JP5379074B2 - 耐食性と耐損耗性に優れた電極式電気ボイラ - Google Patents

耐食性と耐損耗性に優れた電極式電気ボイラ Download PDF

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Description

本発明は、電極を用いた電極式電気ボイラを構成する鋼材に関する。
発電所ならびに一般の工場には、プラントの起動、停止時のタービン軸封部のシール用、設備の加熱用及び保温用あるいは建物内の暖房用として、加熱蒸気を供給する補助ボイラが設けられている。近年、重油使用量の低減および運転保守改善の観点より、従来の重油ボイラに代わり、電気ボイラが使用されるようになってきている。
電気ボイラには大別して2種類あって、ひとつは、特許文献1や特許文献2に示されるように、複数本の蛇行した主にステンレス製の蒸発管によって作用媒体を過熱して蒸気にする“チューブ式”と呼ばれる種類である。そして、もうひとつは、特許文献3や特許文献4に示されるように、缶体内の水(缶水)をノズルヘッダにポンプを介して送って、ノズルから電極に向かってジェット水流を噴射することにより、かかるジェット水流が通電器になって水が加熱昇温されて蒸気を発生させる、いわゆる“電極式”と呼ばれる種類である。
本発明が対象とする電極式電気ボイラの構造を図1に断面で示す。図1において、電極式電気ボイラは、ノズルヘッダ2に多数のノズル3を装着し、ノズルヘッダ2の外周部に対面した上側の電極5、下側の対向電極6、循環ポンプ10、導水管(送水管)11、給水口12、液面計13、給電部14、蒸気排出口15等を、缶体1に装着して構成されている。その為、次のようにして蒸気を発生させることができる。
すなわち、循環ポンプ10によって缶体1内の水(缶水)7を吸い込み、その吐出し側に接続された導水管11を経て、矢印8の通り、ノズルヘッダ2へ送る。なお、前記缶水7は、予め給水口12から缶体1内に供給されるが、その際、液面計13で監視しながら所定水位まで供給される。
ノズルヘッダ2へ送られてきた缶水は、ノズル3の対面に設置された上側の電極5に噴射されて、ジェット水流4を形成しながら、この上側の電極5に衝突し、衝突後の水流は下側の対向電極6に流下する水流9となって、缶体1の下部に戻る。
この際、上側の電極5には、外部(缶体1外)からの高電圧が給電部14を経由して印加されている。その為、電極5とノズルヘッダ2とが、ジェット水流4でつながり、ジェット水流4にも高電圧が印加される。この結果、ジェット水流4の内部に、水の電気抵抗によるジュール熱が発生して、水を加温させ、蒸気を発生させることができる。そして、発生した蒸気は、排出口15に接続されている管路(図示されていない)を経て他所(蒸気使用箇所側)へ送られる。
一方、蒸気にならなかった缶水は、上側の電極5の下部で再度整流され、前記水流9となって、その下方に設置されている対向電極6に接触する。そして、上側の電極5から下側の対向電極間6への下降流9でも、高電圧が印加されるので、蒸気が発生する。従って、ここにおいても蒸気を発生させることができるから、この電極式電気ボイラによると、効率よく蒸気を発生させることができる。
電極式電気ボイラでは、このように二段階に蒸気を発生させることができるが、かかる蒸気の発生量は、インバータで制御された循環ポンプ10により、ジェット水流4の本数(循環水量)を変化させて無段階で制御される。
このような構成からなる電極式電気ボイラ内の各部材には、成形性や加工性あるいはコスト低減などから、通常は、通常のボイラと同じく、炭素鋼が用いられており、また、通電部材(ノズル3、上側の電極5、下側の対向電極間6)も、導電性の面からも炭素鋼を用いている。
電極式電気ボイラ内の缶水には、導電剤を付与して、この導電性を担保させるが、ボイラ内の各部材の耐食性向上のために、炭素鋼が腐食しにくいアルカリ領域に制御している。耐食性の面からは、さらに、導入缶水には、重金属イオン等の不純物制御や、機械脱気による溶存酸素濃度の極微量制御が行われている。
