JP5374474B2 - 回転慣性力補助部材及びこれを備えた自転車の駆動輪 - Google Patents
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その後、フリーホイールが発明されたことで、このような不便は解消された。すなわち、フリーホイールは、駆動方向に限ってペダルの回転に連動して回転し、ペダルの回転力をハブに伝える一方で、ハブから伝えられた車輪回転力に対しては空転するので、惰性走行のときには、乗員はペダルを漕がなくてすむようになった。しかし、その一方で、ギアクランクは、それまでチェーンを介してではあるが後輪から直接付与されていた回転慣性力を得られなくなったため、ギアクランクの回転慣性力(ギアクランクが、自身を回転させ続けようとするエネルギー)の低下を招いてしまった。
そこで本発明は、ギアクランクの回転慣性力を間接的に補助することが可能な回転慣性力補助部材およびこれを備えた自転車の駆動輪を提供することで、フリーホイールが導入されたことにより生じたギアクランクの回転慣性力の不足分を補助することを目的とする。
さらに、回転慣性力補助部材は、フリーホイールの周面に突出して設けられるという簡素な構成であるため、導入費用が安価となる。
本体部15aは、内径が、車軸16の外径よりも若干大きく形成されており、円筒状の空間内に、ハブ11を貫通した車軸16が挿通されるようになっている。また、本体部15aの内部には、動力を一方向のみ伝え、もう一方向への回転は空転する、いわゆるラチェット機構(図示せず)が設けられている。
なお、図3に二点鎖線で示すのは、回転慣性力補助部材1を設けたフリーホイール15の重心位置である。
このようなクランクアーム21,21は、互いに180度周期の同位相で自転車B本体の駆動軸(図示せず)に一体的に軸着されるようになっている。
この駆動機構は、乗員がクランクアーム21,21に取り付けられたペダル23,23に踏力を入力すると、クランクアーム21,21によって、駆動方向(自転車Bを前進させる方向)の回転力に変換され、この駆動方向の回転力がスプロケット22からチェーン30を介してフリーホイール15のスプロケット15bに伝えられて、フリーホイール15が駆動方向に回転する。さらに、この駆動方向の回転力が、フリーホイール15から車軸16を介してハブ11に伝えられて、駆動輪10全体が駆動方向に回転するようになっている。
図2及び図3に示すように、回転慣性力補助部材1は、前記したフリーホイール15の周面から突出して設けられる円板状部材である。回転慣性力補助部材1は、ここでは、図3(b)に示すように、フリーホイール15の周面の一部を突出させてフリーホイール15と一体的に形成されている。また、回転慣性力補助部材1は、外周縁部が円弧状に形成されている。このようにすると、空気抵抗を少なくすることができる。
ここで、回転慣性力補助部材1は、フリーホイール15に設けられ、チェーン30を介してフリーホイール15に伝えられた駆動方向の回転力によって、フリーホイール15と共に回転してフリーホイール15の回転慣性力を増加させることによって、ギアクランク20の回転慣性力を間接的に補助するものである。このため、ギアクランク20自体の回転慣性力、フリーホイール15自体の回転慣性力、及び、ギアクランク20とフリーホイール15との関係に応じて、ギアクランク20の回転慣性力を補助するのに必要な回転慣性力が決定される。そして、その回転慣性力を得るために必要な回転慣性力補助部材1の寸法が求められる。
ここで、対象物αのモーメントMoαは、次の式(1)により求めることができる。
ここでは、乗員がペダル23を漕ぐのを止めたことにより、駆動方向への回転が停止する直前のギアクランク20に対し、駆動方向の回転慣性力を補助する場合を想定する。
なお、ギアクランク20の回転慣性力EGは、次の式(2)により求めることができる。
ギアクランク20の単位時間当たりの回転数ωを1と仮定すると、回転が停止する寸前のギアクランク20の回転数ωは、およそ1/3程度か、1/4程度まで減少すると考えられる。このように回転数ωの値が小さくなると、ω2の値はさらに小さくなる。従って、前記式(2)により、回転が停止する寸前のギアクランク20の回転慣性力EGは、走行時に得られるギアクランク20の回転慣性力EGの1/9〜1/16程度にまで低下することになる。
そして、チェーン30を介して直結するギアクランク20と回転慣性力補助部材1を設けたフリーホイール15との回転バランスを良好に保ちつつ、停止する直前のギアクランク20に、回転慣性力補助部材1を設けたフリーホイール15から駆動方向への回転慣性力を補助し、さらに、駆動輪10の回転慣性力を増加させるという副次的な効果を得るためには、回転慣性力補助部材1を設けたフリーホイールの回転慣性力EFが、ギアクランク20の回転慣性力EGと少なくとも同等程度あれば足りると考えられる。
図3(a)および(b)では、回転慣性力補助部材1における重心位置Gよりも内側の部分(以下、「内側部」という)に符号1aを付し、回転慣性力補助部材1を設けたフリーホイール15における重心位置Gよりも外側の部分(以下、「外側部」という)に符号1bを付している。
以上の前提に基づくと、図4に示す内側部1aについて次の式(3)の関係が成立する。
前記式(3)により、回転慣性力補助部材1の厚さtの値を求めると、厚さtは、およそ1.3cmとなる。
そして、式(4)により、回転慣性力補助部材1の回転中心から外周までの距離xの値を求めると、xは、約6.6cmとなる。また、回転慣性力補助部材1の直径Rは、約13.2cmとなる。
前記したように、停止する直前のギアクランク20に、フリーホイール15に設けた回転慣性力補助部材1から駆動方向への回転慣性力を補助するためには、回転慣性力補助部材1の回転慣性力ECが、ギアクランク20の回転慣性力EGと同等以上あればよい。したがって、回転慣性力補助部材1をこのような寸法とすると、回転慣性力補助部材1から、ギアクランク20に、十分な回転慣性力を補助することができるといえる。
