JP5364225B2 - イオン性フタロシアニンデンドリマーを内包した高分子ミセル構造体による光力学療法剤、光化学的遺伝子導入用の光増感剤、および医薬品 - Google Patents

イオン性フタロシアニンデンドリマーを内包した高分子ミセル構造体による光力学療法剤、光化学的遺伝子導入用の光増感剤、および医薬品 Download PDF

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この出願の発明は、イオン性フタロシアニンデンドリマーを内包した高分子ミセル構造体による光力学療法剤、光化学的遺伝子導入用の光増感剤、および医薬品に関するものである。
現在、癌や網膜疾患の治療に一般的に用いられている多くの化学薬品や放射線による治療法は、目標箇所以外の組織細胞への影響が大きく、痛み、発熱、嘔吐などの副作用を伴うため、患者に多大な苦痛を与える。また、これらの治療法に用いられる薬剤や放射線が周辺細胞を破壊することによる二次腫瘍も大きな問題となっている。
そこで近年、癌や腫瘍の治療を目的とした副作用の少ない薬剤や、薬剤を標的箇所である癌細胞へ直接運搬することができるドラッグデリバリーシステムに関する研究が盛んに行われている。
なかでも光力学療法(Photodynamic Therapy)は、紫外線、可視光、赤外光などの光に反応する化合物を体内に取り入れ、標的箇所に光を照射することによって標的箇所を治療する方法であるため、光照射を行わない場合、あるいは光が照射されない箇所においては、化合物が反応せず、標的箇所、つまり癌細胞のみを選択的に破壊する治療法として注目されている。
光力学療法では、高い腫瘍親和性をもち、収率よく光励起される光反応性化合物(光増感剤)が望まれる。このような光力学療法用光反応性化合物としては、ポルフィリン化合物が例示される。すなわち、これら化合物は、光照射により周囲の酸素分子と反応し、光励起させ、酸化力の強い一重項酸素(Singlet Oxygen)に変換することができ、この一重項酸素が、周辺細胞を酸化し、破壊するのである。
そこで、ポルフィリン環を結合させたオリゴマー状の化合物や、フタロシアニンに糖鎖やDNA、蛋白質などを結合した化合物が提案され、細胞認識能や腫瘍親和性を高くすることが研究されている。しかし、多くのポルフィリン化合物は、光照射を行わない状態においても毒性が高く、標的箇所以外の細胞をも破壊してしまうという問題があった。さらに、光反応の反応効率や、腫瘍親和性が低いため、大量の化合物を体内に注入することを必要とする点においても、好ましいとは言い難かったのが実状である。
また、ポルフィリン、フタロシアニンに代表される従来の光増感剤は、高濃度において凝集体を形成し、エネルギー消光により一重項酸素生成効率の著しい減少が認められる。また、このような光増感剤をリポソームや高分子ミセルなどの薬物担体に搭載した場合、同様な光増感剤の凝集により一重項酸素生成効率の著しい減少が認められる。効果的な光力学療法のためには、光増感剤の凝集を抑制し、患部への選択的な光増感剤のデリバリーと患部における効率的な一重項酸素生成を達成しうる新規技術の開発が大きな課題である。
たとえばこれまでに提案されている技術(特許文献1、特許文献2)によるとポルフィリンを有するデンドリマーとその高分子ミセル構造体により、光照射を行わない状態においても毒性を低くすることや血液中での高い溶解性などが達成されている。しかし、ポルフィリンの最大吸収波長は430nm付近で、この波長の光は皮膚での透過率が低く、組織深部に存在する腫瘍に対する処置は不可能である。
一方、遺伝子や各種生理活性物質の標的細胞への導入技術として、siRNAやアンチセンスオリゴDNAなどの核酸医薬やタンパク質医薬の開発が活発となっているが、細胞質内で機能発現するそれらの医薬品は細胞内のエンドソーム/リソソームにおいて消化分解を受けることがその有効性を大きく妨げていることが知られている。
1999年、Bergらは、これらの遺伝子、核酸医薬やタンパク質医薬のエンドソームから細胞質への移行性を光選択的に高める手段として、Photochemical Internalization (PCI)および光化学的遺伝子導入法を提案した(非特許文献1、非特許文献2)。この方法は、汎用光増感剤を細胞と前培養し、遺伝子、核酸医薬およびタンパク質医薬を細胞に作用させ、光照射を行うことにより、エンドソーム膜に光障害を与え、遺伝子、核酸・タンパク質医薬の細胞質移行性を高めるといったものである。
しかしこの方法は原理的には、遺伝子、核酸医薬およびタンパク質医薬の機能発現を光照射により制御することを可能とするが、光増感剤がエンドソーム以外の細胞小器官に非特異的に集積し一重項酸素を産生することで、細胞へ顕著な光毒性を与えるという、実用化への大きな問題がある。実際にBergらは、最大の遺伝子発現効率が得られる条件において、約50%の細胞が死滅することを報告している (非特許文献2)。この問題を解決するためには、エンドソームに特異的に集積し、エンドソーム選択的に光障害を与える新しい光増感剤の開発が必要である。加えて、in vivo法において低侵襲的な部位選択的治療を行うための有効な濃度の光増感剤および核酸・タンパク質医薬を患部に適確に送達する方法も確立されておらず、その開発も極めて重要である。
