以下に添付図面を参照して、この中継装置、通信システムおよび通信方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
(実施の形態)
(通信システムの構成)
図1は、実施の形態にかかる通信システムの処理を示すブロック図である。図1に示すように、実施の形態にかかる通信システム100は、中継装置110と、第一通信装置120と、第二通信装置130と、を含む。通信システム100においては、第一通信装置120から第二通信装置130への無線信号を中継装置110によって中継する。
中継装置110は、通知部111と、受信部112と、送信部113と、を備えている。通知部111は、中継装置110において受信する信号の偏波面が第一偏波面となるビームフォーミングのウェイトを第一通信装置120へ通知する。たとえば、通知部111は、ウェイトを示すウェイト情報を送信することでウェイトを通知する。
受信部112は、通知部111によって通知されたウェイトでビームフォーミングされた信号を第一通信装置120から受信する。受信部112は、受信した信号を送信部113へ出力する。送信部113は、受信部112から出力された信号を第二偏波面で第二通信装置130へ送信する。
たとえば、中継装置110は、第一偏波面の信号を送受信する第一アンテナと、第二偏波面の信号を送受信する第二アンテナと、を備えている。受信部112は、第一アンテナによって信号を受信する。また、送信部113は、第二アンテナによって信号を送信する。これにより、第二アンテナからの送信信号は第二偏波面となり、第二偏波面の信号は第一アンテナに受信されないため、第二アンテナからの送信信号が第一アンテナで受信されること(回り込み)を回避することができる。
また、中継装置110は、ウェイトを算出する算出部(図1においては不図示)を備えていてもよい。算出部は、中継装置110と第一通信装置120との間の伝搬特性に基づいて、中継装置110において受信する信号の偏波面が第一偏波面となるビームフォーミングのウェイトを算出する。この場合は、通知部111は、算出部によって算出されたウェイトを第一通信装置120へ通知する。算出部は、たとえばDSP(Digital Signal Processor)などの演算回路によって実現することができる。
また、中継装置110は、伝搬特性を推定する推定部(図1においては不図示)を備えていてもよい。推定部は、第一通信装置120から送信される参照信号(Referee Signal)に基づいて中継装置110と第一通信装置120との間の伝搬特性を推定する。この場合は、算出部は、推定部によって推定された伝搬特性に基づいてウェイトを算出する。推定部は、たとえばDSPなどの演算回路によって実現することができる。
第一偏波面と第二偏波面は互いに異なる偏波面である。たとえば、第一偏波面と第二偏波面は、互いに直交する各偏波面である。以下の説明において、第一偏波面と第二偏波面は、一方がV偏波面(垂直偏波面)であり他方がH偏波面(水平偏波面)であるとする。ただし、第一偏波面と第二偏波面は、互いに直交する各偏波面に限らず、互いに偏波分離可能な程度に異なっていればよい。また、互いに直交する各偏波面は、V偏波面とH偏波面に限らない。
第一通信装置120は、中継装置110から通知されたウェイトでビームフォーミングを行った信号を中継装置110へ送信する。これにより、第一通信装置120から送信された無線信号が、中継装置110の受信時に第一偏波となる。第二通信装置130は、中継装置110から送信された信号を受信する。
たとえば、第一通信装置120は、移動通信が可能な携帯電話などの移動端末である。この場合は、たとえば、第二通信装置130は、たとえば基地局(BS)や中継局(RN)などの通信装置である。また、第一通信装置120に対応する移動端末が複数存在し、中継装置110は各移動端末に対して上記の処理を行うようにしてもよい。または、第一通信装置120が基地局や中継局などの通信装置であり、中継装置110が移動端末であってもよい。
このように、実施の形態にかかる通信システム100においては、中継装置110が、中継装置110において受信する信号の偏波面が第一偏波面となるビームフォーミングのウェイトを第一通信装置120へ通知する。そして、中継装置110が、通知したウェイトでビームフォーミングされた信号を第一通信装置120から受信し、受信した信号を第二偏波面で第二通信装置130へ送信する。
これにより、第一通信装置120からの送信信号を中継装置110で第一偏波面で受信するとともに、中継装置110から第二通信装置130への送信信号を第二偏波面で送信することができる。このため、中継装置110から第二通信装置130への送信信号が、第一通信装置120から中継装置110への送信信号とともに中継装置110によって受信されて干渉すること(回り込み)を回避し、通信品質を向上させることができる。
たとえば、中継装置110は、第一偏波面の信号を送受信する第一アンテナによって第一通信装置120からの送信信号を受信するとともに、第二偏波面の信号を送受信する第二アンテナによって第二通信装置130への送信信号を送信する。これにより、第二通信装置130への送信信号が、第一通信装置120からの送信信号とともに第一アンテナによって受信されることを回避することができる。
特に、第一通信装置120が移動端末である場合は、移動端末の保持角度や中継装置110と移動端末との間の伝搬環境によって送信信号の偏波面が変化する。これに対して、中継装置110は、移動端末に対して、中継装置110において偏波面が第一偏波面となるビームフォーミングのウェイトを通知することで、通知したウェイトでビームフォーミングを行わせる。これにより、移動端末の保持角度によらず、移動端末からの送信信号を中継装置110で第一偏波面で受信することができる。このため、中継装置110から第二通信装置130への送信信号の回り込みをさらに精度よく低減することができる。
また、第一通信装置120が基地局である場合は、中継装置110と基地局との間の伝搬環境によって送信信号の偏波面が変化する。これに対して、中継装置110は、基地局に対して、中継装置110において偏波面が第一偏波面となるビームフォーミングのウェイトを通知し、通知したウェイトでビームフォーミングを行わせる。これにより、中継装置110と基地局との間の伝搬環境によらず、基地局からの送信信号を中継装置110で第一偏波面で受信することができる。このため、中継装置110から第二通信装置130への送信信号の回り込みをさらに精度よく低減することができる。
(通信システムの具体例)
図2は、図1に示した通信システムの具体例を示す図である。図2に示す通信システム200は、図1に示した通信システム100の具体例である。通信システム200は、中継局210と、ユーザ端末220と、基地局230と、を含んでいる。中継局210は、ユーザ端末220から基地局230への無線信号を中継するとともに、基地局230からユーザ端末220への無線信号を中継する。
ユーザ端末220は、基地局230を宛先とする信号を中継局210へ送信する。また、ユーザ端末220は、アンテナ221,222を有し、送信する信号に対してアンテナ221,222によりビームフォーミングを行う。また、ユーザ端末220は、基地局230から送信された信号を、中継局210の中継により受信する。
基地局230は、ユーザ端末220から送信された信号を中継局210の中継により受信する。また、基地局230は、ユーザ端末220を宛先とする信号を中継局210へ送信する。また、基地局230は、複数のアンテナを有し、送信する信号に対してアンテナ221,222によりビームフォーミングを行う。
たとえば、ユーザ端末220から基地局230へのアップリンクにおいて、図1に示した中継装置110を中継局210に適用し、第一通信装置120をユーザ端末220に適用し、第二通信装置130を基地局230に適用することができる。ここでは、中継局210は、ユーザ端末220からの送信信号をV偏波面で受信するとともに、基地局230への送信信号をH偏波面で送信するとする。
また、基地局230からユーザ端末220へのダウンリンクにおいて、図1に示した中継装置110を中継局210に適用し、第一通信装置120を基地局230に適用し、第二通信装置130をユーザ端末220に適用することができる。ここでは、中継局210は、基地局230からの送信信号をH偏波面で受信するとともに、ユーザ端末220への送信信号をV偏波面で送信するとする。
V偏波アンテナ211およびH偏波アンテナ212は、中継局210が備えるアンテナを簡略化して図示したものである。V偏波アンテナ211は、V偏波面の信号を送受信するアンテナである。H偏波アンテナ212は、H偏波面の信号を送受信するアンテナである。アンテナ231は、基地局230が備えるアンテナを簡略化して図示したものである。アンテナ231は、H偏波面の信号を送受信するアンテナである。
アップリンクにおいて、中継局210は、ユーザ端末220から受信する信号がV偏波面になるビームフォーミングのウェイトをユーザ端末220へ通知する。これに対して、ユーザ端末220は、中継局210から通知されたウェイトによりビームフォーミングを行った信号を中継局210へ送信する。これにより、中継局210は、ユーザ端末220からの送信信号をV偏波アンテナ211により受信することができる。
