JP5368921B2 - 太陽電池用裏面保護シート及びこれを用いた太陽電池モジュール - Google Patents

太陽電池用裏面保護シート及びこれを用いた太陽電池モジュール Download PDF

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Description

本発明は、太陽電池用裏面保護シート及びこれを用いた太陽電池モジュールに関する。
従来から、アモルファスシリコンなどの半導体を用いた太陽電池モジュールは、その太陽電池素子の受光面側に透明性樹脂からなる封止材を介在させた状態でガラス板などの透明保護基板を積層一体化させると共に、太陽電池セルの裏面側に封止材を必要に応じて介在させた状態で防湿を目的として太陽電池用裏面保護シートを積層一体化させることによって製造されている。
又、薄膜太陽電池モジュールは、一般的に、透明基板の一面に、アモルファスシリコン、ガリウム−砒素、銅−インジウム−セレンなどの太陽電池素子が形成されてなる太陽電池における透明基板の一面に、封止材と裏面保護シートとをこの順序で積層一体化して製造されている。
従って、上記封止材は、太陽電池用裏面保護シート、太陽電池素子、透明基板などとの接着性に優れている必要があると共に、発電効率を高めるために透明性が良好である必要がある。又、太陽電池モジュールの使用時に温度が上昇しても、封止材が流動し或いは変形するトラブルを避けるために、封止材は耐熱性も要求される。
このような封止材としては、透明性や防湿性に優れ、太陽電池素子上への積層時の融着加工性に優れている点からエチレン−酢酸ビニル共重合体が主に用いられているが、透明保護基材や太陽電池用裏面保護シートとの接着強度が必ずしも充分とはいえず、屋外にて長期間に亘って使用すると、封止材が剥離する虞れがあるといった問題点を有している。
そこで、エチレン−酢酸ビニル共重合体中に、有機過酸化物やシランカップリング剤を含有させることが試みられている。具体的には、特許文献1には、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂にシランカップリング剤及び有機過酸化物を添加した樹脂シートを用いる方法が開示されている。
特許文献2には、有機シラン化合物でグラフト変性したエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂に有機過酸化物を添加した樹脂シートを用いる方法が開示されている。
特許文献3には、エチレン−エチレン性不飽和カルボン酸エステル−エチレン性不飽和シラン化合物三元共重合体樹脂に有機過酸化物を添加した樹脂シートを用いる方法が開示されている。
しかしながら、上述した方法では、シランカップリング剤及び/又は有機過酸化物を含有したエチレン−酢酸ビニル系共重合体シートを作製し、このシートを用いて太陽電池素子を封止するという2段階の工程を必要とする。
そして、樹脂シートの製造工程では、有機過酸化物が分解しないような低温度での成形が必要であるため、押出成形速度を大きくすることができない。又、太陽電池素子の封止工程では、ラミネーターにおいて、数分〜十数分かけて仮接着する工程と、オーブン内において有機過酸化物が分解する高温度で数十分〜1時間かけて本接着する工程との二工程を経る必要がある。従って、太陽電池モジュールの製造に手間と時間が掛かり、太陽電池モジュールの製造コストを上昇させる要因の一つとなっている。
又、樹脂シートの耐熱性を付与するために、樹脂シートに有機過酸化物を含有させて太陽電池モジュールの作製時に樹脂シートを架橋させているが、樹脂シートの成形時に有機過酸化物が分解してシートの成形が困難となったり、透明保護基材や太陽電池素子との接着性が低下したり、或いは、有機過酸化物に起因した分解生成物が接着界面に生じて樹脂シートの接着性が低下するといった問題を生じる。
太陽電池素子は精密部品であるため、太陽電池モジュールの製造時や使用時において、樹脂シートからガスが発生し、太陽電池の電池性能が低下するといった問題を生じる虞れがある。
一方、従来の太陽電池は、透明保護基材としてガラス板が用いられてきたが、可撓性を有する合成樹脂シートや薄膜金属フィルムを用いた可撓性を有する薄膜太陽電池の実用化が進みつつある。
上記可撓性を有する薄膜太陽電池を長期間に亘って屋外において使用可能とするために、薄膜太陽電池の表裏に接着層を介して防湿のために保護シートを積層一体化している。そして、薄膜太陽電池の可撓性を利用してロールツーロール方式やステップロール方式の製造方法により大量生産が可能となる可能性がある。
特公昭62−14111号公報 特公昭62−9232号公報 特公平6−104729号公報