特開2001-206885号公報 特開2001-206886号公報 K. Berg, et al., Cancer Research 59, 1180-1183 (1999) A. Hogest, et al., Human Gene Therapy, 11, 869-880 (2000)
発明者らは、上記の問題に対して、体内での毒性が小さく、周辺細胞を侵さずに、標的箇所である癌細胞や、遺伝子導入細胞のエンドソームのみを選択的に破壊することができるイオン性フタロシアニン化合物を光増感剤として、より詳しくは光力学療法用化合物および光化学的分子導入用化合物として提供している。フタロシアニン化合物はポルフィリンと同様に光力学効果を持ちながら、最大吸収波長が700nm付近で皮膚透過率の高い光を吸収する。しかし、実際には、これらの化合物は構造ポルフィリンと同様にそのままでは、体内での血中安定性が十分でなく、イオン性フタロシアニン化合物を光力学療法制癌剤として使用するためには、これらの化合物が血液中で効率よく、安定に存在することが可能で、標的箇所まで確実に運搬されることが必要である。
そこで、この出願の発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消し、光増感剤であるフタロシアニン化合物、およびそれを効率よく目的細胞中に運搬することが可能で、薬剤として使用しやすく水中で安定な高分子ミセル構造体による光力学療法剤、光化学的遺伝子導入用の光増感剤、および医薬品を提供することを課題としている。さらに、高分子ミセル、腫瘍内、細胞小器官内において高濃度に濃縮された状態においても、ポルフィリン分子の色素団の凝縮を抑制し、効率的な一重項酸素産生を実現する新規技術を提供することを課題としている。
この出願の発明は、従来技術の問題点を解消するものとして、以下の通りの発明を提供する。
すなわち、まず第1には、この出願の発明は、一般式〔1〕;
Figure 0005364225
(qはデンドリマー表面の荷電原子の数を示し、cは荷電であって負(−)または正(+)を示し、PcMは一般式〔2〕;
Figure 0005364225
で表され、式中のMは、金属原子を示し、R1、R2、R3、及び、R4は、水素原子もしくは、同一または別異のアリールエーテルデンドロンサブユニットを示し、かつ、R1、R2、R3、及び、R4のうちの少なくとも一つはアリールエーテルデンドロンサブユニットであり、一般式〔3〕;
Figure 0005364225
で表され、nは2以上の整数を示し、前記の荷電cが負(−)の場合、Wはアニオン基を示し、荷電cが正(+)の場合、Wはカチオン基を示し、各々のWはスペーサー分子鎖を介して結合してもよく、その複数がベンゼン環に結合していてもよい。スペーサー分子鎖は、次式;
C(Z)Z′R4(CR56)m
(ZおよびZ′は、各々、同一または別異に、O、S、及びNのうちの一種の原子であり、R4はZ′がN原子の場合に炭化水素基であり、R5及びR6は、同一または別異に、水素原子または炭化水素基を示し、mは0または1以上の整数を示す)で表されるイオン性フタロシアニンデンドリマーを含む高分子ミセル構造体を有効成分とすることを特徴とする癌治療用の光力学療法剤を提供する。
そして、この出願の発明は、第2には、アニオン基が、酸アニオン基である前記の癌治療用の光力学療法剤を、第3には、カチオン基が、次式;N+(CR1233
(R1,R2,及びR3は、各々、同一または別異に、炭化水素基を示す。)で表される前記の癌治療用の光力学療法剤を、第4には、nが25以下の整数である前記の癌治療用の光力学療法剤を、第5には、高分子ミセル構造体が、イオン性フタロシアニンデンドリマーと水溶性のポリアミノ酸系ポリマーとの静電結合型高分子ミセルであることを特徴とする前記の癌治療用の光力学療法剤を、第6には、水溶性のポリアミノ酸系ポリマーが、ポリアルキレングリコールとポリアミノ酸とのブロックコポリマーである前記の癌治療用の光力学療法剤を、第7には、高分子ミセル構造体が、アニオン性フタロシアニンデンドリマーと、水溶性ポリエチレングリコール−ポリL−リシンブロックポリマー(〔PEG−PLL〕)との静電結合型高分子ミセルであることを特徴とする前記の癌治療用の光力学療法剤を、第8には、高分子ミセル構造体が、カチオン性フタロシアニンデンドリマーとポリエチレングリコール−ポリL−アスパラギン酸ブロックポリマー(〔PEG−P(Asp)〕)との静電結合型高分子ミセルであることを特徴とする前記の癌治療用の光力学療法剤を提供する。
さらに、この出願の発明は、第9には、一般式〔1〕;
Figure 0005364225
(qはデンドリマー表面の荷電原子の数を示し、cは荷電であって負(−)または正(+)を示し、PcMは一般式〔2〕;
Figure 0005364225
で表され、式中のMは、金属原子を示し、R1、R2、R3、及び、R4は、水素原子もしくは、同一または別異のアリールエーテルデンドロンサブユニットを示し、かつ、R1、R2、R3、及び、R4のうちの少なくとも一つはアリールエーテルデンドロンサブユニットであり、一般式〔3〕;
Figure 0005364225
