JP5354428B2 - コンクリートの流動性状評価方法 - Google Patents
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しかしながら、半水石膏を増量した低熱ポルトランドセメントのコンクリート組成物によれば、練り混ぜ後、数分間で急激なスランプの低下現象(こわばり)が生じるおそれがあった。こわばりは、半水石膏と水とが反応し、急激に二水石膏を析出することで発生すると一般に言われる(改定2版セメントの材料化学、大日本図書株式会社)。
また、近年では、セメントクリンカの焼成時の燃料として、SO3を高濃度に含む例えばオイルコークスなどを用いることが多くなってきた。その際には、セメントクリンカ中のSO3量が増加する。そのため、従来のようにセメント中の石膏量(総SO3量)により半水石膏量を管理するよりも、添加される石膏量によって管理する必要性が生じている。
これらのコンクリートのこわばり、コンクリートの経時的な流動性の変化については、後述するJIS A 1101「コンクリートのスランプ試験方法」に則ってスランプを測定し、その測定結果に基づき、それぞれの評価が行われる。一方、高流動性コンクリートのこわばりおよび経時による流動性の変化については、後述するJIS A 1150「コンクリートのスランプフロー試験方法」に則ってスランプフローを測定し、その測定結果に基づき、それぞれの評価が行われる。
また、この発明は、練り混ぜ後のコンクリートの経時的な変化を正確に評価することができるコンクリート評価方法および高流動性コンクリート評価方法を提供することを目的としている。
(3) 3.0>A−B
ただし、Aは練り混ぜ直後のコンクリートのスランプ(cm)、Bはスランプコーン内で5分間静置した後のコンクリートのスランプ(cm)で、A−Bが3.0cm未満であればコンクリートのこわばりが無いと評価し、A−Bが3.0cm以上であればコンクリートのこわばりを有すると評価する。
式(3) 3.0>A−B中の“3.0”は、明らかにこわばりが生じていると判断される場合に、練り混ぜ直後と練り混ぜから5分経過後との間に生じるスランプの差を、既往の研究データおよび試験により定めた評価基準値である。A−Bが3.0以上では、アジテータ車への積み込みや排出、また現場荷下ろし時の排出、ポンプやバケットでの運搬、施工に支障が生じる。そのため、式(3) により、練り混ぜ直後からのスランプの変化を定量でき、こわばり現象を評価することができる。
(4) 50<C/A×100(%)
ただし、Aは練り混ぜ直後のコンクリートのスランプ(cm)、Cは練り混ぜて30分が経過したコンクリートのスランプ(cm)で、C/A×100が50%を超えれば、コンクリートの経時的な流動性の変化が小さいと評価し、C/A×100が50%以下であれば、コンクリートの経時的な流動性の変化が大きいと評価する。
式(4) 中のCを、練り混ぜて30分が経過したコンクリートのスランプとしたのは、日本では、この種のコンクリートの平均的な運搬時間が30分程度であることによる。
式(4) 50<C/A×100中の“50”は、現場でのコンクリートの荷下ろし(アジテータ車からの排出)・現場内での運搬並びにコンクリート打設に支障をきたさないように定めた評価基準値である。C/A×100が50以下では、現場でのコンクリートの荷下ろし(アジテータ車からの排出)・現場内での運搬並びにコンクリート打設に支障をきたすおそれがある。そのため、式(4) により、コンクリートの経時による変化を評価し、製造から運搬、施工に至るまで支障のないコンクリートの品質変化を評価することができる。
ビーライト量が50重量%未満では、セメントの水和による発熱量が多くなり、厚肉なコンクリート構造体においては、温度が上昇してひびわれが生じたり、強度発現性が低下する。また、ビーライト量が75重量%を超えると、材齢28日までのコンクリートの強度発現性が低下し、施工性に問題が生じるおそれがある。好ましいビーライト量は50〜60重量%である。
3CaO・Al2O3が4重量%を超えるものは、アルミネート相の活発な水和による粘性の増加により流動性が大きく低下する。
