JP5368696B2 - 擬似尿臭組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、擬似尿臭組成物、並びにこれを用いた尿臭の強さ、及び尿臭に対する消臭効果の評価方法に関する。
近年、下水道整備の向上により、かつて汲み取りトイレで発生した便と尿が長期間接触することにより発生する強烈なアンモニア臭の問題は減少傾向にある。しかし、その反面、強度は弱いものの、トイレで飛び散った尿から絶えず発生するニオイの問題が大きくなってきている。また、使用済みおむつから発する尿の腐敗したニオイも問題になっている。
このような状況のもと、アンモニアとは違った、尿の乾燥や腐敗に伴って徐々に強くなる悪臭(以下、単に「尿臭」という。)に対する消臭効果の高い製品の開発が重要となっている。従来、評価に供される化合物又は組成物(以下、被検体という)の尿臭に対する消臭効果を評価するには、アンモニアのみを用いるか(特許文献1)、又は取り扱いが煩雑で感染のリスクもある実際の尿が用いられていた。しかし、アンモニアや実際の尿の臭いは、現在の水洗トイレで生じている尿臭とはニオイの質や持続性が全く異なることから、その問題の対処にはほとんど役にたたないという問題があった。
尿のニオイ成分としては、非常に腐敗が進行した状態で尿中の尿素が分解されて発するアンモニアがよく知られている。一方、腐敗していない初期のヒトの尿のニオイに関しては、300種近い成分からなること、量的にはペンタノンやヘプタノンなどのケトン類が多いことが報告されている(非特許文献1)。しかしながら、近年、現実的に問題となっている、飛び散った乾燥した尿から発するニオイや、使用後2、3日放置した時のおむつから発するニオイに関して、どの成分が重要であるかについては、未だ報告されていない。
特開平5-161696号公報 澤野清仁,「体臭とは何か」,香料,No.182,p123-130,1994
このような状況のもと、尿臭の強さ、及び尿臭に対する消臭効果をより迅速に効率よく、かつ的確に評価できる方法が求められていた。これを実現するためには、いつも同一のニオイの質を有する尿臭試験サンプルを簡便に作製できる擬似尿臭組成物の開発が不可欠である。
本発明の目的は、乾燥や腐敗に伴って強くなる尿のニオイの質や強さを正確に再現でき、トイレや使用済みおむつにおける尿臭の強さや、被検体の尿臭に対する消臭効果を好適に評価できる擬似尿臭組成物、並びにこれを用いた尿臭の強さ、及び尿臭に対する消臭効果の評価法を提供することにある。
ここで、本発明において消臭効果とは、1.消臭基剤などを用いた物理的消臭効果、2.消臭基剤などを用いた化学的消臭効果、3.香料マスキング剤や変調剤などを用いた感覚的消臭効果を意味する。
本発明者らは、半乾燥させた尿の溶剤抽出を行いAEDA(アロマ・エクストラクト・ダイリューション・アナリシス)の手法を用い、尿臭に対する寄与の大きいニオイ成分を調べたところ、最も寄与の高い成分がp-クレゾール、次にトリメチルアミンであることがわかった。これらの知見に基づき検討した結果、実際の尿臭をより正確に再現できる擬似尿臭組成物を得ることに成功した。
更に、本発明者らは、このp-クレゾールを始めとするフェノール化合物のニオイについて調べた結果、炭素数6〜10のフェノール化合物がp-クレゾールと同様の効果を有することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は炭素数6〜10のフェノール化合物を含有する擬似尿臭組成物、並びにこれを用いた、尿臭の強さ、及び尿臭に対する消臭効果の評価方法を提供するものである。
本発明の擬似尿臭組成物は、尿臭をより正確に再現できるため、これを用いることにより、被検体の消臭効果を、簡便に効率よく、かつ正確に評価することができ、尿臭の消臭関連製品の開発に多大な貢献をもたらすものである。
本発明の擬似尿臭組成物は、炭素数6〜10のフェノール化合物を必須成分として含有するものであり、具体例としてはフェノール、クレゾール(o-,m-,p-)、エチルフェノール、ジメチルフェノール、ビニルフェノール、メトキシフェノール、メトキシメチルフェノール、メトキシビニルフェノール、ジヒドロキシベンゼン(o-,m-,p-)、メチルカテコールが挙げられ、これらのうちフェノール、クレゾール(o-,m-,p-)、ジメチルフェノール、メトキシフェノール、メトキシビニルフェノール、ジヒドロキシベンゼン(o-,m-,p-)が好ましく、特にp-クレゾールが好ましい。これら炭素数6〜10のフェノール化合物は、いずれかを単独で、又は2種以上を用いることができる。なかでも、p-クレゾールを単独で、又はp-クレゾールとp-クレゾール以外の炭素数6〜10のフェノール化合物を組み合わせて使用することが好ましい。