で表され、nは2以上の整数を示し、前記の荷電cが負(−)の場合、Wはアニオン基を示し、荷電cが正(+)の場合、Wはカチオン基を示し、各々のWはスペーサー分子鎖を介して結合してもよく、その複数がベンゼン環に結合していてもよい。スペーサー分子鎖は、次式;
C(Z)Z′R4(CR56)m
(ZおよびZ′は、各々、同一または別異に、O、S、及びNのうちの一種の原子であり、R4はZ′がN原子の場合に炭化水素基であり、R5及びR6は、同一または別異に、水素原子または炭化水素基を示し、mは0または1以上の整数を示す)で表されるイオン性フタロシアニンデンドリマーを含む高分子ミセル構造体を有効成分とすることを特徴とする標的細胞への光化学的遺伝子導入用の光増感剤を提供する。
そして、この出願の発明は、第10には、アニオン基が、酸アニオン基である前記の標的細胞への光化学的遺伝子導入用の光増感剤を、第11には、カチオン基が、次式;N + (CR 1 2 3 3
(R 1 ,R 2 ,及びR 3 は、各々、同一または別異に、炭化水素基を示す。)で表される前記の標的細胞への光化学的遺伝子導入用の光増感剤を、第12には、nが25以下の整数である前記の標的細胞への光化学的遺伝子導入用の光増感剤を、第13には、高分子ミセル構造体が、イオン性フタロシアニンデンドリマーと水溶性のポリアミノ酸系ポリマーとの静電結合型高分子ミセルであることを特徴とする前記の標的細胞への光化学的遺伝子導入用の光増感剤を、第14には、水溶性のポリアミノ酸系ポリマーが、ポリアルキレングリコールとポリアミノ酸とのブロックコポリマーである前記の標的細胞への光化学的遺伝子導入用の光増感剤を、第15には、高分子ミセル構造体が、アニオン性フタロシアニンデンドリマーと、水溶性ポリエチレングリコール−ポリL−リシンブロックポリマー(〔PEG−PLL〕)との静電結合型高分子ミセルであることを特徴とする前記の標的細胞への光化学的遺伝子導入用の光増感剤を、第16には、高分子ミセル構造体が、カチオン性フタロシアニンデンドリマーとポリエチレングリコール−ポリL−アスパラギン酸ブロックポリマー(〔PEG−P(Asp)〕)との静電結合型高分子ミセルであることを特徴とする前記の標的細胞への光化学的遺伝子導入用の光増感剤を提供する。さらに、前記の光化学的遺伝子導入用の光増感剤を含むことを特徴とする医薬品も提供する。
以上のとおりのこの出願の発明によって、細胞や細胞小器官、より詳しくは癌細胞などの標的細胞、光化学的手法による分子を導入する標的細胞のエンドソームのみを破壊することのできる、長波長励起が可能な光増感剤であるフタロシアニン化合物、およびそれを含有し、効率よく目的細胞中に運搬することが可能で、薬剤として使用しやすく水中で安定な光力学療法用および光化学的分子導入用の高分子ミセル構造体が提供される。フタロシアニン化合物は高分子ミセル内に高濃度に濃縮された状態においてもエネルギー消光を起さない優れた光増感剤である。フタロシアニン化合物単体では、培養癌細胞に対し、抗腫瘍効果を示さないが、高分子ミセル構造体とすることで、著しく増強された抗腫瘍効果が示される。これにより、従来の光力学療法剤の性能を大きく上回る光力学療法剤のための高分子ミセル構造体が提供される。さらに、フタロシアニン化合物を内包する高分子ミセル構造体を、導入分子を内包した高分子ミセルと同時に標的細胞に送達させることができ、いずれも細胞内のエンドソームに蓄積することから、フタロシアニン化合物の優れた光増感作用を利用してエンドソームを光障害で選択的に破壊することができる。これにより、導入分子のエンドソーム-細胞質移行が効率的かつ低光毒性的に実現され、in vivoにおいて有効な光による部位選択的治療が達成される。
この出願の高分子ミセル構造体は、前記のとおりの一般式〔1〕で表わされるイオン性フタロシアニンデンドリマーを包含している高分子ミセル構造体であるが、一般式〔2〕におけるMが金属原子を示す、金属フタロシアニンデンドリマーにおいては、その中心金属はどのようなものであってもよい。中心金属の種類によって、励起状態が異なり、酸素の酸化形態も異なることから、Zn、Mg、Fe、Cu、Co、Ni、Mnなど、様々なものが使用できる。生体中において安定なフタロシアニン化合物を形成しながら、一重項酸素を生成することが可能な金属であることが好ましく、とくに光励起状態でのエネルギーが高く、一重項酸素の生成に有利なZnが好ましい。
また、この出願の発明のフタロシアニン化合物は、紫外線、可視光、赤外光などどのような波長領域の光によって励起されるものであってもよいが、好ましくは光源の価格が手ごろで扱いやすい紫外光、あるいは可視光の波長領域で光反応性のあるものである。
一般式〔2〕におけるR1、R2、R3およびR4のうちの少なくとも一つは一般式〔3〕で表わされるアリールエーテルデンドロンサブユニットである。このアリールエーテルデンドロンサブユニットでは、前記のスペーサー分子鎖が炭化水素鎖の場合は、好ましくはアルキル鎖であって、さらには炭素数25以下のアルキル鎖が適当である。また、前記のWがアニオン基の場合には、たとえば酸アニオン基が適当であって、より具体的には、CO2 -、PO4 2-、MPO4 -、SO4 2-、HSO4 -、SO3 -等がその例として挙げられる。Wがカチオン基の場合は、アミノ基もしくはアンモニウム基等であってよく、たとえば前記のとおりのN+(CR1233で表わされるものの場合、R1、R2およびR3は、炭化水素基、より具体的には、炭素数25以下、さらには炭素数10以下のアルキル基が例示される。
