JP5344436B2 - ステータ及び一軸偏心ねじポンプ - Google Patents
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Description
本発明は、一軸偏心ねじポンプに用いられるステータ及び一軸偏心ねじポンプに関し、特にオゾンクラックやブルームによるステータの外観不良を抑制可能なものに関する。
従来より、下記特許文献1に示すような一軸偏心ねじポンプでは、ジエン系ゴムを主成分とするゴム製のステータが多用されている。ジエン系ゴムを主成分とするゴムは、空気中に含まれている酸素やオゾンとの反応性が高く、倉庫に長期にわたって保管するなどしている間に表面にオゾンクラックと呼ばれる微小クラックが発生することがある。そこで、従来技術では、ステータを構成するゴム材料中に耐オゾン劣化防止剤を配合することによりオゾンクラックの発生を抑制するという方策が採られている。
また、従来技術では、遮光性を有する袋にステータを収容することにより酸素が光によって励起するのを防止する方策や、酸素やオゾンの透過性の低い袋に酸素吸収剤と共にステータを収容する方策などが採用されている。
上述したように、耐オゾン劣化防止剤をステータを構成するゴム材料中に配合する場合、オゾンクラックに対して充分な効果を示す程に加えれば、倉庫などに保管している間にゴムの表面に耐オゾン劣化防止剤が移行して表面上で固まることによりブルームと称される現象が起こり、外観を著しく阻害するおそれがあった。このようなステータをポンプに組み込んで使用した場合、送り出す流体中に耐オゾン劣化防止剤が混入してしまう恐れがあった。また通常、耐オゾン劣化防止剤は水に溶けず、有機溶剤を使うなどしなければ十分洗浄することができないという特性を有する。そのため、一軸偏心ネジポンプに使用されるステータのように筒状で内周面が雌ネジ形状に形成されたものにおいては、有機溶剤を使って洗浄するなど、相当の手間をかけなければ外観を回復することができないという問題があった。一方、耐オゾン劣化防止剤の配合量を少なくすれば、オゾン劣化を防止する効果が十分ではないという問題があった。
また、上述したように遮光性を有する袋にステータを収容する方策や、酸素やオゾンの透過性の低い袋に酸素吸収剤と共にステータを収容する方策を採用した場合は、ステータを袋に収容するための手間を要するという問題がある。さらに、ステータを前述したような袋に収容した場合は、取り扱いにくく、保管用に大きなスペースを必要とするという問題もある。
そこで、本発明は袋への収納などを行わなくてもオゾンクラックやブルームによる外観不良を抑制可能なステータ、及び当該ステータを備えた一軸偏心ねじポンプの提供を目的とした。
上述した課題を解決すべく提供される本発明のステータは、一軸偏心ねじポンプに用いられるものであって、筒状で内周面が雌ねじ形状に形成されたゴム製のステータ本体を有し、部分鹸化したポリビニルアルコールと、界面活性剤とを主成分として含むコーティング剤により前記ステータ本体がコーティングが施されていることを特徴としている。本発明のステータは、前記コーティング剤に含まれるポリビニルアルコールの鹸化度が、70%以上90%以下とされている。また、本発明のステータは、コーティング剤に含まれている界面活性剤の割合が、ポリビニルアルコールに対して重量比で0.2%以上2%以下とされている。
本発明のステータにおいて、ステータ本体を構成するゴムは、ジエン系ゴムを主成分とするものであってもよい。また、上述したコーティング剤におけるポリビニルアルコール濃度は、3重量%以上25重量%以下であることが望ましい。さらに、上述したコーティング剤に含まれている界面活性剤は、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルキルアミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルエーテルから選ばれる一又は複数の成分を主成分とするものであることが望ましい。本発明のステータは、ステータ本体をコーティング剤によりコーティングすることにより形成されたコーティング膜を有し、前記コーティング膜の膜厚が、10μm以上200μm以下であることが望ましい。
本発明の一軸偏心ねじポンプは、上述した本発明のステータと、前記ステータの内周面によって囲まれた貫通孔と、雄ねじ形状に形成され、前記貫通孔内において回転可能なロータと、前記貫通孔内に前記ロータを挿通することにより前記ロータの外周面と前記ステータの内周面との間に形成された流体搬送路とを備えていることを特徴としている。
本発明のステータは、ゴム製のステータ本体に対し、部分鹸化したポリビニルアルコールと、界面活性剤とを主成分として含むコーティング剤によるコーティングを施したものであり、酸素やオゾンが直接ステータ本体と接触しない。したがって、本発明のステータは、ステータ本体にオゾンクラックが発生するのを回避することが可能である。また、前述したようなコーティングをステータ本体に対して施すことによりオゾンクラックが発生するのを防止できるため、ステータ本体の製造時に耐オゾン劣化防止剤等の配合剤の配合量を最小限に抑制することができる。したがって、本発明のステータは、倉庫等に長期保存しておいたとしてもステータ本体をなすゴムに含まれている配合剤が表面に現れにくく、いわゆるブルームによる外観不良が起こりにくい。
コーティング剤に含まれるポリビニルアルコールの鹸化度を70%以上90%以下とすることにより、酸素やオゾンがコーティング剤により形成された層(以下、コーティング膜とも称す)を透過するのを確実に防止できる。本発明のステータは、前述した範囲内の鹸化度を有するポリビニルアルコールによりステータ本体をコーティングしたものであるため、酸素やオゾンがコーティング膜を透過するのを確実に防止し、ステータ本体の性能や外観が低下するのを抑制することが可能である。
また、コーティング剤に含まれるポリビニルアルコールの鹸化度を70%以上90%以下とすれば、常温の水によって洗浄することによりコーティング膜をステータ本体からスムーズに除去することが可能となる。したがって、本発明のステータは、温水などを準備しなくても雌ねじ形状に形成された内周面のように洗浄が困難な部位についてもコーティング剤を容易に除去できる。よって、本発明のステータは、例えば食品の輸送用に用いるもののように、使用時に確実にコーティング剤が除去されていなければ問題が発生しうる類の一軸偏心ねじポンプにも好適に使用することができる。