低熱ポルトランドセメント組成物の比表面積は、3000〜4500cm2/gであることが好ましい。比表面積が3000cm2/g未満では、組成物中に含まれる1μm程度の粒子数が減少し、細密充填の範囲から外れるおそれがある。また、比表面積が4500cm2/gを超えると、所定の流動性を得るための高性能AE減水剤量が増加し、経済的な負担が大きくなる。
石膏に含まれる半水石膏量は、SO3量換算で1.0重量%未満であれば、経時による流動性の変化が大きく、施工性が悪化する。また、SO3量換算で1.5重量%を超えると、練り上がり直後から数分間において、急激に発生するスランプまたはスランプフローの低下現象、いわゆるこわばりが発生し易くなる。
これにより、半水石膏および二水石膏からなる石膏の添加量は、低熱ポルトランドセメント中に存在する半水石膏量をSO3量換算でF重量%としたとき、SO3量換算で(1.2F+0.1)重量%〜(1.4F+0.2)重量%とすることが重要になる。すなわち、石膏の添加量がSO3量換算で(1.2F+0.1)重量%未満では、半水石膏量が1.5重量%以下であるにも拘らずこわばりが発生し、場合によっては急結を招くおそれもある。また、(1.4F+0.2)重量%を超えると、半水石膏量が1.0重量%以上であるにも拘らず、低熱ポルトランドセメント組成物を含むコンクリートの経時的な流動性の変化が大きくなるとともに、長期の強度発現性に悪影響を及ぼす。しかも、場合によっては硬化したコンクリートの膨張破壊を招くおそれもある。
セメント分散剤の添加量は、例えば0.2〜0.4重量%である。
ここでいうスランプとは、JIS A 1101「コンクリートのスランプ試験方法」に則ったスランプ試験である。
(5) 5.0>D−B
ただし、Dはミキサ内で5分間静置し、15秒間練り混ぜた後の高流動性コンクリートのスランプフロー(cm)、Bはスランプコーン内で5分間静置した後の高流動性コンクリートのスランプフロー(cm)で、D−Bが5.0cm未満であれば高流動性コンクリートのこわばりが無いと評価し、D−Bが5.0cm以上であれば高流動性コンクリートのこわばりを有すると評価する。
また、式(5) 中のBをスランプコーン内で5分間静置した後の高流動性コンクリートのスランプフローとしたのは、5分以下ではこわばり現象が終了せず、こわばりを正確に評価できない場合が生じるためである。また、5分以上では、こわばりと通常の経時による変化との判別がし難くなる。
式(5) 5.0>D−B中の“5.0”は、明らかにこわばりが生じていると判断される場合において、5分間静置後に再攪拌したものと、5分間静置しただけのものとの間に生じるスランプフローの差を、既往の研究データおよび試験により定めた評価基準値である。そのため、式(5) により、コンクリートの経時による変化を評価し、製造から運搬、施工に至るまで支障のないコンクリートの品質変化を評価することができる。
(6) 10>D−E(cm)
ただし、Dはミキサ内で5分間静置し、15秒間練り混ぜた後の高流動性コンクリートのスランプフロー(cm)、Eは練り混ぜて60分が経時した高流動性コンクリートのスランプフロー(cm)で、D−Eが10cm未満であれば高流動性コンクリートの経時的な流動性の変化が小さいと評価し、D−Eが10cm以上であれば高流動性コンクリートの経時的な流動性の変化が大きいと評価する。
式(6) 中のEを、練り混ぜて60分が経時した高流動性コンクリートのスランプフローとしたのは、高流動性コンクリートを現場で施工するには、高流動性コンクリートが自己充填性を有する必要があり、練り混ぜから施工までの平均的な経過時間として、60分程度を要するからである。
また、式(6) 10>D−Eの“10”は、現場でのコンクリートの荷下ろし(アジテータ車からの排出)・現場内での運搬並びにコンクリート打設に支障をきたすことがないという理由により定めた評価基準値である。D−Eが10以上では、現場でのコンクリートの荷下ろし(アジテータ車からの排出)・現場内での運搬並びにコンクリート打設に支障をきたすおそれがある。そのため、式(6) により、高流動性コンクリートの経時的な流動性の変化を評価することができる。