本発明は、太陽電池モジュールの製造時にガスの発生がないと共に、柔軟性、耐熱性及び接着性に優れており、太陽電池モジュールの製造時において、太陽電池との積層をロールツーロール方式にて行うことが可能な太陽電池用裏面保護シート及びこれを用いた太陽電池モジュールを提供する。
本発明の太陽電池用裏面保護シートAは、図1に示したように、金属箔1上に耐候性基材2が積層一体化されている積層シートBの何れか一方の面に封止層3が積層一体化されてなり、上記封止層3は、変性ポリオレフィン系樹脂と、R1Si(OR23で示されるシラン化合物とを含有している太陽電池用裏面保護シートであって、上記積層シートBと上記封止層3との間に、JIS K7121に準拠して測定された融点が160℃以上で且つ曲げ弾性率が500〜1500MPaであるポリオレフィン系樹脂からなる熱緩衝層4が介在している。但し、R1は、非加水分解性であって且つ重合性を有する官能基を示す。R2は、炭素数が1〜5であるアルキル基を示す。
金属箔1としては、特に限定されず、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス箔などが挙げられ、アルミニウム箔が好ましい。又、金属箔1の厚みは、薄いと、太陽電池用裏面保護シートの ピンホールなどの発生する確率が大きくなるため、太陽電池用裏面保護シートのバリア性が低下することがあり、厚いと、太陽電池用裏面保護シートの取扱性が低下することがあるので、10〜50μmが好ましい。
金属箔1上には耐候性基材2が積層一体化されて積層シートBを構成している。耐候性基材2は合成樹脂シートから構成されていることが好ましい。耐候性基材2を構成している合成樹脂としては、例えば、フッ素系樹脂、ポリ乳酸などの生分解性プラスチック、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン−6、ナイロン−66などのポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアクリル系樹脂、ポリメタクリル系樹脂、ポリアクリロニトリルなどが挙げられる。なお、耐候性基材2は、延伸フィルム又は未延伸フィルムの何れであってもよいが、機械強度や寸法安定性、耐熱性に優れるものが好ましい。
なお、本発明において基材が「耐候性」を有しているか否かは下記の要領で判断される。先ず、基材の破断強度をJIS K7127に基づいて測定する。次に、基材に温度60℃、相対湿度50%の雰囲気下にて紫外線を150mW/cm2の強度で照射した後、基材を35℃、相対湿度100%の雰囲気下にて4時間に亘って放置する工程を1サイクルとして5サイクル繰り返して行って耐候試験を行う。耐候試験後の基材の破断強度をJIS K7127に基づいて測定する。そして、耐候試験後の基材の破断強度が、耐候試験前の基材の破断強度の30%以上を維持している場合、基材は「耐候性」を有しているとする。
耐候性基材2には、上述した合成樹脂中に着色剤が含有されていることが好ましい。着色剤としては、特に限定されず、例えば、酸化チタン、カーボンブラックなどが挙げられる。
耐候性基材2には、必要に応じて、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤などの公知の添加剤が含有されていてもよい。又、耐候性基材2の表面に、コロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理などの表面改質処理を施して金属箔1との密着性を向上させてもよい。耐候性基材2の厚さは、3〜300μmが好ましく、10〜200μmがより好ましい。
金属箔1上に耐候性基材2を積層一体化する方法としては、特に限定されず、例えば、金属箔1と耐候性基材2とを接着剤を介して積層一体化する方法が挙げられる。このような接着剤としては、例えば、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤などが挙げられる。
そして、積層シートBの何れか一方の面、即ち、金属箔1又は耐候性基材2の何れか一方の表面には熱緩衝層4を介在させて封止層3が積層一体化されている。この封止層3は、変性ポリオレフィン系樹脂100重量部と、R1Si(OR23で示されるシラン化合物0.001〜20重量部とを含有しており、不飽和カルボン酸又はその無水物でグラフト変性され且つJIS K7121に準拠して測定された融点が120〜170℃である変性ポリオレフィン系樹脂100重量部と、R1Si(OR23で示されるシラン化合物0.001〜20重量部とを含有していることが好ましく、不飽和カルボン酸又はその無水物でグラフト変性され且つJIS K7121に準拠して測定された融点が120〜170℃である変性ポリプロピレン系樹脂100重量部と、R1Si(OR23で示されるシラン化合物0.001〜20重量部とを含有していることがより好ましい。この封止層3は、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどの封止材に比べて、酸素や水蒸気に対するバリア性が優れており、積層シートBと積層一体化して優れたガスバリア性を発揮する。
