JP5345078B2 - 脂質二重膜、それを形成するために用いられる自己支持性フィルム及びそれを具備するマイクロ流路デバイス - Google Patents

脂質二重膜、それを形成するために用いられる自己支持性フィルム及びそれを具備するマイクロ流路デバイス Download PDF

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Description

本発明は、安定な脂質二重膜を形成するために用いることができる、透孔を有する自己支持性フィルムの製造方法に関する。
生物を構成する細胞や、細胞内に存在するミトコンドリア、ゴルジ体、小胞体等の各種オルガネラ、細胞核等は、外側が生体膜で覆われており、この生体膜は、基本的に脂質二重膜から構成されている。生理活性を有する様々なタンパク質、すなわち、レセプターや酵素等がこの脂質二重膜を貫通する形で脂質二重膜上に保持されている。これらの膜貫通タンパク質は、生体内で重要な役割を果たしている。特に、細胞膜上に存在する各種レセプターは、生体内に存在するリガンドと結合することにより、様々な生理学的反応を引き起こす引き金になることがわかっている。このため、レセプターの機能を亢進する各種リガンドや、レセプターの機能を阻害する阻害剤等が医薬品として用いられており、また、新たな医薬品として利用可能な天然又は人工のリガンドや阻害剤が研究されている。
これらの膜貫通タンパク質や、そのリガンド、阻害剤等を開発するためには、生体内と同じ状態、すなわち、膜貫通タンパク質が生体膜に保持された状態で各種測定を行うことが望まれる。従来、膜貫通タンパク質が生体膜に保持された状態を模するべく、透孔を塞ぐ形で脂質二重膜を形成し、この脂質二重膜に膜貫通タンパク質を保持させ、この状態で各種測定が行われている(非特許文献1)。
Wonderlin, F. et al., Biophys. J. 1990, 58, 289-297 Schlue, R. et al., Planar Lipid Bilayers, Academic Press, 1990, London White, R. et al., J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 11766-11775 Mayer, M. et al., J. Biophys. J. 2003, 85, 2684-2695 Heins, E. et al., Nano Lett., 3005, 5, 1824-1829 Song L. et al., Science 1996, 274, 1856-1866
しかしながら、従来から各種測定に用いられている脂質二重膜は、外部の圧力変化や機械的振動、電気的な刺激等により破壊されやすく、形成後、各種測定を行うための準備段階や測定中に脂質二重膜が破壊されて測定ができなくなることがしばしば起きる(非特許文献2)。従って、形成後に安定に保持できる脂質二重膜が求められている。
従って、本発明の目的は、安定性が高くて破壊されにくい脂質二重膜の形成に有用な自己支持性フィルムの製造方法を提供することである。
従来から脂質二重膜の形成に用いられている透孔は、その孔径が数十μm〜数百μmである(非特許文献3及び非特許文献4)。本願発明者らは、従来から用いられている、透孔の内壁にその周縁部が接し、該透孔を塞ぐ脂質二重膜において、透孔の孔径を十分小さくすることにより脂質二重膜の安定性が高まるのではないかと予測した。しかしながら、脂質二重膜を形成することが可能な透孔であって、孔径が1μm未満のものは全く知られておらず、このような小さな孔径を有する透孔を形成する方法も知られていない。
