JP5353424B2 - 空気電池 - Google Patents

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Description

本発明は、空気電池に関する。
空気電池は、酸素を正極活物質とする電池であり、放電時には空気を外部から取り込んで用いる。そのため、正極及び負極の活物質を電池内に有する他の電池に比べ、電池容器内に占める負極活物質の割合を大きくすることが可能になる。したがって、原理的に放電できる電気容量が大きく、小型化や軽量化が容易という特徴を有している。また、正極活物質として用いる酸素の酸化力は強力であるため、電池起電力が比較的高い。さらに、酸素は資源的な制約がなくクリーンな材料であるという特徴も有するため、空気電池は環境負荷が小さい。このように、空気電池は多くの利点を有しており、ハイブリッド車用電池や携帯機器用電池等への利用が期待されている。
負極に金属が用いられる空気電池(金属空気電池)において、例えば、負極にアルカリ金属が用いられる場合には、電池内部に水が浸入すると、水とアルカリ金属とが反応する虞がある。水とアルカリ金属とが反応すると、空気電池が劣化することが予想される。それゆえ、空気電池の劣化を抑制するためには、空気電池への水の浸入を防止することが重要である。
また、空気電池では、正極(以下において、「空気極」という。)と負極との間に収容された電解質層に含まれる電解質(電解液や固体の電解質)が、空気極と負極との間におけるイオン伝導機能を担う。そして、空気電池から電気エネルギーを取り出すためには、イオンが電解質層を移動することが必要とされる。そのため、空気電池の性能を向上させるためには、イオンが電解質層を移動しやすい形態にすることが重要である。
このような空気電池に関する技術として、例えば特許文献1には、空気極と、金属負極と、疎水性非水電解質とを備え、疎水性非水電解質にトリメチルプロピルアンモニウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを用いる空気電池が開示されている。
特開2005−116317号公報
特許文献1に開示されている技術によれば、疎水性非水電解液を用いているので、水の浸入を防止することが可能になると考えられる。しかしながら、特許文献1に開示されている疎水性非水電解質は、イオン伝導度が低いため、空気電池の性能が低下しやすいという問題があった。
そこで本発明は、水の浸入を防止し、性能の低下を抑制することが可能な空気電池を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段をとる。すなわち、
本発明は、多孔質の空気極と、金属を含む負極と、空気極及び負極の間でイオンの伝導を担う電解質を有する電解質層と、を備えた発電部、並びに、該発電部を収容する筐体を具備し、負極は空気極よりも下方に配設されるとともに、電解質層は空気極と負極との間に配設され、空気極の上面にフッ素溶媒が配設され、電解質層が、フッ素溶媒の浸入を阻止するように構成されていることを特徴とする、空気電池である。
ここに、「空気極の上面にフッ素溶媒が配設され」とは、空気極の上面の一部又は全部にフッ素溶媒が存在するようにフッ素溶媒が配設されることをいう。空気極の上面に配設されたフッ素溶媒の一部は、多孔質の空気極の内部へと浸透する。そして、本発明の空気電池において、空気極の上面に配設されたフッ素溶媒は、筐体に収容される。また、「電解質層が、フッ素溶媒の浸入を阻止するように構成されている」とは、例えば、電解質層が、(1)フッ素溶媒よりも密度が高い親水性の電解液を保持したセパレータによって構成される、(2)電解液を保持したゲル状のポリマーによって構成される、(3)緻密な固体高分子電解質によって構成される、又は、(4)緻密な固体電解質によって構成されることをいう。電解質層をこのように構成することによって、フッ素溶媒が空気極と負極との間へ移動する事態を抑制することが可能になり、空気電池の性能低下を抑制することが可能になる。
また、上記本発明において、電解質層が、電解液を保持したゲル状のポリマーによって構成されていることが好ましい。
