JP5362960B2 - 水溶性Cr(VI)含有量を制御するセメントクリンカーの製造方法 - Google Patents

水溶性Cr(VI)含有量を制御するセメントクリンカーの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、セメントクリンカー中に生成され、セメントの水和過程において短時間で溶出する恐れのある水溶性六価クロム(以下、水溶性Cr(VI)と表記)の含有量を所定含有量以下に制御するセメントクリンカーの制御方法に関する。特に、水溶性Cr(VI)の含有量を20mg/kg以下に制御することができるセメントクリンカーの製造方法に関する。
セメントクリンカーは、石灰石、粘土、珪石、鉄原料等の各種原料をロータリーキルンにより高温焼成して製造される。高温条件下で製造されたセメントクリンカー中には、原料に含まれるクロムが有害な水溶性Cr(VI)の形態で存在する場合がある。ここで、水溶性Cr(VI)とは、水と接触すると短時間(10分間程度)に溶出する六価クロムであり、その定量方法はセメント協会標準試験方法I−51「セメント及びセメント原料中の微量成分の定量方法」に規定されている。また、全クロムは結晶形態(イオン置換・固溶、クロム酸塩の他結晶内へ内包、他結晶間マトリックス部分での晶出)の異なる全てのクロム(三〜六価)をいう。その定量方法は、上記セメント協会標準試験方法に規定されている。
近年、環境に対する配慮の高まりから、セメントを土質改良用途に使用する場合において、改良土からの水溶性Cr(VI)溶出量が土壌環境基準値(0.05mg/L以下)を満たすことを目的に、セメント業界では、セメント中の水溶性Cr(VI)含有量を20mg/kg以下とすることを要求するガイドラインを1998年9月に設定し管理している。
また、セメントクリンカー中の水溶性Cr(VI)は、非特許文献1に記されるように、主にクロム酸ナトリウム、クロム酸カリウム等のアルカリ金属塩の形態で存在すると言われているが、水溶性Cr(VI)の生成に対して全Cr量が影響することは容易に類推できたが、全Cr量以外にこれを制御する方法は見出されていなかった。
既往技術において、水溶性Cr(VI)の溶出防止方法に関してはいくつかの方法が開示されている。例えば、特許文献1では、セメント中のCSとCA量の総量を規定したセメントに所定量のスラグを添加することにより、火山灰質粘性土などを処理対象土とした場合でも、高い固化強度が得られる溶出防止方法が開示されている。しかしながら、この方法ではセメントにスラグを新たに添加する必要があり、製造工程が煩雑であるとともに、反応性の低いスラグを混合することにより強度発現性に劣る場合があるという問題があった。
一方、特許文献2では、焼成工程においてプラスチック等の可燃性樹脂をキルンに投入することによりキルン内を還元雰囲気とし、クリンカー中の水溶性Cr(VI)の生成を防ぐ方法が開示されている。しかしながら、可燃性樹脂をキルンに投入する方法では、キルン内の雰囲気を均一化することが難しく、焼成状態の変動が生じるため、生成したクリンカー中の水溶性Cr(VI)含有量や遊離石灰含有量等の品質変動が大きいといった問題があった。
高橋茂,セメント・コンクリート,No.640,pp.20−29 (Jun. 2000) 特開2000−308863号公報 特開2003−246654号公報
本発明は、上述の要求及び問題点に鑑みてなされたものであり、第1の目的は、水溶性Cr(VI)の溶出量を抑制し、所望の品質基準を満たしたセメントクリンカーの製造方法を提供することにある。第2の目的は、塩素バイパス設備を備えた既存のセメント焼成装置を用いて容易に水溶性Cr(VI)の溶出量を抑制し、所望の品質基準を満たしたセメントクリンカーの製造方法を提供することである。そして、第3の目的は、セメントクリンカーの製造に際して、廃棄物処理量を増大させることも可能とし、かつ、安価な廃棄物を原料及び燃料として用いることにより製造原価を低減できるセメントクリンカーの製造方法を提供することにある。
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、セメント中の水溶性Cr(VI)の生成には、アルカリ金属の中でKOのみが選択的にCrと結合することによって水溶性Cr(VI)を生成することを見出した。そして、上記目的を達成するため、本発明に係るセメントクリンカーの製造方法は、セメントクリンカー中のKO含有量を制御することにより、当該セメントクリンカー中に生成された水溶性Cr(VI)の含有量を所定の含有量以下に制御する。
さらに、無機塩素化合物若しくは有機塩素化合物を多く含む高塩素廃棄物を原料および/または燃料として多量に使用した場合、揮発性の高い塩素がセメント焼成装置のキルン及びプレヒーター内を循環することによって発生するコーティングトラブルを防止するために、特開2001−232149号公報に記載されるように、塩素バイパス設備を用いて高抽気率でセメント焼成装置からKClを含むガスを抽気して、所定品質基準を満たすセメントクリンカーを製造することが必要となる。このような高抽気率でのセメントクリンカーの製造は、原料損失や熱量損失などを伴い原単位の悪化をまねくことから、高抽気率での製造は必要最小限の場合のみに限定して実施されていた。しかしながら、本発明に係るセメントクリンカーの製造方法は、セメントクリンカー中のKO含有量を制御することにより、当該セメントクリンカー中に生成された水溶性Cr(VI)の含有量を所定の含有量以下に制御するため、無機塩素化合物若しくは有機塩素化合物を多く含む高塩素廃棄物を原料および/または燃料として多量に使用し、塩素バイパス設備を用いて高抽気率でセメント焼成装置からKClを含むガスを抽気する。