ここで、本発明者らが検討したところ、コーティング剤に含まれているポリビニルアルコールの鹸化度が70%以上よりも低いと、コーティング膜による酸素の遮断効果が小さく、充分な耐オゾンクラック防止能を得難いことが判明した。かかる知見に基づき、本発明では、鹸化度が70%以上のポリビニルアルコールをコーティング剤に配合している。そのため、本発明によれば、コーティング膜により酸素の透過を防止し、ステータにおけるオゾンクラックの発生を確実に抑制することが可能となる。
コーティング剤に含まれている界面活性剤の割合をポリビニルアルコールに対して重量比で0.2%以上2%以下とすることにより、コーティング剤により形成されるコーティング膜の膜厚を部位によらず略均一とすることが可能である。本発明のステータは、前述した割合で界面活性剤が配合されたコーティング剤によりコーティングされたものであるため、ステータ本体において複雑な形状に形成された内周面などの部位についても他の部位と同様にムラ無く略均一な膜厚のコーティング膜によって酸素やオゾンから保護されている。したがって、本発明のステータは、オゾンクラックの発生やブルームによる外観不良などの問題がいかなる部位においても発生しにくい。
また、本発明のステータは、上述したコーティング剤におけるポリビニルアルコール濃度を3重量%以上とすることにより、コーティング剤をステータ本体に対して一度塗布するだけでオゾンクラックやブルームに対して高い抑制効果が得られる。したがって、ポリビニルアルコールの濃度を3重量%以上とすれば、コーティング剤を重ね塗りしなくてもよく、ステータ本体のコーティングに要する手間を最小限に抑制できる。また、ポリビニルアルコールの濃度を25重量%以下とすることにより、コーティング剤によってステータ本体の表面に形成されるコーティング膜の膜厚を略均一化することができる。したがって、ポリビニルアルコールの濃度を25重量%以下とすれば、ステータ本体の部位によらずオゾンクラックやブルームの抑制効果が同等に得られる。
本発明のステータは、コーティング剤によりステータ本体にコーティングを施したものであり、酸素やオゾンが直接ステータ本体と接触しない。そのため、ステータ本体を構成するゴムがジエン系ゴムを主成分とするものである場合であっても、オゾンクラックが発生しにくい。また、オゾンクラックが発生しにくいため、ステータ本体を構成する素材として耐オゾン劣化防止剤等の配合剤を過度に配合する必要がなく、ブルームによる外観不良を防止することが可能である。
本発明のステータは、コーティング剤に含まれる界面活性剤としてアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルキルアミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルエーテルから選ばれる一又は複数の成分を主成分とするものを採用することにより、ステータ本体をコーティング剤によってより一層略均一にコーティングすることが可能となる。
ここで、コーティングを除去することを考慮すると、コーティング剤によりステータ本体の表面に形成されるコーティング膜の膜厚は可能な限り薄いことが望ましい。その反面、コーティング膜の膜厚が過度に薄いと、オゾンクラックを防止する効果、具体的には空気中の酸素の進入を防ぐ効果や、紫外線を遮断する効果が充分得られない。また、コーティング膜の膜厚が過度に厚いと、膜の柔軟性が損なわれてしまい、膜の破損等が起こりやすくなる。そのため、コーティング膜の膜厚を厚くしすぎると、保管場所の変更や出荷などの際のハンドリング時に他の物質と接触するなどした際にコーティング膜が破損したり、剥がれるなどする懸念がある。したがって、コーティング膜の膜厚は、ヒートショックなどの影響を受けてもコーティング膜が破損しない程度において最小限に抑制することが望ましい。
かかる知見に基づき、本発明のステータでは、コーティング膜の膜厚が10μm以上200μm以下とされている。これにより、常温の水などにより洗浄することによりコーティング膜を容易に除去できると共に、ヒートショックなどの影響を受けてもコーティング膜の破損やこれに伴うオゾンクラックの発生やブルームによる外観不良などの問題が発生しにくいステータを提供することができる。
また、本発明の一軸偏心ねじポンプは、上述した本発明のステータを備えているため、長期保管時にステータにオゾンクラックやブルームによる外観不良が起こりにくい。
本発明の一実施形態に係るステータ10及び一軸偏心ねじポンプPについて、図面を参照しつつ説明する。図1に示すように、ステータ10は、ロータ30や動力伝達機構50などと共に一軸偏心ねじポンプPを構成するものである。一軸偏心ねじポンプPは、いわゆる回転容積型のポンプであり、ケーシング20の内部にステータ10や、ロータ30、動力伝達機構50などが収容された構成とされている。
図2に示すように、ステータ10は、ステータ本体12の表面をコーティング剤Cによってコーティングしたものである。ステータ本体12は、一軸偏心ねじポンプPに組み込まれるゴム製の部材である。ステータ本体12は、一軸偏心ねじポンプPの組み立て時に固定用に用いられるフランジ部10aなどの部分を除き、略全体が円筒形の外観形状を有する。ステータ本体12を構成するゴムの種類は、一軸偏心ねじポンプPにおいて移送する被搬送物の種類や性状などにあわせて適宜選択可能である。本実施形態において採用されているステータ本体12は、ジエン系のゴムを主成分とする素材により形成されている。
具体的には、ステータ本体12は、天然ゴム(NR)や、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)などのゴムを主成分として構成されている。そのため、ステータ本体12は、ウレタンゴム(U)やシリコーンゴム(Q)などの非ジエン系ゴムを用いた場合に比べてオゾンにさらされることによりオゾンクラックが生じやすい傾向にある。また、ステータ本体12には、前述したゴムに加え、従来公知の耐オゾン劣化防止剤や、加硫剤、架橋剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、スコーチ防止剤、老化防止剤、酸化防止剤、可塑剤、ゴム軟化剤、ゴム補強剤、充填剤、強化剤等を適宜配合することが可能である。
