以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
本発明の一態様に係る光導波路の製造方法は、第1クラッド層上に形成されたコア部を埋設するように第2クラッド層を形成するクラッド層形成工程と、前記第2クラッド層に、前記第1クラッド層に対して略垂直な垂直面と、前記垂直面に対向し、前記第2クラッド層側から入射される光を前記コア部内に誘導又は前記コア部から出射される光を前記第2クラッド層側に導出するように、光を反射させるための傾斜面とを有する凹部を形成する凹部形成工程と、前記凹部に金属層を形成する金属層形成工程と、前記垂直面に形成された金属層を選択的に除去することによって、少なくとも前記傾斜面上に金属層を残存させる金属層除去工程とを備えることを特徴とする。
[第1実施形態]
前記金属層除去工程が、前記垂直面上の金属層を、その外表面を基準として前記金属層の厚み分以上除去することによって、前記垂直面上の金属層を除去し、前記傾斜面上の金属層を残存させる工程である場合の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る光導波路の製造方法を説明するための概略図である。図1(a)は、第1実施形態における、第1クラッド層上に形成されたコア部を説明するための概略断面図であり、図1(b)は、第1実施形態におけるクラッド層形成工程を説明するための概略断面図であり、図1(c)は、第1実施形態における、コア部を埋設するように形成された第2クラッド層を説明するための概略図であり、図1(d)は、第1実施形態における凹部形成工程を説明するための概略図であり、図1(e)は、第1実施形態における金属層形成工程を説明するための概略図であり、図1(f)は、第1実施形態における金属層除去工程を説明するための概略図であり、図1(g)は、形成された光導波路を示す概略断面図である。
本発明の第1実施形態に係る光導波路の製造方法としては、まず、図1(a)に示すように、第1クラッド層(下部クラッド層)12を備えた基板11の、前記第1クラッド層12上にコア部13を形成する。
具体的には、まず、基板11の表面に第1クラッド層12を形成する。
前記基板11としては、各種有機基板や無機基板が特に限定なく用いられる。有機基板の具体例としては、エポキシ基板、アクリル基板、ポリカーボネート基板、及びポリイミド基板等が挙げられる。また、無機基板としては、シリコン基板やガラス基板等が挙げられる。また、基板上に予め回路が形成されたプリント回路基板のようなものであってもよい。
前記第1クラッド層12の形成方法としては、前記基板11の表面に、前記第1クラッド層12を形成するための所定の屈折率を有する硬化性樹脂材料からなる樹脂フィルムを貼り合せた後、硬化させる方法や、前記第1クラッド層12を形成するための液状の硬化性樹脂材料を塗布した後、硬化させる方法や、前記第1クラッド層12を形成するための硬化性樹脂材料のワニスを塗布した後、硬化させる方法等が挙げられる。なお、前記第1クラッド層12を形成させる際には、密着性を高めるために、予め、前記基板11の表面にプラズマ処理等を施しておくことが好ましい。
前記第1クラッド層12を形成するための硬化性樹脂材料としては、後に形成されるコア部13の材料よりも導波光の伝送波長における屈折率が低くなるようなものが用いられる。その伝送波長における屈折率としては、例えば、1.5〜1.55程度のものが挙げられる。このような硬化性樹脂材料の種類としては、上記のような屈折率を有する、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂等が挙げられる。
前記第1クラッド層12の厚みは、特に限定されないが、例えば、5〜15μm程度であることが好ましい。
前記第1クラッド層12を形成する具体的な方法としては、例えば、前記第1クラッド層12を形成するために樹脂フィルムを貼り合せた後、硬化させる方法や、前記第1クラッド層12を形成するための、液状の硬化性樹脂材料、又は、硬化性樹脂材料のワニスを塗布した後、硬化させる方法等が用いられる。
前記第1クラッド層12を形成するために樹脂フィルムを貼り合せた後、硬化させる具体的な方法としては、例えば、以下のような方法が用いられる。まず、前記基板11表面に硬化性樹脂からなる樹脂フィルムを重ねるように載置した後、加熱プレスにより貼り合せる、又は、前記基板11表面に硬化性樹脂からなる樹脂フィルムを、透明性の接着剤により貼り合わせる。そして、貼り合せられた樹脂フィルムに光を照射すること、又は、加熱することにより硬化させる。
また、前記第1クラッド層12を形成するための、液状の硬化性樹脂材料、または、硬化性樹脂材料のワニスを塗布した後、硬化させる具体的な方法としては、例えば、以下のような方法が用いられる。まず、前記基板11表面に液状の硬化性樹脂材料又は硬化性樹脂材料のワニスを、スピンコート法、バーコート法、又は、ディップコート法等を用いて塗布させる。そして、塗布された液状の硬化性樹脂材料又は硬化性樹脂材料のワニスに光を照射すること、又は、加熱することにより硬化させる。
次に、形成された前記第1クラッド層12の外表面に、感光性材料からなるコア材料層を形成する。
前記コア材料層の形成方法としては、前記第1クラッド層12の外表面に、前記コア材料層を形成するための所定の屈折率を有する感光性高分子材料からなる樹脂フィルム(感光性フィルム)を貼り合せる方法や、前記コア材料層を形成するための液状の感光性高分子材料を塗布する方法や、前記コア材料層3を形成するための感光性高分子材料のワニスを塗布した後、乾燥させる方法等が挙げられる。なお、前記コア材料層を形成させる際にも、前記第1クラッド層12の外表面を活性化させて密着性を高めるために、予め、プラズマ処理等を施しておくことが好ましい。
前記感光性高分子材料からなる樹脂フィルム(感光性フィルム)としては、半硬化状態の感光性高分子材料をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等に塗布して得られるドライフィルム等が挙げられる。なお、このようなドライフィルムは、通常、保護フィルムにより保護されている。
前記コア材料層を形成するための感光性高分子材料としては、前記第1クラッド層12の材料よりも導波光の伝送波長における屈折率が高いものが用いられる。その伝送波長における屈折率としては、例えば、1.55〜1.6程度のものが挙げられる。
前記コア材料層を形成するための感光性高分子材料の種類としては、上記のような屈折率を有する、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂等を樹脂成分とする感光性材料が挙げられる。これらの中でも特に、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましく、前記コア材料層を形成するための感光性高分子材料としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂と光カチオン硬化剤とを含有する樹脂組成物が、耐熱性の高い導波路が得られるために、プリント基板等と複合化することができる点から好ましい。なお、前記コア材料層と前記第1クラッド層12との接着性の観点から、前記コア材料層を形成するための感光性高分子材料は、前記第1クラッド層12を形成するための硬化性樹脂材料と同系統のものであることが好ましい。
