JP5368851B2 - 透明導電性基板の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、所望の形状にパターニングされた酸化チタン系の透明導電性膜を備えた透明導電性基板の製造方法に関する。
従来から、太陽電池や液晶表示装置等に用いられる透明導電性基板としては、透明基板上に酸化インジウム錫(ITO)等の金属酸化物からなる透明導電性の薄膜を形成したものが汎用されている。
一般に、金属酸化物の薄膜を形成する方法には、大別して、スパッタ法やPLD(パルスレーザーデポジション)法のように真空条件下で成膜する方法(真空法)と、金属酸化物粒子またはその前駆体を含むスラリーあるいは溶液を基材に塗布した後に加熱する方法(塗布法)とがあるが、これまで、透明導電性膜などの用途においては、通常、真空法が採用されていた。これは、真空法であれば、塗布法よりも高い導電性を有する膜を形成することができるからである。つまり、塗布法により形成された膜は、クラックが発生しやすく均一な膜を作製するのが困難であり、真空法で形成された膜に比べて、膜の緻密性に劣る傾向があり、結晶粒同士のネッキングが弱くなるため、導電性が低下しやすいと考えられていたのである。また、塗布法は、真空法に比べて、系外から不純物が混入する可能性が高く、形成された膜への不純物の混入も膜の緻密性を損なう原因として懸念されていた。
ところで、これまで透明導電性膜の材料であるITOの主成分としてIn(インジウム)が使われてきたが、資源枯渇や価格急騰といった問題が深刻となっている。このため、他の金属を用いた透明導電性膜が要望されており、代替材料として酸化チタンを用いた透明導電性基板の開発が進められている(特許文献1、2参照)。
しかしながら、酸化チタン系材料を用いて上述した真空法により膜形成を行った場合、成膜直後に酸化物(酸化チタン)膜となる。酸化チタンは、結晶状態(アナターゼ型結晶相、ルチル型結晶相)は勿論のことアモルファス相においても、酸やアルカリに不溶であることが知られており、このため、前記酸化チタン膜にはウエットエッチング処理を施すことができない。したがって、これまで、酸化チタン系の透明導電性膜では、所望のパターンが設けられず、その用途はいわゆるベタ膜として使用できる範囲に限定されてしまう、という問題があった。
本発明は、上記のような事情に鑑みなされたものであって、良好な導電性と透明性を有し、所望の形状にパターニングされた酸化チタン系透明導電性膜を備えた透明導電性基板を容易に得ることができる透明導電性基板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、前記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、成膜方法として、酸化チタン系透明導電性膜形成用前駆体液を基材に塗布した後に加熱する方法を採用することとし、前記前駆体液が加熱されて完全な酸化物に変化するまでの中間状態で適当なエッチング液を用いてエッチング処理を施すことによりパターニングを行うことを着想した。そして、塗布後の前駆体液からなる膜を特定温度以下で保持しつつ該膜を乾燥させて膜中の溶媒等を除去した段階の膜状態であれば、所定の酸と過酸化水素とを含む特定組成のエッチング液を用いて速やかに溶解、除去することが可能であり、その後、アニール処理を施すことにより、良好な導電性と透明性を備えた酸化チタン系透明導電性基板を製造できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
(1)透明基板上に酸化チタン系透明導電性膜形成用前駆体液を塗布し、350℃以下の温度条件下で乾燥被膜を得た後、得られた被膜に、1〜30重量%が過酸化水素、0.1〜30重量%が硝酸、燐酸、硫酸、過塩素酸、シュウ酸、酢酸、グリコリック酸、グルコン酸および乳酸からなる群より選ばれる1種以上の酸、残部が水からなる組成のエッチング液を用いてエッチング処理を施し、その後、アニール処理を施す、ことを特徴とする透明導電性基板の製造方法。
(2)酸化チタン系透明導電性膜形成用前駆体液が、(A)チタン化合物を過酸化水素と反応させて得られる反応生成物と(B)ニオブ化合物またはタンタル化合物を過酸化水素と反応させて得られる反応生成物とを含む、前記(1)に記載の透明導電性基板の製造方法。
(3)エッチング処理が、乾燥被膜の上に所定のパターンを有するレジスト膜を形成し、該レジスト膜に覆われていない部分を前記エッチング液を用いて除去することにより行われる、前記(1)または(2)に記載の透明導電性基板の製造方法。
(4)エッチング処理に供する前記エッチング液の液温は30〜50℃とする、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の透明導電性基板の製造方法。
(5)100℃以下の温度条件下で乾燥被膜を得る、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の透明導電性基板の製造方法。
(6)得られる透明導電性基板が、透明基板と、該透明基板上に形成されニオブまたはタンタルがドープされた酸化チタンからなるパターン化された透明導電性膜とからなる、前記(2)〜(5)のいずれかに記載の透明導電性基板の製造方法。
(1)透明基板上に酸化チタン系透明導電性膜形成用前駆体液を塗布し、350℃以下の温度条件下で乾燥被膜を得た後、得られた被膜に、1〜30重量%が過酸化水素、0.1〜30重量%が硝酸、燐酸、硫酸、過塩素酸、シュウ酸、酢酸、グリコリック酸、グルコン酸および乳酸からなる群より選ばれる1種以上の酸、残部が水からなる組成のエッチング液を用いてエッチング処理を施し、その後、アニール処理を施す、ことを特徴とする透明導電性基板の製造方法。
