JP5355629B2 - 救命胴衣兼用座布団 - Google Patents

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本発明は、通常は座布団として使用されるが、津波や洪水等による水難事故時には救命胴衣としても利用することが可能な救命胴衣兼用座布団に関する。
例えば航空機、船舶には、乗客、乗員の安全のための救難具として救命胴衣が常備されている。また、船舶においては、このような救命胴衣を常に着衣している場合がある。このように、一般の救命胴衣は、事故時に水中に放り出されることが想定される乗り物に常備されたものであるか、そのような乗り物に搭乗する者が安全確保のため常時着衣するものと考えられてきた。
救命胴衣については、これまでも多くの発明がなされてきており、例えば航空機用のシートに救命胴衣を兼用させて利便性を高めたものの提案もある。
実開平5−26795号公報 実開平4−22855号公報 実用新案登録第3146050号公報 実開平5−29448号公報 特開2004−41392号公報 特開2006−230439号公報
ところで、家屋(一戸建て住宅、アパートやマンションなどの集合住宅、住宅以外の用に供される建物全般を含む)のように、基本的には水難事故など想定されていないか、ほとんど想定されていない場所には、救命胴衣は備え付けられていないが、このような家屋においても、沿岸部や河川沿いの地域では、想定外の津波や大洪水などによって、水難事故に巻き込まれる危険性がゼロではないことから、救命胴衣を常備するという考え方が今後広まることも考えられる。
しかしながら、救命胴衣は、実際に使用するとき以外は嵩張るものであり、普段の生活の中に置いておくには些か大げさな感じがあり、普段の生活に溶け込み難いという課題がある。日常生活での屋内における美観を気にするあまり、このような救命胴衣を納戸や倉庫のような場所に保管してしまうと、いざというときに直ぐに着用することができない。よって、救命胴衣は、例えばリビング、ダイニング、寝室、和室、洋室等のような緊急時であっても直ぐに着用できる場所にあることが必要である。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、普段の生活空間内に置かれていてもその生活に溶け込むような救命胴衣兼用座布団の提供を目的としている。
上記目的を達成するために、本発明の救命胴衣兼用座布団は、折畳み可能な浮力部を備え、前記浮力部は、折り畳まれたときに互いに接する第1面及び第2面を有し、前記第1面を有する第1浮力部構成体にはその厚さ方向に沿って貫通孔が形成され、前記第2面を有する第2浮力部構成体には前記貫通孔に嵌り合う凸部が設けられてなるものである。
この構成によれば、折り畳まれた浮力部は、座布団におけるクッション材として機能可能であると共に、外観上も普通の座布団として認識可能である。そして、折り畳まれた浮力部を展開すると、浮力部の第1面側には貫通孔が出現し、浮力部の第2面側には凸部が出現するので、この貫通孔に使用者が頭部を通すことにより、救命胴衣として機能可能である。
上記の構成において、前記浮力部を折り畳んだ状態でカバー内に収容するようにしてもよい。
この構成によれば、普段は浮力部が折り畳まれた状態でカバー内に収容されているので、折り畳まれた浮力部は座布団におけるクッション材として機能し、外観上は普通の座布団として認識される。
カバーから浮力部を取り出し、折り畳まれた浮力部を展開すると、浮力部の第1面側には貫通孔が出現し、浮力部の第2面側には凸部が出現する。そして、この貫通孔に使用者が頭部を通せば、浮力部が救命胴衣として機能することになる。
上記の構成において、前記凸部の高さと前記貫通孔の深さが略同寸法とされていてもよい。
上記の構成において、前記浮力部には、使用者の着用時に胴まわりに巻き付けられて当該浮力部を使用者の身体に固定する胴ベルトが設けられていてもよい。
上記の構成において、前記浮力部には、使用者の着用時に左右の足の付け根まわりに巻き付けられて当該浮力部を使用者の身体に固定する股ベルトが設けられていてもよい。
上記の構成において、前記貫通孔は、前記第1浮力部構成体の略中央部から前記第2浮力部構成体側に向かって延在していてもよい。
本発明によれば、普段の生活空間内に存在してもその生活空間に溶け込むような救命胴衣兼用座布団の提供が可能となる。
本発明の一実施の形態に係る救命胴衣兼用座布団の斜視図である。 図1に示す救命胴衣兼用座布団のカバーの中から取り出した、折り畳まれた状態の浮力部の斜視図である。 図2に示す折り畳まれた浮力部を途中まで展開した状態を示す斜視図である。 展開した浮力部を着用した使用者を正面側から見た斜視図である。 展開した浮力部を着用した使用者を背面側から見た斜視図である。
以下、本発明に係る救命胴衣兼用座布団の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。
本発明の一実施形態に係る救命胴衣兼用座布団1は、カバー2と、カバー2内に折り畳まれた状態(本実施形態では、2つ折りの状態)で収容された浮力部3とを備え、所定の厚みを持った平面視矩形状(本実施形態では、平面視略正方形)に構成されてなる。
