活性層となる表面部のSi層とSi基板との間にSiO2等の絶縁層を介在させたSOIウェーハは、ICの高耐圧化、高速化を図る上において注目されている。従来、そのSOIウェーハの表面部のSi層を研磨により薄くし、所定の厚さで研磨を終了させている。その際、そのSi層を所望の厚さにするために、研磨の終了時点を見極める研磨終点検出技術が非常に重要になっていた。研磨終点検出技術がない場合、毎回ウェーハを研磨部から取り出して測定し、残りの研磨時間を算出して処理するという非常に手間がかかる工程を必要とする。
そうした手間がかかる工程に対して、研磨の終了時点を検出する研磨終点検出技術として、従来からウェーハの研磨面に光を照射し、その反射光を解析することでウェーハの研磨状態をモニタすることが行われていた。その光を使用する終点検出方法の中でも、レーザ光を使用した方法や白色光を使用した方法など、多数の方法がある。
ただし、本願において取り扱うSOIウェーハにおける研磨終了時点の検出方法では、反射光の光路が多数存在する。(イ)Si層表面からの反射光、(ロ)Si層とSiO2(酸化膜)界面からの反射光、(ハ)SiO2(酸化膜)とその下のSi基板との界面で反射される反射光の3つの反射光である。また、Si層とSiO2界面で起こる反射と、SiO2とその下のSi基板界面で起こる反射とは、位相が反転する場合と反転しない場合とを含む。そうしたことから、このような3つの反射光で得られる波長に対する分光反射率は、図10に示すようになる。
SOI構造のウェーハにおいて、Siの屈折率は3.42と非常に高いのに対し、SiOX(酸化膜)の屈折率は1.45程度と低い。そのため、この分光反射率波形の特徴としては、SiOX膜起因の緩やかなうねりの膜厚の中に、短い周期のSi膜に起因した反射率曲線が得られる。特に、SOIウェーハでは、従来の金属膜や絶縁膜などの反射率波形と異なり、このような非常に密な周期波形のため、時として、スラリーがパッドとウェーハ間に介在することによる散乱で波形が乱されることになる。
波長に対して緩やかに変化する波形の場合、研磨中に膜が除去されていくときの波形の相対的な変化をモニタすることにより、状態を見誤ることは少ない。しかし、こうした短い周期の波が変化する場合では、緩やかな変化というより、短い周期の波の数を数え間違えないことが正確な膜厚を求める上で重要になる。特に、Si層の膜厚が5μm程度になると、波長に対する反射率の振幅変化が非常に短周期で変化する。また、研磨中に測定する場合、ウェーハから反射される反射光は研磨剤(スラリー)を介して集光される。このとき、スラリーで散乱される光も多くなるため、必ずしも安定して波長に対する分光反射率を求めることはできない。
こうした特徴を有する波形に対し、従来、以下の方法で終点検出を行うようにしたものが知られている。まず、例えば、次のような半導体層の膜厚測定方法が知られている。この従来技術は、研磨中のSOIウェーハに光を照射し、その反射光に基づいて活性層(Si層)の膜厚を測定する膜厚測定方法であって、評価する波長領域として、活性層での光の透過率が10%以上となるように解析波長領域を設定するとともに酸化膜(SiO2)の両面での反射光により、光の干渉が弱められた波長を除くように解析波長領域を設定する工程と、活性層に対して光を照射したことによる反射光を各波長別に分光する工程と、分光された各波長別の光の干渉情報を一括して取得する工程と、解析波長領域における干渉情報を用いて活性層の膜厚を算出する工程とを有している。このように、タイムラグが無いように干渉情報を一括して取得するとともに、光の干渉が弱められた波長、つまり「節」を除くように解析波長領域を設定しているため、正確な波数やピーク値に基づいて活性層の膜厚測定を行うことができるとしている(例えば、特許文献1参照)。
また、例えば、次のようなウェーハ研磨方法が知られている。この従来技術は、回転するプラテンの研磨パッドの張り付けられた面に、スラリーを滴下しつつ、ウェーハヘッドに固定したウェーハをウェーハヘッドにより回転させつつ押し付け研磨する方法において、プラテン及び研磨パッドの回転中心と周縁との間に設けた透明窓からウェーハの研磨面の光の反射状態を分光反射率測定装置で見て研磨状態を判定しつつ研磨するようにしている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、例えば、次のような表面状態測定方法及び測定装置が知られている。この従来技術は、別途に測定又は計算から得た研磨終点とする参照波形を予め記憶させ、その参照波形と研磨中のウェーハからリアルタイムに測定される反射率波形との一致度を相互相関を用いて計算し、その波形同士の一致度合いにより一致度合いが最大になるところで研磨終点を検出するようにしている(例えば、特許文献3参照)。