具体的には、本発明に係るセメントクリンカーの製造方法は、
塩素バイパス設備を備えたセメント焼成装置を用いたセメントクリンカーの製造方法であって、
無機塩素化合物若しくは有機塩素化合物を含む高塩素廃棄物を原料および/または燃料として使用し、
前記原料及び前記燃料に含まれる塩素(Cl)分とカリウム(K)分とを反応させてKClを生成させ、前記塩素バイパス設備を用いて高抽気率で前記セメント焼成装置から前記KClを含むガスを抽気することにより、セメントクリンカー中のKO含有量を制御し、
前記セメントクリンカー中の水溶性Cr(VI)含有量を所定含有量以下に制御する、
ことを特徴とする。
上述した発明によれば、塩素バイパス設備を備えたセメント焼成装置を用いたセメントクリンカーの製造方法であることから、無機塩素化合物若しくは有機塩素化合物を多く含む高塩素廃棄物を原料および/または燃料として多量に使用した場合であっても、装置内の反応により生成したKClを含むガスを塩素バイパスによりセメント焼成装置から抽気することができる。したがって、セメントクリンカー中の塩素含有量を既定値以下に制御できるとともに、揮発性の高い塩素がセメント焼成装置のキルン及びプレヒーター内を循環することによって発生するコーティングトラブルを防ぐことができる。
一般に、セメント焼成装置のロータリーキルン内で焼成してセメントクリンカーを生成するためには、燃料を吹き込むバーナーから5〜20m近辺で1300〜1800℃、キルン入口で900〜1250℃になるように管理されている。また、このような製造条件の下では、Kは、他のアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属と比較して、塩素分と反応し易く、かつ揮発し易いため塩素バイパス設備からの抽気ガスの主要成分はKClとなる。これは、NaやCa等のアルカリ金属やアルカリ土類金属はSiO等と反応してクリンカー鉱物(CS、CS等)の構成成分として取り込まれ揮発し難くなるのに対し、Kはこれらに取り込まれるよりも塩素と結合する方が安定であり、揮発し易いKClを生成するためである。
したがって、原料や燃料に含まれる塩素分の割合を多くすることにより、選択的に、Kと塩素を反応させ、より多くのKClを生成し、塩素バイパス設備を用いて高抽気率でセメント焼成装置からKClを含むガスを抽気することにより、セメント焼成装置の物質収支上、セメントクリンカー中のKO含有量を所定含有量以下に制御することができる。特に、原料や燃料に含まれるK分の割合が多い場合、原料等に含まれる塩素分の割合を多くすることが可能となり、高塩素廃棄物を多量に原料等として使用し、有効かつ効率的に、セメントクリンカー中のKO含有量を所定含有量以下に制御することができる。
さらに、前記製造条件において、Kは、NaやCa等のアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属と比較して、Crと結合してクロム酸塩を生成し易く、結果として短時間に溶出してしまう水溶性Cr(VI)含有量を増加させる。そのため、クリンカー中の水溶性Cr(VI)含有量はクリンカー中のKO含有量と強い相関関係を示す。この結果、セメントクリンカー中のKO含有量を所定の含有量以下に制御することにより、水溶性Cr(VI)の含有量を所定含有量以下に制御することができる。
ここで、水溶性Cr(VI)含有量とは、セメントクリンカー1kg中における水溶性Cr(VI)の含有量(mg)をいい、KO含有量と全Cr含有量とは、セメントクリンカー中におけるKOと全Crとが含有している割合を百分率(質量%)で表したものをいう。また、抽気率とは、セメント焼成装置のキルン窯尻における風量(m)に対して、塩素バイパス設備を用いてセメント焼成装置から抽気される抽気量(m)の百分率(体積%)をいう。なお、高抽気率とは、3.0体積%以上の抽気率をいう。一般的に、3.0体積%未満の抽気率でセメントクリンカーは製造されることから、これと区別したものである。なお、高塩素廃棄物を原料等に多量に使用し、3.0体積%未満の抽気率でセメントクリンカーを製造した場合、塩素バイパス設備によるKClの抜き出し能力が不足し、セメントクリンカー中のKO含有量を所定の含有量以下に制御することができなくなる。
また、無機塩素化合物とは、KClを除くものであり、NaCl、CaCl、MgCl、FeCl等を含む無機塩化物をいう。有機塩素化合物とはポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の有機化合物中にClを含むポリマー(プラスチック)をいい、有機塩素量とはこれら有機化合物中に含まれる塩素含有量(Cl換算量)のことをいう。なお、上記Cl換算量とは有機化合物中に含まれるCl含有量、例えばポリ塩化ビニル等に含まれるCl含有量をいう。なお、Cl換算量とは、廃棄物中に含まれるCl含有量をいい、例えば、NaCl、KCl、塩化ビニル等に含まれるCl含有量をいう。