また、中継局210は、基地局230への送信信号をH偏波アンテナ212から送信する。これにより、中継局210は、基地局230への送信信号をH偏波面で送信することができる。このため、中継局210から基地局230への送信信号がV偏波アンテナ211へ回り込み、ユーザ端末220から中継局210への送信信号と干渉することを回避することができる。このため、中継局210における干渉MUI(Multi−User Interference)除去処理を省くことが可能になる。
ダウンリンクにおいて、中継局210は、基地局230から受信する信号がH偏波面になるビームフォーミングのウェイトを基地局230へ通知する。これに対して、基地局230は、中継局210から通知されたウェイトによりビームフォーミングを行った信号を中継局210へ送信する。これにより、中継局210は、基地局230からの送信信号をH偏波アンテナ212により受信することができる。
また、中継局210は、ユーザ端末220への送信信号をV偏波アンテナ211から送信する。これにより、中継局210は、ユーザ端末220への送信信号をV偏波面で送信することができる。このため、中継局210からユーザ端末220への送信信号がH偏波アンテナ212へ回り込み、基地局230から中継局210への送信信号と干渉することを回避することができる。
(ビームフォーミングのウェイトの算出)
つぎに、推定した伝搬特性に基づいて、基地局230において受信される信号がV偏波面またはH偏波面になるビームフォーミングのウェイトを算出できることについて説明する。ここでは、図2に示したように、ユーザ端末の数を1(ユーザ端末220)とし、ユーザ端末220の送信アンテナを2本(アンテナ221,222)とする。
また、ユーザ端末220のストリーム数を1とする。また、中継局210は、V偏波アンテナ211を2本(V偏波アンテナv1,v2とする)とH偏波アンテナ212を2本(H偏波アンテナh1,h2とする)を備えているとする。図2に示した通信システム200において、特定の周波数に着目した場合のアップリンクにおける中継局210の受信信号は下記(1)式によって示すことができる。
y=Htx+n …(1)
yは、中継局210における受信信号(位相及び振幅)を示すベクトルである。Hは、中継局210とユーザ端末220の間の伝搬特性(電波伝搬路)を示す行列である。tは、ユーザ端末220におけるビームフォーミングのウェイトを示す行列である。xは、ユーザ端末220からの送信信号である。nは、中継局210とユーザ端末220の間で生じた雑音を示すベクトルである。V偏波アンテナv1,v2およびH偏波アンテナh1,h2の受信信号は、たとえば下記(2)式によって示すことができる。
上記(2)式において、y1〜y4は、それぞれ中継局210のV偏波アンテナv1,v2およびH偏波アンテナh1,h2における受信信号を示す行列である。hjiは、ユーザ端末220の送信アンテナiからユーザ端末220の受信アンテナjへの伝搬特性である。hi1〜hi4は、それぞれ中継局210のV偏波アンテナv1,v2およびH偏波アンテナh1,h2への伝搬特性である。たとえば、h11は、ユーザ端末220のアンテナ221から中継局210のV偏波アンテナv1への伝搬特性である。
wiは、ビームフォーミングのウェイトであり、ユーザ端末220の送信アンテナiの送信信号に乗算するウェイトである。たとえば、w1は、ユーザ端末220のアンテナ221の送信信号に乗算するウェイトである。Wiには、|wi|2=1の制限がある。njは、中継局210の受信アンテナjにおける雑音である。
上記(2)式を展開すると下記(3)式のようになる。
上記(3)式により、ユーザ端末220からの送信信号のH偏波面の応答が中継局210において0となるウェイトは、下記(4)式によって算出することができる。
上記(4)式において、主要パラメータはh31,h32,h41,h42の4つであり、変数はw1,w2の2つである。このため、h31,h32,h41,h42のうちの2要素をキャンセルするw1,w2を算出することができる。そして、算出したw1,w2をユーザ端末220におけるビームフォーミングに用いる。
たとえば、ユーザ端末220は、アンテナ221から送信する信号にw1を乗算するとともに、アンテナ222から送信する信号にw2を乗算する。これにより、ユーザ端末220からの送信信号をV偏波面で中継局210によって受信させることができる。このため、ユーザ端末220からの送信信号をV偏波アンテナ211(V偏波アンテナv1またはV偏波アンテナv2)によって受信させることができる。
なお、中継局210において、V偏波アンテナv1,v2およびH偏波アンテナh1,h2がアレイアンテナとなっている場合は、隣接するアンテナ間の相関が高いために、下記(5)式のような関係が成り立つ。
ここで、δ/δλは隣接アンテナをアンテナ相関が高い範囲内でわずかにずらすことを示し、Δは伝搬の主要成分である第一項(hji)に対して非常に小さい影響であることを示している。また、jとj+1は隣接アンテナであることを示している。上記(4)式は、上記(5)式により下記(6)式のように置き換えることができる。
ここで、主要パラメータがh31,h32の2つであり、微小パラメータがΔ31,Δ32,の2つであり、変数がw1,w2の2つであるため、微小パラメータを無視すれば主要成分をキャンセルすることができる。このように、V偏波アンテナv1,v2およびH偏波アンテナh1,h2がアレイアンテナとなっている場合は、直交偏波間の干渉をほとんど抑えることが可能である。
(FDDを用いる通信システムのアップリンクにおける動作)
図3は、FDDを用いる通信システムのアップリンクにおける動作の一例を示すシーケンス図である。ここでは、アップリンクとダウンリンクとを互いに周波数分割(FDD:Frequency Division Duplex)する場合の通信システム200のアップリンクにおける動作について説明する。まず、基地局230が、中継局210からの参照信号を受信する(ステップS301)。
つぎに、基地局230が、ステップS301によって受信された参照信号に基づいて伝搬路トレーニングを行う(ステップS302)。つぎに、基地局230が、ステップS302の伝搬路トレーニングによって得られた伝搬特性推定値に基づいて、中継局210と基地局230との間で使用する偏波面を選択する(ステップS303)。
つぎに、基地局230が、ステップS303によって選択された偏波面(ここではH偏波面とする)を中継局210へ通知する(ステップS304)。つぎに、中継局210と基地局230が、ステップS304によって通知されたH偏波面でアップリンクのデータ通信を開始する(ステップS305)。つぎに、中継局210が、ユーザ端末220からの参照信号を受信する(ステップS306)。
つぎに、中継局210が、ステップS306によって受信された参照信号に基づいて伝搬路トレーニングを行う(ステップS307)。つぎに、中継局210が、ステップS307の伝搬路トレーニングによって得られた伝搬特性推定値に基づいてビームフォーミングのウェイトを算出する(ステップS308)。ステップS308によって算出されるウェイトは、ユーザ端末220からの送信信号の偏波面がユーザ端末220においてV偏波面(H偏波面とは異なる偏波面)となるビームフォーミングのウェイトである。
つぎに、中継局210が、ステップS308によって算出されたウェイトをユーザ端末220へ通知する(ステップS309)。つぎに、ユーザ端末220が、ステップS309によって通知されたウェイトをユーザ端末220のビームフォーミングに適用する(ステップS310)。つぎに、ユーザ端末220と中継局210が、V偏波面でアップリンクのデータ通信を開始し(ステップS311)、一連の動作を終了する。
このように、中継局210は、第一偏波面より先に第二偏波面を決定し、決定した第二偏面とは異なる偏波面を第一偏波面として決定する。たとえば、中継局210は、図3に示したように、中継局210と基地局230の間で使用する第二偏波面を決定し、決定した第二偏波面とは異なる偏波面を、中継局210と複数の移動端末との間で使用する第一偏波面として決定する。これにより、中継局210と基地局230の間の伝搬特性に基づいて第一偏波面および第二偏波面を決定することができる。
特に、第一通信装置が複数の移動端末であり、第二通信装置が基地局230である場合は、第一偏波面および第二偏波面を簡単な演算により決定することができる。たとえば、中継局210と複数のユーザ端末の間の各伝搬特性を総合して第一偏波面を決定し、決定した第一偏波面とは異なる偏波面を第二偏波面として決定する場合と比べて、第一偏波面および第二偏波面を簡単な演算により決定することができる。このため、第一偏波面および第二偏波面を精度よく高速に決定し、通信品質を向上させることができる。
また、中継局210は、ユーザ端末220からの参照信号を受信し、受信した参照信号に基づいて中継局210とユーザ端末220との間の伝搬特性を推定する。そして、中継局210は、推定した伝搬特性に基づいて、ユーザ端末220におけるビームフォーミングのウェイトを算出する。これにより、ユーザ端末220の保持角度によらず、ユーザ端末220からの送信信号を中継局210においてV偏波面で受信することができる。
