(第1実施形態)
以下、本発明をインクジェット式のプリンターに具体化した第1実施形態を、図1〜図9に基づいて説明する。図1は、外装ケースを取り外した状態のプリンターの斜視図である。
図1に示す記録装置としてのプリンター11は、インクジェット式のシリアルプリンターである。プリンター11は上側が開口する略四角箱状の本体ケース12を備え、この本体ケース12内に架設されたガイド軸13にはキャリッジ14が主走査方向(図1におけるX方向)に案内されて往復動可能な状態で設けられている。キャリッジ14が背面側で固定された無端状のタイミングベルト15は、本体ケース12の背板内面上に配設された一対のプーリー16,17に巻き掛けられ、一方のプーリー16と駆動軸が連結されているキャリッジモーター(以下、「CRモーター18」という)が正逆転駆動されることにより、キャリッジ14は主走査方向Xに往復動する構成となっている。
キャリッジ14の下部には、インクを噴射する記録ヘッド19(記録手段)が設けられ、さらに本体ケース12内において記録ヘッド19と対向する下方位置には、記録ヘッド19と媒体としての用紙Pとの間隔を規定するプラテン20がX方向に延びる状態で配置されている。また、キャリッジ14の上部には、ブラック用およびカラー用の各インクカートリッジ21,22が着脱可能に装填されている。記録ヘッド19は、各インクカートリッジ21,22から供給された各色のインクを、色ごとのノズルから噴射(吐出)する。なお、インクカートリッジの装填方式は、インクカートリッジ21,22がキャリッジ14上に装填される図1に示すような所謂オンキャリッジタイプに限定されず、インクカートリッジがプリンター本体側のカートリッジホルダー(図示せず)に装填される方式である所謂オフキャリッジタイプも採用できる。
プリンター11の背面側には、給紙トレイ23と、給紙トレイ23上に積重された多数枚の用紙Pのうち最上位の1枚のみを分離して副走査方向Y下流側へ供給する自動給紙装置(Auto Sheet Feeder)24とが設けられている。
また、本体ケース12の図1における右側下部に配設された紙送りモーター(以下、「PFモータ25」という)が駆動されることにより、紙送りローラー及び排紙ローラー(いずれも図示省略)が回転駆動されて、用紙Pが副走査方向Yへ搬送される。そして、キャリッジ14を主走査方向Xに往復動させながら記録ヘッド19のノズルから用紙Pに向けてインクを噴射する印字動作と、用紙Pを副走査方向Yに所定の搬送量で搬送する紙送り動作とを略交互に繰り返すことで、用紙Pに文字や画像等の印刷が施される。
また、プリンター11には、キャリッジ14の移動距離に比例する数のパルスを出力するリニアエンコーダー26がガイド軸13に沿って延びるように架設されており、リニアエンコーダー26の出力パルスを用いて求められるキャリッジ14の移動位置、移動方向及び移動速度に基づいて、キャリッジ14の速度制御及び位置制御は行われる。また、プリンター11においてキャリッジ14の移動経路上の一端側の位置(図1における右端位置)がホーム位置(ホームポジション)となっており、ホーム位置に位置した際のキャリッジ14の直下には、記録ヘッド19のノズル目詰まり等を予防・解消するためのクリーニング等を行うメンテナンス装置28が配設されている。
図1に示すメンテナンス装置28は、記録ヘッド19のノズル内のインクの増粘や乾燥を防止する蓋体として機能するキャップ29と、記録ヘッド19のノズル開口面19A(図3参照)を払拭するためのワイパー30と、吸引ポンプ31とを備える。キャップ29は、記録ヘッド19のノズル開口面19Aに当接するキャッピング位置と、記録ヘッド19から離間する退避位置との間を、昇降機構32により昇降駆動される。
また、キャップ29は、蓋体機能(キャッピング機能)の他、記録ヘッド19のノズル開口面19Aをキャップしてその内部空間に吸引ポンプ31からの負圧を与えてノズルからインクを強制的に吸引排出させる液体吸引手段の一部としての機能も備えている。ノズルからキャップ29内へ吸引排出された廃インクは、吸引ポンプ31の駆動により、プラテン20の下側に配置された廃液タンク33に排出される。
