ところで、本発明は表皮渦電流センサと多波長型分光式センサとを複合させて研磨終了時点を予測及び検出する方法である。このうち、個別の表皮渦電流センサについては、本出願人の特許出願に係る特願2007−134707号の願書に添付した明細書及び図面に開示されている。また、個別の多波長型分光式センサについては、これとほぼ同様の構成・作用効果を有するものが本出願人の特許出願に係る特開2005−32790号公報に開示されている。
そこで、まず特許文献1、2及び3に記載の渦電流センサと光学式センサを複合した構成と、本発明における表皮渦電流センサと多波長型分光式センサを複合した構成との作用効果等の違いを、「個別センサにおける構成・作用効果の違い」から対比して述べる。
A.個別センサにおける構成・作用効果の違いについて。
(a)従来技術における渦電流センサと本発明における表皮渦電流センサの違いについて。
渦電流センサは、研磨対象とする導電性膜の全膜厚について渦電流を発生させ、この渦電流が膜厚の変化に応じて変化し、センサ回路との合成インピーダンスを監視することで、膜厚の監視を行うものである。こうした導電性膜の全膜厚について渦電流を発生させて膜厚の変化を測定する方式は、前記特許文献1、2及び3以外にも、特開平8−285514号(特許第2878178号)や特開平8−285515号(特許第3290347号)にも開示されている。このように、導電性膜の膜厚量と渦電流量とが対応した関係において膜厚の監視を行うものが従来技術における渦電流センサというものである。
本発明における表皮渦電流センサは、こうした渦電流センサとは構成・作用効果が異なる。本発明における表皮渦電流センサは、研磨初期には表皮効果によって磁場は導電性膜の表層のみに存在するため、該導電性膜内に渦電流は発生しない。研磨終了間際に導電性膜が非常に薄くなった時点で磁場が該導電性膜を貫通して基板側に一部漏れ出し、それによって導電性膜内に渦電流が生じて増大していく。しかし、直ぐに導電性膜が薄くなると実質的に渦電流を誘起する膜厚そのものが減少するため、渦電流は直ぐに減少に転じる。これによって、研磨終了間際に導電性膜に誘起される渦電流の変曲点が発生する。この変曲点を基準点として、研磨終了時点を予測する方法である。この方法によれば、従来の渦電流センサと比較して以下の利点(作用効果)を持つ。
・終了直前でも感度よく研磨終了時点を予測することが可能である。即ち研磨終了間際で感度がよい。
・磁場を整形して膜内に導入せず。分散磁場を使用し、表皮効果により基板内の素子に磁場を与えない。即ち素子にダメージを与えない。
・渦電流センサが渦電流の変化量で膜厚変化量(研磨による膜厚減少量)を見積もるのに対し、表皮渦電流センサは、表皮深さに対応した残膜厚(絶対膜厚)に応じて渦電流の変曲点が現れるため、研磨初期の膜厚ばらつきに関係なく、残膜厚から研磨終了時点を予測することが可能である。
(b)従来技術における光学式センサと本発明における多波長型分光式センサの違いについて。
従来技術における光学式センサは、光の干渉を使用して膜厚をモニタするものである。即ち、光の中の特定の波長を使用し、その特定の波長による干渉で膜厚を見積もるものである。
本発明における多波長型分光式センサは、こうした光学式センサとは構成・作用効果が異なる。多波長型分光式センサでは、ある波長領域の反射率強度の積算値に対する、別の波長領域の反射率強度の積算値の割合で、導電性膜の状態変化を見積もる。
従来技術の光学式センサによる干渉の場合は、特定の波長において、ウィンドウとウェーハ間に存在するスラリーによって、光の強度が変化する場合、膜厚測定が不可能になることがある。これに対し、多波長型分光式センサにおける反射率強度の積算値割合でみる場合、観察波長領域が広いこともあり、ウェーハ上にスラリーが介在することによって光の強度が変化したとしても、それほど大きな影響を被ることはない。また、反射率強度の相対的な割合で評価していることから、誤動作も少ない。
さらに、光学式センサによる光の干渉では、特定の波長しか使用せず、また、一部半透膜の場合にのみ適用できる。それは、透明ではない場合、干渉そのものが起こらないからである。これに対し、多波長型分光式センサにより分光反射率で測定する場合、光の色で検知する。色の度合いは、それぞれの波長の反射率の足し合わせで色が決定されるが、その波長に応じた反射率の相対的な変化から、たとえ、半透膜ではなく干渉が生じない膜であったとしても、研磨の進行に伴う膜の材質の変化をモニタすることは可能である。
こうした原理は、特に配線膜平坦化のCMPの場合、Cu/Ta/Oxideの膜構成となっているが、Cu研磨後にTaが露出した際にでも適用することが可能となる。Cu、Taとも膜厚が十分厚い場合、金属膜であり光は浸透せずに表面で反射するため、光の干渉を利用して膜厚をモニタすることは不可能である。しかし、分光反射率では、研磨による膜の切り替わり時点を精度よくモニタすることが可能となる。
B.それぞれのセンサを組み合わせることによって生じる作用効果の違いについて。
従来技術の渦電流センサと光学式センサの組み合わせによって生じる作用効果として次の記載がある。例えば、特許文献1では、Cu膜厚の測定に渦電流センサを使用し、薄いCu膜、Ta膜の測定には、光学式センサを使用するとしている。また、特許文献2では、同特許文献中の[0049]にCu膜が薄くなると渦電流センサは感度が悪くなるが、感度が悪くなったときに、渦電流センサに変えて光学式センサで膜厚測定するとしている。逆に、Cu膜厚が厚い場合は、光がCu膜を透過しないが、渦電流センサでは渦電流が多量に流れるため膜厚測定の感度がよい。よって、厚いCu膜では渦電流センサを使用し、Cu膜が薄く透けてきたときに光学式センサに変えるという方法をとっていた。こうした補完関係は、特許文献2のみならず、同一原理を利用する他の特許文献1及び3の場合も同じである。
これに対し本発明における表皮渦電流センサと多波長型分光式センサとの相補的な関係は、従来技術の渦電流センサと光学式センサの補完的な関係とは全く異なる。本発明では、表皮渦電流センサと多波長型分光式センサは、共に研磨の開始時には感度が悪いが、終了時点では双方とも最も感度が良い。多波長型分光式センサの場合、例えば、Cuの分光反射率からTaの分光反射率に変化する際、Cuの色が薄くなって、Taの色が見えてきた部分で最もセンサとしてはその変化を掴み取ることが可能となる。表皮渦電流センサも、研磨が進行して表皮深さに対応した磁場が漏れ出す膜厚になって、渦電流が発生し、その後の更なる膜厚減少で渦電流が低減し、極大点が現れる。極大点はCuの場合、1000Å以下で現れ、殆ど研磨の終了に近いところで現れるため、研磨終了時点を正確に予測することが可能となる。
即ち、本発明における表皮渦電流センサと多波長型分光式センサは、研磨終了間際で互いに感度がよいため、互いの状態の設定をチェックできるのである。もし、互いのセンシング結果が合致しない場合は、センサ不良であり、一時動作を止めて双方のセンサをチェックすることができるのである。また、二つのセンサを搭載して、独立して研磨終点をモニタすることで、互いのセンサの弱点を補いつつ、より精度よい終点検出を行うことができる。
ここで、本発明における互いのセンサの弱点は以下のとおりである。表皮渦電流センサは、ウェーハとセンサ間の距離が最も敏感である。センサが形成した磁場は、発散した磁場として形成されるが、同条件下でその磁場がCu膜内に侵入するか否かは、センサとウェーハ間の距離(ギャップ)にも依存する。センサとウェーハが近いと、磁場の侵入角度は急になり、ウェーハ内に磁場が入りやすくなる。特に、研磨パッドがドレッシングによって摩耗していく過程では、ウェーハとセンサ間のギャップが変化していくことがあり、このギャップの変化で微小ではあるが、磁場の入り方が変わるのである。
それに対して、多波長型分光式センサでは、センサとウェーハ間の微小なギャップのばらつきは殆ど関係しない。ウェーハに光が照射される過程においては、ウェーハが微小に前後してもウェーハからの反射光量は殆ど変化しないからである。よって、多波長型分光式センサは、表皮渦電流センサで問題となるウェーハとセンサ間のギャップに対する感度のばらつきを補うことが可能となる。