(2)酸化チタン系透明導電性膜形成用前駆体液が、(A)チタン化合物を過酸化水素と反応させて得られる反応生成物と(B)ニオブ化合物またはタンタル化合物を過酸化水素と反応させて得られる反応生成物とを含む、前記(1)に記載の透明導電性基板の製造方法。
(3)エッチング処理が、乾燥被膜の上に所定のパターンを有するレジスト膜を形成し、該レジスト膜に覆われていない部分を前記エッチング液を用いて除去することにより行われる、前記(1)または(2)に記載の透明導電性基板の製造方法。
(4)エッチング処理に供する前記エッチング液の液温は30〜50℃とする、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の透明導電性基板の製造方法。
(5)100℃以下の温度条件下で乾燥被膜を得る、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の透明導電性基板の製造方法。
(6)得られる透明導電性基板が、透明基板と、該透明基板上に形成されニオブまたはタンタルがドープされた酸化チタンからなるパターン化された透明導電性膜とからなる、前記(2)〜(5)のいずれかに記載の透明導電性基板の製造方法。
本発明によれば、良好な導電性と透明性を有し、所望の形状にパターニングされた酸化チタン系透明導電性膜を備えた透明導電性基板を容易に得ることができる、という効果がある。この透明導電性基板は、例えば液晶表示装置であれば、MIM、ダイオード、FET(バックトランジスタ)、バリスタなどを用いたアクティブマトリックス型液晶表示装置のように、複雑にパターニングされた透明導電性膜を要する用途においても広く利用することができる。
また、本発明は、従来の真空法のように、設備的なコストが嵩む大掛かりな真空装置を要しないので、既存の設備を用いて簡便な操作で安価に実施することができ、工業的な大量生産に適している、という効果も得られる。
また、本発明は、従来の真空法のように、設備的なコストが嵩む大掛かりな真空装置を要しないので、既存の設備を用いて簡便な操作で安価に実施することができ、工業的な大量生産に適している、という効果も得られる。
本発明の透明導電性基板の製造方法においては、まず、透明基板上に酸化チタン系透明導電性膜形成用前駆体液を塗布する。
本発明において用いられる酸化チタン系透明導電性膜形成用前駆体液(以下、単に「前駆体液」と称することもある)は、加熱によって透明導電性を発現しうる酸化チタン系酸化物となりうる材料であれば、特に制限されないが、好ましくは、(A)チタン化合物を過酸化水素と反応させて得られる反応生成物と(B)ニオブ化合物またはタンタル化合物(以下、「ニオブ化合物またはタンタル化合物」を纏めて「ドーパント化合物」と称し、「ニオブまたはタンタル」を纏めて「ドーパント」と称することもある)を過酸化水素と反応させて得られる反応生成物とを含んでなるものがよい。この前駆体液は、(A)チタン化合物および(B)ニオブ化合物またはタンタル化合物がペルオキシ化されてなる錯体(ペルオキシ錯体)を含むものであり、該ペルオキシ錯体は、加熱によりニオブまたはタンタルがドープされた酸化チタンとなる金属酸化物前駆体である。このように、周期律表のVA族に属する5価のニオブまたはタンタルが酸化チタンにドープされた金属酸化物で形成された膜は、より良好な導電性を示す。
本発明において用いられる酸化チタン系透明導電性膜形成用前駆体液(以下、単に「前駆体液」と称することもある)は、加熱によって透明導電性を発現しうる酸化チタン系酸化物となりうる材料であれば、特に制限されないが、好ましくは、(A)チタン化合物を過酸化水素と反応させて得られる反応生成物と(B)ニオブ化合物またはタンタル化合物(以下、「ニオブ化合物またはタンタル化合物」を纏めて「ドーパント化合物」と称し、「ニオブまたはタンタル」を纏めて「ドーパント」と称することもある)を過酸化水素と反応させて得られる反応生成物とを含んでなるものがよい。この前駆体液は、(A)チタン化合物および(B)ニオブ化合物またはタンタル化合物がペルオキシ化されてなる錯体(ペルオキシ錯体)を含むものであり、該ペルオキシ錯体は、加熱によりニオブまたはタンタルがドープされた酸化チタンとなる金属酸化物前駆体である。このように、周期律表のVA族に属する5価のニオブまたはタンタルが酸化チタンにドープされた金属酸化物で形成された膜は、より良好な導電性を示す。
前記前駆体液は、i)(A)チタン化合物を過酸化水素と反応させることにより得られた反応生成物であるチタンのペルオキシ錯体と、(B)ドーパント化合物を過酸化水素と反応させることにより得られた反応生成物であるドーパントのペルオキシ錯体とを所望の割合で混合して得られたものであってもよいし、ii)(A)チタン化合物と(B)ドーパント化合物とを予め所望の割合で混合した混合物を過酸化水素と反応させることにより得られたものであってもよい。
前記前駆体液を得るに際し、(A)チタン化合物もしくは該チタン化合物由来のペルオキシ錯体と、(B)ドーパント化合物もしくは該ドーパント化合物由来のペルオキシ錯体との混合割合は、最終的に形成された酸化チタン膜におけるドーパント(ニオブまたはタンタル)の含有比率が0.1〜40モル%、好ましくは5〜30モル%となるようにすればよい。前記(B)(ドーパント化合物もしくは該ドーパント化合物由来のペルオキシ錯体)が前記範囲よりも少ないと、ドープ効果が不充分となり、導電性が低下するおそれがあり、一方、前記(B)が前記範囲よりも多くても、導電性が低下したり、膜の透明性が低下するおそれがある。
前記前駆体液を得るに際し、過酸化水素による反応(すなわち、ペルオキシ化反応)は、例えば、チタン化合物、ドーパント化合物またはこれらの混合物を適当な溶媒により溶解させ、必要に応じて攪拌しつつ、濃度1〜60重量%程度の過酸化水素水を添加することにより行うことができる。チタン化合物またはドーパント化合物に反応させる過酸化水素の量は、特に制限はないが、1モルのチタン化合物につき通常0.8〜20モル、1モルのドーパント化合物につき通常0.8〜20モルである。ペルオキシ化反応の反応時間は、通常1秒〜60分、好ましくは5分〜20分程度である。なお、過酸化水素によるペルオキシ化反応は、通常、激しい発熱を伴うので、反応は冷却しながら(具体的には、内温を−10℃以下に保つようにして)行うことが望ましい。反応後、さらに、−10℃以下に冷却しつつ熟成保持してもよい。