特許第3946470号公報。
特開平7−52032号公報。
特開2001−287159号公報。
特許文献1に記載の従来技術は、評価する波長領域として、Si活性層での光の透過率が10%以上となるように解析波長領域を設定するとともに、酸化膜面での反射光により、光の干渉が弱められた波長を除くように解析波長領域を設定している。しかしながら、この場合、解析波長領域が限定される。即ち、「節」の部分を除くように解析波長領域を限定しているため、必ずしも広い領域でくまなく解析しているとは言えない。
また、光の透過率が10%以上となるように解析波長領域を設定した場合、逆に光の透過率が10%未満の部分は解析波長領域として無視されることになる。光の透過率が10%未満の部分は、上記に示すように、光の干渉が弱められた波長、つまり「節」の部分であるとは限らない。例えば、研磨中であれば、スラリーなどがパッドとウェーハ間に介在するため、時として、一部の波長帯において十分な反射率を得ることができない場合もある。即ち、本来は「節」の位置ではなく、十分な反射率を確保できる波長領域であるが、たまたまスラリーが介在したため、一部の波長領域において反射率が低下した結果を得ることがある。よって、単純に光の透過率で、その解析波長領域を設定する場合では、特に研磨環境という特殊な状況下においては、必ずしも「節」を除きつつ、正確な波数を計数できるとも限らない。
さらに、酸化膜面での反射光により、光の干渉が弱められた波長を除くように解析波長領域を設定する工程において、その光の干渉が弱められる波長領域は、酸化膜に依存して変化する。ウェーハ内でも必ずしも酸化膜厚は一定とは限らず、ウェーハ内においても膜厚ばらつきは存在する。その場合、ウェーハ内のある場所において、光の干渉が弱められ「節」の領域であったが、ウェーハ内の別の場所においては、光の干渉が強められ「腹」の領域になることもあり得る。よって、干渉波形を基に、光の干渉が弱められた部分を精度よく除去する上においても、スラリーの介在や、ウェーハ内の酸化膜厚の分布などによって、その時と場所によって、波形はまちまちとなり、一定の状態を形成することは不可能である。
特許文献2に記載の従来技術においては、研磨中ウェーハ表面に光を照射し、そのウェーハ表面から反射される光を分光して膜厚をモニタするのかも知れないが、本願のように少しの波長変化で短周期で変動する分光反射率を扱うものではない。また、分光した結果を重ね合わせた判断としている。
特許文献3に記載の従来技術においては、基板面から反射する信号光から得られる信号波形と、終点付近の参照波形の一致度に基づいて、基板の表面状態を測定する方法を示している。その一致度は、信号波形と参照波形の相互相関を用いて計算されている。しかし、こうした方式において、本願で扱うSi/SiO2/Siの膜構成において、参照波形との一致度から研磨終了点を判別する場合、問題が生じる。
本願で扱う膜構成では、酸化膜(SiO2)の上側の面と下側の面で干渉して形成される振幅のうねりの中に、Si層の表面とその下側の面との間で干渉して形成される小さい周期の反射率変化が存在する。例えば、本願の波形において、先の公知例に示す方法で行う場合、小さい周期が少しずれ、参照波形の波数と実際の反射光による干渉の波数が多少異なっていたとしても、計算される相関係数は、0.7等の高い係数を得る場合がある。こうした場合、必ずしも、一致していないにもかかわらず、あたかも一致したような係数を出す場合があるからである。
相関係数で求める場合、緩やかに変化する波形同士であれば、高い相関係数となり、終点検出精度は向上すると考えれるが、本願で取り扱うような、非常に短周期の周期波形を扱う場合においては、相関係数で判断することは不可能である。一方、相関係数で終点を判断する場合において、特にCMPでは、ウェーハ表面と研磨パッドの間に研磨のためのスラリーが介在する。そのため、そのスラリーによって光が散乱し、反射率波形に外乱を入れることがたびたびある。特にその外乱によって、周期的な波形の一部の山や谷が認識されないことも時として存在する。こうした場合、1波長分、2波長分など実際の膜厚に対して、大きく間違えて算出してしまうことがあり実用上非常に大きい問題を抱える。
また、終了時点の相関係数を設定し、その相関係数になった時点で研磨終了であると規定しても、必ずしもその相関係数になったときが研磨終了時点かどうか不明である。規定の相関係数を得たとしても、その後研磨を行うとさらに相関係数が向上する場合もある。逆に終了時点に到達したにもかかわらず、その規定の相関係数に到達せず、結果的に研磨の進行中、規定の相関係数を得ることができなかったという場合も存在する。特にスラリーが介在する研磨工程の場合、その光量もその時々で変化するため、たとえ、その膜厚が、波形が完全に一致する状態の膜厚であったとしても、相関係数は必ずしも1やその付近となるとは限らない。その時々によって、相関係数はいくらでも変化する。結果的に、相関係数で判断する方法では、SOI基板の研磨終点をモニタする上においては、使用できるものではない。
