JP6362136B2 - ポリスチレン含有アームを備えた金属フタロシアニン・コア型スターポリマー及びその製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、コアファースト法と呼ばれる方法がある。この方法は、フタロシアニンに重合開始官能基を修飾して、そこからモノマーを重合させる方法である(非特許文献1)。
非特許文献1では、ZnTAPcが合成され、TAPcClが合成され、TAPc−PAMが合成されている。具体的には、まず、原子移動ラジカル・ポリマリゼイション(atom transfer radical polymerization (ATRP))のためのイニシエーターとして亜鉛(II)テトラ(2−クロロプロピオニルアミド)フタロシアニン(Zinc(II) tetra−(2−chloropropionylamido) phthalocyanine(TAPcCl))が合成された。触媒として、CuBr/tris(2−dimethylaminoethyl)amineが用いられ、N−isopropylacrylamide(NIPAM)のATRPが実行されて、スター型のTAPc−PAMが合成された。TAPc−PAMは、zinc phthalocyanineコアと、poly(N−isopropylacrylamide)PNIPAMアームを有する。
非特許文献4には、亜鉛錯体、コバルト錯体およびフリーベースの2,9(10),16(17),23(24)−tetrakis(pent−4−yoxy)phthalocyanineが合成され、アジド基を有するポリスチレン、あるいはポリターシャリブチルアクリレートとの1,3―双極子付加環化反応により、フタロシアニン・コアのスターポリマーが合成されている。
例えば、非特許文献5は、Unusual Side−Chain Effects on Charge−Carrier Lifetime in Discotic Liquid Crystalsに関するものであり、hexa−peri−hexabenzocoronene(HBC)誘導体液晶は極めて長いフォトキャリア寿命を有することが報告されている。
非特許文献6は、Charge Recombination via Intercolumnar Electron Tunneling through the Lipid−like Mantle of Discotic Hexa−alkyl−hexa−peri−hexabenzocoronenesに関するものであり、hexa−アルキル置換のhexa−peri−hexabenzocoronenesでは、主に、ハイドロカーボン・マントルを介する、カラム間の電子トンネル効果により移動チャージキャリアの再結合が生じたことが報告されている。
試行錯誤を繰り返し、製造条件を検討することにより、フタロニトリルにATRP(原子移動ラジカル重合)イニシエーターを修飾し、モノマーを精密重合してフタロニトリルを末端に有するポリマーを合成してから、環化反応させて、スターポリマーであるPc−(PS)4やPc−(PS)8の粉末を効率よく、かつ、純度高く作製することができた。
ここで、ATRPを用いることにより、分子量・分子量分布を調節でき、アームの長さを正確に制御できた。また、この粉末を溶媒に溶かせば、粘性の低い分散溶液を調製することができ、スピンコート法により薄膜を容易に形成できた。
また、その薄膜の光誘起キャリア寿命は長かった。絶縁性のPSポリマー中に半導体性のフタロシアニンが孤立する構造において、フタロシアニンにトラップされたキャリアが絶縁性のシールド環境中で安定に保持されるためであると考えられ、この原理を利用して、キャリアをコアに一時的にトラップさせた有機トランジスタや有機メモリ等の有機電子デバイスを提供できることを見出して、本発明を完成した。
本発明は、以下の構成を有する。
(3) 前記アームが、各ベンゼン環に2つずつ備えられていることを特徴とする(1)に記載のポリスチレン含有アームを備えた金属フタロシアニン・コア型スターポリマー。