次に、逆に多波長型分光式センサは、ウェーハとウインドウの間に存在するスラリーが問題になる。即ち、研磨時にウィンドウ上にスラリーが乗る場合、光の透過率が低くなり、全体的に感度が低下することがある。極端な場合、スラリー中に多数の砥粒が密に存在する場合、スラリーによる散乱で多くの光量を失うことも考えられ、感度が悪くなる問題がある(特許第3431115号)。
それに対して、表皮渦電流センサは、ウェーハとウィンドウの間のスラリーの介在を問題としない。なぜなら、平面インダクタが形成する磁場をウェーハに作用させて研磨終了点の状態をモニタするのであるが、スラリーに使用される水ないしは砥粒などは、大抵の場合、非磁性であり、透磁率は殆ど1となるからである。よって、適正なセンサとウェーハ間で適正なギャップが確保されていれば、ウィンドウ上にスラリーが介在しようとも、安定してCuなどの導電性膜の膜状態に応じて磁束がCu膜内に侵入し、薄いCu膜では微量な渦電流を生じることになる。以上から、表皮渦電流センサは、多波長型分光式センサで問題となるウェーハとウィンドウ間のスラリーの介在に対する感度ばらつきを補うことが可能となる。
このように、多波長型分光式センサと表皮渦電流センサは、互いに研磨終了時点で感度がよく信頼性が高いという有利性を有する一方、多波長型分光式センサは、ウィンドウとウェーハ間のスラリーの介在や、ウィンドウ表面の粗さに弱く、表皮渦電流センサは、ウェーハとセンサ間のギャップの変化に弱い。
本発明は、この二つの弱みに対して、相補的な構成とするため、多波長型分光式センサにおける光透過用のウィンドウ内に表皮渦電流センサを組み付けるもしくは多波長型分光式センサと表皮渦電流センサを一体的に配置するというセンサ構成としている。そうすることで、ウィンドウ表面が研磨やドレッシングによって荒れたり、またウィンドウ表面にスラリーが滞在することで、多波長型分光式センサに必要となるウェーハ表面からの反射光を受光する感度が低下しても、表皮渦電流センサがそれを効果的に補うことが可能となる。
逆に、表皮渦電流センサが、センサとウェーハ間のギャップが変化することによって感度が変化する場合は、その一体的な部品で構成したウィンドウでは、ウェーハ表面からの反射光を透過する際、ウィンドウとウェーハ間のギャップ変化は殆ど関係ない。そのため、表皮渦電流センサの感度変化を多波長型分光式センサがそれを補うことが可能となる。
以上から、二つのセンサは相補的な作用を持つため、研磨の状態が変化して、どちらかのセンサ状態が変化しても、それを補う作用が働き、安定してロバストな終点検出のための制御を行うことができる。
なお、従来技術の渦電流センサと光学式センサを複合した複合センサとの明かな違いとして、従来技術の複合センサの場合、Cuなどの金属膜で厚い膜厚の場合、光のセンサでは透過しないので、渦電流センサしかそれを測定できない。逆に、薄い金属膜厚の場合、渦電流は無視しうる量しか発生せず、むしろ干渉が起こる程度に光が透過し始める光学式センサしかそれを測定できない。即ち、互いに測定する状態として場合分けをしているだけである。互いのセンサが誤動作していないかどうかを、他のセンサによって確認するという手段を擁するものではない。
それに対して、本発明における表皮渦電流センサと多波長型分光式センサとは、それぞれの機器が正常に設定されているかどうか又は動作しているかどうかをチェックすることが可能である。それは双方とも研磨終了時点付近が最も感度がよく、そのままでも信頼性が十分高いからである。その上で敢えて互いの信頼性を確認するものである。仮に、二つのセンサの結果が合致しない場合は、そこで装置を停止し、どちらのセンサが設定上又は動作上問題があるかどうかを検証することが重要なステップになる。
こうしたステップを経ることなく、長期にわたって補完的な機能で運用してしまった場合、例えば、光学式センサの不備に気付くことなく多数研磨し、誤った終点検出をし、多数のウェーハを台無しにしてしまうこともあり得る。また、例えば、渦電流センサの不備に気付くことなく多数研磨し、誤った終点検出をし、多数のウェーハを台無しにしてしまうこともあり得る。
そこで、研磨中に終点検出を確実に行うために終点間際において検出感度が高く精度よく終点を予測することを可能とし、独立した動作原理を有する複数のセンサはいずれも研磨終了時点で感度が高く研磨終了間際にタイムリーで精度よく研磨終了時点を検出することを可能とし、独立した動作原理を有する複数のセンサを使用し各センサが正常に設定され、また動作していることを確認することを可能とし、独立した動作原理を有する複数のセンサはいずれも終了付近で感度はよいが一方のセンサが動作する際の弱点となる要素に対し他方のセンサは原理上その弱点に強いという独立した性質を持たせて終点検出の正確性を向上させることを可能とし、一方のセンサの弱点に対し他方のセンサはそれを補うため一方のセンサは他方のセンサの光透過用のウィンドウに組み付けるもしくは一方のセンサと他方のセンサを一体的に配置するというセンサ構成とすることで安定して確実な研磨終点検出を行うために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、ウェーハをプラテン上の研磨パッドに押し付け、前記プラテンに対し相対回転させて前記ウェーハ上の導電性膜を研磨し、所定の導電性膜が適正に除去されたときの研磨終了時点を予測及び検出する研磨終了予測・検出方法であって、
研磨中に前記ウェーハの表面状態をモニタするプラテン内に設けられたウィンドウに二つのセンサを配置し、
一つのセンサは、導電性膜の材質を一因子として決まる表皮効果による渦電流の変化を基に研磨終了時点を予測するセンサであって、前記所定の導電性膜としての金属膜を除去する終了前に表皮効果に基づいて渦電流が極大となる変化を利用して研磨終了時点を予測するとともに、
他方のセンサは、前記ウィンドウを通して前記ウェーハに光を照射し、前記金属膜からの反射光をモニタして研磨終了時点を検出する多波長型分光式センサであって、双方のセンサは前記同一のウィンドウに組み付けられている研磨終了予測・検出方法を提供する。
この構成によれば、光透過用のウィンドウ内に設置された表皮渦電流センサには平面インダクタ等の磁場発生手段が備えられている。該平面インダクタが高周波で駆動されて該高周波の周期に対応した磁場が発生する。研磨初期には表皮効果によって磁場は金属膜の表層のみに存在するため、該金属膜内に渦電流は発生しない。研磨終了間際に金属膜が表皮深さに対応した非常に薄い膜厚になった時点で磁場が該金属膜を貫通して基板側に一部漏れ出し、それによって金属膜内に渦電流が発生して増大していく。その後さらなる膜厚の減少に伴って実質的に渦電流を誘起する膜厚そのものが減少するため、渦電流は急速に減少に転じる。これによって、研磨終了間際に金属膜に誘起される渦電流に変曲点(ピーク)を含んだ特徴的な変化が発生する。この特徴的な変化を基に研磨終了間際において高い感度で精度よく研磨終了時点が予測される。
一方、多波長型分光式センサは、ウィンドウを通してウェーハに光を照射するとともに金属膜からの反射光を取り入れ、ある波長領域の反射率強度の積算値に対する別の波長領域の反射率強度の積算値の割合、即ちR.S.A(Ratio of Spectral Area)の値を評価することで研磨の進行に伴う金属膜の膜厚変化をモニタする。研磨初期にはR.S.Aの値はほぼ一定値で進行する。研磨終了間際に金属膜が薄くなって前記表皮効果により渦電流に変曲点を迎える辺りから、一部の光が金属膜を透過し、該金属膜下層のバリア膜等の影響を受けて研磨面の色合いが光学的に変化する。これにより、分光反射率が変化し研磨の進行に伴うR.S.A値の特性が急激に変化する。そして、このR.S.A値の急激な変化の発生と、前記表皮渦電流センサによる精度のよい研磨終了時点の予測とがあいまって、タイムリーに精度よく研磨終了時点が検出される。