また、本発明の擬似尿臭組成物に、更にトリメチルアミンを含有させることにより、より尿臭との類似性を高めることができる。
(a)炭素数6〜10のフェノール化合物の含有量と(b)トリメチルアミンの含有量との質量比(a)/(b)は、尿臭との類似性の観点より、好ましくは10/0〜1/9、より好ましくは8/2〜4/6、特に好ましくは6/4〜4/6である。
本発明の擬似尿臭組成物を、飛び散った尿の付着したトイレのニオイのモデルとして使用する場合には、(a)炭素数6〜10のフェノール化合物の含有量と、(b)トリメチルアミンの含有量との質量比(a)/(b)は、尿臭との類似性の観点より、好ましくは10/0〜1/9、より好ましくは8/2〜2/8、特に好ましくは6/4〜4/6である。この場合、本発明の擬似尿臭組成物を、1回の試験サンプルあたり(例えば評価用皿、評価用シート、評価用ろ紙など)0.01〜100mg程度用いるのが好ましい。
本発明の擬似尿臭組成物を、使用済みおむつの尿臭のモデルとして使用する場合には、(a)炭素数6〜10のフェノール化合物の含有量と、(b)トリメチルアミンの含有量との質量比(a)/(b)は、尿臭との類似性の観点より、好ましくは10/0〜1/9、より好ましくは9/1〜6/4、特に好ましくは9/1〜8/2である。この場合、本発明の擬似尿臭組成物を、1回の試験サンプルあたり(例えば評価用おむつなど)0.001〜10mg程度用いるのが好ましい。
また、本発明の擬似尿臭組成物に、擬似尿臭としては重要ではないが、更にアンモニア、4-ヘプタノン、ジメチルジスルフィド等の公知の尿臭成分を加えてもよい。
本発明の擬似尿臭組成物は、取り扱い性の点より、希釈剤として水、エタノール、クエン酸トリエチル、アセトン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、流動パラフィン、LPG(液化石油ガス)等の溶剤や、カチオン性、アニオン性、ノニオン性、両性等の界面活性剤を含有させ、液状として用いることができる。
本発明の擬似尿臭組成物は、液状のままで、又は固形状の担体に含浸して用いることができる。固形状の担体は、擬似尿臭組成物が担持できるものであれば特に限定されないが、例えば、シリカゲル、活性炭、ヒドロキシアパタイト、アルミナ、ゼオライト、珪藻土、粘土鉱物、サイクロデキストリン、タルク、炭酸カルシウム、ゲル化剤、セルロース及びその誘導体、紙、不織布、繊維、樹脂(ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン、ポリビニル、ポリビニリデン、エチレン−ポリビニルアルコール共重合体、ポリスチレン、ポリアクリレート、アリルスチレン共重合体)等が挙げられる。固形状担体の形態も特に限定されず、例えば粉体、粒状、シート状、塊状等として使用できる。
本発明の擬似尿臭組成物を用いた、尿臭の強さの評価は、例えば、本発明の擬似尿臭組成物と、尿臭サンプル(使用済みおむつなど)の臭いをそれぞれ嗅ぎ、比較することにより行うことができる。また、本発明の擬似尿臭組成物を用いた、尿臭に対する消臭効果の評価は、例えば、本発明の擬似尿臭組成物に、消臭効果が期待される被検体を加えるか、或いは、擬似尿臭組成物と被検体とを接触させて臭いを嗅ぎ、被検体を作用させる前の擬似尿臭組成物の臭いと比較することにより行うことができる。具体的な方法としては、カップ等を用いればよく、臭いの評価にあたっては、1〜20人の専門パネラーにより行うのが好ましく、3〜10段階で評価するのが好ましい。
また、上記のような官能試験によらず、擬似尿臭組成物に被検体を作用させた後に、擬似尿臭組成物中の各ニオイ成分をGC-MS等の化学的及び/又は物理的手法により分析し、被検体を作用させる前の擬似尿臭組成物の分析結果と比較することにより、尿臭の消臭効果を評価してもよい。
(1) 擬似尿臭組成物
<実施例1〜8、比較例1〜3>
20mLのガラスびん中に合計100mgになるように表1に示した成分を混合し、専門パネル3人により、尿臭との類似性について、以下に示す評価基準に基づき評価を行い、合議により判定した。その評価結果を表1に示す。
<尿臭との類似性の評価基準>
◎:非常に似ている(やや薬くさい、もわっとした様なニオイ)
○:よく似ている
△:やや似ていない
×:全く似ていない
Figure 0005368696
p-クレゾール単独を用いた実施例1と、p-クレゾールに加えて、又はp-クレゾール及び他のフェノール化合物(フェノール、o-ジヒドロキシベンゼン(カテコール)、メトキシビニルフェノール)に加えて、更にトリメチルアミンを組み合わせた実施例2〜8は、尿臭によく似ていた。