ステータ本体12の内周面18は、360度を1ピッチとする2条の雌ねじ形状とされている。さらに具体的には、ステータ本体12の内部には、ステータ本体12の長手方向に沿って伸び、前述したピッチでねじれた貫通孔16が設けられている。また、図2(b)〜(d)に示すように、貫通孔16は、ステータ本体12の長手方向のいずれの位置において断面視しても、その断面形状(開口形状)がほぼ長円形となるように形成されている。
ステータ10は、一軸偏心ねじポンプPに組み込み使用する段階において、ステータ本体12の外表面13や内周面18は、図1に示すように表面が膜などによって覆われておらず、外気に触れうる状態とされる。一方、ステータ10は、一軸偏心ねじポンプPに組み込むよりも前の段階、すなわち一軸偏心ねじポンプPの部品として倉庫に保管などされている段階においては、図2に示すように、外表面13や内周面18のように一軸偏心ねじポンプPに組み込んだ状態において外気に触れうる状態になる面(以下、「露出面」17とも称す)がコーティング膜14によりコーティングされ、酸素やオゾンから保護されている。
コーティング膜14は、ステータ10の露出面17をコーティング剤Cによってコーティングすることにより形成される、水溶性の膜である。コーティング膜14は、いかなる膜厚とされてもよいが、10μm以上200μm以下の範囲内であることが望ましい。また、コーティング剤Cによるステータ本体12のコーティングは、いかなる手法によって行われてもよいが、ステータ本体12全体に亘って部位によらず略均一な膜厚となるような手法により行われることが望ましい。具体的には、ステータ本体12のコーティングは、コーティング剤Cをハケなどによって塗布することにより形成してもよく、空気圧を利用して噴霧するなどして形成してもよい。また、コーティング剤Cを準備してある容器内にステータ本体12を浸漬させた後、取り出して乾燥することによりステータ本体12にコーティングを施してもよい。
コーティング剤Cは、部分鹸化したポリビニルアルコールと、界面活性剤とを主成分として含むものである。コーティング剤Cを構成するポリビニルアルコールの鹸化度は、70%以上90%以下であることが好ましく、75%以上85%以下であることがさらに好ましい。また、コーティング剤Cにおけるポリビニルアルコール濃度は、3重量%以上25重量%以下であることが望ましく、5重量%以上15重量%以下であることがより一層望ましい。
コーティング剤Cに含まれている界面活性剤は、ポリビニルアルコールに対して重量比で0.2%以上2%以下の範囲内であることが好ましく、0.5%以上1.5%以下の範囲内であることがさらに好ましい。また、コーティング剤Cに含まれている界面活性剤はいかなるものであってもよいが、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルキルアミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルエーテルから選ばれる一又は複数の成分を主成分とするものであることが望ましい。また、ステータ10が食品を移送するための一軸偏心ねじポンプPに使用されるものである場合は、界面活性剤は、食品の洗浄に使用可能であり、人体に悪影響を及ぼさないものであることが望ましい。
また、コーティング剤Cは、主成分たるポリビニルアルコールや界面活性剤に加え、必要に応じて他の成分を含むものとすることが可能である。具体的には、本実施形態で採用されているコーティング剤Cには、さらに染料を配合したものとされている。そのため、コーティング剤Cを乾燥させた後に形成されるコーティング膜14は、染料によって着色された状態となる。したがって、ステータ本体12をなすゴムの外観が白色系のものである場合は、ステータ本体12の露出面17にコーティング膜14が付着しているか否かを一見して把握することが可能となる。また、ステータ本体12をなすゴムの外観が黒色系であるなどして一見しただけでは露出面17にコーティング膜14が付着しているか否かを把握しにくい場合であっても、手で触れるなどした際に染料によって着色されるか否かを確認することにより、コーティング膜14の有無を確認することができる。
ケーシング20は、金属製で筒状の部材あり、長手方向一端側に取り付けられた円板形のエンドスタッド20aに第1開口22aが設けられている。また、ケーシング20の外周部分には、第2開口22bが設けられている。第2開口22bは、ケーシング20の長手方向中間部分に位置する中間部20dにおいてケーシング20の内部空間に連通している。第1,2開口22a,22bは、それぞれ一軸偏心ねじポンプPの吸込口および吐出口として機能する。上述したステータ10は、ケーシング20において第1開口22aに隣接する位置に設けられたステータ取付部22b内に収容されている。ステータ10は、フランジ部10aをケーシング20の端部においてエンドスタッド20aによって挟み込み、エンドスタッド20aとケーシング20の本体部分とに亘ってステーボルト24を取り付けて締め付けることにより固定されている。
ロータ30は、金属製の軸体であり、1条の雄ねじ形状とされている。ロータ30は、上述したステータ10に形成された貫通孔16に挿通され、貫通孔16の内部において自由に偏心回転可能とされている。ロータ30は、上述したステータ10の貫通孔16に挿通され、ロータ30の外周面32とステータ10の内周面18とが両者の接線にわたって当接した状態とされている。また、この状態において、貫通孔16を形成しているステータ10の内周面18と、ロータ30の外周面との間には、流体搬送路40が形成されている。
流体搬送路40は、ステータ10やロータ30の長手方向に向けて螺旋状に延びており、ロータ30をステータ10の貫通孔16内において回転させると、ステータ10内を回転しながらステータ10の長手方向に進む。そのため、ロータ30を回転させると、ステータ10の一端側から流体搬送路40内に流体を吸い込むと共に、この流体を流体搬送路40内に閉じこめた状態でステータ10の他端側に向けて移送し、ステータ10の他端側において吐出させることが可能である。
動力伝達機構50は、ケーシング20の外部に設けられたモータなどの動力源(図示せず)から上述したロータ30に対して動力を伝達するために設けられている。動力伝達機構50は、前述した動力源から伝達された回転動力をロータ30に伝達し、ロータ30を偏心回転させることが可能とされている。一軸偏心ねじポンプPは、前述した動力源を作動させロータ30を回転させることにより、流体搬送路40を介して流体を搬送することが可能である。