Wがアニオン基またはカチオン基の、いずれの場合もスペーサー分子鎖を介してベンゼン環に結合しいてもよい。たとえばこのスペーサー分子鎖としては、たとえば前記のとおりのC(Z)Z′R4(CR56mとして示されるものであってよく、ZおよびZ′は、O、SおよびNのうちの一種の原子であり、Z′がNの場合にはR4は炭化水素基であり、R5およびR6は水素原子および炭化水素基のいずれかであってよい。
4、R5およびR6が炭化水素基の場合、その炭素数は25以下、さらには10以下のものが例示される。この一般式で表わされるスペーサー分子鎖としては、たとえば−CO−O−(CR56m、−CO−NR4−(CR56m等がある。mは0または1〜25の整数であることが適当である。
たとえば以上のアリールエーテルデンドロンサブユニットにおいては、一般式〔3〕の係数nは特に限定されるものではないが、あまり大きすぎると立体障害により合成が困難となるため、一般的には25以下の整数であることが好ましい。
イオン性フタロシアニンデンドリマーを包含するこの出願の発明の高分子ミセル構造体は、これらデンドリマーと水溶性のイオン性ポリマーとによる静電結合型高分子ミセルとすることができる。
この出願の発明においては、より具体的に、このような高分子ミセル構造体として、前記のイオン性フタロシアニンデンドリマーとそれとは反対のイオンを含む水溶性ポリアミノ酸系のポリマーとのものが示される。たとえば、アニオン性フタロシアニンデンドリマーと、水溶性のポリエチレングリコール−ポリ−リシンブロックポリマーとのミセル構造体や、カチオン性フタロシアニンデンドリマーと、水溶性のポリエチレングリコール−ポリ−アスパラギン酸ブロックポリマーとのミセル構造体等である。
この出願の発明の高分子ミセル構造体は、中心にフタロシアニンデンドリマーを有し、種々のポリマーとミセルを形成することにより、癌や腫瘍などの標的箇所やエンドソームなどの細胞小器官との親和性を高め、イオン性フタロシアニン化合物を制癌剤や光増感剤として使用しやすくできるものである。
このとき、静電結合させる化合物は、該フタロシアニンデンドリマーの外面の基とイオン結合し、安定なミセルを形成し、フタロシアニンデンドリマーの光反応を阻害しないもの(照射光の波長領域に吸収を持たないもの)で、かつ生体内において毒性を示さないものであればどのようなものであってもよいが、該フタロシアニンデンドリマーの外面の荷電が負(−)のとき、この出願の発明の高分子ミセル構造体は、前記のように、アニオン性のフタロシアニンデンドリマーと水溶性ポリエチレングリコール−ポリL−リシンブロックポリマー([PEG-PLL〕からなるものであることが好ましい。一方、該フタロシアニンデンドリマーの外面の荷電が正(+)のとき、この出願の発明の高分子ミセル構造体は、前記のように、カチオン性のフタロシアニンデンドリマーとポリエチレングリコール−ポリ−L−アスパラギン酸ブロックポリマー([PEG-P(Asp)])からなるものであることが好ましい。
この出願の発明の高分子ミセル構造体において、包含されるイオン性フタロシアニンデンドリマーは、デンドリマー中心から外に向かって合成するDivergent法(D.A.Tomalia, et.al., Polymer J., 17, 117(1985))やデンドリマー外から中心に向かって合成するConvergent法(C.Hawker, et.al.,J.Chem.Soc.Chem.Commun., 1010 (1990))等の公知の方法により合成できる。
具体的には、この出願の発明のイオン性フタロシアニンデンドリマーでは、フェノール性水酸基を有するイソフタレートに、デンドリマーのモノマーである3,5−ジヒドロキシメチルフェノール誘導体を反応させ、次いで保護されていたフェノール性水酸基を脱保護し、さらにモノマーの3,5−ジヒドロキシメチルフェノール誘導体を反応させる操作を繰り返すことによってデンドリマー部を得ることができる。最後にデンドリマーのコアにフタロニトリルを導入した後、金属を存在下で酸化的環化反応を行うことで、イオン性フタロシアニンデンドリマーが得られる。
さらに、この出願の発明の高分子ミセル構造体において、フタロシアニンデンドリマーとの結合によりミセル構造体を形成する高分子電解質化合物は、前記のものに限定されることなく、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリシン、ポリアルギニン、ポリヒスチジン等のポリアミノ酸をpH調節によりアニオン性、両性、カチオン性を示すようにした高分子や、ポリリンゴ酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアリルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニル硫酸等のアニオン性高分子、またポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルイミダゾール等のカチオン性高分子等が例示される。さらに、これらのイオン性高分子と非イオン性で水溶性のポリマーとのブロック共重合体も有用に使用できる。これらイオン性ブロック共重合体は生体親和性に優れており、高分子電解質としてとくに好ましい。
