JP5360660B2 - 生体親和性インプラントの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、基材の表面に酸化チタン皮膜を有する生体親和性インプラントの製造方法に関する。
近年、金属製のインプラントが、人工骨や人工歯根など、整形外科や歯科の領域において広く使用されるようになってきている。例えば、変形性関節症や関節リウマチにより関節の機能を失った場合に、人工関節への置換によりその機能を再獲得する治療が一般的となっている。
人工関節の骨への固定方法としては、現在主に二種類の方法が用いられている。一つは、骨セメントと呼ばれる接着剤を骨と人工関節の隙間に充填し、固定する手法である。骨セメントは術中に硬化するために、術後早期からのリハビリの開始が可能になる。しかしながら、骨セメントの充填時に骨髄内へ過度の圧迫を生じたためにショック症状や血圧低下を来す危険性が報告されているために、その利用は年々減少傾向を示している。もう一つの方法は、セメントレス固定と呼ばれている骨セメントを用いない固定方法であり、例えば人工関節の表面に作られた多孔質部への周辺骨の侵入による機械的なアンカー効果で固定するような方法である。この方法は、骨セメントを用いることによる危険性を回避できることから症例が急増している。しかしながら、人工関節が骨に固定されるのに要する時間は、患者の骨の成長速度に依存するために、患者に長期間の安静やリハビリテーションが求められる。
上記セメントレス固定を採用した際の安静期間やリハビリテーション期間を短縮するために、人工関節に骨伝導性を付与する方法がこれまでにいくつか検討されている。その一つは、骨類似成分であるハイドロキシアパタイトを高温で溶射し、人工関節の表面に骨伝導性を付与する手法であり、既に実用化されている。しかしながら、この方法には、溶射のための大がかりな設備が必要なこと、溶射されるアパタイトが高温にさらされるために変性するおそれがあること、形成されたアパタイト層が剥離するおそれがある等の問題点があるとされている。
特許文献1には、チタンを含有する金属基材と、該金属基材の表面に設けられた金属酸化物層とを備え、該金属酸化物層の少なくとも表面にTiOHからなる化学種を有する骨伝導性生体材料が記載されている。このような化学種を表面に有する骨伝導性生体材料は、チタンを含有する金属基材を1000℃以下の温度で熱処理して得られたチタン酸化物層を温度100℃以上、圧力0.1MPa以上の条件で水熱処理することで形成される。このとき、熱処理によって形成される金属酸化物層の好適な厚さは3〜10μm程度である。そして、このような構成とすることによって骨伝導性の良好な生体材料が提供される。例えば、特許文献1の実施例1においては、Ti−29Nb−13Ta−4.6Zr合金に対して、800℃で1時間熱処理をして約5μmの厚さの金属酸化物層を形成し、それをリン酸緩衝液に浸漬して120℃、0.2MPaの条件で水熱処理した試料が、擬似体液中でアパタイト結晶を形成したことが記載されている。しかしながら、800℃もの高温で長時間加熱したのでは、金属基材の強度の低下が避けられない。また、酸化チタン皮膜が厚すぎると、皮膜の剥離も生じやすくなる。一方、上記水熱処理を行わずに金属酸化物層を形成しただけではアパタイト結晶が形成されないことが、特許文献1の比較例2に記載されている。
非特許文献1には、空気中で400℃、1時間熱処理することによって表面に酸化物層が形成されたチタン金属の平板試料を擬似体液に浸漬してアパタイトの形成状態を観察した結果が示されている。このとき、擬似体液を入れた容器はその底面が上に凸の曲面を有するポリスチレン製の容器であり、その上に試料の平板が載置される形で平板試料が浸漬された。すると、試料の上面にはアパタイトが形成せず、下面(容器の底に接触する側)にのみアパタイトの形成が認められた。試料の下面は容器の曲面に接しているのでその隙間は場所によって異なるが、概ね100μm程度の隙間を有するところにおいてアパタイトの形成が容易であった。すなわち、アパタイトの形成が、限られた環境においてのみ可能であることが示されている。
金属などの基材に、アルコキシチタンなどの有機チタン化合物の溶液を塗布し、熱処理する、いわゆるゾル−ゲル法によって酸化チタン皮膜を形成することができる(例えば非特許文献2参照)。この場合に形成される酸化チタン皮膜の表面には、擬似体液中でヒドロキシアパタイトが形成されることが知られている。しかしながら、基材によってはこの方法によってヒドロキシアパタイトが形成されない場合があった。例えば、基材がステンレス鋼、アルミナあるいはソーダライムガラスである場合には、ゾル−ゲル法で得られた酸化チタン皮膜の表面にヒドロキシアパタイトが形成されないことが知られている(非特許文献3)。これは、これらの基材から酸化チタン皮膜への拡散成分がヒドロキシアパタイトの形成を阻害するためと考えられている。例えば、ステンレス鋼は腐食に強く、人体に対して比較的安全で、しかも加工が容易なので、骨伝導性の良い表面処理が強く望まれている。