上述したように、本実施形態に係る一軸偏心ねじポンプPが備えるステータ10は、ゴム製のステータ本体12の露出面17をコーティング剤Cによってコーティングしコーティング膜14を形成することにより、酸素やオゾンからステータ本体12が保護されている。したがって、本実施形態のステータ10は、例えば倉庫などに保管している間にステータ本体12にオゾンクラックが発生しにくい。また、ステータ10は、オゾンクラックが発生しにくいため、ステータ本体12の製造時にゴムと共に配合される配合剤の配合量を最小限に抑制することができる。したがって、ステータ10は、倉庫等に長期間保存しておいたとしても配合剤がステータ本体12の露出面17に現れにくく、いわゆるブルームによる外観不良が起こりにくい。
上述したコーティング剤Cは、鹸化度が70%以上90%以下の範囲内にあるポリビニルアルコールを主成分として含んでおり、酸素やオゾンがコーティング膜14を極めて透過しにくい。したがって、ステータ10は、コーティング膜14を酸素やオゾンが透過することにより、ステータ本体12にオゾンクラックが発生すること、及びステータ本体12の性能低下や外観低下が起こることを防止できる。
また、上述したコーティング膜14は、鹸化度が70%以上90%以下のビニルアルコールを含むコーティング剤Cを乾燥することにより形成されたものであり、高温の湯水を準備しなくても常温の水によってスムーズに除去可能である。したがって、ステータ10は、雌ねじ形状に形成された内周面18のように洗浄が困難な部位についても容易かつ確実にコーティング膜14を除去することが可能である。
本実施形態では、コーティング剤Cに含まれるポリビニルアルコールの鹸化度が必要以上に低い場合に充分なオゾンクラック防止効果が得られないことを加味し、鹸化度が70%以上のポリビニルアルコールをコーティング剤Cに配合している。そのため、ステータ10は、常温の水により容易にコーティング膜14を除去できると共に、ステータ本体12のコーティングに要するコーティング剤Cの使用量を最小限に抑制することが可能である。
本実施形態で採用されているコーティング剤Cは、ポリビニルアルコールに対して重量比で0.2%以上2%以下の界面活性剤が含まれており、コーティング膜14の膜厚が部位によらず略均一に形成される。そのため、ステータ本体12の外表面13のように起伏等がない部分だけでなく、内周面18のように複雑に湾曲した形状を有する部分やフランジ部10aが設けられ段状になった部分などについてもムラ無く略均一な膜厚のコーティング膜14によって酸素やオゾンから保護されている。したがって、ステータ10は、いかなる部位においてもオゾンクラックの発生やブルームによる外観不良などの問題が発生しにくい。
本実施形態においてコーティング膜14を形成するために使用されたコーティング剤Cは、ポリビニルアルコール濃度が3重量%以上のものであり、ステータ10本体に対して一度塗布するだけでオゾンクラックやブルームの発生を最小限に抑制することが可能である。したがって、上述したステータ10は、コーティング剤Cを重ね塗りしなくてもコーティング膜14によりステータ本体12の略全体をコーティングし、酸素やオゾンから保護することが可能である。また、上述したコーティング剤Cは、ポリビニルアルコールの濃度が25重量%以下であり、ステータ本体12をなすゴムとの親和性が高く、ステータ本体12の露出面17上に略均一な膜厚のコーティング膜14を形成することが可能である。したがって、ステータ10は、いかなる部位においてもステータ本体12がコーティング膜14によって酸素やオゾンから保護された状態にあり、オゾンクラックやブルームなどの問題が発生しにくい。
上述したステータ10は、コーティング膜14の膜厚が10μm以上200μm以下の範囲内にあり、常温の水により洗浄することにより容易にコーティング膜14を除去することができる。また、コーティング膜14は、倉庫内の温度変化などによりヒートショックの影響を受けても破損しにくく、オゾンクラックの発生やブルームによる外観不良などの問題も発生しにくい。
上記実施形態では、コーティング剤Cに含まれる界面活性剤の一例としてアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルキルアミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルエーテルから選ばれる一又は複数の成分を主成分とするものを例示したが、本発明はこれに限定される訳ではなく、他の界面活性剤を含むものであってもよい。
上記実施形態では、コーティング膜14が残存しているか否かの判別を容易なものとすべく、コーティング剤Cに染料を配合した例を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、染料を配合しない構成としてもよい。また、コーティング剤Cに染料を配合する代わりに、例えばコーティング膜14を形成した後にコーティング膜14の表面に着色を施すなど、他の方策を採用することによりコーティング膜14の残存を確認できるようにしてもよい。
続いて、上述した一軸偏心ねじポンプPのステータ10において、ステータ本体12をコーティングするために用いられるコーティング剤Cの特性がコーティング膜14の特性に及ぼす影響について検討するために行った実験の実施方法、及びその実験結果について説明する。
(実験方法等)
本実施例において実施された各実験(実験例1〜3,比較例1〜3)は、コーティング剤Cに含有されるポリビニルアルコールの鹸化度がオゾンクラックの抑制や、コーティング膜14の除去の容易さに及ぼす影響について検討すべく行われたものである。実験例1〜3及び比較例1〜3において使用したポリビニルアルコールは、いずれも株式会社クラレ製のものであり、下記表1に示す品番及び特性を有するものである。具体的には、実験例1〜3において使用したポリビニルアルコールは、鹸化度が70%以上90%以下の範囲内にあるものである。また、比較例1,2において使用したポリビニルアルコールは、鹸化度が90%よりも高く、比較例3において使用したポリビニルアルコールは、鹸化度が70%未満のものである。