前記過酸化水素によるペルオキシ化反応に用いることのできる溶媒としては、特に制限はなく、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコール等の、一般的な水系やアルコール系の水溶性溶剤等が用いられるが、前駆体液の保存安定性(ポットライフ)の観点からは、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、ジアセトンアルコール(別名;4−ヒドロキシ−4−メチルペンタン−2−オン)、γ−ブチロラクトン、4−ヒドロキシ−2−ブタノン、5−ヒドロキシ−2−ペンタノン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、テトラヒドロフラン−2−カルボン酸、2−メチル−1,3−プロパンジオール等が特に好ましい。
前記過酸化水素によるペルオキシ化反応に用いることのできる溶媒としては、特に制限はなく、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコール等の、一般的な水系やアルコール系の水溶性溶剤等が用いられるが、前駆体液の保存安定性(ポットライフ)の観点からは、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、ジアセトンアルコール(別名;4−ヒドロキシ−4−メチルペンタン−2−オン)、γ−ブチロラクトン、4−ヒドロキシ−2−ブタノン、5−ヒドロキシ−2−ペンタノン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、テトラヒドロフラン−2−カルボン酸、2−メチル−1,3−プロパンジオール等が特に好ましい。
前記(A)チタン化合物は、チタン源としてTi原子を含むものであれば特に制限はなく、例えば、塩化チタン(二塩化チタン、三塩化チタン、四塩化チタン等)、チタンアルコキシド(メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド等)、硫酸チタニル、金属チタン、水酸化チタン(オルトチタン酸)、オキシ硫酸チタン等を用いることができる。
前記(B)ドーパント化合物のうちニオブ化合物は、ニオブ源としてNb原子を含むものであれば特に制限はなく、例えば、塩化ニオブ、ニオブアルコキシド(メトキシド、エトキシド等)、金属ニオブ、水酸化ニオブ等を用いることができる。また、前記(B)ドーパント化合物のうちタンタル化合物は、タンタル源としてTa原子を含むものであれば特に制限はなく、例えば、塩化タンタル、タンタルアルコキシド(メトキシド、エトキシド等)、金属タンタル、水酸化タンタル等を用いることができる。
なお、上記のうち、チタンアルコキシド、ニオブアルコキシド、タンタルアルコキシドは、水分と接触すると直ちに反応する不安定な物質なので、乾燥(低湿度)雰囲気で扱うことが好ましい。
前記(B)ドーパント化合物のうちニオブ化合物は、ニオブ源としてNb原子を含むものであれば特に制限はなく、例えば、塩化ニオブ、ニオブアルコキシド(メトキシド、エトキシド等)、金属ニオブ、水酸化ニオブ等を用いることができる。また、前記(B)ドーパント化合物のうちタンタル化合物は、タンタル源としてTa原子を含むものであれば特に制限はなく、例えば、塩化タンタル、タンタルアルコキシド(メトキシド、エトキシド等)、金属タンタル、水酸化タンタル等を用いることができる。
なお、上記のうち、チタンアルコキシド、ニオブアルコキシド、タンタルアルコキシドは、水分と接触すると直ちに反応する不安定な物質なので、乾燥(低湿度)雰囲気で扱うことが好ましい。
前記(A)チタン化合物および前記(B)ニオブ化合物またはタンタル化合物としては、水酸化物を用いることが好ましい。すなわち、前記(A)として水酸化チタンを用い、前記(B)として水酸化ニオブまたは水酸化タンタルを用いるか、もしくは、これら水酸化物以外のチタン化合物およびドーパント化合物を用い、過酸化水素と反応させる前に予めアルカリあるいは水を加えるなどして水酸化し、生じた水酸化物の沈殿を分取、洗浄すればよい。このように、水酸化物を過酸化水素と反応させて得られたペルオキシ錯体であれば、炭素原子を含む有機部位が全く存在しないことになり、高温に加熱して有機部位を分解・揮散させる必要がないため、酸化物に変換する際のアニール処理時の加熱温度を比較的低温に設定することができるので好ましい。
前記前駆体液の固形分濃度は、通常、10重量%以下とするのが好ましく、特に、前駆体液の保存安定性(ポットライフ)の観点からは、2重量%以下であるのがより好ましい。固形分濃度が10重量%を超えると、前駆体液の保存安定性が低下し、塗布時に粘度が上昇するので、透明基板上に均一に塗布することが困難になるおそれがある。
なお、ここでいう固形分濃度は、前駆体液を得る際に用いたチタン化合物およびドーパント化合物の合計重量が、前駆体液の全重量中に占める割合(重量%)を意味するものである。
なお、ここでいう固形分濃度は、前駆体液を得る際に用いたチタン化合物およびドーパント化合物の合計重量が、前駆体液の全重量中に占める割合(重量%)を意味するものである。
前記前駆体液を塗布する透明基板としては、熱が付加される各工程(例えば、後述する焼成(プリベーク)やアニール処理など)における加熱の際に形状および透明性を維持しうるものであれば、特に制限はない。例えば、各種ガラス等の無機材料、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、ポリイミドなどのプラスチック類)等の高分子材料などで形成された板状物、シート状物、フィルム状物等を用いることができる。透明基板の可視光透過率は、通常、90%以上、好ましくは95%以上である。