本願発明者らは、鋭意研究の結果、自己支持性フィルムに透孔を形成し、次いでこの自己支持性フィルムに、物質を蒸着すると、透孔の内壁にも該物質が被着して透孔の孔径が縮小されることを見出した。そして、この方法により形成した、孔径が1μm未満の透孔に脂質二重膜を形成すると、公知の脂質二重膜よりも安定に保持されることを実験的に確認し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、孔径が1μm以上の透孔を有する自己支持性フィルムを準備する工程と、該自己支持性フィルム上に被着可能な化合物を、蒸着により少なくとも前記透孔の内壁上に被着させ、それによって前記透孔の孔径を1μm未満に縮小する、孔径が1μm未満の透孔を有する自己支持性フィルムの製造方法を提供する。
本発明により、形成後に破壊されにくく安定な脂質二重膜の形成に有用な、透孔を有する自己支持性フィルムの製造方法が提供された。本発明の脂質二重膜は安定であり、また、容易に再現性良く形成可能である。従って、本発明の脂質二重膜を利用して、膜貫通タンパク質やそのリガンド等の性質を調べる実験を容易に行うことができるようになった。従って、本発明は、創薬のためのスクリーニング等に好適に用いることができる。
本発明の好ましい一具体例になるマイクロ流路デバイスの模式斜視図である。 図1Aに示すマイクロ流路デバイス中の1枚の本発明の自己支持性フィルムの透孔部分付近を拡大した模式拡大斜視図である。 図2は、該マイクロ流路デバイス中の1枚の本発明の自己支持性フィルムの透孔部分に、タンパク質を保持した脂質二重膜が形成されている様子を示す模式拡大断面図である。 本発明の実施例で行った、本発明の自己支持性フィルムのフォトリソグラフィーによる作製工程を説明するための図である。 本発明の実施例で作製した自己支持性フィルムの、縮小後の透孔及びその近傍の走査電子顕微鏡写真である。 実施例で作製したマイクロ流路デバイス(脂質二重膜形成前)の上部マイクロ流路と下部マイクロ流路間の電気抵抗を測定した結果を示す図である 実施例で作製した、マイクロ流路デバイス内に形成した脂質二重膜にα−ヘモリシンを保持した際のイオンチャネルコンダクタンスの測定結果を示す図である。
10 マイクロ流路デバイス
12 上部マイクロ流路チップ
14 下部マイクロ流路チップ
16 上部マイクロ流路
18 下部マイクロ流路
20 セパレーター
22 自己支持性フィルム
24 脂質二重膜
26 タンパク質分子
上記のとおり、本発明の脂質二重膜を形成するために好適に用いることができる自己支持性フィルムは、孔径が1μm未満の透孔を有するものである。ここで、「自己支持性」とは、透孔を形成した状態のフィルムを単独で、フィルムの一部分を把持してフィルムを持ち上げることができることを意味する。このように小さな透孔を有する自己支持性フィルムはこれまでに知られていない。また、「透孔」とは、フィルムの片側の表面の開口部から、他方側の表面の開口部に直線的に開いている貫通孔を意味し、ろ紙やメンブレンフィルターのような多孔性材料の孔は包含されない。透孔の表面形状(すなわち、開口部の平面形状)は、円形が最も好ましいが、円に近い(好ましくは長径と短径の比率が0.8〜1.2程度の範囲に入る)楕円でも問題はない。孔径は、直径(楕円形の場合は長径)を意味する。孔径は、1μm未満であり、好ましくは1nm〜900nm 、さらに好ましくは、100nm〜800nmである。孔径は電子顕微鏡観察により容易に測定可能である。自己支持性フィルムの膜厚(後述のように、化合物をフィルム全体に蒸着する場合には、蒸着後の膜厚)は、特に限定されないが、通常0.5μm〜20μm程度、好ましくは2μm〜10μm程度である。自己支持性フィルムは、上記透孔を複数個有していてもよい。また、本発明の自己支持性フィルムの表面上には、金等の金属を蒸着して電極として利用したり、半導体を塗布することで透明電極として使用可能である。