図2は、記録ヘッドユニットの構成を示す。図2に示すように、記録ヘッドユニット34は、記録ヘッド19と、本体ケース12内に配設された回路基板35と、記録ヘッド19と回路基板35とを電気的に接続するフレキシブルフラットケーブル(Flexible Flat Cable)(以下、「FFC36」という)とを備えている。
回路基板35は、プリンター11のコントローラー40(図5に示す)を構成しており、この回路基板35上には、記録ヘッド19への印字データ及び駆動信号等の出力元となるASIC37(Application Specific IC)などが実装されている。ASIC37は、記録ヘッド19内にノズル毎に設けられた吐出駆動素子38を吐出駆動制御するための印字データ及び駆動信号等をFFC36を通じて記録ヘッド19側のヘッド駆動回路39に転送する。そして、ヘッド駆動回路39が印字データに応じて駆動信号中の駆動パルスの選択/非選択を行い、駆動パルスの入力があった吐出駆動素子38が駆動されることによって、対応する各ノズルからインク滴が吐出される。
図3は記録ヘッドの底面を示す模式底面図である。図3に示すように、記録ヘッド19の底面は複数個のノズルが開口するノズル開口面19Aとなっている。ノズル開口面19Aには、黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4列のノズル19K,19C,19M,19Yが開口している。4列のノズル19K,19C,19M,19Yは、副走査方向(図3における上下方向)に一定のノズルピッチで配列された計180個のノズル♯1〜♯180によりそれぞれ構成される。なお、ノズル配列は、図3のような1列状配列に限らず、千鳥配列としてもよい。
また、図3に示すように、記録ヘッド19には、各ノズル♯1〜♯180と対応する吐出駆動素子38がノズル数と同数内蔵されている(但し、図3では記録ヘッド19の外側に模式的に描いている)。吐出駆動素子38は、例えば圧電駆動素子又は静電駆動素子からなり、所定波形の駆動パルス(電圧パルス)が印加されると、電歪作用又は静電駆動作用により、ノズル19K,19C,19M,19Yに連通するインク室の内壁を構成する振動板を振動させて、インク室を膨張・圧縮させることによりノズル19K,19C,19M,19Yからインク滴を吐出させる。もちろん、吐出駆動素子38はノズル通路内のインクを加熱するヒーターでもよく、ヒーターで加熱したインク内に沸騰により発生した気泡の膨張を利用してノズルからインク滴を吐出させるサーマル方式も採用できる。
次に、プリンター11の電気的構成について説明する。図5は、プリンターの電気的構成を示すブロック図である。図5に示すように、プリンター11は、コントローラー40を備えている。このコントローラー40は、本例では回路基板35(図2参照)に実装されたCPU、ASIC37、ROM及びRAM等の各種の半導体集積回路(チップ部品)などにより構成される。
コントローラー40は、図示しないホスト装置(例えばパーソナルコンピュータ)からの印刷データを受信する外部インターフェース(以下、「外部I/F41」という)と、CPU等からなる制御部42と、各種制御用のデータを一時記憶したり印刷データを格納したりするためのRAM43と、不揮発性メモリー44とを備えている。なお、外部I/F41へは、印刷データが記録ヘッド19の1行(1パス)分ずつパケット転送される。
RAM43は、入力バッファー43A、ワークメモリ43B及び出力バッファー43C(イメージバッファー)として利用される。入力バッファー43Aには、外部I/F41が受信した印刷データが一時格納される。印刷データはコマンド情報と印刷用画像データとを含む。制御部42は、入力バッファー43Aの印刷データ中のコマンド情報を解析すると共に、印刷データ中の印刷用画像データに所定の画像処理等を施して印字データを生成し、その生成した印字データを出力バッファー43Cに展開する。なお、ワークメモリ43Bには、印刷用画像データの処理途中のデータ等が一時格納される。
