図1は、本発明の第1の実施の形態を示す構成図である。図中、1は境界抽出部、2は第1距離取得部、3は参照領域設定部、4は二値化部である。境界抽出部1は、処理対象画像から濃度境界や色境界などの境界を抽出する。境界の抽出方法としては従来から用いられている方法を使用すればよい。境界の抽出は、予め処理対象画像全体に対して行っておいてもよいし、注目画素を含む予め決めておいた領域に対して逐次行ってもよい。
第1距離取得部2は、注目画素から境界までの距離(最短距離)を第1距離として取得する。第1距離の取得方法についても種々の方法が公知となっており、いずれの方法を用いてもよい。例えば、注目画素から画像の上下左右の4方向、あるいはさらに斜め方向を含む8方向に境界を探索してもよいし、注目画素を囲む画素領域を、その画素領域に境界が含まれるまで順次大きくしてゆく方法など、種々の方法を適用してよい。
参照領域設定部3は、第1距離取得部2で取得した第1距離に応じて参照領域の大きさを決定し、注目画素を含む参照領域を設定する。その際に、参照領域は境界を含む領域として設定する。後述するが、参照領域は注目画素を中心とする場合に限られず、また、非対称の形状であってもよい。なお、注目画素が境界の画素である場合には、予め決められた大きさの参照領域を設定するとよい。また、第1距離取得部2で取得した第1距離が予め決められた値よりも大きい場合には、予め決められた大きさの参照領域を設定するように構成してもよい。あるいは、二値化部4に第1距離が予め決められた値よりも大きい旨を通知するように構成してもよい。
二値化部4は、処理対象画像から参照領域設定部3で設定された参照領域の画素値を読み出し、その画素値を用いて注目画素の二値化を行う。例えば、参照領域の画素値の平均値、あるいは画素値に重み付けを行った平均値を算出し、その平均値に従って閾値を設定し、この閾値を用いて注目画素を二値化すればよい。平均値を算出する際には、境界の画素を除いて、境界以外の画素の値から平均値を算出するとよい。また、重み付けした平均値を算出する際には、境界の画素の重みを他の画素よりも小さくして算出するとよい。なお、参照領域設定部3から第1距離が予め決められた値よりも大きい旨が通知される構成では、その通知を受け取った場合に、注目画素の二値化結果として予め決められた値を出力するように構成するとよい。
図2は、本発明の第1の実施の形態における動作の一例を示す流れ図、図3は、本発明の第1の実施の形態の動作の一例における具体例の説明図である。図3(A)には処理対象画像の一部を示しており、斜線を施した画素と斜線を施していない画素とは濃度や色が異なることを示している。
S11において、境界抽出部1は処理対象画像から濃度境界や色境界などの境界を抽出する。図3(A)に示した処理対象画像から境界を抽出した結果を図3(B)に示しており、斜線を施した画素が境界として抽出された画素である。
S12において、第1距離取得部2は、注目画素から境界までの最短距離を第1距離として取得する。図3(C)において斜線を交差させて示した画素を注目画素とすると、境界として抽出された斜線を施した画素までの最短距離は1画素となる。
S13において、参照領域設定部3は、S12で第1距離取得部2により取得した第1距離に応じて、注目画素を含む参照領域を設定する。図3(D)においては、S12で取得した第1距離が1画素であったので、境界の画素を含むように1画素を加算し、注目画素を囲む2画素の領域として5×5画素の参照領域を設定した例を示しており、設定された参照領域を太線により示している。なお、注目画素が境界の画素である場合には、予め決められた大きさの参照領域を設定する。
S14において、二値化部4は、処理対象画像からS13で参照領域設定部3により設定された参照領域の画素値を読み出し、その画素値の平均値や重み付き平均値を算出して閾値とし、その閾値を用いて注目画素の二値化を行う。平均値を算出する際には、境界の画素を除いた画素の値を用いて平均値を算出するとよい。また、重み付けを行う場合には、境界の画素については他の画素よりも重みを小さく設定して重み付き平均値を算出するとよい。それぞれの画素を注目画素として二値化した結果を図3(E)に示している。