また、この出願の発明のフタロシアニンデンドリマーおよびこれを含む高分子ミセル構造体は、光化学的手法による外来分子の細胞内への導入を効率的に行うための光増感剤として使用できる。フタロシアニンデンドリマーを含む高分子ミセル構造体およびこれより放出されたフタロシアニンデンドリマーは細胞内で、エンドソームに選択的に集積する。一方、細胞へ導入する分子も、エンドソームに蓄積されることが多く、フタロシアニンデンドリマーの光増感作用によりエンドソーム選択的な光障害を発生させ、これら導入分子をエンドソームから放出させることにより、汎用の光増感剤と比較して効率的かつ低光毒性の光化学的分子導入ができる。光化学的分子導入の手法は公知のPCI法および光化学的遺伝子導入法を好ましい形態とするが、この出願の発明の実施形態はこれに限定されず、フタロシアニンデンドリマーによる光増感作用によって細胞または細胞小器官が破壊、もしくは変性されることにより、効率的な分子導入を行うことが出来る方法であればよい。
さらに、高分子ミセル型ドラッグデリバリーシステムにより、フタロシアニンデンドリマーなどの光増感剤、遺伝子、核酸・タンパク質医薬などの生理活性分子を患部選択的に送達することが可能である。光増感剤やこれら生理活性分子は、ポリエチレングリコール-ポリカチオンおよびポリエチレングリコール-ポリアニオンとの静電相互作用により形成されるポリイオンコンプレックスミセルや両親媒性ブロック共重合体から成る親疎水性高分子ミセルに安定して内包される。この出願の発明のフタロシアニンデンドリマー内包高分子ミセル構造体と生理活性分子内包高分子ミセル構造体を同時に標的細胞に送達し、PCIおよび光化学的遺伝子導入などにより細胞へ光学的に生理活性分子を導入することが可能である。この出願の発明の提供する光化学的分子導入方法は、in vivoにおいて有効な光による部位選択的治療に応用することが可能である。高分子ミセルは、プラスミドDNA、アンチセンスオリゴDNA、siRNA、生理活性タンパク質、ペプチドなど細胞内で機能発現する様々な医薬品を安定に内包することが可能であり、それら医薬品の光化学的分子導入を行うことも可能である。
この出願の発明のフタロシアニンデンドリマー内包高分子ミセル構造体と生理活性分子内包高分子ミセル構造体は別々の高分子ミセル構造体としてもよいし、ひとつの高分子ミセルにフタロシアニンデンドリマー光増感剤と細胞導入分子を共在させても良い。後者について、より詳しくは、高分子ミセル構造体に細胞導入分子を内包させ、外殻ポリエチレングリコール(PEG)の末端にフタロシアニンデンドリマー光増感剤を化学結合させた高分子ミセル構造体であってもよいし、高分子ミセル構造体の細胞導入分子を内包する内核とPEG相の間にフタロシアニンデンドリマーを化学的に結合もしくは静電的に相互作用させた高分子ミセル構造体であってもよい。
この出願の発明はさらに、光増感剤としてフタロシアニンデンドリマーおよびフタロシアニンデンドリマー内包高分子ミセル構造体を含む、光化学的な手法を用いた治療用の医薬品を提供するが、光化学的な手法により細胞へ作用する薬剤を、細胞特異的あるいは組織特異的にこれらを送達可能なキャリア、例えば高分子ミセルに内包された薬剤ともに含むことを好ましい態様とする。また、この出願の発明の医薬品は、光化学的な手法により細胞へ作用する薬剤、好ましくは細胞特異的あるいは組織特異的に送達可能な高分子ミセルに内包された薬剤と組み合わせて投薬されることを好ましい態様とする。
以下実施例を示し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
参考例<フタロシアニンデンドリマーの合成>
次の反応式[4a]にしたがってデンドロンを合成し、反応式[4b]にしたがってデンドリマーを合成した。さらに、NaOH水溶液によりアニオン性デンドロン末端をCOO-としてアニオン性フタロシアニンデンドリマー(〔32(−)(L3)4PcZn〕)を得た。
Figure 0005364225
Figure 0005364225
実施例1<アニオン性フタロシアニンデンドリマー〔32(−)(L3)4PZn〕と水溶液ポリエチレングリコール−ポリL−リシンブロックポリマー〔PEG−PLL(12−40)〕の静電結合型高分子ミセルの形成>〔PEG−PLL(12−40)(分子量12000g/molのPEGブロックと40リシン単位のポリリシンブロックからなる)を濃度10mMとなるように、NaH2PO4に溶解した。
また、前記一般式〔1〕〔2〕〔3〕においてMが金属の亜鉛(Zn)原子を示し、W
がアニオン基(X=CO2 -)を示し、nが3を示して、次式
Figure 0005364225
として表わされ、また、〔32(−)(L3)4PZn〕として表わされるフタロシアニンデンドリマーを濃度10mMとなるように、Na2HPO4に溶解し、少量のNaOHを添加して完全に溶解した。