本実施例において実施された各実験(実験例1〜3,比較例1〜3)は、コーティング剤Cに含有されるポリビニルアルコールの鹸化度がオゾンクラックの抑制や、コーティング膜14の除去の容易さに及ぼす影響について検討すべく行われたものである。実験例1〜3及び比較例1〜3において使用したポリビニルアルコールは、いずれも株式会社クラレ製のものであり、下記表1に示す品番及び特性を有するものである。具体的には、実験例1〜3において使用したポリビニルアルコールは、鹸化度が70%以上90%以下の範囲内にあるものである。また、比較例1,2において使用したポリビニルアルコールは、鹸化度が90%よりも高く、比較例3において使用したポリビニルアルコールは、鹸化度が70%未満のものである。
実験例1〜3及び比較例1〜3において使用されたコーティング剤Cは、表2に示すように、いずれもポリビニルアルコール(a)、界面活性剤(b)、蒸留水(c)の重量比がa:b:c=100:1.5:900となるように調製された。なお、実験例1〜3及び比較例1〜3において使用した界面活性剤は、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルキルアミンオキシド、及びポリオキシエチレンアルキルエーテルを主成分とするものであった。具体的には、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社製の商品名「ジョイ」が界面活性剤として用いられた。
本実施例1では、実験例1〜3及び比較例1〜3に係る試験用サンプルについて、(1)冷水洗浄試験、(2)熱水洗浄試験、及び(3)日光暴露試験を行った。前記(1)及び(2)に係る試験では、ジエン系のゴムであるエチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)を主成分とし、直径が40mmで厚さが8mmの円盤状の加硫ゴムを試験用サンプルとして用いた。また、前記(3)に係る試験では、ジエン系のゴムであるアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)を主成分とし、巾25mm、長さ124mm、厚さ8mmの大きさの加硫ゴムの両端を揃え、端から10mmの位置をナイロン製の糸で縛り、ループを形成したものを試験用サンプルとして用いた。前記(1)〜(3)に係る各試験の試験方法は下記の通りであった。
(1)冷水洗浄試験
上述した試験用サンプルを実験例1〜3及び比較例1〜3のために準備したコーティング剤Cに浸した後、サランメッシュ上で室温にて1時間乾燥させたものを1000mL(10℃)の水中に投入し、10分間攪拌することにより行われた。攪拌後、加硫ゴムサンプルを水中から取り出し、手感にてコーティング膜14の有無を確認した。
上述した試験用サンプルを実験例1〜3及び比較例1〜3のために準備したコーティング剤Cに浸した後、サランメッシュ上で室温にて1時間乾燥させたものを1000mL(10℃)の水中に投入し、10分間攪拌することにより行われた。攪拌後、加硫ゴムサンプルを水中から取り出し、手感にてコーティング膜14の有無を確認した。
(2)熱水洗浄試験
上記冷水洗浄試験と同様に、加硫ゴムサンプルを実験例1〜3及び比較例1〜3のために準備したコーティング剤Cに浸した後、サランメッシュ上で室温にて1時間乾燥させたものを1000mL(70℃)の水中に投入し、10分間攪拌することにより行われた。攪拌後、加硫ゴムサンプルを水中から取り出し、手感にてコーティング膜14の有無を確認した。
上記冷水洗浄試験と同様に、加硫ゴムサンプルを実験例1〜3及び比較例1〜3のために準備したコーティング剤Cに浸した後、サランメッシュ上で室温にて1時間乾燥させたものを1000mL(70℃)の水中に投入し、10分間攪拌することにより行われた。攪拌後、加硫ゴムサンプルを水中から取り出し、手感にてコーティング膜14の有無を確認した。
(3)日光曝露試験
上述した試験用サンプルの表面にハケを用いて実施例1〜3及び比較例1〜3のために準備したコーティング剤Cを塗布した後、30分間室温にて乾燥させた。乾燥後、試験用サンプルを直射日光に100時間曝露させた後、試験用サンプルの表面を視認により観察することにより耐オゾンクラック性を評価した。
上述した試験用サンプルの表面にハケを用いて実施例1〜3及び比較例1〜3のために準備したコーティング剤Cを塗布した後、30分間室温にて乾燥させた。乾燥後、試験用サンプルを直射日光に100時間曝露させた後、試験用サンプルの表面を視認により観察することにより耐オゾンクラック性を評価した。
(実験結果)
上記(1)〜(3)に係る試験の結果を表3に示す。
上記(1)〜(3)に係る試験の結果を表3に示す。
表3に示すように、上記(2)に係る熱水洗浄試験では、実験例1〜3及び比較例1〜3のいずれの場合においても、コーティング膜14をほぼ完全に除去することができた。また、上記(1)に係る冷水洗浄試験の結果、鹸化度が70%以上90%以下の範囲内にあるポリビニルアルコールを含むコーティング剤Cを用いてコーティング膜14を形成した場合は、10℃の冷水(常温の水)によりコーティング膜14が完全に除去された。また、比較例3のように鹸化度が70%未満のポリビニルアルコールを用いた場合は、10℃の冷水によりコーティング膜14をほぼ完全に除去することができた。しかし、鹸化度が90%よりも高いポリビニルアルコールを用いた場合はコーティング膜14を十分除去できなかった。具体的には、比較例1ではコーティング膜14が試験用サンプルの表面に視認可能な程度に残存していた。また、比較例2では試験用サンプルの表面にコーティング膜14に起因するぬめりが残存していた。これにより、冷水による洗浄によりコーティング膜14を容易かつ完全に除去するためには、コーティング剤Cに含まれるポリビニルアルコールの鹸化度が90%未満である必要があり、鹸化度が70%以上であることが好ましいことが判明した。
上記(3)に係る日光暴露試験の結果、ポリビニルアルコールの鹸化度が73%よりも高い実験例1,2の場合はオゾンクラックが全く発生しなかった。鹸化度が実験例1,2よりも低い(73%)ポリビニルアルコールを用いた実験例3の場合は、微小なオゾンクラックが発生したが、実用上問題とならない程度のものであった。また、鹸化度が90%よりも高いポリビニルアルコールを用いた比較例1,2の場合は、前記実験例1,2の場合と同様にオゾンクラックが全く発生しなかった。これに対し、鹸化度が70%未満であるポリビニルアルコールを用いた比較例3の場合は、視認によりはっきりと判るオゾンクラックが発生し、実用上問題となることが判明した。これにより、オゾンクラックの発生を抑制するためには、コーティング剤Cに含まれるポリビニルアルコールの鹸化度が70%以上であることが望ましく、73%よりも高いことがより一層望ましいことが判明した。