本発明に係るセメントクリンカーの製造方法として、高塩素廃棄物は無機塩素化合物をCl換算量で5質量%以上含み、高塩素廃棄物に含まれるNaOとKOとの質量比が1.3以上である、ことが好ましい。
上述した発明によれば、無機塩素化合物をCl換算量で5質量%以上含む高塩素廃棄物を原料および/または燃料として多量に使用し、高塩素廃棄物中に含まれる塩素(Cl)分を前記Cl分に相応するカリウム分と反応させ、塩素バイパス設備を用いて生成したKClを高抽気率でセメント焼成装置からKClを含むガスとして抽気することで、セメントクリンカー中のKO含有量を所定含有量以下に制御することができる。
また、塩素バイパス設備を用いて生成したKClを高抽気率でセメント焼成装置からKClを含むガスとして抽気することから、セメント焼成装置のキルン及びプレヒーター内を循環することによって発生するコーティングトラブルを防ぐことができる。
なお、高塩素廃棄物に含まれるNaOとKOとの質量比が1.3以上としたのは、NaOとKOとの質量比が1.3を下回ると、無機塩素化合物を含む廃棄物からKClとして持込まれる塩素量が増加し、NaClとして持ち込まれる塩素量が減少するため、結果としてキルン内で別の原料から持込まれるKOと置換するNaCl量とが十分確保できなくなるため、セメントクリンカー中のKO含有量の低減効果が不十分となるからである。
また、同様に、高塩素廃棄物中に含まれるCl分を前記Cl分に相応するカリウム分と反応させ、塩素バイパス設備を用いて生成したKClを高抽気率でセメント焼成装置からKClを含むガスとして抽気するため、本発明に係るセメントクリンカーの製造方法として、有機塩素化合物を含む高塩素廃棄物は有機塩素量をCl換算量で1質量%以上含む、ことも好ましい。
なお、有機塩素化合物を含む高塩素廃棄物が有機塩素量をCl換算量で1質量%以上含むとしたのは、有機塩素化合物を含む高塩素廃棄物中の塩素含有量が1質量%を下回ると、水溶性Cr(VI)の低減効果を十分得るために高塩素廃棄物の使用原単位を大幅に増加させる必要が生じ、廃プラ等の廃棄物の使用によるセメントクリンカーの焼成状態の不安定化が懸念されるからである。したがって、有機塩素化合物を含む高塩素廃棄物が有機塩素量をCl換算量で1質量%以上含む範囲内で、有機塩素化合物中の塩素量を一定量以上確保することにより、安定運転と水溶性Cr(VI)の低減とを両立可能となる。ここで、有機塩素量とはこれら有機化合物に含まれる塩素含有量(Cl換算量)をいう。
本発明に係るセメントクリンカーの製造方法として、水溶性Cr(VI)含有量は、20mg/kg以下である、ことが好ましい。
上述した発明によれば、水溶性Cr(VI)含有量、すなわち、セメントクリンカー中の水溶性Cr(VI)含有量を20mg/kg以下とすることで、結果としてセメント中の水溶性Cr(VI)含有量も20mg/kg以下に制御することができる。
本発明に係るセメントクリンカーの製造方法として、高塩素廃棄物の使用量によりセメント焼成装置に供給される塩素量を調整するとともに、塩素バイパス設備を用いたセメント焼成装置からの抽気率を調整し、セメントクリンカー中のKO含有量を0.43質量%以下に制御する、ことが好ましい。
上述した発明によれば、セメントクリンカー中のKO含有量を0.43質量%以下に制御することより、セメント焼成装置のロータリーキルン内で焼成してセメントクリンカーを生成するための上述した製造条件の下で、セメントクリンカー中の水溶性Cr(VI)含有量を20mg/kg以下に制御することができる。
本発明に係るセメントクリンカーの製造方法として、高塩素廃棄物の使用量によりセメント焼成装置に供給される塩素量を調整するとともに、塩素バイパス設備を用いたセメント焼成装置からの抽気率を調整し、セメントクリンカー中のKO含有量(質量%)と全Cr含有量(質量%)との間に、KO含有量≦1.02−0.0045×全Cr含有量の関係を満たすように、前記セメントクリンカー中のKO含有量を制御する、ことが好ましい。
上述した発明によれば、セメントクリンカー中の水溶性Cr(VI)含有量に影響を与える全Cr含有量により、セメントクリンカー中のKO含有量を所定含有量以下に制御することができ、さらに、セメントクリンカー中のKO含有量(質量%)と全Cr含有量(質量%)との間に、KO含有量≦1.02−0.0045×全Cr含有量の関係を満たすことにより、セメント焼成装置のロータリーキルン内で焼成してセメントクリンカーを生成するための上述した製造条件の下で、所定の安全率を考慮して、セメントクリンカー中のKO含有量を制御することができる。結果として、セメントクリンカー中の水溶性Cr(VI)含有量を20mg/kg以下に制御することができる。
本発明に係るセメントクリンカーの製造方法として、抽気率(体積%)とKO低減量(質量%)との間に、抽気率≧KO低減量/0.0127の関係を満たすように、抽気率を調整するとともに、抽気率と原料及び燃料の持込塩素含有量(ppm)との間に、持込塩素含有量≧126.71×抽気率の関係を満たすように、高塩素廃棄物の使用量を調整する、ことも望ましい。