また、コントローラー40は、駆動信号生成回路45(台形波生成回路)と、クロックCKを発生する発振回路46と、印字データ等の転送を行う転送回路47と、インターフェース(以下、内部I/F48という)とを備えている。さらにコントローラー40には、比較的発熱しやすい駆動信号生成回路45の温度を検出するための温度取得手段としての温度センサー49(サーミスター)が設けられている。例えば駆動信号生成回路45、発振回路46及び転送回路47は、ASIC37内に設けられている。なお、本実施形態では、駆動信号生成回路45が、記録手段の電気駆動系を構成する。
また、制御部42は、内部I/F48に接続されたモーター駆動回路51,52を介してCRモーター18及びPFモーター25をそれぞれ駆動制御する。さらに、制御部42は、内部I/F48に接続されたリニアエンコーダー26及びエンコーダー53からの各エンコーダーパルス信号を入力する。
制御部42は、出力バッファー43Cに展開された印字データの転送を転送回路47に指示する。転送回路47は、制御部42からの指示に基づき、発振回路46からのクロックCK及び出力バッファー43Cからの印字データSIなどを、所定のタイミングでノズル1列分ずつ、内部I/F48及びFFC36を介して記録ヘッド19側のヘッド駆動回路39へ転送する。駆動信号生成回路45は、制御部42からの指示(トリガー信号)に基づき、駆動信号COM及びラッチ信号LAT等を生成する。駆動信号生成回路45が生成した駆動信号COM及びラッチ信号LAT等は、内部I/F48及びFFC36を介して記録ヘッド19側のヘッド駆動回路39へ伝送される。
ここで、駆動信号生成回路45が生成する駆動信号COMについて説明する。図6は、駆動信号生成回路45が生成する駆動信号COMを示す。駆動信号COMには、図6(a)に示す印字駆動信号COMPと、図6(b)に示す微振動用の第1駆動信号COMAと、図6(c)に示す同じく微振動用の第2駆動信号COMBとがある。
図6(a)に示す印字駆動信号COMPは、1ドット分の周期に相当する印刷周期TA内に、大きな振幅の第1パルスDP1と、無ドット(インク滴吐出無し)の際にノズル内のインクを微振動させるための小さな振幅の第2パルスDP2とを時系列に配置したパルス信号である。印刷周期TAは第1周期TA1と第2周期TA2とに分かれ、第1周期TA1内に第1パルスDP1が設定され、第2周期TA2内に第2パルスDP2が設定されている。印字中(吐出期間中)は、駆動信号生成回路45がこの印字駆動信号COMPを印刷周期TA単位で繰り返し生成する。ここで、印刷周期TAとは、記録ヘッド19が主走査方向に一ドットを印字するときの周期に相当する。
印字データSIは多階調(例えば2階調や4階調など)のドットデータにより構成される。本実施形態では例えば2階調のドットデータであり、ドットは1ビットの階調値(ドット値)で示され、「0」又は「1」の値をとる。ドット値が「1」の場合は「ドット有り」を示し第1パルスDP1が選択され、ドットが「0」の場合は「ドット無し」を示し第2パルスDP2が選択される。第1パルスDP1が選択されたときには、吐出駆動素子38が吐出駆動されることでノズルからインク滴が吐出される。第2パルスDP2が選択されたときには、吐出駆動素子38がインク滴を吐出しない程度の強さで繰り返し駆動(微振動駆動)されることでノズル内のインクが微振動する。この印字中の微振動は、全ノズルのうちインクが吐出されないノズルに対して行われる。
また、印字データSIを例えば4階調とした場合、駆動信号は一番大きな振幅の第1パルスDP1と、2番目に大きな振幅の第2パルスDP2と、一番小さな振幅の第3パルスとを有し、これらのパルスDP1,DP2,DP3のうち印字データSIのビット値に応じたパルスが選択される。例えばビット値が(00)のときは無ドット、(01)のときは小ドット、(10)のときは中ドット、(11)のときは大ドットを示す。そして、(00)のときには第3パルスDP3、(01)のときは第2パルスDP2、(10)のときは第3パルスDP3、(11)のときは第1パルスDP1及び第2パルスDP2がそれぞれ選択される。もちろん、ビット値を3ビットとして4階調を超える多階調値の印字データSI及び駆動信号COMPを採用することもできる。
