JP5369928B2 - レンズ鏡筒 - Google Patents

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Description

本発明は、レンズ鏡筒に関する。
レンズ交換式カメラに装着されるレンズ鏡筒は、フォーカシングリングあるいはズーム操作環を回転操作することにより、その全長を変化させながら内蔵したレンズ群を光軸方向に進退させる。
しかし、レンズ鏡筒が最も短縮された状態(ズームレンズ鏡筒の場合は短焦点距離端状態)でレンズ鏡筒の軸線を上下方向に向けると(移動レンズ群の光軸を上下方向に向けると)、操作者が操作環を操作しないにも拘わらず、レンズ鏡筒内の移動レンズ群がその自重により光軸方向に移動してしまうことがあった。
特開2003−207709号公報
このような移動レンズ群の自重落ちを防止するための手段としては、例えば、非撮影時に操作環の回転動作を防止するロック機構が知られている。また、操作環と周辺部材の間に摩擦部材やトルク付加部材を設けて、操作環を意図的に回転操作させない限り移動レンズ群が移動しないようにする技術が知られている。
しかし、このようにレンズ鏡筒にロック機構を設けると、レンズ鏡筒の製造コストが上昇してしまう。さらに、ロック機構を操作し忘れた場合には、自重落ちを防止できない。
一方、摩擦部材やトルク付加部材を設ける場合はレンズ鏡筒の製造コストが上昇するだけでなく、操作環の回転抵抗が増大するので、撮影時に操作環を円滑に回転操作するのが難しくなってしまう。
このようにロック機構や摩擦部材等を用いずに自重落ちを防止するための方法として、操作環に設けたカム溝におけるレンズ鏡筒が最短状態にあるときにカムフォロアが係合する部分(以下、短縮時係合部分と呼ぶ)の傾斜角度を極力小さく(緩く)することが挙げられる。
しかし、上記カム溝における短縮時係合部分の傾斜角度を極力小さくする場合は、カム溝のその他の部分(特に短縮時係合部分との連続部分)の傾斜角度も小さめに設定しないとカム溝に対するカムフォロアの移動が不円滑になってしまう。しかし、このようにカム溝全体の傾斜角度を小さく設定すると、ズーム操作環の回転角当たりの移動レンズ群の移動量が小さくなるため、移動レンズ群を大きく移動させるためには操作環を沢山回転させなければならなくなってしまう。
本発明は、特別な機構や部材を付加することなく最短状態にあるレンズ鏡筒の移動レンズ群の自重落ちを防止でき、しかも操作環の回転角当たりの移動レンズ群の移動量を大きくすることが可能なレンズ鏡筒を提供することを目的とする。
本発明のレンズ鏡筒は、光軸方向に延びる複数の直進案内溝を利用して複数の移動レンズ群を光軸方向に進退させるレンズ鏡筒において、
上記光軸回りに回転する回転環のうち最も外周側に位置し、かつ上記光軸に対して傾斜するカム溝を有する最外周回転環と、上記直進案内溝の中で最も有効長が短い最小移動量直進案内溝を有する固定部材と、上記カム溝及び上記最小移動量直進案内溝に係合する第1カムフォロアを有し、上記最外周回転環の回転操作に伴って上記最小移動量直進案内溝に沿って光軸方向に直進移動し、かつ上記移動レンズ群を支持する直進環と、少なくとも撮影距離が無限遠のときは、上記直進環と一緒に上記光軸方向に直進移動する、上記移動レンズ群の中で最も光軸方向移動量が少ない最小移動量移動レンズ群と、を備えることを特徴としている。
上記直進環と該直進環に支持した上記移動レンズ群とが、光軸方向への相対移動を伴わずに一緒に移動可能であってもよい。
上記最外周回転環がズーム操作環で、かつ上記各移動レンズ群が変倍レンズ群であり、上記カム溝における上記第1カムフォロアがワイド端状態のときに係合する部分の周方向に対する傾斜角度が30°以下であるのが好ましい。