上述した発明によれば、セメント焼成装置のロータリーキルン内で焼成してセメントクリンカーを生成するための上述した製造条件の下で、原料及び燃料による持込塩素含有量と抽気率とを調整することにより、KO低減量を制御できる結果、セメントクリンカー中のKO含有量を制御することができる。結果として、セメントクリンカー中の水溶性Cr(VI)含有量を20mg/kg以下に制御することができる。
ここで、KO低減量とは、セメントクリンカー生産量1.0tあたりの、所望のセメント組成物を得るために低減しなければならないセメントクリンカー中のKO含有量(質量%)をいう。また、持込塩素含有量とは、セメントクリンカー生産量1.0tあたりの、原料および/または燃料として多量に使用される高塩素廃棄物の塩素(Cl)含有量(ppm)をいう。
上述した発明によれば、既存のセメント焼成装置の構成および温度などの製造条件を大幅に変更することなく、塩素バイパス設備を備えた既存のセメント焼成装置を用いて、高抽気率でセメント焼成装置から塩素バイパス設備を用いてKClを主要成分として含むガスを抽気することにより、セメントクリンカー中の塩素含有量を既定値以下に制御できるとともに、揮発性の高い塩素がセメント焼成装置のキルン及びプレヒーター内を循環することによって発生するコーティングトラブルを防ぐことができる。
さらに、原料や燃料に含まれる塩素分の割合を多くすることにより、セメントクリンカーの製造に際して廃棄物処理量を増大させることが可能となるとともに、焼成工程において、選択的にKと塩素を反応させ、より多くのKClを生成し、塩素バイパス設備を用いて高抽気率でセメント焼成装置からKClを含むガスを抽気することにより、セメント焼成装置の物質収支上、セメントクリンカー中のKO含有量を所定含有量以下に制御することができる。この結果、セメントクリンカー中のKO含有量を所定の含有量以下に制御することにより、水溶性Cr(VI)の含有量を所定含有量以下に制御することができる。
<<セメントクリンカー製造方法>>
本発明のセメントクリンカーの製造方法は、塩素バイパス設備を備えたセメント焼成装置を用いたセメントクリンカーの製造方法であって、無機塩素化合物若しくは有機塩素化合物を多く含む高塩素廃棄物を原料および/または燃料として多量に使用し、原料及び前記燃料に含まれる塩素(Cl)分とカリウム(K)分とを反応させてKClを生成させ、塩素バイパス設備を用いて高抽気率でセメント焼成装置からKClを含むガスを抽気することにより、セメントクリンカー中のKO含有量を制御し、その結果として、セメントクリンカー中の水溶性Cr(VI)含有量を所定含有量以下に、具体的には、20mg/kg以下に制御するものである。
なお、本発明のセメントクリンカーの製造方法は、普通ポルトランドセメント用クリンカー、早強セメント用クリンカー、中庸熱ポルトランドセメント用クリンカー、低熱ポルトランドセメント用クリンカー、耐硫酸塩ポルトランドセメント用クリンカー等のように、CS、CS、CAおよびCAFから成る群のうち3種以上を主な含有鉱物とするセメントクリンカーの製造に用いることができる。
本発明のセメントクリンカーの製造方法を説明するため、図1を用いて、本発明に適用されるセメント焼成装置及びセメント焼成装置に備えられた塩素バイパス設備について説明する。なお、図1は、塩素バイパス設備を備えたセメント焼成装置の概要図である。
<塩素バイパス設備を備えたセメント焼成装置>
図1において、1はセメント焼成用キルン、1aは焼成用バーナー、2はセメント焼成用キルン1で焼成されたクリンカーを冷却するためのクリンカークーラー、3はセメント焼成用キルン1のセメント原料供給側に取付けられた断面が略矩形状のキルン入口フッドであり、キルン入口フッド3はキルン窯尻において仮焼原料の受入れ通路の一部とキルン排ガス通路を構成する。5は仮焼炉5bを備えたサスペンションプレヒーター(SP)であり、5aはサスペンションプレヒーター5の最下段サイクロン、5cは生原料をプレヒーター5に供給する原料供給管、4はキルン入口フッド3の上端とサスペンションプレヒーター5とを連絡し、キルン排ガスを仮焼炉5bを介してサスペンションプレヒーター5に供給するためのライジングダクト(立上り管)である。
6はサスペンションプレヒーター5の排気ファン、7は上端が最下段サイクロン5aの下部に接続され下端がキルン入口フッド3のセメント焼成用キルン1側の側壁と交差する側の側壁の下部に接続されて開口され、サスペンションプレヒーター5で予熱された後、仮焼炉5bで仮焼された高温のセメント原料(以下、「仮焼原料」という)をセメント焼成用キルン1に送り込むためのシュート、8はクリンカークーラー2の排ガスを仮焼炉5bに送給するダクトである。
