以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。また、本実施の形態を説明するための全図において同一機能を有するものは同一の符号を付すようにし、その繰り返しの説明は可能な限り省略するようにしている。以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(参考例1)
参考例1の半導体装置の製造方法を図1のフロー図に沿って説明する。
まず、前工程100では、厚さ方向に沿って互いに反対側となる主面と裏面とを有する半導体ウエハ(以下、ウエハという)を用意し、そのウエハの主面(デバイス形成面)に複数の半導体チップ(以下、チップという)を形成する。この前工程100は、ウエハプロセスまたはウエハファブリケーションとも呼ばれ、ウエハの主面にチップ(集積回路(素子や配線))を形成し、プローブ等により電気的試験を行える状態にするまでの工程である。前工程には、成膜工程、不純物導入(拡散またはイオン注入)工程、フォトリソグラフィ工程、エッチング工程、メタライズ工程、洗浄工程および各工程間の検査工程等がある。
図2はこの前工程100後のウエハ1Wの主面の全体平面図、図3は図2のX1−X1線の断面図、図4は図2のウエハ1Wの要部拡大平面図、図5は図4の領域R1の拡大平面図、図6は図5のX2−X2線の断面図、図7は図6のウエハ1Wの断面構造の詳細例を示したウエハ1Wの要部断面図である。なお、図2の符号Nはノッチを示している。
ウエハ1Wは、図2および図3に示すように、例えば直径300mm程度の平面略円形状の半導体薄板からなり、その主面には、例えば平面長方形状の複数のチップ1Cが、行列状に配置されている。
各チップ1Cには、例えばフラッシュメモリ等のようなメモリ回路が形成されている。また、各チップ1Cの長手方向の一端には、図4および図5に示すように、複数のボンディングパッド(以下、ボンディングパッドをパッドという)1LBが、チップ1Cの長手方向の一端の辺に沿って並んで配置されている。パッド1LBは、チップ1Cに形成されたメモリ回路(集積回路)の電極をチップ1Cの外部に引き出す外部端子であり、配線を通じてメモリ回路形成用の素子と電気的に接続されている。なお、チップ1Cに形成される集積回路はメモリ回路の他に、マイクロプロセッサ等のような論理回路が形成される場合もある。
各チップ1Cの外周には切断領域(チップ分離領域)CRが配置されている。この切断領域CRには、図4および図5に示すように、テスト(TEG:Test Element Group)用のパッド1LBtやアライメントターゲットAmが配置されている。テスト用のパッド1LBtは、例えば平面方形状に形成されており、その大きさは、例えば50μm×50μm程度である。このパッド1LBtは、TEG用の素子の電極をチップ1Cの外部に引き出す外部端子であり、配線を通じてTEG用の素子と電気的に接続されている。TEG用の素子は、チップ1C内に形成された素子の電気的特性の測定や試験に使用される素子である。上記アライメントターゲットAmは、例えば平面十字状に形成されているが、十字状の他に、L字状やドット状に形成される場合もある。アライメントターゲットAmは、例えば露光装置等のような製造装置とウエハ1Wのチップ1Cとの位置合わせの際に用いられるパターンである。
このようなウエハ1Wを構成する半導体基板(以下、基板という)1Sは、例えばシリコン(Si)単結晶からなり、その主面には素子および配線層1Lが形成されている。この段階のウエハ1Wの厚さ(基板1Sの厚さと配線層1Lの厚さとの総和)D1(図3参照)は、例えば775μm程度である。
上記配線層1Lには、図6および図7に示すように、層間絶縁膜1Li、配線、パッド(外部端子)1LB、テスト用のパッド1LBt、アライメントターゲットAmおよび表面保護膜(以下、保護膜という)1Lpが形成されている。層間絶縁膜1Liは、複数の層間絶縁膜1Li1,1Li2,1Li3を有している。
層間絶縁膜1Li1には、絶縁膜2a,2bが形成されている。絶縁膜2a,2bは、基板1S上に交互に堆積されている。絶縁膜2aは、例えば酸化シリコン(SiO2等)のような無機系の絶縁膜により形成されている。絶縁膜2bは、例えば窒化シリコン(Si3N4等)のような絶縁膜により形成されている。絶縁膜2bは、絶縁膜2aよりも薄く、例えばエッチングストッパとして機能を有している。層間絶縁膜1Li1には、プラグ(コンタクトプラグ)PL1,PL2および配線L1が形成されている。
プラグPL1,PL2は、孔H1,H2内に導体膜が埋め込まれることで形成されている。プラグPL1,PL2を形成する導体膜は、主導体膜と、その外周面(底面および側面)を覆うように形成されたバリアメタル膜とを有している。主導体膜は、例えばタングステン(W)により形成されており、バリアメタル膜よりも厚く形成されている。バリアメタル膜は、例えば窒化チタン(TiN)、窒化タングステン(WN)、窒化タンタル(TaN)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)またはチタンタングステン(TiW)あるいはそれらの積層膜により形成されている。上記配線L1は、例えば埋込配線とされている。すなわち、この配線L1は、絶縁膜2a,2bに形成された配線溝T1内に導体膜が埋め込まれることで形成されている。配線L1の導体膜の構成は上記プラグPL1,PL2と同じである。
上記層間絶縁膜1Li2には、絶縁膜3a,3b,3c,3dおよび配線L2,L3が形成されている。絶縁膜3aは、例えば炭化シリコン(SiC)により形成されており、エッチングストッパとしての機能を有している。絶縁膜3aは、絶縁膜3b,3c,3dよりも薄く形成されている。
絶縁膜3bは、半導体装置の動作速度の向上の観点から、例えば有機ポリマーまたは有機シリカガラスのような、誘電率が酸化シリコンの誘電率(例えば3.9〜4.0)よりも低い低誘電率膜(Low−k膜)により形成されている。絶縁膜3bは、絶縁膜3a,3c,3dよりも厚く形成されている。
上記有機ポリマー(完全有機系低誘電性層間絶縁膜)としては、例えばSiLK(米The Dow Chemical Co製、比誘電率=2.7、耐熱温度=490℃以上、絶縁破壊耐圧=4.0〜5.0MV/Vm)またはポリアリルエーテル(PAE)系材料のFLARE(米Honeywell Electronic Materials製、比誘電率=2.8、耐熱温度=400℃以上)等がある。このPAE系材料は、基本性能が高く、機械的強度、熱的安定性および低コスト性に優れるという特徴を有している。
上記有機シリカガラス(SiOC系材料)としては、例えばHSG−R7(日立化成工業製、比誘電率=2.8、耐熱温度=650℃)、Black Diamond(米Applied Materials,Inc製、比誘電率=3.0〜2.4、耐熱温度=450℃)またはp−MTES(日立開発製、比誘電率=3.2)等がある。この他のSiOC系材料としては、例えばCORAL(米Novellus Systems,Inc製、比誘電率=2.7〜2.4、耐熱温度=500℃)、Aurora2.7(日本エー・エス・エム社製、比誘電率=2.7、耐熱温度=450℃)等がある。
また、他の低誘電率膜材料としては、例えばFSG等のような完全有機系のSiOF系材料、HSQ(hydrogen silsesquioxane)系材料、MSQ(methyl silsesquioxane)系材料、ポーラスHSQ系材料、ポーラスMSQ材料またはポーラス有機系材料を用いることもできる。
上記HSQ系材料としては、例えばOCD T−12(東京応化工業製、比誘電率=3.4〜2.9、耐熱温度=450℃)、FOx(米Dow Corning Corp.製、比誘電率=2.9)またはOCL T−32(東京応化工業製、比誘電率=2.5、耐熱温度=450℃)等がある。
上記MSQ系材料としては、例えばOCD T−9(東京応化工業製、比誘電率=2.7、耐熱温度=600℃)、LKD−T200(JSR製、比誘電率=2.7〜2.5、耐熱温度=450℃)、HOSP(米Honeywell Electronic Materials製、比誘電率=2.5、耐熱温度=550℃)、HSG−RZ25(日立化成工業製、比誘電率=2.5、耐熱温度=650℃)、OCL T−31(東京応化工業製、比誘電率=2.3、耐熱温度=500℃)またはLKD−T400(JSR製、比誘電率=2.2〜2、耐熱温度=450℃)等がある。
上記ポーラスHSQ系材料としては、例えばXLK(米Dow Corning Corp.製、比誘電率=2.5〜2)、OCL T−72(東京応化工業製、比誘電率=2.2〜1.9、耐熱温度=450℃)、Nanoglass(米Honeywell Electronic Materials製、比誘電率=2.2〜1.8、耐熱温度=500℃以上)またはMesoELK(米Air Productsand Chemicals,Inc、比誘電率=2以下)等がある。
上記ポーラスMSQ系材料としては、例えばHSG−6211X(日立化成工業製、比誘電率=2.4、耐熱温度=650℃)、ALCAP−S(旭化成工業製、比誘電率=2.3〜1.8、耐熱温度=450℃)、OCL T−77(東京応化工業製、比誘電率=2.2〜1.9、耐熱温度=600℃)、HSG−6210X(日立化成工業製、比誘電率=2.1、耐熱温度=650℃)またはsilica aerogel(神戸製鋼所製、比誘電率1.4〜1.1)等がある。
上記ポーラス有機系材料としては、例えばPolyELK(米Air Productsand Chemicals,Inc、比誘電率=2以下、耐熱温度=490℃)等がある。