非特許文献4には、酸化チタンの粉末を圧縮成形した成形品に水銀ランプの光を照射してから、1.5倍のイオン濃度の擬似体液に浸漬した結果が示されている。その結果、光照射した面には、ヒドロキシアパタイトが形成され、光照射しなかった面にはヒドロキシアパタイトが形成されなかったことが報告されている。しかしながら、その実施例によれば、1.5倍のイオン濃度の擬似体液を用いても、5日間ではヒドロキシアパタイトは形成されず、10日間でようやくヒドロキシアパタイトが形成されるものであって、そのアパタイト形成能は必ずしも十分とはいえないものであった。
非特許文献5には、アナターゼ相を80%、ルチル相を20%含む30nmの酸化チタン粉末を、チタン合金基材上にプラズマスプレーコーティングし、その表面に紫外線照射してから、擬似体液に浸漬した結果が示されている。それによれば、紫外線照射しなかった場合にはアパタイトが形成されなかったけれども、紫外線照射することによってアパタイトが形成されることが記載されている。しかしながら、125Wの高圧水銀ランプで24時間の紫外線照射をしてもアパタイトの形成には4週間もの長時間が必要であり、そのアパタイト形成能は必ずしも十分とはいえないものであった。また、プラズマスプレーコーティングは、大掛かりな設備が必要であるし、立体的な成形品に対して均一な膜厚でコーティングするのが困難である。
非特許文献6には、チタン金属基材の表面をマイクロ・アーク酸化してから、擬似体液中で紫外線照射することによって、その表面にアパタイトを形成することが記載されている。ここで、前記マイクロ−アーク酸化は、チタン金属を陽極として電解液に浸漬し、電圧を印加することによってチタン金属表面を酸化して酸化チタン皮膜を形成する方法である。擬似体液中において、アナターゼ結晶を含有する酸化チタン皮膜を1000Wの水銀ランプで2時間紫外線照射することによってアパタイトが形成されたことが記載されている。しかしながら、擬似体液内で紫外線照射してアパタイトを形成しているので、生体外で予めアパタイト形成させたものを移植するような使用法に限定される。すなわち、体内環境下でのアパタイトの析出に伴う骨との融合を想定していない。また、多孔質の酸化チタン皮膜が形成されるので、成形後の基材の表面形態が変化するし、インプラントの外観が損なわれ、金属光沢も失われる。
特許文献2には、チタン又はチタン合金からなるインプラントの表面を水酸化してから紫外線照射することによって、骨一体化特性を改良することが記載されている。ここで、インプラント表面の水酸化は、チタン又はチタン合金からなるインプラントを酸でエッチングすることによって得ており、酸化チタン皮膜が積極的に形成されているわけではない。また、紫外線は、有機不純物を分解除去するために照射されている。
特開2003−235954号公報 特表2005−505352号公報 Xiao-Xiang Wang et al、「A comparative studyof in vitro apatite depositionon heat-, H2O2-, and NaOH-treated titanium」、Journal of Biomedical Materials Research、2001年、54巻、p.172−178 横尾俊信 他「ゾル・ゲル法により調製したTiO2薄膜の光電気化学的性質」、窯業協会誌、1987年、第95巻、p.150−155 T. Shozui et al、「In Vitro Apatite-FormingAbility of Titania Films Depends on Their Substrates」、KeyEngineering Materials、2007年、第330−332巻、p.633−636、TransTech Publications、Switzerland Toshihiro Kasuga et al、「Apatite formation onTiO2 in simulated body fluid」、Journal ofCrystal Growth、2002年、p.235−240 Xuanyong Liu et al、「Light-induced bioactiveTiO2 surface」、Applied Physics Letters、2006年、第88巻、013905 Yong Han et al、「Photoexcited formation ofborn apatite-like coatings on micro-arc oxidized titanium」、Journal of Biomedical Materials Research、2004年、71巻A、p.608−614
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ヒドロキシアパタイトの形成能力に優れた酸化チタン皮膜を有する生体親和性インプラントの製造方法を提供することを目的とするものである。