なお、ステップS308において、ステップS306によって受信された参照信号に基づくSIR(Signal to Interference Ratio)などをウェイトとともに算出し、ステップS309において、算出したSIRなどをウェイトとともに中継局210からユーザ端末220へ送信してもよい。
ステップS303においては、たとえば、中継局の各アンテナから受信した参照信号の着信レベルについて、V偏波成分を総計したものとH偏波成分を総計したものとを比較し、総計が大きい方の偏波面を選択する。参照信号の着信レベルについて、V偏波成分を総計したものは、たとえば下記(7)式のように示すことができる。
y=hp+n y=[y1,y2,…,yR]T …(7)
上記(7)式において、hは、伝搬路の応答を示すベクトルである。pは、伝搬路をトレーニングするための参照信号を示している。nは、雑音の応答を示すベクトルである。yの各成分は、受信アンテナへ入力された信号である。Rは、受信アンテナの本数を示している。ここで、1〜R/2番目のアンテナがV偏波アンテナでありR/2+1番目〜R番目のアンテナがH偏波アンテナだとする。この場合は、上記(7)式は下記(8)式および(9)式のように、直交成分ごとに分解することができる。
y=hp+n y=[y1,y2,…,yR/2]T …(8)
y=hp+n y=[yR/1+1,yR/1+2,…,yR]T …(9)
上記(8)式のyは、V偏波アンテナにおける受信信号を示している。上記(9)式のyは、H偏波アンテナにおける受信信号を示している。
図3のステップS308において、参照信号の着信レベルについてV偏波成分を総計したものは、V偏波アンテナの受信成分をたとえばMRC(Maximum Ratio Combining)合成した場合のSIRを示している。参照信号の着信レベルについてV偏波成分を総計したものとH偏波成分を総計したものは、たとえば下記(10)式によって示すことができる。
ただし、参照信号の着信レベルについてV偏波成分を総計したものは、上記(9)式において^h=[h1,h2,…,hR/2]Tとすることで算出することができる。また、参照信号の着信レベルについてH偏波成分を総計したものは、上記(9)式において^h=[hR/2+1,hR/2+2,…,hR]Tとすることで算出することができる。
図4は、図3に示した基地局における動作例を示すフローチャートである。基地局230は、まず、中継局210からの参照信号を受信する(ステップS401)。つぎに、ステップS401によって受信された参照信号に基づいて伝搬路トレーニングを行う(ステップS402)。
つぎに、ステップS402の伝搬路トレーニングによって得られた伝搬特性推定値に基づいて、中継局210と基地局230の間で使用する偏波面を選択する(ステップS403)。つぎに、ステップS403によって選択した偏波面が、前回選択した偏波面から変化したか否かを判断する(ステップS404)。なお、前回選択した偏波面が存在しない場合(初回)は、選択した偏波面が変化したと判断する。
ステップS404において、偏波面が変化していない場合(ステップS404:No)は、ステップS401に戻る。偏波面が変化した場合(ステップS404:Yes)は、ステップS403によって新たに選択された偏波面を中継局210へ通知する(ステップS405)。つぎに、中継局210との間で、ステップS403によって新たに選択された偏波面による通信を開始し(ステップS406)、ステップS401へ戻る。
このように、伝搬特性推定値に基づく偏波面の選択を定期的に行い、選択した偏波面が変化した場合に、変化後の偏波面を通知する。これにより、ユーザ端末220の保持角度や伝搬環境が変動しても、ユーザ端末220と中継局210との間で使用する偏波面を、伝搬特性推定値に基づく最適な偏波面に切り替えることができる。このため、通信品質を向上させることができる。
図5は、図3に示した中継局における動作例1を示すフローチャートである。中継局210は、まず、基地局230によって新たな偏波面が通知されたか否かを判断し(ステップS501)、新たな偏波面が通知されるまで待つ(ステップS501:Noのループ)。新たな偏波面が通知された場合(ステップS501:Yes)は、新たに通知された偏波面によって基地局230との通信を開始する(ステップS502)。
つぎに、ユーザ端末220からの参照信号を受信する(ステップS503)。つぎに、ステップS502により受信された参照信号に基づいて伝搬路トレーニングを行う(ステップS504)。つぎに、ステップS504の伝搬路トレーニングによって得られた伝搬特性推定値に基づいてビームフォーミングのウェイトを算出する(ステップS505)。
つぎに、ステップS505によって算出されたウェイトをユーザ端末220へ通知する(ステップS506)。つぎに、ステップS501によって通知された新たな偏波面とは異なる偏波面によってユーザ端末220との通信を開始し(ステップS507)、ステップS501へ戻る。
図6は、図3に示した中継局における動作例2を示すフローチャートである。中継局210は、たとえば図5に示した動作とともに以下の動作を行う。ユーザ端末220からの参照信号を受信する(ステップS601)。つぎに、ステップS601によって受信された参照信号に基づいて伝搬路トレーニングを行う(ステップS602)。
つぎに、ステップS602の伝搬路トレーニングによって得られた伝搬特性推定値に基づいて、ビームフォーミングのウェイトを算出する(ステップS603)。つぎに、ステップS603によって算出されたウェイトが、前回算出したウェイトから変化したか否かを判断する(ステップS604)。なお、前回算出したウェイトが存在しない場合(初回)は、ウェイトが変化したと判断する。
ステップS604において、ウェイトが変化していない場合(ステップS604:No)は、ステップS601へ戻る。ウェイトが変化した場合(ステップS604:Yes)は、ステップS603によって新たに算出されたウェイトをユーザ端末220へ通知し(ステップS605)、ステップS601へ戻る。
このように、中継局210において第一偏波面となるビームフォーミングのウェイトの算出を定期的に行い、算出したウェイトが変化した場合に、変化後のウェイトを通知する。これにより、ユーザ端末220の保持角度が変動しても、ユーザ端末220からの送信信号を中継局210において第一偏波面で受信することができる。このため、中継局210から基地局230への送信信号の回り込みをさらに精度よく低減することができる。
(FDDを用いる通信システムのダウンリンクにおける動作)
図7は、FDDを用いる通信システムのダウンリンクにおける動作の一例を示すシーケンス図である。ここでは、アップリンクとダウンリンクとを互いに周波数分割する場合の通信システム200のダウンリンクにおける動作について説明する。まず、中継局210が、基地局230からの参照信号を受信する(ステップS701)。
つぎに、中継局210が、ステップS701によって受信された参照信号に基づいて伝搬路トレーニングを行う(ステップS702)。つぎに、中継局210が、ステップS702の伝搬路トレーニングによって得られた伝搬特性推定値に基づいて、中継局210と基地局230との間で使用する偏波面の選択と、選択した偏波面に対応するウェイトの算出を行う(ステップS703)。
つぎに、中継局210が、ステップS703によって算出されたウェイトを基地局230へ通知する(ステップS704)。つぎに、基地局230が、ステップS704によって通知されたウェイトを基地局230のビームフォーミングに適用する(ステップS705)。つぎに、基地局230と中継局210が、H偏波面でダウンリンクのデータ通信を開始する(ステップS706)。
つぎに、中継局210が、スケジューリングに基づく通信リソースをユーザ端末220へ通知する(ステップS707)。つぎに、中継局210とユーザ端末220が、V偏波面でダウンリンクのデータ通信を開始し(ステップS708)、一連の動作を終了する。なお、ステップS704において、ステップS703によって選択された偏波面や、SIRなどの情報を中継局210から基地局230へ送信するようにしてもよい。
図8は、図7に示した中継局の動作例を示すフローチャートである。中継局210は、まず、基地局230からの参照信号を受信する(ステップS801)。つぎに、ステップS801によって受信された参照信号に基づいて伝搬路トレーニングを行う(ステップS802)。つぎに、ステップS802の伝搬路トレーニングによって得られた伝搬特性推定値に基づいて、中継局210と基地局230との間で使用する偏波面の選択と、選択した偏波面に対応するウェイトの算出を行う(ステップS803)。
つぎに、中継局210が、ステップS803によって選択された偏波面が、前回選択した偏波面から変化したか否かを判断する(ステップS804)。なお、前回選択した偏波面が存在しない場合(初回)は、選択した偏波面が変化していないと判断する。