上記SiOC系材料、SiOF系材料は、例えばCVD法(Chemical Vapor Deposition)によって形成されている。例えば上記Black Diamondは、トリメチルシランと酸素との混合ガスを用いたCVD法等によって形成される。また、上記p−MTESは、例えばメチルトリエトキシシランとN2Oとの混合ガスを用いたCVD法等によって形成される。それ以外の上記低誘電率の絶縁材料は、例えば塗布法で形成されている。
上記絶縁膜3cは、例えば酸化シリコンにより形成されている。この絶縁膜3cは、例えば化学機械研磨処理(CMP;Chemical Mechanical Polishing)時における低誘電率膜の機械的強度の確保、表面保護および耐湿性の確保等のような機能を有している。この絶縁膜3cは、絶縁膜3dとほぼ同じ厚さで形成されている。絶縁膜3cの材料は、上記した酸化シリコン膜に限定されるものではなく種々変更可能であり、例えば窒化シリコン(SixNy)膜、炭化シリコン膜または炭窒化シリコン(SiCN)膜を用いても良い。これら窒化シリコン膜、炭化シリコン膜または炭窒化シリコン膜は、例えばプラズマCVD法によって形成することができる。プラズマCVD法で形成された炭化シリコン膜としては、例えばBLOk(AMAT社製、比誘電率=4.3)がある。
上記絶縁膜3dは、例えば炭窒化シリコンにより形成されている。この絶縁膜3dは、エッチングストッパとしての機能の他に、配線L2,L3の主導体膜を形成する銅の拡散を抑制または防止する機能を有している。
上記配線L2,L3は、上記埋込配線とされている。すなわち、配線L2,L3は、配線溝T2,T3に導体膜が埋め込まれることで形成されている。配線L2,L3の導体膜は、上記配線L3と同様に、主導体膜と、その外周面(底面および側面)を覆うように形成されたバリアメタル膜とを有している。主導体膜は、例えば銅(Cu)により形成されており、バリアメタル膜よりも厚く形成されている。バリアメタル膜の材料は、上記プラグPL1,PL2と同じである。配線L3は、孔H3を通じて配線L2と電気的に接続されている。配線L3の配線溝T3の導体膜と孔H3の導体膜とは一体的に形成されている。
上記層間絶縁膜1Li3は、例えば酸化シリコンにより形成されている。層間絶縁膜1Li3には、プラグPL3が形成されている。このプラグPL3は、孔H4内に導体膜が埋め込まれることで形成されている。プラグPL3を形成する導体膜は、上記プラグPL1,PL2と同じである。
この層間絶縁膜1Li3上には、配線、上記パッド1LB,1LBtおよび上記アライメントターゲットAmが形成されている。この配線、パッド1LB,1LBtおよびアライメントターゲットAmは、例えばアルミニウム等のような金属膜により形成されている。このような最上の配線およびパッド1LB,1LBt等は、配線層1Lの最上層に形成された保護膜1Lpにより覆われている。保護膜1Lpは、例えば酸化シリコンのような無機系の絶縁膜1Lp1と、その上に堆積された、例えば窒化シリコンのような無機系の絶縁膜1Lp2と、さらにその上に堆積された、例えばポリイミド樹脂のような有機系の絶縁膜1Lp3との積層膜により形成されている。この保護膜1Lpの一部には、開口部5が形成されており、そこからパッド1LB,1LBtの一部が露出されている。
ところで、参考例1においては、上記テスト用のパッド1LBt(TEG用の素子や配線も含む)やアライメントターゲットAmが切断領域CRの幅方向(短方向)の片側に寄せて配置されている。すなわち、上記テスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAmが切断領域CRの幅方向中央からずれて配置されている。そして、ステルスダイシング時にレーザ光が照射される切断線CLは、上記テスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAmの配置線上を通過せず、上記テスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAmの脇を通過するようになっている。すなわち、切断線CLは、テスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAmを跨がずに、テスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAmから離れた位置を通過するようになっている。
切断線CLがテスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAm等のような金属パターンに重なる場合、その金属パターンのある箇所と無い箇所とで機械的強度にばらつきが生じることや上記低誘電率膜は脆く金属パターンから剥離し易いこと等により、綺麗に分割できない。また、切断線CLがパッド1LBtやアライメントターゲットAm等のような金属パターンに重なる場合、切断時に上記金属パターンの切断部に、ひげ状の導体異物が残され、その導体異物がボンディングワイヤや電極等に接触して短絡不良を引き起こし、薄型の半導体装置の信頼性や歩留まりが低下する問題がある。
これに対して参考例1では、切断線CLがテスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAmに重ならないので、ウエハ1Wを綺麗に切断することができる。また、テスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAm等の金属パターンは切断されないので、上記のようなひげ状の導体異物の発生を防止することができる。したがって、薄型の半導体装置の信頼性や歩留まりを向上させることができる。
また、切断線CLがテスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAm等のような金属パターンに重なる場合に、ステルスダイシング処理時にウエハ1Wの主面側からレーザ光を照射すると、パッド1LBtやアライメントターゲットAm等が邪魔になって基板1Sに改質領域を形成することが困難になる。これに対して参考例1では、切断線CLはテスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAmに重ならないので、ステルスダイシング処理時にレーザ光をウエハ1Wの主面から照射しても基板1Sに良好に後述の改質領域を形成することができる。したがって、レーザ照射の自由度を向上させることができる。
次いで、図1のテスト工程101では、ウエハ1Wの各チップ1Cのパッド1LBおよび切断領域CRのテスト用のパッド1LBtにプローブを当てて各種の電気的特性検査を行う。このテスト工程は、G/W(Good chip/Wafer)チェック工程とも呼ばれ、主としてウエハ1Wに形成された各チップ1Cの良否を電気的に判定する試験工程である。
続く図1の後工程102は、上記チップ1Cを封止体(パッケージ)に収納し完成するまでの工程であり、裏面加工工程102A、チップ分割工程102Bおよび組立工程102Cを有している。以下、裏面加工工程102A、チップ分割工程102Bおよび組立工程102Cについて順に説明する。
裏面加工工程102Aは、ウエハ1Wを薄型化する工程である。まず、裏面加工工程では、ウエハ1Wを治具に収容する。図8はウエハ1Wが収容された治具7の全体平面図、図9は図8のX3−X3線の断面図をそれぞれ示している。なお、図8ではウエハ1Wの主面のチップ1Cを破線で示した。
治具7は、テープ7aとリング(枠体)7bとを有している。テープ7aのテープベース7a1は、例えば柔軟性を持つプラスチック材料からなり、その主面には接着層7a2が形成されている。テープ7aは、その接着層7a2によりウエハ1Wの主面(チップ形成面)にしっかりと貼り付けられている。テープ7aの厚さ(テープベース7a1の厚さと接着層7a2の厚さとの総和)は、あまり厚いとその後の工程でのハンドリングやテープ7aの剥離が難しくなるので、例えば130〜210μm程度の薄いものが使用されている。このテープ7aとして、例えばUVテープを使用することも好ましい。UVテープは、接着層7a2の材料として紫外線(UV)硬化性樹脂が使用された粘着テープであり、強力な粘着力を持ちつつ、紫外線を照射すると接着層7a2の粘着力が急激に弱くなる性質を有している(工程102A1)。
参考例1では、このテープ7aの主面(ウエハ1Wの貼付面)の外周に剛性を持つリング7bが貼り付けられている。リング7bは、テープ7aが撓まないように支える機能を有する補強部材である。この補強の観点からリング7bは、例えばステンレス等のような金属により形成することが好ましいが、金属と同程度の硬度を持つように厚さを設定したプラスチック材料により形成しても良い。リング7bの外周には、切り欠き部7b1,7b2が形成されている。この切り欠き部7b1,7b2は、治具7のハンドリング時や治具7とこれを載置する製造装置との位置合わせ時に使用する他、製造装置に治具7を固定する際の引っかかり部として使用される。なお、リング7bはテープ7aの裏面(ウエハ1Wの貼付面とは反対側の面)に貼り付けても良い。また、リング7bは、テープ37にウエハ1Wを貼り付ける前に貼り付けても良いし、テープ7aにウエハ1Wを貼り付けた後に貼り付けても良い。
