JP5374131B2 - メソポーラスシリカ粒子粉体の製造方法 - Google Patents

メソポーラスシリカ粒子粉体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、粗粒の少ないメソポーラスシリカ粒子粉体の製造方法に関する。
メソポーラスシリカは、孔径1〜50nm程度(メソポア領域)に均一な細孔径を有し、大きな表面積を有するため、触媒担体、酵素や機能性有機化合物等の固定化担体等としての幅広い分野での利用が期待されている。このメソポーラスシリカは、一般にメソ細孔形成のためにテンプレート(鋳型)を用いて溶媒中で合成されるが、テンプレート除去のための焼成等の段階で凝集し、粗粒が発生するという問題がある。また、焼成後、メソポーラスシリカ粒子の一部ないし全部が塊状体を形成するという問題がある。
一般にこれらの塊状体を崩すことは難しくはなく、場合によっては指先等で擦り合わせる程度でも粉末化することができ、また乳鉢を用いて粉体化することも可能である。しかしながら、塊状体の粉砕後でも、μm単位の凝集体が存在し、一次粒子にまで粉砕することは困難である。
メソポーラスシリカの粒子径の調整法としては、ボールミルやアトライタ等を用いる汎用的な湿式粉砕法や、ジェットミル等を用いる乾式粉砕法等が知られている。
特許文献1には、溶媒中で合成されたメソポーラスシリカとテンプレートの複合体を湿式粉砕した後、そのテンプレートを除去することによるメソポーラスシリカの製造方法が開示されている。しかしながら、テンプレートを用いて合成されたメソポーラスシリカは、一般のシリカゲルに比べ細孔壁の厚みが薄いため、湿式粉砕法では、ナノ細孔構造が一部崩壊してしまい、X解回折強度や比表面積が低下してしまう。また、メソポーラスシリカを粉末として利用しようとする場合、湿式粉砕時に凝集粒子径を制御できても、溶媒除去の段階で凝集粒子径が変化してしまうという問題がある。
一方、特許文献2には、メソポーラスシリカの細孔内にテンプレート(界面活性剤)を含むナノ構造体の前駆体溶液を形成した後、該前駆体溶液中の溶媒を減圧発泡により揮発除去してメソポーラスシリカからなるゲルを得て、そのゲルをジェットミルで粉砕処理した後、焼成する吸着フィルタの製造方法が開示されている。ジェットミルは強い衝撃力を有するため、粉砕処理中にナノ細孔構造が崩壊するのを防ぐためにテンプレートを残した状態で粉砕処理するが、その後のテンプレート除去のための焼成工程で、メソポーラスシリカが凝集し、粗粒が発生するという問題がある。
特開2004−231432公報 特開2008−126090公報
本発明は、メソポーラスシリカ粒子の一次粒子構造を変えずに、粗粒が少なく、平均粒径の均一なメソポーラスシリカ粒子粉体を製造する方法を提供することを課題とする。
メソポーラスシリカの製造工程においては、テンプレートを除去するために焼成等の処理を行うが、この際に一次粒子が凝集して、粗粒(凝集体)が生じる。ここで、本発明者らは、テンプレートを除去した後、凝集体を含むメソポーラスシリカ粉体を、回転粉砕機を用いて乾式粉砕することによって、メソポーラスシリカのナノ細孔構造を崩壊せずに、すなわち、メソポーラスシリカ粒子の一次粒子構造(メソ細孔構造と一次粒子径)を変えずに、凝集体を解砕して、平均粒径の均一なメソポーラスシリカ粒子粉体を製造できることを見出した。
すなわち、本発明は、凝集体を含むメソポーラスシリカ粉体を、消費電力量がメソポーラスシリカ粉体1kg当たり0.01〜30kWhの条件下で、回転粉砕機を用いて乾式粉砕する、凝集体が低減されたメソポーラスシリカ粒子粉体の製造方法を提供する。
本発明によれば、メソポーラスシリカ粒子の一次粒子構造を変えずに、粗粒が少なく、平均粒径の均一なメソポーラスシリカ粒子粉体を製造する方法を提供することができる。
本発明の凝集体が低減されたメソポーラスシリカ粒子粉体の製造方法は、凝集体を含むメソポーラスシリカ粉体を、消費電力量がメソポーラスシリカ粉体1kg当たり0.01〜30kWhの条件下で、回転粉砕機を用いて乾式粉砕することを特徴とする。
