の実施形態におけるYヘッド64と同様に構成され、照射系、光学系、及び受光系の3部分を有する。
ここで、ヘッドユニット62CのYヘッド64及びこれを含むエンコーダ70Cを代表的に取り上げて説明する。Yヘッド64が備える受光系64cは、図12に示されるように、第1及び第2光検出器ED1,ED2、ビームスプリッタBS及びハーフミラーR’を含む。ここで、ハーフミラーR’には、光源ELが光学的に接続されており、該光源ELがオンのときには、光源ELから計測ビームLB1,LB2の波長と同一波長の参照光EBが入射されるようになっている。そして、参照光EBは、ハーフミラーR’によって、ビームスプリッタBSで分離された副ビームLB5と同軸に合成され(同軸上に集光され)、第2光検出器ED2に入射する。そして、第2光検出器ED2の内部で、参照光EBは、副ビームLB5中の2つの回折ビーム(正確には、計測ビームLB1,LB2にそれぞれ由来する副ビームLB5のS,P偏光成分)の一方と検光子により偏光方向が揃えられて相互に干渉して干渉光となり、その干渉光が不図示のディテクタ、例えばCCDイメージセンサなどによって、受光され、該ディテクタから干渉光の断面内の強度分布に応じた電気信号(光電変換信号)が出力される。すなわち、第2光検出器ED2内部のディテクタによって、上記干渉光の断面内の強度分布が検出される。参照光EBとしては、理想的な平面波(断面内の強度も一様とする)が用いられるものとする。
また、光源ELがオフの場合、第2光検出器ED2には、副ビームLB5が入射し、第2光検出器ED2内部のディテクタによって、副ビームLB5中の2つの回折ビーム(正確には、計測ビームLB1,LB2にそれぞれ由来する主ビームLB4のS,P偏光成分)の断面内の強度分布IR(x,y)及び強度IRが検出される。ここでは、ビーム断面内の位置座標がx,yで表記されている。
第1光検出器ED1の構成、機能などは、第1の実施形態と同一であり、第1光検出器ED1によって、主ビームLB4中の2つの回折ビーム(正確には、計測ビームLB1,LB2にそれぞれ由来する主ビームLB4のS,P偏光成分)の干渉光の強度Iが検出される。
図13(A)には、光源ELがオフの場合に、第2光検出器ED2内部のディテクタ(CCDイメージセンサなど)で検出される強度分布IR(x,y)の一例が示されている。なお、副ビームLB5の強度IRは、IR=∫dxdyIR(x,y)より求められる。また、強度IRは、副ビームLB5中の2つの回折ビームそれぞれの強度の和に等しい。
主ビームLB4のS及びP偏光成分から合成された干渉光(以下、適宜、主ビームと同じ記号を用いて干渉光LB4と表記する)の強度Iと、副ビームLB5の強度IR及び強度分布IR(x,y)と、が、Yエンコーダ70Cの出力として、主制御装置20に転送される。主制御装置20は、これらの出力から、ヘッド64とスケール39Y1間の相対変位ΔYを求めるとともに、その相対変位ΔY(Yエンコーダ70Cの計測結果)の信頼度の高低を判定する。
主制御装置20は、第1の実施形態と同様に、Yエンコーダ70Cの出力I(正確にはI1,I2,I3,I4),IRからカウント値cΔYと位相変位φ’を求める。ただし、式(1e)で表わされる関係が成立するように、ビームスプリッタBSと反射ミラーR’の反射率に応じて、副ビームLB5の強度IR(及び強度分布IR(x,y))の計測値を定数倍することとする。また、先と同様に、レーザビームLB0の強度I0を計測し、副ビームLB5の強度IR(及び強度分布IR(x,y))を規格化し、規格化された強度IR/(I0/〈I0〉)を用いることとしても良い。ただし、〈I0〉は、安定時におけるレーザビームLB0の強度である。そして、主制御装置20は、求められたカウント値cΔYと位相変位φ’を式(4)に適用して、Yスケール39Y2(すなわちウエハステージWST)の計測方向(Y軸方向)への変位ΔYを求める。