続いて、ウエハ1Wを治具7に収めた状態で、ウエハ1Wの厚さを測定し、その測定結果に基づいて研削量および研磨量を算出した後(工程102A2)、裏面研削(工程102A3)、研磨工程(工程102A4)に移行する。図10は裏面加工工程時のウエハ1Wおよび治具7の断面図、図11は裏面加工工程後のウエハ1Wおよび治具7の断面図を示している。ここでは、図10に示すように、研削研磨工具8および吸着ステージ9を回転させて、上記研削量および研磨量に基づいて、ウエハ1Wの裏面に対して研削処理および研磨処理を順に施す。これにより、図11に示すように、ウエハ1Wの厚さを、例えば100μm以下(ここでは、例えば90μm程度)の極めて薄い厚さ(極薄)にする。上記研磨処理としては、研磨パッドとシリカとを用いて研磨する方法や化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)法の他、例えば硝酸とフッ酸とを用いたエッチング法を用いても良い。ここで、チップ1Cの厚さが薄くなり100μm以下になってくると上記研削処理によりウエハ1Wの裏面に生じた損傷やストレスが原因でチップの抗折強度が低下しチップ1Cを実装する時の圧力でチップが割れる不具合が生じ易くなる。そこで、研削処理後に研磨処理を施すことにより、研削処理によりウエハ1Wの裏面に生じた損傷やストレスを低減または無くすことができるので、薄いチップ1Cの抗折強度を向上させることができる。
以上のような裏面加工工程後、吸着ステージ9の真空吸引状態を解除し、ウエハ1Wを保持する治具7を裏面加工装置から取り出す。この時、参考例1では、ウエハ1Wが極薄とされていてもリング7bによりテープ7aをしっかりと支えることができるので、極薄のウエハ1Wのハンドリングや搬送を容易にすることができる。また、そのハンドリングや搬送時にウエハ1Wが割れたり反ったりすることを防止することができる。したがって、ウエハ1Wの品質を確保することができるようになっている。このため、参考例1では、この裏面加工後の段階で極薄のウエハ1Wを治具7に保持させたままの状態で、他の製造工場(例えばアセンブリファブ)に搬送出荷し、裏面加工後のダイシングおよび組立を依頼しても良い。
次に、チップ分割工程102Bに移行する。ここでは、まず、極薄のウエハ1Wを保持した治具7をそのままダイシング装置に搬送し、ダイシング装置の吸着ステージに載置する。すなわち、通常は、裏面加工時にウエハ1Wの主面に貼り付けたテープを剥がして、ウエハ1Wの裏面にダイシングテープを貼り付ける(ウエハマウント)工程が必要とされているが、参考例1では、そのウエハマウント工程を削減できるので、半導体装置の製造工程を簡素化することができる。したがって、半導体装置の製造時間を短縮できる。また、ダイシングテープを不要とすることができるので、材料費を低減でき、半導体装置のコストを低減できる。
続いて、参考例1では、治具7を真空吸引した状態でウエハ1Wの裏面から赤外線カメラ(以下、IRカメラという)によりウエハ1Wの主面のパターン(チップ1Cや切断領域CRのパターンの他、切断領域CRに配置されているパッド1LBtやアライメントターゲットAm等のような金属パターンやチップ1C内に配置されているパッド1LB等のような金属パターン)を認識する(工程102B1)。この時、参考例1では、ウエハ1Wが極めて薄いのでウエハ1Wの主面のパターンの様子を充分に観測できる。
その後、上記IRカメラで得られたパターン情報に基づいて切断線CLの位置合わせ(位置補正)を実施した後、レーザ発生部から放射されたレーザ光(第1レーザ)LB1をウエハ1Wの裏面側から基板1Sの内部に集光点(焦点)を合わせた状態で照射するとともに、上記パターン情報に基づいて位置合わせされた切断線CLに沿って移動させる(工程102B2)。図12は上記レーザ照射工程後のウエハ1Wの要部平面図、図13は図12のX4−X4線の断面図を示している。レーザ照射工程により、ウエハ1Wの切断領域CRにおける基板1Sの内部に多光子吸収による改質領域(光学的損傷部または破砕層)PRを形成する。図12では、レーザ光LB1を切断領域CRに沿って連続的に照射することにより、改質領域PRが切断線CLに沿って連続的に延在した状態で形成されている場合が例示されている。
この改質領域PRは、ウエハ1Wの内部が多光子吸収によって加熱され溶融されたことで形成されており、後のチップ分割工程時のウエハ1Wの切断起点領域となる。この溶融処理領域は、一旦溶融した後に再固化した領域や、まさに溶融状態の領域や、溶融状態から再固化する状態の領域であり、相変化した領域や結晶構造が変化した領域ということもできる。また、溶融処理領域とは単結晶構造、非晶質構造、多結晶構造において、ある構造が別の構造に変化した領域ということもできる。例えば基板1S部分では、単結晶構造から非晶質構造に変化した領域、単結晶構造から多結晶構造に変化した領域、単結晶構造から非晶質構造および多結晶構造を含む構造に変化した領域を意味する。ここでは、改質層PRは、例えば非晶質シリコンとされている。また、ここでは、レーザ光LB1をウエハ1Wの裏面を透過させてウエハ1Wの内部に多光子吸収を発生させて改質領域PRを形成しており、ウエハ1Wの裏面ではレーザ光LB1がほとんど吸収されていないので、ウエハ1Wの裏面が溶融することはない。
ここで、上記のようなレーザ光LB1の照射に際して、参考例1では、レーザ光LB1を、切断領域CRのテスト用のパッド1LBtの脇に照射する。すなわち、レーザ光LB1をパッド1LBtやアライメントターゲットAmに平面的に重ならないように照射する。すなわち、ウエハ1Wの分割起点(改質領域PR)がパッド1LBtやアライメントターゲットAmに平面的に重ならないようにする。これにより、ウエハ1Wの切断時に、テスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAm等の金属パターンが切断されないので、ウエハ1Wを綺麗に切断できる。すなわち、ウエハ1Wの切断形状不良を低減または防止できる。また、切断箇所に上記のようなひげ状の導体異物が発生するのを防止することができる。したがって、薄型の半導体装置の信頼性や歩留まりを向上させることができる。
また、ダイシングブレードによりウエハ1Wを切断するブレードダイシング方式の場合、ウエハ1Wが薄くなってくると切断時にチッピングが生じ易くなりチップの抗折強度が低下するので、チップ1Cの品質を確保する観点から低速(例えば毎秒60mm程度またはウエハ1Wの厚さに応じてそれ以下)で処理せざるを得なくなってくる。これに対して、参考例1の場合、ウエハ1Wの表面に損傷を与えず内部のみを割断するため、チップ1Cの表面に存在するチッピングを極少に抑えることができる。このため、チップ1Cの抗折強度を向上させることができる。また、例えば毎秒300mmという高速な切断処理ができるので、スループットを向上させることができる。
また、上記のようにウエハ1Wの主面の切断領域CRには、ウエハ1Wの主面側からレーザ光LB1を照射するとテスト用のパッド1LBtが邪魔になりその部分の加工(改質領域PRの形成)が上手くできない場合がある。これに対して、参考例1では、テスト用のパッド1LBt等のようなメタルの存在しないウエハ1Wの裏面側からレーザ光LB1を照射するので、上記のような不具合を生じることなく良好に改質領域PRを形成でき、ウエハ1Wを良好に切断することができる。
上記改質領域PRは、図14および図15に示すように、破線状(ドット状)に形成しても良い。図14は、改質領域PRが切断線CLに沿って破線状(ドット状)に配置されている場合が例示されている。すなわち、改質領域PRが切断線CLに沿って途切れ途切れに等間隔に配置されている。層間絶縁膜1Liに使用されている上記低誘電率膜(絶縁膜3b)は熱伝導率が低く熱がこもり易いためレーザ光LB1の照射時の熱により変色することがある。そこで、レーザ光LB1を断続的に照射することにより、レーザ光LB1の照射面積を小さくでき、レーザ光LB1の照射による熱の発生を極力抑えることができるので、熱による低誘電率膜の変色を抑制または防止することができる。また、図15は、改質領域PRが、例えば互いに直交する切断線CLの交点部分やTEGの微細なパターンが集中して配置されている箇所等、分割し難い箇所に集中的に配置されている場合が例示されている。これにより、分割し難い部分も容易に分割できるようになるので、ウエハ1Wを綺麗に分割できる。なお、図14および図15のX4−X4線の断面は図13と同じである。また、特に限定されるものではないが、レーザ光LB1の照射条件は、例えば以下の通りである。すなわち、光源は、例えば波長が1064nmのYAGレーザ、レーザスポット径は、例えば1〜2μm、照射速度は300mm/sとし、0.7μm間隔で照射した。なお、上記集光点とはレーザ光LB1が集光した箇所である。
次いで、ウエハ1Wの分割工程に移行する(工程102B3)。図16は分割工程前のウエハ1Wの要部断面図、図17は分割工程時のウエハ1Wの要部断面図、図18は図17のウエハ1Wの要部拡大断面図、図19は分割工程中のウエハ1Wの要部断面図を示している。
まず、図16に示すように、IRカメラ12によりウエハ1Wの主面のパターン(チップ1Cや切断領域CRのパターンの他、切断領域CRに配置されているパッド1LBtやアライメントターゲットAm等のような金属パターンやチップ1C内に配置されているパッド1LB等のような金属パターン)や改質領域PRを認識する。
続いて、治具7のテープ7aの裏面に、一対のラインバキュームチャック13を配置し、そのラインバキュームチャック13の位置を上記IRカメラ12で得た位置情報に基づいて合わせ、その状態で一対のラインバキュームチャック13によりテープ7aを吸引する。一対のラインバキュームチャック13は、ウエハ1Wの端から端(紙面に垂直な方向)に延在している。一対のラインバキュームチャック13の各々の対向側面の一方には傾斜が形成されている。
