JP5378114B2 - モータ付デファレンシャル装置 - Google Patents

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本発明は車両に搭載されるモータ付デファレンシャル装置に関する。
従来、特許文献1に記載の如くのモータ付デファレンシャル装置がある。この従来のモータ付デファレンシャル装置は、モータのロータ軸にカウンタドライブギヤを設け、カウンタドライブギヤに噛合うカウンタドリブンギヤをカウンタシャフトの一端に連結し、他端にドライブピニオンギヤを取付け、ドライブピニオンギヤに噛合うリングギヤを含むデファレンシャル装置を有する。これにより、モータの出力をカウンタドライブギヤとカウンタドリブンギヤの噛合いによる減速平歯車列と、ドライブピニオンギヤとリングギヤの噛合いによる減速平歯車列で減速し、ひいてはデファレンシャル装置を介して例えば後輪車軸に伝達して後輪を駆動する。
特開2007-32797
特許文献1に記載のモータ付デファレンシャル装置では、モータの小容量化を図りながら、大きな車軸駆動トルクを確保可能にするため、モータの出力を高減速比で減速してデファレンシャル装置に伝える必要がある。このため、モータとデファレンシャル装置との間に、カウンタドライブギヤとカウンタドリブンギヤの噛合いによる減速平歯車列と、ドライブピニオンギヤとリングギヤの噛合いによる減速平歯車列とからなる2段の減速歯車列を介装しており、モータ付デファレンシャル装置の全体サイズが大型、大重量になる。
そこで、本出願人は、モータ付デファレンシャル装置の小型、軽量を図るため、モータのモータケースに枢支されるロータ軸の中空部にピニオンギヤシャフトを挿入させて固定し、該ピニオンギヤシャフトのロータ軸から突出する先端にドライブピニオンギヤを設け、このドライブピニオンギヤにデファレンシャル装置のリングギヤを噛合いさせてなるものを提案している。モータの出力をドライブピニオンギヤとリングギヤの噛合いからなる唯1段で高減速比をなす減速歯車列を減速してデファレンシャル装置に伝えることができる。
ところが、上述の本出願人が提案しているモータ付デファレンシャル装置では、モータ単体での性能検査ができない。このため、モータの出荷性能検査はモータ付デファレンシャル装置の組立状態でしか実施できない。モータの性能不良があったときには、モータ付デファレンシャル装置の組みばらし(分解)が複雑で非常に手間がかかる。
本発明の課題は、モータのロータ軸に支持させたドライブピニオンギヤに、デファレンシャル装置のリングギヤを噛合いさせてなるモータ付デファレンシャル装置において、簡易にモータ単体で性能検査できるようにすることにある。
請求項1の発明は、モータのモータケースに枢支されるロータ軸の中空部にピニオンギヤシャフトを挿入させて固定し、該ピニオンギヤシャフトのロータ軸から突出する先端にドライブピニオンギヤを設け、デファレンシャル装置のデフキャリヤに枢支したデフケースにリングギヤを取着し、このリングギヤを上記ドライブピニオンギヤに噛合いさせてなるモータ付デファレンシャル装置であって、モータケースの一端側にデフキャリヤを一体物にして設けるように形成し、ピニオンギヤシャフト回転可能に組込んでなる軸受ユニットをモータケースの一端側に着脱可能にするとともに、該軸受ユニットから突出しているピニオンギヤシャフトの基端をロータ軸の中空部に挿入させてセレーション結合させ、更にデフケースに取着してあるリングギヤをピニオンギヤシャフトのドライブピニオンギヤに噛合いさせるとともに、該デフケースをデフキャリヤに枢支することにより、一体物をなすモータケースの一端側とデフキャリヤのそれぞれに、ピニオンギヤシャフトの軸受ユニットとデフケースのそれぞれを着脱可能に取付け、軸受ユニットに支持されているドライブピニオンギヤとデフケースに取着されているリングギヤを噛合いさせてなるようにしたものである。
請求項2の発明は、請求項1の発明において更に、前記モータケースと軸受ユニットの合面の間に介装されるシムの厚みを選択することにより、ドライブピニオンギヤとリングギヤの噛合い状態を調整するようにしたものである。
(請求項1)
(a)ピニオンギヤシャフトを組込んだ軸受ユニットをモータケースの一端側に着脱可能にするとともに、該軸受ユニットから突出しているピニオンギヤシャフトの基端をロータ軸の中空部に挿入させてセレーション結合させるものにした。従って、軸受ユニットを外したモータ単体で性能検査できる。
(b)モータケースの一端側にデフキャリヤを一体物にして設け、上述(a)の性能検査後のモータケースに軸受ユニットを取付け、更に該モータケースと一体物のデフキャリヤにデフケースを取付けることにより、モータ付デファレンシャル装置の構造及び組立が簡易になる。
(請求項2)
(c)ドライブピニオンギヤとリングギヤの噛合い状態を再調整するためのシムの変更も、モータケースに着脱される軸受ユニットと、該モータケースの合面の間で簡易に行なうことができる。