本発明の製造方法において、原料となる凝集体を含むメソポーラスシリカ粉体(以下、「原料粉体」又は「原料粒子粉体」ともいう)については、特に制限はないが、以下の物性を有するものが好ましい。
本発明に用いる原料粒子粉体の平均一次粒子径は、用途、内包物等の種類により適宜調整しうるが、数平均粒子径として、好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.05〜5μm、更に好ましくは0.2〜2μmのものが挙げられる。
更に原料粒子粉体は、一次粒子径が揃っているものを用いることがよく、好ましくは一次粒子全体の好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上が平均一次粒子径±30%以内の一次粒子径を有するものが用いられる。
本発明では、凝集体を含む原料粒子粉体を一次粒子にまで粉砕することを目的とするが、その平均凝集粒子径は、体積平均粒子径であり、好ましくは1〜200μm、より好ましくは1〜100μmである。粉砕工程上、原料粒子粉体は1000μm以下のものを用いることが好ましく、それ以上の粒子径を有する場合は、予め篩い分けするか、所定の大きさ以下に前粉砕処理したものを用いることが好ましい。ここで、粗粒(凝集体)とは、粒子径が2μm以上であるものを意味する。
本発明では、原料粒子粉体を形成しているメソポーラスシリカの平均細孔径が、好ましくは1〜10nm、更には1〜5nm、特には1〜2nmであるメソポーラスシリカを用いることが好ましい。またそのメソ細孔径は、その70質量%以上、更には75質量%以上、特には80質量%以上が、平均細孔径の±30%以内に入るものを用いることにより、粉砕に対する強度への寄与が考えられることから好ましい。このような、メソポーラスシリカ粒子は、原料粒子粉体の状態であってもBET比表面積が500〜1500m2/gであり、比表面積が大きい粒子である。
原料粒子粉体の細孔径を調整するためには、メソポーラスシリカ粒子の合成時に、メソ細孔のテンプレートとして働く界面活性剤(例えば、後述する第四級アンモニウム塩(b)等)のアルキル鎖長、水溶性高分子化合物の親水性と親油性の比率等を適宜調整することにより行うことができる。特に平均細孔径が約5nm以上の原料粒子粉体を調製するためには、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドのブロック重合からなる非イオン性高分子化合物を用いることが好ましく、平均細孔径が8nm以下の原料粒子粉体を得るためには、第四級アンモニウム塩型界面活性剤を用いることが好ましい。本発明では前記したような、一次粒子の粒子径分布や細孔径分布の揃ったものを得るために、第四級アンモニウム塩型界面活性剤をテンプレートとして用いることが好ましい。
また、本発明に用いる乾式粉砕前の原料粒子粉体は、レーザー回折・散乱法によって得られる原料粒子粉体の粒子径分布において、凝集体を含むメソポーラスシリカ粉体中の粒子径2〜1000μmの範囲の粉体(1)と、粒子径0.1〜1000μmの範囲の粉体(2)との質量比〔粉体(1)/粉体(2)〕が0.05〜1であることが好ましい。
本発明においては、乾式粉砕する観点から、原料粉体の水分及び/又は有機溶剤量は、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下、特に好ましくは25重量%以下である。メソポーラスシリカは吸湿しやすく、水分を多く含む場合でも、粉末的な性状を示すものが多い。
また、メソポーラスシリカ粒子の性能発現の観点から、メソ細孔内のテンプレートが除去された原料粉体が好ましい。メソ細孔内のテンプレートを除去する方法として、焼成や溶媒抽出法等の常法が利用できるが、メソ細孔内のテンプレート除去効率や水分及び/又は有機溶剤量低減の観点から、焼成法によりメソ細孔内のテンプレートが除去された原料粉体が好ましい。テンプレート除去法により、微量のテンプレートがメソ細孔内に残存する場合もあるが、原料粉体中に残存するテンプレート量としては、シリカ重量に対する比率として、10質量%以下、更には5質量%以下、特には実質的に0質量%であっても一次粒子に影響することなく粉砕することができる。テンプレートを除去することでメソポーラスシリカ粒子の強度は低下し、また焼成により凝集しやすくなる。しかしながら、本発明の方法によると、テンプレートを除去した後のメソポーラスシリカの凝集体、特には中空メソポーラスシリカ粒子のような内部に空洞を有する凝集体であっても、一次粒子の形状に影響せずに粉砕することができる。