その後、図17および図18に示すように、一方のラインバキュームチャック13(図17および図18の左側)を、その側面(傾斜面)が、他方のラインバキュームチャック13の対向側面に当たるまで回転させるように移動することによりウエハ1Wを折り曲げる。これにより、改質領域PRを分割起点としてウエハ1Wを切断(分割)する。その後、図19に示すように、上記一方のラインバキュームチャック13を元の位置まで戻した後、一対のラインバキュームチャック13を次の切断位置まで移動する。その後、上記と同様にしてウエハ1Wを切断する。以降、このような作業をウエハ1Wの全てのチップ1Cの周囲が切断されるまで繰り返す。参考例1では、切断線CLがテスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAmに重ならない。これにより、分割方法としてエキスパンド方式を採用しても、テスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAm等の金属パターンは切断されないので、上記のようなひげ状の導体異物の発生を防止することができる。しかしながら、上記したように、エキスパンド方式の場合、ウエハ1Wの中心から外周(放射線状)に向かう方向に樹脂シートが引き延ばされるため、チップ1Cは切断線CLに対して交差する方向(垂直方向)に引き離されない。言い換えると、切断線CLに対して交差する方向に切断するための荷重(応力)が伝わらない。この結果、ウエハ1Wを綺麗に切断することが出来ない可能性がある。場合によってはチップの外周にチッピングが生じる可能性もある。これに対し、折り曲げ方式を適用すれば、切断線CLに対して交差する方向に切断する荷重を伝えることが可能であるため、ウエハ1Wを綺麗に切断することが出来る。
図20は、上記のようにしてウエハ1Wから切り出されたチップ1Cの全体平面図を示している。ここでは、チップ1Cの長手方向の一端の一辺のみに沿って複数のパッド1LBが配置されている場合が例示されている。参考例1の場合、チップ1Cの外周(互いに交差(直交)する2辺)に切断領域CRの一部が残され、その切断領域CR内にテスト用のパッド1LBtが残されている。なお、参考例1では、上記のようなステルスダイシング後、極薄の複数のチップ1Cを載せた治具7を、他の製造工場(例えばアセンブリファブ)に搬送出荷し、ダイシング工程後の組立を依頼しても良い。
次に、組立工程102Cに移行する。ここでは、複数のチップ1Cを保持した治具7をピックアップ装置に搬送する。ピックアップ装置では、テープ7aの裏面を真空吸引した状態で、押上ピンによりテープ7aの裏面からチップ1Cを押し上げる。この時、テープ7aとして上記UVテープを使用した場合にはテープ7aの接着層7a2に紫外線を照射することにより接着層7a2を硬化させ接着力を弱める。この状態でチップ1Cをコレットにより真空吸引することにより、チップ1Cをピックアップする(工程102C1)。
続いて、上記のようにしてピックアップしたチップ1Cを既存の反転ユニットによりチップ1Cの主面が上を向くように反転させた後、チップ1Cを配線基板等に実装する(ダイボンディング工程102C2)。図21はダイボンディング工程後のチップ1Cおよび配線基板15の平面図、図22は図21のX5−X5線の断面図を示している。配線基板15の主面上には、例えば3つのチップ1Cがその主面を上に向け積層された状態で実装されている。3つのチップ1Cは、各チップ1Cのパッド1LBが露出されるように平面的にずれた状態で積み重ねられている。配線基板15は、プリント配線基板により形成されているが、これに代えてリードフレームを用いても良い。なお、ピックアップしたチップ1Cを搬送トレイに収容して他の製造工場(例えばアセンブリファブ)に搬送出荷し、この工程後の組立を依頼しても良い(工程103A)。
続いて、ワイヤボンディング工程に移行する(工程102C3)。図23はワイヤボンディング工程後のチップ1Cおよび配線基板15の平面図、図24は図23のX6−X6線の断面図を示している。この工程では、チップ1Cの主面のパッド1LBと配線基板15の電極とをボンディングワイヤ(以下、単にワイヤという)17により電気的に接続する。ここで、図64に示すように、上段のチップ1Cのパッド1LBと下段のチップ1Cのパッド1LBとをワイヤ17により電気的に接続する、すなわち、共通パッド同士を電気的に接続するステップボンディング方式を用いてもよい。
続いて、封止工程に移行する(工程102C4)。図25は封止工程後の半導体装置の断面図を示している。この工程では、トランスファモールド法を用いてエポキシ樹脂等のようなプラスチック材料からなる封止体18によりチップ1Cおよびワイヤ17を封止する。その後、配線基板15の裏面にバンプ電極19を形成し、半導体装置を製造する。
チップ1Cがバンプ電極(突起電極)を持つ場合は、例えば次のようにする。まず、上記ピックアップ工程102C1においてチップ1Cを配線基板15のチップ実装領域に移送する。この時、バンプ電極は、パッド1LBおよびテスト用のパッド1LBtに接続することでチップが傾くことなく配線基板15に実装することができる。続いて、チップ1Cの主面(バンプ電極形成面)を配線基板15のチップ実装面に向けた状態でチップ1Cのバンプ電極とチップ実装領域の電極とをペースト材を用いて仮固定する。その後、リフロ処理することでチップ1Cのバンプ電極とプリント配線基板15の電極とを固着する(フリップチップボンディング:工程102C2)。その後、チップ1Cと配線基板15との対向面間にアンダーフィルを充填した後、チップ1Cを上記と同様に封止する(工程104C4)。
(参考例2)
本参考例2では、チップ1C内のパッド1LBの配置の変形例を説明する。図26は、参考例2のチップ1Cの全体平面図を示している。参考例2では、チップ1Cの互いに交差(直交)する2辺の各々に沿って複数のパッド1LBが配置されている。それ以外は前記参考例1と同じであり、チップ1Cの外周(互いに交差(直交)する2辺)に切断領域CRの一部が残され、その切断領域CR内にテスト用のパッド1LBtが残されている。
図27は図26のチップ1Cの実装例の平面図を示している。図27のX7−X7線の断面図は前記図22と同じである。配線基板15の主面上には、例えば3つのチップ1Cがその主面を上に向け積層された状態で実装されている。3つのチップ1Cは、各チップ1Cの2辺に沿って配置された複数のパッド1LBが露出されるように平面的にずれた状態で積み重ねられている。
(参考例3)
まず、参考例3の説明の前に発明者が初めて見出した課題について説明する。上記のようにウエハ1Wの分割においては、切断領域CRに存在するテスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAm等のような金属パターンの切断部分に上記ひげ状の導体異物が生じる問題がある。この問題を回避すべく、本発明者は切断領域CRのパッド1LBtやアライメントターゲットAm等のような金属パターンにミシン目状または直線状の溝を形成するようにした。しかし、分割方式として上記エキスパンド方式を採用した場合は、上記金属パターンにミシン目状または直線状の溝を形成しても、ひげ状の導体異物の発生を上手く抑えることができないという問題がある。また、切断領域CRの隣接する金属パターンの間の絶縁膜のみの部分では切断線が蛇行し綺麗に切断できないという問題がある。
そこで、ウエハ1Wを折り曲げることで個々のチップ1Cに分割する折り曲げ方式を採用してみると、上記ひげ状の導体異物の発生をエキスパンド方式に比べて低減できた。しかし、折り曲げ方式の場合でも、金属パターンの間で切断線が蛇行してしまう。特に上記のように層間絶縁膜に低誘電率膜を使用している場合、低誘電率膜は脆く亀裂が入り易いので上記金属パターンの隣接間の切断部分で大きく蛇行するような亀裂が入り、充分に綺麗に切断することができないという問題がある。ここで、本発明者は上記金属パターンの隣接間の層間絶縁膜部分にレーザ光を照射して分割起点のための溝を形成しようとしてみたが、参考例3では、このような問題を解決する手段を説明する。図28は参考例3のウエハ1Wの要部平面図、図29は図28のX8−X8線の断面図、図30は図28のX9−X9線の断面図を示している。
図28〜図30に示すウエハ1Wは、前記図1の前工程100およびテスト工程101を経た後であって後工程102前のウエハ1Wを示している。参考例3では、切断領域CRの切断線CL上に、テスト用のパッド1LBtおよびアライメントターゲットAm等のような金属パターンが配置されている。すなわち、切断線CLがテスト用のパッド1LBtおよびアライメントターゲットAm等のような金属パターンに重なるようになっている。また、切断線CL上には、互いに隣接するテスト用のパッド1LBtの間隙やテスト用のパッド1LBtとアライメントターゲットAmとの間隙を埋めるように金属パターン20が形成されている。ただし、金属パターン20は、テスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAm等のような金属パターンとは接しておらず電気的に浮遊状態となっている。また、金属パターン20は、テスト用のパッド1LBtおよびアライメントターゲットAmと同一工程時に同一材料で形成されている。ただし、ここでは、金属パターン20の幅(短方向寸法)は、テスト用のパッド1LBtの一辺の長さよりも小さく、例えば5〜10μm程度とされている。これにより、材料費を低減できる。このような金属パターン20の上面一部は、保護膜1Lpに開口された開口部5を通じて露出されている。
次いで、このようなウエハ1Wに対して前記参考例1と同様に裏面加工工程102Aを施して薄型化した後、チップ分割工程102Bに移行する。チップ分割工程では、前記参考例1と同様にウエハ主面のパターン認識工程102B1を経た後、レーザ照射工程102B2に移行する。参考例3では、2回のレーザ光照射を行う。