ポリエチレングリコール−ポリL−リシンブロックポリマー溶液とフタロシアニンデンドリマー溶液を混合することにより高分子ミセル溶液が調製された。得られた溶液は透明で、数週間後も保持された。pHは7.29で、調製された高分子ミセル構造体は、その直径を動的光散乱測定より測定したところ、50nmであることが分かった。

実施例2<溶液中での吸光スペクトル測定>
実施例1において調製されたフタロシアニンデンドリマー内包高分子ミセル溶液(フタロシアニンデンドリマー換算:1.0mg/mL in 10mM PBS)の吸光スペクトルを測定した(図1)。フタロシアニンデンドリマー内包高分子ミセル構造体は、600nmから700nmにかけてブロードな吸収帯を有しており、430nmに最大吸収波長を有する公知のポルフィリンデンドリマーおよびその高分子ミセル構造体(特許文献1および2)と比較して、組織浸透性の高い長波長領域に特性吸収帯を有することが確認された。

実施例3<溶液中での酸素消費>
実施例1におけるフタロシアニンデンドリマー単体およびその高分子ミセル体の5%ウシ胎児血清を含有する10mMリン酸緩衝溶液中での酸素消費量をクラークタイプの酸素電極(PO2−100DW(インターメディカル))により測定した。フタロシアニンデンドリマー単体およびその高分子ミセル体の励起は、YAG−OPOシステム(スペクトラフィジックス)を用いて680nmのパルス波(30Hz)で光照射することにより行った。フタロシアニンデンドリマー単体およびその高分子ミセル体を含有する溶液に光照射を行った時の酸素分圧の変化をそれぞれ図2(A)および(B)に示す0.5Vの電圧値が150mmHgの酸素分圧に相当する)。高分子ミセル構造体がフタロシアニンデンドリマー単体と同様な酸素消費プロファイルを示したことから、フタロシアニンデンドリマーは高分子ミセル内に高濃度に濃縮された状態においてもエネルギー消光を起さず、一重項酸素を効率的に産生し、周囲の血清成分を酸化することで溶液中の酸素が消費されていることが確認された。

実施例4<培養癌細胞に対する効果>
さらに、実施例1におけるフタロシアニンデンドリマー単体およびその高分子ミセル構造体を異なる濃度においてヒト子宮癌由来のHeLa細胞(2000cells/well)に接触させ、これに波長400〜700nmの光(300Wのハロゲンランプを光源として使用)を1時間照射し、37℃で48時間培養した後、MTTアッセイ試験法(Mitochondrion Respiration Test)でHeLa細胞の生存率を測定した(図3)。また、対照として、光照射を行わない条件での細胞毒性(暗毒性)も同時に評価した(図3)。光照射を行わない条件においては、フタロシアニンデンドリマーとその高分子ミセル構造体は共に、細胞毒性を示さなかった。光照射を行った場合においては、フタロシアニンデンドリマー単体は今回の実験条件においては全く細胞毒性を示さなかったが、本発明の高分子ミセル構造体では非常に高い癌細胞増殖抑制効果を示し、その有効濃度はフタロシアニンデンドリマー単体と比較して少なくても100倍以上であることが確認された。すなわち、本発明のフタロシアニンデンドリマー内包高分子ミセル構造体は、従来技術と比較して、光選択性の高い、極めて効率的な癌細胞殺傷効果を示すことが明らかとなった。
もちろん、この発明は以上の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。

実施例5<光化学的遺伝子導入におけるフタロシアニンデンドリマー(DPc)の濃度の効果>
フタロシアニンデンドリマー内包高分子ミセルと遺伝子内包高分子ミセルを同時培養した時の光化学的遺伝子導入効果(フタロシアニンデンドリマーの濃度の効果)を検討した。
遺伝子内包高分子ミセルは、レポーター遺伝子としてルシフェラーゼ発現プラスミドを使用し、プラスミドとポリエチレングリコール-ポリリシンブロック共重合体PEG-PLL) (PEGの分子量:12,000; PLLの重合度:73)をアミノ基/リン酸比(N/P比)が1.2になるように10mMトリス緩衝液(pH7.4)中で混合することにより調製した。一方、フタロシアニンデンドリマー内包高分子ミセルは、フタロシアニンデンドリマーとPEG-PLL (PEGの分子量:12,000; PLLの重合度:49)を電荷が中和されるように、10mM リン酸緩衝液(pH7.4)中で混合することにより調製した。このようにして調製された遺伝子内包高分子ミセルとフタロシアニンデンドリマー内包高分子ミセルを同時に24穴培養プレート上に播種したHeLa細胞(10,000個/ウェル)と6時間培養した。その後、培地交換を行い、ハロゲン光源(300W)と400-700nmのバンドパスフィルターを搭載した照射ボックス中で、培養プレートの光照射を行った(照射エネルギー:5.4 J/cm2)。光照射後、48時間さらに培養を行い、遺伝子発現効率をルシフェラーゼ法により評価した。遺伝子発現量はRelative Light Unit (RLU) / mg タンパク量の単位で得られる。タンパク量はBCA法により測定した。また、DPc内包高分子ミセルによる細胞の光毒性はMTT法により評価した。この研究の対照として、光照射を行わない条件においても同様な実験を行った。