ステップS804において、偏波面が変化した場合(ステップS804:Yes)は、ステップS803によって新たに選択された偏波面に対応するウェイトを基地局230へ通知する(ステップS805)。つぎに、基地局230との間で、ステップS803によって新たに選択された偏波面による通信を開始する(ステップS806)。
つぎに、ユーザ端末220との間で、ステップS803によって新たに選択された偏波面とは異なる偏波面による通信を開始し(ステップS807)、ステップS801へ戻る。ステップS804において、偏波面が変化していない場合(ステップS804:No)は、ステップS803によって算出されたウェイトが、前回算出したウェイトから変化したか否かを判断する(ステップS808)。なお、前回算出したウェイトが存在しない場合(初回)は、ウェイトが変化したと判断する。
ステップS808において、ウェイトが変化していない場合(ステップS808:No)は、ステップS801へ戻る。ウェイトが変化した場合(ステップS808:Yes)は、ステップS803によって新たに算出されたウェイトを基地局230へ通知し(ステップS809)、ステップS801へ戻る。
このように、中継局210において第一偏波面となるビームフォーミングのウェイトの算出を定期的に行い、算出したウェイトが変化した場合に、変化後のウェイトを通知する。これにより、中継局210と基地局230との間の伝搬環境が変動しても、基地局230からの送信信号を中継局210において第一偏波面で受信することができる。このため、中継局210からユーザ端末220への送信信号の回り込みをさらに精度よく低減することができる。
このように、伝搬特性推定値に基づく偏波面(第一偏波面)の選択を定期的に行い、選択した偏波面が変化した場合に、変化後の偏波面を通知する。これにより、中継局210と基地局230との間の伝搬環境が変動しても、基地局230と中継局210との間で使用する偏波面を、伝搬特性推定値に基づく最適な偏波面に切り替えることができる。このため、通信品質を向上させることができる。
(FDDに対応する基地局の構成)
図9は、FDDに対応する基地局の構成の一例を示す図である。図9に示すように、基地局230は、V偏波アンテナ911と、H偏波アンテナ912と、V偏波デュプレクサ921と、H偏波デュプレクサ922と、信号受信部931と、ULデータ受信部932と、伝搬路トレーニング部941と、受信品質算出部942と、偏波面選択部950と、DLデータ生成部961と、ウェイト乗算部962と、RS生成部963と、スケジューラ971と、スケジューラ情報生成部972と、信号送信部980と、を備えている。
V偏波アンテナ911は、中継局210からのV偏波面の信号を受信し、受信した信号をV偏波デュプレクサ921へ出力する。また、V偏波アンテナ911は、V偏波デュプレクサ921から出力された信号をV偏波面で中継局210へ送信する。H偏波アンテナ912は、中継局210からのH偏波面の信号を受信し、受信した信号をH偏波デュプレクサ922へ出力する。また、H偏波アンテナ912は、H偏波デュプレクサ922から出力された信号をH偏波面で中継局210へ送信する。
V偏波デュプレクサ921は、V偏波アンテナ911からの信号を信号受信部931および伝搬路トレーニング部941へ出力する。また、V偏波デュプレクサ921は、信号送信部980から出力されたV偏波面の信号をV偏波アンテナ911へ出力する。H偏波デュプレクサ922は、H偏波アンテナ912からの信号を信号受信部931および伝搬路トレーニング部941へ出力する。また、H偏波デュプレクサ922は、信号送信部980から出力されたH偏波面の信号をH偏波アンテナ912へ出力する。
信号受信部931は、V偏波デュプレクサ921およびH偏波デュプレクサ922から出力された各信号の復調および復号を行い、復号した各信号をULデータ受信部932へ出力する。ULデータ受信部932は、信号受信部931から出力された各信号に含まれるUL(Up Link)データを受信する。ULデータ受信部932は、受信したULデータに含まれるウェイト情報をウェイト乗算部962へ出力する。
伝搬路トレーニング部941は、V偏波デュプレクサ921およびH偏波デュプレクサ922から出力された各信号に含まれる参照信号をトレーニング信号として、中継局210と基地局230との間の伝搬特性を推定する。また、基地局230が複数の中継局と通信を行う場合は、伝搬路トレーニング部941は、中継局ごとに伝搬路を推定する。
たとえば、参照信号のパターンが中継局ごとにあらかじめ定められており、伝搬路トレーニング部941は、取得した参照信号のパターンに基づいて送信元の中継局を判定する。また、伝搬路トレーニング部941は、取得した参照信号の振幅および伝搬路の変化に基づいて伝搬特性を推定する。伝搬路トレーニング部941は、推定した伝搬特性を示す伝搬特性推定値(伝搬路推定値)を受信品質算出部942へ出力する。
受信品質算出部942は、伝搬路トレーニング部941から出力された伝搬特性推定値に基づいて、中継局210から送信された信号のSIR(受信品質)を算出する。また、受信品質算出部942は、V偏波アンテナ911により受信した信号のSIRと、H偏波アンテナ912により受信した信号のSIRと、をそれぞれ算出する。受信品質算出部942は、算出したSIRを偏波面選択部950へ出力する。
偏波面選択部950は、受信品質算出部942から出力されたSIRをスケジューラ971へ出力する。また、偏波面選択部950は、受信品質算出部942から出力されたSIRに基づいて、中継局210から基地局230へのアップリンクにおいて用いる偏波面を選択する。具体的には、偏波面選択部950は、V偏波面とH偏波面のうちの、SIRが大きい偏波面を選択する。偏波面選択部950は、選択した偏波面が前回選択した偏波面と異なっていた場合は、選択した偏波面をDLデータ生成部961へ通知する。
DLデータ生成部961は、たとえば基地局230の送信バッファからデータを読み出してDL(Down Link)データを生成し、生成したDLデータをウェイト乗算部962へ出力する。また、DLデータ生成部961は、生成するDLデータに、偏波面選択部950から通知された偏波面を示す偏波面情報を格納する。
ウェイト乗算部962は、DLデータ生成部961から出力されたDLデータに、ULデータ受信部932から出力されたウェイト情報が示すウェイトを乗算する。ウェイト乗算部962は、ウェイトを乗算したDLデータを信号送信部980へ出力する。これにより、基地局230から送信されるDLデータの送信信号がビームフォーミングされる。RS生成部963は、参照信号を生成して信号送信部980へ出力する。
スケジューラ971は、偏波面選択部950から出力されたSIRやQoS(Quality of Service)情報に基づいて、中継局210と基地局230との間の通信のスケジューリングを行う。具体的には、スケジューラ971は、偏波面選択部950から出力されたSIRやQoS情報に基づいて、中継局210と基地局230との間の通信に対して無線リソースを割り当てる。また、スケジューラ971は、中継局210とユーザ端末220との間の通信のスケジューリングを行うようにしてもよい。
スケジューラ971は、割り当てた無線リソースを示す割当情報をスケジューラ情報生成部972へ出力する。スケジューラ情報生成部972は、スケジューラ971から出力された割当情報を含むスケジューラ情報を生成する。スケジューラ情報生成部972は、生成したスケジューラ情報を信号送信部980へ出力する。
信号送信部980は、ウェイト乗算部962からのDLデータと、RS生成部963からの参照信号と、スケジューラ情報生成部972からのスケジューラ情報と、を多重する。信号送信部980は、多重した信号をV偏波デュプレクサ921とH偏波デュプレクサ922へ出力する。
なお、ULデータ受信部932、伝搬路トレーニング部941、受信品質算出部942、偏波面選択部950、DLデータ生成部961、ウェイト乗算部962、スケジューラ971、スケジューラ情報生成部972および信号送信部980は、たとえばDSPなどの演算回路によって実現することができる。
(FDDに対応する中継局の構成)
図10は、FDDに対応する中継局の構成の一例を示す図である。図10に示すように、中継局210は、V偏波アンテナ1001と、H偏波アンテナ1002と、V偏波デュプレクサ1003と、H偏波デュプレクサ1004と、伝搬路トレーニング部1005と、算出部1006と、ウェイト選択部1007と、偏波選択部1008と、スケジューラ情報抽出部1009と、スケジューラ情報生成部1010と、信号受信部1011と、DLデータ受信部1012と、DLデータ送信部1013と、偏波面選択部1014と、RS生成部1015と、信号送信部1016と、V偏波アンテナ1017と、H偏波アンテナ1018と、V偏波デュプレクサ1019と、H偏波デュプレクサ1020と、伝搬路トレーニング部1021と、算出部1022と、偏波選択部1024と、信号受信部1025と、ULデータ受信部1026と、ULデータ送信部1027と、偏波面選択部1028と、RS生成部1029と、信号送信部1030と、を備えている。
