JP2010254577A - セメントクリンカー及びその製造方法又はこれらを使用して製造された水硬性材料並びにクリンカークーラー - Google Patents

セメントクリンカー及びその製造方法又はこれらを使用して製造された水硬性材料並びにクリンカークーラー Download PDF

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Abstract

【課題】冷却時に固形可燃物の混入がなく、有害な六価クロムの含有量が減少したセメントクリンカー、その製造方法、このクリンカーを使用した水硬性材料及びクリンカークーラーの提供
【解決手段】本発明のセメントクリンカーは、クリンカークーラー内の温度が、850℃〜1000℃である部所に、5mmを超え100mm以下の粒径の固形可燃物を供給して得られたものであって、六価クロムの含有値が2ppm以下かつ残留カーボン量が0.01%以下である。クリンカークーラーには、耐火物又は耐熱性金属材料よりなるパイプ又は桶を有し、また冷却空気は遮断するか又は還元雰囲気を調節するか又はクリンカークーラーに設置されたクーラーグレート上のセメントクリンカー層を厚くする手段及び/又は冷却空気量を減らす構造のクーラーグレートを設けている。
【選択図】 図2

Description

本発明は、セメントクリンカー及びその製造方法又はこれらを使用して製造された水硬性材料並びにクリンカークーラーに関するものであり、更に詳しくは冷却時に供給した固形可燃物が未燃焼のまま混入することなく、六価クロムの減少したセメントクリンカー及びその製造方法又はこれらを使用して製造された水硬性材料並びにクリンカークーラーに関するものである。
従来、セメントクリンカー(以下、クリンカーともいう)の製造は、セメントキルン中で原料である石灰石、粘土、珪石、硫化鉄鉱残滓、その他の酸化鉄原料等を混合し、高温で焼成して実施されているが、得られたクリンカーを使用したセメントの品質を低下させないためには、可燃物をセメントキルン内に投入後、可及的に速やかに完全燃焼させて、造粒された原料粒子あるいはクリンカー粒子の内部に未燃焼の可燃物が残存するのを避ける必要があった。
しかしながら、上記のように製造されたクリンカーには微量の有害な六価クロムが含有されており、したがってこのようなセメントを使用したコンクリートや改良土壌などから、クリンカー中の六価クロムが溶出して問題となることがあった。クリンカー中の六価クロム量が多いほど,その溶出量も増し、環境基準の厳しい昨今では、各種の基準値や規制値を越すことが起こることがあり問題であった。そのためクリンカー中の六価クロムの量を極力低減し環境基準値以下にするという強い要望があった。なお、ここでの六価クロムの量は、セメント協会標準試験方法の「セメント中の水溶性六価クロムの定量方法」で測定したものである。
このような要望に対して、本発明者等は、クロム含有原材料の使用を中止したり、その量を減少させたりする手段を講ずることを試みたが、代替原材料によるコスト高を考慮するとセメントの製造原価が大幅に高騰するという結果となり好ましくないことがわかった。そこで、本発明者等は、この点を含め種々検討し、先にセメントキルン内に主燃料とは別に可燃物を供給することによりセメントの製造原価が大幅に上がることなく、六価クロムを減少させることができることを見出し特許出願した(特許文献1参照)。
更にクリンカー製造設備において、六価クロムは高温の酸化雰囲気で生成する点を考慮し、クリンカー品質に影響しないで還元雰囲気を形成しうる場所として、クリンカークーラーに着目した。しかしながら、高温のクリンカー粒子は、クリンカークーラーで空気で急冷すると強酸化状態となることがわかった。
そこで、本発明者等は、このクリンカークーラー内で高温のクリンカーが冷却される過程のどの場所で還元雰囲気を形成すれば効率よく六価クロムが還元されるかを究明したところ、クリンカークーラーに導入されたセメントクリンカーの温度が850℃〜1000℃となる領域に5mm以下の可燃物を供給して還元雰囲気を形成することによって六価クロム量を大幅に減少させたセメントクリンカーが得られることを見出し、特許出願した(特許文献2参照)。