フタロシアニンデンドリマー内包高分子ミセル濃度を変化させた時の遺伝子発現効率および光毒性をそれぞれ図4(A)および(B)に示す。図4(A)において、広いフタロシアニンデンドリマー濃度範囲に渡り、光化学的遺伝子導入の効果が認められ、光照射により遺伝子発現効率が最大212倍にまで向上した。この光化学的遺伝子導入法による遺伝子発現上昇効果は、エンドソーム溶解試薬として遺伝子発現効率を高めることが知られているヒドロキシクロロキンの添加よりも1.6倍高いものであった。フタロシアニンデンドリマー濃度が6.4E-7 Mの条件においては、フタロシアニンデンドリマー内包高分子ミセルによる光毒性により細胞生存率が51%まで減少したが、光化学的遺伝子導入法により最大の遺伝子発現効率が得られた条件(フタロシアニンデンドリマー濃度: 8.0E-8 M)においては細胞生存率が86%であり顕著な光毒性は認められなかった(図4(B))。最大の遺伝子発現が得られる条件において光毒性により細胞生存率が50%まで減少する汎用光増感剤を用いた光化学的遺伝子導入と比較すると、フタロシアニンデンドリマー内包高分子ミセルを用いた光化学的遺伝子導入法では光毒性が低く抑えられるものと考えられる。

実施例6<光化学的遺伝子導入における光照射エネルギーの効果>
フタロシアニンデンドリマー(DPc)内包高分子ミセルと遺伝子内包高分子ミセルを同時培養した時の光化学的遺伝子導入効果(光照射エネルギーの効果)を検討した。
実施例5と同様に、遺伝子内包高分子ミセルとフタロシアニンデンドリマー内包高分子ミセルを同時に24穴培養プレート上に播種したHeLa細胞(10,000個/ウェル)と6時間培養した。培地交換後、ハロゲン光源と400-700nmのバンドパスフィルターを搭載した照射ボックス中で、培養プレートの光照射を照射時間を変化させて行った(照射エネルギー: 2.7, 5.4, 8.0 J/cm2)。光照射後、48時間さらに培養を行い、遺伝子発現効率および細胞毒性をそれぞれルシフェラーゼ法およびMTT法により評価した。
光照射エネルギー量を変化させた時の遺伝子発現効率、遺伝子発現の光選択性および光毒性をそれぞれ図5(A)、(B)および(C)に示す。高いフタロシアニンデンドリマー濃度(6.7E-7 M)や高い光照射エネルギー量(8.0 J/cm2)においては顕著な光毒性が認められたものの(図5(C))、実施例1と同様に、広いフタロシアニンデンドリマー濃度および照射エネルギー域において光照射による顕著な遺伝子導入効果の上昇が認められた(図5(A)および(B))。このように、フタロシアニンデンドリマー内包高分子ミセルと遺伝子内包高分子ミセルの同時培養による光化学的遺伝子導入法は、広いフタロシアニンデンドリマー濃度および照射エネルギー域において、細胞の光毒性を惹起せず、光選択的に遺伝子導入効率を高める非常に有効な手段であることが示された。
以上詳しく説明した通り、細胞や細胞小器官、より詳しくは癌細胞などの標的細胞、光化学的手法による分子を導入する標的細胞のエンドソームのみを破壊することのできる、長波長励起が可能な光増感剤であるフタロシアニン化合物、およびそれを含有し、効率よく目的細胞中に運搬することが可能で、薬剤として使用しやすく水中で安定な光力学療法用および光化学的分子導入用の高分子ミセル構造体が提供される。
実施例2における、フタロシアニンデンドリマーを内包する高分子ミセル構造体の吸光スペクトルを示した図である。 実施例3における、酸素電極を用いたフタロシアニンデンドリマー(A)およびフタロシアニンデンドリマー内包高分子ミセル構造体(B)の溶液中(5%のウシ胎児血清を含有)における酸素消費量の測定結果を示した図である。 実施例4における、ヒト子宮癌由来HeLa細胞に対するフタロシアニンデンドリマーおよびその高分子ミセル構造体の光照射下、非照射下での細胞増殖抑制効果を示した図である。 実施例5におけるフタロシアニンデンドリマー内包高分子ミセルと遺伝子内包高分子ミセルの同時培養による光化学的遺伝子導入法における遺伝子導入効率(A)および光毒性(B)でのフタロシアニンデンドリマー濃度の効果を示した図である。図中DPcはフタロシアニンデンドリマーを、hcはヒドロキシクロロキンをそれぞれ示す。 実施例6におけるフタロシアニンデンドリマー内包高分子ミセルと遺伝子内包高分子ミセルの同時培養による光化学的遺伝子導入法における遺伝子導入効率(A)、遺伝子発現の光選択性(B)、光毒性(C)での、光照射エネルギーの効果を示した図である。図中DPcはフタロシアニンデンドリマーを、hcはヒドロキシクロロキンをそれぞれ示す。

Claims (17)

  1. 一般式〔1〕;
    Figure 0005364225
    (qはデンドリマー表面の荷電原子の数を示し、cは荷電であって負(−)または正(+)を示し、PcMは一般式〔2〕;
    Figure 0005364225
    で表され、式中のMは、金属原子を示し、R1、R2、R3、及び、R4は、水素原子もしくは、同一または別異のアリールエーテルデンドロンサブユニットを示し、かつ、R1、R2、R3、及び、R4のうちの少なくとも一つはアリールエーテルデンドロンサブユニットであり、一般式〔3〕;
    Figure 0005364225