V偏波アンテナ1001は、基地局230からのV偏波面の信号を受信し、受信した信号をV偏波デュプレクサ1003へ出力する。また、V偏波アンテナ1001は、V偏波デュプレクサ1003から出力された信号をV偏波面で基地局230へ送信する。H偏波アンテナ1002は、基地局230からのH偏波面の信号を受信し、受信した信号をH偏波デュプレクサ1004へ出力する。また、H偏波アンテナ1002は、H偏波デュプレクサ1004から出力された信号をH偏波面で基地局230へ送信する。
V偏波デュプレクサ1003は、V偏波アンテナ1001から出力された信号を、伝搬路トレーニング部1005および偏波選択部1008へ出力する。また、V偏波デュプレクサ1003は、信号送信部1030から出力されたV偏波面の信号をV偏波アンテナ1001へ出力する。H偏波デュプレクサ1004は、H偏波アンテナ1002から出力された信号を、伝搬路トレーニング部1005および偏波選択部1008へ出力する。また、H偏波デュプレクサ1004は、信号送信部1030から出力されたH偏波面の信号をH偏波アンテナ1002へ出力する。
伝搬路トレーニング部1005は、V偏波デュプレクサ1003およびH偏波デュプレクサ1004から出力された各信号に含まれる参照信号をトレーニング信号として、中継局210と基地局230との間の伝搬特性を推定する。
たとえば、参照信号のパターンが中継局ごとにあらかじめ定められており、伝搬路トレーニング部1005は、取得した参照信号のパターンに基づいて送信元の中継局を判定する。また、伝搬路トレーニング部1005は、取得した参照信号の振幅および伝搬路の変化に基づいて伝搬特性を推定する。伝搬路トレーニング部1005は、推定した伝搬特性を示す伝搬特性推定値を算出部1006へ出力する。
算出部1006は、伝搬路トレーニング部1005から出力された伝搬特性推定値に基づいてV偏波ウェイトおよびH偏波ウェイトを算出する。V偏波ウェイトは、中継局210により受信される信号がV偏波面になるビームフォーミングのウェイトである。H偏波ウェイトは、中継局210により受信される信号がH偏波面になるビームフォーミングのウェイトである。
また、算出部1006は、伝搬路トレーニング部1005から出力された伝搬特性推定値に基づいてV偏波SIRおよびH偏波SIRを算出する。V偏波SIRは、V偏波ウェイトに対応するSIRであり、基地局230のビームフォーミングにV偏波ウェイトを用いることで、中継局210で受信される信号がV偏波面になるときのSIRである。
H偏波SIRは、H偏波ウェイトに対応するSIRであり、基地局230のビームフォーミングにH偏波ウェイトを用いることで、中継局210で受信される信号がH偏波面になるときのSIRである。算出部1006は、算出したV偏波ウェイト、H偏波ウェイト、V偏波SIRおよびH偏波SIRをウェイト選択部1007へ出力する。
ウェイト選択部1007は、算出部1006から出力されたV偏波SIRおよびH偏波SIRに基づいて、算出部1006から出力されたV偏波ウェイトおよびH偏波ウェイトのいずれかを選択する。具体的には、ウェイト選択部1007は、V偏波SIRおよびH偏波SIRのうちの高い方に対応するウェイトを選択する。たとえば、ウェイト選択部1007は、H偏波SIRよりV偏波SIRの方が高い場合はV偏波ウェイトを選択する。
ウェイト選択部1007は、選択したウェイトを示すウェイト情報をULデータ送信部1027へ出力する。また、ウェイト選択部1007は、V偏波SIRおよびH偏波SIRのうちの選択したウェイトに対応する偏波面を偏波選択部1008へ通知するとともに、選択したウェイトとは異なるウェイトに対応する偏波面を偏波選択部1024へ通知する。たとえば、ウェイト選択部1007は、V偏波ウェイトを選択した場合は、V偏波面を偏波選択部1008へ通知するとともに、H偏波面を偏波選択部1024へ通知する。
偏波選択部1008は、V偏波デュプレクサ1003およびH偏波デュプレクサ1004から出力された各信号のうちの、ウェイト選択部1007から通知された偏波面に対応する信号を選択する。たとえば、偏波選択部1008は、ウェイト選択部1007からV偏波面が通知された場合は、H偏波デュプレクサ1004から出力された信号を選択する。偏波選択部1008は、選択した信号をスケジューラ情報抽出部1009および信号受信部1011へ出力する。
スケジューラ情報抽出部1009は、偏波選択部1008から出力された信号に含まれるスケジューラ情報を抽出する。スケジューラ情報抽出部1009は、抽出したスケジューラ情報をスケジューラ情報生成部1010へ出力する。また、スケジューラ情報抽出部1009は、抽出したスケジューリング情報に基づいて、中継局210とユーザ端末220との間の通信に対する新たなスケジューリングを行うようにしてもよい。
この場合は、スケジューラ情報抽出部1009は、スケジューリングの結果を示すスケジューラ情報をスケジューラ情報生成部1010へ出力する。スケジューラ情報生成部1010は、スケジューラ情報抽出部1009から出力されたスケジューラ情報と、算出部1022から出力されたウェイト情報と、を多重して信号送信部1016へ出力する。
信号受信部1011は、偏波選択部1008から出力された信号の復調および復号を行ってDLデータ受信部1012へ出力する。また、信号受信部1011は、伝搬路トレーニング部1005によって出力された伝搬特性推定値を取得し、取得した伝搬特性推定値に基づいて復調および復号を行ってもよい。
DLデータ受信部1012は、信号受信部1011から出力された信号に含まれるDLデータをDLデータ送信部1013へ出力する。また、DLデータ受信部1012は、信号受信部1011から出力された信号に含まれる、基地局230から送信された偏波面情報が示す偏波面を偏波面選択部1028へ通知する。また、DLデータ受信部1012は、偏波面情報が示す偏波面とは異なる偏波面を偏波面選択部1014へ通知する。
DLデータ送信部1013は、DLデータ受信部1012から出力されたDLデータを偏波面選択部1014へ出力する。また、DLデータ送信部1013は、スケジューラ情報抽出部1009から出力されたスケジューラ情報を取得し(図10においては不図示)、取得したスケジューラ情報に基づいてDLデータを偏波面選択部1014へ出力する。
偏波面選択部1014は、DLデータ送信部1013から出力されたDLデータを信号送信部1016へ出力する。また、偏波面選択部1014は、DLデータ受信部1012からの通知に従ってDLデータの偏波面を選択する。RS生成部1015は、参照信号を生成して信号送信部1016へ出力する。
信号送信部1016は、偏波面選択部1014からのDLデータと、RS生成部1015からの参照信号と、スケジューラ情報生成部1010からのスケジューラ情報およびウェイト情報と、を多重する。信号送信部1016は、多重した信号をV偏波デュプレクサ1019とH偏波デュプレクサ1020へ出力する。信号送信部1016によって出力された信号は、V偏波アンテナ1017およびH偏波アンテナ1018によってユーザ端末220へ送信される。
V偏波アンテナ1017は、ユーザ端末220からのV偏波面の信号を受信し、受信した信号をV偏波デュプレクサ1019へ出力する。また、V偏波アンテナ1017は、V偏波デュプレクサ1019からの信号をV偏波面でユーザ端末220へ送信する。H偏波アンテナ1018は、ユーザ端末220からのH偏波面の信号を受信し、受信した信号をH偏波デュプレクサ1020へ出力する。また、H偏波アンテナ1018は、H偏波デュプレクサ1020からの信号をH偏波面でユーザ端末220へ送信する。
V偏波デュプレクサ1019は、V偏波アンテナ1017から出力された信号を伝搬路トレーニング部1021および偏波選択部1024へ出力する。また、V偏波デュプレクサ1019は、信号送信部1016から出力されたV偏波面の信号をV偏波アンテナ1017へ出力する。H偏波デュプレクサ1020は、H偏波アンテナ1018から出力された信号を伝搬路トレーニング部1021および偏波選択部1024へ出力する。また、H偏波デュプレクサ1020は、信号送信部1016から出力されたH偏波面の信号をH偏波アンテナ1018へ出力する。
伝搬路トレーニング部1021は、V偏波デュプレクサ1019およびH偏波デュプレクサ1020から出力された各信号に含まれる参照信号をトレーニング信号として、中継局210とユーザ端末220との間の伝搬特性を推定する。
たとえば、参照信号のパターンがユーザ端末ごとにあらかじめ定められており、伝搬路トレーニング部1021は、取得した参照信号のパターンに基づいて送信元のユーザ端末を判定する。また、伝搬路トレーニング部1021は、取得した参照信号の振幅および伝搬路の変化に基づいて伝搬特性を推定する。伝搬路トレーニング部1021は、推定した伝搬特性を示す伝搬特性推定値を算出部1022へ出力する。
算出部1022は、伝搬路トレーニング部1021から出力された伝搬特性推定値に基づいて、中継局210とユーザ端末220との間で使用する偏波面に対応するウェイト(V偏波ウェイトまたはH偏波ウェイト)を算出する。中継局210とユーザ端末220との間で使用する偏波面は、たとえばDLデータ受信部1012から偏波面選択部1014へ通知される偏波面である。