本発明の空気電池では、空気極の上面にフッ素溶媒が配設されている。フッ素溶媒は疎水性の溶媒であるため、空気極よりも負極側へ水が浸入する事態を防止することが可能になる。また、フッ素溶媒は多量の酸素を溶存させ得る溶媒であるため、空気極の上面にフッ素溶媒を配設しても、空気極へ酸素を供給することができる。さらに、本発明の空気電池では、電解質層がフッ素溶媒の浸入を阻止するように構成されている。フッ素溶媒は、金属空気電池で空気極と負極との間を移動する金属イオンの伝導性を有していないため、フッ素溶媒が空気極と負極との間へ浸入すると、性能が低下する虞がある。ところが、本発明の空気電池は、電解質層がフッ素溶媒の浸入を阻止するように構成されているので、かかる事態を防止することが可能になる。加えて、このような形態とすることにより、疎水性非水電解質を用いた従来技術よりもイオン伝導度が高い電解質層が備えられる空気電池とすることが可能になる。以上より、本発明によれば、水の浸入を防止し、性能の低下を抑制することが可能な空気電池を提供することができる。
また、本発明において、電解質層が、電解液を保持したゲル状のポリマーによって構成されていることにより、水の浸入を防止し、性能の低下を抑制することが可能な空気電池を容易に提供することができる。
空気電池10の形態例を示す断面図である。
金属を用いた負極を備える空気電池(金属空気電池)において、電池内部へ浸入した水と金属とが反応すると、負極が劣化し、空気電池の性能が低下する虞がある。そのため、かかる事態を回避するためには、電池内部への水の浸入を防止することが必要とされる。本発明者は、鋭意研究の結果、負極よりも上方に配置した空気極の上面にフッ素溶媒を配設することによって、空気極への酸素供給、及び、負極と水との反応防止を両立することが可能になることを知見した。一方、フッ素溶媒は、金属空気電池で一般的に用いられている電解液よりも、密度が高い。そのため、空気極と負極との間へ、一般的に用いられている電解液を単に充填すると、フッ素溶媒が空気極と負極との間へと移動し、空気電池の性能が低下する虞がある。本発明者は、鋭意研究の結果、空気極と負極との間に、(1)フッ素溶媒よりも密度が高い親水性の電解液を充填する、(2)電解液を保持したゲル状のポリマーを充填する、(3)緻密な固体高分子電解質を配設する、又は、(4)緻密な固体電解質を配設することにより、フッ素溶媒が空気極と負極との間へ移動する事態を回避でき、その結果、空気電池の性能低下を抑制することが可能になることを知見した。さらに、本発明者は、鋭意研究の結果、多孔質の空気極を作製する際に、金属イオン伝導性を有する電解質材料を混ぜることにより、酸素と金属イオンと電子とが出会う界面(三相界面)を空気極に形成することができることを知見した。
本発明は、かかる知見に基づいてなされたものである。本発明は、空気極の上面へフッ素溶媒を配設するとともに、フッ素溶媒の浸入を阻止するように構成した電解質層が備えられる形態とすることにより、水の浸入を抑制し、性能の低下を抑制することが可能な空気電池を提供することを、主な要旨とする。
以下、図面を参照しつつ、本発明について説明する。なお、以下に示す形態は本発明の例示であり、本発明は以下に示す形態に限定されるものではない。
図1は、本発明の空気電池10の形態例を概略的に示す断面図である。図1に示すように、空気電池10は、空気極1、空気極1よりも下方に配設された負極2、並びに、空気極1及び負極2の間に配設された電解質層3を備える発電部4と、空気極1の上面に配設されたフッ素溶媒5と、発電部4及びフッ素溶媒5を収容する筐体6と、を具備している。空気電池10において、空気極1は多孔質構造であり、空気極1には、リチウムイオン伝導性を有する材料(以下において、「電解質材料」ということがある。)及び導電性材料が含有されている。また、負極2には、金属リチウムが含有されている。また、筐体6の上面とフッ素溶媒5との間の空間7には、酸素含有ガスが充満している。