高電圧が印加されないような重油ボイラ等では、上記対策により、ボイラ内の各部材の耐食性が保持される。ただ、電気ボイラでは、高電圧を印加させるために、前記重油ボイラでは見られない、損耗の問題が生じる。そこで、特許文献5に示される蒸気輸送管路へのミストセパレータの設置や、特許文献6に示されるノズル部の磨耗低減対策、あるいは特許文献7、特許文献8などに示される電極板の腐食を防ぐ改良が従来から行なわれてきた。しかしながら、電極式電気ボイラ内の各部材、特に、通電部材の損耗防止には、これらの対策では未だ不十分である。
このため、ノズルや電極の損耗によって、缶水中の浮遊Fe化合物量が増加してスパークの原因となったり、ノズルの損耗やノズル出口への浮遊物の堆積により水流や電流が不安定となったりすることが起こりえる。その結果、缶水の廃液量が増大したり、または缶水をリサイクル使用時は負荷が増大したり、ノズルや電極の交換頻度が増大したりすることが課題となっている。
このように、電極式電気ボイラでは、機械的あるいは構造的な対策では、これら部材の耐食性と損耗の問題解決に限界があるため、使用材料面(使用材料側)からの改善も求められている。
これに対して、他のチューブ式などのボイラにおいては、これら耐食性と部材の損耗の問題を解決する場合には、例えば特許文献9や特許文献10に示されるように、通常の環境では炭素鋼より高耐食性の、ステンレス鋼が用いられることもある。
特開2004−92989号公報 特開平6−300202号公報 特開昭61−211602号公報 特開平3−207901号公報 特開2002−317901号公報 特開2002−317902号公報 特開昭62−299652号公報 特開昭62−299653号公報 特開平4ー60301号公報 特開平1ー285701号公報
ただ、電極式電気ボイラに、ステンレス鋼を用いると、返って、孔食状に損耗が発生するために、交換頻度が増大するという特殊な問題がある。また、ステンレス鋼以外の材料として、水中での耐食性が一般的に高い、アルミニウム合金やチタン合金でも、高電気抵抗皮膜を形成するため、電極式電気ボイラ用としては不適である。同様に、塗装等の防食皮膜を、鋼上に施すことも、高電気抵抗化のために不可である。また、不溶性材料も、導電性が低下したり、加工性が低下したりするために不適である。
このように、電極式電気ボイラでは、ノズルや電極などの部材の導電性を低下させずに、これら部材の耐食性と損耗の問題を解決するという、難しい課題があり、これまで、この課題解決のための使用材料側、特に炭素鋼材側からの有効な提案は、これまであまりされてない。
本発明はかかる問題に鑑みなされたもので、ノズルや電極などの部材の導電性を低下させずに、これら部材の耐食性と損耗の問題を解決した電極式電気ボイラを提供することを目的とする。
上記目的を達成するための、本発明の耐食性と耐損耗性に優れた電極式電気ボイラの要旨は、質量%で、C:0.05〜0.6%、Si:0.5%以下(但し0%を含む)、Mn:0.3〜1.2%、Cr:0.1〜6.0%、Ni:0.02〜1.0%を各々含み、かつ、CrとNiとの含有量の比Cr/Niが6以上30以下であり、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼材によって構成される通電部材を備えていることである。
本発明者は、電極式電気ボイラにおける損耗現象、特に、通電による溶出損耗につき、改めて、その発生メカニズムを探求した。この結果、電極式電気ボイラでは高電圧を印加するため、表面に強固な不働態皮膜を形成するようなステンレス鋼では、絶縁体であるこの不働態皮膜が電気抵抗になり、この不働態皮膜の絶縁破壊が生じることを知見した。このような不働態皮膜の破壊と、破壊された部位での不働態皮膜の再形成とが、断続的に生じると、通電による溶出損耗が却って孔食状に進む。この結果、電極式電気ボイラでは、電極、対向電極およびノズルなどの通電部材に、耐食性の良い、ステンレス鋼を使用すると、却って局部的な損耗が早く、炭素鋼などの不働態皮膜が不安定な部材よりも寿命が短くなるという、特殊で特異な現象があることを知見した。これは、アノード極性時に安定な皮膜を形成する、アルミニウム合金やチタン合金のような材料でも同様に生じる。