前記表皮渦電流センサは、ウィンドウ(センサ)とウェーハ間のギャップに敏感である。表皮渦電流センサが形成した磁場は、発散した磁場として形成されるが、同じ条件下でその磁場が金属膜内に侵入するか否かは、ウィンドウ即ち表皮渦電流センサとウェーハ間のギャップにも依存する。表皮渦電流センサとウェーハが近いと、磁場の侵入角度は急になり、ウェーハ内に磁場が入りやすくなる。それに対して、同じウィンドウ部に配置されている多波長型分光式センサでは、ウィンドウ(センサ)とウェーハ間の微小なギャップのばらつきは殆ど関係しない。ウェーハに光が照射される過程においては、ウェーハが微小に前後してもウェーハからの反射光量は殆ど変化しないからである。よって、多波長型分光式センサは、表皮渦電流センサで問題となるウィンドウ(センサ)とウェーハ間のギャップに対する感度のばらつきを補うことが可能となる。
次に、前記多波長型分光式センサは、ウィンドウとウェーハの間に存在するスラリーが問題になる。即ち、研磨時にウィンドウとウェーハ間にスラリーが介在する場合、光の透過率が低くなり、全体的に感度が低下することがある。それに対して、同じウィンドウ内に設置された表皮渦電流センサは、該ウインドウとウェーハ間のスラリーの介在を問題としない。なぜなら、平面インダクタが形成する磁場をウェーハに作用させて研磨終了点の状態をモニタするのであるが、スラリーに使用される水ないしは砥粒などは、大抵の場合、非磁性であり、透磁率は殆ど1となるからである。よって、ウィンドウ(センサ)とウェーハ間で適正なギャップが確保されていれば、ウィンドウ上にスラリーが介在しようとも、安定して金属膜の膜状態に応じて磁束が金属膜内に侵入し、薄い金属膜では微量な渦電流を生じることになる。よって、表皮渦電流センサは、多波長型分光式センサで問題となるウインドウとウェーハ間のスラリーの介在に対する感度ばらつきを補うことが可能となる。また、研磨中にウィンドウ表面が削れて粗面化し、光が散乱して多波長型分光式センサの感度が低い場合においても、同じウィンドウ内に設置された表皮渦電流センサで精度よく研磨終点を予測する。センサ自体は、上記のような外乱が存在しない場合においては、双方とも原理的に研磨終了時点で金属膜の膜厚が薄くなってきたときに、検出感度が非常に高くなる。こうしたことによって、同じウィンドウ部に設けられた両センサは研磨終了時点において、相補的な作用を有するものである。
前述のように、表皮渦電流センサと多波長型分光式センサは、研磨終了間際でそれぞれ精度よく研磨終了時点の予測及び検出信号を発生する。もし、両センサのセンシング結果が合致しない場合は、一時動作を止めてどちらのセンサに設定上又は動作上問題があるかどうかをチェックすることが可能となる。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、上記ウェーハの運動方向に対し、上流側のウィンドウ領域に上記表皮渦電流センサを組み付け、下流側のウィンドウ領域を上記多波長型分光式センサにおける光透過領域に設定するとともに、前記表皮渦電流センサの上方には上記研磨パッドと面一になるように擦り板を取り付けた研磨終了予測・検出方法を提供する。
この構成によれば、表皮渦電流センサの上方に取り付けられた擦り板により該表皮渦電流センサとウェーハ間に一定のギャップが形成される。擦り板の表面が研磨やドレッシングで荒らされると、その荒らされた表面にスラリーが僅かに滞在することがある。しかし、この荒らされた表面部に僅かに滞在するスラリーによる表皮渦電流センサとウェーハ間のギャップ長への影響は殆どなく、該ギャップ長はその後もほぼ一定に保たれてセンサとウェーハ間のギャップに対する表皮渦電流センサの感度のばらつきが抑えられる。また、擦り板はスラリーをせきとめてその直ぐ下流の光透過領域が設定されているウィンドウ領域へのスラリー侵入を防ぐように作用する。これにより、ウインドウとウェーハ間のスラリーの介在による多波長型分光式センサの感度のばらつきが抑えられる。
請求項3記載の発明は、ウェーハをプラテン上の研磨パッドに押し付け、前記プラテンに対し相対回転させて前記ウェーハ上の導電性膜を研磨し、所定の導電性膜が適正に除去されたときの研磨終了時点を予測及び検出する研磨終了予測・検出方法であって
研磨中にウェーハの表面状態をモニタする少なくとも二つのセンサを一体的に配置し、
その一つのセンサは、導電性膜の材質を一因子として決まる表皮効果による磁束変化を基に研磨終了時点を予測する表皮渦電流センサを使用し、前記所定の導電性膜としてCu膜を充て、該Cu膜を除去する終了前に表皮効果に基づいて渦電流が極大となる変化を利用して研磨終了時点を予測するとともに、
他方のセンサが研磨終了時点を検出する際の検出範囲を設定する機能を有し、且つ前記他方のセンサは、多波長型分光式センサであって、前記検出範囲内に存在する研磨終了時点を検出する研磨終了予測・検出方法を提供する。
この構成によれば、双方とも原理的に研磨終了間際において検出感度が高く相補的な役割を果たす表皮渦電流センサと多波長型分光式センサとが一体的に配置されている。このうち、表皮渦電流センサは、研磨終了間際にCu膜が表皮深さに対応した薄い膜厚になった時点で磁場が該Cu膜を貫通して基板側に一部漏れ出し、それによってCu膜内に渦電流が発生して増大していく。その後さらなる膜厚の減少に伴って実質的に渦電流を誘起する膜厚そのものが減少するため、渦電流は急速に減少に転じる。この渦電流の挙動によりCu膜に誘起される磁束の変化、即ち特徴的な変化は、急峻な上昇と急峻な下降を伴った変曲点(ピーク)を持つ顕著な変化として出現する。表皮渦電流センサは、この磁束の特徴的な変化から研磨終了時点を精度よく予測するとともに多波長型分光式センサが研磨終了時点を検出する際の検出範囲を設定する。該表皮渦電流センサと一体的に配置された多波長型分光式センサは、この設定された検出範囲においてR.S.Aの値を評価し、該R.S.A値の急激な変化の発生を基に研磨終了時点を検出する。これにより、研磨終了時点が高精度で確実に且つ効率よく検出される。
また、多波長型分光式センサは、表皮渦電流センサで問題となるウェーハとセンサ間のギャップに対する感度のばらつきを補うことが可能となり、これと逆に、表皮渦電流センサは、多波長型分光式センサで問題となるウェーハとウィンドウ間のスラリーの介在に対する感度ばらつきを補うことが可能となる。このように、一体的に配置された両センサは研磨終了間際において、相補的に作用する。さらに、表皮渦電流センサと多波長型分光式センサとは、両種センサ間のセンシング結果が合致しない場合は、一時動作を止めてどちら側のセンサに設定上又は動作上問題があるかどうかをチェックすることが可能となる。
請求項4記載の発明は、表皮渦電流センサで構成された一つのセンサと、多波長型分光式センサで構成された他方のセンサとを備え、前記表皮渦電流センサは前記多波長型分光式センサにおける光透過用のウィンドウに組み付けられており、所定の導電性膜としての金属膜を研磨して、該金属膜が適正に除去されたときの研磨終了時点を予測及び検出する研磨終了予測・検出装置であって、請求項1記載の研磨終了予測・検出方法を実行する研磨終了予測・検出装置を提供する。
この構成によれば、表皮渦電流センサが多波長型分光式センサにおける光透過用のウィンドウに組み付けられた構成を有する研磨終了予測・検出装置は、ウィンドウに組み付けられた表皮渦電流センサにより、研磨が進行して金属膜が表皮深さに対応した非常に薄い膜厚になった時点で該金属膜に誘起される渦電流に変曲点を含む特徴的な変化が発生し、この特徴的な変化を基に研磨終了間際において高い感度で精度よく研磨終了時点を予測する。一方、多波長型分光式センサは、同じウィンドウを通してウェーハに光を照射するとともに金属膜からの反射光を取り入れ、R.S.A値を評価することで研磨の進行に伴う金属膜の膜厚変化をモニタする。そしてR.S.A値の急激な変化を基に研磨終了時点を検出する。これにより、研磨終了時点がタイムリーに精度よく検出される。
また、多波長型分光式センサは、表皮渦電流センサで問題となるウィンドウとウェーハ間のギャップに対する感度のばらつきを補うことが可能となり、これと逆に、同じウィンドウ内に設置されている表皮渦電流センサは、多波長型分光式センサで問題となるウインドウとウェーハ間のスラリーの介在に対する感度ばらつきを補うことが可能となる。このように、同じウィンドウ部に設けられた両センサは研磨終了時点において相補的に作用する。さらに、表皮渦電流センサと多波長型分光式センサとは、両センサ間のセンシング結果が合致しない場合は、一時動作を止めてどちら側のセンサに設定上又は動作上問題があるかどうかをチェックすることが可能となる。