図1はモータ付デファレンシャル装置を示す断面図である。 図2は図1の分解図である。 図3は軸受ユニットを示す断面図である。
図1に示すモータ付デファレンシャル装置1は、モータ10(モータケース11)の一端側にデファレンシャル装置30を着脱可能に一体化したものである。本実施例のモータ付デファレンシャル装置1は、例えば、前輪駆動系の駆動源としてエンジン、後輪駆動系の駆動源としてモータ10を用いるハイブリッド自動車に適用される。即ち、モータ付デファレンシャル装置1は、車両に搭載され、車両のエンジンにより駆動される発電機又はバッテリからの給電によりモータ10を回転駆動し、モータ10の回転をデファレンシャル装置30により減速し、デファレンシャル装置30に接続されている左右の後輪車軸を駆動する。
モータ付デファレンシャル装置1は、モータ10のモータケース11と、モータケース11の一端側に設けられるデファレンシャル装置30のデフキャリヤ31と、モータケース11の他端側を塞ぐようにモータケース11にボルト接合されるモータカバー12と、デフキャリヤ31とともに後述するデフケース35を囲み支持するようにデフキャリヤ31にボルト接合されるデフカバー32を有する。モータ10の外郭をモータケース11とモータカバー12で形成し、デファレンシャル装置30の外郭をデフキャリヤ31とデフカバー32で形成する。本実施例において、モータケース11とデフキャリヤ31は一体物にして形成される。
モータ付デファレンシャル装置1は、モータ10のモータケース11に枢支されるロータ軸15の中空部にピニオンギヤシャフト20を挿入させて固定し、ピニオンギヤシャフト20のロータ軸15の一端から突出する先端にドライブピニオンギヤ21を設け、このドライブピニオンギヤ21にデファレンシャル装置30の後述するリングギヤ36を噛合いさせるものである。
モータ10は、モータケース11の一端側から延在されてモータ10の側とデファレンシャル装置30の側を仕切る仕切壁11Aの中心筒状部11Bと、モータカバー12の中心孔部のそれぞれに設けた軸受13、14に中空のロータ軸15を枢支し、ロータ軸15の外周に複数の永久磁石からなるロータ16を取着してある。モータ10は、モータケース11の内周に、ロータ16の外周を取り囲むコアのスロットにコイル部が組付けられたステータ17を固定してある。ロータ軸15の回転からロータ16の磁極位置を検出するためのレゾルバ18がモータカバー12に取着されている。これにより、モータ10は、ブラシレスモータを構成する。但し、モータ10はブラシモータ(ロータ16にコイル部を組付け、ステータ17を磁石からなるものとする)からなるものでも良い。
ピニオンギヤシャフト20は、図2、図3に示す如く、軸受ユニット20Aに回転可能に組込まれている。このとき、軸受ユニット20Aに組込まれるピニオンギヤシャフト20はストレート状シャフト部21Aの先端に膨出状ドライブピニオンギヤ21を一体状にして備え、ストレート状シャフト部21Aの外周に軸受22を挿着するとともに、ナット23を螺着し、ナット23により軸受22の内輪22Aをドライブピニオンギヤ21のギヤ外径に交差する端面に対して挟圧固定保持して構成される。軸受22の外輪22Bの先端側外周には取付フランジ22Fが設けられる。軸受ユニット20Aの軸受22の外輪22Bをモータケース11の一端側の仕切壁11Aの中心筒状部11Bの内周にデファレンシャル装置30に臨むこととなる側から着脱可能に嵌入し、軸受22の取付フランジ22Fを筒状部11Bのデファレンシャル装置30に臨むこととなる端面にボルト24で締結する。軸受ユニット20Aは、軸受22の外輪22Bをモータケース11の筒状部11Bの内周に嵌入したとき、該軸受ユニット20Aから突出しているピニオンギヤシャフト20の基端がロータ軸15の中空部に挿入されてセレーション結合される。ナット23はロータ軸15の一端側の端面に設けてある段差孔に納められる。
尚、軸受22は、本実施例では複列アンギュラころ(又は玉)軸受からなるものとされる。但し、軸受22は2個以上のアンギュラころ(又は玉)軸受を組合せた組合せアンギュラころ(又は玉)軸受からなるものでも良い。
モータケース11の筒状部11Bのデファレンシャル装置30に臨むこととなる端面と、軸受ユニット20Aの軸受22の取付フランジ22Fの合面の間にはシム25が介装される。シム25の厚みを選択することにより、ドライブピニオンギヤ21とリングギヤ36の噛合い状態を調整する。
デファレンシャル装置30は、デフキャリヤ31とデフカバー32の合面間の左右両側のそれぞれに設けた軸受33、34にデフケース35を枢支する。デファレンシャル装置30は、デフケース35の外周にボルト36Aにより取着してあるリングギヤ36を、モータ10のロータ軸15の中空部に固定してあるピニオンギヤシャフト20のドライブピニオンギヤ21に噛合いさせる。
