JP5378123B2 - フィッシャー・トロプシュ合成油用水素化処理触媒の再生方法 - Google Patents

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本発明は、フィッシャー・トロプシュ(以下、FTと表記する。)合成反応によって生成する合成油の水素化処理に使用した触媒の再生方法に関する。より詳しくは、活性が低下した水素化処理触媒を、水素化処理を行う反応器内に充填したまま再生処理する方法に関する。
FT合成反応は、一般に、Fe、Co、Ni、RuなどのFT反応に活性な金属種を含む触媒を用い、一酸化炭素と水素からなる混合ガス(合成ガス)を原料としてガスから固体までの炭化水素類を生成させる反応である。通常、FT合成反応は、反応温度200〜400℃、反応圧力0.1〜4MPaGで行われる。
FT合成反応によれば、ノルマルパラフィンを主成分とし、硫黄分、窒素分、芳香族分が含まれないクリーンな合成油を製造できる。
FT合成反応の合成油の主成分であるノルマルパラフィンは、炭素数1から100程度までの広い分布を持つ。このうち、ディーゼル燃料油としては、炭素数10〜21程度の中間留分を使用する。具体的には、炭素数10〜21程度の中間留分を水素化異性化処理することで、ディーゼル燃料油にすることができる。
また、生成物のうち、炭素数22以上の常温で固体のワックス留分を水素化分解処理して中間留分とし、これを必要によりさらに水素化異性化処理することによりディーゼル燃料油を得ることもできる。
さらに、FT合成反応で得られた合成油を水素化処理する目的として、ノルマルパラフィン以外に微量に含まれるオレフィンや含酸素化合物の水添除去が挙げられる。オレフィンや含酸素化合物がディーゼル燃料油中に含まれると、酸化安定性や貯蔵安定性を低下させる問題が発生する。そのため、水素化処理によってオレフィンや含酸素化合物をパラフィンに変換させて除去する。
上述した水素化処理には触媒が用いられる。一般に、触媒反応においては反応時間が長くなるにつれて触媒の活性や選択性が低下する傾向にあり、通常は、触媒性能があるレベルまで低下した際に触媒を交換または再生する。
触媒活性の低下要因としては、炭素質の析出、活性金属の凝集、触媒の物理性状の低下、触媒被毒物質による劣化などが考えられ、特にFT合成反応により生成した合成油の水素化処理では、合成油に含まれる微量の含酸素化合物が触媒被毒物質として作用することが推測される。いずれにしても、活性低下が認められる触媒を再生して、新しい触媒に交換せずに活性を回復できれば、触媒交換に伴って生じるコストの増加を抑制することができる。
触媒の再生方法に関しては、例えば、特許文献1,2に、触媒上に付着した炭素質や有機物を、酸素を含有するガス中で燃焼除去する方法が開示されている。
また、特許文献3,4には、酸素を含有する気流中での燃焼処理以外で、水素化処理触媒を再生する方法が開示されている。
具体的に、特許文献3には、通常の反応温度よりも低い温度で重質油を水素化処理することで、触媒を再生する方法が開示されている。
特許文献4には、活性低下した水素化処理触媒を、窒素、水蒸気、二酸化炭素、空気等の存在下で油分除去処理した後、有機物を担持させ、焼成する触媒の再生方法が開示されている。
特開平5−123586号公報 特開2002−233772号公報 特開2000−5609号公報 特開2008−290071号公報
しかしながら、特許文献1,2に記載の方法では、炭素質等の燃焼によって触媒が高温になるため、活性金属の凝集や担体成分の焼結が生じて、触媒活性を低下させるおそれがあった。
特許文献3,4に記載の方法では、酸素含有ガスを用いないが、原料油とは異なる特殊な油や有機物を用いて処理を行うため、再生処理工程が複雑となり、必ずしも効率的な再生方法とは言えなかった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、活性低下した水素化処理触媒の触媒活性を充分に回復させることができ、しかも簡便に再生できるフィッシャー・トロプシュ合成油用水素化処理触媒の再生方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、触媒活性の低下が認められた水素化処理触媒を、水素気流中、特定の温度、圧力条件下で再生処理することで、触媒活性を回復させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のフィッシャー・トロプシュ合成油用水素化処理触媒の再生方法は、フィッシャー・トロプシュ合成反応によって生成した合成油の水素化処理に使用した水素化処理触媒を再生する方法であって、
活性が低下した水素化処理触媒を、水素化処理を行う反応器内に充填したまま、水素気流中、処理温度350〜500℃および処理圧力0〜0.5MPaGの条件下で処理することを特徴とする。