請求項5記載の発明は、表皮渦電流センサで構成された一つのセンサと多波長型分光式センサで構成された他方のセンサとを一体的に配置し、所定の導電性膜としてのCu膜を研磨して、該Cu膜が適正に除去されたときの研磨終了時点を予測及び検出する研磨終了予測・検出装置であって、請求項3記載の研磨終了予測・検出方法を実行する研磨終了予測・検出装置を提供する。
この構成によれば、双方とも原理的に研磨終了間際において検出感度が高く相補的な役割を果たす表皮渦電流センサと多波長型分光式センサとが一体的に配置された構成を有する研磨終了予測・検出装置は、表皮渦電流センサにより、研磨が進行してCu膜が表皮深さに対応した非常に薄い膜厚になった時点で該Cu膜に誘起される渦電流に変曲点を含む特徴的な変化が発生し、この特徴的な変化から研磨終了間際において高い感度で精度よく研磨終了時点を予測するとともに多波長型分光式センサが研磨終了時点を検出する際の検出範囲を設定する。一方、該表皮渦電流センサと一体的に配置された多波長型分光式センサにより、前記設定された検出範囲においてR.S.A値を評価し、R.S.A値の急激な変化を基に研磨終了時点を検出する。これにより、研磨終了時点が高精度で確実に且つ効率よく検出される。
また、多波長型分光式センサは、表皮渦電流センサで問題となるウェーハとセンサ間のギャップに対する感度のばらつきを補うことが可能となり、これと逆に、表皮渦電流センサは、多波長型分光式センサで問題となるウェーハとウィンドウ間のスラリーの介在に対する感度ばらつきを補うことが可能となる。このように、一体的に配置された両センサは研磨終了間際において、相補的に作用する。さらに、表皮渦電流センサと多波長型分光式センサとは、両種センサ間のセンシング結果が合致しない場合は、一時動作を止めてどちら側のセンサに設定上又は動作上問題があるかどうかをチェックすることが可能となる。
請求項1記載の研磨終了予測・検出方法の発明は、研磨終了間際に、ウィンドウ内に設置された表皮渦電流センサは金属膜を除去する終了前に表皮効果に基づく渦電流が極大となる変化が発生し、同じウィンドウ部に配置された多波長型分光式センサはR.S.A値に急激な変化が発生する。
したがって、独立した動作原理を有する両センサは、いずれも、研磨終了間際において感度が高く、この両センサの動作により研磨終了間際にタイムリーで確実且つ精度よく研磨終了時点を予測し検出することができる。このように、同じウィンドウ部に設けられた表皮渦電流センサと多波長型分光式センサは、研磨終了間際でそれぞれ精度よく研磨終了時点を予測信号及び検出信号を発生することから、両センサのセンシング結果の合致をみることで、各センサが正常に設定され、また動作していることを確認することができる。表皮渦電流センサは、その感度がウィンドウ(センサ)とウェーハ間のギャップに敏感に影響を受ける。これに対し、光を動作媒体として同じウィンドウ部に配置された
波長型分光式センサは、その感度が該ウィンドウとウェーハ間の微小なギャップのばらつきに殆ど影響を受けない。これと逆に多波長型分光式センサは、その感度がウィンドウとウェーハ間のスラリーの介在を問題としない。したがって、独立した動作原理を両センサは、一方のセンサが動作する際の弱点となる要素に対し他方のセンサは原理上その弱点に強いという性質を持っている。この両センサの特質から研磨終了時点検出の正確性を向上させることができる。さらに、研磨中にウィンドウ表面が削れて粗面化し、光が散乱して多波長型分光式センサの感度が低い場合等においても、同じウィンドウ内に設置された表皮渦流センサは精度よく研磨終了点を予測する。したがって、同じウィンドウ部に設けられた両センサは、一方のセンサの弱点に対して他方のセンサがそれを補うように相補的に作用して安定して確実に研磨終了点検出を行うことができるという利点がある。
請求項2記載の研磨終了予測・検出方法の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えてさらに、ウィンドウ内に設置されている表皮渦電流センサの上方に研磨パッドと面一になるように擦り板を取り付けたことで、表皮渦電流センサとウェーハ間のギャップ長をほぼ一定に保つことができてセンサとウェーハ間のギャップに対する該表皮渦電流センサの感度のばらつきを抑えることができる。また、ウェーハの運動方向に対し上流側のウィンドウ領域内に表皮渦電流センサを組み付けたことで、擦り板の部分でスラリーをせきとめてその直ぐ下流の光透過領域が設定されているウィンドウ領域表面へのスラリー侵入を防ぐことができて、ウィンドウとウェーハ間のスラリーの介在による多波長型分光式センサの感度のばらつきを抑えることができるという利点がある。
請求項3記載の研磨終了予測・検出方法の発明は、双方とも原理的に研磨終了間際において検出感度が高く相補的な役割を果たす表皮渦電流センサと多波長型分光式センサとが一体的に配置されている。このうち、表皮渦電流センサは、導電性膜としてのCu膜を除去する終了前に表皮効果に基づいて渦電流が極大となる変化から研磨終了時点を精度よく予測するとともに多波長分光式センサが研磨終了時点を検出する際の研磨範囲を設定し、多波長分光式センサは、この設定された範囲において、R.S.A値の急激な変化を基に研磨終了時点を予測することで 研磨終了時点を高精度で確実に且つ効率よく検出することができる。また、多波長分光式センサは、表皮渦電流センサで問題となるウェーハとセンサ間のギャップに対する感度のばらつきを補うことができ、これと逆に、表皮渦電流センサは、多波長型分光式センサで問題となるウェーハとウィンドウ間のスラリーの介在に対する感度ばらつきを補うことができる。したがって、一体的に配置された両センサは研磨終了間際において、相補的に作用して研磨終了点検出の正確性を向上させることができるという利点がある。
請求項4記載の研磨終了予測・検出装置の発明は、研磨終了間際に、多波長型分光式センサにおける光透過用のウィンドウに組み付けられた表皮渦電流センサにより金属膜に誘起される渦電流に変曲点を含む特徴的な変化が発生し、同じウィンドウ部に配置された多波長型分光式センサにはR.S.A値の急激な変化が発生する。したがって、独立した動作原理を有する各センサは、いずれも研磨終了間際において感度が高く、この各センサの動作により研磨終了間際にタイムリーで確実且つ精度よく研磨終了時点を予測し検出することができる。また、同じウィンドウ部に設けられた両センサ間のセンシング結果の合致をみることで、それぞれのセンサが正常に設定され、また動作していることを確認することができる。さらに、多波長型分光式センサは、表皮渦電流センサで問題となるウィンドウとウェーハ間のギャップに対する感度のばらつきを補うことができ、これと逆に、同じウィンドウ内に設置されている表皮渦電流センサは、多波長型分光式センサで問題となるウィンドウとウェーハ間のスラリーの介在に対する感度ばらつきを補うことができる。このように、同じウィンドウ部に設けられた両センサは研磨終了時点において相補的に作用することで、研磨終了時点検出の正確性を向上させることができるという利点がある。
請求項5記載の研磨終了予測・検出装置の発明は、研磨終了間際に、一体的に配置された両センサのうち、表皮渦電流センサによりCu膜に誘起される渦電流に変曲点を含む特徴的な変化が発生して高い感度で精度よく研磨終了時点を予測するとともに多波長型分光式センサが研磨終了時点を検出する際の検出範囲を設定し、一方、多波長型分光式センサは設定された検出範囲においてR.S.A値の急激な変化を基に研磨終了時点を検出する。したがって、研磨終了時点を高精度で確実に且つ効率よく検出することができる。また、多波長型分光式センサは、表皮渦電流センサで問題となるウェーハとセンサ間のギャップに対する感度のばらつきを補うことができ、これと逆に、表皮渦電流センサは、多波長型分光式センサで問題となるウェーハとウィンドウ間のスラリーの介在に対する感度ばらつきを補うことができる。このように、一体的に配置された両センサは研磨終了間際において相補的に作用することで、研磨終了時点検出の正確性を向上させることができる。さらに、表皮渦電流センサと多波長型分光式センサとは、両種センサ間のセンシング結果が合致しない場合は、一時動作を止めてどちら側のセンサに設定上又は動作上問題があるかどうかをチェックすることができるという利点がある。
