JP5377572B2 - 膠、その製法、製造装置および膠原料 - Google Patents
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Description
膠には、手作業でつくられる和膠と機械化された工場で洋膠が存在し、現在、日本において、和膠の流れを汲む棒状の膠や、顆粒状や板状の洋膠、洋膠を二次加工した膠、兎膠と記された輸入品等の膠製品が市販されている。
また、和膠の製法として、鉄製釜を用いて冬季に手作業で製造される従来方法が知られ(非特許文献1)、和膠および洋膠を含めた膠製品は、日本工業規格「にかわ及びゼラチン」JIS K6503-2001において、にかわの品質として粘度、ゼリー強度等の特性により1種から5種に分類される。
項1.抽出釜内に、膠原料に由来する油脂分および細かな皮繊維屑を除去可能な吸着材を配置したことを特徴とする膠の製法。
項2.該抽出釜が非鉄製であることを特徴とする項1に記載の膠の製法。
項3.該吸着材が麻袋であることを特徴とする項1または2に記載の膠の製法。
項4.膠をpH7付近に調整する工程を含むことを特徴とする項1〜3のいずれかに記載の膠の製法。
項5.膠原料が、鹿皮膠原料であることを特徴とする項1〜4のいずれかに記載の膠の製法。
項6.項1〜5のいずれかに記載の膠の製法により得られた膠製品。
項7.項1〜5のいずれかに記載の膠の製法に使用する製造装置であって、膠原料に由来する油脂分および細かな皮繊維屑を除去可能な吸着材を配置した抽出釜を有する製造装置。
項8.膠原料が、以下の工程:
a)塩蔵した動物皮を十分に水洗し、塩を除去し;
b)塩除去後の動物皮をフレッシングマシンに表裏交互に通すことにより、表皮の毛、皮内側の脂肪および肉片を取り除き;
c)フレッシングマシン処理した皮を水洗し;
d)水洗後の皮を2〜8分割し、天日で4日〜3週間乾燥させ;次いで、
e)乾燥した皮を裁断機で10cm〜30cmの大きさに切り分け、膠原料としての動物皮を得ること
により得られることを特徴とする項1〜5のいずれかに記載の膠の製法。
項9.項1〜5のいずれかに記載の膠の製法に使用する膠原料であって、項8に記載の工程a)〜e)により得られることを特徴とする該膠原料。
次に、膠液の抽出工程として、この脱水後の膠原料を鉄製抽出釜に入れ、給水し、膠液の液温を約70〜80℃に保ちつつ、約12時間加熱する。その後、さらに液温を約85〜95℃に上げて5時間前後、濃縮して、一次抽出液を得る。また、必要に応じて、一次抽出液が入った鉄製抽出釜に水を添加し、さらに、約90〜95℃で約6時間再加熱して二次抽出液を得てもよい。
その後、これらの抽出液を凝固用容器に入れて自然冷却して凝固させて膠液の凝固工程を行う。
最後に、裁断および乾燥工程として、これらの凝固した膠液を所望のサイズに裁断し乾燥させて、膠の最終製品が得られる。
これにより、本発明では、文化財保存修復に適した、これらの夾雑物や油脂分や鉄分の含有が低減された膠製品を簡便でかつ効率的に得ることができる。
また、抽出釜は、抽出釜外部の周囲および/または底部から通常の加熱冷却手段により、加熱および冷却し得る。
さらに、抽出釜内には、膠の抽出に際して、膠を含む膠液の温度を制御するための手段、例えば、電熱装置、水蒸気を通過させるための導管のごとき加熱手段、および/または電気冷却式装置、冷却水を通過させるための導管のごとき冷却手段を有してもよい。膠液の均一な加熱、および夾雑物の混入の回避という観点から、水蒸気および冷却水を通過させるための導管のごとき加熱冷却手段が好ましく、水蒸気を通過させるための導管を設けることがより好ましい。
また、抽出釜は、所望により、抽出釜の内側に網カゴのごとき容器、例えば、ステンレス製の網カゴ等を配置してもよく、さらに、網カゴ等の内側の底部および側面の全面またはその一部分を覆うように、吸着材を配置しても、あるいは布状の形態で吸着材を膠原料または膠液に分散させてもよい。