緊急時や非常時等に筐体6の内側へ浸入した水と、負極2に含有されているリチウムとが反応すると、負極2が劣化する虞がある。一方、空気電池10は、空気極1の上面に疎水性のフッ素溶媒5が配設されている。そのため、空気電池10によれば、フッ素溶媒5によって、空気極1よりも負極2側へ水が浸入する事態を回避することができる。さらに、空気電池10は、電解質層3が、フッ素溶媒の浸入を阻止するように構成されている。そのため、空気電池10によれば、空気極1の上面に配設したフッ素溶媒が空気極1と負極2との間へ浸入する事態を回避することができる。例えば、空気極1と負極2との間へ浸入したフッ素溶媒が負極2の上面を覆うと、フッ素溶媒はリチウムイオン伝導性能を有していないため、空気電池10の性能が低下するが、空気電池10では、電解質層3によってフッ素溶媒の浸入が阻止されるため、かかる事態を回避することができる。さらに、空気電池10は、多孔質の空気極1に、電解質材料及び導電性材料が含有されている。そのため、空気極1の内部へと浸入したフッ素溶媒に溶存している酸素と、空気極1を移動してきたリチウムイオン及び電子とが、空気極1において反応することができる。したがって、空気電池10によれば、フッ素溶媒5によって水の浸入を防止することができ、空気極1及び電解質層3によって空気電池10の性能低下を抑制することができる。以下、空気電池10について、構成ごとに説明する。
<空気極1>
空気極1は、導電性材料、触媒、電解質材料、及び、これらを結着させる結着材を含有する、多孔質の構造体である。多孔質であるため、空気極1の上面に配設されたフッ素溶媒5が、空気極1の内部にまで浸透する。そして、空気極1を構成している導電性材料及び電解質材料とフッ素溶媒5とが接触することにより、空気極1で電気化学反応を発生させることができる。また、空気極1には、空気極1の内部又は外面に当接して、空気極1の集電を行う空気極集電体(不図示)が設けられる。
空気極1に含有される導電性材料は、空気電池10の使用時における環境に耐えることができ、且つ、導電性を有するものであれば、特に限定されるものではない。空気極1に含有される導電性材料としては、カーボンブラックやメソポーラスカーボン等の炭素材料等を例示することができる。また、反応場の減少及び電池容量の低下を抑制する等の観点から、空気極1における導電性材料の含有量は、10質量%以上とすることが好ましい。また、充分な触媒機能を発揮し得る形態にする等の観点から、空気極1における導電性材料の含有量は、99質量%以下とすることが好ましい。
空気極1に含有される触媒としては、コバルトフタロシアニン及び二酸化マンガン等を例示することができる。充分な触媒機能を発揮し得る形態にする等の観点から、空気極1における触媒の含有量は、1質量%以上とすることが好ましい。また、反応場の減少及び電池容量の低下を抑制する等の観点から、空気極1における触媒の含有量は、90質量%以下とすることが好ましい。
空気極1に含有される電解質材料は、空気極1と負極2との間を移動するリチウムイオンの伝導性を有するものであれば、特に限定されるものではない。空気極1に含有される電解質材料の形態としては、電解液を保持したゲル状のポリマー、固体高分子電解質、又は、固体電解質等を例示することができる。
電解液を保持したゲル状のポリマーが空気極1に含有される場合、ゲル状のポリマーに保持される電解液としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、γ−ブチロラクトン(GBL)等を例示することができる。また、ゲル状のポリマーに保持される電解液としてイオン性液体が用いられる場合、そのイオン性液体としては、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(略式名;TMPA TFSI)、N−メチル−N−プロピルピペリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(略式名;PP13 TFSI)、N−メチル−N−プロピルピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(略式名;P13 TFSI)、N−メチル−N−ブチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(略式名;P14 TFSI)等を例示することができる。また、これらの電解液に溶解される塩としては、LiBF、LiPF、LiClO、LiBOB、LiN(SOCF(略式名;LiTFSI)、LiN(SO(略式名;LiBETI)等を例示することができる。