本発明のフィッシャー・トロプシュ合成油用水素化処理触媒の再生方法によれば、活性低下した水素化処理触媒の触媒活性を充分に回復させることができ、しかも簡便に再生できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のFT合成油の水素化処理触媒の再生方法は、FT合成反応によって生成した合成油の水素化処理に使用した水素化処理触媒を再生する方法であって、活性が低下した水素化処理触媒を、FT合成油の水素化処理を行う反応器内に充填したまま水素雰囲気中で再生処理する方法である。
FT合成反応によって生成した合成油は、ノルマルパラフィンを主成分として含み、オレフィン、含酸素化合物(アルコール、アルデヒド、酸、ケトンなど)等を微量含んでいる。
上述したように、合成油からディーゼル燃料油を製造するためには、合成油に含まれる成分のうち炭素数10〜21程度の中間留分を水素化異性化する。これにより、低温性能に乏しい直鎖状のノルマルパラフィンを側鎖あるいは分枝状を有するイソパラフィンに異性化して低温流動性を向上させる。
中間留分としては、合成油に含まれる、ディーゼル燃料留分よりも重質なワックス留分を水素化分解することで得たものを使用することもある。
また、FT合成反応により生成した合成油からディーゼル燃料油を製造する際には、オレフィンや含酸素化合物を水素化処理により除去して、安定性(酸化安定性、貯蔵安定性)を向上させる。
合成油を水素化異性化処理する際に使用する水素化異性化触媒としては、異性化能を示す固体酸性質を有する担体に、6,8〜10族の金属を担持させた触媒が挙げられる。
担体としては、例えば、アルミナ、シリカアルミナ、シリカマグネシア、アルミナボリアなどが挙げられる。6,8〜10族の金属としては、Pt、Pd、Ru、Rh、Irなどの貴金属や、Mo、W、Ni、Coなどが挙げられ、これらの金属は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
合成油の水素化異性化反応は、例えば、反応温度200〜350℃、反応圧力1〜10MPaG、水素/合成油比100〜1000L/L、LHSV0.1〜5h−1の条件で行われる。
合成油を水素化分解処理する際に使用する水素化分解触媒としては、固体酸性質を有するゼオライトや無機酸化物担体に、6,8〜10族の金属を担持させた触媒が挙げられる。
担体のゼオライトとしては、例えば、USY、Y、モルデナイト、βなどが挙げられ、無機酸化物担体としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、シリカアルミナ、シリカマグネシア、アルミナボリアなどが挙げられる。また、担体として上記ゼオライトと無機酸化物の複合物を用いることもできる。
6,8〜10族の金属としては、Pt、Pd、Ru、Rh、Irなどの貴金属や、Mo、W、Ni、Coなどが挙げられ、これらの金属は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
合成油の水素化分解反応は、例えば、反応温度200〜350℃、反応圧力1〜10GMPa、水素/合成油比100〜1000L/L、LHSV0.1〜5h−1の条件で行われる。
本発明における水素化処理とは、上記水素化異性化触媒および水素化処理触媒を包含する。
通常、上記の水素化処理の反応時間が長くなるにつれて水素化処理触媒の活性が低下する傾向にある。そのため、通常、活性低下が認められた際に、水素化処理触媒の再生処理が行われる。
本発明における水素化処理触媒の再生処理は、合成油の供給を止めた後、活性が低下した水素化処理触媒を、水素化処理を行う反応器から抜き出さず、反応器内に充填したまま、以下の条件で行う。
再生処理は、水素気流中で行われる。
ここで、水素化処理触媒の活性金属は還元状態で用いられるため、再生処理において空気などの酸化性ガスを用いて活性金属を酸化した場合には、再生処理後に再度還元処理が必要となる。また、酸化によって残留油分や炭素質などが燃焼して、過度の温度上昇が起きるおそれがある。したがって、酸化性ガスによる再生は適切とは言い難い。
水素流量については特に制限はないが、過度に多い流量はコスト面や効果の面でも好ましくなく、通常の水素化処理条件と同様の水素流量でよい。
再生処理時間についても特に制限は無く、5〜15時間程度の処理で充分に触媒を再生できる。
再生処理温度は350〜500℃、好ましくは360〜500℃で、通常適用される水素化処理の温度よりも高い温度である。再生処理温度が350℃以上であることで、触媒活性の再生効果が認められ、500℃以下であることで、過度の加熱による活性金属種の凝集などを防止できる。