前記コア材料層の厚みは、特に限定されないが、例えば、20〜100μm程度であることが好ましい。
前記コア材料層を形成する具体的な方法としては、例えば、前記コア材料層を形成するために樹脂フィルムを貼り合せる方法や、前記コア材料層を形成するための、液状の硬化性樹脂材料、又は、硬化性樹脂材料のワニスを塗布する方法等が用いられる。
前記コア材料層を形成するために樹脂フィルムを貼り合せる具体的な方法としては、例えば、前記第1クラッド層12の外表面に硬化性樹脂からなる樹脂フィルムを重ねるように載置した後、加熱プレスにより貼り合せる、又は、前記第1クラッド層12の外表面に硬化性樹脂からなる樹脂フィルムを、透明性の接着剤により貼り合わせる。
また、前記コア材料層を形成するための液状の硬化性樹脂材料、又は、硬化性樹脂材料のワニスを塗布する方法の具体的な方法としては、前記第1クラッド層12の外表面に液状の硬化性樹脂材料又は硬化性樹脂材料のワニスを、スピンコート法、バーコート法、又は、ディップコート法等を用いて塗布した後、必要に応じて乾燥させる。
前記コア材料層を露光して硬化等させる前に、前記コア材料層に熱処理を施してもよい。そうすることにより、前記コア材料層の表面の凹凸、気泡、ボイド等を消失させて平滑になる。熱処理温度は、前記コア材料層の表面の凹凸、気泡、ボイド等が消失して平滑になるような粘度になる温度が好ましく、前記コア材料層を形成する硬化性樹脂材料の種類によって適宜選択される。また、熱処理時間としては、10〜30分間程度であることが、上記効果が充分に得られる点から好ましい。なお、熱処理の手段は特に限定されず、所定の温度に設定したオーブン中で処理する方法やホットプレートで加熱する等の方法が用いられる。
次に、前記コア材料層に対して、フォトマスクを介して露光光を照射して、前記コア材料層に対して所定形状のパターン露光を行う。また、前記露光は、感光性材料を光により変質(硬化等)させうる波長の光を必要な光量で露光する方法であれば、特に限定なく用いることができる。具体的には、例えば、前記露光光として、紫外線等のエネルギ線を用いる方法等が挙げられる。そして、取扱の容易さ等から、紫外線が好ましく用いられる。また、フォトマスクを前記コア材料層の表面に接触するように載置して露光するコンタクト露光や、前記コア材料層の外表面に接触しないように所定の間隔を保持した状態で露光する投影型露光等の、何れの露光方法を用いてもよい。
また、露光条件としては、感光性材料の種類に応じて適宜選択されるが、例えば、前記露光光として、365nm程度の紫外光を用い、500〜3500mJ/cm2となるように露光する条件等が選ばれる。
そして、前記露光後に、熱による後キュアを行うことも硬化を確実にする点から有効である。後キュアの条件としては、温度80〜160℃程度、時間20〜120分間程度が好ましい。しかしながら、特にこの範囲に限られるものでは無く、感光性材料によって最適化することが重要であることは言うまでもない。
次に、現像処理を行うことにより、図1(a)に示すような、コア部13を形成する。
前記現像処理としては、前記コア材料層の感光性材料がポジ型の場合には、露光されなかった部分、ネガ型の場合には、露光された部分を現像液で洗い流すことにより、不要な部分を除去する工程である。前記現像液としては、例えば、アセトンやイソプロピルアルコール、トルエン、エチレングリコール、又は、これらを所定割合で混合させたもの等が挙げられる。さらに、例えば、特開2007−292964号公報で開示されているような水系の現像液も好ましく用いられうる。現像方法としてはスプレーにより現像液を噴射する方法や超音波洗浄を利用する方法等が挙げられる。
次に、図1(b)に示すように、上記のように形成されたコア部13を埋設するように、感光性材料からなるクラッド材料層14を形成する。そして、前記クラッド材料層14を硬化させることによって、図1(c)に示すように、上記のように形成されたコア部13を埋設するように、第2クラッド層(上部クラッド層)15を形成する。
ここで、感光性材料とは、エネルギ線が照射された部分の、後述する現像で用いる液体に対する溶解性が変化する材料である。具体的には、例えば、エネルギ線を照射する前には、後述する現像で用いる液体に対して溶解しにくいが、エネルギ線を照射した後には、溶解しやすくなる材料や、エネルギ線を照射する前には、後述する現像で用いる液体に対して溶解しやすいが、エネルギ線を照射した後には、溶解しにくくなる材料等が挙げられる。また、感光性材料とは、具体的には、例えば、感光性高分子材料等が挙げられる。また、エネルギ線とは、溶解性を変化させることができるものであれば、特に限定されないが、取扱の容易さ等から、紫外線が好ましく用いられる。感光性材料としては、一般的に、紫外線が照射された部分の、前記溶解性が変化する感光性高分子材料が好ましく用いられる。より具体的には、紫外線が照射された部分が硬化されて、後述する現像で用いる液体に対して溶解しにくくなる感光性高分子材料が好ましく用いられる。
前記第2クラッド層15の形成方法としては、以下の方法等が挙げられる。具体的には、例えば、前記コア部13を埋設するように、前記第2クラッド層15を形成するための感光性材料として液状の硬化性樹脂材料を塗布して、クラッド材料層14を形成した後、光、熱等で前記クラッド材料層14を硬化させて、前記第2クラッド層15を形成させる方法等が挙げられる。そして、他の方法としては、例えば、前記第2クラッド層15を形成するための感光性材料として硬化性樹脂材料のワニスを塗布して、クラッド材料層14を形成した後、光、熱等で前記クラッド材料層14を硬化させて、前記第2クラッド層15を形成させる方法や、前記第2クラッド層15を形成するための感光性材料として硬化性樹脂材料からなる樹脂フィルムを貼り合せて、クラッド材料層14を形成した後、光、熱等で前記クラッド材料層14を硬化させて、前記第2クラッド層15を形成させる方法等が挙げられる。
前記第2クラッド層15を形成するための硬化性樹脂材料としては、前述したような感光性材料であればよいが、前記コア部13の材料よりも導波光の伝送波長における屈折率が低くなるような硬化性樹脂材料であれば、特に限定なく用いられ、通常は、前記第1クラッド層12を形成した材料と同様の種類の硬化性樹脂材料が用いられる。
また、前記第2クラッド層15の厚みとしては、特に限定されないが、前記コア部13の上に前記第1クラッド層12と同程度の厚みであることが好ましい。