さらに、本願で示すSOI基板の分光波形のように、非常に密な周期波形を持つ波形の場合、波数の周期成分で整理されるが、研磨中スラリーの影響によって波形の強度は随時変化するため、波数周期照合点においてリファレンス周期波形とリアルタイムに測定した周期波形の完全なる照合は難しい。
所定の照合状態を、一定の範囲として設定していたとしても、実際のその所定の照合状態となるかどうかは、そのときにスラリーによる散乱などの程度により信号強度が大きく変化するため、所定量として設定することが不可能であるからである。このようなことから、フーリエ変換後の波数の周期成分が、波数周期照合点で、どの程度照合されるかを、予め設定することは難しく、その時々によって、スラリーの介入や、ウィンドウの曇りなど、研磨という特有の条件下のため、所定の照合状態を設定することはできない。
従来から、周期的な波形の山位置や谷位置の認識や、スラリーの介在によって、山谷数の数え間違いをすることが非常にクリティカルな問題となり、こうした問題を起こすことのないロバストな研磨状態評価システムが必要とされていた。
そこで、緩やかに変化する波形と密な周期波形とが組み合わさった複雑な反射率波形を有するSOIウェーハの終点検出方法において、
スラリーの介在によって、多少の周期波形の乱れによっても、波形の周期成分を見誤ることなく、
短い周期性の波形が長周期の波形と合わさって、その周期性が混在する場合においても正確にずれることなく、周期性を抽出でき、
リアルタイムに測定した波数周期とリファレンス波数周期とを照合する際、スラリーやウィンドウの曇りなどの要因で、互いの信号強度が大きく異なり、所定の照合度合いが設定できない状況であっても正確に照合度合いを判定し、
研磨終了時点での感度が弱い状態であっても、研磨終了時点の予測を精度よく行うことができ、
所定の研磨終了時点で、正確に研磨を終了することができる方法、装置を提供するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
本発明は上記目的を達成すために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、Si/SiO2/SiのSOI構造を有するウェーハ表面を研磨する研磨装置において、研磨中リアルタイムにウェーハ表層の膜厚をモニタし、研磨終了時点を予測及び検出する方法であって、
前記研磨装置におけるパッド内に形成されたウィンドウを介して前記ウェーハ表面に光を照射するための光照射手段と
前記ウェーハ表面から反射され、前記分光手段で分光された結果を解析するステップを有するとともに、
該解析ステップは、研磨時点の分光波形をリアルタイムにフーリエ変換を行い、
酸化膜SiO 2 の周期成分とSi層の周期成分とに分かれたスペクトルを得て、そのうち、
研磨除去されるSi層の膜厚に対応するリアルタイムの波数周期を抽出する第1のステップと、
前記研磨時点のリアルタイムの波数周期と研磨途中の所定膜厚において予め取得したリファレンス波数周期との二つを照合判断する時点を前記研磨終了時点より前に設定した前記リアルタイムの波数周期と前記リファレンス波数周期との二つを照合状態の変化を逐次モニタする第2のステップと、
前記照合状態が極大となった時点を経た直後に該極大となった時点を割り出す第3のステップとを有し、
前記照合状態が極大となった時点から研磨終了までの予め設定された猶予時間を基に残りの時間を研磨して研磨終了する
研磨終了時点の検出方法を提供する。
この構成によれば、例えば、前記特許文献1に記載の従来技術では、「節」を除くような解析波長領域を設定する工程を設けている。これに対し、本発明では、研磨中、全波数領域でリアルタイムに得た分光波形に対しフーリエ変換を行うことで、短い周期波形と長い周期波形が混在した波形状態であっても、その周期を正確に分けて解析することが可能となる。特に、Si層の膜厚に対応する短周期の波形とSiO2膜厚に対応する長周期の波形は、明らかに波形の周期が異なるため、解析波長領域を設定しなくてもよい。全波数領域において、波数周期成分をフーリエ変換にて解析し、その中からSi層の膜厚に対応した波数周期を求めることが可能となる。
また、前記特許文献3に記載の従来技術では、参照波形と信号波形の相互相関から研磨終了点の測定を行っている。これに対し、本発明におけるようなSOIウェーハの研磨終了時点検出の場合、波形の周期が非常に短周期であるため、相互相関を取得した場合でも、周期が一部合致すると、相関係数が大きくなる場合があり、間違って終点を検出してしまうことがある。