本第2の実施形態では、主制御装置20は、さらに、副ビームLB5の強度分布IR(x,y)の計測結果を用いて、Yエンコーダ70Cの計測結果(変位ΔY)の信頼度の高低を判定するとともに、可能な場合には、計測誤差を補正する。計測誤差(及びスケールの異常)の発生要因として、図10(A)又は図10(B)に示されるように、スケール39Y2の回折格子RG上に異物DWが付着し、その異物DWによってYヘッド64の計測ビームLB(LB1,LB2)が遮られる場合を取り上げる。ここでは、Yヘッド64の計測ビームLBとして、図10(A)に示される円形状の断面を有する計測ビームLBが用いられているものとする。
まず、計測誤差の発生機構について説明する。理想状態、すなわちYエンコーダ70Cによる計測が正常に行われる状態では、干渉光LB4の強度分布I(x,y)は、図13(A)に示される強度分布IR(x,y)と同様の分布となる。この状態で、図10(A)に示されるように、スケール39Y1の回折格子RG上に付着した異物DWによって計測ビームLB(LB1,LB2)が遮られると、干渉光LB4の強度分布I(x,y)は、図13(B)に示される分布のように、一部の領域dにおいてその振幅が小さくなる。この場合、領域dは、異物DWによって遮られた計測ビームLBの断面内の領域に対応する。
ここで、干渉光LB4の強度分布I(x,y)は、断面内の位置x,yと計測ビームLB1,LB2の間の位相差φとの関数A(x,y,φ)を用いて、表すことができる。すなわち、I(x,y)=A(x,y,φ)。関数A(x,y,φ)は、干渉光LB4(すなわち計測ビームLB1,LB2)が理想的な平面波である場合、次式(10)のように表わすことができる。
A(x,y,φ)=A(x,y)(1+cos(φ)) …(10)
干渉光LB4の強度I=∫dxdyI(x,y)は、式(10)を適用することにより、I=IMAX(1+cos(φ))と求められる。ただし、IMAX=∫dxdyA(x,y)である。
すなわち、干渉光LB4の強度分布I(x,y)が平面波の強度分布から歪んでも、振幅IMAXが変化するだけで、位相依存性(1+cos(φ))は変化しない。従って、干渉光LB4(すなわち計測ビームLB1,LB2)が理想的な平面波である限り、前述の第1の実施形態と同様の算出方法を適用して求められる位相φは、必ず、計測ビームLB1,LB2の間の位相差φと一致する。そのため、第1の実施形態と同様の算出手法を用いる限り、上述のスケールの異常時などにおいても、変位ΔYの算出誤差(計測誤差)は発生しない。
しかるに、実際問題として、干渉光LB4(すなわち計測ビームLB1,LB2)が、完全なる平面波であることは希であり、干渉光LB4は、波面に歪みが存在する波(以下、歪み波と呼ぶ)であることが通常である。従って、干渉光LB4では、位相差φが位置x,yに依存するため、式(10)のように、強度分布を表す関数A(x,y,φ)を位置(x,y)のみに依存する部分と位相差φのみに依存する部分とに変数分離することはできない。この場合、干渉光LB4の強度Iを、先と同様の一般形IMAX’(1+cos(θ))を用いて表すことができるが、その振幅IMAX’と位相θは、ともに、理想状態における振幅IMAXと位相φからずれる。さらに、干渉光LB4の強度分布I(x,y)の変化によって、振幅IMAX’と位相θも変化する。従って、干渉光LB4が歪み波である場合、第1の実施形態と同様の解析手法を適用しても、変位ΔYの計測誤差が発生する。
本第2の実施形態の露光装置では、上述の計測誤差の発生機構に鑑みて、主制御装置20により、以下のような計測結果の信頼度の高低判定と、計測誤差の補正方法とが、行われる。
主制御装置20は、露光装置100の起動時など、理想状態、すなわちYエンコーダ70Cが正常に作動している状態において、第2光検出器ED2を用いて副ビームLB5の断面内の強度分布IR0(x,y)を計測する。
ここで、図13(A)に示される強度分布IR0(x,y)が得られたとする。そして、その結果を記憶装置に保存する。ここで、エンコーダヘッドの構成より明らかなように、副ビームLB5の強度分布IR(x,y)は、振幅が異なることを除いて、干渉光LB4の強度分布I(x,y)に等しい、すなわちIR(x,y)∝I(x,y)の関係がある。なお、前述のように、関係IR=IMAXが成立するように、ビームスプリッタBSとハーフミラーR’の反射率に応じて、強度分布IR(x,y)の計測値を定数倍することとする。