次に、図1(d)に示すように、刃先の一方の面が、刃の面方向に平行な面で、他方の面が、刃の面方向に対する角度が所定の角度、例えば、45°である面である刃16を用いて、前記第2クラッド層15を切り込んで、凹部17を形成する。すなわち、前記刃16を、前記第2クラッド層15に対して略垂直となるように回転させながら、前記コア部に垂下させる。その際、凹部17が、前記第1クラッド層12に対して略垂直な垂直面17aと、前記垂直面17aに対向し、前記第2クラッド層15側から入射される光を前記コア部13内に誘導又は前記コア部13から出射される光を前記第2クラッド層15側に導出するように、光を反射させるための傾斜面17bとを有する凹部17となるように、前記コア部13を切り込まないように、前記第2クラッド層15を切り込む。前記凹部17は、前記第1クラッド層12に平行な断面積が前記第1クラッド層12に近づくほど徐々に小さくなるように、前記傾斜面17bが形成している。なお、前記刃16は、円盤状の回転刃物であって、円周部に刃先があるもの、例えば、ダイシングブレード等が用いられる。また、凹部17の形状は、垂直面17aと前記傾斜面17bとが対向するように形成されたものであれば、特に限定されず、例えば、溝状である。
前記第2クラッド層15を前記刃16で切り込む際、必要に応じて、前記基板11や前記刃16等を加熱することにより、前記第2クラッド層15を軟化させながら切り込んでもよい。また、前記刃16の刃先が、前記第1クラッド層12に達するように切り込んでも、達しないように切り込んでもよい。
次に、図1(e)に示すように、少なくとも凹部17を覆うように金属層18を形成させる。金属層18を形成させる方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。具体的には、例えば、真空蒸着法等の蒸着法、スパッタ法、及びナノペースト法等が挙げられる。なお、前記金属層18は、前記凹部17に形成されていればよく、図1(e)に示すように、前記第2クラッド層15全面に形成されていてもよい。なお、金属層18を形成する際、所定の形状のメタルマスクを用いることによって、前記第2クラッド層15上に電気回路を形成することもできる。また、後述する金属層除去工程を施した後に、前記第2クラッド層15上に残存した金属層18cは、エッチング処理等を施すことによって、電気回路として用いることもできる。
前記金属層18の厚みとしては、光を反射させることができれば、特に限定されず、例えば、1000Å程度の厚み等が挙げられる。
なお、前記傾斜面17bのみに金属層18を均一に形成することは困難である。このことは、特に前記凹部17が小さい場合は顕著である。そこで、前記傾斜面17b上には少なくとも金属層18が形成されるように、前記傾斜面17b上の金属層18bを形成し、前記垂直面17a上にも金属層18aが形成されていてもよい。そうすることによって、前記凹部17が小さくても、前記傾斜面17b上に金属層18bを均一に形成することができる。そして、後述する金属層除去工程によって、前記垂直面17a上の金属層18aを選択的に除去することができる。
また、前記金属層18を形成させる前に、前記第2クラッド層15の表面に粗化処理を施してもよい。そうすることによって、前記金属層18が前記凹部17に形成されやすくなる。粗化処理方法としては、特に限定されない。具体的には、例えば、過マンガン酸処理液を用いたマイクロエッチング処理等の、マイクロエッチング処理等が挙げられる。
また、前記金属層18を形成させる前に、前記第2クラッド層15の表面をカップリング剤で処理してもよい。そうすることによって、前記金属層18が前記凹部17に形成されやすくなる。前記カップリング剤での処理方法としては、特に限定されない。具体的には、例えば、前記第2クラッド層15の表面にカップリング剤を塗布した後に熱処理を施す方法等が挙げられる。また、前記カップリング剤としては、特に限定されず、公知のカップリング剤を用いることができる。具体的には、例えば、分子内にアミノ基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
また、前記粗化処理及び前記カップリング剤での処理は、いずれか一方だけを行ってもよいし、両方行ってもよい。具体的には、前記粗化処理を施した後に、前記カップリング剤での処理を施してもよい。そうすることによって、前記金属層18が前記凹部17により形成されやすくなる。
次に、図1(f)に示すように、前記刃16を用いて、前記垂直面17a上の金属層18aを切り込んで、前記金属層18aを選択的に除去する。その際、前記刃16を、前記18aが除去されるように切り込んでいればよく、前記第2クラッド層15も切り込まれていてもよい。すなわち、前記垂直面17a上に形成された金属層18aを、その外表面を基準として前記金属層18aの厚み分以上除去するように、前記刃16の位置を調整して、切り込む。そうすることによって、前記傾斜面17b上の金属層18bが残存し、前記垂直面17a上の金属層18aが除去される。この残存した金属層18bが、前記第2クラッド層15側から入射される光を前記コア部13内に誘導又は前記コア部13から出射された光を前記第2クラッド層15側に導出するように、光を反射させるミラー(ミクロミラー)として働く。また、上述したように、前記第2クラッド層15上に残存した金属層18cは、エッチング処理等を施すことによって、電気回路として用いることもできる。
上記のような工程を経て、図1(g)に示すような光導波路19が形成される。なお、図1(g)中の矢符は、光導波路19に入射して出射される導波光の光路を示す。
形成された光導波路19は、前記コア部13とこれを被覆するクラッド層(前記第1クラッド層12及び前記第2クラッド層15)によって形成されたものであり、前記コア部13はクラッド層よりも屈折率が高く、内部を伝搬する光を全反射によってコア内に閉じこめるものである。このような光導波路19は、主としてマルチモード導波路として形成される。前記光導波路19の前記コア部13のサイズは、例えば、20〜100μmの矩形形状、コア部を含む層の厚みを除いた下部の第1クラッド層12及び上部の第2クラッド層15の厚みはそれぞれ5〜15μm、コア部とクラッド層との屈折率差は0.5〜3%程度が適当であるがこれに限られるものではない。また、前記第2クラッド層15上に残存した金属層18cを用いて電気回路を形成させることによって、前記光導波路19を備える光電気複合配線板を形成することができる。また、前記基板11として、電気回路が予め形成された基板を用いること等によっても、前記光導波路19を備える光電気複合配線板を形成することができる。
[第2実施形態]
次に、前記クラッド層形成工程が、前記第1クラッド層上に形成されたコア部を覆うように、感光性材料からなるクラッド材料層を形成するクラッド材料層形成工程と、前記クラッド材料層を選択露光することによって、前記感光性材料が硬化した硬化部とそれ以外の未硬化部とを有する第2クラッド層を形成する露光工程とを備え、前記凹部形成工程が、前記傾斜面が前記硬化部に、前記垂直面が前記未硬化部に形成されるように、前記凹部を形成する工程であり、前記金属層除去工程が、前記凹部が形成された第2クラッド層を現像することによって、前記垂直面上の金属層を除去し、前記傾斜面上の金属層を残存させる工程である場合の実施形態について説明する。本発明の第1実施形態である光導波路コアを備える光導波路の製造方法と対応する部分には、同一の参照符号を付し、重複部分については詳細な説明を省略する。