一方、図6(b),(c)に示す微振動用の駆動信号COMA,COMBは、記録ヘッド19が1パス(主走査方向への1回(1行分)の移動)の移動を行う過程(キャリッジ14の起動→加速→定速→減速→停止の過程)において印字中の期間(吐出期間)を除く期間(印字外の期間)のときに、記録ヘッド19の吐出駆動素子38を微振動させるためのパルス信号である。この印字外の微振動は全ノズルで行われる。図6(b)に示す微振動用の第1駆動信号COMAは高周波数の微振動(以下、「高周波微振動」ともいう)を行うためのものであり、図6(c)に示す微振動用の第2駆動信号COMBは低周波数の微振動(以下、「低周波微振動」ともいう)を行うためのものである。本例では、高周波微振動は例えば1〜100kHzの範囲内の所定値(kHz)をとる。低周波微振動は高周波微振動の例えば1/50〜1/2倍の範囲内の所定倍の周波数を有している。なお、図6(a)における駆動信号COMPの電圧波形は、インク特性(粘性等)や記録ヘッド19の吐出特性などに応じて適宜変更してよい。
図5に戻って、制御部42は、判断部61、指令部62、タイマー63、CRカウンター64及びPFカウンター65を備えている。判断部61及び指令部62は、本実施形態では、回路基板35上のCPUがROM内のプログラムを実行して構築されるソフトウェアよりなるが、集積回路等のハードウェアにより構成してもよい。また、タイマー63は、ASIC内のカウンター回路又はCPUがROM内のプログラムを実行して構築されるソフトタイマーにより構成される。さらにCRカウンター64及びPFカウンター65は、ASIC内のカウンター回路により構成されているが、少なくとも一方をソフトウェアにより構成してもよい。
判断部61は、温度センサー49の検出温度Thが閾値としての規定温度Toを超えたか否かを判断する。ここで、規定温度Toは、回路基板35(特に駆動信号生成回路45)が放冷を必要とする温度に設定されている。また、判断部61は、温度センサー49の検出温度Thが温度閾値Ts(第2閾値)を超えたか否かを判断する。この温度閾値Tsも回路基板35(特に駆動信号生成回路45)が放冷を必要とする温度に設定されている。
制御部42は、キャリッジ14が1パス(1行)の印字動作を終える度に、検出温度Thが温度閾値Tsを超えるか否かを判断し、Th>Tsが成立すると、今回のパスの印字を終えたキャリッジ14を、次パスの起動まで所定の休止時間WTだけ待機させて、休止を入れることで、過熱した回路基板35を放冷させるようにしている。本実施形態では、温度閾値Tsは複数設定されており、この制御を行うために、不揮発性メモリー44には、検出温度Thが超えた温度閾値Ts(つまりTh>Tsを満たす閾値のうち最高の温度閾値Ts)から、それに対応する休止時間WTを決めるためのテーブルデータTDが記憶されている。
図4はテーブルデータTDを示す。図4に示すように、テーブルデータTDは、温度閾値Ts(℃)と休止時間WT(秒)との対応関係を示すデータである。温度閾値TsはT1,T2,…,Tn(但し、T1<T2<…<Tn)のn個(但しn≧2)のデータからなり、各温度閾値T1,T2,…,Tnに対応してn個の休止時間WT1,WT2,…,WTnのデータが設定されている(但し、WT1<WT2<…<WTn)。
図5に示す判断部61が、検出温度Thが温度閾値Tsを超えていると判断した場合、制御部42はテーブルデータTDを参照し、検出温度Thが超えた温度閾値Tsのうち最高の温度閾値Tsと対応する休止時間WTを取得する。例えば検出温度Thが、T1<Th≦T2の場合は休止時間WT1が取得され、Tn-1<Th≦Tnの場合は休止時間WTn-1が取得される。
そして、制御部42は、今回のパスを終えたキャリッジ14が停止する度に、検出温度Thが休止条件(Th>Ts)を満たすか否かの判断処理及び休止条件を満たした場合の休止時間WTの取得処理を行う。そして、休止時間WTが取得された場合は、今回のパスを終えて停止したキャリッジ14を、次パスの起動までその休止時間WTだけ待機させる。この休止時間WTの待機によって、コントローラー40(回路基板35)内では、駆動信号生成回路45による駆動信号COMの生成が休止時間WTの間だけ停止し、駆動信号生成回路45が休止時間WTの間だけ放冷される。なお、休止時間WTは、最小値であるWT1が例えば0.1〜1秒の範囲内に設定され、最大値であるWTnが例えば1〜5秒の範囲内に設定されている。もちろん、必要な放冷時間に応じてこれ以下の値、もしくはこれ以上の値に設定してもよい。