一方、露光装置100の作動中、すなわちYエンコーダ70Cの使用中に、図13(B)に示される副ビームLB5の強度分布IR(x,y)が計測されたとすると、主制御装置20は、その計測された強度分布IR(x,y)を、理想状態における強度分布IR0(x,y)と比較し、両者の差、すなわち強度変化分布ΔIR(x,y)(=IR(x,y)−IR0(x,y))を求める。これにより、図13(C)に示されるような強度変化分布ΔIR(x,y)が求められる。強度変化分布ΔIR(x,y)より、領域dにおいて、計測ビームLB(LB1,LB2)が、異物DWによって遮られたことが読み取られる。異物DWの大きさ(面積)は領域dの面積に対応する(等しい)。その異物DWによって、計測ビームLB(LB1,LB2)が遮られ、副ビームLB5の強度IRがΔIR=∫dxdyΔIR(x,y)小さくなったことが分かる。
そこで、主制御装置20は、領域dの面積Sd及び強度変化ΔIRを、予め定められた閾面積Sth及び閾変化ΔIthとそれぞれ比較する。そして、面積Sdが閾面積Sthを超えた場合(Sd>Sth)、あるいは強度変化ΔIRが閾変化ΔIthを超えた場合(ΔIR>ΔIth)に、Yエンコーダ70Cの計測結果の信頼度は低いと判定し、その他の場合は、Yエンコーダ70Cの計測結果の信頼度は高いと判定する。
信頼度が高いと判定された場合(Sd≦Sth且つΔIR≦ΔIth)には、Sd≠0又はΔIR≠0であるか否かを判断する。そして、この判断が否定された場合、すなわちSd=0かつΔIR=0の場合には、主制御装置20は、Yエンコーダ70Cの計測結果の補正は不要であると判断する。一方Sd≠0又はΔIR≠0である場合には、主制御装置20は、Yエンコーダ70Cの計測結果は、補正可能であると判断し、以下のように干渉光LB4の波面の歪みΔφ(x,y)を用いて、計測誤差を補正する。
主制御装置20は、予め、露光装置100の起動時など、理想状態、すなわちYエンコーダ70Cによる計測が正常に行われる状態において、干渉光LB4の波面の歪みΔφ(x、y)を計測する。すなわち、主制御装置20は、前述の光源ELをオンにして、参照光EBと、副ビームLB52つの回折ビーム(正確には、計測ビームLB1,LB2にそれぞれ由来する副ビームLB5中のS,P偏光成分)の一方との干渉光の断面内の強度分布を、第2光検出器ED2を用いて計測する。ここで、参照光EBとして、理想的な平面波(断面内の強度も一様とする)が用いられるので、検出される強度分布は、干渉光LB4の波面の歪みを表す。従って、主制御装置20は、このようにして計測した干渉光LB4(計測ビームLB1,LB2)の波面の歪みΔφ(x、y)を、不図示の記憶装置に記憶する。
なお、計測ビームLB1,LB2の歪みがほぼ等しい場合、副ビームLB5と参照光EBとの合成光を干渉させなくても良い。その場合、計測ビームLB1,LB2の歪みの平均が得られる。
ここで、一例として、計測ビームLB1,LB2が、球面状の波面を有する球面波である場合を考える。この場合、計測ビームLB1,LB2に由来する干渉光LB4及び副ビームLB5は、球面波となる。従って、副ビームLB5と参照光EBとの干渉光の強度分布IRD(x,y)として、図14(A)に示されるような波紋状の強度分布が得られる。この強度分布IRD(x,y)が、副ビームLB5の波面の歪み(すなわち干渉光LB4(計測ビームLB1,LB2)の波面の歪み)を表す。なお、図14(B)には、図14(A)のx軸方向の中心におけるy軸方向に関する強度分布が示されている。