上記課題は、基材を熱処理することによってその表面に酸化チタン皮膜を形成してから、該酸化チタン皮膜に紫外線を照射することを特徴とする生体親和性インプラントの製造方法を提供することによって解決される。このとき、前記熱処理の温度が250〜790℃であることが好ましい。前記酸化チタン皮膜の厚さが30〜1500nmであることも好ましい。250〜420nmの波長の紫外線の照射量が1J/cm以上であることも好ましい。また、水に対する静的接触角が5度以下であることも好ましい。
上記生体親和性インプラントの製造方法において、チタン金属又はチタン合金からなる基材を酸化可能気体中で加熱して酸化チタン皮膜を形成することが好適な実施態様である。このとき、前記熱処理の温度が420〜790℃であることが好ましく、前記酸化チタン皮膜がルチル型結晶を含むことも好ましい。
上記生体親和性インプラントの製造方法において、前記基材の表面にチタン化合物を含有する液を塗布してから熱処理して、ゾル−ゲル法によって酸化チタン皮膜を形成することが好適な実施態様である。このとき、前記酸化チタン皮膜がアナターゼ型結晶を含むことが好ましく、前記基材がステンレス鋼、アルミナ及びソーダライムガラスからなる群から選択される1種であることも好ましい。
本発明の製造方法によれば、ヒドロキシアパタイトの形成能に優れた酸化チタン皮膜を有する生体親和性インプラントが提供される。
図1は、実施例1における紫外線照射後擬似体液浸漬前の試片の薄膜X線回折測定結果である。 図2は、実施例1における紫外線照射後擬似体液7日間浸漬後の試片の薄膜X線回折測定結果である。 図3は、実施例1における紫外線未照射で擬似体液浸漬7日間浸漬後の試片の薄膜X線回折測定結果である。 図4は、実施例2における基材がチタン金属で紫外線未照射の試片(「C5Ti」)の薄膜X線回折測定結果である。 図5は、実施例2における基材がチタン金属で紫外線照射した試片(「C5Ti_UV」)の薄膜X線回折測定結果である。 図6は、実施例2における基材がステンレス鋼で紫外線未照射の試片(「C5SUS」)の薄膜X線回折測定結果である。 図7は、実施例2における基材がステンレス鋼で紫外線照射した試片(「C5SUS_UV」)の薄膜X線回折測定結果である。
本発明の生体親和性インプラントの製造方法は、基材を熱処理することによってその表面に酸化チタン皮膜を形成してから、該酸化チタン皮膜に紫外線を照射する方法である。これによって、酸化チタン皮膜の表面にヒドロキシアパタイトが形成しやすくなり、生体親和性に優れたインプラントを提供することができる。
非特許文献4〜6に示されているように、酸化チタンに紫外線を照射することで、アパタイト形成能が改善されることは既に知られている。これは光照射によって酸化チタンの表面が光励起されてアパタイト形成の容易な表面状態になるためであると考えられている。しかしながら、そのアパタイト形成能は未だ十分ではなく、さらなる改善が望まれている。本発明者らが検討したところ、基材を熱処理することによってその表面に酸化チタン皮膜を形成した場合に、紫外線照射によるアパタイト形成能が大幅に改善されることが明らかになった。その理由としては、アパタイト核形成に有利なTi−OH基量の増加などが考えられる。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明で用いられる基材を構成する材料は特に限定されず、金属、ガラス、セラミックスなどの各種材料を用いることができる。後述するように、基材表面を酸化して酸化チタン皮膜を形成する場合には、チタン金属又はチタン合金からなる基材が用いられる。一方、チタン化合物を含有する液を塗布してから熱処理して酸化チタン皮膜を形成する場合には、基材は特に限定されない。本発明で用いられる基材の形態も特に限定されず、用途に応じた様々な形態の成形品を基材として用いることができる。
本発明の製造方法においては、酸化チタン皮膜が、基材を熱処理することによってその表面に形成されたものであることが重要である。熱処理に伴って形成された酸化チタンの皮膜であることによって、紫外線照射によるアパタイト形成能の改善効果が顕著である。また、基材とともに熱処理されることによって、酸化チタン皮膜の基材への密着性も良好となる。ここで、熱処理によって酸化チタン皮膜を形成する方法としては、金属基材を酸化してその表面に酸化チタン皮膜を形成する方法や、チタン化合物を含有する液を塗布してから熱処理する方法が採用される。熱処理の温度は250〜790℃であることが好ましい。加熱温度が250℃未満では酸化チタン皮膜が十分に形成されないし、紫外線を照射してもアパタイト形成能が改善されないおそれがある。熱処理の温度は、より好適には350℃以上であり、さらに好適には420℃以上である。一方、加熱温度が790℃を超えたのでは、結晶が成長しすぎて皮膜が脆くなったり、結晶構造がアパタイト形成に適さないものに変わったりするおそれがある。熱処理の温度は、より好適には750℃以下であり、さらに好適には650℃以下である。