従来、尿臭の消臭効果の測定用に使用されていた物質単独及び公知の尿臭成分単独について検討した結果を比較例1〜3として示す。アンモニア単独(比較例1)は、刺激的なアンモニア臭で水洗トイレで問題になっている尿臭を全く想起させない。4-ヘプタノン単独(比較例2)は、初期の尿臭に共通する印象もあるが、フルーツ様であり不快感が非常に少ない。ジメチルジスルフィド(比較例3)は単なる硫黄臭であった。以上より、比較例1〜3のいずれも擬似尿臭としては使用可能なレベルではなかった。
Figure 0005368696
(2) 擬似尿臭組成物を利用した消臭効果の評価1
2-1.試験サンプルの作製
p-クレゾール/トリメチルアミン=6/4(質量比)の擬似尿臭組成物(実施例4)を用い、エタノールで更に1000倍に希釈した溶液を作製した。直径20cmの陶器製の皿に上記溶液0.3gをスプレーした後、1時間放置して、エタノールをとばして、乾燥時の尿臭の評価用に用いた。
2-2.消臭剤の調製
緑茶抽出物(FS-500M,白井松新薬製)の水−エタノール(85質量%/15質量%)5質量%溶液を調製した。
2-3.ニオイの強さの評価基準
以下に示す6段階臭気強度表示法(悪臭防止法における基準)を使用した。
5:強烈な匂い
4:強い匂い
3:楽に感知できる匂い
2:何の匂いであるかがわかる弱い匂い
1:やっと感知できる匂い
0:無臭
2-4.消臭試験
2-1で作製した擬似尿臭の付着した皿を2枚用意し、一方に2-2で調製した消臭剤を24回スプレーし、10分間放置した後に、尿臭の強さを評価をした。
その結果、消臭剤をスプレーしなかった試験皿のニオイの強度は3であったが、消臭剤をスプレーした試験皿のニオイの強度は2に低下しており、消臭効果の評価用の擬似尿臭組成物及び消臭評価法として適したものと判断した。
(3) 擬似尿臭組成物を利用した消臭効果の評価2
試験サンプルとしてp-クレゾール100%の擬似尿臭組成物(実施例1)を用い、更に生理食塩水で10000倍に希釈した溶液を作製した。下記方法にて作製した活性炭有り及び無しの5cm×5cmの消臭評価用吸収性物品に、それぞれ上記溶液5gを滴下し、1時間後に尿臭の強さを評価した。消臭評価用吸収性物品としては、市販の尿吸収パッド(花王製リリーフレディセルフ)より中央部を5cm×5cm切り抜いたもの(活性炭無し)、及び同様に中央部を5cm×5cm切り抜き、表面の不織布(肌に接する側)を剥離し、その下部に均一に活性炭を散布し(5cm×5cmあたり10mg)、再度剥離した表面の不織布を重ねたもの(活性炭有り)を用いた。
その結果、活性炭を含有しない吸収性物品からは発するニオイの強度は3であが、活性炭を含有する吸収性物品のニオイの強度は1に低下しており、消臭効果の評価用の擬似尿臭組成物及び消臭評価法として適したものと判断した。
(4) 擬似尿臭組成物を利用した消臭効果の評価3
4-1.尿臭試験サンプルの作製
p-クレゾール/フェノール/o-ジヒドロキシベンゼン(カテコール)/メトキシビニルフェノール/トリメチルアミン=25/5/5/5/60(質量比)の擬似尿臭組成物(実施例6)10mgを、幅7mm、長さ15cm、厚さ1mmのろ紙に含浸させて、尿臭試験用サンプルとした。
4-2.消臭剤サンプルの作製
オレンジオイル50mgを幅7mm、長さ15cm、厚さ1mmのろ紙に含浸させて、消臭剤サンプルとした。
4-3.消臭試験
幅1.2m、奥行き1.2m、高さ2.4mの密閉された空間を2つ用意して、両方の空間の底部に、3-1で作製した尿臭試験用サンプルを、クリップで挟んで設置した。次に一方の空間に更に、3-2で作製した消臭剤サンプルをクリップに固定し設置した。30分後に空間のニオイの強度を評価した。
その結果、消臭剤サンプルを設置しなかった空間のニオイの強度は3であったが、消臭剤サンプルを設置した空間のニオイの強度は2に低下しており、香料によるマスキング効果の評価用の擬似尿臭組成物及びマスキング評価法として適したものと判断した。

Claims (3)

  1. 炭素数6〜10のフェノール化合物、及びトリメチルアミンを含有する擬似尿臭組成物であって、
    (a)炭素数6〜10のフェノール化合物の含有量と(b)トリメチルアミンの含有量との質量比(a)/(b)が、8/2〜4/6である擬似尿臭組成物。
  2. 請求項1記載の擬似尿臭組成物を用いた尿臭の強さの評価方法。
  3. 請求項1記載の擬似尿臭組成物を用いた尿臭に対する消臭効果の評価方法。
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