原料粒子粉体の一次粒子形状は、特に制限されないが、一次粒子構造保持の観点から、一次粒子同士が点接触する形状が好ましく、球状で、強度が大きく崩壊しにくいものがより好ましい。例えば、外殻がメソ細孔構造を持ち内部が中空の球状粒子である中空メソポーラスシリカ粒子(A−1)(以下、「中空シリカ粒子(A−1)」ともいう)や、内部が中空ではない粒子、特には球状粒子であって、その中心部から放射状にメソ細孔が配列している球状粒子である中実メソポーラスシリカ粒子(A−2)(以下、「中実シリカ粒子(A−2)」ともいう)が挙げられる。これらの中では、機能性物質を内包し、保持することができる点から、中空シリカ粒子(A−1)がより好ましい。
一次粒子形状が中空の場合、最終的に得られる中空シリカ粒子の殻が厚い方が粉砕に対して影響が少ないが、一方で担体として殻が薄い方が好ましく、中空部の平均直径(平均容積)は、内包物を多く保持する観点から大きい方が好ましい。これらの観点から、その外殻厚みは、好ましくは10〜500nm、より好ましくは20〜400nm、更に好ましくは100〜300nmであり、中空部径は、好ましくは10〜800nm、より好ましくは100〜400nmである。また、〔外殻部の平均厚み/中空シリカ粒子の平均一次粒子径〕の比は、通常0.001〜0.4、好ましくは0.01〜0.3、より好ましくは0.1〜0.3である。
なお、原料粒子粉体の平均一次粒子径、平均凝集粒子径、中空部径、平均細孔径、比表面積、水分及び/又は有機溶剤量、テンプレート量は、実施例記載の方法により測定することができる。
[中空シリカ粒子(A−1)]
中空シリカ粒子(A−1)の製造方法に特に制限はないが、特開2008−110905号公報、特開2008−150229号公報、及び特開2008−174435号公報に記載の方法により容易に製造することができる。
簡易に説明すると、中空シリカ粒子(A−1)の場合、第四級アンモニウム型界面活性剤やエチレンオキシド−プロピレンオキシドブロック重合体等(以下、「界面活性剤等」ともいう)が溶解している水溶液中で、有機性ポリマー又は疎水性有機物質の粒子ないし液滴を分散させ、そこにアルコキシシラン等の加水分解を受けてシラノールを生成するシラン源を添加する。その際、該界面活性剤等は、有機性ポリマー又は疎水性有機物質の固体粒子表面ないし液滴表面で、垂直に整然した状態で棒状ミセルを成長させる。棒状ミセルの成長と共に、加水分解され生成したシラノール化合物が棒状ミセル表面で反応し、シリカマトリックスが形成される。その結果、内部に有機性ポリマー又は疎水性有機物質の粒子ないし液滴由来のコア物質を有し、外殻にシリカと該界面活性剤等を有する、複合シリカ粒子が得られる。複合シリカ粒子は、外殻のシリカマトリックス中にコアから放射線状に伸びた界面活性剤等を棒状ミセルとして有していることから、これら界面活性剤等を除去することで、複合シリカ粒子の表面からコア又は中空まで連通した規則的なメソ孔群が現れることになる。換言すると、界面活性剤等はメソ孔のテンプレートとして働いていることになる。複合シリカ粒子からコア粒子及びテンプレートの界面活性剤を除去するために焼成を行うことで、中空メソポーラスシリカ粒子を得ることができる。既に説明したが、本発明ではこの焼成の際に生じるメソポーラスシリカ粒子の凝集の問題を解決するものであり、これは後述する中実シリカ粒子(A−2)においても同様である。
[中実シリカ粒子(A−2)]
中実シリカ粒子(A−2)の製造方法に特に制限はない。例えば、加水分解によりシラノール化合物を生成するテトラメチルシランやテトラエトキシシラン等のアルコキシシラン等のシリカ源を、メソ孔のテンプレートとして働く陽イオン界面活性剤又はエチレンオキシド−プロピレンオキシドブロック重合体等の共存下で、水溶液中で反応させることにより製造することができる。なお、先の中空シリカ粒子(A−1)と比べて、中実シリカ粒子(A−2)にはコアとなる物質を含有しないが、界面活性剤等とシラン源ないしシラノール化合物とが自ら液滴となり放射状にミセル成長することで、中実の複合シリカ粒子を得ることができ、それを焼成することで中実シリカ粒子(A−2)を得ることができる。