ペダリングに直接影響を与えるのは、回転慣性力補助部材1のモーメントMoCである。前記式(1)により、ここでの回転慣性力補助部材1のモーメントMoCは、6000(g・cm)である。また、ペダル23の重心位置は、前記したように、クランクアーム21の本体取付部21aからペダル取付部21bまでの距離である16.5cmとなる。なお、ここでは、回転慣性力補助部材1のモーメントMoCを、ペダル23,23が静止している状態から、乗員がペダル23,23を漕ぎ出すときのペダリングの負荷の増加分に置き換えるため、単位時間当たりの回転数ωは考慮しない。また、片側のペダル23の質量の増加分をWPPとする。以上に基づき、回転慣性力補助部材1のモーメントMoCを、左右両側のペダル23,23の質量の増加分に置き換えると、次の式(6)のように表すことができる。
乗員によってギアクランク20のクランクアーム21,21に取り付けられたペダル23,23に踏力が入力されると、この踏力が、ギアクランク20によって駆動方向の回転力に変換される。そして、この駆動方向の回転力が、チェーン30を介してフリーホイール15及びフリーホイール15に設けた回転慣性力補助部材1に伝えられて、フリーホイール15及びフリーホイール15に設けた回転慣性力補助部材1が駆動方向に回転する。このようにして、回転慣性力補助部材1は、フリーホイールの駆動方向の回転慣性力を増加させることができる。そして、回転慣性力補助部材1によって増加したフリーホイール15の回転慣性力によって、チェーン30が駆動方向に引っ張られるため、ギアクランク20が駆動方向に回転しやすくなる。このようにして、回転慣性力補助部材1が増加させたフリーホイール15の回転慣性力を、チェーン30を介してギアクランク20に伝えることで、ギアクランク20に駆動方向の回転力を間接的に補助することができる。
またさらに、回転慣性力補助部材1を、ここでは、フリーホイール15の周面の一部を突出させて設けているので、フリーホイール15の製造工程で、回転慣性力補助部材1をフリーホイール15に一体成形することができる。このため、製造工程が簡素化され、回転慣性力補助部材1の導入費用が安価となる。
以下、26インチの自転車のフリーホイール15に回転慣性力補助部材1を設けた場合に、駆動輪10の回転慣性力がどの程度増加するかについて、具体的に説明する。
まず、フリーホイール15に回転慣性力補助部材1を設けない場合における、駆動輪10の回転慣性力は、次の式(9)により求めることができる。
そして、駆動輪の回転慣性力E26に占める回転慣性力補助部材1の回転慣性力ECの割合は、次の式(11)により求めることができる。
例えば、前記した実施形態では、回転慣性力補助部材1を、フリーホイール15の周面に一体成形することとしたが、これに限られず、フリーホイール15と別体としてもよい。この場合、回転慣性力補助部材1を、内径が、フリーホイール15の外径と略同等か若干大きく、外径が、本実施形態と同様の寸法のリング状部材とするとよい。またこの場合、その他の寸法(厚さや質量等)は、本実施形態で説明した回転慣性力補助部材1と同様に設定することができる。これによれば、既存の自転車のフリーホイールに、回転慣性力補助部材1を後から嵌め込むだけで、既存の自転車のギアクランクの回転慣性力を補助することができる。また、既存の自転車の構成要素を変更すること必要がないため、回転慣性力補助部材1を、既存の自転車により導入しやすくなる。
10 駆動輪
11 ハブ
12 リム
13 タイヤ
14 スポーク
15 フリーホイール
15a 本体部
15b スプロケット
16 車軸
20 ギアクランク
21 クランクアーム
21a 本体取付部
21b ペダル取付部
22 スプロケット
23 ペダル
30 チェーン
Claims (5)
- ペダルがそれぞれ取り付けられ、前記ペダルに入力された踏力によって駆動方向に回転する一対のクランクアームと、この一対のクランクアームと連動するスプロケットと、を有するギアクランクと、自転車の駆動輪のハブと直結し、駆動方向の回転力のみを前記ハブに伝えるフリーホイールと、前記フリーホイールのスプロケットと前記ギアクランクの前記スプロケットとの間に掛け回され、前記ギアクランクで発生した前記駆動方向の回転力を前記フリーホイールに伝える無端のチェーンと、を少なくとも有する前記駆動輪の駆動機構における前記フリーホイールの周面に突出して設けられ、前記駆動方向の回転力により前記フリーホイールと共に駆動方向に回転して、前記フリーホイールの回転慣性力を増加させることにより、当該フリーホイールと前記チェーンを介して連結された前記ギアクランクの回転慣性力を間接的に補助することを特徴とする回転慣性力補助部材。
- 前記回転慣性力補助部材は、
その設けられる位置が前記駆動輪の半径方向における重心位置よりもハブ寄りであることを特徴とする請求項1に記載の回転慣性力補助部材。 - 前記回転慣性力補助部材は、
リング状部材として構成され、前記フリーホイールに嵌合固定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転慣性力補助部材。 - 前記回転慣性力補助部材は、
前記フリーホイールと一体成形され、当該フリーホイールの周面から突出して設けられる円板状部材であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転慣性力補助部材。 - 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の回転慣性力補助部材を備えたことを特徴とする自転車の駆動輪。
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