また、判断部61は、検出温度Thが規定温度Toを超えると、記録ヘッド19の吐出駆動素子38を微振動させるその周波数を高周波数から低周波数へ切換える周波数切換制御を行う。本実施形態では、規定温度Toは、温度閾値T1と等しく設定されており、キャリッジ14に休止時間WTの休止が入る休止期間において、記録ヘッド19の吐出駆動素子38へ印加される駆動信号COMを第1駆動信号COMAから第2駆動信号COMBへ切り換えて、記録ヘッド19の高周波微振動から低周波微振動への切換えが行われるようになっている。
次に、コントローラー40とFFC36を介して接続されたヘッド駆動回路39の構成を説明する。ヘッド駆動回路39は、シフトレジスター71、ラッチ回路72、レベルシフター73、スイッチ素子74を、吐出駆動素子38ごとに備えている。
各シフトレジスター71には、発振回路46からのクロックCKに同期した1ノズル列分の印字データSI(例えば2階調の場合はドット値「0」「1」をとる180個(1ノズル列分)のドットデータ列、4階調の場合はドット値「00」「01」「10」「11」をとる180個のドットデータ列)の各ドットデータがそれぞれ入力される。なお、4階調の場合は、シフトレジスター71は、ドットデータのビット数と同数のシフトレジスターからなり、各シフトレジスターへ上位ビットと下位ビットがそれぞれ入力される。
ラッチ回路72は、ドットデータが各シフトレジスター71にセットされると、所定のタイミングで入力されるラッチ信号LATに基づきシフトレジスター71にセットされたデータをラッチする。
印字データSIが2階調である本実施形態では、ラッチ回路72からのデータの値から出力データを決める図示しない制御ロジックが設けられる。制御ロジックは、印刷周期TAを2つに分けた2つ周期TA1,TA2(図6(a)参照)毎のタイミングで、ラッチ回路72からのデータに応じて2つ周期TA1,TA2毎にデータを出力する。すなわち、ラッチ回路72からのデータが「1」の場合、制御ロジックは第1周期TA1のタイミングでデータ「1」を出力すると共に第2周期TA2のタイミングでデータ「0」を出力する。また、ラッチ回路72からのデータが「0」の場合、制御ロジックは第1周期TA1のタイミングでデータ「0」を出力すると共に第2周期TA2のタイミングでデータ「1」を出力する。
レベルシフター73は、制御ロジックからのデータが「1」であればレベルシフター73が所定の電圧値(例えば数十ボルト)まで昇圧してスイッチ素子74を接続状態とし、制御ロジックからのデータが「0」であればレベルシフター73はデータの昇圧を実行せず、スイッチ素子74が非接続状態とする。
なお、印字データSIが4階調の場合は、ビット数と同数の各シフトレジスターにセットされたデータをラッチする各ラッチ回路からのデータの組合せから出力データを決める制御ロジックが設けられる。制御ロジックは、印刷周期TAを3つに分けた周期(DP1,DP2,DP3をそれぞれ含む各周期)毎のタイミングでデータを出力する。制御ロジックからのデータが「1」であればレベルシフター73が所定の電圧値まで昇圧してスイッチ素子74を接続状態とし、制御ロジックからのデータが「0」であればレベルシフター73はデータの昇圧を実行せず、スイッチ素子74が非接続状態となる。
スイッチ素子74は、駆動信号生成回路45から図6に示す駆動信号COMを入力している。詳しくは、スイッチ素子74は、印刷中においてはキャリッジ14の1パスにおける吐出期間(印字内期間)では、印字駆動信号COMPを入力し、一方、吐出期間以外である印字外期間では微振動用の第1駆動信号COMA及び第2駆動信号COMBのうち、制御部42によって選択された一方を入力する。