図14(A)において、個々の波紋の間で位相が2π異なる。従って、強度分布IRD(x,y)から、干渉光LB4の断面内での歪み、すなわち位相の分布Δφ(x,y)が求められる。ここで、位相の平均、すなわちφ0=∫dxdyφ(x,y)IRD(x,y)/∫dxdyIRD(x,y)を基準として、位相の分布Δφ(x,y)を求める。一例として、図14(A)では、最も内側の波紋の中心上での位相がφ0に等しいとした。これにより、図14(C)中に等高線図によって表わされる歪み(位相の分布)Δφ(x,y)が得られる。得られた歪み(位相の分布)Δφ(x,y)は、記憶装置に保存される。
露光装置100の作動中、すなわちYエンコーダ70Cの作動中において、補正可能な計測誤差が発生していると診断された際には、主制御装置20は、図13(C)に示されるような強度変化分布ΔI(x,y)を用いて、記憶装置に保存された歪み(位相の分布)Δφ(x,y)を、図14(C)に示されるように重みづけし、平均して、歪みによる位相のずれ(誤差)〈Δφ〉=∫dxdyΔφ(x,y)ΔIR(x,y)/∫dxdyΔIR(x,y)を求める。そして、主制御装置20は、求められた位相のずれ(誤差)〈Δφ〉を用いて、第1の実施形態と同様の算出方法を適用して求めた位相φを、φ→φ−〈Δφ〉と、補正する。
主制御装置20は、上述の手順に従って、各エンコーダの計測結果の信頼度の高低判定を行うと共に、必要な場合、計測誤差を補正する。そして、主制御装置20は、エンコーダ70A、70C及び70B又は70D(又はエンコーダ70E1,70F1及び70B又は70D)の計測結果の信頼度が高い場合、第1の実施形態と同様に、それらを式(6)〜(8)に適用して、ウエハステージWSTのXY平面内での位置(X,Y,θz)を算出する。また、エンコーダ70E2,70F2の計測結果の信頼度が高い場合、それらを式(9)に適用して、FDバー46のθz位置を算出する。
この一方、エンコーダ70A、70C及び70B又は70D(又はエンコーダ70E1,70F1及び70B又は70D)の計測結果の信頼度が低い場合、主制御装置20は、エンコーダシステム150を用いるウエハステージWSTの位置計測を中断し、干渉計システム118を用いて位置計測を行う。そして、エンコーダ70A、70C及び70B又は70D(又はエンコーダ70E1,70F1及び70B又は70D)の計測結果の信頼性が回復した際に、エンコーダシステム150を用いる位置計測を再開する。
本第2の実施形態の露光装置100においては、主制御装置20は、国際公開第2007/097379号パンフレットの実施形態中に開示されている手順と同様の手順に従って、ウエハステージWSTと計測ステージMSTとを用いた並行処理動作を実行する。その際、主制御装置20は、上述のように、エンコーダシステム150を用いてウエハステージWSTの(X,Y,θz)位置を計測し、その結果に従ってウエハステージWSTを駆動制御する。
以上説明したように、本第2の実施形態の露光装置によると、前述した第1の実施形態と同等の効果を得ることができる。これに加え、各エンコーダで計測されるウエハステージWSTの位置情報(相対変位ΔY)の信頼度の高低を、異物DWによって遮られた計測ビームLBの断面内の領域dの面積Sd及び副ビームLB5の強度変化ΔIRに基づいて判定し、その判定の結果信頼度が高い場合に、各エンコーダで計測される位置情報を、補正する必要がある場合に、補正する。従って、その補正後の位置情報に基づいてウエハステージWSTを精度良く駆動することが可能になる。
なお、上記第2の実施形態では、図12に示される、エンコーダヘッドの受光系64c内に含まれる第2光検出器ED2として、例えばCCDイメージセンサを使用し、副ビームLB5のビーム断面内の強度分布IR(x,y)を、例えば図13(A)に示される分布のように、高分解能で計測することとした。しかし、これに限らず、図14(C)に示される副ビームLB5(干渉光LB4)の歪みΔφ(x,y)の程度に応じて、例えば図13(A)に示されるように検出器の受光面を12×12の受光素子を用いて構成し、144画素の強度分布として計測することとしても良い。この場合、図14(C)に示される干渉光LB4の歪みΔφ(x,y)に対し、対応する144の区画領域毎にΔφ(x,y)を平均して求められる歪みを用いても良い。