この網カゴ等の容器は、膠原料の抽出釜内への配置および抽出釜からの排出を容易にするために使用され、この目的に適する容器であれば特に限定されない。また、この容器について、油脂分や細かな皮繊維屑の吸着機能は意図されない。
吸着材は、膠製品の取出し等の製造操作の簡便さの観点から、抽出釜または網カゴや容器の内側の底部および側面を覆うような袋状の形態を有するものが好ましい。
また、これらの吸着材は、細かな皮繊維屑、組織片、ゴミ、屑等の夾雑物を除去できる吸着材と、油脂分等の他の物質を除去できる吸着材を組み合わせた複合吸着材を含み得る。吸着材には、特に、耐熱性および網目構造を有する、麻、木綿等の植物繊維質素材が好ましく、麻袋(ドンゴロス)がより好ましい。
使用する麻袋は、直径0.5mm〜8.0mm、好ましくは直径1.0mm〜5.0mm、より好ましくは、直径1.5mm〜3.0mmの麻糸を平織りして得られる麻布により作成される。麻糸の直径が0.5mm未満である麻袋の場合は、夾雑物の吸着および除去速度が低下するおそれがあり、8.0mmを超える場合には、麻糸間の間隙が大きくなり夾雑物の吸着および除去率が低下するおそれがあり、また、重量が大きくなるため、取り扱い難くなる。
また、麻布における麻糸間の間隙は、0.0mm〜5.0mm、好ましくは0.0mm〜2.0mmであり、0.0mm〜1.0mmであることがより好ましい。麻糸間の隙間が5.0mmを超える場合には、麻糸間の間隙が大きくなり夾雑物の吸着および除去率が低下するおそれがある。なお、本願の抽出工程において、これらの麻袋を抽出槽に取り付け、水分や膠抽出液を含んだ場合、麻糸自体や織目が締り、麻糸の直径や隙間が小さくなる傾向にある。
このアルカリ性水溶液、アルカリイオン水および木灰等の添加により得たアルカリ性の水の膠原料または膠液への添加は、加温前、後または加温中のいずれでも行うことができるが、作業効率の観点より、加温前と加温停止0〜2時間前において行うことが好ましい。
この膠製品は、前記の抽出釜での抽出において、アルカリ性水溶液、アルカリイオン水、または木灰等の添加により得たアルカリ性の水を利用することにより、pH7付近のpHを有し得る。
従来からの、特に、大正時代から現代までの膠の製造には、牛皮等の和膠の原料は、生皮に石灰をまぶし、水をかけ野積みし、アルカリで皮の脂肪をケン化、脱脂し、次いで、石灰を希硫酸で中和し水洗する方法で作られてきた。
しかしながら、前記のごとく、文化財保存修復に適した膠製品としては、原料作りから膠の製造に至る全工程において、水と皮のみで作られ、薬品や添加剤を一切使用しないことが望ましい。
そこで、本願の前記の膠の製法、膠製品および製造装置に適した、かかる膠原料を提供する。より詳しくは、この膠原料は下記の製法により得られる。
a)塩蔵した動物皮を十分に水洗し、塩を除去し;
b)塩除去後の動物皮をフレッシングマシンに表裏交互に通すことにより、表皮の毛、皮内側の脂肪および肉片を取り除き;
c)フレッシングマシン処理した皮を水洗し;
d)水洗後の皮を2〜8分割し、天日で4日〜3週間乾燥させ;次いで、
e)乾燥した皮を裁断機で10cm〜30cmの大きさに切り分け、膠原料としての動物皮を得る。
塩蔵とは、動物皮が保存または輸送中に腐らないように、岩塩等の食塩を直接的にふりかけたり、飽和食塩水に浸漬することにより、動物皮を塩漬けにすることをいう。
本願のフレッシングマシンは、皮の皮内側(裏側)に付着している肉片や脂肪を取り除くことができる裏打ち機をいう。フレッシングマシンは、脂肪、肉片等を取り除く機能を有する裏打ち機であれば、特に限定されず、市販品を含めていずれのものを用いてもよい。
また、前記の乾燥工程d)では、乾燥中に皮の表裏を返すなどして動物皮を均一に乾燥させることが好ましい。
このようにして得られた動物皮を本願の膠原料として用いることがより好ましい。