上記直進環が、上記ズーム操作環の回転操作に伴って光軸回りに回転するズームカム環を支持し、該ズームカム環が、上記直進環に支持された上記移動レンズ群とは別の少なくとも一つの変倍レンズ群のカムフォロアがそれぞれ嵌る少なくとも一つのレンズ群用カム溝を備えるのが好ましい。
この場合は、上記ズームカム環に形成した上記レンズ群用カム溝における対応する各カムフォロアがワイド端状態のときに係合する部分の周方向に対する傾斜角度が60°未満であるのが好ましい。
さらに、上記ズームカム環が、該ズームカム環と一緒に回転する回転環を支持し、上記各変倍レンズ群及びこれらと一体をなす支持枠の結合体の中で最も重量が大きいものに備えられた第2カムフォロアは、上記回転環に備えられたレンズ群用カム溝に係合し、この最も重量の重い結合体を構成する変倍レンズ群の変倍時における移動量が他の変倍レンズ群に比べて最も小さく、該レンズ群用カム溝における短焦点距離端状態のときに上記第2カムフォロアが係合する部分の周方向に対する傾斜角度が、他の上記レンズ群用カム溝に比べて小さいのが好ましい。
本発明によれば、最外周回転環に形成したカム溝は最小移動量直進案内溝と対応するので、他の直進案内溝と対応させた場合に比べて光軸方向の距離が短くなり、それゆえ光軸に対する傾斜角度が小さくなる。そのため、レンズ鏡筒が最短状態にあるときに各移動レンズ群が自重により光軸方向に不意に移動するのを防止できる。
その一方で、最外周回転環は回転環の中で最も外周側に位置するので、これよりも内側に位置する回転環に最小移動量直進案内溝と対応するカム溝(正面視における光軸を中心とする中心角が上記カム溝と同じカム溝)を形成する場合に比べて、最外周回転環のカム溝は長さが長くなる。そのため、内側の回転環にカム溝を形成する場合に比べて、最外周回転環の単位回転角度当たりのカムフォロアの光軸方向移動量が大きくなる。従って、最外周回転環を沢山回転させなくても、直進環に支持した移動レンズ群を大きく移動させることが可能である。
さらに、従来技術のように特別なロック機構や摩擦部材やトルク付加部材を要しないので、ズームレンズ鏡筒の製造コストが上昇することはない。さらに、ロック機構の操作し忘れに起因する自重落ちが発生したり、摩擦部材やトルク付加部材を設ける場合に生じる、撮影時にズーム操作環の回転操作が不円滑になるという不具合が生じることもない。
本発明の一実施形態のズームレンズ鏡筒のテレ端状態における上半部のみを示す縦断側面図である。 同じくワイド端状態におけるズームレンズ鏡筒の上半部のみを示す縦断側面図である。 テレ端状態における2群支持枠とフォーカスカム環とズームカム環と直進環の内筒を分解して展開状態で示す平面図である。 ワイド端状態における2群支持枠とフォーカスカム環とズームカム環と直進環の内筒を分解して展開状態で示す平面図である。 ズーム操作環のカム溝の傾斜角度を示すための固定環とズーム操作環の展開状態における平面図である。 各レンズ群の移動軌跡を示す図である。 各レンズ群のワイド端からテレ端までの繰出量(移動量)を示すグラフである。 直進案内溝の長さとカム溝の傾斜角の関係を説明するための図である。 回転環の径方向位置の違いによるカム溝の長さの違いを説明するための図である。
以下、本発明を適用したズームレンズ鏡筒(レンズ鏡筒)の一実施形態を添付図面を参照しながら説明する。
本実施形態のズームレンズ鏡筒10は、ズーミング動作によって焦点距離が変わると焦点面が移動するいわゆるバリフォーカルレンズ鏡筒であり、図示を省略したカメラボディに着脱自在な交換式レンズ鏡である。ズームレンズ鏡筒10は図1から図5に示す構造である。