封止層3を構成している変性ポリオレフィン系樹脂としては、不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸の無水物でグラフト変性したポリオレフィン樹脂、エチレン又は/及びプロピレンと、アクリル酸又はメタクリル酸との共重合体、金属架橋ポリオレフィン樹脂などが挙げられ、不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸の無水物でグラフト変性されたポリプロピレン系樹脂が好ましい。なお、変性ポリオレフィン系樹脂は、必要に応じて、ブテン成分、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、非晶質のエチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体などが5%重量以上添加されていてもよい。
上記ポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレン、プロピレン成分を50重量%含有するプロピレンとα−オレフィンなどの他のモノマーとの共重合体などが挙げられ、エチレン−プロピレンランダム共重合体、プロピレン−ブテン−エチレン三元共重合体が好ましい。なお、α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、ネオヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセンなどが挙げられる。
エチレン−プロピレンランダム共重合体におけるエチレン成分の含有量は、少ないと、封止層の接着性が低下することがあり、多いと、太陽電池用裏面保護シートがブロッキングすることがあるので、1〜10重量%が好ましく、1.5〜5重量%がより好ましい。
不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸などが挙げられ、マレイン酸が好ましい。又、不飽和カルボン酸の無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸などが挙げられ、無水マレイン酸が好ましい。
ポリオレフィン系樹脂を不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸の無水物で変性する方法としては、例えば、有機過酸化物の存在下に、結晶性ポリプロピレンと、不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸の無水物とを、溶媒中若しくは溶媒の不存在下で結晶性ポリプロピレンの融点以上に加熱処理する方法や、ポリオレフィン系樹脂を重合する際に、不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸の無水物を共重合させることが挙げられる。
変性ポリオレフィン系樹脂中における不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸の無水物の総含有量(以下「変性率」という)は、小さいと、封止層の接着性が低下することがあり、大きいと、太陽電池用裏面保護シートがブロッキングする虞れがあるので、0.01〜20重量%が好ましく、0.05〜10重量%がより好ましい。
封止層3を構成している変性ポリオレフィン系樹脂におけるJIS K7121に準拠して測定された融点は、低いと、製膜性が低下し、高いと、封止層の接着性が低下するので、120〜170℃が好ましく、120〜145℃がより好ましい。
更に、封止層4には、太陽電池を構成している透明基板との長期接着性を確保するために、R1Si(OR23で示されるシラン化合物が含有されている。但し、R1は、非加水分解性であって且つ重合性を有する官能基を示す。R2は、炭素数が1〜5であるアルキル基を示す。
1としては、例えば、ビニル基、グリシドキシ基、グリシドキシエチル基、グリシドキシメチル基、グリシドキシプロピル基、グリシドキシブチル基などが挙げられる。R2としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基などが挙げられる。