図2は、本発明の第2実施形態に係る光導波路の製造方法を説明するための概略図である。図2(a)は、第2実施形態における、第1クラッド層上に形成されたコア部を説明するための概略断面図であり、図2(b)は、第2実施形態におけるクラッド層形成工程を説明するための概略断面図であり、図2(c)は、第2実施形態における、コア部を埋設するように形成された第2クラッド層を説明するための概略図であり、図2(d)は、第2実施形態における凹部形成工程を説明するための概略図であり、図2(e)は、第2実施形態における金属層形成工程を説明するための概略図であり、図2(f)は、第2実施形態における金属層除去工程を説明するための概略図であり、図2(g)は、形成された光導波路を示す概略断面図である。
本発明の第2実施形態に係る光導波路の製造方法としては、まず、第1実施形態と同様、図2(a)に示すように、第1クラッド層(下部クラッド層)12を備えた基板11の、前記第1クラッド層12上にコア部13を形成する。
次に、図2(b)に示すように、上記のように形成されたコア部13を埋設するように、感光性材料からなるクラッド材料層14を形成する。
次に、前記クラッド材料層14に対して、フォトマスク21を介して露光光を照射して、前記クラッド材料層14に対して所定形状のパターン露光を行う。そうすることによって、図2(c)に示すように、硬化部15aと未硬化部15bとを有する第2クラッド層15が形成される。具体的には、例えば、前記クラッド材料層14の感光性材料がポジ型の場合には、露光された部分が硬化部15aとなり、露光されなかった部分が未硬化部15bとなるような第2クラッド層15が形成される。また、前記クラッド材料層14の感光性材料がネガ型の場合には、露光された部分が未硬化部15bとなり、露光されなかった部分が硬化部15aとなるような第2クラッド層15が形成される。
また、前記露光は、感光性材料を光により変質(硬化等)させうる波長の光を必要な光量で露光する方法であれば、特に限定なく用いることができる。具体的には、例えば、第1実施形態と同様の方法を用いることができる。
また、露光条件としては、感光性材料の種類に応じて適宜選択されるが、例えば、第1実施形態と同様の条件が選ばれる。
そして、第1実施形態と同様、前記露光後に、熱による後キュアを行うことも硬化を確実にする点から有効である。後キュアの条件としては、例えば、第1実施形態と同様の条件が選ばれる。
次に、図2(d)に示すように、刃先の一方の面が、刃の面方向に平行な面で、他方の面が、刃の面方向に対する角度が所定の角度、例えば、45°である面である刃16を用いて、前記第2クラッド層15を切り込んで、凹部17を形成する。すなわち、前記刃16を、前記第2クラッド層15に対して略垂直となるように回転させながら、前記コア部に垂下させる。その際、凹部17が、前記第1クラッド層12に対して略垂直な垂直面17aと、前記垂直面17aに対向し、前記第2クラッド層15側から入射される光を前記コア部13内に誘導又は前記コア部13から出射される光を前記第2クラッド層15側に導出するように、光を反射させるための傾斜面17bとを有する凹部17となるように、前記コア部13を切り込まないように、前記第2クラッド層15を切り込む。さらに、前記垂直面17aが未硬化部15bに、前記傾斜面17bが硬化部15aに形成されるように、前記第2クラッド層15を切り込む。前記凹部17は、前記第1クラッド層12に平行な断面積が前記第1クラッド層12に近づくほど徐々に小さくなるように、前記傾斜面17bが形成している。なお、前記刃16は、円盤状の回転刃物であって、円周部に刃先があるもの、例えば、ダイシングブレード等が用いられる。また、凹部17の形状は、垂直面17aと前記傾斜面17bとが対向するように形成されたものであれば、特に限定されず、例えば、溝状である。
前記第2クラッド層15を前記刃16で切り込む際、必要に応じて、前記基板11や前記刃16等を加熱することにより、前記第2クラッド層15を軟化させながら切り込んでもよい。また、前記刃16の刃先が、前記第1クラッド層12に達するように切り込んでも、達しないように切り込んでもよい。
次に、図2(e)に示すように、少なくとも凹部17を覆うように金属層18を形成させる。金属層18を形成させる方法としては、特に限定されず、例えば、第1実施形態と同様の方法を用いることができる。なお、前記金属層18は、第1実施形態と同様、前記凹部17に形成されていればよく、図2(e)に示すように、前記第2クラッド層15全面に形成されていてもよい。なお、金属層18を形成する際、所定の形状のメタルマスクを用いることによって、前記第2クラッド層15上に電気回路を形成することもできる。また、後述する金属層除去工程を施した後に、前記第2クラッド層15上に残存した金属層18cは、エッチング処理等を施すことによって、電気回路として用いることもできる。
前記金属層18の厚みとしては、光を反射させることができれば、特に限定されず、例えば、第1実施形態と同様の厚みであればよい。
なお、前記傾斜面17bのみに金属層18を均一に形成することは、第1実施形態と同様、困難である。そこで、本実施形態においては、第1実施形態と同様、前記凹部17が小さくても、前記傾斜面17b上に金属層18bを均一に形成することができる。
また、前記金属層18が前記凹部17に形成されやすくするために、第1実施形態と同様、前記金属層18を形成させる前に、前記第2クラッド層15の表面に粗化処理を施してもよいし、前記第2クラッド層15の表面をカップリング剤で処理してもよい。また、前記粗化処理及び前記カップリング剤での処理は、第1実施形態と同様、いずれか一方だけを行ってもよいし、両方行ってもよい。粗化処理方法及びカップリング剤での処理方法としては、特に限定されない。具体的には、例えば、第1実施形態と同様の方法を用いることができる。
次に、図2(f)に示すように、現像処理を行う。そうすることによって、図2(g)に示すような、第2クラッド層15を形成する。
前記現像処理としては、第1実施形態と同様の方法を用いることができる。具体的には、例えば、図2(f)に示すように、基板11を含めた全体を、現像液22に浸漬させる方法等が挙げられる。
前記のような現像処理を施すことによって、前記未硬化部15bが除去されるとともに、前記未硬化部15b上の金属層18a、すなわち、垂直面17a上の金属層18aが選択的に除去される。そうすることによって、前記傾斜面17b上の金属層18bが残存し、前記垂直面17a上の金属層18aが除去される。この残存した金属層18bが、前記第2クラッド層15側から入射される光を前記コア部13内に誘導又は前記コア部13から出射された光を前記第2クラッド層15側に導出するように、光を反射させるミラー(ミクロミラー)として働く。