以下、本発明の好適な一実施例を図面に従って詳述する。図1は研磨終了予測・検出装置が組み込まれたウェーハ研磨装置(CMP装置)の斜視図、図2はウェーハ研磨装置に組み込まれた表皮渦電流センサ及び多波長型分光式センサのブロック図、図3は図2におけるウィンドウ部の拡大縦断面図である。まず、本実施例に係る研磨終了予測・検出方法とその装置の構成をこれに適用されるウェーハ研磨装置の構成から説明する。
図1において、ウェーハ研磨装置1は、主としてプラテン2と、研磨ヘッド3とから構成されている。前記プラテン2は、円盤状に形成され、その下面中央には回転軸4が連結されており、モータ5の駆動によって矢印A方向へ回転する。前記プラテン2の上面には研磨パッド6が貼着されており、該研磨パッド6上にノズル7(図2参照)から研磨剤と化学薬品との混合物であるスラリーが供給される。
前記研磨ヘッド3は、プラテン2よりも小形の円盤状に形成され、その上面中央に回転軸8が連結されている。該研磨ヘッド3は、プラテン2の回転中心から偏心した位置でウェーハW(図2参照)を研磨パッド6に押圧するとともに、回転軸8を介して図示しないモータで駆動されて矢印B方向へ回転する。また、研磨ヘッド3は、図示しない昇降手段で駆動されて研磨パッド6に対して垂直に昇降する。
ウェーハ研磨装置1は、研磨加工の際に研磨ヘッド3で保持したウェーハWを研磨パッド6に所定の圧力で押し付け、該研磨パッド6とウェーハWとをそれぞれ回転させながら、ノズル7から研磨パッド6上にスラリーを供給し、ウェーハW上の所定の膜を研磨する。該ウェーハ研磨装置1には、装置全体の駆動を制御する制御部9(図2参照)が備えられている。
図2及び図3に示すように、前記プラテン2における前記研磨ヘッド3が通過する所定の位置に観測孔10が該プラテン2及び研磨パッド6を貫通して形成されている。該観測孔10には、ポリウレタンピース等の透明材料からなるウィンドウ11が嵌め込まれている。そして、ウェーハWの運動方向(図1中の回転方向B)に対し上流側に位置する上流側ウィンドウ領域11a内に表皮渦電流センサ12が組み付けられ、下流側には下流側ウィンドウ領域11bを照射光及び反射光の光透過領域とする多波長型分光式センサ13が組み込まれている。このように、表皮渦電流センサ12と多波長型分光式センサ13がウィンドウ11部に一体的に配置されている。
前記表皮渦電流センサ12は、後述するように、平面状インダクタ14と共振用ボックス15とで構成され、該平面インダクタ14と共振用ボックス15とは信号ケーブル16で接続されるとともに平面インダクタ14はウェーハW表面部の所定の導電性膜と対峙するように上流側ウィンドウ領域11a内の上方に組み付けられ、共振用ボックス15はその下方位置に組み付けられている。前記平面状インダクタ14の上には研磨パッド6と面一になるように擦り板(パッド)17が取り付けられている。
該擦り板17により該表皮渦電流センサ12とウェーハW間に一定のギャップが形成される。擦り板17の表面が研磨やドレッシング等で荒らされると、その荒らされた表面にスラリーが僅かに滞在することがある。しかし、この荒らされた表面部に僅かに滞在するスラリーによる表皮渦電流センサ12とウェーハW間のギャップ長への影響は殆どなく、該ギャップ長はその後もほぼ一定に保たれてセンサとウェーハW間のギャップに対する表皮渦電流センサ12の感度のばらつきが抑えられる。また、擦り板17はスラリーをせきとめてその直ぐ下流の下流側ウィンドウ領域11bへのスラリー侵入を防ぐように作用する。これにより、ウインドウ11とウェーハW間のスラリーの介在による多波長型分光式センサ13の感度のばらつきを抑えることが可能となる。
前記表皮渦電流センサ12における共振用ボックス15からの特徴的な変化等を示す信号はスリップリング18を介して外部のコンピュータ19に出力される。コンピュータ19は所定のアルゴリズムにしたがって演算処理し、研磨終了時点を予測する。
上記のように、表皮渦電流センサ12と多波長型分光式センサ13とをウィンドウ11部に一体的に配置したことで、研磨中に、ウィンドウ11の表面が荒れて粗面化し、光が散乱して多波長型分光式センサ13の感度が低くなった場合においても同じウィンドウ11内に設置されている表皮渦電流センサ12で精度よく研磨終点が予測される。また、ウェーハWと表皮渦電流センサ12間のギャップが変化する場合においても同じウィンドウ11を透過する多波長型分光式センサ13の反射光はギャップ変化に殆ど関係なく研磨終了時点を検出することが可能となる。したがって、表皮渦電流センサ12と多波長型分光式センサ13とは、極めて効果的に相補的に作用する。
図4は、ウィンドウ11の変形例を示している。この変形例は、擦り板17を頂部として、ウィンドウ11の上面に上流側スロープ11cと下流側スロープ11dが形成されている。該下流側スロープ11dが形成されたウィンドウ11の上面部は下流側ウィンドウ領域11bの上面部となっている。上流側スロープ11cにより、擦り板17部によるスラリーのせきとめ作用が一層確実に生じる。また、下流側スロープ11dにより下流側ウィンドウ領域11bの上面とウェーハWとの間にギャップが形成されるが、多波長型分光式センサ13の感度には殆ど影響しない。そして、該下流側スロープ11dの形成により、研磨やドレッシングによって下流側ウィンドウ領域11bの上面は、荒らされることがない。そして、たとえ下流側ウィンドウ領域11bの上面にスラリーが入り込んだとしても、スラリーは下流側スロープ11dを流れ落ちる。よって、スラリーによる多波長型分光式センサ13の感度低下が確実に抑えられる。なお、以下の説明では、ウィンドウ11は前記図3に示したものが適用されている。
前記表皮渦電流センサ12を、図5乃至図9を用いて説明する。図5は表皮渦電流センサ(インダクタ型センサ)の詳細構成を示すブロック図、図6は表皮渦電流センサにおける発振回路の基本的な構成例を示す図であり、(a)は構成図、(b)はその等価回路、図7の(a)〜(d)は表皮渦電流センサにおけるコイルから発生した磁場が導体膜上でどのような向きに配列しているかを電磁シミュレーションした結果を示す図、図8は表皮渦電流センサにおける電磁結合で発生する磁場によるインダクタンスの変化作用を説明するための図、図9の(a)〜(e)はウェーハ研磨装置による導電性膜の研磨削除に伴う表皮効果による磁束等の変化例及び特徴的な変化の検出作用を説明するための組図である。
図5において、表皮渦電流センサ(インダクタ型センサ)12の主体を構成している発振回路20は、インダクタンスLとなる二次元の平面インダクタ14に、キャパシタンスC0となる集中定数キャパシタ21が直列に接続されて、LC回路が構成されている。前記平面インダクタ14は、絶縁物からなる方形状等の基板14a上に、Cu等の導電物質を用いて角形のスパイラルに構成されている。平面インダクタ14は、ガラス・エポキシや紙・フェノール等の絶縁物からなる基板14a上にCu等の導電膜を成膜後、エッチング等で製作することで、線幅を非常に微細化して製作することができ、全体形状も一辺が23mm程度の方形状等に小形化することができる。そして、平面インダクタ14の小形化により微小な磁場を効率よく発生させることができ、磁場を導電性膜の内部に深く浸透させることなく、該導電性膜が除去される終点付近の変化挙動を精度よく検出することが可能となる。
前記LC回路からの出力信号は増幅器22に入力され、該増幅器22の出力は抵抗等で構成されたフィードバック・ネットワーク23に入力されている。フィードバック・ネットワーク23の出力信号が、平面インダクタ14にポジティブ・フィードバックされることにより、該平面インダクタ14を含めて発振回路20が構成されている。