不動部材である固定環(固定部材)11の後端面にはカメラボディ(図示略)のマウント部と係脱可能なマウント部12が固定されている。固定環11には周方向に等角度間隔で3本の光軸Oと平行な2群用直進案内溝(最小移動量直進案内溝)13が貫通溝として形成されている。さらに固定環11の外周面には、ズーム操作環(最外周回転環)15が固定環11に対して光軸O回りに相対回転可能かつ光軸O方向に相対移動不能として支持されている。ズーム操作環15には、2群用直進案内溝13に対して傾斜する3本のカム溝16が周方向に等角度間隔で貫通溝として形成されている。また固定環11の前端部には、フォーカス操作環17が固定環11に対して光軸O回りに相対回転可能かつ光軸O方向に相対移動不能として支持されている。
固定環11の内周側には、固定環11と同心をなし外筒19と内筒20を有する二重筒構造の直進環18が配設されている。外筒19の外周面には、周方向に等角度間隔で3つのカムフォロア(第1カムフォロア)22が径方向外向きに突設されている。3つのカムフォロア22は対応する2群用直進案内溝13及びカム溝16に嵌合している。
図3及び図4に示すように、直進環18の内筒20には、共に光軸Oと平行な1群用直進案内溝23及び3群用直進案内溝24が周方向に等角度間隔で3本ずつ形成されている(1群用直進案内溝23は貫通溝であり、3群用直進案内溝24は有底溝)。
内筒20の内周面には固定環11と同心をなすズームカム環25が、内筒20に対して光軸O方向に相対移動不能で光軸O回りに相対回転可能として支持されている。このズームカム環25とズーム操作環15の間には図示を省略した回転力伝達機構が介在しており、この回転力伝達機構の働きにより、ズーム操作環15が回転するとズームカム環25はズーム操作環15と一緒に回転する。ズームカム環25の外周面には、各1群用直進案内溝23とそれぞれ対向する3本の1群用カム溝(レンズ群用カム溝)26が周方向に等角度間隔で形成されている。さらにズームカム環25には、各3群用直進案内溝24とそれぞれ対向する3本の3群用カム溝(レンズ群用カム溝)27が周方向に等角度間隔で形成されている。またズームカム環25には、周方向を向く3本の周方向溝28が等角度間隔で貫通溝として形成されている。さらにズームカム環25の内周面の前端部には、光軸Oと平行な直進溝29が有底溝として一つ形成されている。
直進環18の内筒20の外周面には、固定環11と同心をなす1群支持枠30が支持されている。この1群支持枠30の内周面の後端部には周方向に等角度間隔で3つのカムフォロア32が一体的に突設してあり、各カムフォロア32は対応する1群用直進案内溝23及び1群用カム溝26に嵌合している。1群支持枠30の内周面の前端部には第1レンズ群L1が支持されている。
ズームカム環25の内周面には固定環11と同心をなすフォーカスカム環(回転環)35が支持されている。フォーカスカム環35の外周面には係合突起36が突設されている。この係合突起36の先端部はズームカム環25の直進溝29に相対移動可能に嵌合しているので、フォーカスカム環35はズームカム環25に対して光軸O回りに回転不能であり、光軸O方向には直進溝29と係合突起36の隙間分だけ相対移動可能である。さらにフォーカスカム環35には、3本のフォーカスカム溝(レンズ群用カム溝)37が周方向に等角度間隔で形成されている。
直進環18の内筒20の内周面には3つのカムフォロア39が一体的に突設してある。各カムフォロア39は対応するズームカム環25の周方向溝28を貫通するとともに、対応するフォーカスカム溝37に外側から嵌合している。
フォーカスカム環35の内周面には、固定環11と同心をなす2群支持枠40が支持されている。2群支持枠40の外周面には周方向に等角度間隔で3つのカム突起(第2カムフォロア)41が径方向外向きに突設されている。各カム突起41は対応するフォーカスカム溝37に内側から嵌合している。2群支持枠40の内周面の前端部には第2レンズ群L2が支持されている。