また、上記第2の実施形態では、Yヘッド64の計測ビームLBとして、図10(A)に示される円形状の断面を有する計測ビームLBを用いたが、これに限らず、図10(B)に示される回折格子の周期方向に長く延びる楕円形状の断面を有する計測ビームLBを用いることとしても良い。この場合、理想状態、すなわちYエンコーダ70Cによる計測が正常に行われる状態では、例えば図15(A)に示されるような参照ビームLB5の強度分布IR0(x,y)が計測される。この強度分布IR0(x,y)は、y軸方向の分布に比べてx軸方向の分布の重要度が低い。従って、図10(B)に示される計測ビームLBを用いる場合には、図15(B)に示される一次元(y軸方向)の強度分布IR0(y)〔=∫dxIR0(x,y)〕を用いるものとする。
この場合において、図10(B)に示されるように、回折格子RGに付着した異物DWによって計測ビームLBが遮られると、図15(A)に示される理想状態における強度分布IR0(x,y)が、図15(D)に示される強度分布IR(x,y)のように、変化する。図15(E)には、図15(D)のように強度分布IR(x,y)が変化したときに計測される、一次元(y軸方向)の強度分布IR(y)が示されている。図15(E)において、斜線部は、理想状態からの強度変化分布ΔIR(y)〔=IR(y)−IR0(y)〕を表す。また、図15(F)には、強度変化分布ΔIR(y)が示されている。
そこで、主制御装置20は、図15(C)に示される、前述と同様に計測される干渉光LB4の歪み(すなわち副ビームLB5の歪み)Δφ(y)〔=∫dxΔφ(x,y)〕を、図15(F)の強度変化分布ΔIR(y)を用いて重みづけして平均し、歪みによる位相のずれ(誤差)〈Δφ〉=∫dyΔφ(y)ΔIR(y)/∫dyΔIR(y)を求める。そして、主制御装置20は、求められた位相のずれ(誤差)〈Δφ〉を用いて、第1の実施形態と同様の算出方法を適用して求められる位相φを、φ→φ−〈Δφ〉と、補正する。
なお、歪みΔφ(y)の変化の程度に応じて、第2光検出器ED2内部のディテクタを、例えば図15(A)に示されるように、短冊状に12分割された受光素子を用いて構成しても良い。この場合、図15(B)に示されるように、12の領域毎に積算した強度分布が計測される。この場合、図15(C)に示される干渉光LB4の歪みΔφ(y)に対し、対応する12の区画領域毎にΔφ(y)を平均して求められる歪みを用いても良い。
なお、上記各実施形態では、本発明が、投影光学系とウエハとの間に照明光の光路を含む液浸空間を形成し、投影光学系及び液浸空間の液体を介して照明光でウエハを露光する露光装置に適用された場合について説明したが、非液浸タイプの露光装置にも本発明を適用することができる。
また、上記各実施形態では、ステップ・アンド・スキャン方式等の走査型露光装置に本発明が適用された場合について説明したが、これに限らず、ステッパなどの静止型露光装置に本発明を適用しても良い。ステッパなどであっても、露光対象の物体が搭載されたステージの位置を上記実施形態と同様に、エンコーダを用いて計測することができるので、同様の効果を得ることができる。また、ショット領域とショット領域とを合成するステップ・アンド・スティッチ方式の縮小投影露光装置、プロキシミティー方式の露光装置、又はミラープロジェクション・アライナーなどにも本発明は適用することができる。また、例えば米国特許第6,590,634号明細書、米国特許第5,969,441号明細書、米国特許第6,208,407号明細書などに開示されているように、複数のウエハステージを備えたマルチステージ型の露光装置にも本発明を適用できる。
また、上記各実施形態の露光装置における投影光学系は縮小系のみならず等倍及び拡大系のいずれでも良いし、投影光学系PLは屈折系のみならず、反射系及び反射屈折系のいずれでも良いし、その投影像は倒立像及び正立像のいずれでも良い。また、前述の照明領域及び露光領域はその形状が矩形であるものとしたが、これに限らず、例えば円弧、台形、あるいは平行四辺形などでも良い。