前記方法により得られる中空シリカ粒子(A−1)の外殻部又は中実シリカ粒子(A−2)の主成分は、シリカで構成されている。シリカの含有量は、SiO2重量換算で好ましくは50〜100重量%、より好ましくは70〜100重量%である。かかるシリカ粒子は、Al、Ti、V、Cr、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、B、Mn、Fe等の他元素を担持した形態、又はシリカの一部が他元素で置換された形態であってもよい。これら元素を導入する場合はそれらの金属を含有するアルコキシ塩やハロゲン化塩等の金属原料を製造時又は製造後に添加すればよい。また、前記方法により得られるメソポーラスシリカ粒子粉体は、Si及び/又は他の金属元素と共有結合している有機基を含むものでもよい。これら有機基を導入する場合は、例えば、有機基を持つ有機シランをシリカ骨格形成時及び/又は形成後に反応させればよい。
[メソポーラスシリカ粒子粉体の製造]
本発明の凝集体が少なく平均粒径の均一なメソポーラスシリカ粒子粉体は、凝集体を含む前記のメソポーラスシリカ粉体(中空シリカ粒子(A−1)及び/又は中実シリカ粒子(A−2)の粉体)を、回転粉砕機を用いて乾式粉砕することにより得ることができる。
乾式粉砕処理は回転粉砕機を用いて行うが、その他の条件は特に限定されない。
(回転粉砕機)
乾式粉砕に用いられる回転粉砕機は、好ましくは高速回転粉砕機であり、例えば、ハンマーミル、アトマイザー、ケージミル、ディスインテグレータ、スクリーンミル、ピンミル、分析粉砕機(日本理化学器械株式会社製)、ロータースピードミル(FRITSCH社製)等が挙げられる。これらの中では、分析粉砕機、ロータースピードミルが好ましく、より具体的には、粉砕機の内壁面が篩い状になっている分級機内蔵型粉砕機であるロータースピードミルがより好ましい。篩いの目の大きさは、後述するように一次粒子の粒子径と比べて数倍大きく、一部の凝集体の粒子径よりも大きいが、この粉砕機を用いると、驚くべきことに一次粒子に粉砕された粒子を効果的に得ることができる。
凝集体を効率的に解砕する観点から、回転粉砕機の回転数は、好ましくは1000〜20000rpm、より好ましくは5000〜20000rpm、更に好ましくは10000〜20000rpmであり、線速度は、好ましくは10〜100m/s、より好ましくは30〜100m/sである。
また、回転粉砕機の消費電力量は、凝集体を効率的に解砕する観点から、メソポーラスシリカ粉体1kg当たり0.01〜30kWh、好ましくは0.1〜10kWh、より好ましくは0.5〜1kWhである。
回転粉砕機の内壁と回転翼のクリアランスは、回転粉砕機の構造にもよるが、通常0.1〜10mm、好ましくは0.2〜5mm、より好ましくは0.5〜2mmである。
(分級)
本発明においては、乾式粉砕中又は乾式粉砕後に乾式分級を行うことが好ましい。分級の形式に特に制限はないが、好ましくは乾式分級、より好ましくは乾式ふるい分級である。ふるい目の開きは、好ましくは0.1〜2mm、より好ましくは0.2〜1mmである。
分級機としては、前記の回転粉砕機の内壁にふるい目を有するものが好ましい。
凝集体を含むメソポーラスシリカ粉体は、回転粉砕機中で高速で回転する回転翼(スピニングバー)と、内壁とのクリアランスと、ふるい目によって、衝撃を受ける。その結果、ふるい目がメソポーラスシリカ粉体の一次粒子径よりも大きいにもかかわらず、該メソポーラスシリカ粉体を一次粒子径まで粉砕することができ、かつ一次粒子径より小さい粒子にまで粉砕することが殆どない。こうして、衝撃粉砕され、分級された該メソポーラスシリカ粉体は、微粒子のみを通過させる分級機構を経由して排出される。