1Si(OR23で表されるシラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、α−グリシシドキシプロピルトリメトキシシラン、α−グリシドキシブロピルトリエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシエトキシシラン、α−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシエトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、δ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシラン、δ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリエトキシシランなどが挙げられる。なお、これらシラン化合物は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
封止層3中におけるシラン化合物の含有量は、少ないと、シラン化合物を添加した効果が発現しないことがあり、多いと、製膜性が低下することがあるので、変性ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して0.001〜20重量部に限定され、0.005〜10重量部がより好ましい。
更に、太陽電池モジュールの作製の際に熱プレスなどを一定時間行うため、太陽電池用裏面保護シートが熱収縮を起こし、熱収縮に起因して太陽電池用裏面保護シートに皺が発生するなどの不具合を生じることがある。そこで、図1に示したように、積層シートBと封止層3との間に積層シートBを熱から保護するために熱緩衝層4が介在されてい。熱緩衝層4は、融点が160℃以上で且つ曲げ弾性率が500〜1500MPaであるポリオレフィン系樹脂からな
熱緩衝層4を構成しているポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂が挙げられる。
ポリエチレン系樹脂としては、ポリエチレン、エチレン成分を50重量%以上含有するエチレンとα−オレフィンなどの他のモノマーとの共重合体などが挙げられる。なお、α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、ネオヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセンなどが挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン、プロピレン成分を50重量%含有するプロピレンとα−オレフィンなどの他のモノマーとの共重合体などが挙げられる。なお、α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、ネオヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセンなどが挙げられる。
熱緩衝層4を構成しているポリオレフィン系樹脂におけるJIS K7121に準拠して測定された融点は、低いと、積層シートを熱から保護できないことがあるので、160℃以上が好ましく、高すぎると、取扱いが困難となることがあるので、160〜175℃がより好ましい。
熱緩衝層4を構成しているポリオレフィン系樹脂の曲げ弾性率は、低いと、ポリオレフィン系樹脂の融点が低すぎる傾向にあるため、積層シートを熱から保護できないことがあり、高いと、取扱いが困難となることがあるので、500〜1500MPaが好ましく、700〜1200MPaがより好ましい。なお、ポリオレフィン系樹脂の曲げ弾性率は、JIS K7127に準拠して測定されたものをいう。
次に、上記太陽電池用裏面保護シートの製造方法の一例について説明する。先ず、金属箔上に汎用の方法を用いてプライマー層を形成し、このプライマー層上に汎用の方法を用いて接着剤を塗布して乾燥させて接着剤層を形成する。
次に、金属箔上の接着剤層上に耐候性基材を積層させ、金属箔1上に接着剤層を介して耐候性基材2を積層一体化させて積層シートBを作製する。
又、熱緩衝層4を構成するポリオレフィン系樹脂を第一押出機に供給して溶融混練する一方、封止層3を構成する変性ポリプロピレン系樹脂を第二押出機に供給して溶融混練して共押出することによって、熱緩衝層4と封止層3とが積層一体化されてなる重合シートを製造する。次に、積層シートBの何れか一方の面に重合シートをその熱緩衝層4が積層シートBに対向した状態となるように汎用の接着剤を用いて積層一体化して太陽電池用裏面保護シートAを製造することができる。
次に、本発明の太陽電池用裏面保護シートAを用いて太陽電池モジュールを製造する要領について説明する。