よって、ドットデータが「1」のとき、駆動信号COMPうち第1パルスDP1だけが吐出駆動素子38に印加されて小ドットのインクが吐出される。また、ドットデータが「0」のとき、駆動信号COMPのうち第2パルスDP2だけが吐出駆動素子38に印加されてノズル内のインクが微振動する。なお、ドットデータが4階調の場合は、印刷周期を分割した3つの周期のうちドットデータの値に応じた1つ又は2つの期間でスイッチ素子が接続され、「00」のときに微振動し、「01」のとき小ドット、「10」のとき中ドット、「11」のとき大ドットのインク滴が吐出される。
次に図8に従って記録ヘッド19の電気駆動系である回路基板35(特に駆動信号生成回路45)の過熱を抑制する制御について説明する。図8はキャリッジ駆動制御及び記録ヘッド駆動制御を示すタイミングチャートである。図8(a)は温度センサー49の検出温度Thが規定温度To以下の場合(正常温度の場合)、図8(b)は温度センサー49の検出温度Thが規定温度Toを超えた場合(過熱温度の場合)をそれぞれ示す。図8(a),(b)では、上側にCRモーター18の速度波形を示し、下側に記録ヘッド19(ヘッド駆動回路39)へ出力される駆動信号COMを示している。
図8(a)に示すように、検出温度Thが規定温度To以下のときは、通常の印刷動作が行われる。制御部42は、まず1ページの印刷開始前に温度確認を行い、CRモーター18を起動する。制御部42は、キャリッジ14が図8(a)に示すような加速→定速→減速の所定速度プロファイルで1パスの移動を行うようにCRモーター18を速度制御する。詳しくは、制御部42の指令部62が、速度制御用テーブルを参照して、CRカウンター64の計数値に基づくその時々のキャリッジ位置に応じた目標速度指令値(例えば目標周波数指令値)をモーター駆動回路51に指令することで、CRモーター18を所定速度プロファイルで速度制御する。
図8(a)に示すように、キャリッジ14の定速域で印字(図8におけるハッチング領域)が行われ、この印字が行われる吐出期間(印字内期間)では、記録ヘッド19の吐出駆動素子38へは印字駆動信号COMPが印加される。そのため、ドットデータが「1」のノズルでは、吐出駆動素子38に第1パルスDP1に応じた電圧が印加されることでインク滴が吐出され、ドットデータが「0」のノズルでは、吐出駆動素子38に第2パルスDP2に応じた電圧が印加されることでノズル内のインクが微振動する。なお、印字が行われる吐出期間は、加速域や減速域に一部かかってもよい。
また、印刷中において吐出期間以外の期間(印字外期間)では、制御部42は駆動信号生成回路45を指示し、第1駆動信号COMA及び第2駆動信号COMBのうち選択した一方の駆動信号を出力させる。図8(a)に示す正常温度(Th≦To)の場合、印字外期間では常に第1駆動信号COMAが出力され、吐出駆動素子38が高周波微振動することでノズル内のインクも高周波微振動する。ノズル内のインクが高周波微振動することでノズル内のインクがよく攪拌され、ノズル内のインクの増粘が抑制される。
さらにCRモーター18の駆動停止後、判断部61は検出温度Thが温度閾値Tsを超えたか否かを判断する。図8(a)に示す正常温度の場合は、検出温度Thが温度閾値Ts以下(Th≦Ts)であり、図4に示すテーブルデータTDに設定された各温度閾値Tsを超えることがないので、CRモーター18の駆動停止後、直ちにCRモーター18は次パスの印字のため起動される。
一方、図8(b)に示すように、検出温度Thが規定温度Toを超えた過熱時(Th>To)は、CRモーター18の起動から吐出期間に至るまで期間と、吐出期間終了からCRモーター18が停止するまでの期間とで、第1駆動信号COMAが吐出駆動素子38に印加される。このため、これらの期間では正常温度時と同様に記録ヘッド19の高周波微振動が行われる。この異常過熱時(Th>To)は、CRモーター18の駆動停止後の判断で、検出温度Thが温度閾値Tsを超えることになる。このため、制御部42は、図4に示すテーブルデータTDを参照し、検出温度Thが超えた最高の温度閾値Tsに対応する休止時間WTを取得し、取得した休止時間WTだけ休止を入れてCRモーター18の次パスのための起動時期を遅らせることで、回路基板35がその休止時間WTだけ放冷される。