それに対して、本発明は、まず分光波形にリアルタイムにフーリエ変換を施し波数周期成分によって離散化して整理する。その離散化した周期成分から、研磨除去されるSi層の膜厚に対応した波数周期成分のみを抽出し、その波数周期成分を、予め設定した波数周期照合点におけるSi層の膜厚に対応したフーリエ変換したリファレンス波数周期成分と照合する。波数周期成分同士を照合するため、短い波数周期の波形であっても、その波数周期を読み取り、照合することができる。また、照合過程において、リファレンスの波数周期に対し、リアルタイムに測定する波数周期の信号強度が相対的に変化し、所定の照合度合いの設定では、照合状態が十分なのか、十分でないのか、判定不能となる問題がある。
それに対し、本発明では、まず、研磨終了時点より前に波数周期の照合時点を設ける。その照合時点で照合しているかどうかは随時照合状態をモニタした上で、その照合度合いが増加から下降へ転じて、照合度合いの極大点が現れるのを見極めて照合状態が極大となった時点を判断する。その結果、リアルタイムに測定した分光反射率の反射強度が小さい場合であっても、その状態の中で極大点が現れるかを最大照合度合いを得た後もモニタしている。このため、スラリーやウィンドウの曇りなどの影響を受けることなく、非常に精度よく、どの時点で波形周期が照合したかを精度よく確認することができる。
特に、研磨というスラリーが間に介在する特殊な環境において、こうした照合点を確実に見極めて、その後、所定の残りの研磨時間だけ研磨することにより、所定の研磨終了時点で正確に研磨を終了させることが可能となる。
請求項1記載の研磨終了時点の検出方法の発明は、全波数領域でリアルタイムに得た分光波形に対しフーリエ変換を行うことにより、Si層の膜厚に対応する短周期の波形とSiO2膜厚に対応する長周期の波形とが混在し、またスラリーの介在等によって周期波形に多少の乱れがあっても、両波形の周期は明らかに異なることからSi層の膜厚に対応した波形の周期成分を見誤ることなく正確に抽出することができる。したがって、解析波長領域の設定が不要となる。さらに研磨終了時点より前にリアルタイムの波数周期とリファレンス波数周期を照合判断する時点を設定して随時照合状態をモニタし、その照合度合いが増加から下降へ転じて照合度合いの極大点が現れるのを見極めて照合状態が極大となった時点を割り出すことで、リアルタイムに測定した分光反射率の反射強度が小さい場合であっても、スラリーやウィンドウの曇りなどの影響を受けることなく精度よく波数周期の照合点を確認することができる。そして、この波数周期の照合点から所定の残り時間を研磨することにより、所定の研磨終了時点で正確に研磨を終了させることができるという利点がある。
以下、本発明の好適な一実施例を図面に従って詳述する。図1は本実施例に係る研磨終了時点の検出方法を実行する研磨終了時点検出装置を備えた研磨装置(CMP装置)のブロック図である。
まず、研磨終了時点検出装置を備えた研磨装置の構成から説明する。図1において、研磨装置1は、図示しないモータで駆動されて水平に回転するプラテン2と、該プラテン2の上面に貼着されたパッド3と、ウェーハ(SOIウェーハ)Wを保持してパッド3に所定の圧力で押し付けるウェーハヘッド4と、パッド3の上面にスラリーを供給するスラリー供給ノズル5と、装置全体の駆動を制御する制御部6とを備えている。
プラテン2は、円盤状に形成されており、所定の位置に観測孔7が貫通して形成されている。該観測孔7に対応するパッド3の箇所には、ポリウレタンピース等の透明材料からなるウィンドウ8が嵌め込まれている。ウェーハヘッド4は、プラテン2の回転中心から偏心した位置でウェーハWをパッド3に押圧するとともに、図示しないモータで駆動されて水平に回転する。また、ウェーハヘッド4は、図示しない昇降手段で駆動されてパッド3に対して垂直に昇降する。
研磨加工の際は、ウェーハヘッド4で保持したウェーハWをパッド3に所定の圧力で押し付け、該パッド3とウェーハWとをそれぞれ回転させながら、スラリー供給ノズル5からパッド3上にスラリーを供給し、ウェーハW上の所定の膜である表層のSi層を研磨する。
研磨終了時点検出装置9には、主として、照射・受光光学系10、2分岐ライトガイド11、白色光を発生するハロゲンランプ等を内蔵した光照射手段としての光源ユニット12、分光手段としての分光器13及びコンピュータ14が備えられている。前記照射・受光光学系10は、レンズ鏡筒内に図示しない集光レンズを内蔵しており、図示しないブラケットで支持されて観測孔7の下方位置に設置されている。