尚、デフケース35内には、左右の後輪車軸につながる左右一対のサイドギヤ41A、41Bと、このサイドギヤ41A、41Bと噛合う前後一対のデフピニオン42A、42Bとが設けられている。サイドギヤ41A、41Bはデフケース35に枢支され、デフピニオン42A、42Bはデフケース35のピニオンシャフト孔35Aに嵌挿されたピニオンシャフト43に枢支されている。44はピニオンシャフト43をデフケース35に固定するための抜け止めピンである。
デファレンシャル装置30において、ドライブピニオンギヤ21とリングギヤ36はそれらの中心軸が食い違うハイポイドギヤからなるものとする。但し、ドライブピニオンギヤ21とリングギヤ36はそれらの中心軸が交差するベベルギヤ、フェイスギヤ等の直交ギヤからなるものでも良い。
しかるに、モータ付デファレンシャル装置1にあっては、モータ10のステータ17がロータ軸15の中心軸まわりに形成する内周凹部17Aに、ロータ軸15の一端に前述の如くに設けられる軸受ユニット20Aのドライブピニオンギヤ21を配置するとともに、ドライブピニオンギヤ21とリングギヤ36との噛合い部Kを配置する。
本実施例では、モータケース11の仕切壁11Aをモータ10のステータ17がロータ軸15の中心軸まわりに形成する内周凹部17Aに沿って椀状形成し、この椀状仕切壁11Aの凹部11Cに、ロータ軸15の一端に前述の如くに設けられる軸受ユニット20Aのドライブピニオンギヤ21を配置するとともに、ドライブピニオンギヤ21とリングギヤ36との噛合い部Kを配置する。
従って、モータ付デファレンシャル装置1によれば、以下の作用効果を奏する。
(a)ピニオンギヤシャフト20を組込んだ軸受ユニット20Aをモータケース11の一端側に着脱可能にするとともに、該軸受ユニット20Aから突出しているピニオンギヤシャフト20の基端をロータ軸15の中空部に挿入させてセレーション結合させるものにした。従って、軸受ユニット20Aを外したモータ単体で性能検査できる。
(b)モータケース11の一端側にデフキャリヤ31を一体物にして設け、上述(a)の性能検査後のモータケース11に軸受ユニット20Aを取付け、更に該モータケース11と一体物のデフキャリヤ31にデフケース35を取付けることにより、モータ付デファレンシャル装置の構造及び組立が簡易になる。
(c)ドライブピニオンギヤ21とリングギヤ36の噛合い状態を再調整するためのシム25の変更も、モータケース11に着脱される軸受ユニット20Aと、該モータケース11の合面の間で簡易に行なうことができる。
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、本発明のモータ付デファレンシャル装置1は、自動車の前輪駆動系に適用され、左右の前輪車軸をデファレンシャル装置30に接続するものでも良い。
本発明によれば、モータのロータ軸に支持させたドライブピニオンギヤに、デファレンシャル装置のリングギヤを噛合いさせてなるモータ付デファレンシャル装置において、簡易にモータ単体で性能検査できる。
1 モータ付デファレンシャル装置
10 モータ
11 モータケース
15 ロータ軸
20 ピニオンギヤシャフト
20A 軸受ユニット
21 ドライブピニオンギヤ
25 シム
30 デファレンシャル装置
31 デフキャリヤ
35 デフケース
36 リングギヤ

Claims (2)

  1. モータのモータケースに枢支されるロータ軸の中空部にピニオンギヤシャフトを挿入させて固定し、該ピニオンギヤシャフトのロータ軸から突出する先端にドライブピニオンギヤを設け、
    デファレンシャル装置のデフキャリヤに枢支したデフケースにリングギヤを取着し、このリングギヤを上記ドライブピニオンギヤに噛合いさせてなるモータ付デファレンシャル装置であって、
    モータケースの一端側にデフキャリヤを一体物にして設けるように形成し、
    ピニオンギヤシャフト回転可能に組込んでなる軸受ユニットをモータケースの一端側に着脱可能にするとともに、該軸受ユニットから突出しているピニオンギヤシャフトの基端をロータ軸の中空部に挿入させてセレーション結合させ
    更にデフケースに取着してあるリングギヤをピニオンギヤシャフトのドライブピニオンギヤに噛合いさせるとともに、該デフケースをデフキャリヤに枢支することにより、
    一体物をなすモータケースの一端側とデフキャリヤのそれぞれに、ピニオンギヤシャフトの軸受ユニットとデフケースのそれぞれを着脱可能に取付け、軸受ユニットに支持されているドライブピニオンギヤとデフケースに取着されているリングギヤを噛合いさせてなるモータ付デファレンシャル装置。
  2. 前記モータケースと軸受ユニットの合面の間に介装されるシムの厚みを選択することにより、ドライブピニオンギヤとリングギヤの噛合い状態を調整する請求項1に記載のモータ付デファレンシャル装置。
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