前記前駆体液を透明基板上に塗布する際の塗布方法は、均一に塗布できる方法であれば特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができる。例えば、キャピラリコート法、スピンコート法、スリットダイコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、バーコーター法等のウェットコーティング法を採用することができる。
前記前駆体液を塗布するに際し、塗布量は、例えば、最終的に形成される膜の厚み(ドライ膜厚)が10nm〜300nmとなるようにすればよい。最終的に形成されたドライ膜厚が前記範囲よりも小さいと、基材に凹凸が存在する場合などに部分的に塗布されにくい箇所や実際に塗布されていない箇所が生じるおそれがあり、一方、前記範囲よりも大きいと、透明性が低下するおそれがある。なお、このような厚みに前駆体液を塗布するためには、塗布を1回で行ってもよいし、複数回に分けて行ってもよい。
本発明の製造方法においては、前述のようにして透明基板上に塗布された前駆体液からなる膜を350℃以下の温度条件下で乾燥被膜とする。つまり、塗布後の前駆体液からなる膜を乾燥させて膜中の溶媒等を除去するにあたり、350℃以下の温度に保つ(換言すれば、350℃を超えないように維持する)ことが、本発明においては重要となる。これにより、膜中の溶媒等を除去し、膜としての形状を保持させながら、前駆体液(ペルオキシ錯体)が金属酸化物(NbまたはTaドープ酸化チタン)に変化する過程において結晶化の進行を抑制し、乾燥被膜の結晶状態を完全なアモルファス相となる手前の状態に留めておくことができる。このような乾燥被膜は後述するエッチング液により容易に溶解、除去することができるので、エッチング処理によるパターニングが可能になるのである。エッチング処理による乾燥被膜の溶解、除去をより速やかに行なううえでは、透明基板上に塗布された前駆体液からなる膜を乾燥被膜とする際の温度は低いほど好ましく、好ましくは300℃以下、より好ましくは200℃以下、さらに好ましくは100℃以下、最も好ましくは80℃以下の温度条件下で乾燥被膜とするのがよい。
透明基板上に塗布された前駆体液からなる膜を乾燥被膜とする手段は、前記温度条件下で行うものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、自然乾燥(風乾)、真空乾燥、減圧乾燥等の公知の乾燥法を採用することができる。また、後述する焼成(プリベーク)における加熱温度を前記範囲内に設定する場合であれば、当該焼成を先に行うことによって、乾燥させるようにしてもよい。
本発明の製造方法においては、前述のようにして得た乾燥被膜に、特定のエッチング液を用いてエッチング処理を施す。
前記エッチング液としては、1〜30重量%が過酸化水素、0.1〜30重量%が硝酸、燐酸、硫酸、過塩素酸、シュウ酸、酢酸、グリコリック酸、グルコン酸および乳酸からなる群より選ばれる1種以上の酸、残部が水からなる組成のエッチング液を用いる。好ましくは、5〜20重量%が過酸化水素、0.5〜15重量%が前述した群より選ばれる1種以上の酸、残部が水からなる組成のエッチング液を用いるのがよい。エッチング液における過酸化水素の濃度が1重量%未満であると、エッチングの速度が遅くなり、実用に適さないこととなり、一方、30重量%を超えても、エッチング速度のさらなる向上は期待できず、コスト的に不利になる。また、前述した群より選ばれる1種以上の酸の濃度が0.1重量%未満であると、エッチングの速度が遅くなり、実用に適さないこととなり、一方、30重量%を超えても、エッチング速度のさらなる向上は期待できず、コスト的に不利になる。
前記エッチング液としては、1〜30重量%が過酸化水素、0.1〜30重量%が硝酸、燐酸、硫酸、過塩素酸、シュウ酸、酢酸、グリコリック酸、グルコン酸および乳酸からなる群より選ばれる1種以上の酸、残部が水からなる組成のエッチング液を用いる。好ましくは、5〜20重量%が過酸化水素、0.5〜15重量%が前述した群より選ばれる1種以上の酸、残部が水からなる組成のエッチング液を用いるのがよい。エッチング液における過酸化水素の濃度が1重量%未満であると、エッチングの速度が遅くなり、実用に適さないこととなり、一方、30重量%を超えても、エッチング速度のさらなる向上は期待できず、コスト的に不利になる。また、前述した群より選ばれる1種以上の酸の濃度が0.1重量%未満であると、エッチングの速度が遅くなり、実用に適さないこととなり、一方、30重量%を超えても、エッチング速度のさらなる向上は期待できず、コスト的に不利になる。
エッチング処理に供する前記エッチング液の液温は30〜50℃とすることが好ましく、より好ましくは、35〜45℃とするのがよい。エッチング液の液温が30℃未満であると、エッチング速度が遅くなる傾向があり、一方、50℃を超えると、過酸化水素の分解、さらにはそれによるエッチング装置への影響が懸念される。
前記エッチング処理は、例えば、前記乾燥被膜の上に所定のパターンを有するレジスト膜を形成し、該レジスト膜に覆われていない部分、すなわち該レジスト膜から露出した部分をエッチング液を用いて除去することにより行うことができる。このようにしてパターニングした後、レジスト膜は、適当な溶剤(例えばメチルセロソルブアセテート等)を用いて剥離、除去すればよい。レジスト膜の形成や除去、エッチング液による露出部の除去を行う際の具体的な手法や条件については、特定のエッチング液を用いること以外、特に制限はなく、例えば、ITO膜など従来の透明導電性膜に適用されるウエットエッチング処理における手法や条件に準じて適宜行えばよい。