図4は、本発明の第1の実施の形態の動作の一例における参照領域の設定方法の具体例の説明図である。図2のS13において設定する参照領域についてさらに説明する。図4(A)には、太線部分と細線部分における色濃度の変化の一例を示している。破線によって原稿上の色濃度の変化を示している。例えば、このような太線と細線が描かれた画像を画像読取装置で読み取ると、読取の際の劣化により境界部分での読取誤差などによって例えば実線で示した色濃度の変化となる。さらに、非可逆の圧縮を行って伸張すると、圧縮の際に欠落した情報、例えば高周波成分の欠落により雑音成分が重畳され、例えば細線で示した色濃度の変化となる場合がある。
実線あるいは細線で示した色濃度の変化を参照すると、太線部分では境界での濃度変化に劣化が存在するものの、濃度差は確保されている。この場合に設定する参照領域の大きさを図4(B)に示す大きさとする。一方、細線部分では各線の隙間では濃度差が確保されていない。そのため、図4(B)に示す大きさの参照領域を設定すると、濃度差が確保されていない隙間部や隣の線の画素までが含まれて細線部分全体として太線であるかのように処理され、隙間部がつぶれる要因となる。上述の構成では、境界までの距離に応じた参照領域を設定するので、例えば図4(C)に示す大きさの参照領域が設定される。これにより、線の部分と隙間の部分を含む参照領域の画素に従って二値化される。この場合、参照領域内では線の部分と隙間での濃度差が確保されていないが、線の部分と線以外の部分が存在している状態での閾値が設定されるので、二値化結果はそれぞれの部分が反映されることになる。
図5は、第1距離の取得方法の別の例と参照領域の設定の一例の説明図である。第1距離取得部2が第1距離を取得する方法として、注目画素からいくつかの方向に境界を探索する方法がある。別の方法として、図5に示す方法では、注目画素を囲む画素領域を、その画素領域に境界が含まれるまで順次大きくしてゆく方法を示している。なお、注目画素を黒く塗りつぶして示しており、第1距離を取得する際の画素領域には斜線を付して示している。
図5(A)では、注目画素を囲む8画素あるいは注目画素を含む9画素の領域を参照し、この領域に境界の画素が存在するか否かを判定する。1画素でも境界の画素が存在していれば、第1距離取得部2はその旨を参照領域設定部3に伝え、参照領域設定部3は例えば図5(A)の領域を含む図5(B)に示す大きさの参照領域を設定する。
図5(A)に示した領域に境界の画素が存在しない場合には、その領域を囲む図5(C)に示す領域を参照し、この領域に境界の画素が存在するか否かを判定する。1画素でも境界の画素が存在していれば、第1距離取得部2はその旨を参照領域設定部3に伝え、参照領域設定部3は例えば図5(C)の領域を含む図5(D)に示す大きさの参照領域を設定する。
図5(C)に示した領域にも境界の画素が存在しない場合には、その領域を囲む図5(E)に示す領域を参照し、この領域に境界の画素が存在するか否かを判定する。1画素でも境界の画素が存在していれば、参照領域設定部3は例えば図5(F)に示す大きさの参照領域を設定する。このようにして、順に領域を変更しながら境界の画素の存在を判定してゆき、存在していた領域に対応する大きさの参照領域を設定すればよい。この方法でも、注目画素からの最短距離に応じた参照領域が設定される。
図6は、本発明の第1の実施の形態の動作の一例における参照領域の設定方法の別の具体例の説明図である。図6(A)に示す例では、斜線を付した着色領域が存在する。この着色領域中の×印が注目画素である。この注目画素から境界までの第1距離を両矢印で示しているが、この第1距離が予め決められた値よりも大きい場合を示している。このような場合には、予め決められた大きさの参照領域を設定するとよい。図6(A)では矩形により設定された参照領域を示している。