自己支持性フィルムの材質としては、孔径数μm程度の透孔を開けることができ、蒸着により化合物(後述)を被着することができるものであれば、何ら限定されるものではない。たとえばガラスや金属の小孔に蒸着を行うことにより、ナノメートルサイズの微小孔の作製が可能である。蒸着する化合物と同じ材料でフィルムを構成すると、フィルムを一体的に形成することができ、フィルムの耐久性や取扱性が高まるので好ましい。もっとも、蒸着する化合物以外の材料でフィルムを形成することも可能であり、この場合の材料の例としては、例えば、スピンコート可能な高分子材料(ポリオレフィン系、ポリエチレン系)等を挙げることができる。
上記自己支持性フィルムは、以下の方法により製造することができる。
まず、孔径が数μm、好ましくは2μm〜8μm程度の透孔を有する自己支持性フィルムを準備する。この程度の孔径の透孔であれば、フォトリソグラフィー等の公知の方法で形成可能であり、この方法については下記実施例に具体的に記載する。なお、次の工程で、フィルム全体に蒸着を施す場合には、蒸着前のフィルムの膜厚は、通常、1μm〜20μm程度、好ましくは2μm〜10μm程度である。
次に、自己支持性フィルム上に被着可能な化合物を、蒸着により少なくとも前記透孔の内壁上に被着させ、それによって前記透孔の孔径を1μm未満に縮小する。蒸着する化合物は、蒸着により、先に準備した透孔を有する自己支持性フィルム上に被着することができる化合物であればいずれの化合物であってもよく、好ましい例として、パラキシリレン系ポリマーを挙げることができる。これらのうち、パラキシレン系ポリマーは、等方蒸着が可能であり、透孔の内壁にもフィルムの両面にも均一にポリマーが被着(堆積)していく性質を有しており、また、耐熱性及び耐薬品性に優れているので好ましい。さらに、上記のとおり、蒸着に供される自己支持性フィルムも同種のパラキシレン系ポリマーで形成しておくと、蒸着後の自己支持性フィルムは一体的であり、耐久性及び取扱性が優れている。
パラキシレン系ポリマーは、下記一般式で表わされる繰返し単位から成るポリマーであり、パリレン(Parylene)の商品名で市販されているので、市販品を好ましく用いることができる。
(式中、Xは水素原子又はフッ素原子、R1及びR2は互いに独立して水素原子又は塩素原子を表す)。
パラキシレン系ポリマーは、そのモノマーを真空チャンバー内で支持体に蒸着すると、支持体上で重合が起きてポリマーとなる。ポリマーの分子量は、蒸着量や蒸着時間に依存して変化し、最大50万程度である。モノマーは、蒸着により、種々の材質から成る支持体上に被着(堆積)することができ、支持体がパラキシリレン系ポリマーから形成されている場合のみならず、上記した種々の材質の支持体上に被着可能である。
蒸着は、蒸着される化合物を少なくとも前記透孔の内壁上に被着させればよいが、蒸着前の自己支持性フィルム全体に蒸着を施すことが簡便で好ましい。自己支持性フィルム全体に蒸着を施すと、透孔の内壁上に化合物が被着されるので、透孔の孔径が縮小され、これと同時に自己支持性フィルムの両側の表面にも被着されるので、フィルムの膜厚も同時に大きくなる。
パラキシレンモノマーを真空チャンバー内で自己支持性フィルム上に蒸着する場合、パリレン(商品名)の使用説明書に記載された方法に従って蒸着を行うことができ、蒸着温度は、通常室温、蒸着時間は通常30分間〜180分間、好ましくは30分間〜60分間である。
本発明の脂質二重膜は、孔径が1μm未満の透孔の内壁にその周縁部が接し、該透孔を塞ぐ脂質二重膜である。該透孔は、必ずしも自己支持性フィルムに形成された透孔でなくてもよく、他の支持体上に支持されている層であってもよい。もっとも、上記した本発明の自己支持性フィルムに設けられた透孔であれば、該フィルムを任意の場所に単独で移動させることができ、後述するマイクロ流路デバイスへの組込み等を容易に行うことができるので好ましい。