該発振回路20は、基本的には、図6の構成例に示すように、その発振周波数帯fが、次式(1)に示すように、平面インダクタ14のインダクタンスLと集中定数キャパシタ21のキャパシタンスC
0で決まるコルピッツ型等の発振回路となっている。
前記増幅器22の出力端子には、周波数カウンタ24が接続されている。該周波数カウンタ24から後述する膜厚基準点を示す検出信号等がデジタルで外部に出力される。検出信号出力をデジタルで伝送することで、ノイズの影響及び出力の減衰が防止される。また、膜厚データの管理容易性が得られる。表皮渦電流センサ(インダクタ型センサ)12における発振回路20と、その発振(共振)周波数の変化をモニタするための周波数カウンタ24とを近接して配置することで、該発振回路20と周波数カウンタ24間の配線・結線部分で分布定数回路を形成してインダクタンスやキャパシタンスが不要に大きくなるのが防止されて、表皮渦電流センサ12にもたらされる導電性膜の研磨の進行に伴う磁束の変化を精度よく検出することが可能となる。
該表皮渦電流センサ12は、平面インダクタ14を除いた他の構成部品ないしは回路がIC(集積回路)化されて共振用ボックス15に内装されている。前記平面インダクタ14は、薄い絶縁膜で被覆されており、前記図3では平面インダクタ14と共振用ボックス15とは信号ケーブル16で接続されているが、該平面インダクタ14は、共振用ボックス15の表面部に固定することもできる。また、発振回路20を構成している前記集中定数キャパシタ21はキャパシタンスが可変となっており、表皮渦電流センサ12は所要の発振周波数帯の範囲内で、発振周波数を選択できるようになっている。
本実施例では研磨中の所定の導電性膜が該所定の導電性膜の表皮深さδに対応する膜厚になった場合の磁束変化を基に特徴的な変化の検出を行っている。所定の導電性膜における表皮深さδは、該所定の導電性膜の材質と発振回路20の発振周波数fとに依存して式(2)のように決まる。
ω:2πf、μ:透磁率、σ:導電率である。
そして、該表皮深さδが、所定の導電性膜の初期膜厚よりも小さく研磨終期において埋め込み部を除いた部分の所定の導電性膜の膜厚より大になるように発振回路20の発振周波数fが選択されている。研磨除去対象の導電性膜の材質がCuの場合において、前記発振周波数帯は、20MHz以上が選択される。
ここで、前記「表皮深さに対応する膜厚」及び「表皮効果によって生じる磁束変化」について、図7の(a)〜(d)を用いて説明する。図7は表皮効果センサにおけるコイル(平面インダクタ)から発生した磁場が導体膜上でどのような向き((a)〜(d)各図中下方の矢印←)に配列しているかを電磁シミュレーションした結果を示す図であり、同図(a)はセンサからの発振周波数が1MHzで導体膜の膜厚が0.2μmの場合、同図(b)はセンサからの発振周波数が1MHzで導体膜の膜厚が1μmの場合、同図(c)はセンサからの発振周波数が40MHzで導体膜の膜厚が0.2μmの場合、同図(d)はセンサからの発振周波数が40MHzで導体膜の膜厚が1μmの場合である。
電磁シミュレーションの設定は、磁場を形成するインダクタは指向性を持たない平面インダクタとした。前記「表皮深さに対応する膜厚」とは、「表皮効果によって磁束変化が生じる膜厚」のことである。センサの発振周波数が1MHzではコイルの下側に存在する導体膜上の磁束は縦方向を向いている。この周波数では、膜厚が1μm及び0.2μmであっても、導体膜内を磁束が貫通している(図7(a)、(b))。こうした導体膜内を磁束が貫通する場合は、従来例に示されているように、導体膜内部に発生する渦電流は、膜厚減少に伴って減少する。よって、1MHzの場合、1μm以下の膜厚では、単調な挙動であるため、表皮効果は現れず、「表皮深さに対応する膜厚」も少なくとも1μmよりも厚い膜厚と考えられる。
これに対し、センサの発振周波数が40MHzでは、明らかに導体表面での磁束向きが水平であり、膜厚が1μmでは、殆ど導体内部に入り込んでいない(図7(d))。明らかに、先の発振周波数が1MHzで膜厚が1μmの場合(図7(b))と比較すると、導体膜に入り込む磁束の向きが異なることが分かる。
しかし、発振周波数が40MHzで導体膜が0.2μmまで薄くなると(図7(c))、一部の磁束のみが導体膜内部方向へ向いている。これは導体膜がCuでも、ある薄さになると一部の磁束が導体膜内を貫通することを示している。
この40MHzの交番変化する磁束の場合、表皮効果に対応して、導体膜内の磁束の貫通状態が変化する。貫通磁束が徐々に増加する影響で、周波数は約700Å前後まで急激に上昇する。なお、膜厚が1μm以上では磁束は殆ど貫通していない。よって、この場合、「表皮深さに対応した膜厚」は約1μmということができる。このことからも、発振周波数を40MHzと高くし、平面状インダクタを使用すると、1μm厚みのCu導体膜内に磁束は殆ど入り込まず、これは表皮効果によるものである。
Cu導体膜で発振周波数が40MHzの場合、Cuの導電率を58×106S/mとすると、表皮深さδは9.34μmになる。計算上は、膜厚が1μmだと磁束は導体膜内に十分入り込む計算になるが、平面状インダクタを使用しており、磁束に指向性がないことから、実際は発振周波数が40MHzの場合、膜厚が1μmでも表皮効果によって磁場は導体膜内に侵入しない。導体膜が薄くなるにつれて一部の磁束が導体膜内に入り込み、わずかに渦電流が発生する。このことより、渦電流を積極的に利用して膜厚測定するのではなく、終点付近の薄い膜厚になったときに、表皮効果により、わずかに漏洩・貫通する磁束を利用して、導体膜内に誘起される相互インダクタンスの変曲点(極大点)を利用して該導体膜の終点付近の膜厚状態をモニタすることが可能となる。
次いで、表皮渦電流センサ12による特徴的な変化の検出作用及び研磨終了時点の予測方法を、図8及び図9の(a)〜(e)を用いて説明する。図9中の(a)〜(d)は導電性膜の研磨削除に伴う磁束及び渦電流の変化例を示す図、(e)は導電性膜の膜厚変化に対する共振周波数の変化例を示す特性図である。図9の(a)〜(d)では、平面インダクタ14が、図を見やすくするため、丸形のスパイラルに表示されている。
平面インダクタ14が発振回路20から発振される高周波で駆動され、該平面インダクタ14からその高周波の周期に対応して時間的に変化する磁束φが発生する。研磨初期において所定の導電性膜25に誘起される磁束φは、前記表皮深さδの領域のみを膜面に沿ってほぼ平行に通過し、所定の導電性膜25における表皮深さδを超えた領域への磁束φの侵入は回避される(図9(a))。また、表皮渦電流センサ12から発振される共振周波数も所定の導電性膜25の膜厚変化に関係なく一定に保持される(図9(e)のa領域)。
研磨が進行して所定の導電性膜25が前記表皮深さδに対応した膜厚付近になると、一部の磁束φが所定の導電性膜25を貫通して漏洩磁束φLが生じ始める。所定の導電性膜25を貫通しない磁束φは、そのまま膜面に沿ってほぼ平行に通過する。そして、所定の導電性膜25中に貫通した漏洩磁束φL数に比例して渦電流Ieが発生する(図9(b))。
さらに研磨が進行すると、漏洩磁束φ
Lが増えて渦電流Ieが導電性膜25の膜面に沿った広い領域に発生する(図9(c))。この広い領域に発生した渦電流Ieが、図8に示すように、さらに磁場Mを作り、その磁場Mが元の平面インダクタ14から発生した磁束φ
Lを打ち消すように作用する。結果的に導電性膜25が形成した磁場Mによって、相互インダクタンスLmが上昇し、元の平面インダクタ14の見かけ上のインダクタンスLが低下する。その結果、表皮渦電流センサ12から発振される発振周波数fは、式(3)のように増大する。
したがって、相互インダクタンスの発生により、センサ回路系のインダクタンスが等価的に減少して表皮渦電流センサ12から発振される共振周波数が上昇する(図9(e)のb、cの領域)。