本発明の太陽電池用裏面保護シートAは薄膜太陽電池を用いた太陽電池モジュールの製造に好適に用いることができる。図2に示したように、薄膜太陽電池Cは、透明基板5上に、シリコンや化合物半導体などからなる太陽電池素子6が薄膜状に積層一体化されている。
薄膜太陽電池Cの透明基板5における太陽電池素子6の形成面上に、太陽電池用裏面保護シートAをその封止層3が透明基板5に対向した状態となるように重ね合わせて一体化することによって、薄膜太陽電池Cの太陽電池素子6を太陽電池用裏面保護シートAによって封止して太陽電池モジュールDを製造することができる(図2参照)。
本発明の太陽電池用裏面保護シートは、上述の構成を有しているので、優れた柔軟性、耐熱性及び接着性を有し、太陽電池との積層をロールツーロール方式にて行うことが可能であり、太陽電池モジュールを効率よく製造することができる。
上記太陽電池用裏面保護シートは、有機過酸化物を含有していないので、従来の封止材のように有機過酸化物による架橋工程を必要とせず、太陽電池モジュールを効率よく製造することができると共に、有機過酸化物の分解生成物の発生もなく、太陽電池との密着性を長期間に亘って維持することができ、太陽電池の性能を長期間に亘って安定的に維持することができる。
本発明の太陽電池用裏面保護シートの一例を示した縦断面図である。 太陽電池モジュールの一例を示した模式縦断面図である。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
(参考例1)
ポリウレタン系樹脂の初期縮合物100重量部に、エポキシ系のシランカップリング剤8.0重量部とブロッキング防止剤1.0重量部を添加して均一に混練してプライマー樹脂組成物を作製した。
JIS 1N30の厚みが30μmの軟質アルミニウム箔1を用意し、この軟質アルミニウム箔1の一面にグラビアロ−ルコ−ト法によってプライマー樹脂組成物を乾燥状態にて0.5g/m2になるように塗布して乾燥させてプライマー層を形成した。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤2.0重量%を含有する2液硬化型のウレタン系ラミネート用接着剤を用意し、このウレタン系ラミネート用接着剤を上記プライマー層上にグラビアロ−ルコ−ト法によって乾燥状態にて膜厚5.0g/m2になるように塗布して乾燥させてラミネート用接着剤層を形成した。
なお、2液硬化型のウレタン系ラミネート用接着剤は、主剤(三井化学ポリウレタン株式会社製 商品名「タケラックA315」)100重量部と、硬化剤(三井化学ポリウレタン株式会社製 商品名「タケネートA50」)10重量部とから構成されていた。
一方、ポリエチレンテレフタレ−ト100重量部、白色顔料としての酸化チタン8重量部、紫外線吸収剤としての超微粒子酸化チタン(粒子径:0.01〜0.06μm)3重量部及びガラス繊維3重量部を押出機に供給して溶融混練してシート状に押出して厚さが100μmの白色のポリエチレンテレフタレートシート2を製造した。なお、ポリエチレンテレフタレートシート2は、耐候性を有していた。
次に、上記ポリエチレンテレフタレートシート2の片面に汎用の要領にてコロナ放電処理を施した。しかる後、軟質アルミニウム箔1のラミネート用接着剤層上にポリエチレンテレフタレートシート2をそのコロナ放電処理面が軟質アルミニウム箔1側となるように積層して一体化させて積層シートBを製造した。
しかる後、変性ポリプロピレン系樹脂(三井化学社製 商品名「アドマーQE060」、融点:142℃)100重量部及びビニルトリメトキシシラン3重量部を押出機に供給して溶融混練し押出機から上記積層シートBの軟質アルミニウム箔の表面にシート状に押出ラミネートして厚みが100μmの封止層3を積層一体化して太陽電池用裏面保護シートAを得た。
次に、透明保護基板として厚さ1.8mmの非強化青板ガラス基板5の一面に熱CVD法によってSnO2透明導電膜を形成したものを用意した。この非強化青板ガラス基板5上に、公知のプラズマCVD法によって、pin素子構造のシングル構造アモルファスシリコン半導体膜を形成し、更に、公知のDCマグネトロンスパッタによって、ZnO透明導電膜及び銀薄膜からなる裏面電極6を形成してアモルファスシリコン薄膜太陽電池Cを製造した。
続いて、アモルファスシリコン薄膜太陽電池Cの非強化青板ガラス基板5におけるシングル構造アモルファスシリコン半導体膜の形成面上に上記太陽電池用裏面保護シートAをその封止層3が対向した状態となるように重ね合わせて積層体を形成し、この積層体を170℃にてその厚み方向にロールにて押圧することによって、アモルファスシリコン薄膜太陽電池Cおけるシングル構造アモルファスシリコン半導体膜の形成面上に上記太陽電池用裏面保護シートAを積層一体化して太陽電池モジュールDを得た。