本発明の製造方法においては、必要に応じて、後述するアニール処理に先立ち、前述のようにしてエッチング処理を施した基板に焼成(プリベーク)を施すことができる。これにより、前駆体液(ペルオキシ錯体)は金属酸化物(NbまたはTaドープ酸化チタン)に変化していく。このときの結晶状態は、通常、アモルファス相となっているのが好ましい。
焼成の際の加熱温度は、例えば、500℃以下、好ましくは50〜400℃とするのがよい。焼成時の加熱温度が高すぎると、安定した結晶相が析出し、アニール処理による導電性向上効果の発現が見られなくなるおそれがある。また、焼成時間は、加熱温度等に応じて適宜設定すればよいのであるが、通常、1分〜1時間程度、好ましくは3分〜30分間程度である。焼成は、通常、大気中で行われる。
焼成の際の加熱温度は、例えば、500℃以下、好ましくは50〜400℃とするのがよい。焼成時の加熱温度が高すぎると、安定した結晶相が析出し、アニール処理による導電性向上効果の発現が見られなくなるおそれがある。また、焼成時間は、加熱温度等に応じて適宜設定すればよいのであるが、通常、1分〜1時間程度、好ましくは3分〜30分間程度である。焼成は、通常、大気中で行われる。
本発明の製造方法においては、前述したようなエッチング処理を施した後の基板に対し、アニール処理を施す。これにより、膜を形成する金属酸化物(NbまたはTaドープ酸化チタン)はアモルファス相からアナターゼ相に結晶転移するとともに、結晶相中に酸素欠損を生じさせて導電性を向上させることができる。しかも、通常、酸素欠損を導入すると抵抗の高いルチル結晶相に変化しやすい傾向となるが、上述したペルオキシ錯体を含む前駆体液を用いることにより、酸化チタンにドープしたニオブまたはタンタルが酸素欠損を導入してもアナターゼ結晶相を安定化させる作用をなすため、得られる膜において高い導電性を発現しうる結晶状態が維持される。
本発明においてアニール処理とは、エッチング処理して得られる基板を、還元雰囲気下で、所定温度まで加熱後、所定時間その温度を維持させ、その後冷却する処理を意味する。前記アニール処理の際の還元雰囲気としては、特に制限はなく、例えば、窒素、一酸化炭素、アルゴンプラズマ、水素プラズマ、水素、真空、アンモニア、不活性ガス(アルゴン等)、あるいはこれらの混合ガスの雰囲気など、一般的な還元雰囲気が挙げられる。好ましくは、強還元雰囲気である水素雰囲気(水素ガス100%雰囲気)を採用するのがよい。
前記アニール処理における加熱温度は、金属酸化物(NbまたはTaドープ酸化チタン)の結晶相が高い導電性を発現するアナターゼ型に変化しうる温度であればよく、ドーパントの含有比率などに応じて適宜設定すればよい。アナターゼ結晶相に変化させるために必要な温度は、酸化チタンへのドープ量が多いほど高くなるのであり、アニール処理の加熱温度の下限は、通常450℃以上、好ましくは500℃以上である。他方、加熱温度があまりに高いと、アナターゼ結晶相が抵抗の高いルチル結晶相に変化し始めて導電性が低下するとともに、膜の透明性も低下する傾向があるので、アニール処理の加熱温度の上限は、通常700℃以下、好ましくは600℃以下、より好ましくは550℃以下の範囲で設定することが望ましい。ただし、ルチル結晶相に変化し始めるときの温度は、ドーパントの含有比率によって異なるのであり、ドーパントの含有比率が比較的高い場合には、アニール処理の際の加熱温度がある程度高くても、結晶相が変化して導電性が低下することはない。具体的には、上述したようなペルオキシ錯体を含む前駆体液を用いる場合、ニオブまたはタンタルの含有比率が10モル%超である場合には、前記アニール処理の加熱温度が550℃超であっても、結晶相がルチル型に変化することはなく、良好な導電性が得られる。また、アニール処理の加熱温度の設定には、上記に加えて、使用する透明基材の耐熱温度も考慮される。例えば、無アルカリガラスを透明基材として用いる場合には、通常700℃以下、好ましくは600℃以下、より好ましくは550℃以下である。アニール処理時間(加熱時間)は、加熱温度等に応じて適宜設定すればよく、通常、1分〜1時間程度、好ましくは3分〜30分間程度である。
以上のような本発明により得られる透明導電性基板の好ましい態様は、ニオブまたはタンタルがドープされた酸化チタンからなるパターン化された透明導電性膜が透明基板上に形成された透明導電性基板である。このような透明導電性膜は、アナターゼ型結晶相を有し、NbまたはTaドープ酸化チタンの多結晶体からなる薄膜であり、良好な透明性を備えると同時に、高い導電性を発現するものである。具体的には、本発明により得られる好ましい透明導電性基板の透過率は、可視光領域で、通常70%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上であり、赤外領域で、通常70%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上である。また、本発明により得られる好ましい透明導電性基板の比抵抗は、通常9×10-3Ω・cm以下、好ましくは8×10-3Ω・cm以下である。なお、これらの透過率および比抵抗は、例えば実施例で後述する方法によって測定することができる。
本発明の製造方法により得られた透明導電性基板は、例えば、タッチパネル、LED(発光素子)、液晶表示装置、有機EL表示装置、フレキシブル表示装置、プラズマ表示装置などの表示装置やその他の情報処理機器の電極や配線材料、太陽電池の電極、窓ガラスの熱線反射膜、帯電防止膜等の用途に用いられる。特に、本発明の製造方法により得られた透明導電性基板は、用途に応じて所望のパターンが形成された透明導電性膜を備えるので、例えば液晶表示装置であれば、単純マトリックス型液晶表示装置やTFTを用いたアクティブマトリックス型液晶表示装置のみでなく、MIM、ダイオード、FET(バックトランジスタ)、バリスタなどを用いたアクティブマトリックス型液晶表示装置のように、複雑にパターニングされた膜を有する透明導電性基板が要求される用途においても広く利用することができる。さらに、本発明の製造方法により得られた透明導電性基板は、屈折率が高いという特長を活かして、反射防止機能を有した帯電防止板としても有効である。