また、算出部1022は、伝搬路トレーニング部1021から出力された伝搬特性推定値に基づいて、算出する偏波面に対応するSIR(V偏波SIRまたはH偏波SIR)を算出する。たとえば、算出部1022は、V偏波ウェイトを算出する場合は、ユーザ端末220においてV偏波ウェイトを用いた場合のV偏波SIRを算出する。算出部1022は、算出したウェイトおよびSIRをスケジューラ情報生成部1010へ出力する。
偏波選択部1024は、V偏波デュプレクサ1019およびH偏波デュプレクサ1020から出力された各信号のうちの、ウェイト選択部1007から通知された偏波面に対応する信号を選択する。たとえば、偏波選択部1024は、ウェイト選択部1007からV偏波面が通知された場合は、V偏波デュプレクサ1019から出力された信号を選択する。偏波選択部1024は、選択した信号を信号受信部1025へ出力する。
中継局210において中継局210とユーザ端末220との間のスケジューリングを行う場合は、信号受信部1025は、中継局210におけるスケジューリング結果に基づいて、偏波選択部1024から出力された信号の復調および復号を行う。信号受信部1025は、復号した信号をULデータ受信部1026へ出力する。中継局210においてスケジューリングを行わない場合は、信号受信部1025は、偏波選択部1024から出力された信号をULデータ受信部1026へ転送する。
ULデータ受信部1026は、信号受信部1025から出力された信号を受信し、受信した信号に含まれるULデータをULデータ送信部1027へ出力する。ULデータ送信部1027は、ULデータ受信部1026から出力されたULデータを偏波面選択部1028へ出力する。また、ULデータ送信部1027は、ウェイト選択部1007から出力されたウェイト情報を偏波面選択部1028へ出力する。
偏波面選択部1028は、ULデータ送信部1027から出力されたULデータおよびウェイト情報を信号送信部1030へ出力する。また、偏波面選択部1028は、DLデータ受信部1012からの通知に従ってULデータの偏波面を選択する。RS生成部1029は、参照信号を生成して信号送信部1030へ出力する。
信号送信部1030は、偏波面選択部1028からのULデータおよびウェイト情報と、RS生成部1029からの参照信号と、を多重する。信号送信部1030は、多重した信号をV偏波デュプレクサ1019とH偏波デュプレクサ1020へ出力する。信号送信部1030によって出力された信号は、V偏波デュプレクサ1019とH偏波デュプレクサ1020によってユーザ端末へ送信される。
なお、伝搬路トレーニング部1005、算出部1006、ウェイト選択部1007、偏波選択部1008、スケジューラ情報抽出部1009、スケジューラ情報生成部1010、信号受信部1011、DLデータ受信部1012、DLデータ送信部1013、偏波面選択部1014、RS生成部1015、信号送信部1016、伝搬路トレーニング部1021、算出部1022、偏波選択部1024、信号受信部1025、ULデータ受信部1026、ULデータ送信部1027、偏波面選択部1028、RS生成部1029および信号送信部1030は、たとえばDSPなどの演算回路によって実現することができる。
また、V偏波アンテナ1001とV偏波アンテナ1017は、別々のアンテナとして図示したが、一つのV偏波アンテナによって実現してもよい。同様に、H偏波アンテナ1002とH偏波アンテナ1018は、別々のアンテナとして図示したが、一つのH偏波アンテナによって実現してもよい。
(ユーザ端末の構成)
図11は、ユーザ端末の構成の一例を示す図である。図11に示すように、ユーザ端末220は、アンテナ1111と、アンテナ1112と、デュプレクサ1121と、デュプレクサ1122と、伝搬路トレーニング部1131と、信号分離部1132と、DLデータ受信部1140と、スケジューラ情報抽出部1150と、ULデータ生成部1160と、ウェイト乗算部1170と、参照信号生成部1180と、信号送信部1190と、を備えている。
アンテナ1111は、中継局210からの信号を受信し、受信した信号をデュプレクサ1121へ出力する。また、アンテナ1111は、デュプレクサ1121から出力された信号を中継局210へ送信する。アンテナ1112は、中継局210からの信号を受信し、受信した信号をデュプレクサ1122へ出力する。また、アンテナ1112は、デュプレクサ1122から出力された信号を中継局210へ送信する。
デュプレクサ1121は、アンテナ1111から出力された信号を伝搬路トレーニング部1131および信号分離部1132へ出力する。また、デュプレクサ1121は、信号送信部1190から出力された信号をアンテナ1111へ出力する。デュプレクサ1122は、アンテナ1112から出力された信号を伝搬路トレーニング部1131および信号分離部1132へ出力する。また、デュプレクサ1122は、信号送信部1190から出力された信号をアンテナ1112へ出力する。
伝搬路トレーニング部1131は、デュプレクサ1121およびデュプレクサ1122から出力された各信号に含まれる参照信号をトレーニング信号として、中継局210とユーザ端末220との間の伝搬特性を推定する。
たとえば、参照信号のパターンがユーザ端末ごとにあらかじめ定められており、伝搬路トレーニング部1131は、取得した参照信号のパターンに基づいて送信元の中継局を判定する。また、伝搬路トレーニング部1131は、取得した参照信号の振幅および伝搬路の変化に基づいて伝搬特性を推定する。伝搬路トレーニング部1131は、推定した伝搬特性を示す伝搬特性推定値をDLデータ受信部1140へ出力する。
信号分離部1132は、デュプレクサ1121およびデュプレクサ1122から出力された信号を、DLデータとスケジューラ情報とに分離する。信号分離部1132は、分離したDLデータをDLデータ受信部1140へ出力する。また、信号分離部1132は、分離したスケジューラ情報をスケジューラ情報抽出部1150へ出力する。DLデータ受信部1140は、伝搬路トレーニング部1131から出力された伝搬特性推定値に基づいて、信号分離部1132から出力されたDLデータの復調および復号を行う。
スケジューラ情報抽出部1150は、信号分離部1132から出力されたスケジューラ情報から、ユーザ端末220を宛先とするスケジューラ情報を抽出する。スケジューラ情報抽出部1150は、抽出したスケジューラ情報に含まれる割当情報をULデータ生成部1160へ出力する。スケジューラ情報抽出部1150は、抽出したスケジューラ情報に含まれるウェイト情報をウェイト乗算部1170へ出力する。
ULデータ生成部1160は、スケジューラ情報抽出部1150から出力された割当情報が示すフォーマットに従ってユーザ端末220の送信バッファから必要な量のデータを読み出し、読み出したデータを符号化することでULデータを生成する。ULデータ生成部1160は、生成したULデータをウェイト乗算部1170へ出力する。
ウェイト乗算部1170は、ULデータ生成部1160から出力されたULデータから、アンテナ1111,1112にそれぞれ対応する2系統のUL信号を生成する。そして、ウェイト乗算部1170は、生成した各UL信号に対して、スケジューラ情報抽出部1150からのウェイト情報が示すウェイトを乗算する。ウェイト乗算部1170は、ウェイトを乗算した各UL信号を信号送信部1190へ出力する。参照信号生成部1180は、あらかじめ定められたパターンの参照信号を生成して信号送信部1190へ出力する。
信号送信部1190は、参照信号生成部1180から出力された参照信号を、デュプレクサ1121およびデュプレクサ1122へ出力する。これにより、参照信号が、アンテナ1111およびアンテナ1112によって中継局210へ送信される。また、信号送信部1190は、ウェイト乗算部1170から出力された各UL信号をそれぞれデュプレクサ1121およびデュプレクサ1122へ出力する。これにより、アンテナ1111に対応するUL信号がアンテナ1111から中継局210へ送信され、アンテナ1112に対応するUL信号がアンテナ1112から中継局210へ送信される。
また、信号送信部1190は、伝搬路トレーニング部1131から出力された伝搬特性推定値を、デュプレクサ1121およびデュプレクサ1122へ出力する。これにより、中継局210とユーザ端末220との間の伝搬特性を示す伝搬特性推定値が中継局210へフィードバックされる。
なお、伝搬路トレーニング部1131、信号分離部1132、DLデータ受信部1140、スケジューラ情報抽出部1150、ULデータ生成部1160、ウェイト乗算部1170、参照信号生成部1180および信号送信部1190は、たとえばDSPなどの演算回路によって実現することができる。
(TDDを用いる通信システムの動作)
図12は、TDDを用いる通信システムの動作の一例を示すシーケンス図である。ここでは、アップリンクとダウンリンクとを互いに時分割(TDD:Time Division Duplex)する場合の通信システム200の動作について説明する。図12のステップS1201〜S1205は、図7のステップS701〜S705と同様であるため説明を省略する。
ステップS1205によってウェイトを基地局230のビームフォーミングに適用すると、つぎに、基地局230と中継局210が、H偏波面で時分割によりアップリンクとダウンリンクのデータ通信を開始する(ステップS1206)。つぎに、中継局210が、ユーザ端末220からの参照信号を受信する(ステップS1207)。