前記2分岐ライトガイド11は、多数本の光ファイバーを結束して構成されたもので、その結束端は照射・受光光学系10に接続されている。該2分岐ライトガイド11は、途中部分で照射側ライトガイド11Aと受光側ライトガイド11Bに分岐されており、照射側ライトガイド11Aは光源ユニット12に接続され、受光側ライトガイド11Bは分光器13に接続されている。
光源ユニット12から出射した光が、照射側ライトガイド11Aによって照射・受光光学系10へ導かれ、該照射・受光光学系10で集光されたのち、プラテン2に設けられたウィンドウ8を通してパッド3上のウェーハWに照射される。照射された光はウェーハW上の所定の膜の研磨面で反射し、その反射光が照射・受光光学系10で集光されて2分岐ライトガイド11へと導かれ、さらに受光側ライトガイド11Bを介して分光器13へ導かれる。このように、光源ユニット12からの光及びウェーハWにおける所定の膜からの反射光が、ウィンドウ8を通過するときに反射光データが取得されるので、前記制御部6によりプラテン2の回転と研磨終了時点検出装置9との間で同期がとられる。
分光器13は、受光側ライトガイド11Bによって導かれた反射光を各波長ごとの光に分光する。そして、その分光した光を各波長ごとに光強度に応じた電気信号に変換し、コンピュータ14に出力する。コンピュータ14は、所定の研磨終点検出アルゴリズムにしたがって分光器13からの光強度に応じた電気信号を演算処理し、所定の膜であるSi層の研磨終了時点を検出する。そして、該研磨終了時点を検出した時点で研磨装置1の制御部6に研磨終点信号を出力し、研磨工程を終了させる。
次に、図2、図3、図4、図5(a)、(b)、(c)、図6(a)、(b)、及び図7を用いて上述のように構成された研磨終了時点検出装置9による研磨終了時点検出方法を説明する。図2は実測の波長に対する分光反射率分布例を示す図、図3は分光反射率分布を波数に対してフーリエ変換することにより区分けされた波数周期成分波形例を示す図、図4は研磨時間に対するSi層の波数周期成分波形とリファレンス波数周期波形との照合面積の変化を示す図、図5(a)、(b)、(c)は研磨時間進行に伴う処理例を示す図であり、(a)は研磨時間毎の各処理例を示し、(b)は研磨時間進行に伴うSi層の膜厚変化例を示し、(c)は研磨時間進行に伴う面積照合度の変化例を示す図、図6(a)、(b)は実研磨中の波数周期成分の移動速度から照合予測時間を見積もる処理を説明するための図であり、(a)はフーリエ変換後のSi層の周期成分が研磨の進行とともに移動する様子を示し、(b)は研磨の進行に伴うSi層の膜厚減少の過程を示す図、図7は照合予測時間と最大照合時点から波数周期の照合点を決定するアルゴリズムを説明するためのフローチャートである。
研磨装置1によるSOIウェーハW表層部のSi層の研磨時に、該SOIウェーハWからの反射光が照射・受光光学系10を介して分光器13へ導かれ、各波長ごとの反射光に分光される。そして、分光された反射光が、各波長ごとに光強度に応じた電気信号に変換されてコンピュータ14に入力される。コンピュータ14では、入力された反射光が、まず各波長ごとの反射率(強度)に換算され、図2に示すような波長に対する反射率の分光反射率分布を得る。その波長による分光反射率分布を波長の逆数である波数で整理して、波数に対してフーリエ変換する。図2の波長であれば、下地の酸化膜(SiO2)に起因した長波長の周期成分と、その上のSi層に起因した短波長の周期成分に分けることができる。ここで、それぞれの周期は概算ではあるが、λ/2n(λ:波長、n:屈折率)で求めることができる。
解析波長領域として、例えば、波長が1μmの赤外光を使用した場合、Si層は屈折率が3.42であるため、膜厚が146nm間隔で干渉により明暗が変化するのに対し、Si層の下のSiOXでは、屈折率が1.46であるため、342nm間隔で干渉により明暗が変化する。そのため、明らかにその周期が異なることが分かる。
解析波長領域として、例えば、波長が1.3μmの赤外光では、Si層は屈折率が3.42であるため、膜厚が190nm間隔で干渉により明暗が変化するのに対し、Si層の下のSiOXでは、屈折率が1.46であるため、445nm間隔で干渉により明暗が変化する。そのため、明らかにその周期が異なることが分かる。このように、様々な波長領域において、Si層に起因した周期成分と、SiOX膜に起因した周期成分は明らかに分けることができ、その中でもSi層に起因した周期成分を求めることで、その膜厚も求めることが可能となる。
ここで、膜厚を求める場合は、例えば、少なくとも2つの波長の干渉情報があれば、次のようにして膜厚を求めることが可能である。例えば、λ1の波長と、その次に波長が長いλ2で光の強度が最大になったとする。光路差は膜厚dの2倍の2dとすると、次式が成り立つ。
また、n
1、n
2共に殆ど変化がないとみなし、n