基材の表面に形成される酸化チタン皮膜の厚さは30nm以上であることが好ましい。酸化チタン皮膜の厚みが30nm未満である場合には、アパタイト形成能が不十分になるおそれがあり、より好適には50nm以上であり、さらに好適には80nm以上である。一方、酸化チタン皮膜の厚さは1500nm以下であることが好ましい。酸化チタン皮膜の厚さが1500nmを超える場合には、膜が剥離しやすくなるおそれがあり、より好適には1000nm以下であり、さらに好適には500nm以下である。
酸化チタン皮膜を形成する好適な第一の方法は、チタン金属又はチタン合金からなる基材を酸化可能気体中で加熱する方法である。まず、この方法について以下説明する。このときの基材はチタン金属又はチタン合金からなるものである。チタン金属を基材として用いる場合には、得られるインプラントがアパタイト形成能に優れるけれども強度的には不十分な場合があるので、大きな荷重のかからない部位、例えば、人工歯根などに好適に用いられる。一方、チタン以外の金属を含有するチタン合金はアパタイト形成能が低下する場合があるけれども、高強度のインプラントを得ることができるので、人工関節、内固定材、髄内釘など、大きな荷重がかかって強度が要求される部位に好適に使用される。
第一の方法で使用されるチタン合金は、チタンを含有するものであればよく、特に限定されないが、チタン含有量が20重量%であることが好ましく、50重量%以上であることがより好ましく、70重量%以上であることがさらに好ましい。チタン合金に配合されるチタン以外の金属としては、アルミニウム、バナジウム、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、パラジウム、モリブデンなどが例示される。現在、医療用に使用されるチタン合金の中で最も一般的なTi−6Al−4V(アルミニウム6重量%とバナジウム4重量%を含有し残余がチタンであるチタン合金)などを用いることができる。チタン合金に配合されるチタン以外の金属の含有量が0.1重量%未満である場合、用途によっては強度が不十分になるおそれがあり、より好適には1重量%以上(このとき、チタンの含有量は99重量%以下)であり、さらに好適には5重量%以上(チタンの含有量は95重量%以下)であり、特に好適には10重量%以上(チタンの含有量は90重量%以下)である。一方、チタン以外の金属の含有量が50重量%を超える場合、アパタイト形成能が低下するおそれがあり、より好適には40重量%以下(チタンの含有量は60重量%以上)であり、さらに好適には30重量%以下(チタンの含有量は70重量%以上)である。
インプラントは、様々な寸法や形状のものが求められる場合が多く、チタン金属又はチタン合金は予め所望の形状に成形される。成形方法は特に限定されず、鋳造、鍛造、削り出しなどによって成形することができる。このとき、骨組織との接合部位においてその表面に凹凸を形成してもよい。第一の方法によれば、立体的な成形品の表面に対して均一な膜厚で酸化チタン皮膜を形成するのがきわめて容易である。
このように成形してから、酸化可能気体中で加熱してその表面に酸化チタン皮膜を形成する。酸化可能気体としては、その雰囲気中で基材の表面のチタン元素を酸化して酸化チタン皮膜を形成させることができるものであれば特に限定されない。具体的には、大気中など、酸素を含有する雰囲気中で加熱することが好ましい。このような方法による酸化チタン皮膜の形成操作はきわめて容易である。また、形成される酸化チタン皮膜は、熱処理によって基材に含まれるチタン原子が酸化されたものであり、皮膜の基材への密着性が良好である。また、基材に含まれる金属原子が酸化されただけのものなので、通常、生体に対する安全性も高い。
第一の方法において、酸化可能気体中で加熱する際の加熱温度は420〜790℃であることが好ましい。加熱温度が420℃未満である場合には、酸化物皮膜の形成が不十分になり、アパタイト形成能が低下するおそれがある。加熱温度は、より好適には450℃以上である。一方、加熱温度が790℃を超える場合には、基材のチタン金属又はチタン合金の結晶構造が変化してインプラントの機械的強度が低下するおそれがある。また、形成される酸化チタン皮膜が厚くなりすぎたり結晶成長が過度になったりして、結果として皮膜が脆くなったり剥離しやすくなったりするおそれがある。加熱温度は、より好適には750℃以下でありさらに好適には650℃以下である。加熱時間は、加熱温度との関係で適当に設定されるが、通常1分〜24時間程度である。形成された酸化チタン皮膜の厚さは前述の通りであり、30nm以上であることが好ましい。加熱温度が高いほど、また、加熱時間が長いほど、形成される酸化チタン皮膜は厚くなる。