カバー2は、例えば綿、ポリエステル、ナイロン等、あるいはこれらの材質を組み合わせた生地からなる。また、図1に示すように、カバー2の側周面にはファスナー21が側周長の3/4よりも若干長い範囲で設けられている。そして、このファスナー21を開けた状態で、カバー2内に浮力部3を2つ折りにして収納し、ファスナー21を閉じれば、浮力部3がクッション材として機能することになり、意匠的にも機能的にも紛れもない座布団が構成されることになる。
救命胴衣兼用座布団1のファスナー21を開け、カバー2の中から浮力部3を取り出すと、浮力部3は図2に示すような2つ折りの状態になっている。浮力部3は、例えばポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、フォームラバー等、独立気泡性の発泡樹脂からなる平面視略正方形状の板状の浮力材を2つ備えており、これら2つの浮力材を後述の接続部を隔てて離間した状態となるように布帛で包み込んだ構造になっている。
浮力材は、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体、軟質ポリ塩化ビニル等の不浸透性部材で被覆されていれば、必ずしも布帛で包まれた構造と採る必要はなく、不浸透性材料でディッピング(コーティング)されていてもよい。
以下、2つのうちの一方の浮力材311が布帛312で包み込まれてなる部分を第1浮力部構成体31、他方の浮力材321(後述する凸部が形成されている)が布帛322で包み込まれてなる部分を第2浮力部構成体32、これら第1浮力部構成体1と第2浮力部構成体32とを一定の間隔を隔てて接続している部分を接続部33と称する。
第1浮力部構成体31には、その厚さ方向に沿って延びる貫通孔34が形成されている。この貫通孔34は、使用者の頭部を通す孔であり、第1浮力部構成体31の概ね中央に位置して使用者の頭部が通る頭貫通部341と、使用者の首が通る首貫通部342とが相互に連結されて、全体としてひょうたん形をなしている。
本実施形態において図示のように、首貫通部342よりも頭貫通部341の輪郭の方が大きくしているのは、貫通孔34に頭部を通し易くすると共に首まわりのホールド感を高めるためであるが、貫通孔全体の輪郭は、頭部及び首が通る形状であれば、ひょうたん形に限らず、単なる円形態様も含めて種々の態様を採用できる。
第1浮力部構成体31の外側面31A、言い換えれば、浮力部3が2つ折りされた状態を示す図2の状態において上側を向く面、さらに言い換えれば、救命胴衣兼用座布団1が使用者に着用された状態を示す図4及び図5において使用者の肩や胸の上部に接する面には、貫通孔34の縁のうち接続部33から最も遠位にある縁34aに一端5aが接続され、他端5bに胴ベルト4が設けられた背ベルト5が取り付けられている。
この胴ベルト4は、図4及び図5に示すように、救命胴衣兼用座布団1の着用時に使用者の胴に巻きつけられるものである。一方、背ベルト5の幅は、一端5aが最も広く、他端5bに向かうに従い漸次狭くなっており、貫通孔34上を通過する部分は概ね貫通孔34を覆い得る幅に形成されている。
なお、背ベルト5は、ベルト状の浮力材を不浸透性部材で覆い、さらに強度確保のための心材を長さ方向に沿って配設した構成としてもよい。
浮力部3を2つ折りにした図2の状態で、第1浮力部構成体31の内側面(第1面)31Bと接する第2浮力部構成体32の内側面(第2面)32Aには、貫通孔34に嵌り合う凸部35が設けられている。この凸部35の前記内側面32Aからの高さ寸法Hは、貫通孔34の深さ寸法Dと一致していることが好ましいが、所定の範囲内であれば一方が他方よりも大きくても小さくてもよい。
この所定の範囲は、凸部35が貫通孔34から過度に飛び出していたり、逆に過度に凹みすぎたりしていると、座布団としての使用時に座り心地が悪くなるため、座り心地を損なわない適宜の範囲に設定される。もっとも、本実施形態の場合には、背ベルト5が貫通孔34の開口の殆どを覆うように構成されているので、凸部35が多少凹み過ぎていても、この背ベルト5によって凹凸による段差の感じ方が緩和され、当該背ベルト5が無い場合よりも座り心地が改善される。
図2及び図3に示すように、第2浮力部構成体32の外側面32Bの縁部のうち、接続部33よりも最も遠位にある縁部32aの左右には、2組の股ベルト6,7が設けられている。例えば図3における左側の2本のベルトが右足の付け根まわりに巻きつけられる右足用の股ベルト6であり、右側の2本のベルトが左足の付け根まわりに巻きつけられる左足用の股ベルト7である。
次に、以上のように構成された救命胴衣兼用座布団1の使用方法、座布団としての使用時における作用効果、救命胴衣としての着用時及び使用時における作用効果について、それぞれ説明する。
普段は、図1に示すように、カバー2内に2つ折り状態の浮力部3が収納された形態をなしており、2つ折り状態の浮力部3がクッション材として機能するので、救命胴衣兼用座布団1は、意匠的にも機能的にも紛れも無い座布団を構成している。したがって、普段の生活空間に置かれていても、何ら違和感はなく、普段の生活に溶け込むことが可能である。