乾燥保存された牛皮膠原料50kgを10〜30センチに裁断し、水槽に入れ、約3時間水洗し、ゴミ等を除去した。その後、水槽内に牛皮膠原料を約48時間放置し、脱水した。次に、この脱水後の牛皮膠原料を前記のステンレス製抽出釜に入れ、水300Lを加え、液温を80〜85℃に保ちつつ、約12時間加熱した。麻袋を使用しない従来の方法で生じる液表面に浮かぶ油脂が見られなかった。次いで、加温を停止し約2時間静置し、ゴミや屑等を沈降させた後、膠液をシルクスクリーンを取り付けた濾機に汲み上げてさらに濾過して、油脂による濁りのない一次抽出液を得た。この一次抽出液を凝固用容器に入れて約3時間、自然冷却して凝固させて、裁断し乾燥させ、板状の牛皮膠製品9.1kgを得た。
上記製造例1において、一次抽出液として前記抽出釜に残った牛皮膠に水180Lを加えて、90℃で約15時間再加熱した。液表面に浮かぶ油脂は見られなかった。次いで、加温を停止し約2時間静置し、ゴミや屑等を沈降させた後、膠液をシルクスクリーンを取り付けた濾機に汲み上げてさらに濾過して、油脂による濁りのない二次抽出液としての牛皮膠製品6.3kgを得た。また、木灰、ワラ灰または石灰を水に添加して得たアルカリ性の水(約pH12〜13)の適当量を加温前、後または加温中に一次抽出液に添加して、膠製品がpH7付近となるように調整した。
乾燥保存された鹿皮膠原料17kgを10〜30センチに裁断し、水槽に入れ、約3時間水洗し、ゴミ等を除去した。その後、水槽内に鹿皮膠原料を約24時間放置し、脱水した。次に、この脱水後の鹿皮膠原料を前記のステンレス製抽出釜に入れ、水200Lを加え、液温を80〜85℃に保ちつつ、約12時間加熱した。麻袋を使用しない従来の方法で生じる液表面に浮かぶ油脂が見られなかった。次いで、加温を停止し約2時間静置し、ゴミや屑等を沈降させた後、膠液をシルクスクリーンを取り付けた濾機に汲み上げてさらに濾過して、油脂による濁りのない一次抽出液を得た。この一次抽出液を凝固用容器に入れて約3時間、自然冷却して凝固させて、裁断し乾燥させ、板状の鹿皮膠製品3.5kgを得た。
乾燥保存された牛皮膠原料50kgを製造例3と同様に裁断、水洗、脱水した。次に、この脱水後の牛皮膠原料を前記のステンレス製抽出釜に入れ、水300Lを加え、液温を80〜85℃に保ちつつ、約14時間加熱した。麻袋を使用しない従来の方法で生じる液表面に浮かぶ油脂が見られなかった。次いで、加温を停止し約2時間静置し、ゴミや屑等を沈降させた後、膠液をシルクスクリーンを取り付けた濾機に汲み上げてさらに濾過して、油脂による濁りのない一次抽出液を得た。この一次抽出液を凝固用容器に入れて約3時間、自然冷却して凝固させて、裁断し乾燥させ、板状の牛皮膠製品10.7kgを得た。また、木灰、ワラ灰または石灰を水に添加して得たアルカリ性の水(約pH12〜13)の適当量を加温前、後または加温中に、膠原料に添加して、膠製品がpH7付近となるように調整した。
上記製造例4において、一次抽出液として前記抽出釜に残った牛皮膠に水180Lを加えて、90〜95℃で約16時間再加熱した。液表面に浮かぶ油脂は見られなかった。次いで、加温を停止し約2時間静置し、ゴミや屑等を沈降させた後、膠液をシルクスクリーンを取り付けた濾機に汲み上げてさらに濾過して、油脂による濁りのない二次抽出液としての牛皮膠製品5.7kgを得た。また、製造例2と同様に、膠製品がpH7付近となるように調整した。
鰾膠(ニベ)の乾燥保存された浮袋膠原料20kgを約24時間水洗し塩抜きを行った後、脱水した。次に、この脱水後の浮袋膠原料を前記のステンレス製抽出釜に入れ、水200Lを加え、液温を80〜85℃に保ちつつ、約12時間加熱した。麻袋を使用しない従来の方法で生じる液表面に浮かぶ油脂が見られなかった。次いで、加温を停止し約2時間静置し、ゴミや屑等を沈降させた後、膠液をシルクスクリーンを取り付けた濾機に汲み上げてさらに濾過して、油脂による濁りのない一次抽出液を得た。この一次抽出液を凝固用容器に入れて約3時間、自然冷却して凝固させて、裁断し乾燥させ、板状の魚膠製品3.7kgを得た。また、製造例4と同様に、膠製品がpH7付近となるように調整した。