つぎに、中継局210が、ステップS1207によって受信された参照信号に基づいて伝搬路トレーニングを行う(ステップS1208)。つぎに、中継局210が、ステップS1208の伝搬路トレーニングによって得られた伝搬特性推定値に基づいて、ユーザ端末220におけるビームフォーミングのウェイトを算出する(ステップS1209)。
つぎに、中継局210が、ステップS1209によって算出されたウェイトをユーザ端末220へ通知する(ステップS1210)。つぎに、ユーザ端末220が、ステップS1210によって通知されたウェイトをユーザ端末220のビームフォーミングに適用する(ステップS1211)。つぎに、ユーザ端末220と中継局210が、V偏波面で時分割によりアップリンクとダウンリンクのデータ通信を開始し(ステップS1212)、一連の動作を終了する。
このように、基地局230と中継局210の通信と、中継局210とユーザ端末220の通信と、を偏波面で分離し、アップリンクとダウンリンクとを互いに時分割することで、回り込み干渉を抑圧することができる。
(TDDに対応する基地局の構成)
図13は、TDDに対応する基地局の構成の一例を示す図である。図13において、図9に示した構成と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。図13に示すように、基地局230と中継局210との間のアップリンクとダウンリンクを時分割する場合は、基地局230は、図9に示した受信品質算出部942および偏波面選択部950を省いた構成にしてもよい。
これは、基地局230と中継局210との間で使用する偏波面が、基地局230から中継局210へのダウンリンクの伝搬特性に基づいて中継局210によって決定されるためである。伝搬路トレーニング部941は、推定した伝搬特性を示す伝搬特性推定値をスケジューラ971へ出力する。スケジューラ971は、伝搬路トレーニング部941から出力された伝搬特性推定値やQoS情報に基づいて、中継局210と基地局230との間の通信のスケジューリングを行う。
(TDDに対応する中継局の構成)
図14は、TDDに対応する中継局の構成の一例を示す図である。図14において、図10に示した構成と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。図14に示すように、基地局230と中継局210との間のアップリンクとダウンリンクを時分割する場合は、基地局230から送信された信号に偏波面情報が含まれていない。
このため、DLデータ受信部1012から偏波面選択部1014および偏波面選択部1028への偏波面の通知は行われない。これに対して、ウェイト選択部1007が、選択したウェイトに対応する偏波面を偏波面選択部1014へ通知するとともに、選択したウェイトとは異なるウェイトに対応する偏波面を偏波面選択部1028へ通知する。たとえば、ウェイト選択部1007は、H偏波ウェイトを選択した場合は、偏波面選択部1014へH偏波面を通知するとともに、偏波面選択部1028へV偏波面を通知する。
(伝搬品質の算出)
つぎに、伝搬特性推定値に基づいて、伝搬品質としてSIRを算出する方法の一例について説明する。ここでは、表記を簡単にするために、送受信1×1のSISO(Single Input and Single Output)構成を例として説明する。受信アンテナへの入力をy、伝搬特性をh、パイロットチャネルをp、雑音をnとすると、下記(11)式のようになる。
y=hp+n …(11)
高精度にSIRを算出するためには、伝搬路の相関が高い状態(伝搬路変動が少ない時間や周波数)でパイロットチャネルのパイロットパターンを連続して受信するとよい。たとえば、時間方向にT回連続してパイロットパターンを送信する場合は、上記(11)式を下記(12)式のように示すことができる。
y=hp+n y=[y1,y2,…,y3]T …(12)
上記(12)式においては時間方向にT回連続してパイロットパターンを送信する場合を示したが、周波数方向に連続してパイロットパターンを送信する場合も同様である。下記(13)式のように、ユーザ端末220や中継局210においてパイロットパターンの逆パターンを乗算することで伝搬特性推定値^h(チャネル推定値)を算出できる。
上記(13)式において、E<n>は、振幅次元の雑音を平均化した値であり、平均数が大きいと0に収束する。このように、雑音に影響されにくいチャネル推定を行うとよい。なお、このチャネル推定により得られた伝搬特性推定値^hは、既知のパイロットパターンに対する伝搬路の利得を示すため、受信信号の大きさを示す。SIRは、上記(13)式を電力次元に変換し、下記(14)式によって算出することができる。
上記(14)式において、分子は信号の電力を示しており、分母は全体の受信電力から信号の電力を引き算して得られる雑音の電力を示している。このように、SIRは、受信信号とその伝搬特性推定値^hに基づいて算出することができる。
(ウェイト設定自由度がある場合のSIR改善)
中継局210やユーザ端末220が同じ偏波の信号を受信するアンテナを複数有する場合は、V偏波ウェイトとH偏波ウェイトの算出によって送信側のウェイト設定を行った後に、さらに受信側のウェイト設定の自由度がある。たとえば、水平方向に複数のアンテナを持つ場合は、スペースダイバーシティ受信を行い、SIRを改善することが可能である。同じ偏波のアンテナがR本ある場合は、上記(11)式を下記(15)式のように示すことができる。
y=hd+n y=[y1,y2,…,yR]T …(15)
あるアンテナから送信された信号dが、このR本のアンテナによって受信されるとする。この場合は、一つのアンテナで受信した信号を基準に、残りの信号を合成することができる。この場合はウェイト設定自由度がR−1である。SIRを向上させる合成方法には様々な方法があるが、一般的な方法としてMRC合成がある。MRC合成においては、伝搬特性推定値^hを用いて下記(16)式のように信号を復号する。
上記(16)式により、SIRは下記(17)式のように改善する。
(ビームフォーミングのウェイトの算出の変形例)
ここでは、ユーザ端末220から中継局210への伝搬特性推定値に基づいてユーザ端末220へ通知するウェイトを算出する場合について説明する。ただし、基地局230から中継局210への伝搬特性推定値に基づいて基地局230へ通知するウェイトを算出する場合についても同様の算出方法を適用することができる。
図15は、中継局とユーザ端末との間の各パスと偏波面を示す図である。図15に示すように、ユーザ端末220から中継局210へ送信される信号は、通常、マルチパスとなる。ここでは、ユーザ端末220から中継局210へ送信される信号のマルチパスが、パスpath1〜path4であるとする。
ユーザ端末220からの信号は、パスpath1〜path4においてそれぞれ異なる反射を経て中継局210に到達する。このため、ユーザ端末220からの信号は、パスごとに異なる偏波振動を持つ。偏波面1511〜1514は、それぞれパスpath1〜path4における信号の偏波面である。偏波面1511〜1514において、横軸はH偏波面の振幅を示し、縦軸はV偏波面の振幅を示している。
図15に示す状態においては、V偏波面またはH偏波面に最も近い偏波面1512(V偏波面とほぼ同じ)となるパスpath2の方向にユーザ端末220がビームを絞って送信することで、中継局210において受信する信号をV偏波面にすることができる。このように、特定のパスに絞ってユーザ端末220がビームフォーミングを行うことで、中継局210において受信する信号の偏波面を制御することができる。
中継局210は、ユーザ端末220におけるビームフォーミングのウェイトを示す複数のプリコーディングウェイトを取得する。複数のプリコーディングウェイトは、ユーザ端末220から中継局210への複数のパス(たとえばパスpath1〜path4)に対応するビームフォーミングのウェイトを示している。複数のプリコーディングウェイトは、たとえば中継局210のメモリにあらかじめ記憶されている。
中継局210は、取得した複数のプリコーディングウェイトから、中継局210において受信される信号がV偏波面またはH偏波面に最も近い偏波面となるプリコーディングウェイトを選択する。そして、中継局210は、選択したプリコーディングウェイトをユーザ端末220へ通知する。ユーザ端末220は、中継局210から通知されたプリコーディングウェイトによってビームフォーミングを行った信号を中継局210へ送信する。
図16は、図10に示した算出部およびウェイト選択部の処理の他の一例を示す図である。図10に示した中継局210の算出部1006およびウェイト選択部1007は、図16に示すプリコーディング応答算出部1611,1612,…と、直交性比較部1620と、プリコーディング決定部1630と、SIR算出部1640と、によって実現することができる。