(4) 前記直鎖アルキル基が(CH2)pで表され、そのCの数pが2以上20以下であることを特徴とする(1)に記載のポリスチレン含有アームを備えた金属フタロシアニン・コア型スターポリマー。
(5) 前記金属フタロシアニンの金属がZn、Cu、Ni、Co、Fe、Mnの群から選択されるいずれか一の金属であることを特徴とする(1)に記載のポリスチレン含有アームを備えた金属フタロシアニン・コア型スターポリマー。
(8) 前記金属化合物が、Zn、Cu、Ni、Co、Fe、Mnの群から選択されるいずれか一の金属のハロゲン化合物であることを特徴とする(6)に記載のポリスチレン含有アームを備えた金属フタロシアニン・コア型スターポリマーの製造方法。
(9) フタロニトリルATRPイニシエーターを合成する工程が、4位又は/及び5位にハロゲン又はニトロ基を有するフタロニトリルに、HS−(CH2)p−OH(pは2以上20以下である。)を、K2CO3存在下、DMSO中で反応させて、フタロニトリル−{S−(CH2)p−OH}m(m=1又は2)を作製する工程と、Br−C(=O)−C(CH3)2−Brを、TEA存在下、THF中で反応させて、フタロニトリル−{S−(CH2)p−O−C(=O)−C(CH3)2−Br}m(m=1又は2)を合成する工程と、からなることを特徴とする(6)に記載のポリスチレン含有アームを備えた金属フタロシアニン・コア型スターポリマーの製造方法。
(ポリスチレン含有アームを備えた金属フタロシアニン・コア型スターポリマー)
まず、本発明の実施形態であるポリスチレン含有アームを備えた金属フタロシアニン・コア型スターポリマーについて説明する。
図1(a)に示すように、本発明の実施形態であるポリスチレン含有アームを備えた金属フタロシアニン・コア型スターポリマー10は、金属フタロシアニン錯体からなるコア11と、金属フタロシアニン錯体11を構成するベンゼン環に接続された置換基R1〜R8を備えている。
置換基R1〜R8は、ベンゼン環の4位、5位に接続されているが、これに限られるものではなく、3位、6位に接続されていてもよい。
これは2,9,16,23−tetrakis(2−polystyrene−2−methylpropionate−alkylthio)phthalocyanininato metalであり、M−Pc−(S−(CH2)p−(C(CH3)2−C(=O)−O−)−PS(n))4 と略記する。
これは2,3,9,10,16,17,23,24−octakis(2−polystyrene−2−methylpropionate−alkylthio)phthalocyanininato metalであり、M−Pc−(S−(CH2)p−(C(CH3)2−C(=O)−O−)−PS(n))8 と略記する。
各ベンゼン環にアームAを2つずつ備えることにより、スターポリマー10の絶縁性を高めることができる。
図4は、本発明の実施形態であるポリスチレン含有アームを備えた金属フタロシアニン・コア型スターポリマーの製造方法の一例を示すフローチャート図である。
本発明の実施形態であるポリスチレン含有アームを備えた金属フタロシアニン・コア型スターポリマー10の製造方法は、フタロニトリルATRPイニシエーター合成工程S1、フタロニトリル−ポリスチレン(Pn−PS)合成工程S2、精製Pn−PS作製工程S3、スターポリマー(M−Pc−(S−(CH2)p−(C(CH3)2−C(=O)−O−)−PS(n))m)合成工程S4の4つの工程を有する。
まず、4位又は/及び5位にハロゲン又はニトロ基を有するフタロニトリルに、HS−(CH2)p−OH(pは2以上20以下である。)を、K2CO3存在下、DMSO中で反応させて、フタロニトリル−{S−(CH2)p−OH}m(m=1又は2)を作製する。