    で表され、nは2以上の整数を示し、前記の荷電cが負(−)の場合、Wはアニオン基を示し、荷電cが正(+)の場合、Wはカチオン基を示し、各々のWはスペーサー分子鎖を介して結合してもよく、その複数がベンゼン環に結合していてもよい。スペーサー分子鎖は、次式;
    C(Z)Z′R4(CR56)m
    (ZおよびZ′は、各々、同一または別異に、O、S、及びNのうちの一種の原子であり、R4はZ′がN原子の場合に炭化水素基であり、R5及びR6は、同一または別異に、水素原子または炭化水素基を示し、mは0または1以上の整数を示す)で表されるイオン性フタロシアニンデンドリマーを含む高分子ミセル構造体を有効成分とすることを特徴とする癌治療用の光力学療法剤。
  2. アニオン基が、酸アニオン基である請求項1記載の癌治療用の光力学療法剤。
  3. カチオン基が、次式;N+(CR1233
    (R1,R2,及びR3は、各々、同一または別異に、炭化水素基を示す。)で表される請求項1記載の癌治療用の光力学療法剤。
  4. nが25以下の整数である請求項1ないし3のいずれか記載の癌治療用の光力学療法剤。
  5. 高分子ミセル構造体が、イオン性フタロシアニンデンドリマーと水溶性のポリアミノ酸系ポリマーとの静電結合型高分子ミセルであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか記載の癌治療用の光力学療法剤。
  6. 水溶性のポリアミノ酸系ポリマーが、ポリアルキレングリコールとポリアミノ酸とのブロックコポリマーである請求項5記載の癌治療用の光力学療法剤。
  7. 高分子ミセル構造体が、アニオン性フタロシアニンデンドリマーと、水溶性ポリエチレングリコール−ポリL−リシンブロックポリマー(〔PEG−PLL〕)との静電結合型高分子ミセルであることを特徴とする請求項6記載の癌治療用の光力学療法剤。
  8. 高分子ミセル構造体が、カチオン性フタロシアニンデンドリマーとポリエチレングリコール−ポリL−アスパラギン酸ブロックポリマー(〔PEG−P(Asp)〕)との静電結合型高分子ミセルであることを特徴とする請求項6記載の癌治療用の光力学療法剤。
  9. 一般式〔1〕;
    Figure 0005364225
    (qはデンドリマー表面の荷電原子の数を示し、cは荷電であって負(−)または正(+)を示し、PcMは一般式〔2〕;
    Figure 0005364225
    で表され、式中のMは、金属原子を示し、R1、R2、R3、及び、R4は、水素原子もしくは、同一または別異のアリールエーテルデンドロンサブユニットを示し、かつ、R1、R2、R3、及び、R4のうちの少なくとも一つはアリールエーテルデンドロンサブユニットであり、一般式〔3〕;
    Figure 0005364225
    で表され、nは2以上の整数を示し、前記の荷電cが負(−)の場合、Wはアニオン基を示し、荷電cが正(+)の場合、Wはカチオン基を示し、各々のWはスペーサー分子鎖を介して結合してもよく、その複数がベンゼン環に結合していてもよい。スペーサー分子鎖は、次式;
    C(Z)Z′R4(CR56)m
    (ZおよびZ′は、各々、同一または別異に、O、S、及びNのうちの一種の原子であり、R4はZ′がN原子の場合に炭化水素基であり、R5及びR6は、同一または別異に、水素原子または炭化水素基を示し、mは0または1以上の整数を示す)で表されるイオン性フタロシアニンデンドリマーを含む高分子ミセル構造体を有効成分とすることを特徴とする標的細胞への光化学的遺伝子導入用の光増感剤。
  10. アニオン基が、酸アニオン基である請求項9記載の光化学的遺伝子導入用の光増感剤。
  11. カチオン基が、次式;N+(CR1233
    (R1,R2,及びR3は、各々、同一または別異に、炭化水素基を示す。)で表される請求項10記載の光化学的遺伝子導入用の光増感剤。
  12. nが25以下の整数である請求項9ないし12のいずれか記載の光化学的遺伝子導入用の光増感剤。
  13. 高分子ミセル構造体が、イオン性フタロシアニンデンドリマーと水溶性のポリアミノ酸系ポリマーとの静電結合型高分子ミセルであることを特徴とする請求項9ないし12のいずれか記載の光化学的遺伝子導入用の光増感剤。
  14. 水溶性のポリアミノ酸系ポリマーが、ポリアルキレングリコールとポリアミノ酸とのブロックコポリマーである請求項13記載の光化学的遺伝子導入用の光増感剤。
  15. 高分子ミセル構造体が、アニオン性フタロシアニンデンドリマーと、水溶性ポリエチレングリコール−ポリL−リシンブロックポリマー(〔PEG−PLL〕)との静電結合型高分子ミセルであることを特徴とする請求項14記載の光化学的遺伝子導入用の光増感剤。
  16. 高分子ミセル構造体が、カチオン性フタロシアニンデンドリマーとポリエチレングリコール−ポリL−アスパラギン酸ブロックポリマー(〔PEG−P(Asp)〕)との静電結合型高分子ミセルであることを特徴とする請求項14記載の光化学的遺伝子導入用の光増感剤。
  17. 請求項9ないし16のいずれか記載の光化学的遺伝子導入用の光増感剤を含むことを特徴とする医薬品。
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