2群支持枠40の外周縁部からは、3本の延出部42が周方向に等角度間隔で後方に向かって延出している。各延出部42の後端面には前方に向かって延びる直進案内孔43が形成されている。この直進案内孔43には光軸Oと平行なフォーカスレバー44の前端部が光軸Oと平行な方向にスライド自在として嵌合している。フォーカスレバー44の後端部は、固定環11の後部壁の前面に光軸O回りに回転可能として支持されたフォーカスギヤ環45の前面にボルトB1によって固着されている。フォーカスギヤ環45の外周縁部からは径方向外向きに動力伝達腕46が延出している。この動力伝達腕46は、フォーカス操作環17の内周面に固定されフォーカス操作環17と一体的に光軸Oを中心に回転するフォーカスレバー47の後端部と係合している。
2群支持枠40の内周側には、2群支持枠40の直後に位置する態様で3群支持枠(支持枠)50が位置している。3群支持枠50の外周面には周方向に等角度間隔で3本の径方向突起51が径方向外向きに突設されている。図1〜図3に示すように、3本の径方向突起51は隣合う延出部42の間を通って延出部42の外側まで延びている。各径方向突起51の端面にはカムフォロア53が一体的に突設してある。3つのカムフォロア53は対応する3群用カム溝27及び3群用直進案内溝24に嵌合している。3群支持枠50の内周面には第3レンズ群L3が支持されている。
3群支持枠50の外周面には固定環11と同心をなす4群支持枠55が直進案内された状態で支持されている。さらに、4群支持枠55の外周側には4群支持枠55と同心をなす4群用カム環57が位置している。4群用カム環57の外周面には1本の径方向外向きの動力伝達腕58が突設されており、この動力伝達腕58はズームカム環25の内周面に形成された直進案内溝59に直進案内された状態で嵌合している。さらに、4群用カム環57の内周面には周方向及び光軸O方向に対して傾斜する4群用カム溝(レンズ群用カム溝)60が形成されており、この4群用カム溝60に4群支持枠55の外周面に突設されたカム突起(カムフォロア)61が係合している。
次に以上構成のズームレンズ鏡筒10の動作について説明する。
まずはズーミング動作について説明する。
撮影者が手でズーム操作環15を回転させるか、ズームレンズ鏡筒10またはカメラボディに設けられたパワーズームボタン(図示略)を操作すると、カムフォロア22と2群用直進案内溝13及びカム溝16の係合関係により直進環18が光軸Oと平行な方向に回転を伴わずに進退する。さらにズーム操作環15の回転に伴って上記回転力伝達機構の働きによりズームカム環25がズーム操作環15と一緒に回転する。
このようにズームカム環25が回転すると、カムフォロア32と1群用カム溝26及び1群用直進案内溝23の係合関係に従って1群支持枠30(第1レンズ群L1)が直進環18に対して回転を伴わずに光軸O方向に相対移動する。さらにズームカム環25が回転すると、カムフォロア53と3群用カム溝27及び3群用直進案内溝24の係合関係に従って3群支持枠50(第3レンズ群L3)が直進環18に対して回転を伴わずに光軸O方向に進退する。さらにズームカム環25が回転すると、動力伝達腕58と直進案内溝59の働きにより4群用カム環57が直進環18と一緒に回転する。すると、4群用カム環57の4群用カム溝60と4群支持枠55のカム突起61の係合関係により、3群支持枠50によって直進案内された4群支持枠55(第4レンズ群L4)が3群支持枠50(第3レンズ群L3)に対して回転を伴わずに光軸O方向に相対移動する。