プリコーディング応答算出部1611,1612,…は、1,2,…番目のプリコーディングウェイトにそれぞれ対応している。たとえば、プリコーディング応答算出部1611は、1番目のプリコーディングウェイトに対して伝搬特性推定値を乗算することで、1番目のプリコーディングウェイトにおける受信信号の応答値を算出する。同様に、プリコーディング応答算出部1612,…は、それぞれ2,…番目のプリコーディングウェイトにおける受信信号の応答値を算出する。プリコーディング応答算出部1611,1612,…は、算出した応答値を直交性比較部1620へ出力する。
直交性比較部1620は、プリコーディング応答算出部1611,1612,…から出力された各応答値の直交性を比較する。直交性比較部1620は、直交性の比較結果をプリコーディング決定部1630へ出力する。直交性比較部1620における直交性の比較については後述する。
プリコーディング決定部1630は、直交性比較部1620から出力された比較結果に基づいて、ユーザ端末220へ送信するプリコーディングウェイトを決定する。具体的には、プリコーディング決定部1630は、受信信号の応答値がH偏波面またはV偏波面のいずれかに最も近くなるプリコーディングウェイトを決定する。
また、プリコーディング決定部1630は、V偏波面とH偏波面のうちの、決定したプリコーディングにおける受信信号の応答値が近い偏波面を、プリコーディングウェイトに対応する偏波面として決定する。プリコーディング決定部1630は、決定したプリコーディングウェイト、偏波面および伝搬特性推定値をSIR算出部1640へ出力する。
SIR算出部1640は、プリコーディング決定部1630から出力されたプリコーディングウェイトに対応するSIRを算出する。プリコーディングウェイトに対応するSIRは、ユーザ端末220のビームフォーミングにプリコーディングウェイトを用いる場合のSIRである。SIR算出部1640は、決定したプリコーディングウェイトを、ユーザ端末220へ通知するウェイトとして出力する。また、SIR算出部1640は、V偏波面とH偏波面のうちの、プリコーディングウェイトに対応する偏波面を示す偏波面情報を出力する。
たとえば、SIR算出部1640は、プリコーディング決定部1630によって応答値がV偏波面に近いプリコーディングウェイトが選択された場合は、V偏波面を示す偏波面情報を出力する。また、SIR算出部1640は、プリコーディング決定部1630によって応答値がH偏波面に近いプリコーディングウェイトが選択された場合は、H偏波面を示す偏波面情報を出力する。
図16の直交性比較部1620においては、たとえば下記(18)式に示すアルゴリズムによって直交性の比較を行う。
上記(18)式において、rnH(Pi)は、i番目のプリコーディングウェイトをビームフォーミングに用いた場合の、中継局210の各H偏波アンテナのうちのn番目のアンテナの受信信号を示している。rnV(Pi)は、i番目のプリコーディングウェイトをビームフォーミングに用いた場合の、中継局210の各V偏波アンテナのうちのn番目のアンテナの受信信号を示している。
ここでは、プリコーディングウェイトはX個(たとえば64個)あるとする。また、V偏波面の信号とH偏波面の信号を受信するアンテナがそれぞれN本(たとえば6本)あるとする。上記(18)式によって、i番目のプリコーディングウェイトを用いた場合の偏波面ごとの信号の合計電力を求め、(H偏波面の総電力)/(V偏波面の総電力)と(V偏波面の総電力)/(H偏波面の総電力)のうちの最も大きい値が算出される。
算出されたプリコーディングウェイト(i=x)と、分子が示す偏波面(H偏波面またはV偏波面)が、選択すべきプリコーディングウェイトと、中継局210において受信される信号の偏波面となる。なお、プリコーディングウェイトについては、適用可能なもの全ての応答値を算出してもよいし、一定の角度間隔のビームに対応するプリコーディングウェイトのみの応答値を算出してもよい。なお、ここでは中継局210の算出部1006およびウェイト選択部1007の処理の一例について説明したが、中継局210の算出部1022にも同様の処理を適用することができる。
このように、伝搬特性推定値に対して所定の複数のプリコーディングウェイトを乗算し、乗算結果がV偏波面とH偏波面のいずれかに最も近くなるプリコーディングウェイトを、ユーザ端末220へ通知するウェイトとして算出する。これにより、プリコーディングウェイトの選択によって最適な偏波面を決定することができる。また、複数のプリコーディングウェイトから選択したプリコーディングウェイトをユーザ端末220へ通知すればよいため、通知するウェイトを決定するための処理を低減することができる。
以上説明したように、中継装置、通信システムおよび通信方法によれば、中継前後の回り込み干渉を低減して通信品質を向上させることができる。上述した実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)第一通信装置から第二通信装置への無線信号を中継する中継装置において、
自装置において受信する信号の偏波面が第一偏波面となるビームフォーミングのウェイトを前記第一通信装置へ通知する通知部と、
前記通知部によって通知されたウェイトでビームフォーミングされた信号を前記第一通信装置から受信する受信部と、
前記受信部によって受信された信号を前記第一偏波面とは異なる第二偏波面で前記第二通信装置へ送信する送信部と、
を備えることを特徴とする中継装置。
(付記2)前記第一偏波面の信号を送受信する第一アンテナと、
前記第二偏波面の信号を送受信する第二アンテナと、を備え、
前記受信部は、前記第一アンテナによって前記信号を受信し、
前記送信部は、前記第二アンテナによって前記信号を送信することを特徴とする付記1に記載の中継装置。
(付記3)前記第一通信装置は移動端末であることを特徴とする付記1または2に記載の中継装置。
(付記4)前記第一通信装置は複数の移動端末であり、
前記第二通信装置は基地局であり、
前記第二偏波面を選択し、選択した第二偏面とは異なる偏波面を前記第一偏波面として選択する選択部を備えることを特徴とする付記1または2に記載の中継装置。
(付記5)前記第一通信装置は基地局であり、
前記第二通信装置は移動端末であることを特徴とする付記1または2に記載の中継装置。
(付記6)前記第一通信装置との間の伝搬特性に基づいて前記ウェイトを算出する算出部を備え、
前記通知部は、前記算出部によって算出されたウェイトを通知することを特徴とする付記1〜5のいずれか一つに記載の中継装置。
(付記7)前記第一通信装置から送信される参照信号に基づいて前記第一通信装置との間の伝搬特性を推定する推定部を備え、
前記算出部は、前記推定部によって推定された伝搬特性に基づいて前記ウェイトを算出することを特徴とする付記6に記載の中継装置。
(付記8)前記算出部は、前記ウェイトを定期的に算出し、
前記通知部は、前記算出部によって算出されるウェイトが変化した場合に、変化後のウェイトを通知することを特徴とする付記6または7に記載の中継装置。
(付記9)前記第一通信装置との間の伝搬特性に基づいて前記第一偏波面を選択する選択部を備え、
前記通知部は、自装置において受信する信号の偏波面が前記選択部によって選択された第一偏波面となるウェイトを通知することを特徴とする付記1に記載の中継装置。
(付記10)前記選択部は、前記ウェイトを定期的に選択し、
前記通知部は、前記選択部によって選択される第一偏波面が変化した場合に、変化後の第一偏波面を通知することを特徴とする付記9に記載の中継装置。
(付記11)前記第二偏波面は、前記第一偏波面と直交する偏波面であることを特徴とする付記1〜10のいずれか一つに記載の中継装置。
(付記12)第一通信装置から第二通信装置への無線信号を中継装置によって中継する通信システムにおいて、
前記中継装置において受信する信号の偏波面が第一偏波面となるビームフォーミングのウェイトを前記中継装置から取得し、取得したウェイトでビームフォーミングした信号を送信する前記第一通信装置と、
前記第一通信装置によって送信された信号を受信し、受信した信号を前記第一偏波面とは異なる第二偏波面で送信する前記中継装置と、
前記中継装置によって送信された信号を受信する前記第二通信装置と、
を含むことを特徴とする通信システム。
(付記13)第一通信装置から第二通信装置への無線信号を中継する中継装置の通信方法において、
前記中継装置において受信する信号の偏波面が第一偏波面となるビームフォーミングのウェイトを前記第一通信装置へ通知する通知工程と、
前記通知工程によって通知されたウェイトでビームフォーミングされた信号を前記第一通信装置から受信する受信工程と、
前記受信工程によって受信された信号を前記第一偏波面とは異なる第二偏波面で前記第二通信装置へ送信する送信工程と、
を含むことを特徴とする通信方法。
(付記14)第一通信装置から第二通信装置への無線信号を中継装置によって中継する通信システムの通信方法において、
前記中継装置において受信する信号の偏波面が第一偏波面となるビームフォーミングのウェイトを算出する算出工程と、
前記算出工程によって算出されたウェイトでビームフォーミングされた信号を前記第一通信装置から送信する送信工程と、
前記送信工程によって送信された信号を前記中継装置により受信し、受信した信号を前記第一偏波面とは異なる第二偏波面で前記中継装置から送信する中継工程と、
前記中継工程によって送信された信号を前記第二通信装置により受信する受信工程と、
を含むことを特徴とする通信方法。