このような過熱時においては、CRモーター18の駆動停止時に判断部61が過熱状態(Th>To)と判断すると、制御部42はCRモーター18の駆動停止まで実施していた高周波微振動から低周波微振動への切り換えを行う。つまり、制御部42が駆動信号生成回路45に周波数の変更を指示することにより、駆動信号生成回路45が生成する駆動信号COMが、第1駆動信号COMAから第2駆動信号COMBへ切り換えられる。図8(b)に示すように、休止時間WTの休止が入っている休止期間の間、第2駆動信号COMBが吐出駆動素子38に印加される。この結果、休止期間では、ノズル内のインクが低周波数で微振動する。駆動信号生成回路45の発熱量は、高周波数の第1駆動信号COMAを生成するときに比べ、低周波数の第2駆動信号COMBを生成するときの方が少ない。よって、高周波微振動から低周波微振動へ切り換えられることにより、休止期間における微振動に起因する発熱分が小さく抑えられるようになっている。
ここで、図7は休止期間における駆動信号COMの制御内容を示すタイミングチャートである。CRモーター18を駆動停止すると、制御部42は駆動信号生成回路45に指示して第1駆動信号COMAの生成を一旦停止させた後、判断部61により検出温度Thが閾値を超えるか否かの判断を行う。判断の結果、Th>Toが成立した場合、制御部42は駆動信号生成回路45に第2駆動信号COMBの生成を指示し、判断後直ちに低周波微振動を開始させる。
次にプリンターの動作を説明する。印刷ジョブを受け付けた際には、制御部42は、図9にフローチャートで示す制御を実行する。印刷ジョブ受け付けたときには、プリンター11は、ホスト装置からパケット転送された1パス分の印刷データずつ受信する。なお、図9で示されるプログラムはCRモーター18及び記録ヘッド19を制御するためのものであり、PFモーター25の制御は制御部42が他のプログラムを実行することにより行われる。以下、図9に従ってプリンターの動作を説明する。印刷データを受信すると、コマンド情報を解析して
まずステップS10では、温度センサー49の検出温度Thを確認し、RAM43の所定記憶領域に記憶する。
ステップS20では、CRモーター18の駆動を開始する。制御部42は1パス分の印字データから起動位置と停止位置を求めると共に、コマンド解析結果に従い速度制御用のパラメーターを設定する。そして、制御部42はその設定したパラメーターに基づき定まる速度制御用テーブルを参照しつつ、CRカウンター64の計数値に基づくキャリッジ位置に応じたその時々の目標速度指令値を取得し、その取得した指令値を逐次指令することで、CRモーター18を図8(a)に示す所定速度プロファイルで速度制御する。
ステップS30では、記録ヘッド19の高周波微振動を実行させる。すなわち、制御部42はCRモーター18の起動(S20)とほぼ同時に、駆動信号生成回路45に高周波微振動用の第1駆動信号COMAの生成を指示する。なお、印刷ジョブ受信によってキャリッジ14をホーム位置から移動させる際にキャップ29が下降されると、制御部42は駆動信号生成回路45に高周波微振動用の第1駆動信号COMAの生成を指示している。このため、記録ヘッド19がキャッピングされていない状態では、記録ヘッド19は高周波微振動している。このため、最初の1パス目のCRモーター18の起動後の高周波微振動の実施は、その起動前から実施されている高周波微振動を継続させる処理に相当する。このため、図8(a)に示すように、温度確認(S10)の後、CRモーター18が起動されてから印字が開始されるまでの期間では、第1駆動信号COMAの印加により吐出駆動素子38が高周波微振動する。この結果、印字前においてはノズル内のインクが高周波数で微振動することでよく攪拌される。
図9におけるステップS40では、1パスの印字を行う。すなわち、制御部42は駆動信号生成回路45に印字駆動信号COMPの生成を指示すると共に、転送回路47に印字データSIの転送を指示する。この結果、出力バッファー43Cからヘッド駆動回路39へ印字データSIが1ノズル列分ずつ逐次転送されると共に、駆動信号生成回路45から印字駆動信号COMPがヘッド駆動回路39へ伝送される。これによりキャリッジ14が印字開始位置に到達すると、印字データSI及び印字駆動信号COMPに基づく印字が開始され、キャリッジ14の1パスにおける例えば定速域において1行分の印字が行われる。