境界を含む参照領域を設定することにより、例えば着色領域については内部の画素まで背景とは異なる値、例えば背景を0とすれば着色領域の内部は1に二値化される。図6(A)で示した例では着色領域に文字「A」が存在するため、文字「A」を境界として含む参照領域が設定された場合には着色領域の画素の二値化結果は0となる。着色領域をどのように二値化するかにもよるが、着色領域の二値化結果としては、例えば図6(B)に示すように文字は二値化結果に残し、着色領域については、着色領域が存在していることを示す意味でその外郭を二値化結果に反映させるとよい。この外郭としてどの程度の画素数を残すかによって、第1の距離に対して予め決めておく値を設定しておけばよい。なお、この予め決めておく値は、太い文字について中抜けを生じない値としておくことが望ましい。
図6(B)を参照すると、着色領域のうち第1距離が予め決められた値よりも大きい画素については、二値化により背景部分の値に変換されている。このことから、第1距離が予め決められた値よりも大きい場合には、二値化部4は着色領域の画素であっても背景について出力する値を出力すればよい。
図6(C)には参照領域の大きさを固定した場合を示しており、文字「A」につぶれが見られる。また、図6(D)には参照領域の大きさを図6(C)の場合よりも小さい大きさで固定した場合を示しており、この場合には文字「A」が白抜けしている。上述の第1の実施の形態により二値化すれば、文字のつぶれや白抜けが生じずに図6(B)に示す二値化結果が得られる。
図7は、本発明の第2の実施の形態を示す構成図である。図中、5は第2距離取得部、6は他方向境界検出部である。上述の第1の実施の形態と異なる部分について主に説明してゆく。この第2の実施の形態では、上述の第1の実施の形態の構成に、さらに第2距離取得部5、他方向境界検出部6を有している。なお、このうちいずれかを有する構成であってもよい。
第2距離取得部5は、第1距離取得部2が第1距離を取得する際に検出した境界を第1境界とし、注目画素から第1境界への方向に次の境界を第2境界として検出して、注目画素から第2境界までの距離を第2距離として取得する。
他方向境界検出部6は、注目画素から上述の第1境界とは異なる方向に存在する境界を他方向境界として検出する。
参照領域設定部3は、上述の第1の実施の形態では第1距離より大きい参照領域を設定したが、この第2の実施の形態において第2距離取得部5を有する構成では、上限として第2距離取得部5で取得した第2距離を用い、第1距離より大きく第2距離より小さい参照領域を設定する。また、他方向境界検出部6を有する構成では、注目画素から前記第1境界への方向とは異なる方向については、他方向境界検出部6で検出した他方向境界を含まないように、参照領域を設定する。第2距離取得部5と他方向境界検出部6を有する構成では、これらを組み合わせた参照領域を設定することになる。
二値化部4は、上述の第1の実施の形態で説明したとおり、参照領域の画素値を用いて注目画素の二値化を行う。参照領域の画素に対して重み付けした平均値に従って閾値を設定して注目画素の二値化を行う場合には、その重みとして、第1境界と第2境界に挟まれた領域の画素の重みを他の画素よりも大きくする。もちろん、境界の画素について他の画素よりも重みを小さくし、あるいは境界の画素を用いずに平均値を算出してもよいことは上述の通りである。
図8は、本発明の第2の実施の形態における動作の一例を示す流れ図である。ここでは第2距離取得部5と他方向境界検出部6をともに有する構成として説明する。S21において、境界抽出部1は処理対象画像から濃度境界や色境界などの境界を抽出する。S22において、第1距離取得部2は、注目画素から境界までの最短距離を第1距離として取得する。なお、第1距離を取得する際に検出した境界を第1境界とする。S21およびS22の処理は上述の第1の実施の形態で説明したとおりである。
S23において、第2距離取得部5は、注目画素から第1境界への方向に、第1境界の次の境界を探索して、見つけた境界を第2境界とし、注目画素から第2境界までの距離を第2距離として取得する。