セメントキルン用の塩素バイパス設備10は、キルン入口フッド3の立上り部のキルン側に位置する側壁に開口された排ガス抽気口3aと、内部が連通されてこの側壁に取付けられた排ガス冷却手段を兼ねる排ガス抽気管11と、排ガス抽気管11の排ガス出口に接続された塊状物除去装置(チャンバー)12と、塊状物除去装置12の排ガス出口と排ガスダクト13aによりその排ガス導入口が連絡されたバッグフィルタ(集塵手段)15と、バッグフィルタ15の排ガス出口とダクト13bを介して連絡された排気ファン16と、排気ファン16のガス出口とクリンカークーラー2の排ガスを仮焼炉5bへ送るダクト8とを連結する抽気ガス排気用のダクト13cと、排ガスダクト13aのバッグフィルタ15の排ガス導入口の上流位置に接続されたダンパ14a付きの冷風取入管14と、排ガス抽気管11に空気供給ダクトで連結された冷却ファン11aとで構成されている。
抽気ガス排気用のダクト13cは、排気ファン16のガス出口とクーラー排ガスを仮焼炉5bへ送るダクト8とを連結して抽気ガスを排気する代わりに、排気ファン16のガス出口と仮焼炉5bとを直接連結する態様、排気ファン16のガス出口とライジングダクト4とを連結する態様、さらにはクリンカークーラー2の冷却ファン2aに戻す態様であってもよい。
一方、バッグフィルタ15の下部には、下部ホッパ15a、ダスト排出用スクリュコンベヤ15b、クッションホッパ21及び二重のバタフライダンパ22が設けられ、ダスト貯蔵・払出設備20を構成する。ダスト貯蔵・払い出し設備20から払い出されたダストは、ダスト搬出車(バルク車)23に受け入れたのち、ダスト貯蔵受入ホッパ33に搬出される。
なお、原料供給管5cから石灰石、珪石、粘土、石炭灰等の一般原料を投入すると共に、キルン入り原料シュート7または仮焼炉5bまたは焼成用バーナー1aから都市ごみ焼却灰等のCl分を多く含む廃棄物および廃プラスチック等のCl分を多く含む廃棄物を原料および/または燃料として投入し、クリンカーを焼成する。このとき、サスペンションプレヒーター5からキルン1に至る部分で、900〜1500℃の高温雰囲気でクリンカーを生成していく過程で、原料中のKOがキルン1内を循環しているClと結合しKClとなり揮発する。このKClの蒸気を塩素バイパス設備10を用いて抽気することによりセメントクリンカー中のKO含有量を減少させることが可能となる。なお、都市ゴミ焼却灰の投入位置は5cの原料供給管から投入しても効果は同じである。
<セメントクリンカーの製造方法>
(セメント組成物の原料及び燃料)
以下に、セメントクリンカーを生成するために使用した主な原料及び燃料の種類・化学組成の一例を表1に示す。表1中、都市ごみ焼却灰は無機塩素化合物としてNaClおよびKClを含有する高塩素廃棄物(高NaCl廃棄物)である。なお、高塩素廃棄物としては、都市ごみ焼却灰の他にも、CaClを多く含む汚泥、例えば廃液の中和処理後のスラッジ(中和滓)なども挙げられる。また、廃プラスチックは有機塩素化合物として塩化ビニルあるいは塩化ビニリデンを含有する高塩素廃棄物(高有機Cl廃棄物)であり、表1中の廃プラスチックAはCl含有量が2質量%程度と少なく、廃プラスチックBはCl含有量が20質量%程度と多いものである。
また、セメント組成物に使用した石膏として、排脱二水石膏を使用した。なお、セメント組成物粉砕時には、二水石膏は脱水し、添加した排脱二水石膏のうち30〜95質量%が半水石膏として存在した。
(関係式の同定)
表1のセメントクリンカーの原料および燃料を特定の調合割合で混合し、セメント焼成装置で焼成し、セメントクリンカーを製造した。製造されたセメントクリンカーは、粉砕機を用いて粉砕し、粉砕物の水溶性Cr(VI)含有量やKO含有量等を測定した。なお、全Cr含有量および水溶性Cr(VI)の含有量はJCAS I−51:1981「セメント及びセメント原料中の微量成分の定量方法」に準じて測定した。また、NaO含有量およびKO含有量はJIS R 5202:1999「セメントの化学分析方法」に準じて測定した。測定結果を表2〜6、図2〜8に示す。
図2は、全アルカリ含有量と水溶性Cr(VI)含有量との関係を示した図である。セメント組成物中のCrがアルカリ金属と結合してクロム酸ナトリウムおよびクロム酸カリウムとして存在すると仮定した場合、両者の間に強い相関関係が生じると予想される。しかしながら、図2が示すとおり、製造したセメントクリンカーおよびセメント組成物においては、両者の相関係数はR=0.5235(R=0.7235)と余り高い相関関係を示さず、予測線(図中実線)と実測値の最大値を外挿した線(図中点線)との間では最大で17mg/kgの差異を生じ、必ずしもアルカリ金属類全てが水溶性Cr(VI)生成に影響するとは限らないことを知見した。
なお、セメント組成物中のKO含有量を制御することにより水溶性Cr(VI)含有量を低減することが可能となる原因は明確ではないが、以下のことが推察される。従来、CrはNaOやKOと結合し、クロム酸ナトリウムあるいはクロム酸カリウムを生成して水溶性Cr(VI)となると言われ、本来は全アルカリ含有量の増加が水溶性Cr(VI)の増加に繋がると考えられていた。しかしながら、本発明者らは、セメントクリンカー中では、NaOがエーライトあるいはビーライトといったクリンカー鉱物に固溶する存在割合が多いために、NaOとCrとが結合してクロム酸ナトリウムを生成する可能性が低いと考えている。一方で、KOはクリンカー中でエーライトおよびビーライトへの固溶割合が小さいために、Crと結合してクロム酸カリウムを生成し易く、KO含有量がある一定以上の含有量となると溶解度の高いクロム酸カリウムを生成して水溶性Cr(VI)量が増加するのではないかと考えている。なお、クリンカー中のSO含有量によってクリンカー中のKの存在形態が硫酸アルカリへと変化するが、クリンカーのSO含有量が0.1〜1.8質量%の範囲ではこの影響は小さく、水溶性Cr(VI)含有量は全KO含有量に支配される。