(実施例1)
参考例1と同様の要領で積層シートBを製造した。次に、変性ポリプロピレン系樹脂(三井化学社製 商品名「アドマーQE060」、融点:142℃)100重量部及びビニルトリメトキシシラン3重量部を封止層を構成する組成物として第一押出機に供給する一方、融点が168℃で且つ曲げ弾性率1700MPaのホモポリプロピレン80重量部と、融点が160℃で且つ曲げ弾性率が550MPaの軟質ホモプロピレン20重量部とからなる曲げ弾性率が1200MPaのポリプロピレン系樹脂を熱緩衝層を構成する組成物として第二押出機に供給し、第一、第二押出機を共に接続させているTダイからシート状に共押出して、厚みが80μmの封止層3と、厚みが120μmの熱緩衝層4とが積層一体化されてなる重合シートを製造した。
次に、重合シートの熱緩衝層4の表面に6KW及び処理速度20m/分の条件下にてコロナ放電処理を施してフィルム表面の表面張力が50dyne/cm以上となるように調整した。
しかる後、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤1.8重量%を含有する2液硬化型のウレタン系ラミネート用接着剤を用意し、このウレタン系ラミネート用接着剤を上記重合シートの熱緩衝層4上にグラビアロ−ルコ−ト法によって乾燥状態にて膜厚5.0g/m2になるように塗布して乾燥させてラミネート用接着剤層を形成した。
なお、2液硬化型のウレタン系ラミネート用接着剤は、主剤(三井化学ポリウレタン株式会社製 商品名「タケラックA315」)100重量部と、硬化剤(三井化学ポリウレタン株式会社製 商品名「タケネートA50」)10重量部とから構成されていた。
そして、重合シートのラミネート用接着剤層上に積層シートBをそのポリエチレンテレフタレートシート2が対向した状態となるように積層一体化して太陽電池用裏面保護シートAを得た。
次に、参考例1と同様の要領でアモルファスシリコン薄膜太陽電池Cを製造した。参考例1と同様にして、アモルファスシリコン薄膜太陽電池Cおけるシングル構造アモルファスシリコン半導体膜の形成面上に上記太陽電池用裏面保護シートAを積層一体化して太陽電池モジュールDを得た。
(参考例2)
封止層を構成している変性ポリプロピレン系樹脂として、変性ポリプロピレン系樹脂(三菱化学社製 商品名「モディックP555」、融点:134℃)を用いたこと以外は参考例1と同様にして太陽電池用裏面保護シート及び太陽電池モジュールを得た。
(実施例2)
熱緩衝層を構成する組成物として、融点が143℃で且つ曲げ弾性率1200MPaのランダムポリプロピレン100重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして太陽電池用裏面保護シート及び太陽電池モジュールを得た。
(比較例1)
参考例1と同様にして積層シートBを製造した。又、有機過酸化物としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート(日本油脂社製 商品名「パーブチルE」)0.8重量%を含有する厚さ400μmのエチレン−酢酸ビニル共重合体シ−トを用意した。
そして、積層シートBの軟質アルミニウム箔上にエチレン−酢酸ビニル共重合体シ−トを積層一体化して太陽電池用裏面保護シートを得た。
次に、参考例1と同様の要領でアモルファスシリコン薄膜太陽電池Cを製造した。アモルファスシリコン薄膜太陽電池Cの非強化青板ガラス基板5におけるシングル構造アモルファスシリコン半導体膜の形成面上に上記太陽電池用裏面保護シートAをそのエチレン−酢酸ビニル共重合体シ−トが対向した状態となるように重ね合わせて積層体を形成し、この積層体を175℃にて3分間に亘って厚み方向にロールにて押圧することによって、アモルファスシリコン薄膜太陽電池Cおけるシングル構造アモルファスシリコン半導体膜の形成面上に上記太陽電池用裏面保護シートAを積層一体化して太陽電池モジュールDを得た。
(比較例2)
封止層にビニルトリメトキシシランを含有させなかったこと以外は実施例1と同様にして太陽電池用裏面保護シートA及び太陽電池モジュールDを得た。
得られた太陽電池用裏面保護シートの水蒸気透過率及び接着性を下記の要領で測定し、その結果を表1に示した。更に、得られた太陽電池モジュールのラミネート性及び出力低下率を下記の要領で測定し、その結果を表1に示した。
(水蒸気透過率)
得られた太陽電池用裏面保護シートの水蒸気透過率を温度40℃、相対湿度90%の条件下にて、JIS K7126に準拠してGTR社から商品名「GTR−100GW/30X」にて市販されている測定機を用いて測定した。
(初期接着性)