S24において、他方向境界検出部6は、注目画素から第1境界とは異なる方向に存在する境界を他方向境界として検出する。第1境界とは異なる方向として、複数の方向について他方向境界を検出するとよい。
S25において、参照領域設定部3は、S22で取得した第1距離より大きくS23で取得した第2距離より小さい大きさの参照領域を設定する。設定した参照領域に、S24で検出した他方向境界が含まれる場合には、その他方向境界を含まないように参照領域を変更する。あるいは、第1境界への方向についてはS22で取得した第1距離より大きくS23で取得した第2距離より小さい大きさとするとともに、他の方向については他方向境界を含まない大きさの参照領域を設定してもよい。
S26において、二値化部4は、処理対象画像からS25で参照領域設定部3により設定された参照領域の画素値を読み出し、ここでは画素値の重み付き平均値を算出して閾値とし、その閾値を用いて注目画素の二値化を行う。重みは、第1境界と第2境界に挟まれた領域の画素の重みを他の画素よりも大きくし、境界の画素について他の画素よりも重みを小さくする。境界の画素については、重みを0とし、あるいは使用しないようにしてもよい。
処理対象画像におけるそれぞれの画素を順に注目画素として上述の処理によって二値化することにより、二値画像が得られる。
図9は、本発明の第2の実施の形態の動作の一例における具体例の説明図である。図9(A)には文字「H」が描かれており、×印が注目画素である。この例では、図中に上と記載した方向に注目画素から最短距離となる境界が存在しており、この境界が第1境界となり、この境界までの距離が第1距離となる。S23では、注目画素から第1境界への方向に、次の境界を探索して第2境界とする。この例では、文字線の注目画素側の境界が第1境界、反対側の境界が第2境界となる。
一方、S24では注目画素から第1境界とは異なる方向に境界を探す。図中の左と右に文字「H」の線が存在することから、この境界が他方向境界として検出される。
S25では、S22で取得した第1距離、S23で取得した第2距離、S24で検出した他方向境界を用いて参照領域を設定する。注目画素から図中の上方向については、第1距離より大きく第2距離より小さい範囲で参照領域を設定する。他の方向については、他方向境界を含まない大きさで参照領域を設定する。なお、図中の下方向には他方向境界が見つからないが、この場合には予め決めておいた大きさ、あるいは反対方向である図中の上方向と同じ大きさとすればよい。設定された参照領域の一例を図中に太線の矩形で示している。
S25で参照領域が設定されたら、S26において、参照領域内の画素の値を用いて閾値を算出し、その閾値を用いて注目画素の値を二値化する。この例では、閾値を算出する際にそれぞれの画素に重み付けを行って平均値を算出する。図9(B)には図9(A)に示した参照領域の一例を示している。この参照領域には、第1境界と第2境界に挟まれた領域aと、第1境界の領域cと、それ以外の領域bがある。平均値を算出する際の重みとして、領域aの重みをWa、領域bの重みをWb、領域cの重みをWcとすると、Wa>Wb>Wcとなるように設定する。なお、第1境界の領域cに対する重みWcは0としてもよい。注目画素が存在する領域bと第1境界を挟んだ領域aとは、濃度や色が異なる領域であり、注目画素とは異なる濃度や色の領域について重み付けして平均値を算出し,閾値として使用することで、濃度や色の違いが二値化結果に反映されることになる。
なお、参照領域を第2距離よりも小さくしているので、注目画素から第2境界よりも遠い画素の値に影響されることはない。また、他方向境界を含まないようにしているので、他方向の境界で隔てられた濃度や色が異なる画素の影響を受けない。例えば上述の図4(A)に示した細線部分においても、線内の画素であれば隣接する隙間領域までしか参照せず、隙間の領域の画素であれば隣接する線内の画素までしか参照しないので、線と隙間の濃度差あるいは色の差によって二値化される。これにより、細線部分のそれぞれの線が、つぶれることなく二値化された画像に反映されることになる。