第一の方法によって形成された酸化チタン皮膜がルチル型結晶を含むことが好ましい。後の実施例にも示されているように、熱処理することによって形成された酸化チタン皮膜について薄膜X線回折試験を行ったところ、ルチル型結晶に由来する回折ピークは観察されたが、アナターゼ型結晶に由来する回折ピークは観察されなかった。したがって、酸化チタン皮膜にアナターゼ型結晶が含まれているとしても多くないと推定され、基材中のチタン元素を酸化して酸化チタン皮膜を形成する場合には、直接ルチル型結晶が形成されやすいようである。したがって、形成された酸化チタン皮膜において、ルチル型結晶に由来する回折ピークが、アナターゼ型結晶に由来する回折ピークよりも大きいことが好ましく、通常の薄膜X線回折測定においてルチル型結晶に由来する回折ピークのみが観察され、アナターゼ型結晶に由来する回折ピークが観察されないことがより好ましい。従来、アナターゼ型結晶の方がルチル型結晶よりもアパタイト形成が容易であることが知られているが、本発明の製造方法においては、ルチル型結晶を含む酸化チタン皮膜であってもアパタイト形成能に優れており、この点でも意義が大きい。形成される酸化チタン皮膜中に、基材に含まれていた、チタン以外の金属元素が含まれていてもよい。
酸化チタン皮膜を形成する好適な第二の方法は、基材の表面にチタン化合物を含有する液を塗布してから熱処理して、ゾル−ゲル法によって酸化チタン皮膜を形成する方法である。次に、この方法について以下説明する。このときの基材は、熱処理に耐えるものであればよく、特に限定されない。金属、ガラス、セラミックスなど、用途に応じて各種の基材を用いることができる。また、基材の形態も特に限定されず、用途に応じた様々な形態の成形品を基材として用いることができる。第二の方法によれば、立体的な成形品の表面に対して均一な膜厚で酸化チタン皮膜を形成するのが容易である。
このときに用いられる基材が金属であることが、加工性や強度の面から好ましい。金属として、チタン金属又はチタン合金を用いる場合については、前述の通りである。それ以外にも、ステンレス鋼、タンタル、ジルコニウム、ニッケル、亜鉛、コバルト−クロム合金などの金属を用いることができる。本発明のインプラントの製造方法によれば、アパタイト形成の可能な基材の種類を拡大することが可能である。例えば、非特許文献2にも記載されているように、ゾル−ゲル法によって酸化チタン皮膜を形成する際の基材がステンレス鋼である場合には、アパタイト形成が困難であることが従来知られているが、このような基材であっても本発明の方法によればアパタイト形成能を改善することができて有用である。この場合、酸化チタン皮膜を熱処理して形成する際に、皮膜内に鉄原子などの基材由来の成分が拡散した場合であっても、アパタイト形成が可能になると考えられる。すなわち、酸化チタン皮膜が、チタンと酸素以外の元素を含むものであっても、アパタイト形成能が阻害されにくいと考えられる。ステンレス鋼は、腐食に強く、人体に対して比較的安全で、しかも加工が容易なので、骨伝導性の良い表面処理ができることの意義は大きい。ここで、ステンレス鋼とは、クロムを含有する鉄鋼であり、ニッケル、マンガン、モリブデンなどを含んでいてもよい。代表的にはSUS201、SUS202、SUS301、SUS302、SUS303、SUS304、SUS305、SUS316、SUS317などが例示される。
また、基材としてガラスを用いることもでき、ソーダライムガラス、シリカガラス、ホウ酸塩系ガラス、チタン酸塩系ガラスなどを用いることができる。非特許文献2にも記載されているように、ゾル−ゲル法によって酸化チタン皮膜を形成する際の基材が、ソーダライムガラスである場合には、アパタイト形成が困難であることが従来知られているが、このような基材であっても本発明の方法によればアパタイト形成能を改善することができて有用である。また、基材としてセラミックスを用いることもでき、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素などを用いることができる。非特許文献2にも記載されているように、ゾル−ゲル法によって酸化チタン皮膜を形成する際の基材が、アルミナである場合には、アパタイト形成が困難であることが従来知られているが、このような基材であっても本発明の方法によればアパタイト形成能を改善することができて有用である。
第二の方法において基材の表面に塗布される液は、チタン化合物を含有する液であって、熱処理することで酸化チタン皮膜を形成できるものであれば特に限定されない。酸化チタン微粒子が分散したゾルを使用してもよいし、加水分解してチタン含有ゾルを形成することの可能な有機チタン化合物を含有する溶液を使用してもよい。
なかでも、基材に塗布されるコーティング液が、下記式(1)で示されるチタンアルコキシド、その加水分解物及びその縮合物からなる群から選ばれる少なくとも一種類と水と有機溶媒とを含有する溶液又は分散液であることが好適である。
Ti(OR4−n (1)
(式中、Rは同一でも異なっていてもよく炭素数1〜30の有機基であり、Rは同一でも異なっていてもよく炭素数1〜9のアルキル基を持つ有機基であり、nは0〜2の整数である。)
チタンアルコキシドとしては、取扱いのしやすさから、式(1)におけるnが0のもの、すなわちオルトチタン酸テトラアルキルが好ましく使用される。具体的には、オルトチタン酸テトラメチル、オルトチタン酸テトラエチル、オルトチタン酸テトライソプロピル、オルトチタン酸テトラn−プロピル、オルトチタン酸テトラn−ブチルなどが好適なものとして例示される。このとき、チタンアルコキシドに加えて、チタンアルコキシドを加水分解するための水を含有することが必要であるし、水とチタンアルコキシドの双方を溶解することの可能な有機溶媒を含有することも必要である。