次に、Br−C(=O)−C(CH3)2−Br(2-ブロモイソブチリルブロミド)を、TEA(トリエチルアミン)存在下、テトラヒドロフラン(THF)中で反応させて、フタロニトリル−{S−(CH2)p−O−C(=O)−C(CH3)2−Br}m(m=1又は2)(Pn−(S−(CH2)p−(C(CH3)2−C(=O)−O−)−PS)、以下、フタロニトリルATRPイニシエーター(Pn−i)と略記する。)を合成する。
これにより、容易にPn−iを合成できる。
Pn−iをATRP開始剤として、CuBr/PMDETA触媒存在下、アニソール中、70℃に加熱して、ポリスチレン(最小の繰り返し構造単位nが5以上200以下である。)を合成し、フタロニトリル−{S−(CH2)p−O−C(=O)−C(CH3)2−スチレンn−Br}m(m=1又は2)(以下、フタロニトリル−ポリスチレン(Pn−PS)と略記する。)を合成する。
Pn−PSから、高分子量のポリマー(不純物ポリマー)を除去して、精製して、精製Pn−PSを作製する。
金属化合物/DBU存在下、ブタノール/トルエン混合溶媒中で、精製Pn−PSを環化反応させる。
前記金属化合物が、Zn、Cu、Ni、Co、Fe、Mnの群から選択されるいずれか一の金属のハロゲン化合物であることが好ましい。効率よく、環化できる。例えば、CuCl2である。
この工程では混合溶媒を用いることが好ましい。Pn−PSはアルコール溶媒に溶けない。Pn−PSの溶解性を上げるため、ブタノール(沸点117℃)にトルエン(沸点110℃)を加えて混合溶媒とする。
混合溶媒としては、ブタノール/トルエンの他、プロパノール/トルエン、ペンタノール/トルエン、ヘキサノール/アニソールとしてもよい。
これにより、スターポリマー(M−Pc−(S−(CH2)p−(C(CH3)2−C(=O)−O−)−PS(n))m)を容易に合成できる。
(合成)
<フタロニトリルATRPイニシエーター(Pn−i(1))合成工程>
図5は、フタロニトリルATRPイニシエーター(Pn−i(1))合成工程の反応式である(Scheme 1−1)。この工程は、公知の方法である。
まず、メルカプトウンデセノール(HS−(CH2)11−OH)と、4−ニトロフタロニトリル(4−Nitrophthalonitrile)をDMSO中炭酸カリウムとともに反応させて、OHを末端に有するアルキルチオフタロニトリル(フタロニトリル−{S−(CH2)p−OH}m(m=1))を合成した。
次に、それを2−ブロモイソブチリルブロミド(Br−C(=O)−C(CH3)2−Br)と反応させて、フタロニトリル−{S−(CH2)p−O−C(=O)−C(CH3)2−Br}m(m=1)、で表記するフタロニトリルATRPイニシエーター(Pn−i(1))を合成した。
図6は、フタロニトリル−ポリスチレン(Pn−PS(1))合成工程の反応式である(Scheme 1−2)。
次に、アニソール(Anisole)中70℃で、フタロニトリルATRPイニシエーター(Pn−i(1))を開始剤、CuBr/PMDETAを触媒系として用い、ATRP法により、スチレンからポリスチレンを合成し、フタロニトリル−{S−(CH2)p−O−C(=O)−C(CH3)2−ポリスチレン(n)−Br}m(m=1)で表記するフタロニトリル−ポリスチレン(Pn−PS(1))を合成した。
また、重クロロホルム中1H NMRにより、重合度を見積もった。重合度は42となった。
リサイクル分取GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)(JAIGEL 2H/2.5H、溶離液:テトラヒドロフラン)を用いて、フタロニトリル−ポリスチレン(Pn−PS(1))から高分子量のポリマーを取り除く精製を行い、精製フタロニトリル−ポリスチレン(精製Pn−PS(1))を作製した。
図7は、スターポリマー合成工程の反応式である(Scheme 1−3)。
まず、ブタノール(沸点117℃)にトルエン(沸点110℃)を加えた混合溶媒を用意した。精製Pn−PSはアルコール溶媒に溶けないため、Pn−PSの溶解性を上げるためである。
次に、前記混合溶媒に精製Pn−PSを、CuCl2、DBUとともに添加した。