太陽電池用裏面保護シートから幅20mmの試験片を切り出した。ガラス板上に試験片をその封止層又はエチレン−酢酸ビニル共重合体シートによって接着し、JIS K6854に準拠して引張速度300mm/分にて90°剥離試験を行い、下記基準に基づいて評価した。
○:引張り力が19.6N以上を示すが、連続的に試験片をガラス板から剥離できず、
封止層又はエチレン−酢酸ビニル共重合体層が凝集破壊した。
△:引張り力が19.6N以上で且つ連続的に試験片をガラス板から剥離できた。
×:引張り力が19.6N未満で且つ連続的に試験片をガラス板から剥離できた。
(耐久接着性)
太陽電池モジュールを85℃、相対湿度85%の環境下に1000時間に亘って放置した後、上記接着性同様に、JIS K6854に準拠して90°剥離試験を行い、下記基準に基づいて評価した。なお、比較例2、3は、試験片が自然剥離した。
○:引張り力が19.6N以上を示すが、連続的に試験片をガラス板から剥離できず、
エチレン−酢酸ビニル共重合体層が凝集破壊した。
△:引張り力が19.6N以上で且つ連続的に試験片をガラス板から剥離できた。
×:引張り力が19.6N未満で且つ連続的に試験片をガラス板から剥離できた。
(ラミネート性)
得られた太陽電池モジュールにおけるアモルファスシリコン薄膜太陽電池Cの非強化青板ガラス基板5上に一辺が90cmの平面正方形状の試験枠を任意の箇所に形成した。試験枠内において、太陽電池と太陽電池用裏面保護シートとの界面にて発生している直径が1mm以上の気泡数を目視により数えた。太陽電池モジュールを10個用意し、太陽電池モジュール毎の気泡数の相加平均値を気泡数とし、下記基準により評価した。なお、比較例1では、太陽電池と太陽電池用裏面保護シートとを積層一体化させる際に太陽電池用裏面保護シートに皺が発生したので気泡数を数えなかった。
○:気泡は発生していなかった。
△:気泡は発生していたが2個以下であった。
×:気泡が2個を超えていた。
(出力低下率)
JIS C8917−1989に基づいて太陽電池モジュールの環境試験を行い、試験前後の光起電力の出力を測定して下記式に基づいて算出した。
出力低下率(%)=100×(試験後の光起電力の出力−試験前の光起電力の出力)
/試験前の光起電力の出力
Figure 0005368921
1 金属箔
2 耐候性基材
3 封止層
4 熱緩衝層
5 透明基板
A 太陽電池用裏面保護シート
B 積層シート
C 太陽電池
D 太陽電池モジュール

Claims (4)

  1. 金属箔上に耐候性基材が積層一体化されている積層シートの何れか一方の面に封止層が積層一体化されてなり、上記封止層は、変性ポリオレフィン系樹脂100重量部と、R1Si(OR23で示されるシラン化合物0.001〜20重量部とを含有している太陽電池用裏面保護シートであって、上記積層シートと上記封止層との間に、JIS K7121に準拠して測定された融点が160℃以上で且つ曲げ弾性率が500〜1500MPaであるポリオレフィン系樹脂からなる熱緩衝層が介在していることを特徴とする太陽電池用裏面保護シート。但し、R1は、非加水分解性であって且つ重合性を有する官能基を示す。R2は、炭素数が1〜5であるアルキル基を示す。
  2. 封止層は、不飽和カルボン酸又はその無水物でグラフト変性され且つJIS K7121に準拠して測定された融点が120〜170℃である変性ポリオレフィン系樹脂100重量部と、R1Si(OR23で示されるシラン化合物0.001〜20重量部とを含有していることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池用裏面保護シート。但し、R1は、非加水分解性であって且つ重合性を有する官能基を示す。R2は、炭素数が1〜5であるアルキル基を示す。
  3. 封止層は、不飽和カルボン酸又はその無水物でグラフト変性され且つJIS K7121に準拠して測定された融点が120〜170℃である変性ポリプロピレン系樹脂100重量部と、R1Si(OR23で示されるシラン化合物0.001〜20重量部とを含有していることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池用裏面保護シート。但し、R1は、非加水分解性であって且つ重合性を有する官能基を示す。R2は、炭素数が1〜5であるアルキル基を示す。
  4. 透明基板の一面に太陽電池素子が薄膜状に形成されている薄膜太陽電池における上記透明基板の一面に、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の太陽電池用裏面保護シートがその封止層を上記太陽電池素子に対向させた状態に積層一体化されてなることを特徴とする太陽電池モジュール。
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