JP5377863B2 - エンジン始動用トルク伝達装置 - Google Patents
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Description
本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、クラッチの径方向外周にオイルシールを配置した構造において、エンジン回転中のロストルクを低減できるエンジン始動用トルク伝達装置を提供することにある。
本発明は、スタータが発生する駆動トルクをエンジンのクランク軸に伝達してエンジンを始動させるエンジン始動用トルク伝達装置であって、クランク軸に取り付けられる第1の回転体と、この第1の回転体に軸受を介して相対回転自在に支持され、且つ、スタータのピニオンギヤに常時噛み合うギヤ部を有する第2の回転体と、第1の回転体と第2の回転体との間に設けられ、第2の回転体がスタータに駆動されて回転する時に、第2の回転体から第1の回転体へトルクを伝達し、第1の回転体がエンジンに駆動されて回転する時に、第1の回転体から第2の回転体へのトルク伝達を遮断する一方向クラッチと、このクラッチの一端側に配置される第1のシール手段と、クラッチの他端側に配置される第2のシール手段とを備え、クラッチは、第1の回転体に設けられるアウタと、第2の回転体に設けられるインナと、アウタとインナとの間でトルクの伝達を断続する係合部材とを有し、第1のシール手段は、クラッチと軸方向にラップしてクラッチの径方向外周に配置され、ゴム製のリップ部がアウタの外周面に摺接するオイルシールであり、クラッチを含めてオイルシールと第2のシール手段との間に封入できる潤滑剤の封入スペースに対する潤滑剤の充填率が60%以下であることを特徴とする。
また、本願発明者は、エンジン回転中に生じる遠心力が潤滑剤に作用することでオイルシールの内圧が上昇し、その結果、オイルシールのリップ部がアウタの外周面に押圧されてロストルクが増大することを解明した。本願発明者の実験によれば、潤滑剤の充填率が60%を超えるとロストルクが次第に大きくなり、60%以下では比較的ロストルクが小さくなることが分かった。従って、潤滑剤の封入スペースに対する潤滑剤の充填率を60%以下に設定することによってロストルクを低減でき、燃費の向上に寄与できる。
請求項1に記載したエンジン始動用トルク伝達装置において、第1の回転体は、クランク軸に固定されるボス部を有し、このボス部とインナとが軸方向にラップして配置され、軸受は、ボス部の外周とインナの内周との間に配設され、第2のシール手段として機能するシール付きベアリングであることを特徴とする。
この構成によれば、軸受にシール付きベアリングを用いることにより、軸受と第2のシール手段とを兼ねることができるので、部品点数を低減でき、構造を簡素化できる。また、シール付きベアリングを、軸方向にラップするボス部とインナとの間に配設することにより、軸方向にコンパクトな構造を提供できる。
本実施例のトルク伝達装置1は、図1に示す様に、エンジンのクランク軸2に固定される第1の回転体3と、この第1の回転体3に軸受4を介して相対回転自在に支持される第2の回転体5と、第1の回転体3と第2の回転体5との間に設けられる一方向クラッチ6と、このクラッチ6に使用される潤滑剤(例えばグリース)の流出を防止するオイルシール7等より構成される。
第2の回転体5は、全周に歯部5aが形成されたリングギヤであり、このリングギヤにスタータ9(図2参照)のピニオンギヤ10が常時噛み合わされている。この第2の回転体5は、径方向の内周にクラッチ6のインナ6bが一体に設けられ、このインナ6bと第1の回転体3のボス部3aとが軸方向にラップして配置されている。言い換えると、ボス部3aの径方向外側に軸受4を介して第2の回転体5が配置されている。
なお、スタータ9の構造および作動は、極めて周知であり、説明を省略する。
クラッチ6は、第1の回転体3に圧入固定されるアウタ6aと、このアウタ6aの内径側に配置されて第2の回転体5に設けられるインナ6bと、アウタ6aとインナ6bとの間でトルクの伝達を断続する係合部材6c(例えば、カム、スプラグ、ローラ)等より構成される。