乾燥保存された牛皮膠原料50kgを製造例1と同様に裁断、水洗、脱水した。次に、この脱水後の牛皮膠原料を前記のステンレス製抽出釜に入れ、水300Lを加え、液温を80〜85℃に保ちつつ、約14時間加熱した。麻袋を使用しない従来の方法で生じる液表面に浮かぶ油脂が見られなかった。次いで、加温を停止し約2時間静置し、ゴミや屑等を沈降させた後、膠液をシルクスクリーンを取り付けた濾機に汲み上げてさらに濾過して、油脂による濁りのない一次抽出液を得た。この一次抽出液を凝固用容器に入れて約3時間、自然冷却して凝固させて、裁断し乾燥させ、板状の牛皮膠製品10.9kgを得た。また、製造例4と同様に、膠製品がpH7付近となるように調整した。
上記製造例7において、一次抽出液として前記抽出釜に残った牛皮膠に水200Lを加えて、90〜95℃で約15時間再加熱した。液表面に浮かぶ油脂は見られなかった。次いで、加温を停止し約2時間静置し、ゴミや屑等を沈降させた後、膠液をシルクスクリーンを取り付けた濾機に汲み上げてさらに濾過して、油脂による濁りのない二次抽出液としての牛皮膠製品5.5kgを得た。また、製造例2と同様に、膠製品がpH7付近となるように調整した。
乾燥保存された牛皮膠原料50kgを製造例1と同様に裁断、水洗、脱水した。次に、この脱水後の牛皮膠原料を前記のステンレス製抽出釜に入れ、水300Lを加え、液温を約95℃に保ちつつ、約12時間加熱した。麻袋を使用しない従来の方法で生じる液表面に浮かぶ油脂が見られなかった。次いで、加温を停止し約2時間静置し、ゴミや屑等を沈降させた後、膠液をシルクスクリーンを取り付けた濾機に汲み上げてさらに濾過して、油脂による濁りのない一次抽出液を得た。この一次抽出液を凝固用容器に入れて約3時間、自然冷却して凝固させて、裁断し乾燥させ、板状の牛皮膠製品10.2kgを得た。また、製造例4と同様に、膠製品がpH7付近となるように調整した。
上記製造例9において、一次抽出液として前記抽出釜に残った牛皮膠に水200Lを加えて、約95℃で約16時間再加熱した。液表面に浮かぶ油脂は見られなかった。次いで、加温を停止し約2時間静置し、ゴミや屑等を沈降させた後、膠液をシルクスクリーンを取り付けた濾機に汲み上げてさらに濾過して、油脂による濁りのない二次抽出液としての牛皮膠製品6.5kgを得た。また、製造例2と同様に、膠製品がpH7付近となるように調整した。
塩蔵した生牛皮3795kg(黒毛和牛メス165頭分)を12時間水漬けした後、1時間水洗樽にて十分に水洗し、生牛皮に存在する塩を除去した。この塩除去後の生牛皮をフレッシングマシン(阪下鉄工所社製、型番HS−1995)に表裏交互に各3回通すことにより、表皮の毛、皮内側の脂肪および肉片を取り除いた。そして、このフレッシングマシン処理した牛皮を、再度30分〜1時間水洗樽にて水洗し、皮に付着した毛や肉片などを除去した。水洗後の牛皮は2〜8分割した後、天日で3週間乾燥させ、乾燥した牛皮を裁断機で10cm〜30cmの大きさに切り分け、乾燥牛皮 743.1kgを得た。
得られた乾燥牛皮の全量を牛皮膠原料としてステンレス製抽出釜に入れ、製造例9と同様の方法により、一次抽出液から製造例11として牛皮膠241.6kgを得た。次に、製造例5と同様の方法により、前記抽出釜に残った一次抽出液を抽出および濾過した後の二次抽出液から、製造例12として牛皮膠151.7kgを得た。同様に、前記抽出釜に残った二次抽出液を抽出および濾過した後の三次抽出液から、製造例13として牛皮膠125.8kgを得た。なお、これらの牛皮膠のいずれも、pHは無調整とした。