透孔の内壁にその周縁部が接し、該透孔を塞ぐ脂質二重膜は、脂質二重膜を構成する脂質溶液を、単に透孔に施すだけで形成することができる。脂質二重膜を構成する脂質としては、脂質二重膜、すなわち、親水性領域と疎水性領域を1分子中に有する脂質分子が、疎水性領域を内側、親水性領域を外側に向けて2層に並んだ膜を形成できる脂質であれば特に限定されないが、生体膜における反応を模するためには、生体膜と同じか類似したものが好ましく、この分野において従来から広く用いられているリン脂質、例えば、ジフィタノイルフォスファチジルコリン(diphytanoyl phosphatidylcholine, DPhPC)、ジパルミトイルフォスファチジルコリン(dipalmytoyl phosphatidylcholine)、パルミトイルオレオイルフォスファチジルコリン(1-Palmitoyl 2-Oleoyl phosphatidylcholine, POPC)、ジオレオイルフォスファチジルコリン(Dioleoyl phosphatidylcholine, DOPC)等を好ましい例として挙げることができる。これらの多くは市販されているので、市販品を好ましく用いることができる。
脂質二重膜の形成に用いられる溶液中のリン脂質の濃度は、脂質二重膜が形成可能な濃度であれば特に限定されないが、通常、5g/L〜20g/L程度、好ましくは7g/L〜15g/L程度である。また、リン脂質溶液の溶媒は、特に限定されないが、有機溶媒が好ましく、n-デカンのような脂肪族炭化水素溶媒が好ましい。また、リン脂質は、この溶液中でリポソームを形成してもよく、この場合には、用いられる液はリポソーム懸濁液になる。
本発明の脂質二重膜は、該脂質二重膜に保持された状態におけるタンパク質の性質や機能を調べたり、該タンパク質に結合して、その生理活性を変化させるリガンドをスクリーニングしたりその性質を調べたりする各種測定に好適に用いられるものであるので、脂質二重膜は、タンパク質を含んでいることが好ましく、特に生体内で生体膜に保持された状態で機能している膜貫通タンパク質が好ましい。脂質二重膜に保持するタンパク質としては、各種レセプターや酵素を挙げることができ、例としては、アルファーヘモリシン、グラミシジン、アラメチシンなどのペプチドタンパク質類、ABCトランスポータタンパク質等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
タンパク質を保持する脂質二重膜は、上記したリン脂質溶液にタンパク質を溶解しておくことにより形成することもできるし、先に上記のとおり脂質二重膜を形成し、その後、タンパク質の溶液を該脂質二重膜に施すことによっても形成することができる。リン脂質溶液がリポソームを含むリポソーム懸濁液である場合には、タンパク質を保持するリポソームの懸濁液を用いることにより形成することができる。これらの溶液中のタンパク質の濃度は、特に限定されるものではなく、適宜選択することができるが、通常、1nM〜1mM程度、好ましくは0.1μM〜100μM程度である。
本発明の脂質二重膜は、上記各種測定に供するために、一方の表面が第1のマイクロ流路に接し、他方の表面が第2のマイクロ流路に接していることが好ましい。本発明は、上記した本発明の脂質二重膜を組み込むことができるマイクロ流路デバイス及び該脂質二重膜を組み込んだマイクロ流路デバイスをも提供する。