上記のような工程を経て、図2(g)に示すような光導波路19が形成される。なお、図2(g)中の矢符は、光導波路19に入射して出射される導波光の光路を示す。
形成された光導波路19は、前記コア部13とこれを被覆するクラッド層(前記第1クラッド層12及び前記第2クラッド層15)によって形成されたものであり、前記コア部13はクラッド層よりも屈折率が高く、内部を伝搬する光を全反射によってコア内に閉じこめるものである。このような光導波路19は、主としてマルチモード導波路として形成される。前記光導波路19の前記コア部13のサイズは、例えば、20〜100μmの矩形形状、コア部を含む層の厚みを除いた下部の第1クラッド層12及び上部の第2クラッド層15の厚みはそれぞれ5〜15μm、コア部とクラッド層との屈折率差は0.5〜3%程度が適当であるがこれに限られるものではない。また、前記第2クラッド層15上に残存した金属層18cを用いて電気回路を形成させることによって、前記光導波路19を備える光電気複合配線板を形成することができる。また、前記基板11として、電気回路が予め形成された基板を用いること等によっても、前記光導波路19を備える光電気複合配線板を形成することができる。
次に、本発明に係る上記実施形態と比較するため比較用の実施形態として、光導波路コアを形成する工程と、前記光導波路コアを回転刃等により加工することにより、前記光導波路コアに傾斜面を形成する工程と、前記傾斜面の反射効率を向上させるために、前記傾斜端上に金属層を形成する工程とを備える、従来の光導波路の製造方法について説明する。
図3は、従来の光導波路の製造方法を説明するための概略図である。図3(a)は、従来の光導波路の製造方法における、仮基板上に形成された第1クラッド層の表面へのコア部の形成を説明するための概略断面図であり、図3(b)は、従来の光導波路の製造方法における、傾斜面の形成を説明するための概略断面図であり、図3(c)は、従来の光導波路の製造方法における、金属層の形成を説明するための概略図であり、図3(d)は、従来の光導波路の製造方法における、第2クラッド層の形成を説明するための概略図であり、図3(e)は、基板の貼り付けを説明するための概略図であり、図3(f)は、仮基板の剥離を説明するための概略図である。
まず、図3(a)に示すように、第1クラッド層(下部クラッド層)32を備えた仮基板31の、前記第1クラッド層32上にコア部33を形成する。基板11の代わりに、仮基板31を用いること以外、第1実施形態と同様に行うことができる。
次に、図3(b)に示すように、コア部33を回転刃34により加工することにより、前記コア部33に傾斜面33aを形成する。その際、傾斜面33aが、前記第1クラッド層33側から入射される光を前記コア部33内に誘導又は前記コア部33から出射される光を前記第1クラッド層32側に導出するような傾斜面である。
次に、図3(c)に示すように、上記のようにして形成された傾斜面33aに、金属層36を形成させる。
次に、図3(d)に示すように、第1実施形態と同様、上記のように形成されたコア部33を埋設するように、第2クラッド層(上部クラッド層)37を形成する。
次に、図3(e)に示すように、第2クラッド層(上部クラッド層)37上に、基板38を貼着する。
そして、最後に、図3(f)に示すように、仮基板31を剥離する。
上記のような工程を経て、図3(f)に示すような光導波路39が形成される。なお、図3(f)中の矢符は、光導波路39に入射して出射される導波光の光路を示す。
このような製造方法によれば、導波光が前記第1クラッド層32を通過することになるので、仮基板31を剥離したり、本来、光導波路を形成しようとしていた基板を貼り付ける必要がある。これに対して、本実施形態に係る光導波路の製造方法によれば、これらの工程が不要となり、製造効率が高まる。
以上のことから、本実施形態に係る光導波路の製造方法によれば、所定の角度をなす傾斜面を有する光導波路コアを備える光導波路を効率的に製造することができ、前記傾斜面に選択的に金属膜を形成させることができる光導波路の製造方法を提供することができる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明の範囲は実施例により何ら限定されるものではない。
はじめに、本実施例で用いた光硬化性樹脂シートの製造方法について説明する。
(下部クラッド層用光硬化性樹脂シートAの製造)
ポリプロピレングリコールグリシジルエーテル(東都化成(株)製「PG207」)7質量部、液状の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「YX8000」)25質量部、固形の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「YL7170」)20質量部、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物(ダイセル化学工業(株)製「EHPE3150」)8質量部、固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート1006FS」)2質量部、フェノキシ樹脂(東都化成(株)製「YP50」)20質量部、光カチオン硬化開始剤((株)アデカ製「SP170」)0.5質量部、熱カチオン硬化開始剤(三新化学工業(株)製「SI−150L」)0.5質量部、表面調整剤(DIC(株)製「F470」)0.1質量部の各配合成分を、トルエン30質量部、MEK70質量部の溶剤に溶解し、孔径1μmのメンブランフィルタで濾過した後、減圧脱泡することによって、エポキシ樹脂ワニスを調製した。このエポキシ樹脂ワニスを厚み50μmのPETフィルムの上にバーコーターで塗工し、80℃で10分間、1次乾燥をしたあと、120℃で10分間、2次乾燥をした。最後に保護フィルムとして35μmのOPPフィルムで被覆した。このようにして得られた下部クラッド用光硬化性樹脂シートAは、膜厚15μmであり、波長579nmの光に対する屈折率は1.54であった。
(コア部用光硬化性樹脂シートBの製造)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC(株)製「エピクロン850S」)42質量部、固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート1006FS」)55質量部、フェノキシ樹脂(東都化成(株)製「YP50」)3質量部、光カチオン硬化開始剤((株)アデカ製「SP170」)1質量部、表面調整剤(DIC(株)製「F470」)0.1質量部の各配合成分を、トルエン24質量部、MEK56質量部の溶剤に溶解し、孔径1μmのメンブランフィルタで濾過した後、減圧脱泡することによって、エポキシ樹脂ワニスを調製した。このエポキシ樹脂ワニスを上述した「光硬化性樹脂シートAの製造」と同様にしてフィルム化した。このようにして得られたコア部用光硬化性樹脂シートBは、膜厚40μmであり、波長579nmの光に対する屈折率は1.59であった。また、850nmにおける透過率は0.06dB/cmと充分に高い透明性を有していた。