また、ズームカム環25が回転すると直進溝29と係合突起36の係合関係に従って、フォーカスカム環35がズームカム環25と光軸O回りに一緒に回転する。すると、カムフォロア39が周方向溝28の内部を周方向に相対移動し、かつカムフォロア39とフォーカスカム環35のフォーカスカム溝37との係合関係によりフォーカスカム環35が、ズームカム環25に対して直進溝29に沿ってフォーカスカム溝37の移動量分だけだけ光軸O方向に進退する。このようにフォーカスカム環35が回転しながら光軸O方向に進退すると、フォーカスカム溝37とカム突起41の係合関係に従って、フォーカスレバー44によって直進案内された(フォーカス操作環17が回転操作されていないのでフォーカスレバー44は固定された状態にある)2群支持枠40(延出部42)がフォーカスカム環35に対して回転を伴わずに光軸O方向に進退する。このときの2群支持枠40(延出部42)のフォーカスカム環35に対する進退方向はフォーカスカム環35のズームカム環25に対する進退方向と逆である。
ズームレンズ鏡筒10の撮影距離はフォーカス操作環17の回転位置によって規定されるが、後述するように、ズームレンズ鏡筒10の撮影距離が無限遠(∞)のとき、カムフォロア39とカム突起41の周方向位置及び光軸O方向位置が一致し、ズームレンズ鏡筒10の撮影距離が無限遠(∞)以外の距離のときはカムフォロア39とカム突起41の周方向位置及び光軸O方向位置にずれる。そして、撮影距離が無限遠(∞)のときに(カムフォロア39とカム突起41の周方向位置及び光軸O方向位置が一致するときに)ズームカム環25が回転すると、フォーカスカム環35と2群支持枠40の移動量は同じになるので(移動方向は逆)、2群支持枠40とズームカム環25の光軸O方向の相対位置は変わらず、その結果、2群支持枠40に支持された第2レンズ群L2は直進環18と一緒に光軸O方向に進退する。一方、撮影距離が無限遠(∞)以外の距離のときに(カムフォロア39とカム突起41の周方向位置及び光軸O方向位置にずれたときに)ズームカム環25が回転すると、フォーカスカム溝37に従って、直進環18と2群支持枠40の移動量の間に差が出るので、2群支持枠40と直進環18は、その撮影距離における移動軌跡に従って移動する。
ズームレンズ鏡筒10のズーミング動作はこのようにして行われ、図6に示すように各レンズ群L1〜L4はワイド端(短焦点距離端)からテレ端(長焦点距離端)への変倍に際して単調に物体側に直進移動する(図7に示すように、ズーミング時の各レンズ群の移動量は撮影距離に拘わらずL1>L4>L3>L2の順である)。
次にフォーカシング動作について説明する。
撮影モードをMFにした上で撮影者が手でフォーカス操作環17を回転させると(または、カメラがAF動作を行なうと)、フォーカス操作環17と一体となって回転するフォーカスレバー47が動力伝達腕46を回転させるので、フォーカスギヤ環45が光軸Oを中心にフォーカス操作環17と同方向に回転する。フォーカスギヤ環45が回転するとフォーカスレバー44が光軸O回りに回転するので、この回転力が2群支持枠40に伝わる。このとき、ズームカム環25が回転していないのでフォーカスカム環35は固定されている(回転及び光軸O方向へ進退しない)。従って、カム突起41がフォーカスカム環35のフォーカスカム溝37内を移動し、その結果、2群支持枠40及び第2レンズ群L2が光軸O回りに回転しながら光軸O方向に進退しフォーカシングが行われる。
このようにフォーカシング動作を行うと、カムフォロア39は移動しないのに対しカム突起41は移動するので、カムフォロア39とカム突起41の周方向位置及び光軸O方向位置が変化する。従って、ズームレンズ鏡筒10の撮影距離が無限遠(∞)以外の距離のときはカムフォロア39の位置を基準としてカム突起41の周方向位置及び光軸O方向位置がずれ、2群支持枠40が光軸方向に前後する(図3及び図4を参照)が、ズームレンズ鏡筒10の撮影距離が無限遠(∞)のときはカムフォロア39とカム突起41の周方向位置及び光軸O方向位置が一致する(図示略)。