1回目のレーザ光照射は、切断領域CRの金属パターンに分割起点を形成するためのものである。図31および図32は、1回目のレーザ光LB2を照射している様子を示すウエハ1Wの要部断面図である。図31は図28のX8−X8線に対応し、図32は図28のX9−X9線に対応している。1回目のレーザ光照射では、上記IRカメラで得られたパターン情報に基づいて切断線CLの位置合わせ(位置補正)を実施した後、レーザ発生部から放射されたレーザ光LB2をウエハ1Wの裏面側からテスト用のパッド1LBt、アライメントターゲットAmおよび金属パターン20に焦点を合わせて照射するとともに、上記パターン情報に基づいて位置合わせされた切断線に沿って移動させる。参考例3の切断線は、切断領域CRの幅方向(短方向)のほぼ中央であってテスト用のパッド1LBt、アライメントターゲットAmおよび金属パターン20に重なる。レーザ光LB2の照射条件は、例えば以下の通りである。すなわち、光源は、例えば波長が1064nmのYAGレーザ、照射速度は300mm/sとした。
図33は上記レーザ光LB2の照射工程後のウエハ1Wの要部平面図、図34および図35は図33のX10−X10線およびX11−X11線の断面図を示している。上記のようにレーザ光LB2を照射することにより、テスト用のパッド1LBt、アライメントターゲットAmおよび金属パターン20に切断線に沿って平面ミシン目状(破線状、ドット状)に複数の孔21を形成する。この孔21はウエハ1Wの分割(切断)工程時に分割起点となる。すなわち、参考例3では、互いに隣接するテスト用のパッド1LBtの間やテスト用のパッド1LBtとアライメントターゲットAmとの間に金属パターン20を設けたことにより、互いに隣接するテスト用のパッド1LBtの間やテスト用のパッド1LBtとアライメントターゲットAmとの間にも分割起点となる複数の孔21の配列を形成することができる。レーザ光LB2の照射に際しては、溶融異物がテスト用のパッド1LBt等に付着するので、その溶融異物が飛散するのを抑制または防止する観点からテープ7aを切断領域CRの凹凸に密着させることが重要である。
2回目のレーザ光照射は、前記参考例1で説明した改質領域PRの形成のためのものである。図36および図37は、2回目のレーザ光LB1を照射している様子を示すウエハ1Wの要部断面図である。図36は図28のX8−X8線に対応し、図37は図28のX9−X9線に対応している。ここでは、前記参考例1と同様に、レーザ光LB1をウエハ1Wの裏面側から基板1Sの内部に焦点を合わせて照射する。このようにして基板1Sに改質領域PRを形成する。ただし、参考例3では、レーザ光LB1を切断領域CRの幅方向(短方向)中央に照射する。すなわち、レーザ光LB1の発生部の動作軌跡は、上記レーザ光LB2の発生部の動作軌跡と同一である。ただし、改質領域PRの平面形状は前記参考例1で説明したように平面的に直線状に形成する場合もあるし、破線状に形成する場合もある。レーザ光LB1,LB2をウエハ1Wの同じ裏面側から照射する場合、レーザ光LB2を照射した後に、レーザ光LB1を照射する。これは、レーザ光LB1の照射をレーザ光LB2の照射よりも先に行うと、レーザ光LB2の照射に際して、レーザ光LB1の照射により基板1Sに形成された改質領域PRが邪魔になり、切断領域CRの金属パターンに孔21を形成することができなくなってしまうからである。
次いで、分割工程102B3では、前記参考例1と同様にウエハ1Wを折り曲げ方式により分割(切断)する。図38はウエハ1Wから切り出されたチップ1Cの全体平面図、図39は図38のX12−X12線の断面図を示している。参考例3の場合、孔21の配列に沿ってウエハ1Wを綺麗に切断することができる。すなわち、層間絶縁膜に低誘電率膜を使用している場合であっても、また、互いに隣接するテスト用のパッド1LBtの間やテスト用のパッド1LBtとアライメントターゲットAmとの間においても、複数の孔21の配列に沿って蛇行せずにウエハ1Wを分割(切断)することができる。したがって、ウエハ1Wの切断形状不良を低減または防止できるので、半導体装置の歩留まりおよび信頼性を向上させることができる。なお、チップ1Cの外周にはテスト用のパッド1LBt、アライメントターゲットAmおよび金属パターン20の一部が残されている。また、組立工程102Cについては前記参考例1と同じなので説明を省略する。
(実施の形態4)
前記参考例1〜3では、チップ1Cの外周にテスト用のパッド1LBtやTEG用の素子が残されるので、外部にTEG情報が漏れる、という問題がある。本実施の形態4は、このような問題を回避するための手段を説明するものである。以下、本実施の形態4の半導体装置の製造方法例を図40のフロー図に沿って図41〜図50により説明する。
まず、前記参考例1と同様に、前工程200、テスト工程201を経た後、後工程202に移行する。後工程202の裏面加工工程202Aでは、ウエハ1Wの主面上に接着層を介して支持基板を貼り付ける(工程202A1)。図41は支持基板24の装着後のウエハ1Wの断面図を示している。
この支持基板24は、この後の工程においてウエハ1Wの補強部材として機能するウエハサポートシステム(Wafer Support System:WSS)である。これにより、ウエハ1Wの搬送時においては、極薄で大径のウエハ1Wを安定した状態でハンドリングできる上、ウエハ1Wを外部の衝撃から保護することもできるので、ウエハ1Wの割れや欠け等を抑制または防止できる。また、この後の各工程時においては、ウエハ1Wの反りや撓みを抑制または防止でき、極薄で大径のウエハ1Wの平坦性を向上させることができるので、各工程での処理の安定性や制御性を向上させることができる。
支持基板24の材料としては、例えば透明なガラスのような硬質支持基板(Hard−WSSまたはGlass−WSS)が使用されている。ただし、支持基板24の他の材料として、例えばステンレスのような他の硬質支持基板(Hard−WSS)を用いても良い。また、支持基板24のさらに他の材料として、例えばPET(Polyethylene Terephthalate)やPEN(Polyethylene Naphthalate)等のような絶縁支持基板をテープ基材に貼り付けたテープWSSを用いても良い。
なお、支持基板24をウエハ1Wの主面に貼り付ける際には、支持基板24の剥離層24aの形成面をウエハ1W主面側の接着層25に押し付けることで支持基板24をウエハ1Wの主面に固定する。この剥離層24aは、支持基板24をウエハ1Wから剥離する際に剥離を容易にするための機能層である。支持基板に代えて、いわゆるBGテープを使用しても良い。
次いで、前記参考例1と同様に、ウエハ1Wの厚さを測定した後、その測定結果に基づいてウエハ1Wの裏面に対して研削処理および研磨処理(平坦加工)を順に施す(工程202A2,202A3)。図42はウエハ1Wの薄型化工程後の断面図を示している。図42の破線は、薄型化処理前の基板1Sを示している。
続いて、チップ分割工程202Bに移行する。チップ分割工程202Bのレーザ照射工程202B2は、前記参考例1で説明した改質領域PRの形成のためのものである。図43はレーザ光LB1を照射している様子を示すウエハ1Wの要部断面図である。
本実施の形態4においても、前記参考例1と同様にして、レーザ光LB1をウエハ1Wの裏面側から基板1Sの内部に焦点を合わせて照射することにより、基板1Sに改質領域PRを形成する。ただし、本実施の形態4では、レーザ光LB1をテスト用のパッド1LBt等のような金属パターンの両脇であってチップ1Cと切断領域CRとの境界または間に当たる平面位置に照射する。改質領域PRの平面形状は前記参考例1で説明したように平面的に直線状に形成する場合もあるし、破線状に形成する場合もある。
その後、ウエハマウント工程202B2では、ウエハ1Wを治具に貼りかえる。図44はウエハマウント工程202B2およびWSS剥離工程202B3後のウエハ1Wおよび治具7の平面図、図45は図44のX13−X13線の断面図を示している。
ウエハマウント工程202B2では、ウエハ1Wの主面(デバイス形成面)に支持基板24を貼り付けたままの状態でウエハ1Wの裏面を治具7のテープ7aに貼り付ける。ウエハ1Wはテープ7aの接着層7a2によりしっかりと固定されている。これにより、ウエハ1Wは、その主面が表になって露出された状態で治具7に収容される。
続いて、WSS剥離工程202B3では、レーザ光を、ウエハ1Wの主面上の接着層25に焦点を合わせた状態で透明な支持基板24を介してウエハ1Wの主面の端から端まで走査し照射する。これにより、支持基板24をウエハ1Wから剥離した後、ウエハ1Wの主面上の接着層25を除去する。この工程のレーザ光の条件は、例えば波長1064nmの赤外線レーザ、出力:20W、照射速度:2000mm/s、スポット径:f200μm程度である。接着層25を、例えば紫外線硬化樹脂(UVレジン)により形成した場合は、上記レーザ光は、赤外線レーザに代えて紫外線レーザを使用する。これにより、接着層25の粘着力を弱めることができるので、支持基板24を容易に剥離することができる。