特開平11−189442号公報(特許請求の範囲請求項2、請求項3、図1) 特開2000−319050号公報(特許請求の範囲請求項2、請求項3)
ところが、クリンカークーラーに導入されたセメントクリンカーの温度が850℃〜1000℃となる領域に粒径が5mm以下の可燃物を供給すると、その供給方法によっては、固形可燃物が未燃焼のままクーラー出口に飛ばされて直接的に、またはクーラーの集塵機の集塵ダストに含まれて、得られたセメントクリンカー中に例えば、微粉炭等として混入して来ることが判明した。これは製品品質上好ましいものではなく、したがって、製品のセメントクリンカーへの未燃焼の微粉炭の混入を防止する点について、更に研究を続けたところ、固形可燃物の粒径を5mmを超える大きさにすることによってセメントクリンカーへの混入を防止することができることを見出し、ここに本発明をなすに至った。すなわち、本発明が解決しようとする課題は、冷却時に供給した固形可燃物が混入することなく、有害な六価クロムの含有量が減少したセメントクリンカー及びその製造方法又はこれらのクリンカーを使用した水硬性材料並びにクリンカークーラーを提供することにある。
本発明の上記課題は、以下の各発明によってそれぞれ達成される。
(1)セメントキルンにより焼成された高温のセメントクリンカーをクリンカークーラーに導入し、該クリンカークーラー中で冷却するセメントクリンカーにおいて、前記クリンカークーラー内の温度が、850℃〜1000℃である部所に、5mmを超え100mm以下の粒径の固形可燃物を供給して得られたセメントクリンカーであって、六価クロムの含有値が2ppm以下かつ残留カーボン量が0.01%以下であることを特徴とする六価クロム含有量が低減されたセメントクリンカー。
(2)セメントキルンにより焼成された高温のセメントクリンカーをクリンカークーラーに導入し、該クリンカークーラー中で冷却するセメントクリンカーの製造方法において、前記クリンカークーラー内の温度が、850℃〜1000℃である部所に、5mmを超え100mm以下の粒径の固形可燃物を供給することを特徴とする六価クロム含有量が低減されたセメントクリンカーの製造方法。
(3)固形可燃物は、耐火物又は耐熱性金属材料よりなるパイプ又は桶を通して供給されることを特徴とする前記第2項に記載の六価クロム含有量が低減されたセメントクリンカーの製造方法。
(4)前記クリンカークーラーのクーラーグレート上のセメントクリンカー層を厚くする手段及び/又は冷却空気量を減らす構造のクーラーグレートを設けたクリンカークーラーを用いて製造されることを特徴とする前記第2項又は第3項に記載の六価クロム含有量が低減されたセメントクリンカーの製造方法。
(5)クリンカークーラーに供給される冷却空気を遮断するか又は少なくすることにより還元雰囲気を調節することを特徴とする前記第2項乃至第4項のいずれかに記載の六価クロム含有量が低減されたセメントクリンカーの製造方法。
(6)前記クリンカークーラーの入口にある第一グレートの左右両側に壁状又は土手状の障害壁を有し、これらの障害壁は前後両サイドに向かって広く形成されていることを特徴とする前記第2項乃至第5項のいずれかに記載の六価クロム含有量が低減されたセメントクリンカーの製造方法。
(7)前記第1項に記載の六価クロム含有量が低減されたセメントクリンカー又は前記第2項乃至第6項のいずれかに記載の方法で製造された、六価クロム含有量が低減されたセメントクリンカーを使用して製造されたことを特徴とする水硬性材料。
(8)クリンカークーラーに設置されたクーラーグレート上のセメントクリンカー層を厚くする手段及び/又は冷却空気量を減らす構造のクーラーグレートを設けたことを特徴とする六価クロム含有量が低減されたセメントクリンカー製造用クリンカークーラー