以上説明したように本実施形態の直進環18の固定環11に対する移動量はズーム操作環15に形成されたカム溝16の形状によって決まるが、本実施形態ではこのカム溝16の光軸Oに対する傾斜角度を1群用カム溝26及び3群用カム溝27よりも小さめ(緩やかに)に設定している。このような設計が可能なのは、カム溝16と対応する直進案内溝である2群用直進案内溝13の光軸方向の有効長(カムフォロア22が移動する長さ)が1群用直進案内溝23及び3群用直進案内溝24より短い、別言すると第2レンズ群L2の固定環11に対する移動量が、第1レンズ群L1及び第3レンズ群L3の直進環18に対する移動量よりも小さい(さらに第1レンズ群L1及び第3レンズ群L3の固定環11に対する移動量よりも小さい)ためである。即ち、図8に示すように、カム溝aとカム溝bの周方向長が同じであるとするならば、直進案内溝Bに比べて有効長が短い直進案内溝Aに対応するカム溝aの方がカム溝bよりも光軸方向の有効長が短くなり傾斜角度が小さくなるので、本実施形態のカム溝16の傾斜角度は1群用カム溝26及び3群用カム溝27よりも小さくなる。特に図5に示すように、ズームレンズ鏡筒10がワイド端状態(最も短縮した状態)のときにカムフォロア22が位置する部分(以下、短縮時係合部分と呼ぶ)のカム溝16の傾斜角度(α°:ズーム操作環15の周方向と平行な直線LAと、カム溝16の軸線LBの間の角度)は極めて小さく(30°以下)設定されている。そして、光軸O方向の移動量がもっとも少ないレンズ群である第2レンズ群L2の移動用カム溝であるカム溝16を最も外側に位置する大径の回転環(ズーム操作環15)に設けることで、カム溝16の周方向長を長くしつつ傾斜角度(カム溝16のカム環周方向移動量に対する光軸方向の移動量)を小さくしている。従って、ズームレンズ鏡筒10をワイド端状態(最短状態)にし手をズーム操作環15から離した上でズームレンズ鏡筒10の軸線を上下方向に向けても、直進環18、カムフォロア22及び直進環18に支持された各部材(各レンズ群L1〜L4、ズームカム環25、1群支持枠30、2群支持枠40等)の自重により各レンズ群(L1〜L4)がテレ端方向に不意に移動することはない。
しかも、従来技術のように特別なロック機構や摩擦部材やトルク付加部材を設けるわけではないので、ズームレンズ鏡筒10の製造コストが上昇することがない。さらに、ロック機構の操作し忘れに起因する自重落ちが発生したり、摩擦部材やトルク付加部材を設ける場合に生じる、撮影時にズーム操作環の回転操作が不円滑になるという不具合が生じることもない。
このようにカム溝16の傾斜角度が小さめに設定されているので、直進環18のズーム操作環15の回転角当たりの移動量は大きくはない。
しかし、カム溝16を回転環の中で最も外周側に位置するズーム操作環15に形成しているので、ズーム操作環15より内周側に位置する回転環にカム溝16を形成する場合に比べると以下のメリットがある。即ち図9に示すように、正面視において光軸Oを中心とする中心角θ(光軸Oからカム溝の両端までを結ぶ線分がなす角度)が等しい場合は、より外周側に位置する回転環Cに形成したカム溝cの方が内周側に位置する回転環Dのカム溝dに比べて距離が長くなるので、回転環Cと回転環Dを同じ角度だけ回転させると、カム溝cの方がカム溝dよりも長い距離回転する。そのため、本実施形態のように最も外周側に位置する回転環であるズーム操作環15にカム溝16を形成すると、単位回転角度当たりのカムフォロア22の回転量が大きくなり、その結果、単位回転角度当たりの直進環18の固定環11に対する光軸O方向移動量が大きくなる。従って、ズーム操作環15の単位回転角度当たりの1群支持枠30(第1レンズ群L1)、2群支持枠40(第2レンズ群L2)、3群支持枠50(第3レンズ群L3)、及び4群支持枠55(第4レンズ群L4)の移動量を大きできる。