ここでいうスランプフローとは、JIS A 1150「コンクリートのスランプフロー試験方法」に則ったスランプフロー試験である。
1.使用材料
1)低熱ポルトランドセメント組成物
三菱マテリアル株式会社九州工場製、比表面積3500cm2/g
2)細骨材;千葉県君津産山砂、粒度5mm
4)粗骨材;埼玉県両神産硬質砂岩、粒度5〜20mm
5)AE減水剤;株式会社NMB製、商品名ポゾリスNo.70
6)高性能AE減水剤;株式会社NMB製、商品名レオビルドSP−8SBS
7)高炉スラグ微粉末;比表面積6000cm2/g
7)水;上水道水
(1) スランプ
JIS A 1101のコンクリートのスランプ試験方法に従って、スランプ値を測定した。
(2) スランプフロー
JIS A 1150のコンクリートのスランプフロー試験方法に従って、スランプフロー値を測定した。
(1) こわばり
a)コンクリートのこわばり;
練り混ぜ直後のコンクリートのスランプ(A)と、スランプコーン内で5分間静置した後のコンクリートのスランプ(B)とを、JIS A 1101のコンクリートのスランプ試験方法に則ってそれぞれ測定し、得られた測定結果に基づき、(3) 式3.0>A−Bからコンクリートのこわばりを評価する。
A−Bが3.0cm未満であればコンクリートのこわばりが無い(こわばりが小さい)と評価し、A−Bが3.0cm以上であればコンクリートのこわばりを有する(こわばりが大きい)と評価する。
ミキサ内で5分間静置し、15秒間練り混ぜた後の高流動性コンクリートのスランプフロー(D)と、スランプコーン内で5分間静置した後の高流動性コンクリートのスランプフロー(B)とを、JIS A 1150のコンクリートのスランプフロー試験方法に則ってそれぞれ測定し、得られた測定結果に基づき、(5) 式5.0>D−Bから高流動性コンクリートのこわばりを評価する。
D−Bが5.0cm未満であれば高流動性コンクリートのこわばりが無い(こわばりが小さい)と評価し、D−Bが5.0cm以上であれば高流動性コンクリートのこわばりを有する(こわばりが大きい)と評価する。
a)コンクリートの経時変化;
練り混ぜ直後のコンクリートのスランプ(A)と、練り混ぜて30分が経過したコンクリートのスランプ(C)とを、JIS A 1101のコンクリートのスランプ試験方法に則ってそれぞれ測定し、得られた測定結果に基づき、(4) 50<C/A×100からコンクリートの経時的な流動性の変化を評価する。
C/A×100が50%を超えれば、コンクリートの経時的な流動性の変化が小さいと評価し、C/A×100が50%以下であれば、コンクリートの経時的な流動性の変化が大きいと評価する。
ミキサ内で5分間静置し、15秒間練り混ぜた後の高流動性コンクリートのスランプフロー(D)と、練り混ぜて60分が経時した高流動性コンクリートのスランプフロー(E)とを、JIS A 1150のコンクリートのスランプフロー試験方法に則ってそれぞれ測定し、得られた測定結果に基づき、(6) 10>D−Eから高流動性コンクリートの経時的な流動性の変化を評価する。
D−Eが10cm未満では、高流動性コンクリートの経時的な流動性の変化が小さいと評価し、D−Eが10cm以上であれば、高流動性コンクリートの経時的な流動性の変化が大きいと評価する。
(試験例1〜3)
ここでは、半水石膏量がSO3量換算で1.0重量%、石膏の添加量がSO3量換算で1.4重量%(試験例1)、半水石膏量がSO3量換算で1.3重量%、石膏の添加量がSO3量換算で1.8重量%(試験例2)、半水石膏量がSO3量換算で1.5重量%、石膏の添加量がSO3量換算で2.2重量%(試験例3)に調整された低熱ポルトランドセメント組成物を用いた。低熱ポルトランドセメント組成物の残部は3CaO・SIO2である。
この低熱ポルトランドセメント組成物とともに、AE減水剤と、細骨材と、粗骨材と水とをそれぞれコンクリートミキサに投入し、注水から60秒間練り混ぜた。AE減水剤(混和剤)の添加量は低熱ポルトランドセメント重量の0.25重量%、水セメント比は55%、細骨材率は44%である。