(9)前記クリンカークーラーに供給される冷却空気を遮断するか又は少なくすることにより還元雰囲気を調節する手段が備えられていることを特徴とする前記第8項に記載の六価クロム含有量が低減されたセメントクリンカー製造用クリンカークーラー。
(10)前記クリンカークーラーの入口にある第一グレートの左右両側に壁状又は土手状の障害壁を有し、これらの障害壁は前後両サイドに向かって広く形成されていることを特徴とする前記第8項に記載の六価クロム含有量が低減されたセメントクリンカー製造用クリンカークーラー。
クリンカークーラーに導入されたセメントクリンカーの温度が850℃〜1000℃となる領域に、5mmを超え100mm以下の粒径の固形可燃物を供給する簡便な方法により得られた本発明のセメントクリンカーでは、製品クリンカーに未燃焼の固形可燃物が混入することがなく、六価クロムの含有量が低減されていることから、該クリンカーを使用して、クロム汚染の恐れのない品質の優れた水硬性材料を経済的に得ることが可能となる。クリンカークーラー内では、クリンカー粒子は、急冷することにより強酸化状態となる点を考慮し、該クーラー内でクリンカーの温度が850℃〜1000℃の領域で冷却空気量を調整しながら固形可燃物を供給して還元雰囲気を形成することで六価のクロムを三価のクロム等に還元することができる。また投入する固形可燃物の粒径を5mmを超え100mm以下の範囲内で供給することにより、未燃焼の固形可燃物が製品クリンカーに混入することを防止できる。
即ち、本発明の六価クロム含有量が低減されたセメントクリンカーは、セメントキルンにより焼成された高温のセメントクリンカーをクリンカークーラーに導入し、該クリンカークーラー中で冷却するセメントクリンカーにおいて、前記クリンカークーラー内の温度が、850℃〜1000℃である部所に、5mmを超え100mm以下の粒径の固形可燃物を供給して得られたセメントクリンカーであって、六価クロムの含有値が2ppm以下かつ残留カーボン量が0.01%以下であること、即ち導入クリンカー温度がこの範囲である領域に、大きさがこの粒径範囲にある固形可燃物を供給することにより、経済的に六価クロム含有量が低減されていると共に、冷却時に供給した固形可燃物の一部の未燃焼物としての混入が防止されたセメントクリンカーが得られるという優れた効果を奏するものである。
また本発明の六価クロム含有量が低減されたセメントクリンカーの製造方法は、固形可燃物は、耐火物又は耐熱性金属材料よりなるパイプ又は桶を通して供給されるが、この所望の部所では、セメントクリンカーは温度850℃〜1000℃の流動層となっており、この流動層へ供給された5mmを超え100mm以下の粒径の固形可燃物は、滞留し、効率的に還元雰囲気を形成しながら完全に燃え尽きることにより、製品クリンカーへ混入することを防止できる。
本発明の六価クロム含有量が低減されたセメントクリンカーの製造方法は、クリンカークーラーのクーラーグレート上のセメントクリンカー層を厚くする手段及び/又は冷却空気量を減らす構造のクーラーグレートを設けたクリンカークーラーを用いて製造されることにより、効率的に還元雰囲気を形成乃至調整することができる。本発明の六価クロム含有量が低減されたセメントクリンカーの製造方法は、クリンカークーラーに供給される冷却空気を遮断するか又は少なくすることにより還元雰囲気を調節することにより、可燃物の燃焼を効率的に調整して形成させた良好な還元雰囲気下で製造されたセメントクリンカーが得られる。本発明の六価クロム含有量が低減されたセメントクリンカーの製造方法は、上記のいずれかに記載のセメントクリンカーを使用して製造したことにより、六価クロムの含有量が減少し、かつ未燃焼の固形可燃物の混入のない水硬性材料が得られる。更に本発明の六価クロム含有量が低減されたセメントクリンカーを製造するためのセメントクリンカー製造用クリンカークーラーは、クリンカークーラーに設置されたクーラーグレート上のセメントクリンカー層を厚くする手段及び/又は冷却空気量を減らす構造のクーラーグレートを設けたことにより、効率的に還元雰囲気を形成乃至調整することができる。また本発明の六価クロム含有量が低減されたセメントクリンカーを製造するためのセメントクリンカー製造用クリンカークーラーは、前記クリンカークーラーに供給される冷却空気を遮断するか又は少なくすることにより還元雰囲気を調節する手段が備えられていることにより、可燃物の燃焼を効率的に調整して形成させた良好な還元雰囲気下で製造されたセメントクリンカーが得られる。