さらに自重落ちが生じる場合は、一番最初に一つのレンズ群(及びその支持枠)が動き始め、この動きに連動して他の総てのレンズ群(及びその支持枠)が移動することが多い。そのため自重落ちを防止する上では、レンズ群及びこれと一体をなす支持枠の結合体の中で最も重量が大きいものの自重落ちを防止するのが重要である。
そのため本実施形態では、図7に示すようにレンズ群及び支持枠の結合体の中で最も重量が大きい第2レンズ群L2、2群支持枠40及びカム突起41の結合体の変倍時における移動量を他の結合体(レンズ群L1、L3、L4)に比べて小さく設定している。このように設定すると、カム突起41が係合するフォーカスカム溝37全体の傾斜角度を、他のレンズ群L1、L3、L4と一体をなすカムフォロア39、カムフォロア53、カム突起61が係合する1群用カム溝26、3群用カム溝27、及び4群用カム溝60に比べて小さく(緩やかに)設定でき、特にフォーカスカム溝37の短縮時係合部分の傾斜角度を、1群用カム溝26、3群用カム溝27、及び4群用カム溝60の短縮時係合部分(ズームレンズ鏡筒10をワイド端状態(最短状態)にしたときにカムフォロア39、カムフォロア53、カム突起61が係合する部分)の傾斜角度に比べて小さく設定できる(図3及び図4参照。4群用カム溝60の展開図は図示略)。
従って、本実施形態の第2レンズ群L2、2群支持枠40及びカム突起41の結合体が最初に自重落するおそれは小さい。
さらに、直進環18に直接的または間接的に支持された1群支持枠30(第1レンズ群L1)、2群支持枠40(第2レンズ群L2)、3群支持枠50(第3レンズ群L3)、及び4群支持枠55(第4レンズ群L4)が、ズーム操作環15の回転操作に伴って直進環18に対して光軸O方向に相対移動しワイド端からテレ端への変倍に際して単調に物体側に直進移動するので、各レンズ群L1〜L4の変倍時の移動量は、直進環18の移動量と、各レンズ群L1〜L4の直進環18に対する相対移動量の合計量となる。それゆえ、各レンズ群L1、L3、L4の移動量を確保するために1群用カム溝26、3群用カム溝27及び4群用カム溝60の全体の傾斜角度を大きめに設定する必要がない。そのため、1群用カム溝26、3群用カム溝27及び4群用カム溝60の短縮時係合部分の傾斜角度を60°未満として設定可能である。従って、万が一、第2レンズ群L2、2群支持枠40及びカム突起41の結合体が最初に自重落ちしても、他の結合体が第2レンズ群L2、2群支持枠40及びカム突起41の結合体の動きにつられて自重落ちするおそれは極めて小さい。
以上、本発明を上記実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変更を施して実施可能である。
例えば、カム溝16を形成する回転環はズーム操作環15でなくてもよく、最も外周側に位置する回転環であればどのようなものでもよい。
また、カムフォロア39、及びフォーカスカム環35を介さずに2群支持枠40を直進環18に直接支持させてもよいし、直進環18と2群支持枠40の間に上記とは別の機構を介在させてもよい。
さらに、本実施形態は交換式のバリフォーカルタイプのズームレンズ鏡筒10に適用したものであるが、バリフォーカルタイプでないズームレンズ鏡筒や交換式ではないズームレンズ鏡筒に適用することは勿論可能である。さらに、ズーム機能を有しない単焦点レンズ鏡筒に適用することも可能である。
10 ズームレンズ鏡筒
11 固定環(固定部材)
12 マウント部
13 2群用直進案内溝(最小移動量直進案内溝)
15 ズーム操作環(最外周回転環)
16 カム溝
17 フォーカス操作環
18 直進環
19 外筒
20 内筒