また、電解液を保持したゲル状のポリマーが空気極1に含有される場合、電解液を保持するゲル状のポリマーとしては、アクリレート系高分子化合物、ポリエチレンオキサイド及びこれを含む架橋体等のエーテル系高分子化合物、ポリメタクリレート等のメタクリレート系高分子化合物、ポリビニリデンフルオライドやポリビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体等のフッ素系高分子化合物等を例示することができる。
また、空気極1に固体高分子電解質が含有される場合、固体高分子電解質の具体例としては、ポリエチレンオキサイドや、ポリエチレンオキサイドとエチルグリシジルエーテルとの共重合体等を挙げることができる。
また、空気極1に固体電解質が含有される場合、固体電解質の具体例としては、LiPGeS、LiGeGaS、LiPSiS、LiSiAlS、LiPS等の硫化物系固体電解質のほか、Li1.5TiSi0.42.612、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO、LiLaZr12、LiBaLaTa12、Li0.5La0.5TiO、Li3.60.4Si0.5、Li3.40.6Ge0.4、LiO−B、LiCl−LiO−B、LiO−SiO、LiSO−LiPO、LiO−Nb、LiO−Ta等を挙げることができる。
空気極1に含有される結着材としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等を例示することができる。空気極1における結着材の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば10質量%以下とすることが好ましく、1質量%以上5質量%以下とすることがより好ましい。
また、空気極1には、空気極1の集電を行う空気極集電体が設けられる。空気極集電体は、導電性材料によって構成され、且つ、空気電池10を作動させて電気エネルギーを取り出すことが可能な形状を有していれば、その形態は特に限定されるものではない。空気極集電体を構成し得る材料としては、例えば、ステンレス鋼、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン、カーボン等を挙げることができる。このような空気極集電体の形状としては、メッシュ(グリッド)状等を挙げることができる。メッシュ状の空気極集電体が設けられる場合、この空気極集電体は、空気極1の内部に配置することができる。
空気極1は、例えば、導電性材料、触媒、電解質材料、及び、結着材を混ぜた塗料を、空気極集電体の表面に、ドクターブレード法にて塗布する等の方法により作製することができる。このほか、導電性材料、触媒、及び、電解質材料を含む混合粉末を熱圧着する等の方法により作製することもできる。
<負極2>
負極2は、負極活物質として機能する金属リチウムを含有している。また、負極2には、負極2の内部又は外面に当接して、負極2の集電を行う負極集電体(不図示)が設けられる。
負極2は少なくとも負極活物質を含有していれば良く、さらに、導電性を向上させる導電性材料や金属リチウム等を固定化させる結着材を含有していても良い。反応場の減少及び電池容量の低下を抑制する等の観点から、負極2における導電性材料の含有量は10質量%以下とすることが好ましい。また、負極2における結着材の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば10質量%以下とすることが好ましく、1質量%以上5質量%以下とすることがより好ましい。負極2に含有され得る導電性材料及び結着材の種類、使用量等は、空気極1の場合と同様にすることができる。
空気電池10では、負極2の内部又は外面に当接して、負極集電体が設けられる。負極集電体は、負極2の集電を行う。空気電池10において、負極集電体の材料は、導電性を有する材料であれば特に限定されるものではない。負極集電体の材料は、銅、ステンレス鋼、及び、ニッケル等を用いることができる。また、負極集電体は、箔状、板状、又は、メッシュ(グリッド)状等の形状にすることができる。空気電池10において、負極2は、例えば空気極1と同様の方法により作製することができる。
<電解質層3>