本発明の六価クロム含有量が低減されたセメントクリンカーを製造するためのセメントクリンカー製造用クリンカークーラーは、前記クリンカークーラーの入口にある第一グレートの左右両側に壁状又は土手状の障害壁を有し、これらの障害壁は前後両サイドに向かって広く形成されていることにより、クーラーグレート上を移動するセメントクリンカー粒子の層を厚くすることができ、これにより固形可燃物による還元効率を増すことができる。
本発明に用いられるキルンを示す断面図である。 本発明に用いられるクリンカークーラーを示す断面図である。
以下に、本発明の実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明では、「クリンカークーラーに導入されたセメントクリンカーの温度が850℃〜1000℃となる領域に可燃物を供給する」とは、クリンカークーラー内で冷却空気による冷却下に行うことを意味するものであるが、セメントクリンカーの温度が850℃〜1000℃となる領域に可燃物を供給し、その後冷却してもよいことは明らかである。
本発明に用いられるセメントクリンカーの製造原料は、この技術分野において通常用いられるものでよく、石灰石、粘土、珪石、硫化鉄鉱残滓、その他の酸化鉄原料等が挙げられる。
本発明に用いられる固形可燃物としては、各種の固体燃料、可燃性固体廃棄物及びこれらの混合物等が挙げられるが、具体的にはコークス(石油コークスでもよい)、粗粒の各種石炭、揮発分の少ない無煙炭、亜瀝青炭、あるいは瀝青炭より難燃性の固体燃料、固形プラスチック、都市ゴミ固形物等である。好ましくはコークス(石油コークスでもよい)、粗粒の各種石炭、揮発分の少ない無煙炭、亜瀝青炭、あるいは瀝青炭より難燃性の固体燃料等である。
これらの固形可燃物は、クリンカー粒子の外部に未燃焼の固形可燃物が少なくとも瞬間的に存在し、このような状態で固形可燃物の周囲に、固形可燃物中の炭素及び一酸化炭素の酸化、並びに酸素分圧の減少に伴う還元雰囲気が形成される大きさである必要があるが、それは、固形可燃物の種類によっても異なるが、5mmを越え100mm以下の粒径のものであり、中でも10mmを越え50mm以下の粒径のものが好ましく、10mmを越え30mm以下の粒径のものは更に好ましい。この場合、粒径が5mm以下では、クーラー出口に飛ばされたり、クーラーの集塵機に集塵され、クーラー後のセメントクリンカー輸送機に送られることにより、焼成後のクリンカー中に未燃焼物(固形可燃物)が残りやすくなりセメント品質に悪影響を与える可能性が大きく好ましいものではない。また固形可燃物の粒径が100mmを越えた場合も、未燃焼物が残りやすくなり、セメント品質に及ぼす影響は5mm以下の場合と同じである。
図1は、本発明に使用されるクリンカークーラーを有するキルンを示す断面図である。図1において、本発明では、キルン1のセメントクリンカー排出口にクリンカークーラーが設けられる構造を有するが、特にこれに限定されるものではなく、本発明では、セメントクリンカーの温度が850℃〜1000℃となる領域が存在するクリンカークーラーであればその構造はどのようなものでもよい。クリンカークーラー3は、セメントクリンカー8がクーラーグレート7上を移動しており、この下部には部屋6(61、・・・69)を有しており、この冷却空気がこれらの部屋からクーラーグレート7の孔を通って供給され冷却される。ここでクリンカーの温度が850℃〜1000℃となる領域は、冷却空気の温度にもよるが、符号64〜66の部屋のある部分である。