上記(1)〜(3)に係る各試験の結果を勘案すると、熱水を用いなくても冷水によって容易にコーティング膜14を除去可能であり、オゾンクラックの発生を抑制可能とするためには、コーティング剤Cに含まれるポリビニルアルコールの鹸化度が70%以上90%以下であることが好ましいことが判明した。また、オゾンクラックをより一層確実に防止するためには、コーティング剤Cに含まれるポリビニルアルコールの鹸化度が73%よりも高く、90%以下の範囲内にあることが好ましいことが判明した。
続いて、コーティング膜14の膜厚、及びコーティング剤Cにおけるポリビニルアルコールの濃度がコーティング膜14の耐熱性や耐寒性、オゾンクラックの発生に与える影響について検討するために行った実験の実施方法、及びその実験結果について説明する。
(実験方法)
本実施例において実施された各実験(実験例4〜6,比較例4,5)では、上記実施例1の実験例1において採用されたものと同一のポリビニルアルコール(株式会社クラレ製/品番:PVA205/重合度:500/鹸化度:87%)が用いられた。実験例4〜6及び比較例4,5において使用されたコーティング剤Cにおけるポリビニルアルコール、界面活性剤、及び蒸留水の組成比(重量比)は、それぞれ下記表4に示す通りであった。また、実施例2では、界面活性剤として、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルキルアミンオキシド、及びポリオキシエチレンアルキルエーテルを主成分とするものが使用された。具体的には、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社製の商品名「ジョイ」が界面活性剤として使用された。
本実施例において実施された各実験(実験例4〜6,比較例4,5)では、上記実施例1の実験例1において採用されたものと同一のポリビニルアルコール(株式会社クラレ製/品番:PVA205/重合度:500/鹸化度:87%)が用いられた。実験例4〜6及び比較例4,5において使用されたコーティング剤Cにおけるポリビニルアルコール、界面活性剤、及び蒸留水の組成比(重量比)は、それぞれ下記表4に示す通りであった。また、実施例2では、界面活性剤として、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルキルアミンオキシド、及びポリオキシエチレンアルキルエーテルを主成分とするものが使用された。具体的には、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社製の商品名「ジョイ」が界面活性剤として使用された。
本実施例1では、実験例4〜6及び比較例4,5に係る試験用サンプルについて、(A)耐熱性試験、(B)耐寒性試験、及び(C)日光暴露試験を行った。また、実験例4〜6及び比較例4,5において用いる試験用サンプルにつき、コーティング剤Cの乾燥後に形成されるコーティング膜14の膜厚をレーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製/型番VK9700)にて測定した。前記(A)及び(B)に係る試験では、ジエン系のゴムであるエチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)を主成分とし、直径が40mmで厚さが8mmの円盤状の加硫ゴムを試験用サンプルとして用いた。また、前記(C)に係る試験では、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)を主成分とし、巾25mm、長さ124mm、厚さ8mmの大きさの加硫ゴムの両端を揃え、端から10mmの位置をナイロン製の糸で縛り、ループを形成したものを試験用サンプルとして用いた。前記各試験(A)〜(C)の試験方法は下記の通りであった。
(A)耐熱性試験
試験用サンプルを上記表4に示す組成比でポリビニルアルコール等を混合することにより実施例4〜6及び比較例4,5のために準備したコーティング剤Cに浸した後、サランメッシュ上で室温にて1時間乾燥させた。この試験用サンプルを80℃に温度調整されたオーブン内に1週間放置した後、コーティング膜14の剥離やシワ、オゾンクラックが発生しているか否かを評価した。
試験用サンプルを上記表4に示す組成比でポリビニルアルコール等を混合することにより実施例4〜6及び比較例4,5のために準備したコーティング剤Cに浸した後、サランメッシュ上で室温にて1時間乾燥させた。この試験用サンプルを80℃に温度調整されたオーブン内に1週間放置した後、コーティング膜14の剥離やシワ、オゾンクラックが発生しているか否かを評価した。
(B)耐寒性試験
試験用サンプルを上記表4に示す組成比でポリビニルアルコール等を混合することにより実施例4〜6及び比較例4,5のために準備したコーティング剤Cに浸した後、サランメッシュ上で室温にて1時間乾燥させた。この試験用サンプルを−10℃に温度調整された冷蔵庫の庫内に1週間放置した後、コーティング膜14の剥離やシワ、オゾンクラックが発生しているか否かを評価した。
試験用サンプルを上記表4に示す組成比でポリビニルアルコール等を混合することにより実施例4〜6及び比較例4,5のために準備したコーティング剤Cに浸した後、サランメッシュ上で室温にて1時間乾燥させた。この試験用サンプルを−10℃に温度調整された冷蔵庫の庫内に1週間放置した後、コーティング膜14の剥離やシワ、オゾンクラックが発生しているか否かを評価した。
(C)日光曝露試験
上述した試験用サンプルの表面にハケを用いて実施例1〜3及び比較例1〜3のために準備したコーティング剤Cを塗布した後、30分間室温にて乾燥させた。乾燥後、試験用サンプルを直射日光に100時間曝露させた後、試験用サンプルの表面を視認により観察することにより耐オゾンクラック性の評価を行った。
上述した試験用サンプルの表面にハケを用いて実施例1〜3及び比較例1〜3のために準備したコーティング剤Cを塗布した後、30分間室温にて乾燥させた。乾燥後、試験用サンプルを直射日光に100時間曝露させた後、試験用サンプルの表面を視認により観察することにより耐オゾンクラック性の評価を行った。
(実験結果)