電解質層3には、空気極1及び負極2の間でリチウムイオンの伝導を担う電解質(液体又は固体)が収容される。電解質層3の形態は、(1)フッ素溶媒よりも高密度の親水性の電解液を保持したセパレータが収容される形態、(2)電解液を保持したゲル状のポリマーが収容される形態、(3)緻密な構造の固体高分子電解質が収容される形態、又は、(4)緻密な構造の固体電解質が収容される形態とすることができる。上記形態(1)によれば、電解質層3に充填される電解液の方が、フッ素溶媒5よりも高密度であり、且つ、電解質層3に充填される電解液は親水性であるため、空気極1よりも下方へと移動しようとするフッ素溶媒5を阻止することができる。また、上記形態(2)によれば、ゲル状のポリマーに保持されている電解液は、ゲル状のポリマーのマトリクスと結合しているため、空気極1よりも下方へと移動しようとするフッ素溶媒5を阻止することができる。また、上記形態(3)及び(4)によれば、電解質層3が緻密に構成されるため、空気極1よりも下方へと移動しようとするフッ素溶媒5を阻止することができる。
フッ素溶媒よりも高密度の電解液を保持したセパレータが収容される形態の電解質層3である場合、セパレータに保持される電解液としては、TMPA TFSI、PP13 TFSI、P13 TFSI等のイオン性液体等を例示することができる。さらに、空気極1の上面に配設されるフッ素溶媒としては、メチルパーフルオロプロピネート、エチルパーフルオロプロピネート、エチルパーフルオロブチレート、メチルパールフルオロオクタネート等を例示することができる。そして、セパレータに保持される電解液と、空気極1の上面に配設されるフッ素溶媒との組合せ例としては、(電解液、フッ素溶媒)=(PP13 TFSI、エチルパーフルオロプロピネート)、(P13 TFSI、エチルパーフルオロブチレート)、(TMPA TFSI、メチルパーフルオロオクタネート)等を挙げることができる。また、電解液に溶解される塩としては、LiBF、LiPF、LiClO、LiBOB、LiTFSI、LiBETI等を例示することができる。また、電解液の塩濃度としては、1mol/L等を例示することができる。また、電解液を保持するセパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等の多孔膜のほか、樹脂不織布、ガラス繊維不織布等の不織布等を例示することができる。
また、電解液を保持したゲル状のポリマーが収容される形態の電解質層3である場合、ゲル状のポリマーに保持されるフッ素溶媒よりも低密度の電解液としては、PC、EC、DEC、DMC、EMC、GBL等を例示することができる。また、ゲル状のポリマーに保持されるフッ素溶媒よりも高密度の電解液としては、TMPA TFSI、PP13 TFSI、P13 TFSI、P14 TFSI等のイオン性液体等を例示することができる。また、これらの電解液に溶解される塩としては、LiBF、LiPF、LiClO、LiBOB、LiTFSI、LiBETI等を例示することができる。なお、空気電池10において、電解質層3に、電解液を保持したゲル状のポリマーが収容される場合、ゲル状のポリマーに保持される電解液の密度と、フッ素溶媒5の密度との大小関係は、特に限定されるものではなく、フッ素溶媒5と等しい密度の電解液がゲル状のポリマーに保持される形態とすることも可能である。
また、電解液を保持したゲル状のポリマーが収容される形態の電解質層3である場合、電解液を保持するゲル状のポリマーとしては、アクリレート系高分子化合物、ポリエチレンオキサイド及びこれを含む架橋体等のエーテル系高分子化合物、ポリメタクリレート等のメタクリレート系高分子化合物、ポリビニリデンフルオライドやポリビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体等のフッ素系高分子化合物等を例示することができる。
また、緻密な構造の固体高分子電解質が収容される形態の電解質層3である場合、電解質層3に収容される固体高分子電解質の具体例としては、ポリエチレンオキサイドや、ポリエチレンオキサイドとエチルグリシジルエーテルとの共重合体等を挙げることができる。また、電解質層3を構成する固体高分子電解質の構造は、フッ素溶媒の浸入を阻止し得る程度に緻密であれば、緻密さの程度は特に限定されるものではない。