以上のことから、本発明者は、電極式電気ボイラに適する材料は、表面に薄い生成物皮膜や不働態皮膜を形成して溶出反応を低減することにより、部材全体の損耗を抑制する一方で、前記皮膜の絶縁破壊が生じた際に、絶縁破壊位置での再不働態化能が低い(不働態皮膜の再形成能が低い)材料であることを知見して本発明をなした。
このような材料とは、本発明で規定する、低含有量のCrとNi量とを互いにバランスさせた低炭素あるいは中炭素鋼である。このような組成および成分量バランスの炭素鋼は、通常のボイラ材料としては、耐食性の点で、これまではむしろ好ましくないとされていた炭素鋼であり、そんな炭素鋼が、電極式電気ボイラとしての耐食性と耐損耗性向上には、逆に最適であることを本発明者らは知見した。
本発明によれば、このような炭素鋼材によって構成される通電部材を備えていることによって、電極式電気ボイラとしての耐食性と耐損耗性を向上させることができる。すなわち、従来の電極式電気ボイラの機械的あるいは構造的な変更、あるいは操業上の変更などを全く加えることなく、また、従来のステンレス鋼やアルミニウム合金あるいはチタン合金材料のように、材料コストや成形および加工コストを増加させることなく、耐食性と耐損耗性を向上させることができる。
本発明電極式電気ボイラの構成を示す断面図である。 実施例の損耗試験における治具と試験片形状を示す斜視図である。 実施例の損耗試験装置の概要を示す説明図である。
電極式電気ボイラ構造
本発明の電極式電気ボイラ構造は、前段で説明した図1の通りであり、ノズルヘッダ2に多数のノズル3を装着し、ノズルヘッダ2の外周部に対面した上側の電極5、下側の対向電極6、循環ポンプ10、導水管(送水管)11、給水口12、液面計13、給電部14、蒸気排出口15、上部パネル16等を、缶体1に装着して構成されている。なお、この図1において、その他の装置類として、17は補助ヒータ、18は安全バルブ、19はマンホールなどである。
このような電極式電気ボイラ構成における蒸気の発生機構も、前段で説明した通りである。すなわち、缶体1内の水(缶水)7は、循環ポンプ10によって、導水管11を経て、矢印8の通りノズルヘッダ2へ送られる。ノズルヘッダ2へ送られた缶水は、ノズル3より、対面に設置された上側の電極5に噴射されて、ジェット水流4を形成しながら、この上側の電極5に衝突する。この衝突後の水流は下側の対向電極6に流下する水流9となって、缶体1の下部に戻る。
この際、上側の電極5には高電圧が給電部14を経由して印加され、電極5とノズルヘッダ2とがジェット水流4でつながっているため、ジェット水流4にも高電圧が印加される。この結果、このジェット水流4の内部に、水の電気抵抗によるジュール熱が発生して、水を加温させ、蒸気を発生させる。そして、発生した蒸気は、排出口15に接続されている管路を経て他所(蒸気使用箇所側)へ送られる。一方、蒸気にならなかった缶水は、上側の電極5の下部で再度整流され、前記水流9となって、その下方に設置されている対向電極6に接触する。そして、この下降流9にも高電圧が印加されるので、水が加温されて蒸気が発生する。従って、この電極式電気ボイラによれば、二段階で効率よく蒸気を発生させることができる。
このような電極式電気ボイラに適する鋼材料は、前記した通り、表面に薄い生成物皮膜や不働態皮膜を形成して溶出反応を低減することにより、部材全体の損耗を抑制する一方で、前記皮膜の絶縁破壊が生じた際に、絶縁破壊位置での再不働態化能が低い(不働態皮膜の再形成能が低い)材料である。
通電部材での溶出反応
電極式電気ボイラにおいて、印加される電圧の大部分はジュール熱発生に用いられる。ただし、通電部材であるノズル3、上側の電極5、下側の対向電極間6などの極近傍では二重電荷層の電荷交換が行われ、さらに、通電部材表面では、アノード極性時に以下の溶出反応が生じていると推定される。
溶出反応 Fe+2e- ⇒ Fe2+