再生処理圧力は0〜0.5MPaG(「G」はゲージ圧力を意味する。)、好ましくは0〜0.2MPaGで、通常適用される水素化処理の圧力よりも低い圧力である。再生処理圧力が0.5MPa以下であることで、触媒活性の再生効果が認められ、0MPaG(大気圧)以上であることで、減圧装置および減圧のためのエネルギーが不要になり、簡便になる。
以上説明した触媒の再生方法では、水素雰囲気中、上記範囲の再生処理温度および再生処理圧力で処理しているため、反応器に充填したままで水素化処理触媒の触媒活性を充分に回復させることができる。この再生処理により、触媒活性が回復する理由については明らかではないが、含酸素化合物のような触媒被毒物質について、特定の再生処理温度および処理圧力の条件下において、触媒活性点からの脱離を進行させることができるためと推測している。
また、本発明の再生方法では、活性が低下した水素化処理触媒を反応器から抜き出さず、また、油や溶媒などを用いないため、簡便である。
以下、実施例および比較例によって、さらに具体的に本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
流通式反応装置の固定床反応器に水素化異性化触媒を充填し、その水素化異性化触媒にFT合成反応で得た合成油を分留して得た中間留分(沸点留分150〜360℃)を供給し、表1に示す処理条件で水素化異性化処理した。水素化異性化触媒としては、シリカアルミナの担体にPtを0.5質量%担持した触媒を用いた。
この水素化異性化反応を1500時間行った後、さらに、n−C14を主成分とする表2に示す組成のソルベントを原料油として反応温度330℃、反応圧力3MPaG、LHSV=2h−1、水素/原料油338L/Lの条件で水素化異性化反応を行った。その際のソルベント異性化率を表3に示す。
(比較例1)
水素化異性化反応にて1500時間使用した水素化異性化触媒を、固定床反応器内に充填したまま、水素気流中、再生処理温度330℃、再生処理圧力3.0MPaG、水素流量0.5L/分の条件で10時間再生処理を行った。その後、上記と同様の条件でソルベントの異性化反応を行った。ソルベント異性化率を表3に示す。
なお、ソルベント異性化率は、(炭素数14以上のイソパラフィン量/炭素数14以上の全量)×100(%)の式より求められる値である。
Figure 0005378123
Figure 0005378123
Figure 0005378123
(比較例2)
比較例1における再生処理の処理圧力を0.2MPaGにして再生した触媒を用いた以外は比較例1と同様にして、ソルベント異性化反応を行った。その際のソルベント異性化率を表3に示す。
(比較例3)
比較例1における再生処理の温度を360℃、処理圧力を2.0MPaGにして再生した触媒を用いた以外は比較例1と同様にして、ソルベント異性化反応を行った。その際のソルベント異性化率を表3に示す。
(比較例4)
比較例3における再生処理の処理圧力を0.7MPaGにして再生した触媒を用いた以外は比較例3と同様にして、ソルベント異性化反応を行った。その際のソルベント異性化率を表3に示す。
(実施例1)
比較例2における再生処理の温度を360℃にして再生した触媒を用いた以外は比較例2と同様にして、ソルベント異性化反応を行った。その際のソルベント異性化率を表3に示す。
(実施例2)
比較例2における再生処理の温度を400℃にして再生した触媒を用いた以外は比較例2と同様にして、ソルベント異性化反応を行った。その際のソルベント異性化率を表3に示す。
(比較例5)
比較例2における再生処理の温度を600℃にして再生した触媒を用いた以外は比較例2と同様にして、ソルベント異性化反応を行った。その際のソルベント異性化率を表3に示す。
再生処理温度が350〜500℃で、再生処理圧力が0〜0.5MPaGの実施例1,2の触媒再生方法では、再生後に触媒活性を充分に回復できた。
再生処理温度が350℃未満の比較例1,2の触媒再生方法では、再生後に触媒活性を充分に回復させることができなかった。
再生処理圧力が0.5MPaGを超える比較例3,4の触媒再生方法では、再生後に触媒活性を充分に回復させることができなかった。
再生処理温度が600℃を超える比較例5の触媒再生方法でも、再生後に触媒活性を充分に回復させることができなかった。

Claims (1)

  1. フィッシャー・トロプシュ合成反応によって生成した合成油の水素化処理に使用した水素化処理触媒を再生する方法であって、
    活性が低下した水素化処理触媒を、水素化処理を行う反応器内に充填したまま、水素気流中、処理温度350〜500℃および処理圧力0〜0.5MPaGの条件下で処理することを特徴とするフィッシャー・トロプシュ合成油用水素化処理触媒の再生方法。
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