練り混ぜ後、得られたコンクリートについてJIS A 1101「コンクリートのスランプ試験方法」によるスランプ試験を行い、コンクリートのこわばりと経時な流動性の変化とを評価した。その結果を表1に示す。表1中、C2Sはビーライト、C3Aは3CaO・Al2O3、C4AFは4CaO・Al2O3・Fe2O3である。
ここでは、半水石膏量が、SO3量換算で0.8重量%(比較例1)、1.7重量%(比較例2)で、しかも石膏の添加量がSO3量換算で1.8重量%に調整された低熱ポルトランドセメント組成物を用いた。そして、試験例1〜3と同様の試験を実施した。その結果を表1に示す。
ここでは、半水石膏量が、SO3量換算で1.3重量%で、石膏の添加量がSO3量換算で1.4重量%(比較例3)、2.2重量%(比較例4)に調整された低熱ポルトランドセメント組成物を用いた。そして、実施例1〜3と同様の試験を実施した。結果を表1に示す。
(参考例1〜3)
ここでは、半水石膏量がSO3量換算で1.0重量%、石膏の添加量がSO3量換算で1.4重量%(参考例1)、半水石膏量がSO3量換算で1.3重量%、石膏の添加量がSO3量換算で1.8重量%(参考例2)、半水石膏量がSO3量換算で1.5重量%、石膏の添加量がSO3量換算で2.2重量%(参考例3)に調整された低熱ポルトランドセメント組成物を用いた。この低熱ポルトランドセメント組成物の他に、高性能AE減水剤と、細骨材と、粗骨材と、水とをそれぞれコンクリートミキサに投入し、注水から90秒間練り混ぜた。
水セメント比は30%、細骨材率は52%、高性能AE減水剤(混和剤)の添加量は低熱ポルトランドセメント重量の0.8〜1.4重量%とした。練り混ぜ後、得られたコンクリートについて、JIS A 1150「コンクリートのスランプフロー試験方法」によるスランプフロー試験を行い、高流動性コンクリートのこわばりと経時な流動性の変化とを評価した。その結果を表2に示す。
ここでは、半水石膏量がSO3量換算で0.8重量%(比較例5)、1.7重量%(比較例6)であり、石膏の添加量がSO3量換算で1.8重量%に調整した低熱ポルトランドセメント組成物を用いて、参考例1〜3と同様の試験を実施した。結果を表2に示す。
ここでは、半水石膏量がSO3量換算で1.3重量%であり、石膏の添加量がSO3量換算1.4重量%(比較例7)、2.2重量%(比較例8)に調整された低熱ポルトランドセメント組成物を用いて、参考例1〜3と同様の試験を行った。結果を表2に示す。
(試験例4)
ここでは、残部が二水石膏となる石膏中の半水石膏量が、SO3量換算で1.3重量%、石膏の添加量がSO3量換算で1.8重量%に調整された低熱ポルトランドセメント組成物と、高炉スラグ微粉末とを混合した混合セメント組成物を用いた。低熱ポルトランドセメント組成物の残部は3CaO・SiO2である。
この混合セメント組成物を使用し、実施例1と同様の試験を行った。その結果を表3に示す。
Claims (3)
- JIS A 1101のコンクリートのスランプ試験方法で、スランプ8〜23cmとなるコンクリートを評価の対象とし、練り混ぜ直後のコンクリートのスランプと、スランプコーン内で5分間静置した後のコンクリートのスランプとを、前記スランプ試験方法に則ってそれぞれ測定し、得られた両測定結果に基づき、次式(3) からコンクリートのこわばりを評価するコンクリート評価方法。
(3) 3.0>A−B
ただし、Aは練り混ぜ直後のコンクリートのスランプ(cm)、Bはスランプコーン内で5分間静置した後のコンクリートのスランプ(cm)で、A−Bが3.0cm未満であればコンクリートのこわばりが無いと評価し、A−Bが3.0cm以上であればコンクリートのこわばりを有すると評価する。 - 前記コンクリートは、セメント成分が低熱ポルトランドセメント組成物である請求項1に記載のコンクリート評価方法。
- 前記低熱ポルトランドセメント組成物は、
クリンカ鉱物組成中のビーライト量が50〜70重量%、4CaO・Al 2 O 3 ・Fe 2 O 3 が12重量%以下、3CaO・Al 2 O 3 が4重量%以下、残部が3CaO・SiO 2 からなるクリンカと、
石膏とにより構成されるものである請求項2に記載のコンクリート評価方法。
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