水素発生反応 2HO+2e- ⇒2OH-+H
通電部材の損耗現象
上記溶出反応により生じた鉄イオンは、缶水中の鉄イオン量の増大に繋がり、一部は水酸化物イオンと結合して水酸化鉄となる。また、カソード極性時には、酸素発生反応が生じており、缶水中の溶存酸素増大に繋がり、鉄イオンと結合して酸化鉄となる。それら生成物は、静水下であれば、ノズル3や電極5、6の表面に形成して、耐食性を獲得できるが、水流下では容易に表面から脱離し、缶水中を浮遊したり、ノズル出口に流水形状に吸着したりするため、水流や電流が不安定となり、スパークの原因となることもある。
素材鋼材
したがって、このような電極式ボイラに適する素材鋼材は、前記溶出反応を低減するために、表面に薄い生成物皮膜や不働態皮膜を形成することにより、ノズル3や電極5、6などの部材全体の損耗を抑制できる機能を有することが求められる。但し、これら絶縁体である皮膜が大きな電気抵抗になって、皮膜の絶縁破壊が大きく生じ、皮膜の絶縁破壊と、破壊された部位での皮膜の再形成とが、断続的に生じ、通電による、ノズル3や電極5、6などの部材の溶出損耗が、却って孔食状に進まないようにする必要がある。このために、生成する生成物皮膜や不働態皮膜が、ステンレス鋼のような強固な不働態皮膜ではなく、絶縁破壊位置での再生能や再不働態化能が低い鋼材であることが好ましい。すなわち、表面に薄い生成物皮膜や不働態皮膜を形成する機能と、この皮膜の再生能や再不働態化能が低い機能とを合わせて有する鋼材が好ましい。
このような素材鋼材は、上記効果から、図1に示した電極式電気ボイラを構成する部材のうち、ボイラの使用条件の厳しさや要求される性能(効果)の大きさや範囲に応じて、少なくとも通電部材に適用される。それも好ましくは、上側の電極5、対向電極6およびノズル3のうちの1種以上の通電部材に適用される。これらの通電部材では、電極式電気ボイラを構成する部材のうちでも、導電性を低下させずに、部材の耐食性と耐損耗性を向上させる必要性が大きい。また、これら通電部材の中でも、高電圧が印加されないアース側部材である対向電極6およびノズル3に対して、高電圧が印加される電極5への適用を必須とすることが好ましい。勿論、これらの通電部材だけではなく、缶体1、ノズルヘッダ2、循環ポンプ10、導水管11、給水口12、給電部14、蒸気排出口15等の電極部材ではない、ボイラ部材にも適用されて良い。
素材鋼材組成
以上説明した機能を有するための、素材鋼材の化学成分組成の限定理由について、以下に説明する。 本発明で用いる鋼材の化学成分組成は、質量%で、C:0.05〜0.6%、Si:0.5%以下(但し0%を含む)、Mn:0.3〜1.2%、Cr:0.1〜6.0%、Ni:0.02〜1.0%を各々含み、かつ、CrとNiとの含有量の比Cr/Niが6以上30以下であり、残部Feおよび不可避的不純物からなる限定された鋼組成とする。なお、元素含有量の単位は全て質量%だが、単に%と表記する場合もある。
電極式電気ボイラを構成する鋼材のうち、少なくとも通電部材(好ましくは、上側の電極5、対向電極6およびノズル3のうちの1種以上の通電部材)を構成する鋼材を、このような限定された鋼組成とすることによって、鋼部材全体の損耗を抑制できる機能と、再生や再不働態化能が低い機能とを合わせて有することができる。すなわち、鋼部材に、表面に薄い生成物皮膜や不働態皮膜を形成することにより、部材全体の損耗を抑制できる機能と、一旦絶縁破壊された場合に、この絶縁破壊位置での再生や再不働態化能が低い機能を合わせて有することができる。この結果、電極式電気ボイラの前記通電部材の導電性を低下させずに、耐食性と耐損耗性を向上させることが可能である。
すなわち、電極式電気ボイラの機械的あるいは構造的な変更、あるいは操業上の変更などを全く加えることなく(操業への影響無く)、各部材の長寿命化が図れる。また、このような低合金量の鋼材であれば、導電性は軟鋼などと遜色がなく、前記通電部材などの導電性を低下させることがなく、材料コストも比較的低く抑えられる。また、ボイラ部材への成形性や加工性も優れている。