なお、上述した本発明の製造方法では、前駆体液は透明基板上に直接塗布しているが、例えば液晶表示装置のようなデバイス等の透明電極用途においては、透明基板の上に着色膜(カラーフィルター)等の中間膜を介在させ、それらの上に直接前駆体液を塗布するようにしてもよく、このように透明基板と透明導電性膜との間に中間膜を介在させた態様も本発明の範囲に包含される。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例により限定されるものではない。
なお、透明導電性基板の物性は以下の方法で測定した。
<比抵抗> 比抵抗は、抵抗率計(三菱化学(株)製「LORESTA−GP,MCP−T610」)を用いて、四端子四探針法により測定した。詳しくは、サンプルに4本の針状の電極を直線上に置き、外側の二探針間に一定の電流を流し、内側の二探針間に一定電流を流し、内側の二探針間に生じる電位差を測定し、抵抗を求めた。
<透過率> 透過率は、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光(株)製「V−670」)を用いて、190nm〜2700nmの範囲で測定した。
<結晶性> X線回折装置(理学電機(株)製「RINT2000」)を用いて、薄膜測定用のアタッチメントを使用して結晶性を評価した。
<結晶構造> エネルギー分散型X線マイクロアナライザー(TEM−EDX)を用いてチタンへのニオブのドープ状態を調べるとともに、電界放射型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて結晶構造を調べた。
<比抵抗> 比抵抗は、抵抗率計(三菱化学(株)製「LORESTA−GP,MCP−T610」)を用いて、四端子四探針法により測定した。詳しくは、サンプルに4本の針状の電極を直線上に置き、外側の二探針間に一定の電流を流し、内側の二探針間に一定電流を流し、内側の二探針間に生じる電位差を測定し、抵抗を求めた。
<透過率> 透過率は、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光(株)製「V−670」)を用いて、190nm〜2700nmの範囲で測定した。
<結晶性> X線回折装置(理学電機(株)製「RINT2000」)を用いて、薄膜測定用のアタッチメントを使用して結晶性を評価した。
<結晶構造> エネルギー分散型X線マイクロアナライザー(TEM−EDX)を用いてチタンへのニオブのドープ状態を調べるとともに、電界放射型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて結晶構造を調べた。
なお、以下の実施例および比較例において、チタンペルオキシ錯体とニオブペルオキシ錯体とを混合して前駆体液を得るに際しては、特に断りのない限り脱水エタノールを用いて、所望の固形分濃度となるように調整した。
(実施例1−1〜1−9および比較例1)
〔前駆体液の調製〕
まず、アルゴンガス雰囲気中でチタンテトライソプロポキシド4.0gを脱水エタノール28.5g中に溶解させ、得られた溶液に濃度30重量%の過酸化水素水8.0gを攪拌下で徐々に添加し、添加終了後、5分間攪拌して、ペルオキシ化反応させた。なお、反応は、溶液を入れたフラスコの周囲をドライアイスで冷却しながら行い、過酸化水素水の添加によって発熱した際に溶液の内温が−10℃を超えないように制御した。このようにして得られた反応生成物をチタンペルオキシ錯体(a1)とした。
〔前駆体液の調製〕
まず、アルゴンガス雰囲気中でチタンテトライソプロポキシド4.0gを脱水エタノール28.5g中に溶解させ、得られた溶液に濃度30重量%の過酸化水素水8.0gを攪拌下で徐々に添加し、添加終了後、5分間攪拌して、ペルオキシ化反応させた。なお、反応は、溶液を入れたフラスコの周囲をドライアイスで冷却しながら行い、過酸化水素水の添加によって発熱した際に溶液の内温が−10℃を超えないように制御した。このようにして得られた反応生成物をチタンペルオキシ錯体(a1)とした。
他方、アルゴンガス雰囲気中でニオブペンタエトキシド1.5gを脱水エタノール19.2g中に溶解させ、得られた溶液に濃度30重量%の過酸化水素水1.6gを攪拌下で徐々に添加し、添加終了後、5分間攪拌して、ペルオキシ化反応させた。なお、反応は、上記と同様に、溶液を入れたフラスコの周囲をドライアイスで冷却しながら行い、過酸化水素水の添加によって発熱した際に溶液の内温が−10℃を超えないように制御した。このようにして得られた反応生成物をニオブペルオキシ錯体(b1)とした。
次に、上記チタンペルオキシ錯体(a1)と、上記ニオブペルオキシ錯体(b1)とを、チタン:ニオブ=93:7(モル比)となるような割合で混合し、固形分濃度7重量%の前駆体液とした。
〔膜形成〕
得られた前駆体液を、透明基板(無アルカリガラス「コーニング社製1737」、厚さ0.7mm)上に、ドライ膜厚35.7nmとなるようにキャピラリコーターで一回塗布し、常温で放置することにより風乾させた後、大気中、表1に示す条件で加熱して、前駆体液からなる乾燥被膜を形成した。
得られた前駆体液を、透明基板(無アルカリガラス「コーニング社製1737」、厚さ0.7mm)上に、ドライ膜厚35.7nmとなるようにキャピラリコーターで一回塗布し、常温で放置することにより風乾させた後、大気中、表1に示す条件で加熱して、前駆体液からなる乾燥被膜を形成した。
〔エッチング処理〕