1、n
2=nとすると、
となり、波長周期Δλが分かれば、膜厚(残膜量)dも対応関係から求めることができる。
前記図2の分光反射率分布を波数に対してフーリエ変換することにより区分けされた各周期成分を波数で示した場合、図3に示すように、波数の小さい酸化膜(SiO2)の周期成分h1と波数の大きいSi層の周期成分h2とに分かれたフーリエ変換後のスペクトルを得る。
フーリエ変換して得られる二つの波数の周期成分うち、Si層に起因した部分の波数の周期成分h2のみを抽出する。Si/SiO2/Siの膜構成を有するSOIウェーハ表面の場合、研磨が進行すると、Si層の膜厚が減少していく。この場合、高波数側のSi層の波数周期が徐々に減少していくことになる。そこで、研磨終了時点よりも少し前のSi層の膜厚に対応したリファレンスの波数周期の照合点を設けておく。
Si層の膜厚が減少し、リアルタイムに測定されるフーリエ変換されたSi層に起因した部分の波数周期が、予め準備したリファレンスの波数周期と照合される状態を評価する。照合の方法としては、双方の波数周期波形における互いの照合部分の面積割合とする。即ち、互いの照合部分の面積が、リアルタイム波数周期波形の例えば80%以上に達した場合を波数周期の照合点とする。また、波数周期のメジアン値(中央値)を算出し、そのメジアン値が照合される時点で評価してもよい。
図4には、Si層の波数周期成分波形とリファレンスの波数周期波形との双方の波形が照合される照合面積の変化を示す。照合面積が最も大きくなった時点が照合点と規定され、この基準を基に、波数周期照合点の膜厚を通過したと判断する。なお、波数周期波形の照合面積が極大か、言い換えれば最も大きくなったか否かを判別するためには、研磨時点が波数周期照合点を超えなければならない。それは、照合波形が上昇途中で、最大の照合時点と判断しても、照合波形が下降しない限り、その時点が最大点、もしくは極大点かどうかは原理的に判別できないからである。
よって、最大の照合時点を、研磨終了時点と同じくすることは、この場合原理的に不可能である。なぜなら、最大の照合時点を過ぎて初めてどこが最大であったかを検出できるため、最大照合時点を検出した頃には、研磨終了時点を完全に過ぎており、過研磨を行ったことになるからである。
また、予め最大の照合面積や照合度合いを閾値として決めていても、それは目安でしかない。というのも、反射光量は、光源ユニット12の寿命とともに変動するし、またスラリーの介在などによっても光量が変化し、さらには、ウィンドウ8の曇りなどによっても光量が変化するからである。例えば、光量が大きい場合、実質的に照合度合いが低い時点であっても、それは照合されていると判断し、照合時点として誤動作してしまうことがあるからである。逆に光量が小さい場合、実質的に照合されている時点であっても、照合されていないとみなし、そのまま検出しないこともある。
こうした実際に観察される光量の増減は、その時々の状況によって、変動する要因である。こうした増減を規格化して補正する方法もあるが、徐々に光量が低下していく場合や、光量が増大していく場合など、一概に安定した補正方法はない。よって、そのときの状態に応じて精度よく検出することが望まれる。本実施例による方式、即ち、最大の照合時点を研磨終了時点よりも前に設定し、照合度合いの最大値を確認した後に研磨終了時点を割り出す方式は、そのときの状態に応じて、連続的に取得されたデータから最大点を割り出すため、先に述べたような誤動作をすることはない。よって、安定して最大点を検出し、研磨終了時点を精度よく割り出すことが可能となる。
次に、照合波形が下降に転じた際、それが単にノイズによって下降に転じたものか、それとも照合度合いが低下して下降に転じたものかを判断する問題がある。この問題について、ノイズではなく、明らかに下降に転じたかどうかを確認する際に、少し時間を設けて経過を観察した方がよい。好ましくは、下降に転じたと判定して3秒以上、取得データ点数としては3点以上、さらに好ましくは下降に転じたと判定して5秒以上、取得データ点数としては5点以上取得して判断することが望ましい。
それまで上昇していた照合波形が、連続して下降へ転じた場合、それは単にノイズとして変化したと言うよりは、実際の照合度合いが低下して変化したとみなすのが妥当である。最大照合時点の検出後に研磨終了時点を検出する場合、該研磨終了時点は次のように検出する。これを、図5(a)、(b)、(c)の研磨時間進行に伴う処理例を用いて説明する。