ここで、本発明で用いる鋼材は、耐食性や耐損耗性を向上させるために、前記組成に加えて、選択的な添加元素として、更に、Mo:0.6%以下(但し0%を含まない)、Cu:0.5%以下(但し0%を含まない)の1種または2種を含有させても良い。これら以外の元素は全て不可避的不純物であり、通常のこの種炭素鋼材の不純物含有量 (許容量) レベルとする。
以下に、本発明で用いる素材鋼材の各元素の含有量と、その限定理由(意義)について、個別に説明する。
C:0.05〜0.6%
Cは強度向上に寄与する元素であり、ボイラ材料としての十分な強度を確保するには0.05%以上、好ましくは0.10%以上以上含有させる。しかし、C量が多過ぎると、ボイラ材料としての、部材への成形、加工性あるいは部材としての靭性を劣化させるので、0.6%以下、好ましくは0.4%以下、より好ましくは0.22%以下に抑える。したがって、C含有量は0.05〜0.6%、好ましくは0.10〜0.4%、より好ましくは0.10〜0.22%の範囲とする。
Si:0.5%以下(但し0%を含む)
Siは溶製中の鋼の脱酸元素であるとともに、固溶強化による強度向上元素として作用するため、その含有が許容される。しかし、Si含有量が多過ぎると粗大介在物が形成して、部材への成形、加工性あるいは部材としての靭性を劣化させる。したがって、Si含有量は0.5%以下(但し0%を含む)、好ましくは0.4%以下(但し0%を含む)の範囲とする。
Mn:0.3〜1.2%
Mnは焼入れ性を高めると共に強度向上に寄与する元素であり、十分な強度と焼入れ性を確保するには0.3%以上、好ましくは0.7%以上含有させる。ただし、Mn含有量が多すぎると、靭性や耐孔食性を劣化させるので、1.2%以下、好ましくは1.0%以下とする。したがって、Mn含有量は0.3〜1.2%、好ましくは0.7〜1.0%の範囲とする。
Cr:0.1〜6.0%
Crは、鋼材の焼入れ性を高めると共に、靭性、耐食性を向上させる有効な元素であり、それらの作用は0.1%以上含有させることによって、有効に発揮される。Crは、特に不働態皮膜形成能を高める働きがあり、アルカリ環境下での鋼の不働態化電位域を拡大し、不働態電流を低減できるため、通電のない部材では、Cr含有量が多いほど不働態皮膜を安定化させ、耐食性を高めることができる。ボイラ材の場合も、Crの含有により、全体の損耗を抑制することが可能である。しかし、反対に、Cr含有量が過剰になると、不働態皮膜の形成能が高すぎて、通電による絶縁破壊部にて孔食状に損耗が成長するため、Cr含有量は6.0%以下、好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.5%以下とする。したがって、Cr含有量は0.1〜6.0%の範囲とし、好ましくは0.1〜2.0%の範囲、より好ましくは0.1〜1.5%の範囲とする。
Ni:0.02〜1.0%
Niは耐食性向上元素として有用な元素であり、アノード反応により生成する酸化鉄・水酸化鉄に濃化して生成皮膜を安定化することから耐食性を向上できる。また、不働態皮膜形成能を高める働きもある。それらの作用を有効に発揮させるに0.02%以上、好ましくは0.05%以上含有させる。しかしながら、ボイラ内のような水流下では、流れ誘起腐食が生じて、酸化鉄・水酸化鉄は表面から脱離しやすいため、Niの生成皮膜安定化効果のみでは損耗を防ぐことが困難である。さらには、Ni含有量が過剰になると、孔食が激しくなるため、Ni含有量は1.0%以下、好ましくは0.5%以下とする。したがって、Mo含有量は0.02〜1.0%、好ましくは0.05〜0.5%の範囲とする。
CrとNiとの含有量の比Cr/Niが6以上30以下
本発明では、さらに、不働態皮膜形成能や生成皮膜の安定化と、孔食抑制とを両立させるために、CrとNiとの含有量の比Cr/Niを6以上30以下、好ましくは7〜20とする。この比が小さすぎると、CrとNiとの含有量ともに多い場合は孔食が発生しやすく、逆に、ともに少ない場合は不働態皮膜形成能が不十分となる。一方、この比が大きすぎると、必然的に、Cr含有量に対して、Ni含有量が少なくなって、生成皮膜の安定化を却って損なう。したがって、CrとNiとの含有量の比Cr/Niは6以上30以下、好ましくは、6以上20以下の範囲とする。なお、ボイラ材料としては、従来から、炭素鋼やステンレス鋼(SUS304等)が用いられるが、いずれも、Niを添加しないか、あるいは前記Cr/Niが共通して5以下である。