チタンアルコキシド1モルに対する水の含有量は0.2〜10モルであることが好ましい。より好適には0.5モル以上であり、さらに好適には1モル以上である。一方より好適には6モル以下であり、さらに好適には4モル以下である。水の量が少なすぎる場合には加水分解反応速度が遅くなりすぎるおそれがあり、水の量が多すぎる場合には加水分解反応が急激に進行してチタン含有微粒子が凝集するおそれがある。ただし、チタンアルコキシドの反応性が高い場合には、水を含有しないコーティング液を使用して、周辺環境から水分を吸収して加水分解することも可能である。
ここで使用される有機溶媒は極性溶媒であることが好ましく、アルコール、エーテル、ケトンなどを使用することができる。特にアルコールが好適であり、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコールなどが好適に使用される。チタンアルコキシド1モルに対する有機溶媒の含有量は5〜200モルであることが好ましい。より好適には10モル以上であり、また100モル以下である。有機溶媒の含有量が少なすぎる場合には、成膜後の酸化チタン皮膜にひび割れが生じやすく、均質な塗膜を形成することが困難になるおそれがある。一方、有機溶媒の含有量が多すぎる場合には一度の塗布操作で形成できる塗膜の厚みが小さくなり、生産効率が低下するおそれがある。
さらに、加水分解反応を円滑に進行させるために酸又はアルカリからなる加水分解触媒を含有することが好ましい。前記触媒が揮発性の酸であることが、形成される酸化チタン膜中に触媒残渣が残らないので好ましい。好適な酸としては、塩酸、硝酸、酢酸などが例示される。触媒の含有量はチタンアルコキシド1モルに対して0.02〜2モルであることが好ましい。より好適には0.05モル以上であり、また1モル以下である。
さらに、上記コーティング液が乾燥制御剤を含有してもよい。これによって均質な膜を形成しやすくできる場合がある。乾燥制御剤としては、コーティング液で主として使用される有機溶媒よりも沸点の高い有機溶媒を使用することができ、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどを使用することができる。また、上記コーティング液がカップリング剤を含有してもよい。これによって、基材と酸化チタン皮膜との密着性が改善される場合がある。カップリング剤としては、シランカップリング剤などを使用することができる。本発明の効果を阻害しない範囲でチタン以外の金属元素を含んでも構わないが、アパタイト形成能の観点からは含まないことが好ましい。
基材に対して前記コーティング液を塗布する方法は特に限定されない。ディップコート、スプレー塗布、刷毛塗り、スピンコートなどを、基材の形態などに応じて適宜選択することができる。中でも複雑な形状の基材に塗布する場合には、ディップコートが好適である。
コーティング液を塗布した後で、熱処理が施される。処理温度は、好適には250〜790℃である。250℃以下の熱処理では、有機チタン化合物の分解が不十分で皮膜中に有機物が残存するおそれがあるし、形成される皮膜の強度が不十分になるおそれもある。350℃以上で熱処理することがより好ましく、420℃以上で熱処理することがさらに好ましい。一方、加熱温度が790℃を超えたのでは、結晶が成長しすぎて皮膜が脆くなったり、アナターゼ型結晶がルチル型結晶に変わってアパタイト形成性が低下したりするおそれがある。加熱方法は特に限定されず、大気中で、オーブンやヒーターを用いて加熱する方法などが例示される。
以上のようにして、酸化チタン皮膜が形成されるが、コーティングしてから熱処理する操作を少なくとも2回以上繰り返すことが好ましい。重ね塗りすることによって、均一性及び密着性に優れた皮膜が形成できる。
こうして、第二の方法によって形成された酸化チタン皮膜がアナターゼ型結晶を含むことが好ましい。アナターゼ型結晶の方がルチル型結晶よりもアパタイト形成が容易である。したがって、形成された酸化チタン皮膜において、アナターゼ型結晶に由来する回折ピークが、ルチル型結晶に由来する回折ピークよりも大きいことが好ましい。こうして形成された酸化チタン皮膜には、前述のように基材からの拡散成分である、チタン以外の金属元素が含まれることがある。形成された酸化チタン皮膜の厚さは前述の通りであり、30nm以上であることが好ましい。酸化チタン皮膜の暑さは、コーティング液のチタン化合物濃度や塗布回数によって調整することができる。