図5(a)において、例えば、研磨後約95secの時点で研磨終了見込みの場合を想定する。この場合、リファレンスとなる波数周期照合時点としては、研磨終了時点E.Pの15sec前である80sec付近に設定しておく。即ち、波数周期照合して15sec程度研磨すれば研磨終了時点E.Pになるように設定する。なお、波数周期照合時点としては、研磨時間で設定せずとも、図5(b)に示すように、t1=80sec付近に通過するであろう膜厚値で設定してもよいが、ここでは便宜上研磨経過時間で設定する。研磨が進行し、研磨時間80sec時点に差し掛かる際に、Si層の膜厚に起因した波数周期の照合面積が増大し始める。図5(c)に示すように、例えば、研磨時間79sec時点で波数周期の照合面積が最大になったとし、研磨時間79sec時点で最大であることを82sec経過時点で検出したとする。その場合、照合時点79secに研磨終了時点までの+15secを加えた94secが研磨終了時点E.Pになる。よって、現時点からは、94secから82secを差し引いた残り12sec研磨すれば研磨終了時点E.Pに至ることを検出することができる。
次いで、図6の(a)、(b)を用いて、リアルタイムに測定されるフーリエ変換後の波数周期の移動速度から、予め設定したリファレンスの波数周期の照合時点に到達する時間を予測する方法を説明する。図6(a)、(b)に示すように、リファレンスの波数周期照合点は、リファレンスの波数周期h0として、予め研磨終了時点E.Pよりも前に設定している。研磨進行とともに、実研磨によるSi層に対応した波数周期h2が、図6(a)の左側へ移動していくが、その速度v0(nm/min)を換算することで、リファレンスの波数周期h0と照合する時点を見積もる。これを照合予測時間t1とする。その照合予測時間t1と、リアルタイム波数周期成分波形とリファレンス波数周期波形の照合が最大となる最大照合時点t2との二つから、双方時間の誤差(t1−t2)を算出する。その誤差が所定の範囲内であれば、正常に検知していると判断して波数周期の照合点を決定し、研磨終了時点E.Pで研磨を止めてもよい。
前記図3乃至図5(a)、(b)、(c)を用いて説明したリアルタイム波数周期とリファレンス波数周期の照合面積が最大となる最大照合時点t2を求める各処理と、図6(a)、(b)を用いて説明した実研磨中の波数周期成分の移動速度から照合予測時間t1を見積もる処理とは並行して行われ、上記のように、この照合予測時間t1と最大照合時点t2の二つから研磨終了時点E.P前の波数周期の照合点が決定される。この一連の処理のアルゴリズムを図7のフローチャートを用いて説明する。
研磨スタート後、予め波数周期照合時点が設定され、この波数周期照合時点においてフーリエ変換したリファレンス波数周期h0の読み出しを行う(ステップS1、図5(a))。リアルタイムに得た分光反射率波形を波数に対してフーリエ変換する(ステップS2、図3)。Si層起因の波数周期成分h2を抽出する(ステップS3)。予め設定した波数周期照合時点において前記ステップS1のリファレンス波数周期波形h0と前記ステップS3のSi層起因の波数周期成分波形h2との照合面積を算出する(ステップS4、図4)。その照合面積が最大となる最大照合時点t2を求める(ステップS5)。これらのステップS1〜S5の各処理と並行して次のステップS6〜S9を実行する。波長に対する分光反射率波形を取得する(ステップS6)。前記ステップS2と同様にリアルタイムに得た分光反射率波形を波数に対してフーリエ変換する(ステップS7)。前記ステップS3と同様にSi層起因の波数周期成分h2を抽出する(ステップS8)。実研磨中の波数周期成分h2の移動速度から照合予測時間t1を見積もる(ステップS9)。
次いで、該ステップS9で見積もった照合予測時間t1と前記ステップS5で求めた最大照合時点t2との二つから、双方時間の誤差(t1−t2)を算出し、その誤差が所定の範囲t0内であるか否かを判断する(ステップS10)。その誤差が所定の範囲t0外であるときは(ステップS10のNo)処理を一時停止し(ステップS11)、所定の範囲t0内のときは(ステップS10のYes)、正常に検知していると判断して波数周期の照合点を決定し、その波数周期の照合点から残り研磨時間を算出する(ステップS12)。該算出した残り研磨時間だけ研磨を実行し研磨終了時点E.Pで研磨を終了する(ステップS13)。
こうした方法で研磨終了時点E.Pを検出する場合、リアルタイム波数周期成分の移動速度から見積もった照合予測時間t1と、リアルタイム波数周期成分波形とリファレンス波数周期波形との照合度合いから求めた実最大照合時点t2との二つで、波数周期の照合点に誤差がないことを確認するため、研磨特有の外乱(スラリーによる散乱やウィンドウの曇りなど)により、非常に感度が悪い場合においても、誤動作することなく正確に研磨終了時点E.Pを検出することが可能となる。