(上部クラッド層用光硬化性樹脂シートCの製造)
エポキシ樹脂ワニスの塗布厚みを変えた以外は、「光硬化性樹脂シートAの製造」と同様にしてフィルム化することにより上部クラッド用光硬化性樹脂シートCを得た。このようにして得られた光硬化性樹脂シートCは、膜厚55μmであり、波長579nmの光に対する屈折率は1.54であった。
(実施例1)
実施例1は、第1実施形態に係る実施例である。図4を参照して光導波路を製造する方法について説明する。なお、図4は、実施例1における光導波路の製造方法を説明するための模式図である。
図4(a)に示すような、140mm×120mmのUV透過性ポリカーボネート樹脂からなる基板11に、下部クラッド層用光硬化性樹脂シートAを真空ラミネーター「V−130」で60℃、0.2MPaの条件でラミネートした。そして、光硬化性樹脂シートAの表面を超高圧水銀灯で2J/cm2の条件で紫外光を照射し、さらに150℃で30分間熱処理することにより、図4(b)に示すような、第1クラッド層(下部クラッド層)12が形成された。そして、形成された下部クラッド層12の表面に酸素プラズマ処理を施した。
次に、図4(c)に示すように、下部クラッド層12の表面に、コア部用光硬化性樹脂シートBを真空ラミネーター「V−130」で60℃、0.2MPaの条件でラミネートすることにより、コア材料層41を形成した。
そして、図4(d)に示すように、直線パターンのスリットを有するフォトマスク42を、フォトマスク42のアライメントマークとコア材料層41の表面に形成したアライメントマークとを重ね合わせることにより位置決めを行って載置した。その後、照射光が略平行光になるように調整された超高圧水銀灯で3J/cm2の光量で紫外光をコア材料層41のスリットに対応する部分を光硬化させた。そうすることによって、図4(e)に示すように、光硬化させた部分(硬化部)13aと未硬化部13bとが形成される。その際、前記フォトマスク42としては、図7(a)に示すような、所定の幅W、所定の長さLの直線パターンのスリットの長手方向が平行に複数並んだ形状のものを用いた。幅W及び長さLは、上述したように、40μm、120mmであった。なお、図7は、各実施例で用いるフォトマスクの形状を説明するための模式図であり、図7(a)は、実施例1で用いるフォトマスクの形状を説明するための模式図である。図7には、丸印で示した箇所を拡大した図面も併記した。
次に、140℃で2分間熱処理を行ない、さらに、図4(e)に示すように、現像液43として55℃に調整した水系フラックス洗浄剤(荒川化学工業(株)製「パインアルファST−100SX」)を用い、その現像液43に浸漬させる現像処理することによって、未硬化部13bを溶解除去した。そして、さらに水で仕上げ洗浄してエアブローした後、100℃で10分間乾燥することによって、図4(f)に示すようなコア部13を形成した。
次に、図4(g)に示すように、下部クラッド層12及びコア部13を被覆するようにして、クラッド材料層14として、上部クラッド層用光硬化性樹脂シートCを真空ラミネーター「V−130」で80℃、0.3MPaの条件でラミネートした。
そして、その後、図4(h)に示すように、超高圧水銀灯で2J/cm2の光量で露光し、さらに150℃30分間熱処理することにより、図4(i)に示すように第2クラッド層(上部クラッド層)15を形成した。
次に、図4(j)に示すように、刃先の一方の面が、刃の面方向に平行な面で、他方の面が、刃の面方向に対する角度が45°である面である刃(ダイシングブレード)16を用い、回転数15000rpmで第2クラッド層15の両端部から110mmの位置を、2カ所切り込んだ。そうすることによって、図4(k)に示すような、45°傾斜面17bを有する凹部17が形成された。ダイシングブレード16としては、粒度5000番のものを用いた。
次に、図4(l)に示すように、凹部17が形成された領域が少なくとも開口されたメタルマスク44でマスキングして、真空蒸着することによって、図4(i)に示すように、凹部17の表面に1000Å厚の金からなる金属層18を形成した。その際、前記第2クラッド層15表面にも、電気回路を形成しうる金属層18cを形成した。
その後、図4(n)に示すように、前記刃16を用い、回転数15000rpmで、前記垂直面17a上に形成された金属層18aを、その外表面を基準として、10μm除去するように、前記刃16の位置を調整して、切り込んだ。そうすることによって、図4(o)に示すように、前記金属層18aを選択的に除去し、前記傾斜面17b上の金属層18bを残存させた。この残存した金属層18bが、前記第2クラッド層15側から入射される光を前記コア部13内に誘導又は前記コア部13から出射された光を前記第2クラッド層15側に導出するように、光を反射させるミラー(ミクロミラー)として働く。そうすることによって、図4(p)に示すように、下部クラッド層12とコア部13と上部クラッド層15とからなる光導波路19が形成された。なお、図4(p)中の矢符は、光導波路19に入射して出射される導波光の光路を示す。
形成された光導波路について、以下に示す評価を行った。
(導波路損失測定)
入力側端部、具体的には、一方のミラーが形成されている位置の、第2クラッド層に対して垂直の方向の、第2クラッド層の表面、(又は、光導波路の端部が露出している場合は、そのコア部の一方の端面)に、コア径10μmのNA0.21の光ファイバの端部を、マッチングオイル(シリコーンオイル)を介して、接続した。そして、出力側端部、具体的には、他方のミラーが形成されている位置の、第2クラッド層に対して垂直の方向の、第2クラッド層の表面、(又は、光導波路の端部が露出している場合は、そのコア部の他方の端面)に、コア径200μmのNA0.4の光ファイバの端部を、マッチングオイルを介して、接続した。LED光源からの光を、入力側端部に接続された光ファイバを介して、光導波路19に入射させた。そして、光導波路19からの出射光を、出力側端部に接続された光ファイバを介してパワーメータに入射させ、その出射光の光量P1を測定した。
一方、入力側端部に接続された光ファイバと出力側端部に接続された光ファイバとを光導波路19を介さずに直接接続した場合における、出力側端部に接続された光ファイバからの出射光の光量P0を、上記と同様、測定した。
そして、下記式(1)により、光導波路の挿入損失L1を求め、この挿入損失L1を導波路損失とした。
L1=−10log(P1/P0) (1)
実施例1で得られた光導波路について、上記評価を行うと、導波路損失が3.1dBであった。なお、一方のミラーと他方のミラーとの間隔は、11cmであった。
以上より、本実施例によれば、光導波路を形成する際に、ミラー用の傾斜端面が同時に形成でき、すなわち、光導波路を形成するための工程とは別の工程を用いることなく、損失の小さい、傾斜面を有する光導波路を形成できることがわかった。
(実施例2)
実施例2は、第2実施形態に係る実施例である。図5を参照して光導波路を製造する方法について説明する。なお、図5は、実施例2における光導波路の製造方法を説明するための模式図である。