まず、得られた乾燥被膜上に、フォトリソグラフィ法により所定のパターンを有するレジスト膜を形成した。具体的には、前記被膜上にポジ型フォトレジスト(東京応化工業(株)製「OFPR−800」)を塗布した後80℃で5分間加熱して膜厚1.1μmのレジスト膜を形成し、次いで、紫外線露光機(キャノン社製「PLA−501F」)を用いてクロム製のフォトマスクを介して紫外線(波長365nmにおいて強度50mJ/cm2)を照射して露光させた後、現像液(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドの2.38重量%水溶液)に浸漬してフォトレジストの現像を行うことで、レジストパターンを形成した。
まず、得られた乾燥被膜上に、フォトリソグラフィ法により所定のパターンを有するレジスト膜を形成した。具体的には、前記被膜上にポジ型フォトレジスト(東京応化工業(株)製「OFPR−800」)を塗布した後80℃で5分間加熱して膜厚1.1μmのレジスト膜を形成し、次いで、紫外線露光機(キャノン社製「PLA−501F」)を用いてクロム製のフォトマスクを介して紫外線(波長365nmにおいて強度50mJ/cm2)を照射して露光させた後、現像液(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドの2.38重量%水溶液)に浸漬してフォトレジストの現像を行うことで、レジストパターンを形成した。
次に、この所定パターンのレジスト膜をマスクとして、ウエットエッチング法によりエッチング処理を行った。具体的には、30重量%の過酸化水素水50g、硫酸10gおよび水40gを混合してなるエッチング液(過酸化水素:15重量%、硫酸:10重量%、水75重量%)を液温43℃に調整して用い、その中に基材(前記被膜および所定パターンのレジスト膜を設けた基材)を表1に示す時間、浸漬した。その後、不要となったレジスト層をメチルセロソルブアセテートを用いて剥離させ、イオン交換水で洗浄した後、常温で放置することにより風乾させた。
上記エッチング処理を施した被膜を、走査型電子顕微鏡(SEM)および光学顕微鏡にて倍率1000倍で観察し、下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
○:SEMおよび光学顕微鏡のいずれの観察においても、残渣もなく良好なパターンが確認される。
△:光学顕微鏡による観察では良好に見えるが、SEMでは少量の残渣が観察される。
×:剥離されていない。
上記エッチング処理を施した被膜を、走査型電子顕微鏡(SEM)および光学顕微鏡にて倍率1000倍で観察し、下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
○:SEMおよび光学顕微鏡のいずれの観察においても、残渣もなく良好なパターンが確認される。
△:光学顕微鏡による観察では良好に見えるが、SEMでは少量の残渣が観察される。
×:剥離されていない。
〔アニール処理〕
エッチング処理により所定パターンを形成することができた実施例1−1〜1−9の被膜に対して、400℃で10分間焼成(プリベーク)を施した後、水素100%の還元雰囲気下にて500℃で60分間アニール処理を施すことにより、所定パターンの透明導電性膜を備えた基板(透明導電性基板)を得た。
得られた透明導電性基板は、いずれも、比抵抗が5.2×10-3Ω・cmであり、透過率が、可視領域で約80%、赤外領域で約80%であった。また、各基板における透明導電性膜の結晶相をX線回折により調べたところ、アナターゼ型であり、その結晶構造をTEM−EDXおよびFE−SEMにより観察したところ、Nbがドープされた酸化チタンの多結晶体であった。
エッチング処理により所定パターンを形成することができた実施例1−1〜1−9の被膜に対して、400℃で10分間焼成(プリベーク)を施した後、水素100%の還元雰囲気下にて500℃で60分間アニール処理を施すことにより、所定パターンの透明導電性膜を備えた基板(透明導電性基板)を得た。
得られた透明導電性基板は、いずれも、比抵抗が5.2×10-3Ω・cmであり、透過率が、可視領域で約80%、赤外領域で約80%であった。また、各基板における透明導電性膜の結晶相をX線回折により調べたところ、アナターゼ型であり、その結晶構造をTEM−EDXおよびFE−SEMにより観察したところ、Nbがドープされた酸化チタンの多結晶体であった。
(実施例2−1〜2−3および比較例2)
加熱条件を表2に示す通りとしたこと以外は上記実施例1−1と同様にして得た乾燥被膜に対して、エッチング液として、30重量%の過酸化水素水50g、シュウ酸1gおよび水49gを混合してなるエッチング液(過酸化水素:15重量%、シュウ酸:1重量%、水84重量%)を用い、エッチング液への浸漬時間を表2に示す通りとしたこと以外は上記実施例1−1の〔エッチング処理〕と同様の操作を施した。
上記エッチング処理を施した被膜を、上記実施例1−1と同様、走査型電子顕微鏡(SEM)および光学顕微鏡にて観察し、同じ基準で評価した。結果を表2に示す。
加熱条件を表2に示す通りとしたこと以外は上記実施例1−1と同様にして得た乾燥被膜に対して、エッチング液として、30重量%の過酸化水素水50g、シュウ酸1gおよび水49gを混合してなるエッチング液(過酸化水素:15重量%、シュウ酸:1重量%、水84重量%)を用い、エッチング液への浸漬時間を表2に示す通りとしたこと以外は上記実施例1−1の〔エッチング処理〕と同様の操作を施した。
上記エッチング処理を施した被膜を、上記実施例1−1と同様、走査型電子顕微鏡(SEM)および光学顕微鏡にて観察し、同じ基準で評価した。結果を表2に示す。
〔アニール処理〕
エッチング処理により所定パターンを形成することができた実施例2−1〜2−3の被膜に対して、400℃で10分間焼成(プリベーク)を施した後、水素100%の還元雰囲気下にて500℃で60分間アニール処理を施すことにより、所定パターンの透明導電性膜を備えた基板(透明導電性基板)を得た。