なお、上記各実施形態の露光装置の光源は、ArFエキシマレーザに限らず、KrFエキシマレーザ(出力波長248nm)、F2レーザ(出力波長157nm)、Ar2レーザ(出力波長126nm)、Kr2レーザ(出力波長146nm)などのパルスレーザ光源、g線(波長436nm)、i線(波長365nm)などの輝線を発する超高圧水銀ランプなどを用いることも可能である。また、YAGレーザの高調波発生装置などを用いることもできる。この他、例えば米国特許第7,023,610号明細書に開示されているように、真空紫外光としてDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。
また、上記各実施形態では、露光装置の照明光ILとしては波長100nm以上の光に限らず、波長100nm未満の光を用いても良いことはいうまでもない。例えば、軟X線領域(例えば5〜15nmの波長域)のEUV(Extreme Ultraviolet)光を露光光とし、オール反射縮小光学系、及び反射型マスクを用いたEUV露光装置にも本発明を好適に適用することができる。この他、電子線又はイオンビームなどの荷電粒子線を用いる露光装置にも、本発明は適用できる。
また、上記各実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスク(レチクル)を用いたが、このレチクルに代えて、例えば米国特許第6,778,257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(可変成形マスク、アクティブマスク、あるいはイメージジェネレータとも呼ばれ、例えば非発光型画像表示素子(空間光変調器)の一種であるDMD(Digital Micro-mirror Device)などを含む)を用いても良い。
また、例えば干渉縞をウエハ上に形成することによって、ウエハ上にライン・アンド・スペースパターンを形成する露光装置(リソグラフィシステム)にも本発明を適用することができる。
さらに、例えば米国特許第6,611,316号明細書に開示されているように、2つのレチクルパターンを投影光学系を介してウエハ上で合成し、1回のスキャン露光によってウエハ上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置にも本発明を適用することができる。
また、物体上にパターンを形成する装置は、前述の露光装置(リソグラフィシステム)に限られず、例えばインクジェット方式にて物体上にパターンを形成する装置であっても良い。
なお、上記各実施形態でパターンを形成すべき物体(エネルギビームが照射される露光対象の物体)はウエハに限られるものではなく、ガラスプレート、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど、他の物体でも良い。
露光装置の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置、有機EL、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD等)、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。
半導体素子などの電子デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたレチクルを製作するステップ、シリコン材料からウエハを製作するステップ、前述した各実施形態の露光装置(パターン形成装置)によりマスク(レチクル)のパターンをウエハに転写するリソグラフィステップ、露光されたウエハを現像する現像ステップ、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト除去ステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記各実施形態の露光装置を用いて前述の露光方法が実行され、ウエハ上にデバイスパターンが形成されるので、高集積度のデバイスを生産性良く製造することができる。