図5(a)に示すような、140mm×120mmのUV透過性ポリカーボネート樹脂からなる基板11に、下部クラッド層用光硬化性樹脂シートAを真空ラミネーター「V−130」で60℃、0.2MPaの条件でラミネートした。そして、光硬化性樹脂シートAの表面を超高圧水銀灯で2J/cm2の条件で紫外光を照射し、さらに150℃で30分間熱処理することにより、図5(b)に示すような、第1クラッド層(下部クラッド層)12が形成された。そして、形成された下部クラッド層12の表面に酸素プラズマ処理を施した。
次に、図5(c)に示すように、下部クラッド層12の表面に、コア部用光硬化性樹脂シートBを真空ラミネーター「V−130」で60℃、0.2MPaの条件でラミネートすることにより、コア材料層41を形成した。
そして、図5(d)に示すように、フォトマスク51を、フォトマスク51のアライメントマークとコア材料層41の表面に形成したアライメントマークとを重ね合わせることにより位置決めを行って載置した。その後、照射光が略平行光になるように調整された超高圧水銀灯で3J/cm2の光量で紫外光をコア材料層41のスリットに対応する部分を光硬化させた。そうすることによって、図5(e)に示すように、光硬化させた部分(硬化部)13aと未硬化部13bとが形成される。その際、前記フォトマスク51としては、図7(a)に示すような、所定の幅W、所定の長さLの直線パターンのスリットの長手方向が平行に複数並んだ形状のものを用いた。幅W、及び長さLは、40μm、108mmであった。
次に、140℃で2分間熱処理を行ない、さらに、図5(e)に示すように、現像液43として55℃に調整した水系フラックス洗浄剤(荒川化学工業(株)製「パインアルファST−100SX」)を用い、その現像液43に浸漬させる現像処理することによって、未硬化部13bを溶解除去した。そして、さらに水で仕上げ洗浄してエアブローした後、100℃で10分間乾燥することによって、図5(f)に示すようなコア部13を形成した。
次に、図5(g)に示すように、下部クラッド層12及びコア部13を被覆するようにして、クラッド材料層14として、上部クラッド層用光硬化性樹脂シートCを真空ラミネーター「V−130」で80℃、0.3MPaの条件でラミネートした。
そして、その後、図5(h)に示すように、フォトマスク52を、フォトマスク52のアライメントマークとクラッド材料層14の表面に形成したアライメントマークとを重ね合わせることにより位置決めを行って載置した。その後、照射光が略平行光になるように調整された超高圧水銀灯で2J/cm2の光量で紫外光をクラッド材料層14のスリットに対応する部分を光硬化させた。そうすることによって、図5(i)に示すように、光硬化させた部分(硬化部)15aと未硬化部15bとが形成される。その際、前記フォトマスク52としては、図7(b)に示すような、所定の幅W1、所定の長さL1の矩形状のスリットに、前記スリットの両端部から所定の位置に、スリットを埋めている箇所(幅W2)が2カ所形成されている形状のものを用いた。幅W1、幅W2及び長さL1は、140mm、40μm、120mmであった。そして、スリットを埋めている箇所の間隔L2は、109.9mmであった。
次に、150℃で30分間熱処理を行なうことによって、図5(i)に示すような、硬化部15aと未硬化部15bとを有する第2クラッド層(上部クラッド層)15を形成した。
次に、図5(j)に示すように、刃先の一方の面が、刃の面方向に平行な面で、他方の面が、刃の面方向に対する角度が45°である面である刃(ダイシングブレード)16を用い、回転数15000rpmで第2クラッド層15の両端部から110mmの位置を、2カ所切り込んだ。そうすることによって、図5(k)に示すように、前記第1クラッド層12に略垂直な垂直面17aと、45°傾斜面17bとを有する凹部17が形成された。ダイシングブレード16としては、粒度5000番のものを用いた。このとき、前記傾斜面17bに対向する、前記第1クラッド層12に略垂直な垂直面17aが未硬化部15bに、前記傾斜面17bが硬化部15aに形成されるように、前記第2クラッド層15を切り込むように、前記刃16の位置を調整した。
次に、前記凹部17が形成された前記第2クラッド層15を備える基板11を、過マンガン酸処理液を用いたマイクロエッチング処理を施した。具体的には、まず、65℃に調整した膨潤液(アトテックジャパン製のスウェリングディップセキュリガントP 400ml/L、水酸化ナトリウム10g/L)に、3分間浸漬させた。そうすることによって、コア部13が膨潤した。その後、75℃に調整した過マンガン酸処理液(アトテックジャパン製のコンセントレートコンパクトCP 700ml/L、水酸化ナトリウム45g/L)に、10分間浸漬させた。そうすることによって、第2クラッド層15の表面に過マンガン酸処理液を用いたマイクロエッチング処理が施された。その後、40℃に調整した中和液(アトテックジャパン製のリダクションソリューションセキュリガントP500 70ml/L、98%硫酸50ml/L)に、5分間浸漬させた。そうすることによって、上記処理に用いた液が中和された。
次に、図5(l)に示すように、マイクロエッチング処理を施した前記第2クラッド層15に、1質量%のエタノール溶液としたカップリング剤(信越シリコーン社製のKBM603)を、1000rpm/30秒の条件で、塗布した。その後、160℃で1時間熱処理を行った。
次に、図5(m)に示すように、凹部17が形成された領域が少なくとも開口されたメタルマスク44でマスキングして、真空蒸着することによって、図5(n)に示すように、凹部17の表面に1000Å厚の金からなる金属層18を形成した。その際、前記第2クラッド層15表面にも、電気回路を形成しうる金属層18cを形成した。
その後、図5(o)に示すように、現像液53として55℃に調整した水系フラックス洗浄剤(荒川化学工業(株)製「パインアルファST−100SX」)を用い、その現像液53に浸漬させる現像処理することによって、未硬化部15bを溶解除去されるとともに、前記未硬化部15b上の金属層18a、すなわち、垂直面17a上の金属層18aが選択的に除去された。そして、さらに水で仕上げ洗浄してエアブローした後、100℃で10分間乾燥することによって、図5(p)に示すような、金属層18bが傾斜面17bに形成された第2クラッド層15が形成された。この残存した金属層18bが、前記第2クラッド層15側から入射される光を前記コア部13内に誘導又は前記コア部13から出射された光を前記第2クラッド層15側に導出するように、光を反射させるミラー(ミクロミラー)として働く。そうすることによって、図5(q)に示すように、下部クラッド層12とコア部13と上部クラッド層15とからなる光導波路19が形成された。なお、図5(q)中の矢符は、光導波路19に入射して出射される導波光の光路を示す。
実施例2で得られた光導波路について、上記評価を行うと、導波路損失が2.8dBであった。なお、一方のミラーと他方のミラーとの間隔は、11cmであった。