そこで、本発明者らは、水溶性Cr(VI)の生成に起因する要因を特定するため、アルカリ金属の種類ごとに水溶性Cr(VI)含有量に及ぼす影響を明確にすべく調査を行った。図3にNaO含有量と水溶性Cr(VI)含有量との関係、図4にKO含有量と水溶性Cr(VI)含有量との関係を示す。
図3が示すとおり、NaO含有量と水溶性Cr(VI)含有量とに強い相関関係はみられず、NaOはクロム酸塩としては存在し難いことが判った。一方、図4が示すとおり、KO含有量と水溶性Cr(VI)含有量とは非常に高い相関関係を示し、アルカリ金属類のうちKO量のみがクロム酸塩として存在することを知見できた。従って、KO含有量によって水溶性Cr(VI)含有量を制御することが可能であり、具体的には、KO含有量を0.43質量%以下に調整することにより、水溶性Cr(VI)含有量を20mg/kg以下に制御することができることがわかった。
図5は全Cr含有量と水溶性Cr(VI)含有量との関係を示した図である。図5が示すとおり、全Cr含有量と水溶性Cr(VI)含有量とは高い相関関係を示した。そこで、KO含有量(質量%)、水溶性Cr(VI)含有量(mg/kg)そして全Cr含有量(質量%)の実績値を用いて、水溶性Cr(VI)含有量の予測式:水溶性Cr(VI)含有量=39.9×KO含有量+0.18×全Cr含有量−20.5を同定した。
図6は、上記予測式による水溶性Cr(VI)含有量の計算値と、水溶性Cr(VI)含有量との測定値との関係を示した図である。図4が示すとおり、KO含有量のみで制御した場合、水溶性Cr(VI)含有量の予測線(図4中実線)と実測値との差は、KO含有量が0.3質量%程度のときは5mg/kg程度であるものの、KO含有量が0.5質量%程度のときは10mg/kg程度まで大きくなる。しかしながら、図6が示すとおり、上記予測式による水溶性Cr(VI)含有量の計算値と、水溶性Cr(VI)含有量との測定値との差異は4mg/kg以下に収まる。この結果、水溶性Cr(VI)含有量を20mg/kg以下にするためには、KO含有量(質量%)と全Cr含有量(質量%)と間に、KO含有量≦1.02−0.0045×全Cr含有量の関係を満たすようにKO含有量を制御することで、水溶性Cr(VI)含有量を所望の管理値に制御することが可能となる。さらに、好ましくは前記予測式の推定誤差、最大4mg/kgを考慮し,KO含有量≦0.91−0.0045×全Cr含有量を満たすようにKO含有量を制御すると、より安全サイドでの水溶性Cr(VI)含有量の低減が可能となる。
(KO含有量と全Cr含有量の制御方法)
O含有量と全Cr含有量の制御方法として、塩素バイパス設備を稼動し、都市ゴミ焼却灰等のNaClを含む無機塩素化合物を含む高塩素廃棄物を添加し、NaとKとを置換して、KClとして抽気することにより、セメントクリンカー中のKO含有量を大幅に低減することができることから、KO含有量(質量%)と全Cr含有量(質量%)との間に、KO含有量≦1.02−0.0045×全Cr含有量という関係を満たすように、原料及び燃料の使用量と、塩素バイパス設備を用いた抽気率を調整する方法が提案できる。
なお、無機塩素化合物を含む高塩素廃棄物だけでなく、廃プラスチック等の有機塩素廃棄物を含む高塩素廃棄物を添加することによってもセメントクリンカー中のKO含有量を低減することができる。
さらに、セメントクリンカー中のKO含有量は、塩素バイパス設備を用いた抽気率を調整することにより制御することができる。図7に、塩素バイパス設備の抽気率(体積%)とKO低減量(質量%)との関係を示す。ここで、KO低減量とは、セメントクリンカー生産量1tあたりに換算した、所望のセメント組成物を得るために低減しなければならないセメントクリンカー中のKO含有量(質量%)をいう。例えば、セメントクリンカー中のKO含有量が0.50質量%の場合であって、所望のセメント組成物を得るために要求されるKO含有量が0.43質量%であるときは、KO低減量は0.07質量%となる。
抽気率(体積%)とKO低減量(質量%)との関係(図7)から、抽気率を高くするほどKClとして塩素バイパス設備により抽気してセメントクリンカー中のKO含有量を低減することができることから、抽気率(体積%)とKO低減量(質量%)との間に、KO低減量≦0.0127×抽気率(抽気率≧KO低減量/0.0127)、より好ましくは、KO低減量≦0.011×抽気率−0.005(抽気率≧{KO低減量+0.005}/0.011)の関係を満たすように抽気率を制御すれば良い。例えば、原料及び燃料からの供給されたKO量(セメントクリンカーベースで計算;原燃料)が0.50質量%であるとき、KO含有量を0.43質量%以下とするためのKO低減量は0.07質量%であるので、抽気率は前記式より5.5体積%以上と計算することができる。