本発明の脂質二重膜を形成するためのマイクロ流路デバイスは、第1のマイクロ流路を具備する第1のマイクロ流路チップと、前記第1のマイクロ流路と少なくとも一部が接する第2のマイクロ流路を具備する第2のマイクロ流路チップとを具備し、前記第1のマイクロ流路と前記第2のマイクロ流路の境界に、脂質二重膜を形成するための孔径が1μm未満の透孔が形成されている。好ましい態様では、前記透孔が、自己支持性フィルムに設けられた透孔であり、該自己支持性フィルムにより前記第1のマイクロ流路と前記第2のマイクロ流路の接続部分が隔てられている。そして、このマイクロ流路デバイスの前記透孔に、上記した方法により脂質二重膜を形成する。そうすると、上記したように、脂質二重膜の一方の表面が第1のマイクロ流路に接し、他方の表面が第2のマイクロ流路に接するようにすることができる。脂質二重膜の両表面が、互いに分離された異なるマイクロ流路に接するようにした場合には、各マイクロ流路に任意の液を流すことにより、脂質二重膜の両側をそれぞれ任意の液と接触させることができる。生体内の細胞では、細胞の内側と外側で環境が異なっている場合が多く、脂質二重膜の両側をそれぞれ任意の液と接触させることを可能にすることにより、より的確に生体内の環境を模することが可能となり、タンパク質を生体内により近い環境においてその挙動を調べることが可能となり好ましい。
上記本発明の脂質二重膜を組み込んだマイクロ流路デバイスの好ましい一具体例を、図1に基づき説明する。図1Aは、本発明の好ましい一具体例になるマイクロ流路デバイスの模式斜視図、図1Bは、該マイクロ流路デバイス中の1枚の本発明の自己支持性フィルムの透孔部分付近を拡大した模式拡大斜視図である。また、図2は、該マイクロ流路デバイス中の1枚の本発明の自己支持性フィルムの透孔部分に、タンパク質を保持した脂質二重膜が形成されている様子を示す模式拡大断面図である。
図1Aに示すように、本具体例になるマイクロ流路デバイス10は、第1のマイクロ流路チップである上部マイクロ流路チップ12と、第2のマイクロ流路チップである下部マイクロ流路チップ14を具備する。上部マイクロ流路チップ12には、第1のマイクロ流路である3本の上部マイクロ流路16が形成されている。下部マイクロ流路チップ14には、第2のマイクロ流路である下部マイクロ流路18が形成されている。各マイクロ流路は、例えば、幅及び深さが共に400μm程度の細い溝である。下部マイクロ流路チップ上には、1枚のプラスチックシートから成るセパレーター20(図2参照)が載置され、これにより、上部マイクロ流路16と下部マイクロ流路18が隔てられる。上部マイクロ流路チップ12と下部マイクロ流路チップ14を重ね合わせると、上部マイクロ流路16と下部マイクロ流路18とがセパレーター20を介して接するようになっている。すなわち、これらを重ね合わせると、セパレーター20が上部マイクロ流路16の底面となり、同時に下部マイクロ流路18の上面となる。セパレーター20には3つの開口部が設けられ、各開口部にはそれぞれ上記した本発明の自己支持性フィルム22が載置される。ここで、自己支持性フィルム22の透孔は、セパレーター20の開口部に位置し、従って、自己支持性フィルム22の透孔は、上部マイクロ流路16に開口し、同時にセパレーター20の開口部を介して下部マイクロ流路18にも開口している。すなわち、セパレーター20の開口部は、上部マイクロ流路16と下部マイクロ流路18とが接続される接続部分を構成しており、ここでは両流路は自己支持性フィルム22により隔てられており、上記のとおり、自己支持性フィルム22の透孔22は両流路に開口している。所望により、上部マイクロ流路16と下部マイクロ流路18にはそれぞれAg/AgCl等から成る電極を配置し、これらの間に直流電圧を負荷して各流路に電位を付与することもできる(図2参照)し、膜を介して流れる膜電流を測定することもできる。
上部マイクロ流路チップ12と下部マイクロ流路チップ14を重ね合わせた状態で、上部マイクロ流路16に上記したリン脂質溶液を流すと、上記のとおり、自己支持性フィルム22の透孔に脂質二重膜24が形成される(図2参照)。次に、上部マイクロ流路16に上記したタンパク質溶液を流すと、タンパク質分子26が脂質二重膜24中に入りこみ、脂質二重膜24に保持される(図2参照)。