以上より、本実施例によれば、光導波路を形成する際に、ミラー用の傾斜端面が同時に形成でき、すなわち、光導波路を形成するための工程とは別の工程を用いることなく、損失の小さい、傾斜端面を有する光導波路を形成できることがわかった。
(実施例3)
実施例3は、第2実施形態に係る実施例であり、粗化処理及びカップリング剤による処理を施さない場合の実施例である。図6を参照して光導波路を製造する方法について説明する。なお、図6は、実施例3における光導波路の製造方法を説明するための模式図である。
図6(a)に示すような、140mm×120mmのUV透過性ポリカーボネート樹脂からなる基板11に、下部クラッド層用光硬化性樹脂シートAを真空ラミネーター「V−130」で60℃、0.2MPaの条件でラミネートした。そして、光硬化性樹脂シートAの表面を超高圧水銀灯で2J/cm2の条件で紫外光を照射し、さらに150℃で30分間熱処理することにより、図6(b)に示すような、第1クラッド層(下部クラッド層)12が形成された。そして、形成された下部クラッド層12の表面に酸素プラズマ処理を施した。
次に、図6(c)に示すように、下部クラッド層12の表面に、コア部用光硬化性樹脂シートBを真空ラミネーター「V−130」で60℃、0.2MPaの条件でラミネートすることにより、コア材料層41を形成した。
そして、図6(d)に示すように、フォトマスク61を、フォトマスク61のアライメントマークとコア材料層41の表面に形成したアライメントマークとを重ね合わせることにより位置決めを行って載置した。その後、照射光が略平行光になるように調整された超高圧水銀灯で3J/cm2の光量で紫外光をコア材料層41のスリットに対応する部分を光硬化させた。そうすることによって、図6(e)に示すように、光硬化させた部分(硬化部)13aと未硬化部13bとが形成される。その際、前記フォトマスク61としては、図7(c)に示すような、直線パターンのスリットの長手方向が平行に複数並んだ形状のものを用いた。前記スリットとしては、所定の幅Wを有し、スリットの長手方向中心から所定の距離Lの位置の端部から、他方の端部に向かって、最後まで切り込みが形成されているものを用いた。幅W及び距離Lは、40μm、54mmであった。
次に、140℃で2分間熱処理を行ない、さらに、図6(e)に示すように、現像液43として55℃に調整した水系フラックス洗浄剤(荒川化学工業(株)製「パインアルファST−100SX」)を用い、その現像液43に浸漬させる現像処理することによって、未硬化部13bを溶解除去した。そして、さらに水で仕上げ洗浄してエアブローした後、100℃で10分間乾燥することによって、図6(f)に示すようなコア部13を形成した。
次に、図6(g)に示すように、下部クラッド層12及びコア部13を被覆するようにして、クラッド材料層14として、上部クラッド層用光硬化性樹脂シートCを真空ラミネーター「V−130」で80℃、0.3MPaの条件でラミネートした。
そして、その後、図6(h)に示すように、フォトマスク62を、フォトマスク62のアライメントマークとクラッド材料層14の表面に形成したアライメントマークとを重ね合わせることにより位置決めを行って載置した。その後、照射光が略平行光になるように調整された超高圧水銀灯で2J/cm2の光量で紫外光をクラッド材料層14のスリットに対応する部分を光硬化させた。そうすることによって、図6(i)に示すように、光硬化させた部分(硬化部)15aと未硬化部15bとが形成される。その際、前記フォトマスク62としては、図7(d)に示すような形状のものを用いた。前記スリットとしては、所定の幅W1を有し、スリットの長手方向中心から所定の距離L1の位置の端部から、他方の端部に向かって、最後まで切り込みが形成されているものを用いた。そして、前記スリットの一方の端部から所定の位置に、スリットを埋めている箇所(幅W2)が1カ所形成されている形状のものを用いた。幅W1、幅W2及び距離L1は、140mm、40μm、60mmであった。そして、スリットを埋めている箇所の、スリットの長手方向中心から距離L2は、54.95mmであった。
次に、150℃で30分間熱処理を行なうことによって、図6(i)に示すような、硬化部15aと未硬化部15bとを有する第2クラッド層(上部クラッド層)15を形成した。
次に、図6(j)に示すように、刃先の一方の面が、刃の面方向に平行な面で、他方の面が、刃の面方向に対する角度が45°である面である刃(ダイシングブレード)16を用い、回転数15000rpmで第2クラッド層15の端部から110mmの位置を、1カ所切り込んだ。そうすることによって、図6(k)に示すように、前記第1クラッド層12に略垂直な垂直面17aと、45°傾斜面17bとを有する凹部17が形成された。ダイシングブレード16としては、粒度5000番のものを用いた。このとき、前記傾斜面17bに対向する、前記第1クラッド層12に略垂直な垂直面17aが未硬化部15bに、前記傾斜面17bが硬化部15aに形成されるように、前記第2クラッド層15を切り込むように、前記刃16の位置を調整した。
次に、図6(l)に示すように、凹部17が形成された領域が少なくとも開口されたメタルマスク44でマスキングして、真空蒸着することによって、図6(m)に示すように、凹部17の表面に1000Å厚の金からなる金属層18を形成した。その際、前記第2クラッド層15表面にも、電気回路を形成しうる金属層18cを形成した。
その後、図6(n)に示すように、現像液53として55℃に調整した水系フラックス洗浄剤(荒川化学工業(株)製「パインアルファST−100SX」)を用い、その現像液53に浸漬させる現像処理することによって、未硬化部15bを溶解除去されるとともに、前記未硬化部15b上の金属層18a、すなわち、垂直面17a上の金属層18aが選択的に除去された。そして、さらに水で仕上げ洗浄してエアブローした後、100℃で10分間乾燥することによって、図6(o)に示すような、金属層18bが傾斜面17bに形成された第2クラッド層15が形成された。この残存した金属層18bが、前記第2クラッド層15側から入射される光を前記コア部13内に誘導又は前記コア部13から出射された光を前記第2クラッド層15側に導出するように、光を反射させるミラー(ミクロミラー)として働く。
次に、図6(p)に示すように、ミラーとなる金属層18bが形成されていない側の端部を光学研磨した。そうすることによって、図6(q)に示すように、下部クラッド層12とコア部13と上部クラッド層15とからなる光導波路19が形成された。なお、図6(q)中の矢符は、光導波路19に入射して出射される導波光の光路を示す。
実施例3で得られた光導波路について、上記評価を行うと、導波路損失が2.0dBであった。なお、ミラーとミラーが形成されていない側の端部を光学研磨した端面(導波路端面)との間隔は、11cmであった。
以上より、本実施例によれば、光導波路を形成する際に、ミラー用の傾斜端面が同時に形成でき、すなわち、光導波路を形成するための工程とは別の工程を用いることなく、損失の小さい、傾斜端面を有する光導波路を形成できることがわかった。