ところで、クラッチ6の一端側(外周側)に配置されるオイルシール7と、クラッチ6の他端側(内周側)に配置される軸受4(シール付きボールベアリング)とで密閉された空間、つまり、クラッチ6が配置されるシール空間(本発明に係る封入スペース)には、クラッチ6を潤滑するための潤滑剤が充填されるが、その潤滑剤の充填率は、シール空間の60%以下に設定されている。
a)エンジン始動時
スタータ9により第2の回転体5が駆動されて回転すると、クラッチ6が係合状態(係合部材6cを介してアウタ6aとインナ6bとが連結された状態)となり、第2の回転体5→クラッチ6→第1の回転体3→クランク軸2の順にトルクが伝達されてクランキングを開始する。
b)エンジン始動後
クランキングからエンジンが完爆してクランク軸2の回転が第1の回転体3に伝達され、その第1の回転体3の回転速度が第2の回転体5の回転速度を上回ると、クラッチ6が空転状態となって、第1の回転体3から第2の回転体5へのトルク伝達が遮断される。
本実施例では、第1のシール手段であるオイルシール7を、クラッチ6と軸方向にラップしてクラッチ6の径方向外周に配置しているので、クラッチ6の軸方向に隣接してオイルシール7を配置する構造と比較した場合に、軸方向にコンパクトなトルク伝達装置1を提供できる。
また、軸受4にシール付きボールベアリングを用いることにより、本発明に係る第2のシール手段を兼ねることができるので、部品点数を低減でき、構造を簡素化できる。さらに、軸方向にラップするボス部3aとインナ6bとの間に軸受4を配設することにより、軸方向にコンパクトな構造を提供できる。
そこで、シール空間に対する潤滑剤の充填率とロストルク比との関係を実験により求めた結果、図3に示す様に、潤滑剤の充填率が60%を超えるとロストルクが次第に大きくなり、60%以下では比較的ロストルクが小さくなることが分かった。この結果を受けて、本実施例では、シール空間に封入される潤滑剤の充填率を60%以下に設定している。これにより、オイルシール7の内圧の上昇を抑制できるので、エンジン回転中のロストルクを低減でき、燃費の向上に寄与できる。
2 クランク軸
3 第1の回転体
3a 第1の回転体のボス部
4 軸受(第2のシール手段)
5 第2の回転体
5a 第2の回転体の歯部
6 一方向クラッチ
6a アウタ
6b インナ
6c 係合部材
7 オイルシール(第1のシール手段)
7a オイルシールのリップ部
9 スタータ
10 ピニオンギヤ
Claims (2)
- スタータが発生する駆動トルクをエンジンのクランク軸に伝達して前記エンジンを始動させるエンジン始動用トルク伝達装置であって、
前記クランク軸に取り付けられる第1の回転体と、
この第1の回転体に軸受を介して相対回転自在に支持され、且つ、前記スタータのピニオンギヤに常時噛み合うギヤ部を有する第2の回転体と、
前記第1の回転体と前記第2の回転体との間に設けられ、前記第2の回転体が前記スタータに駆動されて回転する時に、前記第2の回転体から前記第1の回転体へトルクを伝達し、前記第1の回転体が前記エンジンに駆動されて回転する時に、前記第1の回転体から前記第2の回転体へのトルク伝達を遮断する一方向クラッチと、
このクラッチの一端側に配置される第1のシール手段と、
前記クラッチの他端側に配置される第2のシール手段とを備え、
前記クラッチは、前記第1の回転体に設けられるアウタと、前記第2の回転体に設けられるインナと、前記アウタと前記インナとの間でトルクの伝達を断続する係合部材とを有し、
前記第1のシール手段は、前記クラッチと軸方向にラップして前記クラッチの径方向外周に配置され、ゴム製のリップ部が前記アウタの外周面に摺接するオイルシールであり、 前記クラッチを含めて前記オイルシールと前記第2のシール手段との間に封入できる潤滑剤の封入スペースに対する潤滑剤の充填率が60%以下であることを特徴とするエンジン始動用トルク伝達装置。 - 請求項1に記載したエンジン始動用トルク伝達装置において、
前記第1の回転体は、前記クランク軸に固定されるボス部を有し、このボス部と前記インナとが軸方向にラップして配置され、
前記軸受は、前記ボス部の外周と前記インナの内周との間に配設され、前記第2のシール手段として機能するシール付きベアリングであることを特徴とするスタータ。
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