また、第1浮力部構成体31には救命胴衣としての使用時に使用者の頭部を通す貫通孔34が形成されているため、第2浮力部構成体32に凸部35が設けられていないと、座布団としての使用時に貫通孔34の部分が凹むことで段差が生じてしまい、座り心地が悪くなるという不具合を生じるが、本実施形態では、貫通孔34の部分の凹みが凸部35によって塞がれて段差を生じることが全くないか、着座した人が気にならない程度の段差しか生じないため、普通の座布団と同程度の座り心地が確保される。
また、貫通孔34の凹みと凸部35との凹凸係合によって、座布団としての使用時における第1浮力部構成体31と第2浮力部構成体32との横ずれが防止されるため、浮力部3を2つ折り状態にしてカバー2内に収納しているにもかかわらず、座布団としての快適性が損なわれることもない。
救命胴衣兼用座布団1を救命胴衣として使用する場合には、カバー2のファスナー21を開け、中から浮力部3を取り出す。カバー2内から取り出した浮力部3は、図2に示すように、2つ折りの状態になっているため、使用者は図3に示すように浮力部3を展開し、図5に示すように、第1浮力部構成体31の外側面31A側から頭部を貫通孔34に通す。
このとき、背ベルト5を背中側に位置させておき、背ベルト5の他端5bに設けられた胴ベルト4を背中側から腹側にまわし、図4に示すように、互いに固定する。しかる後、左右それぞれの股ベルト6,7を固定することによって着用作業が完了する。
このように、本実施形態の救命胴衣兼用座布団1は、貫通孔34に頭部を通して胴ベルト4と股ベルト6,7を固定するだけで着用作業が完了するものであるから、その作業は極めて簡単かつ短時間で終わる。そのうえ、普段から座布団として生活空間に存在するため、例えば津波や大洪水などによる水難事故に遭遇したときでも手元にあり、着用が間に合わないという事態が回避される。
救命胴衣兼用座布団1を着用すると、図4及び図5に示すように、第1浮力部構成体31においては、頭部の後方に位置する部分があたかも枕のように機能するため、水難事故で漂流しているときでも、頭部が水面よりも上に出やすくなり、呼吸の確保が容易となる。また、第2浮力部構成体32においては、凸部35を有する分だけ浮力材の体積が増えて浮力が大きくなるため、常に水中にある胴部に、より大きな浮力を作用させることが可能であり、使用者の身体が浮き易くなる。
さらに、本実施形態では、頭部を通す貫通孔34だけでなく、胴ベルト4及び股ベルト6,7によっても浮力部3を使用者の身体に固定できるようにしているので、波に揉まれることがあっても、浮力部3が身体から脱落してしまうことがない。特に、浮力部3はそれ自体が有する浮力によって、水中では常に上方向に力が働くため、胴ベルト4及び股ベルト6,7による身体への固定は、身体からの脱落防止に対して非常に有効である。
なお、上記実施形態では、浮力部3をカバー2内に収容してなる救命胴衣兼用座布団1について説明したが、本発明の救命胴衣兼用座布団は、カバー2を備えない構成とすることも可能である。この場合には、通常用いられる座布団の生地で浮力材を包み込む。
1 救命胴衣兼用座布団
2 カバー
3 浮力部
4 胴ベルト
5 背ベルト
6,7 股ベルト
21 ファスナー
31 第1浮力部構成体
32 第2浮力部構成体
31B 内側面(第1面)
32A 内側面(第2面)
34 貫通孔
35 凸部
H 凸部の高さ寸法
D 貫通孔の深さ寸法

Claims (6)

  1. 折畳み可能な浮力部を備え、
    前記浮力部は、折り畳まれたときに互いに接する第1面及び第2面を有し、前記第1面を有する第1浮力部構成体にはその厚さ方向に沿って貫通孔が形成され、前記第2面を有する第2浮力部構成体には前記貫通孔に嵌り合う凸部が設けられてなり、
    使用者の着用時においては、
    前記第1浮力部構成体が使用者の頭部側に配置され、
    前記第2浮力部構成体が使用者の胴部側に配置されるものであることを特徴とする救命胴衣兼用座布団。
  2. 前記凸部の高さと前記貫通孔の深さが略同寸法に設定されている請求項1に記載の救命胴衣兼用座布団。
  3. 前記浮力部には、使用者の着用時に胴まわりに巻き付けられて当該浮力部を使用者の身体に固定する胴ベルトが設けられている請求項1又は2に記載の救命胴衣兼用座布団。
  4. 前記浮力部には、使用者の着用時に左右の足の付け根まわりに巻き付けられて当該浮力部を使用者の身体に固定する股ベルトが設けられている請求項1から3のいずれか1項に記載の救命胴衣兼用座布団。
  5. 前記貫通孔は、前記第1浮力部構成体の略中央部から前記第2浮力部構成体側に向かって延在している請求項1から4のいずれか1項に記載の救命胴衣兼用座布団。
  6. 前記浮力部を収容可能なカバーを備え、
    前記浮力部が折り畳まれた状態で前記カバー内に収容されてなる請求項1から5のいずれか1項に記載の救命胴衣兼用座布団。
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