図10は、本発明の第3の実施の形態を示す構成図である。図中、7は変化方向検出部、8は組み合わせ判定部である。上述の第1及び第2の実施の形態と異なる部分について主に説明してゆく。この第3の実施の形態では、例えば着色背景に文字や他の着色領域が存在する場合などにおいて、文字や他の着色領域を残しながら、着色背景の外郭を生成し、そのほかの部分を抜くように構成している。この第3の実施の形態では、上述の第2の実施の形態において第2距離取得部5及び他方向境界検出部6を有する構成に、さらに変化方向検出部7、組み合わせ判定部8を有している。
変化方向検出部7は、第1距離取得部2で第1距離を取得する際に検出した第1境界及び他方向境界検出部6で検出したそれぞれの他方向境界における注目画素の色との変化方向を検出する。変化方向は、注目画素から境界に向けて濃度や色がどのように変化しているかを示すものである。以下の説明では、一例として、注目画素から境界へ向けて濃度が増加する場合に正の変化方向、濃度が減少する場合に負の変化方向とする。もちろん逆でもよいし、色相や彩度の変化についても含めてもよい。
組み合わせ判定部8は、第1境界における変化方向とそれぞれの他方向境界における変化方向が、どのような組み合わせになっているかを判定する。以下の説明では、一例として第1距離も用い、第1境界への変化方向が負で、かつ、他方向境界への変化方向については正と負が混在し、かつ、第1距離が予め決められた距離以上であるという組み合わせ条件を満たしているか否かを判定することとしている。
参照領域設定部3は、第1距離、第2距離、他方向境界などを用いるとともに、組み合わせ判定部8による判定結果を用いて参照領域を設定する。より具体的には、組み合わせ判定部8により第1境界への変化方向が負で、かつ、他方向境界への変化方向については正と負が混在し、かつ、第1距離が予め決められた距離以上であるという組み合わせ条件を満たしていると判定された場合には、変化方向が正の境界を跨ぎ、そのほかの境界を跨がないように参照領域を設定する。変化方向が正の境界を跨いで設定する方向の参照領域の大きさは、注目画素または境界から予め決められた大きさとするほか、次の境界を跨がない範囲で設定してもよい。組み合わせ条件を満たしていないと判定された場合には、上述の第2の実施の形態で説明した方法により参照領域を設定する。
二値化部4は、例えば上述の第2の実施の形態で説明した重み付き平均値を算出して閾値とし、注目画素を二値化すればよい。組み合わせ判定部8で組み合わせ条件を満たしていると判定して参照領域設定部3が参照領域を設定した場合には、第1境界を参照領域に含めていないので、例えば第1の実施の形態で説明した境界の画素の重みを他の画素の重みよりも小さくし、あるいは境界の画素を用いずに、平均値を算出して閾値とする方法を用いればよい。
図11は、本発明の第3の実施の形態における動作の一例を示す流れ図である。図中の図8に示した番号についてはすでに説明したので、ここでは概要のみの説明とする。S21において、境界抽出部1は処理対象画像から濃度境界や色境界などの境界を抽出する。S22において、第1距離取得部2は、注目画素から境界までの最短距離を第1距離として取得する。また、S23において、第2距離取得部5は、注目画素から第2境界までの距離を第2距離として取得する。さらに、S24において、他方向境界検出部6は、注目画素から第1境界とは異なる方向に存在する境界を他方向境界として検出する。
S31において、変化方向検出部7は、S22で第1距離取得部2が第1距離を取得する際に検出した第1境界、及び、S24で他方向境界検出部6が検出したそれぞれの他方向境界において、注目画素の色との変化方向を検出する。
S32において、組み合わせ判定部8は、S31で変化方向検出部7が検出した第1境界における変化方向とそれぞれの他方向境界における変化方向の組み合わせが、予め決められた条件を満たしているか否かを判定する。S33において、S32の判定結果に従って処理を切り替える。