Mo:0.6%以下
Moは、Crと同じく不働態皮膜を形成させる働きがあり、通電のない部材ではMo含有量が多いほど不働態皮膜を安定化させ、耐食性を高めることができる。また、全体の損耗を抑制する機能もある。更に、鋼材の焼入れ性を確保して強度、靭性を向上させる効果もある。これらのMoの作用を有効に発揮させるためには0.1%以上含有させる。しかし、Mo含有量が過剰になると、通電による絶縁破壊部にて孔食状に損耗が成長する。またMoの添加はコストアップにもなることから、選択的にMoを含有させる場合には、Mo含有量は0.6%以下(但し0%を含まない)の範囲とする。
Cu:0.5%以下
Cuは鋼中のSとの反応物であるCuS生成物の形成作用や、鉄酸化物の非晶質化を促進する作用があり、耐食性を高め、損耗を抑制する機能がある。これらのCuの作用を有効に発揮させるためには0.01%以上含有させる。しかし、Cu含有量が過剰になると、コストアップとなるので、選択的にCuを含有させる場合には、Cu0.5%以下(但し0%を含まない)、好ましくは0.2%以下(但し0%を含まない)の範囲とする。
その他、P、S、N、Alなどは、製鋼段階で不可避的に混入する不純物元素であって、これらの総量で0.01〜0.1%程度含まれる。
素材鋼材の製法
このような素材鋼材は、上記組成を満足してさえいれば、前記図1に示した電極式電気ボイラの適用部材形状や、この部材形状への成形、加工方法の選択などに応じて、常法で製造される冷延鋼板や熱延鋼板あるいは鋼鍛造材などから適宜選択して使用できる。
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はかかる実施例によって限定的に解釈されるものではない。
素材鋼材として、表1に記載の組成の各冷延鋼板を用いて、損耗試験を実施し、耐損耗性や耐食性を評価した。この結果を表2に各々示す。
なお、表1に記載の組成の各冷延鋼板は、共通して、P、S、N、Alなどの不可避的不純物元素を、通常のこの種冷延鋼板のレベルである、これらの総量で0.03〜0.05%の範囲で含んでいた。
損耗試験に用いた試験片(サンプル)は、ノズル3側(相当)の試験片として50mm×20mm×1.2mmt、電極6側(相当)の試験片として、60mm×50mm×1.2mmtの形状に、前記各冷延鋼板を切断加工し、ノズル3側試験片の中央部に4mm 径の穴を設けた。そして、それぞれの試験片の表面をエメリー紙にて#600まで研磨した。
損耗試験は電極式電気ボイラを模擬して次の要領で実施した。まず、図2に示す、アクリルセルにノズル側試験片をセットし、電極側試験片を10mmの距離を離してノズル側試験片の中央穴と正対させる位置にセットした。アクリルセルの裏面には過剰な水溶液を出す穴がノズル側試験片の中央穴よりも60mm高い位置に設けてあり、ノズル側のセルに、リン酸塩の添加でpH10〜11に調整した水溶液を連続注入すると、裏面の穴とノズル側試験片の穴の高低差で発生する圧力により、一定の流量にてノズル側試験片の中央穴から水溶液が流出し、電極側試験片に当たって落下する。水溶液はポンプにて循環して使用した。ノズル側試験片、電極側試験片間に、50Hzサイン波にて交流100Vを印加し、24hr保持した。図3に、この損耗試験の模式図を示す。なお、各損耗試験でのノズル側試験片と電極側試験片とは同じ材料とした。
耐損耗性は、試験前後の(1)ノズル側試験片の穴面積増加量(穴面積増加割合:%)、(2)電極側試験片の重量減量(溶出重量割合:%)及び(3)電極側試験片の最大損耗深さ(μm)の3種類にて評価した。このうち、(1)、(2)が両試験片の全体の耐損耗性の評価であり、(3)が局部的な孔食状損耗評価である。そして、(1)が1.50%以下で、(2)が0.20%以下で、(3)が30μm以下の場合に、電極式電気ボイラへ適用するための耐損耗性や耐食性の評価を良好(合格)とした。表2に各例毎の評価結果を記載する。