さらに研磨の進行により漏洩磁束φLは増えて飽和する。しかし渦電流Ieは、所定の導電性膜25の膜厚体積の減少に伴い急速に減少する(図9(d))。この渦電流Ieの急速な減少により前記相互インダクタンスも急速に減少する。この相互インダクタンスの急速な減少は、前記式(3)におけるインダクタンスの減少分Lmの低下につながり、結果としてセンサ回路系のインダクタンスが等価的に増加し、表皮渦電流センサ12から発振される共振周波数が急速に低下する(図9(e)のd領域)。
このように、研磨の進行により所定の導電性膜25が表皮深さδに対応する膜厚になった以降において、渦電流Ieが発生しその後の急速な減少によりセンサ回路系のインダクタンスが一旦減少してその後増加に転じる。この挙動により表皮渦電流センサ12から発振される共振周波数の波形に上昇開始点、上昇率、上昇量、変曲点(ピーク)P及び上昇から下降の変化率を含む特徴的な変化が発生する。この上昇開始点、上昇率、上昇量、変曲点(ピーク)Pもしくは上昇から下降の変化率の少なくともいずれから研磨終了間際における研磨終了時点の予測と、前記多波長型分光式センサ13が研磨終了時点を検出する際の検出範囲の設定が行われる。所定の導電性膜25がCuの場合、変曲点Pが発生する時点の残膜量は、ほぼ1000Å程度である。
なお、表皮渦電流センサ12は、前記共振周波数の他に相互インダクタンス、渦電流Ie、漏洩磁束φLの変化のうちの少なくともいずれかの変化を基に変曲点Pを含む特徴的な変化を発生させて研磨終了時点の予測を行うことができる。相互インダクタンスの変化は前記式(3)を利用して表皮渦電流センサ12の発振周波数の変化から求めることができ、渦電流Ieは前記相互インダクタンスと比例関係にあることから該渦電流Ieの変化は前記相互インダクタンスの変化を用いて求めることができ、また漏洩磁束φLは渦電流Ieと比例関係にあることから該漏洩磁束φLの変化は前記渦電流Ieの変化を用いて求めることができる。
前記多波長型分光式センサ13を、前記図2並びに図10乃至図13を用いて説明する。図10は多波長型分光式センサ13における分光器の構成図、図11はTEOS/SiN絶縁膜についてTEOS部の研磨に伴う研磨面の色合いの変化を示す図、図12はCu膜とTa/酸化膜の波長に対する反射率変化を示す特性図、図13は研磨時間に対する反射率積算値の変化及びR.S.Aの変化を示す特性図である。
多波長型分光式センサ13には、主として、白色光を発生するハロゲンランプ等の光源部26、照射・受光光学系27、受光部28、分光器29及び前記表皮渦電流センサ12と共通のコンピュータ19が備えられている。照射・受光光学系27は、レンズ鏡筒内に図示しない集光レンズを内蔵しており、図示しないブラケットで支持されて前記ウィンドウ11の下方位置に設置されている。
光源部26から出射した白色光が、ライトガイド30によって照射・受光光学系27へ導かれ、該照射・受光光学系27で集光されたのち、プラテン2に設けられたウィンドウ11の下流側ウィンドウ領域11bを通して研磨パッド6上のウェーハWに照射される。照射された白色光はウェーハW上の所定の導電性膜の研磨面で反射し、その反射光が照射・受光光学系27で集光されてライトガイド31aを介して受光部28で受光され、さらにライトガイド31bを介して分光器29へ導かれる。このように、光源部26からの白色光及び所定の導電性膜からの反射光が、ウィンドウ11を通過するときに反射光データが取得されるので、前記制御部9によりプラテン2の回転と多波長型分光式センサ13との間で同期がとられる。
図10に示すように、前記分光器29には、入射スリット32、平面鏡33、凹面回折格子34、アレイ受光素子35及びマルチプレクサ36が備えられている。前記ライトガイド31bを介して分光器29に導かれた反射光は、入射スリット32を介して平面鏡33により凹面回折格子34に導かれる。そして、該凹面回折格子34によって各波長ごとの反射光に分光され、アレイ受光素子35に結像される。該結像された光は各波長ごとの反射光強度に応じた電気信号に変換され、マルチプレクサ36を介してコンピュータ19に出力される。
該コンピュータ19のメモリには、リファレンス試料としての鏡からの反射による反射光量であるリファレンス光量及びウェーハ研磨装置1におけるウィンドウ11部からの反射光量であるダークネス光量が取得されて予め記憶されている。コンピュータ19では各波長におけるリファレンス光量からダークネス光量を差し引いた光量を100%としたときの各反射光の割合が演算され、該コンピュータ19に入力された各波長ごとの反射光強度が各波長ごとの反射率強度に換算される。そして、コンピュータ19は、所定の終点検出アルゴリズムにしたがって各波長ごとの反射率強度に応じた電気信号を演算処理し、所定の導電性膜25の研磨終点を検出する。
導電性膜25の研磨終了時には、該導電性膜25下層のバリア膜等の影響を受けて研磨面の色合いが光学的に変化する。色の度合いは、それぞれの波長の反射率の足し合わせから決定される。図11の(a)、(b)は、一例としてTEOS(有機オキシシランのCVDによるSiO膜)/SiN(シリコンナイトライド)の積層絶縁膜についてTEOS部の研磨に伴う研磨面の各波長ごとの反射率の変化、即ち色合いの変化を示しており、(a)はTEOS部を研磨時間について拡大して示す図、(b)は研磨の進行に伴ないSiN部が露出したときの研磨面の色合いの変化を示している。この図11は、研磨の進行に伴う研磨面の各波長ごとの反射率の変化をモニタすることで、被研磨材の研磨状態を検出することができることを示している。
また、Cu膜は、ある波長領域の反射率強度に対し、これよりも高い別の波長領域の反射率強度が大になることが知られている。図12は、このCu膜と該Cu膜下層のバリア膜であるTa/酸化膜について波長に対する反射率変化を示している。この図12中、r曲線で示すように、Cu膜の場合、500〜550nm領域の反射率はほぼ0.75%であるのに対し、700〜750nm領域の反射率はほぼ1.1%に大になっている。Cu膜は、研磨前及び研磨中このような反射率曲線を維持している。これに対し、Ta/酸化膜の場合は、s曲線で示すように、400〜750nmの全白色光範囲について反射率は、高波長領域側で僅かに低下するが、ほぼ0.6%程度の値で変化の少ない特性を示している。
そして、Cu膜が研磨されて研磨面にTa/酸化膜が露出してくると、研磨面からの反射率は、Cu膜の反射率曲線であるr曲線から、Ta/酸化膜の反射率曲線であるs曲線に移行する。したがって、500〜550nm領域では反射率は僅かに低下するがその変化は少ない。これに対し、700〜750nmの波長領域では反射率は、ほぼ1.1%からほぼ0.6%程度の値に急激に低下する。そこで、本実施例の多波長型分光式センサ13は、式(4)に示すように、500〜550nm領域の反射率強度の積算値に対する700〜750nm領域の反射率強度の積算値の割合、即ちR.S.A(Ratio of Spectral Area)の値を評価することで研磨の進行に伴うCu膜の膜厚変化をモニタし、Cu膜の研磨終了時点を精度よく検出するようにしている。
図13は研磨時間に対する700〜750nm領域の反射率積算値R、500〜550nm領域の反射率積算値S及びR.S.A値の各変化を示している。この図13の変化特性から、Cu膜の研磨中、500〜550nm領域の反射率積算値Sはほぼ0.75の値で進行し、研磨終点ではほぼ0.65程度の値にやや低下する。これに対し、700〜750nm領域の反射率積算値Rはほぼ1.1の値で進行し、研磨終点では500〜550nm領域の反射率積算値とほぼ同じの0.65程度の値に急激に低下する。
したがって、Cu膜の研磨中、R.S.A値はほぼ(0.75/1.1=)0.68程度の値を維持して進行し、研磨終点では1.0強の値に急上昇する。このR.S.A値の急激な変化に対し、本実施例では、R.S.A値に所定値の閾値Tを設定し、急上昇するR.S.A値がこの閾値Tを超えた時点を研磨終了時点として検出している。
なお、R.S.Aは、式(4)における分母(700〜750nm領域の反射率積算値)と分子(500〜550nm領域の反射率積算値)を逆にした形の値を用いても、研磨終了時点を検出することができる。このとき、R.S.A値の変化特性は、図13中に示す特性曲線とは逆に、研磨終点で急下降する特性曲線となる。