本発明においては、固形可燃物を投入する場所はクリンカークーラー3の部屋64〜66のうち少なくともいずれかの上にあるセメントクリンカー層であるが、これらのどの部屋の上にあるセメントクリンカー層に投入するかは固形可燃物の粒径如何によって異なるが、好ましくは部屋64又は64と65の上にあるセメントクリンカー層の両方である。本発明において、固形可燃物の投入場所は、セメントクリンカーの温度が850℃〜1000℃である領域であるが、更に好ましいのは850℃〜950℃の領域であり、最も好ましいのは900℃前後のクリンカー温度域である。この温度域ではエーライトの分解は起こらず六価クロムのみが還元されて減少する。またフリーライム(f・CaO)量は変化せず投入した固形可燃物も燃え尽きるので、クリンカーへ混入することがなく、クリンカーの品質の劣化は起こらない。また本発明においては、固形可燃物の投入形態としては、パイプ又は桶のいずれかを通して固形可燃物を落下投入することがセメントクリンカーへの混入を防止する上で好ましい。粘土質、けい酸、アルミナ質、炭素質、クロム質および炭化けい素等の耐火物やスピネル質に代表されるような耐火物、耐熱セラミックス等又はステンレス、オーステナイト系等の耐熱性金属材料よりなるパイプ又は桶を通して上記固形可燃物を投入することが好ましい。
本発明では、固形可燃物による還元効率を増すために、クリンカークーラーを改造したり、クリンカークーラーの運転条件を個々に調整することは極めて有効な手段である。例えば、図2に示されるように、クリンカークーラー3のクーラーグレート7上に壁状又は土手状の障害9を設けてクーラーグレート7上を移動するセメントクリンカー粒子8の層を厚くしたり、又は該グレートに設けられている冷却用空気孔71、72、73の数を減らしたり、該空気孔を偏在して設けることにより空気孔の無い領域を形成する等の手段を講ずることができる。壁状又は土手状の障害9は、クーラーグレート7の左右両側に設けられ、また前後両サイドに向かって広くなるように形成される。
図2のaには、クリンカークーラー3内にはグレート7を有し、更に該グレート7には、冷却用空気孔71、72、73が設けられ、この下部に部屋61〜69を有している。このクリンカークーラー3において、固形可燃物を投入するパイプの位置は、部屋64〜66の上にあるセメントクリンカー層であるが、これらの上部にパイプ又は桶10を設置する。このパイプ又は桶10は、1個以上設けることができるが、1個又は2個を設けることが好ましい。図2のbは、クリンカークーラー3を上から見た平面図であり、図2のcは、クリンカークーラー3を縦方向からみた正面図である。図2のcでは、本発明におけるクリンカークーラー3の両側にそれぞれパイプ又は桶10を設けている。
セメントクリンカーの温度が850℃未満のときは、燃焼状態が悪くまた還元効果も不十分となり固形可燃物の燃え残る割合が増加し、したがって該クリンカーの品質悪化をきたすおそれがある。また温度が1000℃を越えると高温域での固形可燃物の添加領域となり、この領域では六価クロムは還元されて減少するが、主要なクリンカー鉱物であるエーライトが分解してフリーライムが増加することとなりクリンカーの品質が悪化する。
本発明において、セメントクリンカーの温度が850℃〜1000℃の領域に固形可燃物を供給する場合、固形可燃物の供給量はクリンカーの粒度、クリンカー量、クリンカーの移動速度、冷却空気量並びに冷却温度等によって適宜選択されるが、クリンカー量に対して0.05〜3.0重量%とするのが好ましい。更に好ましいのは0.5〜1.0重量%の範囲である。0.05重量%より少ない場合には十分な還元が起こらず、六価クロムを減少させる効果が少ない。また3.0重量%を越えると還元効果も不十分となり固形可燃物の燃え残る割合が増加し、クリンカー及びそれを使用して製造される水硬性物質の品質上好ましくない。
本発明では、前記冷却空気量を調節する方法としては、クーラーグレート7の孔から供給される冷却空気を減少あるいは遮断する方法が採用される。本発明で得られる六価クロム含有量の少ないセメントクリンカーは、このままで水硬性材料として使用できるが、このセメントクリンカーを使用した最終製品である水硬性材料としては、この技術分野において通常用いられるもの、例えば、各種のセメント類、地盤改良用固化材、補修材料等を挙げることができる。