上記のようにして得られたメソポーラスシリカ粒子粉体は、メソポーラスシリカ粒子の一次粒子構造(メソ細孔構造と一次粒子径)が変わらず、凝集体のみが解砕されて、平均粒径の均一なメソポーラスシリカ粒子となっている。
従って、本発明の粉砕処理を行った後は、凝集体が低減するため、レーザー回折・散乱法によって得られるメソポーラスシリカ粒子粉体の粒子径分布において、乾式粉砕後のメソポーラスシリカ粉体中の粒子径2〜1000μmの範囲の粉体(1)と、粒子径0.1〜1000μmの範囲の粉体(2)との質量比〔粉体(1)/粉体(2)〕は、前記の粉砕前の質量比よりも小さくなり、その比率は0〜0.2であり、特には0〜0.1のものを得ることができる。
乾式粉砕して得られるメソポーラスシリカ粒子の粗粒を含む平均凝集粒子径は、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.1〜1μmであり、粗粒(凝集体)の割合は、好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜10質量%、特に好ましくは実質的に平均一次粒子径と同じである。
なお上記のようにして得られた粉砕後のメソポーラスシリカ粒子粉体の平均一次粒子径及びその粒子径分布、平均細孔径及びその細孔径分布、並びに中空メソポーラスシリカ粒子の場合の殻の厚さ、及び[外殻部の平均厚み/中空シリカ粒子の平均一次粒子径]の比率は、それぞれ粉砕前のメソポーラスシリカ原料粒子粉末を形成している一次粒子と同じものとなる。
実施例及び比較例で得られたメソポーラスシリカ粒子の各種測定は、以下の方法により行った。
(1)粉末X線回折(XRD)パターンの測定
粉末X線回折装置(理学電機工業株式会社製、商品名:RINT2500VPC)を用いて、X線源:Cu-kα、管電圧:40mA、管電流:40kV、サンプリング幅:0.02°、発散スリット:1/2°、発散スリット縦:1.2mm、散乱スリット:1/2°、及び受光スリット:0.15mmの条件で粉末X線回折測定を行った。走査範囲を回折角(2θ)1〜20°、走査速度を4.0°/分とした連続スキャン法を用いた。なお、測定は、粉砕した試料をアルミニウム板に詰めて行った。
(2)粒子形状の観察
電解放射型高分解能走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所社製、商品名:FE−SEM S−4000)を用いて粒子形状のSEM観察を行った。
(3)平均一次粒子径、平均中空部径、及び平均外殻部厚みの測定
透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子株式会社製、商品名:JEM−2100)を用いて加速電圧160kVで粒子の観察を行った。20〜30個の粒子が含まれる5視野中の全粒子の直径、中空部径、及び外殻部厚みを写真上で実測し、平均一次粒子径、平均中空部径、及び平均外殻部厚みを求めた。なお、観察は、高分解能用カーボン支持膜付きCuメッシュ(応研商事株式会社製、200−Aメッシュ)に付着させ、余分な試料をブローで除去したものを用いて行った。
(4)平均凝集粒子径の測定
レーザー散乱粒度分布計(株式会社堀場製作所社製、商品名:LA−920)を用いて、相対屈折率1.06、超音波強度7、超音波照射時間1分、循環速度4、分散媒をエタノールとした条件で室温にて測定し、体積基準換算のメジアン径を平均凝集粒子径とした。2μm以上の粒子の割合を粗粒割合とした。
(5)BET比表面積、及び平均細孔径の測定
比表面積・細孔分布測定装置(株式会社島津製作所製、商品名:ASAP2020)を用いて、液体窒素を用いた多点法でBET比表面積を測定し、パラメータCが正になる範囲で値を導出した。BET比表面積の導出にはBJH法を採用し、そのピークトップを平均細孔径とした。試料には250℃で5時間の前処理を施した。
(6)水分及び/又は有機溶媒量、テンプレート量の定量
差動型示差熱天秤(TG−DTA)〔理学電機工業株式会社製、商品名:Thermo plus TG8120〕を用いて、エアーフロー(300mL/min)下、室温から700℃まで10℃/分の速度で昇温した。