次に、前記混合溶媒を加熱して、130℃として、この状態を12時間維持して、反応溶液を得た。このようにして、精製Pn−PS(1)を、CuCl2、DBU存在下、ブタノール(BuOH)/トルエン(Toluene)中で反応させた。
次に、反応溶液をアルミナに通して触媒を取り除いた。
次に、メタノール中で再沈殿して、反応混合物固体を得た。
次に、分取GPC(JAIGEL 2.5H/3H、溶離液:THF)を用いて、緑色粉末のPcのスターポリマーと、原料である白色粉末のPnのポリマーを分離した。
以上により、銅フタロシアニンをコアに持つスターポリマー(Cu−Pc−(S−(CH2)p−(C(CH3)2−C(=O)=O−)−PS(n))4 、更にPc−(PS)4と略記する。)を合成した。
(実施例2)
(合成)
<フタロニトリルATRPイニシエーター(Pn−i(2))合成工程>
4−ニトロフタロニトリルの代わりに市販品(ジクロロフタロニトリル)を用いた他は、実施例1と同様にして、合成を行った。
図8は、フタロニトリルATRPイニシエーター(Pn−i(2))合成工程の反応式である(Scheme 2−1)。
まず、メルカプトウンデセノールと、(4,5―ジクロロフタロニトリル)をDMSO中炭酸カリウムとともに反応させ、OHを末端に有するアルキルチオフタロニトリルを合成した。
次に、それを2−ブロモイソブチリルブロミドと反応させて、フタロニトリル含有bifunctional initator(Pn−i(2))を合成した。
図9は、フタロニトリル−ポリスチレン(Pn−PS(2))合成工程の反応式である(Scheme 2−2)。
次に、アニソール(Anisole)中70℃で、フタロニトリルATRPイニシエーター(Pn−i(2))を開始剤、CuBr/PMDETAを触媒系として用い、ATRP法により、スチレンからポリスチレンを合成し、フタロニトリル−{S−(CH2)p−O−C(=O)−C(CH3)2−ポリスチレン(n)−Br}m(m=2)で表記する2分岐のフタロニトリル−ポリスチレン(Pn−PS(2))を合成した。
図10は、重合中のGPC測定結果であって、反応開始後1.5h時、3.5h時、5h時におけるGPC測定結果である。ピークが9.2分ぐらいから、9.7分ぐらいに移動した。
PDIは、分子量分布を示し、Mnは数平均分子量を示し、Mn(theor)は開始剤とモノマー比から計算した分子量の理論値を示す。
リサイクル分取GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)(JAIGEL 2H/2.5H、溶離液:テトラヒドロフラン)を用いて、フタロニトリル−ポリスチレン(Pn−PS(2))から高分子量のポリマーを取り除く精製を行い、精製フタロニトリル−ポリスチレン(精製Pn−PS(2))を作製した。
ピーク位置は変わらなかったが、8.75分近傍のショルダーが、after GPCではなくなった。
これにより、GPCを行うことにより精製できたことを確認した。
図14は、スターポリマー合成工程の反応式である(Scheme 2−3)。
まず、ブタノール(沸点117℃)にトルエン(沸点110℃)を加えた混合溶媒を用意した。
次に、前記混合溶媒に精製Pn−PS(2)を、CuCl2、DBUとともに添加した。
次に、前記混合溶媒を加熱して、130℃として、この状態を12時間維持して、反応溶液を得た。このようにして、精製Pn−PS(2)を、CuCl2、DBU存在下、ブタノール(BuOH)/トルエン(Toluene)中で反応させた。
次に、反応溶液をアルミナに通して触媒を取り除いた。
次に、メタノール中で再沈殿して、反応混合物固体を得た。
次に、分取GPC(JAIGEL 2.5H/3H、溶離液:THF)を用いて、緑色粉末のPcのスターポリマーと、原料である白色粉末のPnのポリマーを分離した。
以上により、銅フタロシアニンをコアに持つスターポリマー(Cu−Pc−(S−(CH2)p−(C(CH3)2−C(=O)=O−)−PS(n))8 、更にPc−(PS)8と略記する。)を合成した。
