JP5387039B2 - 金属空気電池及びその製造方法 - Google Patents
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第一の本発明は、正極、非水溶媒を含む液状の電解質層、及び負極をこの順に有し、正極は、正極材料と当該正極材料を保持する親水性バインダーとを含む親水性領域、及び、正極材料と当該正極材料を保持する疎水性バインダーとを含む疎水性領域を有し、親水性領域と電解質層との間に、疎水性領域が設けられる、金属空気電池である。
図1は、金属空気電池100の全体を概略的に示す図である。図1に示すように、金属空気電池100は、正極10と、負極30と、正極10及び負極30の間に介在する電解質層20とを有し、これらを内包する電池ケース40を備えている。電池ケース40には、空気孔50が備えられており、ここから空気(酸素)が供給されて、正極10の電池反応に供される。また、正極10及び負極30には、それぞれ電極端子(不図示)が備えられ、金属空気電池100ではこの電極端子を介して、電池反応にて発生した電気エネルギーを外部へ取り出すことができる。図2は、金属空気電池100に備えられる正極10の一部を拡大して示す図である。図2においては、紙面右側が金属空気電池100の空気孔50側、紙面左側が電解質層20及び負極30側である。以下、金属空気電池100について、構成ごとに説明する。
正極10は、酸素を活物質として、酸素の酸化還元反応を行う電極である。正極10には、正極集電体11、及び正極層12が備えられている。
電解質層20は、電解質及びセパレータを有する。金属空気電池100では、正極10が炭素材料、後述する負極30が金属リチウムであるため、電解質層はリチウムイオンを伝導可能な電解質を有している。電解質としては、リチウムイオンを伝導可能な電解質として従来使用されてきた電解質を用いることができ、特にリチウム塩を有する液状電解質(電解液)が用いられる。具体的には、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiN(CF3SO2)2、LiCF3SO3、LiCF3CO2やリチウムのイミド塩等と、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、アセトニトリル、プロピオニトリル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ニトロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン等の非水溶媒と、を混合したものを挙げることができる。セパレータとしては、上記電解液とともに従来使用されてきたセパレータを用いることができ、アルミナ、シリカ、酸化マグネシウム、酸化チタン、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素等の無機物粒子、又は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、セルロース、ポリイミド、及びポリアミド等の有機樹脂、ガラス繊維、さらには、上述の無機物粒子と有機樹脂との混合物及び成形体等とすることができる。金属空気電池100では、このような電解液をセパレータに含浸させることで、電解質層20とされる。
負極30には、負極集電体31、及び金属リチウム又はリチウム合金を有する負極層32が備えられている。負極集電体31としては、多孔質支持体、網目状支持体、繊維、不織布等、従来から集電体として用いられる材質であれば特に限定されず適用できる。具体的には金属メッシュが好ましい。負極層30は、例えば、厚膜や薄膜とした金属リチウムを、負極集電体31に圧着することによって作製される。
電池ケース40には、上記正極10、電解質層20、及び負極30を有する積層体が収容される。電池ケース40としては、従来から金属空気電池の電池ケース40として用いられてきたものを特に限定されずに適用できる。また、電池ケース40の正極10近傍には、空気孔50が設けられており、ここから空気(酸素)を取り込んで正極10の電池反応に供される。空気孔50の形態は、従来の金属空気電池と同様の形態とすることができる。電池ケース40の内部から外部には電極端子(不図示)が伸びており、それぞれ正極集電体11や負極集電体31へと接続される。電池ケース40の形状は、収容される正極10等の形状に合わせて適宜選択することができ、例えば、円筒状、矩形の筒状等とすることができる。
金属空気電池100は、図3又は図4に示される各工程を有する製造方法によって製造され得る。
図3に示す第1実施形態にかかる本発明の金属空気電池100の製造方法は、親水性電極作製工程(S1)と、疎水性電極作製工程(S2)と、正極作製工程(S3)と、電解質層設置工程(S4)と、負極設置工程(S5)と、を有する。以下、工程ごとに説明する。
工程S1は、正極10において水分を捕捉・吸着する部分となる親水性電極10aを作製する工程である。親水性電極10aは正極10のうち、正極層12aとなる部分と対応している。具体的には、正極材料15としてのカーボンブラック13や触媒14、親水性バインダー16a、及び溶媒を混合し、固形成分を溶媒に分散させて親水性インクを作製する。用いる溶媒としては、アセトンやDMF、NMP等、揮発性のある液体であって、沸点が200℃以下のものが好ましい。作製した親水性インクは、ドクターブレードやスプレーコート等の公知の方法によって支持体上に塗布される。当該支持体は正極10において正極集電体11としても機能し得るため、上記正極集電体11と同様の形態とすればよい。支持体上に塗布された親水性インクは、公知の方法にて乾燥されて溶媒が除去される。これにより、親水性電極10aが作製される。