以下に、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
〔実施例1〜4、比較例1〜4〕普通ポルトランドセメントクリンカーを時産で100t焼成中のセメントキルンから図2に示されるクリンカークーラー3に導入される。このクリンカークーラー3において、クリンカー温度が900℃前後の場所として、部屋(冷却室)64の上にあるセメントクリンカー層を選択し、該クリンカー層の上方位置に固形可燃物供給パイプ10をクリンカー層にほぼ垂直に設け、そこから5mmを超え100mm以下の粒径(平均粒径25mm)の塊コークスを9kg/t・クリンカーの供給速度で落下投入した。得られたクリンカーの一部をサンプリングして分析した結果を表1に示す。
Figure 2010254577
表1に示されるように、コークスを供給しない場合は、六価クロム量は12.3ppmである。塊コークスを供給した場合は、1200℃では六価クロム量が減少する反面、フリーライムが増加している。1100℃では六価クロム量が3.0ppmであり、コークス添加による低減効果は認められるものの不十分である。本発明の温度範囲である850℃〜1000℃では、六価クロム量が減少しているだけでなくフリーライム量の増加もない。また残留カーボン量も極めて少ない。ところが、800℃では再び六価クロム量が増加していると共に、残留カーボン量も増加していることがわかる。したがって、5mmを超え100mm以下の粒径の塊コークスを供給した場合には、850℃〜1000℃の温度範囲において、クリンカー中の六価クロム量が目標値である2ppm以下に減少され、かつ製品クリンカーへの未燃焼固形可燃物の混入が極めて少ないことがわかる。
〔実施例5〜8、比較例5〜8〕塊コークスの粒径を10mmを超え30mm以下に変えた以外は、実施例1〜4、比較例1〜4と同じ条件でクリンカーの製造を実施し、得られたクリンカーの一部をサンプリングして分析した結果を表2に示す。
Figure 2010254577
〔比較例9〜16〕固形可燃物として、平均粒径90μm(最大200μm)の微粉コークスを10kg/t・クリンカーの供給速度で、部屋(冷却室)64の位置に供給して得られたクリンカーの一部をサンプリングして分析した結果を表3に示す(特開2000−319050の実施例1)。
Figure 2010254577
表1乃至表3の比較例1、5、9に示されるように、コークスを供給しない場合は、六価クロム量が、それぞれ12.3ppm、12.1ppm、11.0ppmであり、ほとんど変わらないことがわかる。また固形可燃物として、塊コークス及び微粉コークスを供給した場合は、表1乃至表3に示されるどの実施例においても、クリンカーの温度が1200℃及び1100℃の時は、六価クロム量は減少する反面、フリーライム(f.CaO)量が増加している。これに対して、本発明に用いられる温度範囲である850℃〜1000℃では、六価クロム量は減少するがフリーライム量の増加は認められない。ところが、800℃以下では、再び六価クロム量が増加していることがわかる。
また、クリンカーに含まれる残留カーボンについては、本発明の範囲を外れる微粉コークスを供給した場合に、本発明に用いられる温度範囲である850℃〜1000℃で得られた全てのクリンカーからかなりの量が検出されるが、本発明の5mmを超え100mm以下の粒径の塊コークスでは、極めて少なく、また10mmを超え30mm以下の粒径の塊コークスを用いた場合には殆ど検出されなかった。これらの結果から、850℃〜1000℃の温度域にあるクリンカーに、5mmを超え100mm以下の粒径の塊コークスを供給する本発明の方法が、製品クリンカーに含まれるフリーライム量を増加させることなく六価クロム量を目標値である2ppm以下に減少させることができるだけでなく、未燃焼の固形可燃物の混入がないという優れた効果を奏することがわかる。