上述した実施例4〜6及び比較例4,5についての試験結果を下記表5に示す。表5に示すように、コーティング剤Cに含まれているポリビニルアルコールの濃度が高くなるほど、コーティング剤Cを乾燥させた後に形成されるコーティング膜14の膜厚が厚くなる傾向にあることが確認された。また、上記(A)に係る耐熱性試験及び(B)に係る耐寒性試験の結果、ポリビニルアルコールの濃度が最も高く(19.6%)、コーティング膜14の膜厚が最も厚い比較例5の場合(195μm)は、コーティング膜14が剥離したり、コーティング膜14にシワが生じてしまうことが判明した。したがって、コーティング剤Cに含まれているポリビニルアルコールの濃度が過度に高く、コーティング膜14の膜厚が必要以上に厚くなると、熱衝撃(ヒートショック)の影響によりコーティング膜14に剥離やシワが生じやすくなることが判明した。なお、表5に示す実験結果では、比較例5に係る(C)日光暴露試験においてオゾンクラックは確認されなかった。しかし、コーティング膜14に剥離やシワが生じると、当該部位においてゴムがオゾンや酸素にさらされることになるため、その分だけオゾンクラックやブルームによる外観不良が発生しやすいものと想定される。
上述した実施例4〜6及び比較例4,5についての試験結果を下記表5に示す。表5に示すように、コーティング剤Cに含まれているポリビニルアルコールの濃度が高くなるほど、コーティング剤Cを乾燥させた後に形成されるコーティング膜14の膜厚が厚くなる傾向にあることが確認された。また、上記(A)に係る耐熱性試験及び(B)に係る耐寒性試験の結果、ポリビニルアルコールの濃度が最も高く(19.6%)、コーティング膜14の膜厚が最も厚い比較例5の場合(195μm)は、コーティング膜14が剥離したり、コーティング膜14にシワが生じてしまうことが判明した。したがって、コーティング剤Cに含まれているポリビニルアルコールの濃度が過度に高く、コーティング膜14の膜厚が必要以上に厚くなると、熱衝撃(ヒートショック)の影響によりコーティング膜14に剥離やシワが生じやすくなることが判明した。なお、表5に示す実験結果では、比較例5に係る(C)日光暴露試験においてオゾンクラックは確認されなかった。しかし、コーティング膜14に剥離やシワが生じると、当該部位においてゴムがオゾンや酸素にさらされることになるため、その分だけオゾンクラックやブルームによる外観不良が発生しやすいものと想定される。
また、比較例4の場合は、ポリビニルアルコールの濃度が最も低く(1.1%)、コーティング膜14の膜厚が最も薄い(1.6μm)。比較例4について行った(A)耐熱性試験及び(B)耐寒性試験の結果、熱衝撃が加わってもコーティング膜14が剥離したり、コーティング膜14にシワが生じるなどの問題が生じず、試験サンプルを構成するゴムの表面がコーティング膜14に覆われた状態を維持可能であることが判明した。したがって、ポリビニルアルコールの濃度を低くし、コーティング膜14の膜厚を薄くすることにより、コーティング膜14の破損やシワの発生を抑制しうるものと想定される。その一方で、比較例4の場合は、(C)日光暴露試験において小さなオゾンクラックが確認された。これは、コーティング膜14が必要以上に薄いと、その分だけオゾンや酸素の透過に伴いオゾンクラックが発生する可能性があることを示唆しているものと考えられる。
これに対し、実施例4〜6の場合は、ポリビニルアルコールの濃度やコーティング膜14の膜厚が上述した比較例4,5の場合の中間にある。具体的には、実施例4〜6の場合は、ポリビニルアルコールの濃度が4.2%〜14%の範囲内にあり、コーティング膜14の膜厚が4.5μm〜105μmの範囲内にある。実施例4〜6の場合は、(A)耐熱性試験や(B)耐寒性試験を行っても、コーティング膜14が剥離したり、コーティング膜14にシワが生じるなどの問題は生じなかった。したがって、実施例4〜6の場合は、熱衝撃を受けてもコーティング膜14の破損やシワが極めて生じにくいものと想定される。また、比較例4〜6の場合は、(C)日光暴露試験においてオゾンクラックが発生しなかった。したがって、ポリビニルアルコールの濃度が4.2%〜14%の範囲内にあるコーティング剤Cによりコーティングを行い、膜厚が4.5μm〜105μmの範囲内となるようにコーティング膜14を形成すれば、倉庫などのように温度変化の激しい場所に保管しておいてもコーティング膜14の破損やシワが生じにくく、オゾンクラックの発生を抑制できることが判明した。
続いて、コーティング剤Cに含まれる界面活性剤の種類、量、及びコーティング膜14の膜厚がコーティング膜14の除去の容易さや、オゾンクラックの発生に与える影響について検討するために行った実験の実施方法、及びその実験結果について説明する。
(実験方法)
本実施例においても、上記実施例2と同様に、上記実施例1の実験例1において採用されたものと同一のポリビニルアルコール(株式会社クラレ製/品番:PVA205/重合度:500/鹸化度:87%)が用いられた。実験例7,8及び比較例6〜8において使用されたコーティング剤Cにおいて、ポリビニルアルコール、界面活性剤、及び蒸留水の組成比は、それぞれ下記表6に示す通りであった。本実施例3では、実験例7,8及び比較例7,8において、界面活性剤として、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルキルアミンオキシド、及びポリオキシエチレンアルキルエーテルを主成分とするものが使用された。具体的には、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社製の商品名「ジョイ」が使用された。また、比較例6においては、界面活性剤として、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(関東化学株式会社製 鹿一級試薬)が用いられた。
本実施例においても、上記実施例2と同様に、上記実施例1の実験例1において採用されたものと同一のポリビニルアルコール(株式会社クラレ製/品番:PVA205/重合度:500/鹸化度:87%)が用いられた。実験例7,8及び比較例6〜8において使用されたコーティング剤Cにおいて、ポリビニルアルコール、界面活性剤、及び蒸留水の組成比は、それぞれ下記表6に示す通りであった。本実施例3では、実験例7,8及び比較例7,8において、界面活性剤として、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルキルアミンオキシド、及びポリオキシエチレンアルキルエーテルを主成分とするものが使用された。具体的には、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社製の商品名「ジョイ」が使用された。また、比較例6においては、界面活性剤として、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(関東化学株式会社製 鹿一級試薬)が用いられた。