なお、前記リアルタイム波数周期成分の移動速度から見積もった照合予測時間t1は、外乱の影響を排除しながら、精度よく予測する必要がある。例えば、図6(b)等に示すように、リアルタイム波数周期は外乱を多く含む。しかし、これは、次の手順によって処理することで正確性は増す。これを図8及び図9を用いて説明する。図8は外乱により異常波数周期点が検出された場合の処理を含む照合予測時間t1を予測するアルゴリズムを説明するためのフローチャート、図9は外乱により異常波数周期点が検出された場合の処理を説明するための図である。
図8のフローチャートにおいて、研磨スタート後、リアルタイムに得た分光反射率波形を波数に対してフーリエ変換し(ステップS21)、Si層の膜厚に起因した波数周期を抽出する(ステップS22)。その抽出した波数周期から現在のSi層の波数周期h2を算出する(ステップS23)。この算出したSi層の現在波数周期h2が果たして正確であるか、そうでないかは、それ以前に測定した複数の波数周期の研磨時間に対する波数周期変化から求めればよい。例えば、前に測定した結果の変化を最小二乗法で計算し、その研磨レートを求める。その研磨レートに対して、現在あるべき予測される波数周期を換算する。この予測される波数周期に対して、ある程度マージンを持たせて、算出したSi層の現在波数周期h2が、どの範囲になければならないかの許容範囲D(図9参照)を設定する(ステップS24)。
算出した現在波数周期が、この許容範囲Dから、大きく外れた場合、それはスラリーなどの散乱によって十分な分光反射率が得られなかったと判断し(ステップS25のNo)、その波数周期点を異常波数周期点B(図9参照)として無効とみなし、照合予測時間t1を求めるための波数周期ポイントとみなさない(ステップS26)。これと逆に、算出したSi層の現在波数周期h2が、それ以前の複数の波数周期の測定結果から求められる許容波数周期範囲D内にあるのであれば(ステップS25のYes)、その算出した波数周期点(例えば図9中のA点)は有効とみなし(ステップS27)、その波数周期点を含む研磨中にモニタした全ての波数周期点から照合予測時間t1を見積もる。このようにして、一つの測定結果だけでなく、累積した波数周期点の測定結果を基に、一つ一つの測定結果の信頼性を判断し、照合予測時間t1を精度よく予測して(ステップS28)、処理を終了する。
また、同じ研磨プロセス内の前の測定結果を、外挿して予測する方法もあるが、別の方法としては、前もって同じ研磨プロセスで研磨レートと外乱を含まない理想の波形変化の関係を求めておき、その結果に対して許容範囲を設定してもよい。いずれにしても、研磨による膜厚除去率、即ち研磨レートの変化は、一時期に急激に変化するという性質ではなく、パッドの経時変化やドレッシングによる経時変化など、通常緩やかに変化していくものである。そうした特性を利用して、先に実施した結果を基に急激に変化しないことを前提に設定することによって、測定結果を誤って解釈することはなくなる。
以上のように、リアルタイムで波長に対するSi層の反射率強度の信号をフーリエ変換することによって、研磨対象となるSi層膜厚に帰属した波数周期成分を精度よく抽出し、解析することができる。
上述したように、本実施例に係る研磨終点検出方法及び研磨装置においては、全波数領域でリアルタイムに得た分光波形に対しフーリエ変換を行うことにより、短い周期性の波形と長周期性の波形が混在し、またスラリーの介在等によって周期波形に多少の乱れがあっても、Si層の膜厚に対応した波数周期成分h2を見誤ることなく正確に抽出することができる。したがって、解析波長領域の設定が不要となる。
研磨終了時点より前にリアルタイムの波数周期とリファレンス波数周期を照合判断する時点を設定して随時照合状態をモニタすることで、リアルタイムに測定した分光反射率の反射強度が小さい場合であっても、スラリーやウィンドウの曇りなどの影響を受けることなく精度よく最大照合時点t2を確認することができる。
精度よく確認された最大照合時点t2から所定の残り時間を研磨することにより、所定の研磨終了時点E.Pで正確に研磨を終了させることができる。
リアルタイムな状態から見積もられる照合予測時間t1と、リアルタイム波数周期とリファレンス波数周期との実際の照合から検知した最大照合時点t2との二つによって波数周期の照合点をより確実に検出することができる。したがって一層精度よく所定の研磨終了時点E.Pで研磨を終了させることができる。
リアルタイム波数周期とリファレンス波数周期とを照合する際、互いの照合部分の面積が、リアルタイム波数周期波形の所定の設定値、例えば80%以上に達した場合を波数周期の照合点とすることで、スラリーやウィンドウの曇りなどの要因で、互いの信号強度が大きく異なるような状況であっても正確に照合度合いを判定することができる。
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。