環境基準の厳しい昨今では、各種の基準値や規制値を越さないように、セメントクリンカー中の六価クロムの量を極力低減し環境基準値以下、即ち2ppm以下にするという強い要望があり、この課題を解決し、かつ品質にも悪影響を及ぼさないセメントクリンカーが得られた。このセメントクリンカーを用いた水硬性材料は、環境基準を満たした製品として産業上の利用可能性は極めて大きいものである。
1 ロータリーキルン
2 プレヒーター
3 クリンカークーラー
4 窯尻
5 バーナー
6 部屋(冷却室)
7 クーラーグレート
8 セメントクリンカー
9 壁等の障害
10 パイプ
11 計量器

Claims (10)

  1. セメントキルンにより焼成された高温のセメントクリンカーをクリンカークーラーに導入し、該クリンカークーラー中で冷却するセメントクリンカーにおいて、前記クリンカークーラー内の温度が、850℃〜1000℃である部所に、5mmを超え100mm以下の粒径の固形可燃物を供給して得られたセメントクリンカーであって、六価クロムの含有値が2ppm以下かつ残留カーボン量が0.01%以下であることを特徴とする六価クロム含有量が低減されたセメントクリンカー。
  2. セメントキルンにより焼成された高温のセメントクリンカーをクリンカークーラーに導入し、該クリンカークーラー中で冷却するセメントクリンカーの製造方法において、前記クリンカークーラー内の温度が、850℃〜1000℃である部所に、5mmを超え100mm以下の粒径の固形可燃物を供給することを特徴とする六価クロム含有量が低減されたセメントクリンカーの製造方法。
  3. 固形可燃物は、耐火物又は耐熱性金属材料よりなるパイプ又は桶を通して供給されることを特徴とする請求項2に記載の六価クロム含有量が低減されたセメントクリンカーの製造方法。
  4. 前記クリンカークーラーのクーラーグレート上のセメントクリンカー層を厚くする手段及び/又は冷却空気量を減らす構造のクーラーグレートを設けたクリンカークーラーを用いて製造されることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の六価クロム含有量が低減されたセメントクリンカーの製造方法。
  5. クリンカークーラーに供給される冷却空気を遮断するか又は少なくすることにより還元雰囲気を調節することを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の六価クロム含有量が低減されたセメントクリンカーの製造方法。
  6. 前記クリンカークーラーの入口にある第一グレートの左右両側に壁状又は土手状の障害壁を有し、これらの障害壁は前後両サイドに向かって広く形成されていることを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれかに記載の六価クロム含有量が低減されたセメントクリンカーの製造方法。
  7. 請求項1に記載の六価クロム含有量が低減されたセメントクリンカー又は請求項2乃至請求項6のいずれかに記載の方法で製造された、六価クロム含有量が低減されたセメントクリンカーを使用して製造されたことを特徴とする水硬性材料。
  8. クリンカークーラーに設置されたクーラーグレート上のセメントクリンカー層を厚くする手段及び/又は冷却空気量を減らす構造のクーラーグレートを設けたことを特徴とする六価クロム含有量が低減されたセメントクリンカー製造用クリンカークーラー
  9. 前記クリンカークーラーに供給される冷却空気を遮断するか又は少なくすることにより還元雰囲気を調節する手段が備えられていることを特徴とする請求項8に記載の六価クロム含有量が低減されたセメントクリンカー製造用クリンカークーラー。
  10. 前記クリンカークーラーの入口にある第一グレートの左右両側に壁状又は土手状の障害壁を有し、これらの障害壁は前後両サイドに向かって広く形成されていることを特徴とする請求項8に記載の六価クロム含有量が低減されたセメントクリンカー製造用クリンカークーラー。
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