塩蔵した生牛皮に代えて塩蔵した生鹿皮を用い、また、二次抽出液までの鹿皮膠を得た以外は、前記製造例11〜13と同様の方法により、鹿皮膠原料として乾燥鹿皮16.0kgを得た後、この乾燥鹿皮を用いて、一次抽出液から製造例14として鹿皮膠8.1kg、次いで、二次抽出液から製造例15として鹿皮膠1.5kgを得た。なお、これらの鹿皮膠のいずれも、pHは無調整とした。
日本工業規格「にかわ及びゼラチン」K6503-2001の試験法に準じて、製造例1〜10で得られた膠製品につき下記の特性を試験した。
恒温水槽にセットしたピペット型粘度計の下端を指で押さえながら、粘度計の中に膠製品の12.5%の溶液を入れ、内温を60℃に調整したのち、この検液を流下させ、液面が標線1と標線2の間を通過する時間を測定し、粘度に換算した。
前記の粘度測定に用いた、膠製品の12.5%の溶液を10℃で17時間冷却して調製したゼリーの表面を、2分の1インチ(12.7mm)径のプランジャーで4mm押し下げるのに必要な荷重をゼリー強度計(LFRA TEXTURE ANALYZER、Brookfield Engineering社製)により測定した。
膠製品の12%水分散液の35℃におけるpH値として、pH測定器(Cyberscan PH510型、Eutech Instruments社製)を用いて測定した。
実際の文化財保存修復作業において、これらの実施例および参考例の膠製品を、彩色の固着や木材の接着に用いて、その使用感につき3名のパネラーが下記の3段階の評価基準に基づき判定し、その平均を評価とした。
また、塩蔵した生牛皮または生鹿皮を用いて調製した乾燥牛皮または乾燥鹿皮を膠原料として用いた製造例(製造例11〜15)では、優れた測定および評価結果を有し、かつ薬品や添加剤を含有しないという観点から、文化財保存修復に特に好ましい膠製品が得られた。
なお、発明者らは、データは示さないが、本願発明の製法により得た膠製品中の油脂分が、麻袋を使用しない場合に比較して低減できたこと、ならびに本願の製造例において、ステンレス製抽出釜に代えて従来の鉄製抽出釜を用いて、本願の製造例と同様の操作をした場合、得られた膠製品が鉄錆により赤濁しているが、木材の接着に非常に適することを確認している。
2:ステンレス製網カゴ(上部、下部)
3:麻袋
4:ステンレス管
5:汲み取り口1
6:汲み取り口2
Claims (8)
- 抽出釜内に膠原料に由来する油脂分を除去可能な吸着材を配置したことを特徴とする膠の製法であって、
i)a)動物皮をフレッシングマシンに表裏交互に通すことにより、皮内側の脂肪および肉片を取り除くこと;および
b)皮を天日で乾燥させること
を含む石灰漬を含まない工程により膠原料を得、次いで
ii)前記膠原料を該吸着材と共に抽出釜内で抽出する
ことを含む該製法。 - 該抽出釜が非鉄製であることを特徴とする請求項1に記載の膠の製法。
- 該吸着材が麻布であることを特徴とする請求項1または2に記載の膠の製法。
- 膠をpH7付近に調整する工程を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の膠の製法。
- 膠原料が、鹿皮膠原料であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の膠の製法。
- 請求項1〜5のいずれか1記載の膠の製法により得られた膠製品。
- 請求項1〜5のいずれか1記載の膠の製法に使用する製造装置であって、膠原料に由来する油脂分および細かな皮繊維屑を除去可能な吸着材を配置した抽出釜を有する製造装置。
- 請求項1〜5のいずれか1記載の膠の製法に使用する膠原料であって、
a)動物皮をフレッシングマシンに表裏交互に通すことにより、皮内側の脂肪および肉片を取り除き;
b)フレッシングマシン処理した皮を水洗し;次いで
c)水洗後の皮を分割し、天日で乾燥させて、膠原料としての動物皮を得る
ことを含む、石灰漬を含まない工程により得られることを特徴とする該膠原料。
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