変化方向の組み合わせが予め決められた条件を満たしていると判定された場合には、S34において、参照領域設定部3は他方向境界のうち変化方向が正の境界を跨ぎ、そのほかの境界を跨がないように参照領域を設定する。
S35において、二値化部4は処理対象画像からS34で参照領域設定部3により設定された参照領域の画素値を読み出し、その画素値の平均値や重み付き平均値を算出して閾値とし、その閾値を用いて注目画素の二値化を行う。平均値を算出する際には、境界の画素を除いた画素の値を用いて平均値を算出するとよい。また、重み付けを行う場合には、境界の画素については他の画素よりも重みを小さく設定して重み付き平均値を算出するとよい。
S32で変化方向の組み合わせが予め決められた条件を満たしていないと判定された場合には、第2の実施の形態で説明した参照領域の設定及び二値化の処理を行う。すなわち、概要としてはS25において参照領域設定部3が第1距離より大きく第2距離より小さい大きさであって、他方向境界が含まれない参照領域を設定し、S26において、二値化部4は参照領域の画素値を読み出して重み付き平均値を算出し、その重み付き平均値を閾値として用いて注目画素の二値化を行う。この場合の重みは、第2の実施の形態で説明したとおりである。
処理対象画像におけるそれぞれの画素を順に注目画素として上述の処理によって二値化することにより、二値画像が得られる。
図12は、本発明の第3の実施の形態の動作の一例における具体例の説明図である。図12(A)には処理対象画像の一例を示しており、白の背景上に着色領域pと、その着色領域pの中に着色領域qが設けられている。背景の濃度に比べて着色領域pの濃度が濃く、さらに着色領域pの濃度よりも着色領域qの濃度が濃いものとする。濃度の違いを斜線の間隔により示している。また、着色領域pには文字「CB」が、着色領域qには文字「ED」が、それぞれ描かれている。これらの文字は、着色領域qの濃度よりも濃いものとする。この処理対象画像から境界を抽出すると、着色領域pの外縁部、着色領域qの外縁部、それぞれの文字の外縁部が抽出される。なお、組み合わせ判定部8において判定する組み合わせ条件は、一例として、第1境界への変化方向が負で、かつ、他方向境界への変化方向については正と負が混在し、かつ、第1距離が予め決められた距離以上であるという条件であるものとする。
まず、一例として点aが注目画素である場合を考える。点aから最短距離にある境界(第1境界)は図中の左方向にある着色領域pの外縁部であり、第1距離を矢線により示している。また、他方向境界としては図中の上方向及び下方向には着色領域pの外縁部が、また図中の右方向には着色領域qの外縁部がそれぞれ検出される。
点aは着色領域p内の点であることから、左方向、上方向、下方向については背景との濃度差から、薄くなる方向の変化方向(負方向とする)が存在し、右方向については着色領域pと着色領域qとの濃度差から、濃くなる方向の変化方向(正方向とする)が存在している。このような濃度の変化方向を変化方向検出部7で検出する。
組み合わせ判定部8では、上述の組み合わせ条件を満たすか否かを判定する。注目画素aの第1距離が予め決められた距離よりも小さいとすると、注目画素aについては組み合わせ条件を満たしていないことになる。この場合、上述の第2の実施の形態に従い、第1境界の方向に第2境界(この例では画像の端になる)を求め、第1距離より大きく第2距離より小さく、他方向境界を含まない参照領域を設定する。設定された参照領域の一例を太線の矩形で示している。
この参照領域には、着色領域pと、着色領域pよりも濃度が薄い背景の画素が含まれていることから、重み付き平均値を求めると着色領域pの濃度よりも低い値となり、この重み付き平均値を閾値として注目画素aが二値化されることにより、例えば二値のうちの有意側の値(例えば1)となる。
点bについても、点bから最短距離にある境界(第1境界)は図中の左方向にある着色領域pの外縁部であり、第1距離を矢線により示している。また、他方向境界としては図中の上方向及び下方向には着色領域pの外縁部が、また図中の右方向には文字「B」の外縁部がそれぞれ検出される。