また、表2にスターポリマーの合成条件をまとめた。
ここで、MWは(重量平均分子量)である。
(吸収スペクトル測定)
まず、(Pc−(PS)4)を塩化メチレン溶媒に溶解して、(Pc−(PS)4)試料溶液を作製した。
次に、(Pc−(PS)4)試料溶液の吸収スペクトル測定を行った。
(Pc−(PS)4)試料塩化メチレン溶液は、693nmに吸収極大ピークがあった。チオアルキルフタロシアニンの文献値693nmと一致した。
また、630nm付近に第2ピーク、660nm付近にショルダーが見られた。
以上の吸収ピークは、フタロシアニンのQバンド吸収帯に由来すると考察した。
次に、各混合溶媒に(Pc−(PS)4)を溶解して、混合溶媒体積比の異なる(Pc−(PS)4)試料溶液を作製した。
図17は、混合溶媒体積比の異なる(Pc−(PS)4)試料溶液の吸収スペクトル測定結果である。
塩化メチレン:メタノール体積比が100:0の(Pc−(PS)4)試料溶液の698nm吸収ピークが極大となり、MeOH量の増加とともに、693nmの吸収ピーク値が減少した。
一方、短波長側の642nmの吸収ピークは、塩化メチレン:メタノール体積比が100:0の(Pc−(PS)4)試料溶液が極小となり、MeOH量の増加とともに、642nmの吸収ピーク値が増加した。これは、フタロシアニンが凝集するときに特徴的なスペクトルであるので、MeOH量の増加とともに、フタロシアニンが凝集したためと考察した。
次に、この(Pc−(PS)4)薄膜の表面の走査型顕微鏡(SEM)観察を行った。
図18は、(Pc−(PS)4)のメタノール、塩化メチレン混合溶液中試料の走査型顕微鏡(SEM)観察写真である。
直径0.5〜1μmの球状のオブジェクトが複数見られた。球状のオブジェクトはメタノール溶媒を加えることにより形成されたフタロシアニンを含むポリスチレン粒子である。
次に、(Pc−(PS)4)試料薄膜の吸収スペクトル測定を行った。
(Pc−(PS)4)試料薄膜でも、フタロシアニンのQバンド吸収帯に由来する630nm付近の吸収ピーク、690nm付近のショルダーが見られた。これらは、MeOH含有量を増やした混合溶媒を用いた試料混合溶液のスペクトルと同様であった。よって、薄膜中では、フタロシアニンが凝集していることが示唆された。
次に、(Pc−(PS)8)試料溶液の吸収スペクトル測定を行った。
塩化メチレン溶媒中でPcPS8は711nmに極大を持つ吸収スペクトルがあった。これは、チオアルキルフタロシアニンの文献値と一致した。
具体的には、355nm、20mW(1.8×1016 photons/cm2)のレーザーパルスで励起して、Pcスターポリスチレンの最大TRMC信号(φΣμ)を測定した。
最大TRMC信号(φΣμ)は非常に小さく、PcPS4が1.1×10−6(cm2/Vs)、PcPS8が2.7×10−6(cm2/Vs)であった。
ヘキサベンゾコロネン誘導体は、ヘキサゴナルカラムナー相を形成し、電子移動・発生機能を有するコアのπ空間が、絶縁機能を有するアルキルアームで覆われているので、光励起によって生成したキャリアが再結合により消滅せずにカラム内で長寿命化したと考えられている。
Pc−PSのスターポリマーにおいても、フタロシアニン・コアのπ空間が、絶縁体であるポリマーに囲まれた構造を形成しているため、光励起によって生成したキャリアが再結合により消滅せずに長寿命化していると考えられる。
さらに、8アームの方が4アームのものより一桁寿命が長いことから、アームの数を増やす事で、フタロシアニンのπ空間を取り囲む層の絶縁性を高めて、π空間のキャリア閉じ込め効果が高められていると考えられる。
Claims (9)
- 金属フタロシアニン錯体からなるコアと、
前記金属フタロシアニン錯体を構成するベンゼン環に接続されたアームと、を備えたスターポリマーであって、
前記アームは、前記ベンゼン環に接続する第1の接続部と、前記第1の接続部に接続し、前記ベンゼン環と反対側に伸長する第1の伸長部と、前記第1の伸長部に接続する第2の接続部と、前記第2接続部に接続し、前記ベンゼン環と反対側に伸長する第2の伸長部とからなり、