以上により、タンパク質分子26を保持した脂質二重膜24の両面が、それぞれ上部マイクロ流路16及び下部マイクロ流路18と接する状態となる。この状態で、上部マイクロ流路16及び下部マイクロ流路18にそれぞれ、実験の目的に応じた所望の液を流すことにより、脂質二重膜24の両側をそれぞれ実験に適した所望の環境に置くことができる。
このようなマイクロ流路デバイスを用いて、例えば創薬のためのスクリーニングを行う場合には、例えば次のように行うことができる。すなわち、各チャンネルにターゲットとなる膜タンパク質を再構成し、上下の流路にそれぞれ所望の薬剤を任意の量導入することにより、創薬スクリーニングを行うことができる。
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
実施例1
1. 透孔を有する自己支持性フィルムの作製
図3に模式的に示すフォトリソグラフィー法により、孔径800nmの透孔を有する、パラキシリレン系ポリマーから成る自己支持性フィルムを作製した。
まず、シリコンウェハを真空チャンバー内に置き、パラキシリレン系モノマー(商品名パリレンC、上記一般式において、XがH2、R1がCl、R2がH)を蒸着してシリコンウェハ上に厚さ5μmのパラキシリレン系ポリマーから成るフィルムを形成した。蒸着温度は24℃、蒸着時間は50分であった。次に、形成したパラキシリレン系ポリマーフィルム上にアルミニウムを真空蒸着し(蒸着温度:室温、蒸着時間:1分)、厚さ5μmのアルミニウム層を形成した(図3の1)。
アルミニウム層上にフォトレジストをスピンコートし、CADにより設計したマスクを用いUV光を露光することにフォトレジストを感光、その後現像し、直径5μmの孔をあけた(図3の2)。UV露光の条件は、UVの照射エネルギー量が24mW/cm2 (@405nm)、露光時間は、6.5秒であった。その後混酸処理することによりアルミニウム層にも直径5μmの孔をあけた。
次に、パリレン層を酸素プラズマによりエッチングした(図3の3)。具体的な条件は次の通りであった。酸素量10mL/min、25W。
次に、アルミニウム層を混酸処理(60℃、1分)により溶解除去した(図3の4)。
自己支持性フィルムの一端をピンセットで把持してシリコンウェハから剥離し、孔径5μmの透孔を有する自己支持性フィルムを得た(図3の5)。このように、フィルムは一端を把持して剥離して移動させることができたので、自己支持性であった。得られた自己支持性フィルムの寸法は、3mm x 3mmのものを用いた。
剥離した自己支持性フィルムを真空チャンバーに入れ、上記と同じパラキシリレン系モノマーを蒸着した(室温、40分)。これにより、自己支持性フィルムの透孔内壁を含む全面にパラキシリレン系ポリマーがさらに被着され、透孔の孔径が縮小された(図3の6)。
縮小後の透孔及びその近傍の走査電子顕微鏡写真を図4に示す。図4に示すように、縮小後の孔径は約800nmであった。なお、蒸着時間を長くすれば、孔径をさらに小さくすることができる。
3. マイクロ流路デバイスの作製
図1及び図2に示す、上記したマイクロ流路デバイスを作成した。上部マイクロ流路チップ12、下部マイクロ流路チップ14及びセパレーター20はいずれもポリメチルメタクリレート(PMMA)で形成した。上部マイクロ流路チップ12及び下部マイクロ流路チップ14の寸法は、40mm x 25 mm x 3 mmであった。また、全てのマイクロ流路の幅及び深さは400μmであった。セパレーター20の3つの開口部の寸法は、直径1mmであり、この開口部に各自己支持性フィルム22の透孔が重なるように自己支持性フィルム22を載置した(図2参照)。さらに、上部マイクロ流路16及び下部マイクロ流路18中にAg/AgCl電極をそれぞれ配置し、これらの間に電圧をかけるパッチクランプアンプと接続できるようにした。上部マイクロ流路チップ12、下部マイクロ流路チップ14、セパレーター20を重ね合わせた状態で125℃で30分間熱処理し、これらを接着した。