工程S2は、正極10において電解液を保持し、空気をブロックする部分となる疎水性電極10bを作製する工程である。疎水性電極10bは正極10のうち正極層12bとなる部分と対応している。具体的には、正極材料15としてのカーボンブラック13や触媒14、疎水性バインダー16b、及び溶媒を混合し、固形成分を溶媒に分散させて疎水性インクを作製する。工程S2では、上記工程S1と同様の溶媒を用いることができる。作製した疎水性インクは、ドクターブレードやスプレーコート等の公知の方法によって支持体上に塗布される。当該支持体は正極10において正極集電体11としても機能し得るため、上記正極集電体11と同様の形態とすればよい。支持体上に塗布された疎水性インクは、公知の方法にて乾燥されて溶媒が除去される。これにより、疎水性電極10bが作製される。
工程S3は、工程S1及び工程S2で作製した親水性電極10a及び疎水性電極10bを重ね合わせて積層体を作製する工程である。こうして作製した積層体が正極10となる。尚、図1及び図2では、疎水性電極10bの支持体11の記載を省略している。
工程S4は、工程S1〜工程S3で作製した正極10の疎水性電極10b側に電解質層20を設置する工程である。例えば、セパレータと電解液とを有する電解質層20とする場合、あらかじめ電解液に含浸させたセパレータを、正極10に積層して電解質層20を形成してもよいし、セパレータのみを正極10に積層して、下記負極設置工程S5の後や電池ケースへと収容した後にセパレータ部分に電解液を供給して電解質層20としてもよい。いずれの場合でも、電解液が電解質層20から正極10や負極30へと浸出し、電極と電解質とが接触するように形成される。
工程S5は、工程S1〜工程S4で作製した正極/電解質層積層体のうち、電解質層20側の表面に、さらに負極30を設置する工程である。
図4に示すように、第2実施形態にかかる本発明の金属空気電池の製造方法は、疎水性電極作製工程(S11)と、親水性付与インク作製工程(S12)と、正極作製工程(S13)と、電解質層設置工程(S14)と、負極設置工程(S15)と、を有する。以下、工程ごとに説明する。
工程S11は、正極10において電解液を保持・ブロックする部分となる疎水性電極10bを作製する工程である。工程S11は、上記工程S2と同様であるため、説明を省略する。
工程S12は、正極10に親水性を付与するインク(親水性付与インク)を作製する工程である。具体的には、親水性バインダー16aを溶媒に混合、好ましくは溶解させる。溶媒としては、親水性バインダー16aを混合、好ましくは溶解させることができるものであれば、特に限定はされるものではなく、上記工程S1にて例示した溶媒等を用いることができる。親水性付与インク中には正極材料15が含まれていても良く、含まれていなくても良い。
工程S13は、工程S11で作製した疎水性電極10bの一面側に親水性付与インクを塗布し、乾燥することにより、疎水性電極10bの一面側に親水性電極10a(正極層12a)を形成して、正極10を作製する工程である。親水性付与インクの塗布方法は、上記と同様公知の塗布方法を用いることができる。疎水性電極10bに親水性付与インクを塗布しても、親水性付与インクの親水性バインダー16aが、疎水性電極10bの表面から奥深く(電解質層20側となる側)に浸透することはない。また、親水性付与インクの濃度や粘度調整により、疎水性電極10bの所望の深さまで親水性を付与することができる。すなわち、工程S13により、疎水性電極10bの表面近傍(空気孔50側となる側)のみに親水性領域を有する正極10を作製することができる。
工程S14は、工程S11〜工程S13を経て作製した正極10の疎水性電極10b側(疎水性電極10bの親水性付与インク16aが塗布されていない側)に電解質層20を設置する工程である。工程S14は、上記工程S4と同様であるため、説明を省略する。
工程S15は、工程S11〜工程S14で作製した正極/電解質層積層体のうち、電解質層20側の表面に、さらに負極30を設置する工程である。
10a 親水性電極(親水性領域)
10b 疎水性電極(疎水性領域)
11 集電体(支持体)
12 正極層
13 導電材料
14 触媒
15 正極材料
16 バインダー
16a 親水性バインダー
16b 疎水性バインダー
20 電解質層
30 負極
40 電池ケース
50 空気孔(空気供給部)
100 金属空気電池
Claims (4)
- 正極、非水溶媒を含む液状の電解質層、及び負極をこの順に有し、
前記正極は、正極材料と該正極材料を保持する親水性バインダーとを含む親水性領域、及び、正極材料と該正極材料を保持する疎水性バインダーとを含む疎水性領域を有し、
前記親水性領域と前記電解質層との間に、前記疎水性領域が設けられる、金属空気電池。 - 前記正極材料には高比表面積を有するカーボンブラックが含まれる、請求項1に記載の金属空気電池。
- 親水性バインダーと正極材料と溶媒とを混合して親水性インクを作製し、該親水性インクを支持体上に塗布したのち乾燥させて親水性電極とする、親水性電極作製工程と、
疎水性バインダーと正極材料と溶媒とを混合して疎水性インクを作製し、該疎水性インクを支持体上に塗布したのち乾燥させて疎水性電極とする、疎水性電極作製工程と、
作製された前記親水性電極と前記疎水性電極とを積層して正極とする、正極作製工程と、
前記正極の前記疎水性電極側の面に接するように非水電解液を含む液状の電解質層を設ける、電解質層設置工程と、
前記電解質層の前記正極側とは反対側の面に負極を設ける、負極設置工程と、
を有する、金属空気電池の製造方法。 - 疎水性バインダーと正極材料と溶媒とを混合して疎水性インクを作製し、該疎水性インクを支持体上に塗布したのち乾燥させて疎水性電極とする、疎水性電極作製工程と、
親水性バインダーと溶媒とを混合して親水性付与インクとする、親水性付与インク作製工程と、
作製された前記疎水性電極の一面に前記親水性付与インクを塗布したのち乾燥させて正極とする、正極作製工程と、
前記疎水性電極の他面に非水電解液を含む液状の電解質層を設ける、電解質層設置工程と、
前記電解質層の前記正極側とは反対側の面に負極を設ける、負極設置工程と、
を有する、金属空気電池の製造方法。
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