次いで、本実施の形態4ではTEG加工工程202B4に移行する。TEG加工工程202B4では、ウエハ1Wを収容した治具7をダイシング装置のダイシングステージに載せて回転するダイシングソー(ブレードダイシング方式)によりTEGを除去する。図46はこのTEG加工工程中のウエハ1Wの要部断面図を示している。ダイシングソー26は、その断面が矩形状のものを使用した。このダイシングソー26を切断領域CRに合わせた後、回転させた状態でウエハ1Wの主面に接するように下降する。これにより、TEGのテスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAm等のような金属パターンを除去する。図47はTEG加工工程後のウエハ1Wの要部断面図を示している。ここでは、切断領域CRにおけるテスト用のパッド1LBt等のような金属パターンが完全に除去されており、ウエハ1Wの主面の切断領域CRに溝27が形成されている。溝27の深さは、配線層1L途中とされているが、基板1Sに達しても良い。ただし、基板1Sを完全に切断してしまわないようにする。
続いて、分割工程202B5では、前記参考例1と同様にウエハ1Wを折り曲げ方式により分割(切断)する。図48は分割工程202B5中のウエハ1Wの要部拡大断面図を示している。この場合、一般的に切断領域CR内の2箇所の改質領域PRのうち、機械的強度の弱いいずれか一方側で亀裂が入りウエハ1Wが切断される。本実施の形態4の場合、テスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAm等のような金属パターンが除去されているので、上記ひげ状の導体異物は発生しない。
図49はウエハ1Wから切り出されたチップ1Cの全体平面図、図50は図49のX14−X14線の断面図を示している。本実施の形態4の場合、チップ1Cの外周にテスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAm等のような金属パターンが残されていないので、TEG情報の漏洩を防止することができる。
その後の組立工程202C(202C1〜202C4,203A)については前記参考例1の組み立工程102C(102C1〜102C4,103A)と同じなので説明を省略する。
(参考例5)
前記実施の形態4では、TEG情報の漏洩を防止できるが、前記参考例3で説明した切断線が蛇行してしまう問題がある。参考例5では、その問題を回避するための手段を説明するものである。
まず、前記実施の形態4と同様に、前工程200、テスト工程201および後工程202の裏面加工工程202Aを経た後、チップ分割工程202Bのレーザ照射工程202B1に移行する。図51は参考例5の場合のレーザ照射工程中のウエハ1Wの要部断面図を示している。ここでは、前記参考例1〜3、および前記実施の形態4と同様にレーザ光LB1をウエハ1Wの裏面から基板1Sの内部に焦点を合わせて照射し、基板1Sに改質領域PRを形成する。ただし、参考例5では、レーザ光LB1を切断領域CRの幅方向(短方向)中央に照射する。すなわち、レーザ光LB1をテスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAm等のような金属パターンと平面的に重なる位置に照射する。改質領域PRの平面形状は前記参考例1で説明したように平面的に直線状に形成する場合もあるし、破線状に形成する場合もある。
続いて、前記実施の形態4と同様に、ウエハマウント工程202B2、WSSの剥離工程202B3を経た後、TEG加工工程202B4に移行する。図52はTEG加工工程202B4中におけるウエハ1Wの要部断面図を示している。このTEG加工工程では、前記実施の形態4と同様に、回転状態のダイシングソー26をウエハ1Wの主面の切断領域CRに当ててテスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAm等のような金属パターンを除去する。ただし、参考例5では、ダイシングソー26として、その外周先端の断面形状が楔形(断面V字状)に形成されているものを使用する。
図53はTEG加工工程後のウエハ1Wの要部平面図、図54は図53のX15−X15線の断面図を示している。ここでは、テスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAm等のような金属パターンが完全に除去されており、ウエハ1Wの主面の切断領域CRの層間絶縁膜1Li(配線層1L)上面に溝27が形成されている。この溝27の深さは、前記実施の形態4と同じである。ただし、参考例5において溝27は深くなるにつれて幅が次第に狭くなっている。すなわち、溝27の断面形状がV字状に形成されている。溝27の最も深い部分は、分割工程202B5時に層間絶縁膜1Liの分割起点として作用する部分である。溝27は、その分割起点として作用する部分の平面位置が、切断領域CRの幅方向(短方向)の中央に位置するように、すなわち、上記改質領域PRの平面位置(すなわち、切断線CL)に一致するように形成されている。
続いて、分割工程202B5では、前記参考例1と同様にウエハ1Wを折り曲げ方式により分割(切断)する。図55は分割工程202B5中のウエハ1Wの要部拡大断面図を示している。この場合、ウエハ1Wは基板1Sの改質領域PRおよび配線層1Lの溝27を分割起点として分割(切断)される。
参考例5の場合、テスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAm等のような金属パターンが除去されているので、上記ひげ状の導体異物は発生しない。また、溝27を断面V字状に形成したことにより、層間絶縁膜として低誘電率膜を使用していたとしても、ウエハ1W(特にウエハ1Wの主面側の層間絶縁膜1Li)を溝27に沿って蛇行することなく綺麗に分割(切断)することができる。したがって、半導体装置の歩留まりおよび信頼性を向上させることができる。
図56はウエハ1Wから切り出されたチップ1Cの全体平面図、図57は図56のX16−X16線の断面図を示している。参考例5の場合、チップ1Cの外周にテスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAm等のような金属パターンが残されていないので、TEG情報の漏洩を防止することができる。また、参考例5では、チップ1Cの主面側の外周角が傾斜している。すなわち、チップ1Cの主面側の外周角にテーパが形成されている。これにより、チップ1Cの搬送時等においてチップ1Cの外周角が欠けるのを低減できる。したがって、半導体装置の歩留まりおよび信頼性を向上させることができる。また、異物発生を低減できる。
その後の組立工程202C(202C1〜202C4,203A)については前記参考例1の組み立工程102C(102C1〜102C4,103A)と同じなので説明を省略する。
(参考例6)
参考例6ではTEG情報の漏洩防止のためTEGをレーザ光により除去する方法例を説明する。
まず、前記参考例5と同様に、前工程200〜WSSの剥離工程203B3を経た後、TEG加工工程202B4においてTEGをレーザ光により除去する。図58はこのTEG加工工程中のウエハ1Wの要部断面図を示している。レーザ光(第2レーザ)LB3をウエハ1Wの主面側からテスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAm等のような金属パターンに照射することにより、その金属パターンを溶融して除去する。レーザ光LB3は、例えば波長が355nmの紫外光等のように、上記改質領域PR形成時のレーザ光LB1の波長よりも短波長のレーザ光を使用する。各金属パターンに対してレーザ光LB3を複数回照射することにより金属パターンを除去する。図59は参考例6のTEG加工工程後のウエハ1Wの要部断面図を示している。ここでは、切断領域CRにおけるテスト用のパッド1LBt等のような金属パターンが完全に除去されている。参考例6の場合、切断領域CRの金属パターンをレーザ光LB3により除去することにより、ウエハ1Wに機械的な応力を与えず金属パターンを除去できるので、チップ1Cの外周にチッピング等の損傷が発生するのを防止できる。これにより、薄い半導体チップの抗折強度を前記実施の形態4および前記参考例5に比べて向上させることができる。
続いて、分割工程202B5では、前記参考例1と同様にウエハ1Wを折り曲げ方式により分割(切断)する。図60は分割工程202B5中のウエハ1Wの要部拡大断面図を示している。この場合、ウエハ1Wは基板1Sの改質領域PRを分割起点として分割(切断)される。参考例6の場合、テスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAm等のような金属パターンが除去されているので、上記ひげ状の導体異物は発生しない。
参考例6の場合のウエハ1Wから切り出されたチップ1Cの全体平面図は図49とほぼ同じである。参考例6の場合も、チップ1Cの外周にテスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAm等のような金属パターンが残されていないので、TEG情報の漏洩を防止することができる。
その後の組立工程202C(202C1〜202C4,203A)については前記参考例1の組み立工程102C(102C1〜102C4,103A)と同じなので説明を省略する。
(参考例7)
前記参考例6では、TEG情報の漏洩を防止できるが、前記参考例3で説明した切断線が蛇行してしまう問題がある。参考例7では、その問題を回避するための手段を説明するものである。