さらに、セメントクリンカー中のKO低減の効果を効率良く発揮するためには、抽気率に応じて高塩素含有廃棄物の使用量を調整する必要がある。図8に、抽気率(体積%)とセメントクリンカー1t当たりの必要持込塩素量(ppm)との関係を示す。ここで、持込塩素量(ppm)とは、セメントクリンカー1tあたりに換算した、原料および/または燃料として使用された高塩素廃棄物の塩素含有量(ppm)をいう。
図8に示すとおり、持込塩素量(ppm)と抽気率(体積%)との間に、持込塩素量≧126.71×抽気率の関係を満たすように、高塩素含有廃棄物の使用量を調整することが必要である。好ましくは、126.71×抽気率+250≧持込塩素量≧126.71×抽気率の関係を満たすようにすることが良い。上記関係式で規定される範囲を超えた場合、セメントクリンカー中の塩素含有量が増加し、セメント物性として長期強度の低下、耐久性の低下といった悪影響を与えるからである。
具体的には、原料及び燃料からの供給されたKO持込量が単位セメントクリンカーあたり0.50質量%であるとき、セメントクリンカー中のKO含有量を0.43質量%以下に低減するためには、KO低減量を0.7質量%以上、抽気率は5.5体積%以上とする必要があることから、前記式より必要持込塩素量は697ppmと計算することができる。したがって、高塩素含有廃棄物使用量を増加させ、計算した必要持込塩素量となるように調整する。例えば、高塩素含有廃棄物以外の塩素塩素量が200ppmであり、都市ゴミ焼却灰により持込塩素量を処理する場合、セメントクリンカー1tに対して約8kgの都市ゴミ焼却灰を原料又は燃料として使用する必要がある。
以上より、セメントクリンカーを製造する際、少なくともKO含有量(質量%)と全Cr含有量(質量%)との間に、KO含有量≦1.02−0.0045×全Cr含有量の関係を満たし、さらに、上述した関係式を用いて、都市ゴミ焼却灰、浚渫土あるいは高塩素含有廃プラスチックを原料あるいは燃料として多量に投入し、高抽気率で塩素バイパス設備を用いてKClを含む蒸気を抽気し、セメントクリンカー中のKO含有量を制御し、結果として水溶性Cr(VI)の含有量を制御する方法によって、所望の品質を維持できるとともに、水溶性Cr(VI)の含有量を低減したセメントクリンカーを安定的に製造することができる。
表1のセメントクリンカーの原料(燃料)を特定の調合割合で混合し、セメント焼成装置で焼成した。製造条件の一例を表2〜表4に、そして、表5に表2〜表4に示した製造条件で製造したセメントクリンカーの品質評価結果を示す。なお、表2中で廃プラスチックとしては2種類を使用しており、廃プラA使用と記載のものは表1中のCl含有量の少ない廃プラスチックAを使用し、廃プラB使用と記載のものは表1中のCl含有量が多い廃プラスチックBを使用したことを示している。
表5に示すとおり、高抽気率(3体積%以上)で都市ゴミ焼却灰あるいは廃プラスチックを多量に使用した実施例1〜6はいずれも水溶性Cr(VI)含有量が20mg/kgを下回った。一方、塩素バイパスの抽気率0体積%である比較例1、高塩素含有廃棄物使用量の少ない比較例2〜5、抽気率が3体積%未満と低い比較例6〜9はいずれも水溶性Cr(VI)含有量が20mg/kgを超過した。また、上記比較例と実施例とを説明するため、セメントクリンカーの製造プロセスの概略図と物質収支を表す図を、図9〜図12に示した。図9は塩素バイパス設備を用いた抽気を行わない場合(表1の比較例1)を、図10は塩素バイパス設備を用いた抽気を行った場合であるが、高抽気率ではない抽気率(2体積%)で抽気を行った場合(表1中の比較例7)、図11は高抽気率(10%)で塩素バイパス設備を用いた抽気を行った場合であって、都市ゴミ焼却灰を原料として使用した場合(表1中の実施例2)、そして、図12は高抽気率(10%)で塩素バイパス設備を用いた抽気を行った場合であって、廃プラスチックを原料として使用した場合(表1中の実施例4)を表す。なお、塩素バイパス設備を用いた抽気である塩素バイパスダスト中成分の各含有量(質量%)を表6に示す。
なお、塩素バイパスダスト中の塩素量は5〜20質量%が好ましく、この範囲を下回るとダストの発生量が多くなり処理に苦慮することになり、一方、この範囲を上回ると潮解性を有するKClが空気中の水と反応して固化するために粉体のハンドリングが悪くなるという問題が発生するためである。
上述した実施形態に係るセメントクリンカーの製造方法によれば、塩素バイパス設備を備えたセメント焼成装置を用いたセメントクリンカーの製造方法であることから、無機塩素化合物若しくは有機塩素化合物を多く含む高塩素廃棄物を原料および/または燃料として多量に使用した場合であっても、装置内の反応により生成したKClを含むガスを塩素バイパスによりセメント焼成装置から抽気することができる。したがって、セメントクリンカー中の塩素含有量を既定値以下に制御できるとともに、揮発性の高い塩素がセメント焼成装置のキルン及びプレヒーター内を循環することによって発生するコーティングトラブルを防ぐことができる。