上記したようにして準備された各実験例7,8及び比較例6〜8用のコーティング剤Cによりコーティングし、乾燥させることにより形成されたコーティング膜14の膜厚及び膜厚分布をレーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製/型番VK9700)にて測定することにより調べた。また、本実施例3では、コーティング膜14の膜厚の計測に加え、(1)冷水洗浄試験、及び(3)日光暴露試験を行った。本実施例3において行う(1)冷水洗浄試験、及び(3)日光暴露試験は、上述した実施例1において行ったものと同様にして試験用サンプルを準備し、同様の試験方法で行われた。
(試験結果)
各実験例7,8及び比較例6〜8において準備された試験用サンプルについて膜厚を計測したところ、下記表7に示す比較例7のように、ポリビニルアルコールに対する界面活性剤の配合量が少ない場合(重量比で0.1%)に、コーティング膜14の膜厚が不均一になることが判明した。これにより、界面活性剤が、略均一なコーティング膜14を形成する上で有効であり、ポリビニルアルコールに対する界面活性剤の配合量が重量比で0.2%以上である場合に特に有効であることが判明した。
各実験例7,8及び比較例6〜8において準備された試験用サンプルについて膜厚を計測したところ、下記表7に示す比較例7のように、ポリビニルアルコールに対する界面活性剤の配合量が少ない場合(重量比で0.1%)に、コーティング膜14の膜厚が不均一になることが判明した。これにより、界面活性剤が、略均一なコーティング膜14を形成する上で有効であり、ポリビニルアルコールに対する界面活性剤の配合量が重量比で0.2%以上である場合に特に有効であることが判明した。
下記表8に示すように、実験例7,8及び比較例6〜8に係るいずれの試験用サンプルについても、冷水洗浄試験によりコーティング膜14をスムーズかつ完全に除去することができた。したがって、実験例7,8及び比較例6〜8に係る範囲内では、コーティング剤Cに含まれている界面活性剤の量や種類、コーティング膜14の膜厚によらずコーティング膜14を冷水(10℃の水)により容易に除去できることが判明した。
これに対し、上述した(3)日光暴露試験の結果は、実験例7,8の場合と、比較例6〜8の場合とで大幅に相違していた。さらに詳細には、実験例7,8の場合は、上記表8に示すように、試験用サンプルにオゾンクラックが発生せず、コーティング膜14の剥離やシワも発生しなかった。一方、比較例6のようにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを界面活性剤として用いた場合は、大きなオゾンクラックが発生し、コーティング剤Cによってコーティングを施さなかった場合よりもオゾンクラックの発生が促進されてしまうことが判明した。また、比較例7,8の場合は、コーティング膜14が剥離してしまい、酸素やオゾンからゴムを保護できない状態になることが判明した。比較例7の場合は、上述したようにコーティング膜14の膜厚が不均一であるため、これに起因して剥離が生じたものと想定される。また、比較例8の場合は、界面活性剤の添加量が過剰であり、コーティング剤Cにおいて層分離が発生し、コーティング膜14とゴムとの間に界面活性剤の層が生成したことによりコーティング膜14の剥離が生じたものと考えられる。
10 ステータ
12 ステータ本体
13 外表面
14 コーティング膜
16 貫通孔
17 露出面
18 内周面
30 ロータ
40 流体搬送路
P 一軸偏心ねじポンプ
C コーティング剤
12 ステータ本体
13 外表面
14 コーティング膜
16 貫通孔
17 露出面
18 内周面
30 ロータ
40 流体搬送路
P 一軸偏心ねじポンプ
C コーティング剤
Claims (6)
- 一軸偏心ねじポンプに用いられるステータであって、
筒状で内周面が雌ねじ形状に形成されたゴム製のステータ本体を有し、
部分鹸化したポリビニルアルコールと、界面活性剤とを主成分として含むコーティング剤により前記ステータ本体がコーティングが施されており、
前記コーティング剤に含まれるポリビニルアルコールの鹸化度が、70%以上90%以下であり、
コーティング剤に含まれている界面活性剤の割合が、ポリビニルアルコールに対して重量比で0.2%以上2%以下であることを特徴とするステータ。 - ステータ本体を構成するゴムが、ジエン系ゴムを主成分とするものであることを特徴とする請求項1に記載のステータ。
- コーティング剤におけるポリビニルアルコール濃度が、3重量%以上25重量%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のステータ。
- 界面活性剤が、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルキルアミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルエーテルから選ばれる一又は複数の成分を主成分としていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のステータ。
- ステータ本体をコーティング剤によりコーティングすることにより形成されたコーティング膜を有し、
前記コーティング膜の膜厚が、10μm以上200μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のステータ。 - 請求項1〜5のいずれかに記載のステータと、
前記ステータの内周面によって囲まれた貫通孔と、
雄ねじ形状に形成され、前記貫通孔内において回転可能なロータと、
前記貫通孔内に前記ロータを挿通することにより前記ロータの外周面と前記ステータの内周面との間に形成された流体搬送路とを備えていることを特徴とする一軸偏心ねじポンプ。
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