まず、前記参考例5,6と同様に、前工程200〜WSSの剥離工程203B3を経た後、TEG加工工程202B4に移行する。このTEG加工工程202B4では、TEGにレーザ光を照射する。図61はTEG加工工程202B4中におけるウエハ1Wの要部断面図を示している。また、図63はTEG加工工程202B4中におけるウエハ1Wの要部拡大断面図を示している。ここでは、前記参考例6と同様に、レーザ光LB3をウエハ1Wの主面側からテスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAm等のような金属パターンに照射することにより、その切断領域CRのテスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAm等のような金属パターンの上面に金属パターンの一部に溝30を形成する。溝30はレーザ光LB3の熱により溶融することで形成されるが、溶融した部分が層間絶縁膜1L1(配線層1L)の界面まで進展する。この結果、溝30から改質領域PRに向かって亀裂CRKが形成される。溝30の平面位置は、切断領域CRの幅方向(短方向)の中央に位置するように、すなわち、上記改質領域PRの平面位置(すなわち、切断線CL)に一致するように形成されている。ここで、参考例7の場合、切断領域CRの金属パターンの一部を除去するだけなので、このレーザ光加工処理を施したからといってチップ1Cの外周にチッピング等の損傷が発生すこともない。これにより、薄い半導体チップの抗折強度を前記実施の形態4および前記参考例5に比べて向上させることができる。
続いて、分割工程202B5では、前記参考例1と同様にウエハ1Wを折り曲げ方式により分割(切断)する。図62は分割工程202B5中のウエハ1Wの要部拡大断面図を示している。この場合、ウエハ1Wは基板1Sの改質領域PR、亀裂CRKおよび配線層1Lの溝30を分割起点として分割(切断)される。
参考例7の場合、テスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAm等のような金属パターンの切断部分(溝30形成部分)が切断されているので、上記ひげ状の導体異物は発生しない。また、層間絶縁膜1Liに溝30が達していることにより、層間絶縁膜として低誘電率膜を使用していたとしても、ウエハ1W(特にウエハ1Wの主面側の層間絶縁膜1Li)を溝30に沿って蛇行することなく綺麗に分割(切断)することができる。したがって、半導体装置の歩留まりおよび信頼性を向上させることができる。
参考例7の場合のウエハ1Wから切り出されたチップ1Cは図56および図57とほぼ同じである。参考例7の場合も、チップ1Cの外周にテスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAm等のような金属パターンの一部が残されているが、切断され、また溶融されておりTEGの情報を取得することができないようになっている。したがって、TEG情報の漏洩を防止することができる。また、参考例7では、チップ1Cの主面側の外周角が溝30の形成により傾斜していることにより、チップ1Cの搬送時等においてチップ1Cの外周角が欠けるのを低減できる。したがって、半導体装置の歩留まりおよび信頼性を向上させることができる。また、異物発生を低減できる。
その後の組立工程202C(202C1〜202C4,203A)については前記参考例1の組み立工程102C(102C1〜102C4,103A)と同じなので説明を省略する。
(参考例8)
前記実施の形態4および前記参考例5では、ダイシングソー(ブレードダイシング方式)によりTEGを除去することで、TEG情報の漏洩や、TEGのひげ状の導体異物(ひげ不良)により生じる実装不良を防止できるが、半導体装置の更なる薄型化の要求に伴い、例えばウエハの厚さが70μm厚以下と薄くなった場合、図66に示すように、チップクラックの問題が発生し易い。この原因は、TEGの除去方法としてダイシングソー26を用いることと、ウエハ1Wの薄型化に伴い、破砕層(改質領域PR)からTEGまでの距離(間隔)が近く(短く)なることと、ウエハ1W(チップ1C)の抗折強度が低下することにある。ブレードダイシング方式は、高速回転するダイシングソー26をウエハ1Wに接触させることでウエハ1Wを切断(破断)するため、ステルスダイシング方式に比べウエハ1Wに加わる切断応力(破断応力)は大きい。すなわち、実施の形態4および前記参考例5で説明したように、ウエハ1Wに予めレーザ光を照射して破砕層(改質領域PR)を形成した後にダイシングソー26を用いてTEGを除去すると、破砕層からTEGまでの距離(間隔)は近く、更には、ウエハ1Wの抗折強度が低下していることから、ダイシングソー26の切断応力が破砕層まで進展し易く、亀裂(クラック)CRKが発生してしまう。そこで、参考例8では、その問題を回避するための手段を説明するものである。
まず、図67に示すように、ダイシングソー26を用いて、ウエハ1Wの主面の切断領域に配置されたテスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAmを除去する。これにより、ウエハ1Wの主面に溝27が形成される。
次に、図68に示すように、ウエハ1Wの主面にBGテープ35を貼り付ける。BGテープ35のテープベース35aは、例えば柔軟性を持つプラスチック材料からなり、その主面には接着層35bが形成されている。BGテープ35は、その接着層35bによりウエハ1Wの主面(チップ形成面)にしっかりと貼り付けられている。
続いて、ウエハ1Wを反転させた後、図69に示すように、ウエハ1Wの裏面側から上記研削研磨工具(砥石)8を用いて裏面研削工程、更には裏面研削工程によりウエハ1Wの裏面に形成された微小な凹凸を除去するための研磨工程(ストレスリリーフ)を行うことで、ウエハ1Wを所望の厚さにする。
次に、図70に示すように、レーザ光LB1をウエハ1Wの裏面から照射し、前記と同様に、ウエハ1Wの内部(厚さ方向における中心付近)に改質領域(光学的損傷部または破砕層)PRを形成する。
次に、図71に示すように、ウエハ1Wの裏面に治具7のテープ7aに貼り付け、反転してからウエハ1Wの主面のBGテープ35を剥がす(ウエハマウント工程)。続いて、図72に示すように、エキスパンド方式によりウエハ1Wを分断することで、複数のチップ1Cを取得する。
このように、参考例8によれば、テスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAmのそれぞれを、ウエハ1Wを薄くする裏面研削工程および改質領域PRの形成工程の前に、予めダイシングソー26により除去するため、例えばウエハ1Wの厚さが70μm以下と薄くなったとしても、チップクラックの問題を抑制することが可能である。
ここで、破砕層(改質領域PR)を形成した後にダイシングソー26を用いてTEGを除去すると、ダイシングソー26の切断応力によりチップクラックの問題が発生するということにのみ着目した場合、ウエハ1Wの主面側からダイシングソー26を用いてTEGを除去した後に、同じくウエハ1Wの主面側からレーザ光LB1を照射してウエハ1Wに破砕層(改質領域PR)を形成するという手段も考えられる。
しかしながら、図73に示すように、ダイシングソー26により削られたウエハの表面(すなわち、溝27の底面)は、微細な凹凸が形成されているため、レーザ光LB1を照射すると乱反射が起こり、ウエハ1Wの内部にレーザ光LB1の焦点を合わせることが困難となる。
また、ダイシングソー26を用いてTEGを除去した後に、ウエハ1Wを反転し、ウエハ1Wの裏面側からレーザ光を照射して破砕層(改質領域PR)を形成した後、ウエハ1Wの厚さを薄くする裏面研削工程および研磨工程を行う手段も考えられる。
しかしながら、裏面研削工程および研磨工程の前に、予めウエハ1Wに破砕層(改質領域PR)が形成されていると、裏面研削のための砥石の応力により、ウエハ1Wの裏面から破砕層(改質領域PR)に向かって亀裂(クラックCRK)が発生する可能性がある。以上のことから、参考例8のように、ダイシングソー26によりTEGを除去した後、ウエハ1Wを裏面研削工程および研磨工程により所望の厚さまで薄くし、ウエハ1Wの裏面側からレーザ光LB1を照射して破砕層(改質領域PR)を形成する手段がチップクラックの問題の対策に有効である。
(参考例9)
ブレードダイシング方式により半導体ウエハを分割する場合は、使用するダイシングソーの幅よりも太い幅の切断領域が必要であった。これに対し、ステルスダイシング方式の場合、半導体ウエハの内部に破砕層(改質領域PR)を形成し、その破砕層を起点として半導体ウエハを分割するため、ブレードダイシング方式に比べ切断領域の幅は狭くすることが可能である。
しかしながら、切断領域CRには、テスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAmが配置されているため、少なくとも切断領域CRの幅は、テスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAmの幅よりも太く設けておく必要がある。そのため、1つのウエハからのチップの取得数を向上することが困難である。そこで、参考例9では、1つのウエハからのチップの取得数を向上するための方法例を図74、図75および図76により説明する。図74は参考例9のウエハ1Wの平面図、図75は図74のウエハ1Wの主面の要部拡大平面図、図76は図75のウエハ1WのTEG除去時の要部断面図である。
まず、図74および図75に示すように、ウエハ1Wの主面上において、X方向およびY方向(X方向と交差する方向)に設けられた切断領域CR(CR1,CR2)のうち、X方向に設けられた切断領域(第1の切断領域)CR1にのみテスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAmを配置する。すなわち、Y方向に設けられた切断領域(第2の切断領域)CR2にはテスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAmを一切配置せず、X方向に設けられた切断領域CR1にのみテスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAmを集約配置する。これにより、Y方向に延在する切断領域CR2の幅は、テスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAmの幅よりも狭くすることができる。そのため、隣り合うチップ1C(チップ領域)同士の間隔をより狭めることができるので、1つのウエハ1Wからのチップ1Cの取得数を向上することが可能である。ここで、Y方向に延在する切断領域CR2の幅は、例えば5μmである。