ここで、700℃で残存した質量をシリカ(SiO2)量とし、25〜150℃での減量分を水分及び/又は有機溶剤量とした。また、250〜400℃においてテンプレートの燃焼由来の発熱ピークが見られるので、そこでの減量分をテンプレート量とし、発熱ピークが無い場合は0とした。
(7)粉砕機の消費電力量の測定
ワットチェッカー(株式会社計測技術研究所製、商品名:2000MS1)を用いて、粉砕機の消費電力(W)を測定し、粉砕量、時間からメソポーラスシリカ粉体1kgあたりの消費電力量(kWh/kg)を求めた。
製造例1(中空メソポーラスシリカ粒子粉体の製造)
(1)中空メソポーラスシリカ粒子粉体の製造
2L−セパラフルフラスコに、イオン交換水600部、メタクリル酸メチル99.5部、塩化メタクロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム0.5部を入れ、内温70℃まで昇温させた。次いで、これに、水溶性重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(和光純薬株式会社製、商品名:V−50)0.5部をイオン交換水5部に溶かした溶液を添加し、3時間加熱撹拌を行った。
その後、さらに75℃で3時間加熱撹拌を行って冷却した後、得られた混合液から凝集物を200メッシュろ過(目開き約75μm)し、カチオン性ポリマー粒子の懸濁液(固形分(有効分)含有量14質量%、平均一次粒子径360nm)を得た。
次に、10Lフラスコに、水6kg、メタノール2kg、1M水酸化ナトリウム水溶液45g、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド35g、及び上記で得られたカチオン性ポリマー粒子の懸濁液33gを入れて撹拌し、その水溶液に、テトラメトキシシラン34gをゆっくりと加え、5時間撹拌した後、12時間熟成させた。
次いで、得られた白色沈殿物を、孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過した後、10Lの水で洗浄し、100℃の温度条件で5時間乾燥した。
得られた乾燥粉末を、焼成炉(株式会社モトヤマ製、商品名:スーパーバーン)を用いて、エアーフロー(3L/min)しながら1℃/分の速度で600℃まで昇温し、600℃で2時間焼成することにより有機成分を除去することにより、中空メソポーラスシリカ粒子粉体を得た。
(2)中空メソポーラスシリカ粒子粉体の物性
この中空メソポーラスシリカ粒子粉体について、粉末X線回折(XRD)のパターンにおける、d=3.0nmの非常に強いXRDピーク、d=1.7nm及びd=1.5nmの弱いXRDピークにより、この中空メソポーラスシリカ粒子のメソ細孔がヘキサゴナル配列を有することを確認した。また、SEM観察により、この中空メソポーラスシリカ粒子の粒子形状が球状であることを確認した。
さらに、TEM観察より、この中空メソポーラスシリカ粒子が中空構造を有し、平均一次粒子径が680nm、平均中空部径が360nm、平均外殻部厚みが160nmであり、外殻部がヘキサゴナル配列を示す均一なメソ細孔を有し、そのメソ細孔が粒子中心から外殻部の外側に向かって放射状に貫通していることを確認した。
また、この中空メソポーラスシリカ粒子粉体は、BET比表面積が1300m2/g、平均細孔径が1.6nm、平均凝集粒子径が83μm、粗粒割合が83%であった。
この中空メソポーラスシリカ粒子粉体の水分及び/又は有機溶剤量は24%、シリカ重量に対するテンプレート量は0%であった。
製造例2(球状メソポーラスシリカ粒子粉体の製造)
製造例1において、カチオン性ポリマー粒子を添加しなかった以外は、製造例1と同様にして、中空構造を有しない球状メソポーラスシリカ粒子粉体を製造した。
この球状メソポーラスシリカ粒子粉体について、粉末X線回折(XRD)のパターンにおける、d=3.0nmの非常に強いXRDピーク、d=1.7nm及びd=1.5nmの弱いXRDピークにより、この球状メソポーラスシリカ粒子粉体のメソ細孔がヘキサゴナル配列を有すること確認した。また、SEM観察より、この球状メソポーラスシリカ粒子の形状が球状であることを確認した。