22 カムフォロア(第1カムフォロア)
23 1群用直進案内溝
24 3群用直進案内溝
25 ズームカム環
26 1群用カム溝(レンズ群用カム溝)
27 3群用カム溝(レンズ群用カム溝)
28 周方向溝
29 直進溝
30 1群支持枠
32 カムフォロア
35 フォーカスカム環(回転環)
36 係合突起
37 フォーカスカム溝(レンズ群用カム溝)
39 カムフォロア
40 2群支持枠
41 カム突起(第2カムフォロア)
42 延出部
43 直進案内孔
44 フォーカスレバー
45 フォーカスギヤ環
46 動力伝達腕
47 フォーカスレバー
50 3群支持枠(支持枠)
51 径方向突起
53 カムフォロア
55 4群支持枠
57 4群用カム環
58 動力伝達腕
59 直進案内溝
60 4群用カム溝(レンズ群用カム溝)
61 カム突起(カムピン)
L1 第1レンズ群
L2 第2レンズ群
L3 第3レンズ群
L4 第4レンズ群
O 光軸

Claims (6)

  1. 光軸方向に延びる複数の直進案内溝を利用して複数の移動レンズ群を光軸方向に進退させるレンズ鏡筒において、
    上記光軸回りに回転する回転環のうち最も外周側に位置し、かつ上記光軸に対して傾斜するカム溝を有する最外周回転環と、
    上記直進案内溝の中で最も有効長が短い最小移動量直進案内溝を有する固定部材と、
    上記カム溝及び上記最小移動量直進案内溝に係合する第1カムフォロアを有し、上記最外周回転環の回転操作に伴って上記最小移動量直進案内溝に沿って光軸方向に直進移動し、かつ上記移動レンズ群を支持する直進環と、
    少なくとも撮影距離が無限遠のときは、上記直進環と一緒に上記光軸方向に直進移動する、上記移動レンズ群の中で最も光軸方向移動量が少ない最小移動量移動レンズ群と、
    を備えることを特徴とするレンズ鏡筒。
  2. 請求項1記載のレンズ鏡筒において、
    上記直進環と該直進環に支持した上記移動レンズ群とが、光軸方向への相対移動を伴わずに一緒に移動可能であるレンズ鏡筒。
  3. 請求項1または2記載のレンズ鏡筒において、
    上記最外周回転環がズーム操作環で、かつ上記各移動レンズ群が変倍レンズ群であり、
    上記カム溝における上記第1カムフォロアがワイド端状態のときに係合する部分の周方向に対する傾斜角度が30°以下であるレンズ鏡筒。
  4. 請求項3記載のレンズ鏡筒において、
    上記直進環が、上記ズーム操作環の回転操作に伴って光軸回りに回転するズームカム環を支持し、
    該ズームカム環が、上記直進環に支持された上記移動レンズ群とは別の少なくとも一つの変倍レンズ群のカムフォロアがそれぞれ嵌る少なくとも一つのレンズ群用カム溝を備えるレンズ鏡筒。
  5. 請求項4記載のレンズ鏡筒において、
    上記ズームカム環に形成した上記レンズ群用カム溝における対応する各カムフォロアがワイド端状態のときに係合する部分の周方向に対する傾斜角度が60°未満であるレンズ鏡筒。
  6. 請求項4または5記載のズームレンズ鏡筒において、
    上記ズームカム環が、該ズームカム環と一緒に回転する回転環を支持し、
    上記各変倍レンズ群及びこれらと一体をなす支持枠の結合体の中で最も重量が大きいものに備えられた第2カムフォロアは、上記回転環に備えられたレンズ群用カム溝に係合し、
    この最も重量の重い結合体を構成する変倍レンズ群の変倍時における移動量が他の変倍レンズ群に比べて最も小さく、
    該レンズ群用カム溝における短焦点距離端状態のときに上記第2カムフォロアが係合する部分の周方向に対する傾斜角度が、他の上記レンズ群用カム溝に比べて小さいズームレンズ鏡筒。
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