前記第1の接続部はSであり、
前記第1の伸長部が直鎖アルキル基であり、
前記第2の接続部は−O−C(=O)−C(CH3)2−であり、
前記第2の伸長部がポリスチレン(最小の繰り返し構造単位nが5以上200以下である。)であることを特徴とするポリスチレン含有アームを備えた金属フタロシアニン・コア型スターポリマー。 - 前記アームが、各ベンゼン環に1つずつ備えられていることを特徴とする請求項1に記載のポリスチレン含有アームを備えた金属フタロシアニン・コア型スターポリマー。
- 前記アームが、各ベンゼン環に2つずつ備えられていることを特徴とする請求項1に記載のポリスチレン含有アームを備えた金属フタロシアニン・コア型スターポリマー。
- 前記直鎖アルキル基が(CH2)pで表され、そのCの数pが2以上20以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリスチレン含有アームを備えた金属フタロシアニン・コア型スターポリマー。
- 前記金属フタロシアニンの金属がZn、Cu、Ni、Co、Fe、Mnの群から選択されるいずれか一の金属であることを特徴とする請求項1に記載のポリスチレン含有アームを備えた金属フタロシアニン・コア型スターポリマー。
- 4位又は/及び5位にハロゲン又はニトロ基を有するフタロニトリルに、HS−(CH2)p−OH(pは2以上20以下である。)を反応させてから、Br−C(=O)−C(CH3)2−Brを反応させて、フタロニトリル−{S−(CH2)p−O−C(=O)−C(CH3)2−Br}m(m=1又は2)(以下、フタロニトリルATRPイニシエーターという。)を合成する工程と、
前記フタロニトリルATRPイニシエーターを開始剤として、CuBr/PMDETA触媒存在下、アニソール中、70℃で、ATRPにより、スチレンからポリスチレン(最小の繰り返し構造単位nが5以上200以下である。)を合成して、フタロニトリル−{S−(CH2)p−O−C(=O)−C(CH3)2−スチレンn−Br}m(m=1又は2)(以下、フタロニトリル−ポリスチレン(Pn−PS)という。)を合成する工程と、
高分子量のポリマー(不純物ポリマー)を除去して、精製して、精製Pn−PSを作製する工程と、
金属化合物/DBU存在下、ブタノール/トルエン混合溶媒中で、精製Pn−PSを環化反応させて、スターポリマーを合成する工程と、を有することを特徴とするポリスチレン含有アームを備えた金属フタロシアニン・コア型スターポリマーの製造方法。 - 4位又は/及び5位にハロゲン又はニトロ基を有するフタロニトリルが、ニトロフタロニトリル又はジクロロフタロニトリルであることを特徴とする請求項6に記載のポリスチレン含有アームを備えた金属フタロシアニン・コア型スターポリマーの製造方法。
- 前記金属化合物が、Zn、Cu、Ni、Co、Fe、Mnの群から選択されるいずれか一の金属のハロゲン化合物であることを特徴とする請求項6に記載のポリスチレン含有アームを備えた金属フタロシアニン・コア型スターポリマーの製造方法。
- フタロニトリルATRPイニシエーターを合成する工程が、
4位又は/及び5位にハロゲン又はニトロ基を有するフタロニトリルに、HS−(CH2)p−OH(pは2以上20以下である。)を、K2CO3存在下、DMSO中で反応させて、フタロニトリル−{S−(CH2)p−OH}m(m=1又は2)を作製する工程と、
Br−C(=O)−C(CH3)2−Brを、TEA存在下、THF中で反応させて、フタロニトリル−{S−(CH2)p−O−C(=O)−C(CH3)2−Br}m(m=1又は2)を合成する工程と、からなることを特徴とする請求項6に記載のポリスチレン含有アームを備えた金属フタロシアニン・コア型スターポリマーの製造方法。
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