さらに、TEM観察より、この球状メソポーラスシリカ粒子が中空構造ではなく中実構造を有し、平均一次粒子径が500nmであり、ヘキサゴナル配列を示す均一なメソ細孔を有し、そのメソ細孔が粒子中心から外側に向かって放射状に貫通していることを確認した。
また、この中実メソポーラスシリカ粒子粉体は、BET比表面積が1040m2/g、平均細孔径が1.4nm、平均凝集粒子径が32μm、粗粒割合が60%であった。
この中空メソポーラスシリカ粒子粉体の水分及び/又は有機溶剤量は18%、シリカ重量に対するテンプレート量は0%であった。
実施例1
製造例1で得られた中空メソポーラスシリカ粒子粉体10gを、乾式分級ふるいを内壁に有するロータースピードミル(FRITSCH社製、商品名:pulverisettel4)を用いて、2分間乾式粉砕処理(20000rpm)して凝集粒子を解砕し、乾式分級(孔径0.2mmスクリーンをパス)することにより、粗粒のない中空メソポーラスシリカ粒子粉体を得た。消費電力量は、メソポーラスシリカ粉体1kg当たり0.6kWhであった。物性を表1に示す。
なお、乾式粉砕処理後も、平均細孔径、平均一次粒子径、平均中空部径、及び平均外殻部厚み、組成に変化はなかった。
実施例2
製造例2で得られた球状メソポーラスシリカ粒子粉体10gを用いて、実施例1と同様の操作を行い、粗粒のない球状メソポーラスシリカ粒子粉体を得た。消費電力量は、メソポーラスシリカ粉体1kg当たり0.6kWhであった。物性を表1に示す。
なお、乾式粉砕処理後も、平均細孔径、平均一次粒子径、平均中空部径、及び平均外殻部厚み、組成に変化はなかった。
実施例3
製造例2で得られた球状メソポーラスシリカ粒子粉体10gを、分析粉砕機(日本理化学器械株式会社製、NRK−R8、3枚刃)を用いて、160秒間乾式解砕することにより、球状メソポーラスシリカ粒子粉体を得た。消費電力量は、メソポーラスシリカ粉体1kg当たり0.3kWhであった。物性を表1に示す。
なお、乾式粉砕処理後も、平均細孔径、平均一次粒子径、平均中空部径、及び平均外殻部厚み、組成に変化はなかった。
比較例1
製造例1で得られた中空メソポーラスシリカ粒子粉体(回転粉砕機を用いた乾式粉砕なし)の物性を表1に示す。
比較例2
製造例2で得られた球状メソポーラスシリカ粒子粉体(回転粉砕機を用いた乾式粉砕なし)の物性を表1に示す
比較例3
製造例2で得られた球状メソポーラスシリカ粒子粉体1gをメタノール8.1g、水0.9gに分散後、5mm径ジルコニアボール100gと共に50mLポリビンに入れ、卓上ミル(イウチ株式会社製MIX-ROTAR VMR-5)を用い、80rpmで7時間ボールミルによる湿式粉砕を行った。粉砕後、ジルコニアボールを除去し、120℃で1日間乾燥させることにより、メソポーラスシリカ粒子粉体を得た。消費電力量は、メソポーラスシリカ粉体1kg当たり60kWhであった。物性を表1に示す。
Figure 0005374131
表1から、実施例1〜3のメソポーラスシリカ粒子粉体は、比較例1〜3のものに比べて、一次粒子構造が変わらずに、粗粒がなくなっているか又は粗粒が非常に減少していることが分かる。

Claims (5)

  1. 凝集体を含むメソポーラスシリカ粉体を、消費電力量がメソポーラスシリカ粉体1kg当たり0.01〜30kWhの条件下で、ロータースピードミル又は分析粉砕機を用いて乾式粉砕する、凝集体が低減されたメソポーラスシリカ粒子粉体の製造方法。
  2. 乾式粉砕が、ロータースピードミルを用いて行なわれる、請求項1に記載の凝集体が低減されたメソポーラスシリカ粒子粉体の製造方法。
  3. 乾式粉砕中又は乾式粉砕後に乾式分級を行う、請求項1又は2に記載の凝集体が低減されたメソポーラスシリカ粒子粉体の製造方法。
  4. 乾式分級がふるい分級である、請求項3に記載の凝集体が低減されたメソポーラスシリカ粒子粉体の製造方法。
  5. メソポーラスシリカ粉体が、メソ細孔内のテンプレートが除去されたものである、請求項1〜4のいずれかに記載の凝集体が低減されたメソポーラスシリカ粒子粉体の製造方法。
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