また、原料や燃料に含まれる塩素分の割合を多くすることにより、選択的に、Kと塩素を反応させ、より多くのKClを生成し、塩素バイパス設備を用いて高抽気率でセメント焼成装置からKClを含むガスを抽気することにより、セメント焼成装置の物質収支上、セメントクリンカー中のKO含有量を所定含有量以下に制御することができる。特に、原料や燃料に含まれるK分の割合が多い場合、原料等に含まれる塩素分の割合を多くすることが可能となり、高塩素廃棄物を多量に原料等として使用し、有効かつ効率的に、セメントクリンカー中のKO含有量を所定含有量以下に制御することができる。
さらに、前記製造条件において、Kは、NaやCa等のアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属と比較して、Crと結合してクロム酸塩を生成し易く、結果として短時間に溶出してしまう水溶性Cr(VI)含有量を増加させる。そのため、クリンカー中の水溶性Cr(VI)含有量はクリンカー中のKO含有量と強い相関関係を示す。この結果、セメントクリンカー中のKO含有量を所定の含有量以下に制御することにより、水溶性Cr(VI)の含有量を所定含有量以下に制御することができる。
塩素バイパス設備を備えたセメント焼成装置の概要図である。 全アルカリ含有量と水溶性Cr(VI)含有量との関係を示した図である。 NaO含有量と水溶性Cr(VI)含有量との関係を示した図である。 O含有量と水溶性Cr(VI)含有量との関係を示した図である。 全Cr含有量と水溶性Cr(VI)含有量との関係を示した図である。 予測式による水溶性Cr(VI)含有量の計算値と水溶性Cr(VI)含有量の測定値との比較を示した図である。 目標のKO低減量に対する抽気率の制御範囲を示した図である。 抽気率の制御範囲に対して、持込塩素量の制御範囲を示した図である。 表1の比較例1における物質収支を示した図である。 表1の比較例7における物質収支を示した図である。 表1の実施例2における物質収支を示した図である。 表1の実施例4における物質収支を示した図である。
符号の説明
1 :セメント焼成用キルン
1a:焼成用バーナー
2 :クリンカークーラー
2a:クリンカークーラーの冷却ファン
3 :キルン入口フッド
3a:排ガス抽気口
4 :ライジングダクト
5 :SP(サスペンションプレヒーター)
5a:最下段サイクロン
5b:仮焼炉
5c:生原料供給管
5e:最上段サイクロン
5f:サイクロン接合ダクト
5g:最上段サイクロン出口
6 :排気ファン
7 :シュート
8 :クーラー排ガス供給ダクト
10:塩素バイパス設備
11:排ガス抽気管
11a:冷却ファン
12:塊状物除去装置
13a、13b、13c:排ガスダクト
14:冷風取入管
15:バッグフィルタ(集塵機)
15a:バッグフィルタ下部ホッパ
15b:ダスト排出用スクリュコンベヤ
16:排気(誘引)ファン
20:ダスト貯蔵・払出設備
21:クッションホッパ
22:バタフライダンパ
23:ダスト搬出車
30:仕上ミル設備
31:ボールミル
32:分級器
33:ダスト貯蔵受入ホッパ

Claims (4)

  1. 塩素バイパス設備と、プレヒーターと、ロータリーキルンとを備えたセメント焼成装置を用いたセメントクリンカーの製造方法であって、
    無機塩素化合物若しくは有機塩素化合物を含む高塩素廃棄物を原料および/または燃料として使用し、前記無機塩素化合物を含む前記高塩素廃棄物は前記無機塩素化合物をCl換算量で5質量%以上含み且つ前記高塩素廃棄物に含まれるNa OとK Oとの質量比が1.3以上であり、前記有機塩素化合物を含む前記高塩素廃棄物は有機塩素量をCl換算量で1質量%以上含み、
    前記原料及び前記燃料に含まれる塩素(Cl)分とカリウム(K)分とを反応させてKClを生成させ、前記塩素バイパス設備を用いて5.5%以上の高抽気率で前記セメント焼成装置から前記KClを含むガスを抽気し、塩素量が5〜20質量%の塩素バイパスダストとして回収することにより、セメントクリンカー中のKO含有量を0.43質量%以下、K Oと全Crとの関係が、
    O含有量≦1.02−0.0045×全Cr含有量
    を満足するように制御し、
    前記セメントクリンカー中の水溶性Cr(VI)含有量を所定含有量以下に制御するセメントクリンカーの製造方法。
  2. 前記塩素バイパス設備の抽気率が7〜10%である、ことを特徴とする請求項1記載のセメントクリンカーの製造方法。
  3. 前記抽気率(体積%)とK O低減量(質量%)との間に、抽気率≧K O低減量/0.0127の関係を満たすように、前記抽気率を調整するとともに、
    前記抽気率と前記原料及び燃料の持込塩素含有量(ppm)との間に、
    持込塩素含有量≧126.71×抽気率
    の関係を満たすように、前記高塩素廃棄物の使用量を調整する、ことを特徴とする請求項1又は2記載のセメントクリンカーの製造方法。
  4. 前記セメントクリンカー中の前記水溶性Cr(VI)含有量、20mg/kg以下に制御する、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のセメントクリンカーの製造方法。
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