また、緻密な構造の固体電解質が収容される形態の電解質層3である場合、電解質層3に収容される固体電解質の具体例としては、LiPGeS、LiGeGaS、LiPSiS、LiSiAlS、LiPS等の硫化物系固体電解質のほか、Li1.5TiSi0.42.612、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO、LiLaZr12、LiBaLaTa12、Li0.5La0.5TiO、Li3.60.4Si0.5、Li3.40.6Ge0.4、LiO−B、LiCl−LiO−B、LiO−SiO、LiSO−LiPO、LiO−Nb、LiO−Ta等を挙げることができる。また、電解質層3を構成する固体電解質の構造は、フッ素溶媒の浸入を阻止し得る程度に緻密であれば、緻密さの程度は特に限定されるものではない。このような固体電解質によって構成される緻密な構造の電解質層3は、焼結条件を適切に制御することにより、作製することができる。
<フッ素溶媒5>
フッ素溶媒5は、空気極1へと供給される酸素を溶解させることができ、且つ、水の浸入を阻止し得る性質(疎水性)を有する公知のフッ素溶媒を、適宜用いることができる。フッ素溶媒5の具体例としては、C14、C16、C18、C20、ヘキサフルオロベンゼン(HFB)、ハイドロフルオロエーテル(HFE)等を挙げることができる。空気電池10において、フッ素溶媒5としてHFEを用いる場合には、例えば、3M社のNovec HFE−7100(「Novec」は3M社の登録商標。以下において同じ。)、Novec HFE−7200、Novec HFE−7300、Novec HFE−7600等を用いることができる。
<筐体6>
筐体6には、発電部4、フッ素溶媒5、及び、酸素含有ガスが少なくとも収容される。空気電池10において、筐体6は、その形状は特に限定されるものではない。筐体6の構成材料は、金属空気電池の筐体に使用可能な材料を適宜用いることができる。また、筐体6に収容される(空間7に存在させる)酸素含有ガスは、例えば、圧力が1.01×10Pa、酸素濃度が99.99%の酸素ガス等を用いることができる。
空気電池10に関する上記説明では、発電部4と大気とが筐体6の上面によって隔てられ、発電部4が大気に開放されていない形態を例示したが、本発明の空気電池は当該形態に限定されるものではない。本発明の空気電池の筐体は、上蓋が備えられない形態や、上蓋に大気を取り入れるための複数の穴が設けられている形態とすることも可能である。ただし、フッ素溶媒5、又は、電解質層3に電解液が用いられる場合にはフッ素溶媒5及び電解液の枯渇を抑制可能な構成とする等の観点からは、発電部4が大気に開放されていない形態とすることが好ましい。
また、空気電池10に関する上記説明では、負極2にLiが含有される形態の本発明の空気電池について説明したが、本発明の技術思想は、Na、K、Mg、Ca、Al、Fe、Znやこれらを含む合金等を含有する負極を備えた空気電池にも適用することが可能である。このような本発明の空気電池の用途としては、車両搭載用途、定置型電源用途、家庭用電源用途、及び、携帯型情報機器等を例示することができる。
本発明の空気電池において、筐体に収容される発電部の数は1つでも良く、2以上であっても良い。筐体に2以上の発電部が収容される場合、これらの発電部それぞれに備えられる空気極及び負極は、電気的に直列に接続されていても良く、電気的に並列に接続されていても良い。
本発明の空気電池は、電気自動車や携帯型情報機器の動力源等に利用することができる。
1…空気極
2…負極
3…電解質層
4…発電部
5…フッ素溶媒
6…筐体
7…空間
10…空気電池

Claims (2)

  1. 多孔質の空気極と、金属を含む負極と、前記空気極及び前記負極の間でイオンの伝導を担う電解質を有する電解質層と、を備えた発電部、並びに、該発電部を収容する筐体を具備し、
    前記負極は前記空気極よりも下方に配設されるとともに、前記電解質層は前記空気極と前記負極との間に配設され、
    前記空気極の上面にフッ素溶媒が配設され、
    前記電解質層が、前記フッ素溶媒の浸入を阻止するように構成されていることを特徴とする、空気電池。
  2. 前記電解質層が、電解液を保持したゲル状のポリマーによって構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の空気電池。
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