表1、2に示す通り、鋼組成や各元素量が本発明範囲内で、各々適量で適切なバランスとされている発明例5、8、11、12、15、16は、ノズル側の穴面積の増大量が小さく、電極側試験片の溶出重量や最大損耗深さも小さく、電極式電気ボイラの通電部材、特に高電圧が印加される電極5などの部材へ適用できる。そして、高電圧が印加されないアース側部材である対向電極6やノズル3にも、もちろん適用できる。
これに対して、いずれかの元素量が本発明範囲外か、各元素量が本発明範囲内であっても、CrとNiとの含有量の比Cr/Niが適切なバランス範囲から外れる比較例は、耐損耗性や耐食性が、発明例に比して劣っており、電極式電気ボイラの通電部材、特に高電圧が印加される電極5などの部材へ適用できない。また、高電圧が印加されないアース側部材である対向電極6やノズル3にも適用は難しい。
例えば、Cr量が多すぎるNo.3、7、10の比較例は、電極側試験片の最大損耗深さが大きい。この反対に、Cr量が少なすぎる、No.1、2、6の比較例は、ノズル側の穴面積の増大量が大きい。
また、Ni量が多すぎるNo.3、7、14の比較例は、Cr量も多い場合、電極側試験片の最大損耗深さが大きい。また、Cr量が少ない場合でも、電極側試験片の最大損耗深さは大きくなる傾向にあり、ノズル側の穴面積の増大量が大きい。この反対に、Ni量が少なすぎる、No.1、2、4、10の比較例は、ノズル側の穴面積の増大量が大きく、総じて、電極の溶出重量も大きくなる傾向にある。
更に、CrとNiとの含有量の比Cr/Niが大きすぎるNo.9、10の比較例は、ノズル側試験片の穴面積の増大量が大きい。この反対に、Cr/Niが小さすぎる、No.3、6、7、13、14の比較例は、Cr量が多い場合は電極側試験片の最大損耗深さが大きい。また、Cr量が少ない場合、ノズル側試験片の穴面積の増大量が大きい。
したがって、以上の実施例の結果から、本発明の鋼成分組成の、ノズルや電極などの部材の導電性を低下させずに、これら部材の耐食性と耐損耗性を得るための臨界的な意義乃至効果が裏付けられる。
Figure 0005379074
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本発明によれば、ノズルや電極などの部材の導電性を低下させずに、これら部材の耐食性と耐損耗性を向上させた電極式電気ボイラを提供できる。このため、発電所ならびに一般の工場向けの電極式電気ボイラとして、好適に用いることができる。
1:缶体、2:ノズルヘッダー、3:ノズル、4:ジェット水流、5:上側の電極、6:下側の対抗電極、7、8、9:缶水、10:循環ポンプ、11:導水管、12:給水口、13:液面計、14:給電部、15:蒸気排出口、16:上部パネル

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.05〜0.6%、Si:0.5%以下(但し0%を含む)、Mn:0.3〜1.2%、Cr:0.1〜6.0%、Ni:0.02〜1.0%を各々含み、かつ、CrとNiとの含有量の比Cr/Niが6以上30以下であり、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼材によって構成される通電部材を備えたことを特徴とする耐食性と耐損耗性に優れた電極式電気ボイラ。
  2. 前記鋼材が、更に、Mo:0.6%以下(但し0%を含まない)、Cu:0.5%以下(但し0%を含まない)の1種または2種を含有する請求項1に記載の耐食性と耐損耗性に優れた電極式電気ボイラ。
  3. 前記通電部材が電極、対向電極およびノズルのうちの1種以上である請求項1または2に記載の耐食性と耐損耗性に優れた電極式電気ボイラ。
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