また、本実施例の多波長型分光式センサ13は分光器29を備えていることから、分光計として機能させることもできる。そして、この分光計により、ウェーハWからの反射光を波長に対する反射率に分け、特定の波長帯域における反射率強度の変化、例えば前記図12中の700〜750nm領域における反射率強度の変化に基づいて該反射率強度が所定の値に到達したか否かを判別し、この判別結果から研磨終了時点を検出することもできる。
次に、上述のように、それぞれ独立した動作原理を有する表皮渦電流センサ12と多波長型分光式センサ13とを有する研磨終了予測・検出装置の作用を図14乃至図16を用いて説明する。図14は研磨終了予測・検出装置による研磨終了時点の予測及び検出作用を説明するためのフローチャート、図15は研磨終了時点の他の検出作用を説明するためのフローチャート、図16は表皮渦電流センサによる研磨終点予測信号の波形例及び多波長型分光式センサによる研磨終点検出信号の波形例を示す波形図である。
図14のフローチャートを用いて研磨終了予測・検出装置による研磨終了時点の予測及び検出作用を説明する。ウェーハ研磨装置1によりウェーハW上の所定の膜の研磨が開始されると、制御部9からコンピュータ19に向けて研磨開始信号が発信される(ステップS1)。コンピュータ19は該研磨開始信号を受信すると(ステップS2)、研磨終点の予測及び検出を開始する(ステップS3)。そして、表皮渦電流センサ12からセンサ信号を受け、所定のアルゴリズムにしたがって演算処理を実行し(ステップS4)、研磨終了時点を予測する(ステップS5)。また、これと並行してコンピュータ19は分光器29から各波長ごとの反射光強度に応じた電気信号を受け、この反射光強度を各波長ごとの反射率強度に換算した後、所定の終点検出アルゴリズムにしたがって演算処理を実行し(ステップS6)、前記研磨終点予測後の研磨終了時点を検出する(ステップS7)。そして、それぞれ検出された研磨終了時点の予測信号検出時間と研磨終了時点の検出信号検出時間との時間差が想定のマージンの範囲内であったときは(ステップS8のYes)、ウェーハ研磨装置1の制御部9に研磨終点信号を出力し(ステップS9)、研磨工程を終了させる(ステップS10)。一方、前記時間差が想定のマージン範囲外であったときは(ステップS8のNo)、ウェーハ研磨装置1の制御部9にエラー信号を出力し(ステップS11)、該制御部9からウェーハ研磨装置1にエラー発報を行わせる(ステップS12)。
なお、前記ステップS5では、表皮渦電流センサ12からのセンサ信号により研磨終了時点を予測するとともにステップS7で研磨終了時点を検出する際の検出範囲を設定することで、研磨終了時点を一層確実且つ効率よく検出することができる。また、前記ステップS5で表皮渦電流センサ12からのセンサ信号により研磨終了時点の予測が行われた後は、該表皮渦電流センサ12におけるインダクタへ供給する高周波の電流を低減もしくはオフにすることで、導電性膜に誘起される磁束が軽減ないしはオフにされて該導電性膜下方のデバイスウェーハに形成されている素子等に過剰な磁場を与えることが抑えられる。
次いで、図15のフローチャートを用いて研磨終了時点の他の検出作用を説明する。図15のフローチャートにおけるステップS21からステップS27までの処理は、前記図14のフローチャートにおけるステップS1からステップS7までの処理とほぼ同じである。この研磨終了時点の他の検出作用では、ステップS25において表皮渦電流センサ12からのセンサ信号による研磨終了時点の予測信号を研磨終了時点の検出信号と同等にみなしている。そして、ステップS25とステップS27の両ステップで研磨終了時点が検出されたとき、又はステップS25とステップS27のいずれかで研磨終了時点が検出されたとき(ステップS28)、ウェーハ研磨装置1の制御部9に研磨終点信号を出力し(ステップS29)、研磨工程を終了させる(ステップS30)。
次に、ウェーハ研磨装置1における研磨条件の設定並びに研磨終了時点の予測及び検出方法の具体例を説明する。
まずウェーハ研磨装置1に対する研磨条件の設定は以下の通りである。
[研磨条件]
(消耗品)
スラリー:(株)フジミインコーポレーテッド社製 PL7105
研磨パッド:ローム&ハース(株)社製 IC1400 K−Grv
ドレス:#100、4inchDiscType
ウェーハ膜構成:Cu 1000nm/Ta 25nm/Oxide 800nm/Si
(研磨条件)
ウェーハ/リテーナ加圧:2.5psi/1.5psi
プラテン/研磨ヘッド回転数:95rpm/93rpm
スラリー流量:300ml/min
(インターバルドレス条件)
ドレス加重:4kgf
プラテン/ドレス回転数:80/88rpm
インターバルドレス時間:30sec
ここで、図16を用いて表皮渦電流センサ12による研磨終点予測信号の波形例及び多波長型分光式センサ13による研磨終点検出信号の波形例を示しながら、研磨終点の予測検出及び研磨終点検出の要領を説明する。図16は、同時に両センサ12,13で信号測定をした結果である。両波形例のうちの一方は表皮渦電流センサ12によって得られた表皮渦電流の波形であり、他方は多波長型分光式センサ13によって得られたR.S.A値の波形である。
表皮渦電流センサ12では、導電性膜を除去する直前に大きな変曲点Pを有する。その変曲点Pを過ぎると、急激にセンサ出力が低下し、研磨終了時点を迎える。それに対して、多波長型分光式センサ13は、導電性膜が除去され表皮渦電流センサ12によって得られた表皮渦電流が変曲点Pを迎える辺りのQ点から急激にR.S.A値の曲線が変化する。
これらの挙動は、まず表皮渦電流センサ12は、表皮効果によって侵入できなかった磁場が徐々に導電性膜内に侵入し始め、導電性膜表面に発生する渦電流が徐々に増加していく現象から、その後、磁場は導電性膜内に侵入するものの導電性膜そのものの膜厚減少により、導電性膜内に侵入した磁場によって生じる渦電流自体が実質的に減少する現象へ遷移することによって起こる。それより、その状態変化で研磨終了の直前にピークPがでるため、このピークPが研磨終点を正確に予測するポイントになる。
一方、丁度この表皮効果によって侵入できなかった磁場が徐々に導電性膜内に入り出し、その磁場によって渦電流が変曲点Pを迎える辺りから、表面の導電性膜は光学的にも色合いが多少変化してくる。即ち、金属性膜とはいえ、一部の光はその金属膜を透過することができる。ここでは、そのピーク時点は約55sec時点でその渦電流の形成により、表皮渦電流センサ12の信号強度はピークPを迎える。この後、約4sec後である59sec時点で研磨終了時点となる。このとき、予め多波長型分光式センサ13の終点を告げる信号の閾値Tを59sec±1sec程度として設定しておく。本具体例では、予め設定した4sec後である59sec時点で多波長型分光式センサ13よるR.S.A値が予め設定した閾値Tを超えて、多波長型分光式センサ13も研磨終点を検出する。
これにより、両センサ12,13の研磨終了時点の予測及び研磨終了時点の検出が丁度合わさったことから、研磨終了時点は59secとして59secで研磨を止めることが可能となる。これが、仮に多波長型分光式センサ13の研磨終点検出が、先に検出した表皮渦電流センサ12の予測と大幅にずれた場合、センサ異常ということで、直ぐさま研磨を終了させるとともに、その後の研磨を停止することも可能となる。何が原因して双方の予測検出と終点検出がずれたかを、この後に調べればよい。このようにして、両センサ12,13を使用して、正確に研磨の終了時点を予測及び検出し、ウェーハ研磨装置1の研磨終了を検出することが可能となる。
なお、本実施例では、ウェーハ研磨装置1に搭載したセンサは、表皮渦電流センサ12と多波長型分光式センサ13の2基としたが、ウェーハ研磨装置1に搭載するセンサ数は3基以上としてもよい。搭載するセンサ数を3基以上とすることで、ウェーハ上の導電性膜の研磨終了時点の予測及び検出を、より一層タイムリーで精度よく行うことができる。
また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。