しかしながら、テスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAmをX方向に延在する切断領域CR1に集約した場合、図75に示すように、X方向に延在する切断領域CR1においてテスト用のパッド1LBtやアライメントターゲットAmが複数列(参考例9では2列)に亘って配置されることになる。そのため、実施の形態4、前記参考例5および8に示すような、TEGの幅とほぼ同じ幅のダイシングソーを用いた場合、TEGを完全に除去するためには、1つの切断領域CRに対して、ダイシングソーを2回走らせる必要がある。このため、TEG除去処理に時間がかかる。
そこで、参考例9では、図76に示すように、TEGパターンの除去工程に際して、2つのTEGの幅の総和分とほぼ同じ幅のダイシングソー26を用いることが好ましい。これにより、TEGが切断領域CR2内において複数列に亘って配置されていたとしても、ダイシングソー26は1回走らせるだけで、その切断領域CR2におけるTEGを全て除去できる。ここで、ダイシングソー26の幅は、2つのTEGの幅の総和分とほぼ同じと説明したが、少なくともダイシングソー26を1回走らせるだけで、その切断領域CR2における全てのTEGが完全に除去されることが好ましいため、2つのTEGの幅の総和分以上であり、かつ切断領域CR2の幅未満であることが好ましい。
参考例9の場合、TEGパターンの除去のためのダイシングソー26の移動方向が一方向のみなので、TEGパターンの除去処理時間を短縮できる。なお、参考例9で説明した幅広のダイシングソー26を複数枚同時に並列動作させることでTEGパターンの除去処理時間をさらに短縮することもできる。
(参考例10)
半導体装置の小型化に伴い、チップのサイズもより小型化することが要求される。小型化されたチップの分割方法として、ウエハの薄型化にも対応できるステルスダイシング方式を用いた場合、1つのウエハから個々のチップに分割するためには、レーザ光をウエハに照射した後にエキスパンド工程を行うことで実現できる。
しかしながら、例えば、1辺の幅(長さ)が3mm以下というチップを形成する場合、参考例8の図72に示したように、ダイシングテープ全体を1回のエキスパンド工程により中心から外周に向かって引き伸ばそうとすると、複数のチップ1C(チップ領域)のうち、隣り合うチップ領域同士が完全に分割されない、いわゆる、分割不良の問題が発生し易い。これは、1つのチップのサイズが小さくなると、ダイシングテープが引き伸ばされても、複数のチップ領域のそれぞれに対して張力が伝わり難くなり、複数のチップが繋がった状態となってしまう。そこで、参考例10は、その問題を回避するための手段を説明するものである。
1つのウエハ1Wには複数の切断領域CRがX方向およびY方向に向かって延在するように設けられているが、参考例10では、1回のエキスパンド工程によりこの複数の切断領域CRの全てを同時に分割するのではなく、1回のエキスパンド工程により複数の切断領域CRのうちの1つを分割するものである。
これを図77のウエハ1Wの平面図を用いて説明する。すなわち、図72に示すように、1回目のエキスパンド工程では、まずaの切断領域(第1の切断領域)CRを分割する。そして、aの切断領域を分割した後に、2回目のエキスパンド工程によりbの切断領域(第2の切断領域)CRを分割する。そして、c,d,e,fの切断領域CRの順に、全ての切断領域CRが分割されるまでエキスパンド工程を繰り返す。これにより、たとえチップ1Cの1辺の幅(長さ)が小さくなったとしても、参考例10の手段を用いれば、1つの切断領域CR(1ラインの切断領域CR)毎に対してダイシングテープの張力を確実に伝えることができる。そのため、分割不良の問題を抑制することが可能である。ここで、ウエハ1WにはX方向およびY方向に向かって延在するように複数の切断領域CRが設けられているため、X方向に向かって延在するように設けられた複数の切断領域CRを全て分割してから、Y方向に向かって延在するように設けられた複数の切断領域CRを順番に分割することが分割機構を簡略化できるので好ましい。
次に、参考例10の分割方法を図78および図79を用いてより具体的に説明する。
図78の(a)は図77で説明したウエハ1Wの分割工程の具体的な様子を示したウエハ1Wの全体平面図、(b)は(a)のX17−X17線の断面図である。また、図79の(a)および(b)は分割工程時のウエハ1Wの要部拡大断面図である。
図78に示すように、ダイシング用の治具7のテープ7aに貼り付けられたウエハ1Wは、ステルスダイシング装置のステージ上に載置されている。このステージには、図78(a)のY方向に沿ってウエハ1Wの端から端まで延びる平面帯状の2つの引っ張りバー40が互いに隣接した状態で平行に設置されている。各引っ張りバー40の幅は、ウエハ1Wのチップ1Cの図78(a)のX方向の幅程度である。また、各引っ張りバー40には、図79に示すように、真空吸引孔41が設けられている。これにより、引っ張りバー40をダイシング用の治具7のテープ7aを介してウエハ1Wにしっかりと張り付けることが可能になっているとともに、ウエハ1Wを固定することが可能になっている。
まず、1つの切断領域CR(1ラインの切断領域CR)だけを狙って分割するためには、図78および図79に示すように、ウエハ1Wの1ラインの切断領域CRが2つの引っ張りバー40の隣接間(切断溝)と平面的に重なるように、ウエハ1Wを位置決めした後、2つの引っ張りバー40をウエハ1Wに真空吸引により張り付ける。すなわち、2つの引っ張りバー40を、分割領域(1ライン分の切断領域CR)を境としてその両側に配置し固定する。
続いて、ウエハ1Wを2つの引っ張りバー40で真空吸引した状態で、2つの引っ張りバー40を、図78および図79の矢印PA,PB(ウエハ1Wの主面に沿う方向)に示すように、互いに離れる方向に移動する。すなわち、2つの引っ張りバー40を、その隣接間から外側に向かって引き離す方向に移動する。これにより、図79(b)に示すように、引っ張りバー40に固定されたウエハ1Wが切断領域(の改質領域PR)を起点として分割される。
1つの切断領域CR(1ライン分の切断領域CR)の分割が終了したら、次に分割したい切断領域CRが、2つの引っ張りバー40の隣接間と平面的に重なるように、ウエハ1Wを移動する。その後、上記と同様にしてウエハ1Wを分割する。以上の動作を、複数ラインの切断領域CRのうち全てが分割されるまで繰り返すことで、分割不良が発生することなく、複数のチップ1Cを取得することが可能となる。
ここで、参考例10では、引っ張りバー40が2つで1組とされる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ウエハ1Wの複数ラインの切断領域CRに対応する数だけ引っ張りバー40を配置しても良い。これにより、1回のエキスパンド工程が終わる度に、ウエハ1Wをずらす工程が不要となる。図80(a)〜(c)は、その一例を示している。CL1は、第1の分割箇所、CL2は第2の分割箇所、CL3は第3の分割箇所を示している。分割箇所CL1,CL2,CL3を境にして、その両側の引っ張りバー40を互いに離れる方向(矢印PA,PBの方向)に移動することでウエハ1Wを上記と同様に分割する。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
例えば前記参考例1においては、テスト用のパッド1LBtの平面形状を正方形としたが、これに限定されるものではなく種々変更可能であり、例えばテスト用のパッド1LBtの平面形状を、長方形(切断領域CRの延在方向(長手方向)の長さが切断領域CRの幅方向の長さよりも長い)にしても良い。これにより、切断領域CRの幅をあまり大きくしないでパッド1LBtの面積を大きく確保できる。すなわち、チップ1Cの面積増大を抑えつつ、テスト用のパッド1LBtに対するプローブ針の当て易さも確保することができる。
また、前記参考例3では、ウエハ1Wの主面の切断領域CRの金属パターンに孔21を形成するのにレーザ光LB2をウエハ1Wの裏面から照射するようにしたが、図40のフロー図で説明したようにウエハマウント工程を行う場合は、レーザ光LB2をウエハ1Wの主面から照射することもできる。この場合、図40のTEG加工工程202B4に代えてレーザ光LB2の照射工程を行えば良い。すなわち、レーザ光LB2を、ウエハ1Wの主面側からウエハ1Wの主面の切断領域CRのテスト用のパッド1LBt、アライメントターゲットAmおよび金属パターン20に照射することにより、テスト用のパッド1LBt、アライメントターゲットAmおよび金属パターン20に孔21を形成する。この場合、孔21に代えてテスト用のパッド1LBt、アライメントターゲットAmおよび金属パターン20に溝を形成しても良い。この溝の平面形状は直線状でも良いし破線状でも良い。これ以外の工程は前記参考例1〜3、5〜7、および実施の形態4で説明したのと同じである。
以上の説明では主として本発明者によってなされた発明をその背景となった利用分野である半導体装置の製造方法に適用した場合について説明したが、それに限定されるものではなく種々適用可能であり、例えばマイクロマシンの製造方法にも適用できる。