点bは着色領域p内の点であることから、左方向、上方向、下方向については背景との濃度差から、薄くなる方向の変化方向(負方向とする)が存在し、右方向については文字「B」との濃度差から、濃くなる方向の変化方向(正方向とする)が存在している。このような濃度の変化方向を変化方向検出部7で検出する。
組み合わせ判定部8では、上述の組み合わせ条件を満たすか否かを判定する。注目画素bの第1距離が予め決められた距離以上であるとすると、第1境界の方向(図中の左方向)の変化方向は負であり、他方向境界への方向については、図中の上、下への変化方向が負で、図中の右への変化方向が正であることから、組み合わせ条件を満たす。
この場合、参照領域設定部3は他方向境界のうち変化方向が正の境界を跨ぎ、そのほかの他方向境界を跨がないように参照領域を設定する。この例では、図中の右方向にある文字「B」の境界を跨ぎ、他の方向の境界を跨がないように参照領域を設定する。設定された参照領域の一例を太線の矩形で示している。
この参照領域には、着色領域pと、着色領域pよりも濃度が濃い文字「B」の画素が含まれていることから、平均値あるいは重み付き平均値を求めると着色領域pの濃度よりも高い値となり、これを閾値として注目画素bが二値化されることにより、例えば二値のうちの無意側の値(例えば0)となる。
点cは着色領域q内の点であり、点cから最短距離にある境界(第1境界)は図中の左方向にある着色領域pと着色領域qとの境界であり、第1距離を矢線により示している。また、他方向境界としてはいずれも着色領域qと着色領域pとの境界がそれぞれ検出される。
点cは着色領域q内の点であることから、いずれの方向についても着色領域pとの濃度差から、薄くなる方向の変化方向(負方向とする)が存在している。組み合わせ判定部8で上述の組み合わせ条件を満たすか否かを判定すると、他方向境界への変化方向には負方向しか存在せず、また、注目画素cの第1距離が予め決められた距離よりも小さいとすると、注目画素cについては組み合わせ条件を満たしていない。この場合、上述の第2の実施の形態に従い、第1境界の方向に第2境界(この例では着色領域pの外縁部)を求め、第1距離より大きく第2距離より小さく、他方向境界を含まない参照領域を設定する。設定された参照領域の一例を太線の矩形で示している。
この参照領域には、着色領域qと、着色領域qよりも濃度が薄い着色領域pの画素が含まれていることから、重み付き平均値を求めると着色領域qの濃度よりも低い値となり、この重み付き平均値を閾値として注目画素cが二値化されることにより、例えば二値のうちの有意側の値(例えば1)となる。
点dは着色領域q内の点であり、左方向、上方向、下方向については着色領域pとの濃度差から、薄くなる方向の変化方向(負方向とする)が存在し、右方向については文字「D」との濃度差から、濃くなる方向の変化方向(正方向とする)が存在している。
組み合わせ判定部8で上述の組み合わせ条件を満たすか否かを判定すると、注目画素dの第1距離が予め決められた距離以上であるとすれば、第1境界の方向(図中の左方向)の変化方向は負であり、他方向境界への方向については、図中の上、下への変化方向が負で、図中の右への変化方向が正であることから、組み合わせ条件を満たす。
この場合、参照領域設定部3は図中の右方向にある文字「D」の境界を跨ぎ、他の方向の境界を跨がないように参照領域を設定する。設定された参照領域の一例を太線の矩形で示している。
この参照領域には、着色領域qと、着色領域qよりも濃度が濃い文字「D」の画素が含まれていることから、平均値あるいは重み付き平均値を求めると着色領域qの濃度よりも高い値となり、これを閾値として注目画素dが二値化されることにより、例えば二値のうちの無意側の値(例えば0)となる。
なお、文字内の画素については、第2の実施の形態で説明した処理によって、文字の境界を跨ぐ参照領域が設定されて注目画素の二値化を行うことになり、文字線は二値化結果に反映される。