以上のようにして、第一の方法、第二の方法などによって形成された形成された酸化チタン皮膜に対して、紫外線が照射される。光源は、紫外線を発生するものであれば特に限定されず、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、LEDなどを用いることができる。紫外線の照射量は、250〜420nmの波長の紫外線の照射量が1J/cm以上であることが好ましい。より好適には5J/cm以上であり、さらに好適には20J/cm以上であり、特に好適には50J/cm以上である。一方、生産性の観点からは、通常、10000J/cm以下である。また、紫外線の波長は、より好適には300nm以上であり、さらに好適には350nm以上である。一方紫外線の波長は、より好適には400nm以下である。このような好適な波長範囲において、上記好適な照射量を満たすことが好ましい。
酸化チタン皮膜に対して紫外線照射することによって、水に対する静的接触角が低下する。紫外線照射後の酸化チタン皮膜の静的接触角は5度以下であることが好ましい。すなわち極めて親水性の表面を有することが好ましい。一方、紫外線照射前の酸化チタン皮膜の静的接触角は10度以上であることが好ましく、15度以上であることがより好ましく、20度以上であることがさらに好ましい。紫外線照射前後で静的接触角が大きく低下する場合に、アパタイト形成能が容易になる傾向が認められた。一方、紫外線照射前の酸化チタン皮膜の静的接触角は、通常60度以下である。
以上のようにして得られたインプラントは、擬似体液中でのアパタイト形成能に優れており、比較的短時間でその表面にヒドロキシアパタイトが形成され、骨親和性に優れている。また、こうして得られたインプラントは、特殊な材料を使用することなく安全性にも優れているので、整形外科用途あるいは歯科用途などにおいて広く使用することができる。例えば、人工関節、人工歯根、内固定材、髄内釘などの用途に好適に使用される。そして骨セメントを使用しなくても比較的短期間で骨に接着できると期待される。
以下、実施例を使用して本発明をさらに詳細に説明する。本実施例における各試験方法は以下の通りである。
(1)酸化チタン皮膜の膜厚
酸化チタン皮膜の膜厚は、試片の断面を、日本電子株式会社製走査型電子顕微鏡「JSM−6300」(20kV、300mA)で観察することによって得られたものである。なお、400℃以下で熱処理した試片については、上記方法で観察することが困難であったために、酸化チタンの屈折率を考慮し、干渉色から大まかな厚みを得て、いずれも30nm未満であることを確認した。
(2)酸化チタン皮膜表面の静的接触角
協和界面科学株式会社製自動接触角計「CA−V」を使用し、液滴法により蒸留水に対する静的接触角を測定した。1μlの蒸留水を試料表面に滴下し、着滴した後に自動で静的接触角を測定、算出した。ここで、算出に際してはθ/2法を採用し、液滴(の断面)が球(円)の一部であると仮定して、幾何の定理に従い、静的接触角θを算出した。画像処理によって液滴の直径(2r)と高さ(h)を求め、下記式に従ってθを求めた。ここでθは、液滴の頂点と液滴表面が試料基板に接触する点とを結ぶ直線が基板となす角度である。
tanθ=h/r
θ=2×θ
(3)酸化チタン皮膜のX線回折測定
株式会社リガク製X線回折装置「RINT2000」に、(株)リガク製薄膜アタッチメント(回転試料台)を装着して測定した。入射角1°に固定した薄膜アタッチメントを取り付けたX線回折装置(ターゲットCuKα:1.5406Å)で、出力40kV、200mAの条件で測定を行った。測定範囲は、2θ角で20〜50°とした。
実施例1(加熱酸化による酸化チタン皮膜の形成)
片面鏡面研磨された金属チタン試片(有限会社山本理化製:10×10×2mm)を、大気中において100〜800℃で1時間熱処理した後、紫外線を1時間照射した。ここで、用いた紫外線照射装置は、セン特殊光源株式会社製「HLR100T−2」であり、ランプ電源116V、ランプ電流0.92Aの高圧水銀ランプを備えたものである。光源から20cmの位置にサンプルを配置して照射した。この位置における照度は、365nmを中心波長として約50nmの幅で感度を有するセン特殊光源株式会社製照度計「25・36−3」で測定したところ140mW/cmであった。したがって、1時間の照射線量は504J/cmであった。こうして紫外線照射した試片と紫外線を照射しなかった試片とを、擬似体液に36.5℃で7日間浸漬した。擬似体液は、ヒトの体液とほぼ等しい無機イオン濃度を有する液であり、そのイオン濃度は、Naが142.0mM(ミリモル/リットル)、Kが5.0mM、Mg2+が1.5mM、Ca2+が2.5mM、Clが147.8mM、HCO が4.2mM、HPO 2−が1.0mM、SO 2−が0.5mMであり、36.5℃におけるpHは7.4である。
熱処理によって形成された酸化チタン皮膜の厚みは表1に示されるとおりである。表1中例えば「HT800」は800℃で熱処理した試片ということである。紫外線照射前後の水に対する静的接触角は表1に示されるとおりである。また、紫外線照射後擬似体液浸漬前の試片の薄膜X線回折測定結果を図1に、紫外線照射後擬似体液7日間浸漬後の試片の薄膜X線回折測定結果を図2に、紫外線未照射で擬似体液浸漬7日間浸漬後の試片の薄膜X線回折測定結果を図3に、それぞれ示す。図1〜3において、「NT」は熱処理をしなかった試片を、「UV」は紫外線照射した試片をそれぞれ示す。