作製したマイクロ流路デバイスの上部マイクロ流路及び下部マイクロ流路に1.0M KCl溶液を流しながら、両流路に電圧をかけ、両流路間の電気抵抗(すなわち、透孔の電気抵抗)を測定した。その結果、図5に示すような直線関係が得られ、電気抵抗は0.32MΩであった。この値は、
Rp = (4ρL)/(πd2)
(式中、Rpは透孔の電気抵抗、ρは電解質の比抵抗、Lは透孔の長さ、dは透孔の孔径)
で表わされる理論値(非特許文献5)と概ね一致していた。
4. 脂質二重膜の作製
作製したマイクロ流路デバイスの上部マイクロ流路チップ12と下部マイクロ流路チップ14を重ね合わせた状態で、上部マイクロ流路16に、ポンプ(マイクロシリンジとチューブから成る手動式のもの、図示せず)により脂質溶液を流した。脂質溶液は、10mgのDPhPC(米国Avanti Polar Lipids社製)を1mLのn-デカンに溶解したものである。これにより、自己支持性フィルムの透孔に脂質二重膜が形成された。
形成された脂質二重膜は、両マイクロ流路間に10mVの電圧をかけた状態で、24℃で24時間以上安定に維持された。従来から用いられている、孔径約50μmの透孔に形成された脂質二重膜は、同条件で5時間程度しか維持されない。よって、本発明により、脂質二重膜の安定性が大幅に向上したことが確認された。
次に上部マイクロ流路16に、α−ヘモリシン(α-HL)溶液を流した。α-HL(モノマー)は、Staphylococcus aureus由来のもの(米国Sigma社製)を用い、1.0M KCl、10mM PBS、pH7.4中に0.3μMの濃度で溶解してα-HL溶液とした。α-HLは、ヘプタマーを形成し、脂質二重膜中に保持されてイオンチャネルを形成することが知られており、そのチャネルコンダクタンスは1.0M KCl中で約1nSである(非特許文献6)。この間、上部マイクロ流路と下部マイクロ流路にそれぞれ配置した電極間の電流、すなわち、脂質二重膜を介して流れる電流(膜電流)を測定した。膜電流は、上記両電極に接続されたパッチクランプ増幅器(patch-clamp amplifier、CEZ-2400、日本光電社製)を用いて測定した。上部マイクロ流路16内に配置したAg/AgCl電極は、記録電極であり、下部マイクロ流路18内に配置したAg/AgCl電極は、接地電極であった。電流は、デジタルデータ獲得システム(Digidata 1322A及びpCLAMP ver.9, 米国Molecular Devices社製)を用いて記録した。
結果を図6に示す。図6に示されるように、イオンチャネルコンダクタンスは、約1nSであり、非特許文献6記載の値と一致しており、α-HLが再構成された状態で脂質二重膜に適切に組み込まれてイオンチャネルを形成したこと、及び脂質二重膜に破れがなく、透孔が脂質二重膜で隙間なく覆われていたことが確認された。α-HLの組込み実験は複数回行ったが、いずれの場合も同様にイオンチャネルの形成が確認された。このことから、本発明の脂質二重膜にタンパク質を再現性良く保持できることが確認された。

Claims (4)

  1. 孔径が1μm以上の透孔を有する自己支持性フィルムを準備する工程と、該自己支持性フィルム上に被着可能な化合物を、蒸着により少なくとも前記透孔の内壁上に被着させ、それによって前記透孔の孔径を1μm未満に縮小する工程とを含む、孔径が1μm未満の透孔を有する自己支持性フィルムの製造方法。
  2. 縮小後の前記孔径が1nm〜900nmである請求項記載の方法。
  3. 前記自己支持性フィルムと、蒸着される化合物とが同種の化合物である請求項又は記載の方法。
  4. 蒸着される前記化合物がパラキシリレン系モノマーである請求項記載の方法。
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