このようにして二値化された結果の一例を図12(B)に示している。図12(B)では、有意側の値の領域を黒く、無意側の値の領域を白く示している。着色領域p及び着色領域qの外縁部が予め決められた距離に対応した太さで残り、着色領域の存在が示されているとともに、各文字が二値化結果に反映されている。
なお、上述の説明では組み合わせ条件を満たしていると判定された場合に変化方向が正の境界を含むように参照領域を設定し、注目画素の二値化を行った。図12(B)からも分かるように、組み合わせ条件を満たさない場合には二値化の結果として無意側の値となることから、組み合わせ判定部8で組み合わせ条件を満たさないと判定した場合には、二値化部4が注目画素の二値化結果として無意側の値を出力するように構成してもよい。この場合について、図10では破線で示している。
図13は、本発明の各実施の形態で説明した機能をコンピュータプログラムで実現した場合におけるコンピュータプログラム及びそのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体とコンピュータの一例の説明図である。図中、41はプログラム、42はコンピュータ、51は光磁気ディスク、52は光ディスク、53は磁気ディスク、54はメモリ、61はCPU、62は内部メモリ、63は読取部、64はハードディスク、65はインタフェース、66は通信部である。
上述の本発明の各実施の形態で説明した各部の機能を全部あるいは部分的に、コンピュータが実行するプログラム41によって実現してもよい。その場合、そのプログラム41およびそのプログラムが用いるデータなどは、コンピュータが読み取る記憶媒体に記憶させておけばよい。記憶媒体とは、コンピュータのハードウェア資源に備えられている読取部63に対して、プログラムの記述内容に応じて、磁気、光、電気等のエネルギーの変化状態を引き起こして、それに対応する信号の形式で、読取部63にプログラムの記述内容を伝達するものである。例えば、光磁気ディスク51、光ディスク52(CDやDVDなどを含む)、磁気ディスク53、メモリ54(ICカード、メモリカード、フラッシュメモリなどを含む)等である。もちろんこれらの記憶媒体は、可搬型に限られるものではない。
これらの記憶媒体にプログラム41を格納しておき、例えばコンピュータ42の読取部63あるいはインタフェース65にこれらの記憶媒体を装着することによって、コンピュータからプログラム41を読み出し、内部メモリ62またはハードディスク64(磁気ディスクやシリコンディスクなどを含む)に記憶し、CPU61によってプログラム41を実行することによって、上述の本発明の各実施の形態として説明した機能が全部あるいは部分的に実現される。あるいは、通信路を介してプログラム41をコンピュータ42に転送し、コンピュータ42では通信部66でプログラム41を受信して内部メモリ62またはハードディスク64に記憶し、CPU61によってプログラム41を実行することによって実現してもよい。
コンピュータ42には、このほかインタフェース65を介して様々な装置と接続してもよい。例えば、画像読取装置がインタフェース65を介して接続され、画像読取装置で読み取った画像あるいは該画像に処理を施した画像を処理対象画像として本発明の各実施の形態で説明した処理を行ってもよい。処理後の二値画像は、他のプログラムに渡してもよいし、ハードディスク64に記憶させ、またはインタフェース65を介して記憶媒体に記憶させ、あるいは通信部66を通じて外部へ転送してもよい。さらに、画像形成装置がインタフェース65を介して接続されていてもよく、処理後の二値画像を画像形成装置により形成してもよい。
もちろん、部分的にハードウェアによって構成することもできるし、全部をハードウェアで構成してもよい。あるいは、他の構成とともに本発明の各実施の形態で説明した機能の全部あるいは部分的に含めたプログラムとして構成してもよい。もちろん、他の用途に適用する場合には、その用途におけるプログラムと一体化してもよい。