得られた透明導電性基板は、いずれも、比抵抗が5.2×10-3Ω・cmであり、透過率が、可視領域で約80%、赤外領域で約80%であった。また、各基板における透明導電性膜の結晶相をX線回折により調べたところ、アナターゼ型であり、その結晶構造をTEM−EDXおよびFE−SEMにより観察したところ、Nbがドープされた酸化チタンの多結晶体であった。
エッチング処理により所定パターンを形成することができた実施例2−1〜2−3の被膜に対して、400℃で10分間焼成(プリベーク)を施した後、水素100%の還元雰囲気下にて500℃で60分間アニール処理を施すことにより、所定パターンの透明導電性膜を備えた基板(透明導電性基板)を得た。
得られた透明導電性基板は、いずれも、比抵抗が5.2×10-3Ω・cmであり、透過率が、可視領域で約80%、赤外領域で約80%であった。また、各基板における透明導電性膜の結晶相をX線回折により調べたところ、アナターゼ型であり、その結晶構造をTEM−EDXおよびFE−SEMにより観察したところ、Nbがドープされた酸化チタンの多結晶体であった。
(比較例3−1〜3−10)
加熱条件を表3に示す通りとしたこと以外は上記実施例1−1と同様にして得た乾燥被膜に対して、エッチング液として、30重量%の過酸化水素水1.6g、硫酸0.05gおよび水98.35gを混合してなるエッチング液(過酸化水素:0.48重量%、硫酸:0.05重量%、水99.47重量%)を用い、エッチング液への浸漬時間を表3に示す通りとしたこと以外は上記実施例1−1の〔エッチング処理〕と同様の操作を施した。
上記エッチング処理を施した被膜を、上記実施例1−1と同様、走査型電子顕微鏡(SEM)および光学顕微鏡にて観察し、同じ基準で評価した。結果を表3に示す。
加熱条件を表3に示す通りとしたこと以外は上記実施例1−1と同様にして得た乾燥被膜に対して、エッチング液として、30重量%の過酸化水素水1.6g、硫酸0.05gおよび水98.35gを混合してなるエッチング液(過酸化水素:0.48重量%、硫酸:0.05重量%、水99.47重量%)を用い、エッチング液への浸漬時間を表3に示す通りとしたこと以外は上記実施例1−1の〔エッチング処理〕と同様の操作を施した。
上記エッチング処理を施した被膜を、上記実施例1−1と同様、走査型電子顕微鏡(SEM)および光学顕微鏡にて観察し、同じ基準で評価した。結果を表3に示す。
(比較例4)
上記実施例1−1と同様にして得た乾燥被膜に対して、エッチング液として、30重量%の過酸化水素水のみからなるエッチング液を用いたこと以外は、上記実施例1−1の〔エッチング処理〕と同様の操作を施した。このとき、エッチング液への浸漬時間は8分とした。
上記エッチング処理を施した被膜を、上記実施例1−1と同様、走査型電子顕微鏡(SEM)および光学顕微鏡にて観察し、同じ基準で評価したところ、エッチング状態は「△」であった。
上記実施例1−1と同様にして得た乾燥被膜に対して、エッチング液として、30重量%の過酸化水素水のみからなるエッチング液を用いたこと以外は、上記実施例1−1の〔エッチング処理〕と同様の操作を施した。このとき、エッチング液への浸漬時間は8分とした。
上記エッチング処理を施した被膜を、上記実施例1−1と同様、走査型電子顕微鏡(SEM)および光学顕微鏡にて観察し、同じ基準で評価したところ、エッチング状態は「△」であった。
(比較例5)
上記実施例1−1と同様にして得た乾燥被膜に対して、エッチング液として、10重量%の硫酸水溶液のみからなるエッチング液を用いたこと以外は、上記実施例1−1の〔エッチング処理〕と同様の操作を施した。このとき、エッチング液への浸漬時間は10分とした。
上記エッチング処理を施した被膜を、上記実施例1−1と同様、走査型電子顕微鏡(SEM)および光学顕微鏡にて観察し、同じ基準で評価したところ、エッチング状態は「×」であった。
上記実施例1−1と同様にして得た乾燥被膜に対して、エッチング液として、10重量%の硫酸水溶液のみからなるエッチング液を用いたこと以外は、上記実施例1−1の〔エッチング処理〕と同様の操作を施した。このとき、エッチング液への浸漬時間は10分とした。
上記エッチング処理を施した被膜を、上記実施例1−1と同様、走査型電子顕微鏡(SEM)および光学顕微鏡にて観察し、同じ基準で評価したところ、エッチング状態は「×」であった。
Claims (6)
- 透明基板上に酸化チタン系透明導電性膜形成用前駆体液を塗布し、350℃以下の温度条件下で乾燥被膜を得た後、得られた被膜に、1〜30重量%が過酸化水素、0.1〜30重量%が硝酸、燐酸、硫酸、過塩素酸、シュウ酸、酢酸、グリコリック酸、グルコン酸および乳酸からなる群より選ばれる1種以上の酸、残部が水からなる組成のエッチング液を用いてエッチング処理を施し、その後、アニール処理を施す、ことを特徴とする透明導電性基板の製造方法。
- 酸化チタン系透明導電性膜形成用前駆体液が、(A)チタン化合物を過酸化水素と反応させて得られる反応生成物と(B)ニオブ化合物またはタンタル化合物を過酸化水素と反応させて得られる反応生成物とを含む、請求項1に記載の透明導電性基板の製造方法。
- エッチング処理が、乾燥被膜の上に所定のパターンを有するレジスト膜を形成し、該レジスト膜に覆われていない部分を前記エッチング液を用いて除去することにより行われる、請求項1または2に記載の透明導電性基板の製造方法。
- エッチング処理に供する前記エッチング液の液温は30〜50℃とする、請求項1〜3のいずれかに記載の透明導電性基板の製造方法。
- 100℃以下の温度条件下で乾燥被膜を得る、請求項1〜4のいずれかに記載の透明導電性基板の製造方法。
- 得られる透明導電性基板が、
透明基板と、
該透明基板上に形成されニオブまたはタンタルがドープされた酸化チタンからなるパターン化された透明導電性膜とからなる、請求項2〜5のいずれかに記載の透明導電性基板の製造方法。
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