図2からわかるように、500〜700℃で熱処理してから紫外線照射した試片においては、薄膜X線回折測定によってアパタイトの形成が確認された。図3に示されるように紫外線照射をしなかった場合には、熱処理の条件にかかわらずアパタイトは形成されなかった。図1からわかるように、400℃以下で熱処理した試片については、薄膜X線回折測定によってルチル型結晶のピークが観察されず、酸化チタン皮膜の厚さも30nm未満であり、実質的に十分な酸化チタン皮膜が形成されていない。表1に示されるように、400℃あるいは300℃で熱処理したものであっても、紫外線照射後には水に対する静的接触角が大きく減少しており、紫外線照射による酸化チタン表面の改質はなされているようである。しかしながら、これらの表面にはアパタイトは形成されなかった。したがって、一定以上の温度での熱処理を経た酸化チタン層の形成がアパタイト形成の必須条件であることが示唆された。一方、800℃以上の熱処理ではルチル相に帰属される回折ピーク強度が強いけれども、擬似体液中でのアパタイト形成は確認されなかった。結晶の過度の成長がアパタイト形成を妨げるのかもしれないが、詳細は不明である。なお、熱処理温度が高くなると紫外線照射前に水に対する静的接触角が小さくなる傾向が認められ、それとアパタイトの形成量の減少との相関も認められる。したがって、適切な温度範囲で熱処理をしてから紫外線照射することが重要である。アパタイトに帰属されるX線回折ピークの強度から判断して、500℃付近での熱処理が最適であると考えられる。
実施例2(ゾル−ゲル法による酸化チタン皮膜の形成)
片面鏡面研磨された金属チタン試片(有限会社山本理化製:10×10×2mm)及び片面鏡面研磨されたSUS316Lステンレス鋼(有限会社山本理化製:10×10×2mm)を基板として用いた。アセトン中で5分間の超音波洗浄を3回行い、基板を洗浄した。Ti(OC:COH:HO:HNO=1:50:2:0.2(モル濃度比)のゾル溶液を調製し、引き上げ速度6cm/分で、前記基板上にゾル溶液をコーティングした後、乾燥し、500℃で10分間熱処理した。この操作を5回繰り返し、酸化チタン皮膜が表面に形成された試片を得た。得られた酸化チタン皮膜に、実施例1と同様に紫外線を照射した。こうして紫外線照射した試片と紫外線を照射しなかった試片とを、実施例1と同様に擬似体液に浸漬した。
5回のコーティングによって形成された酸化チタン皮膜の厚みは表1に示されるとおりである。表1中、チタン金属基板に5回コーティングを施した試片を「C5Ti」と、ステンレス鋼基板に5回コーティングを施した試片を「C5SUS」と、それぞれ表記する。紫外線照射前後の水に対する静的接触角は表1に示されるとおりである。また、基材がチタン金属で紫外線未照射の試片(「C5Ti」)の薄膜X線回折測定結果を図4に、基材がチタン金属で紫外線照射した試片(「C5Ti_UV」)の薄膜X線回折測定結果を図5に、基材がステンレス鋼で紫外線未照射の試片(「C5SUS」)の薄膜X線回折測定結果を図6に、基材がステンレス鋼で紫外線照射した試片(「C5SUS_UV」)の薄膜X線回折測定結果を図7に、それぞれ示す。図4〜7において、「0d」は、擬似体液に浸漬する前の試片であり、「3d」、「5d」、「7d」は、それぞれ擬似体液に、3日、5日、7日浸漬した試片を示す。
図4〜7において、擬似体液に浸漬する前の試片の薄膜X線回折測定結果からわかるように、基材上に形成された酸化チタン皮膜はアナターゼ型結晶を含むことがわかる。基材がチタン金属である場合には、紫外線を照射しなくても(図4)、紫外線を照射しても(図5)、同様にアパタイトが形成される。これに対して、基材がステンレス鋼である場合には、紫外線を照射しない場合にはアパタイトが形成されず(図6)、紫外線を照射することによってアパタイトが形成されることがわかる(図7)。ゾル−ゲル法で形成された酸化チタン皮膜は、基材の種類によってアパタイト形成能が異なるが、従来困難であるとされていた基材を用いた場合であってもアパタイト形成が可能となり、基材の選択の幅を広げることができた。
Figure 0005360660

Claims (4)

  1. チタン金属又はチタン合金からなる基材を酸化可能気体中420〜790℃で熱処理することによってその表面に厚さが30〜1500nmの酸化チタン皮膜を形成してから、該酸化チタン皮膜に紫外線を照射することを特徴とする生体親和性インプラントの製造方法。
  2. 250〜420nmの波長の紫外線の照射量が1J/cm以上である請求項1記載の生体親和性インプラントの製造方法。
  3. 水に対する静的接触角が5度以下である請求項1又は記載の生体親和性インプラントの製造方法。
  4. 前記酸化チタン皮膜がルチル型結晶を含む請求項1〜3のいずれか記載の生体親和性インプラントの製造方法。
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