ステップS50では、記録ヘッド19の高周波微振動を開始する。すなわち、制御部42は印字(S40)を終了すると(つまり吐出期間が終了すると)、駆動信号生成回路45に高周波微振動用の第1駆動信号COMAの生成を指示する。この結果、図8(a)に示すように、吐出期間の終了からCRモーター18の停止までの期間で、第1駆動信号COMAが吐出駆動素子38が印加されることにより、ノズル内のインクが高周波微振動することになる。
ステップS60では、CRモーター18を駆動停止させる。すなわち、制御部42は、CRカウンター64の計数値から逐次把握される現在のキャリッジ位置が今回のパスの停止位置に到達すると、モーター駆動回路51に停止信号を指令することでCRモーター18を停止させる。ここまでは、図8(a)に示す正常温度(Th≦To)のときと、図8(b)に示す過熱温度(Th>To)のときとで同様の制御が行われる。
次のステップS70では、検出温度Thが規定温度Toを超えるか(Th>Toが成立するか)否かを判断する。詳しくは、制御部42は、RAM43の所定記憶領域から検出温度Thを読み出し、Th>Toが成立するか否かを判断する。本例では、S10でRAM43に記憶した検出温度Thを用いて判断を行っているが、温度センサー49からの検出温度Thの取得にさほど時間を要しなければ、判断の度に温度センサー49から現在の検出温度Thを取得して、Th>Toの成立の可否を判断してもよい。
判断の結果、Th≦Toであった場合(正常温度の場合)はステップS80に進み、高周波微振動を継続させる。すなわち、制御部42は駆動信号生成回路45に高周波微振動を指示し、第1駆動信号COMAを吐出駆動素子38に印加させることでノズル内のインクを高周波数で微振動させる。
一方、判断の結果、Th>Toであった場合(過熱温度の場合)はステップS90に進み、低周波微振動に切り換える。すなわち、制御部42は駆動信号生成回路45に低周波微振動への切り換えを指示し、第2駆動信号COMBを吐出駆動素子38に印加させることでノズル内のインクを低周波数で微振動させる。
そして、判断の結果、Th>Toであり低周波微振動へ切り換えた後、次のステップS100において、検出温度Thに応じた休止時間WTの待機を行う。すなわち、制御部42は、検出温度Thが超えた温度閾値Tsのうち最高の温度閾値Tsに応じた休止時間WTを、不揮発性メモリー44のテーブルデータTD(図4)を参照して取得し、図8(b)に示すように、その取得した休止時間WTだけキャリッジ14を停止状態のまま待機させることで次パスのためのCRモーター18の起動時期を遅らせる。このため、回路基板35の過熱時は、キャリッジ14が1パスを終える度に休止時間WTの休止が入ることで、その休止時間WTだけ回路基板35(特に駆動信号生成回路45)が放冷される。そして、この休止期間では、図7及び図8(b)に示すように、第2駆動信号COMBが吐出駆動素子38に印加されて低周波微振動が行われる。このため、休止期間においては、駆動信号生成回路45が生成する駆動信号COMの周波数が低くなるので、微振動による発熱分も小さく抑えられる。
そして、正常温度のときには、CRモーター18の駆動停止後、高周波微振動を継続するが、1ページの印刷終了前でなければ(ステップS110で否定判定)、ステップS20に戻って、次パスの開始のためにCRモーター18の駆動を開始する。この結果、このキャリッジ14の停止後、次パスがある場合は、直ちにキャリッジ14が起動される。
一方、過熱温度のときには、検出温度Thに応じた休止時間WTの待機を終えた後、1ページの印刷終了前でなければ(S110で否定判定)、ステップS20に戻って、次パスのキャリッジ14の起動のためにCRモーター18の駆動を開始する。そして、このキャリッジ14の起動とほぼ同時に記録ヘッド19の高周波微振動が開始される(S230)。以下、1パス毎に同様の処理を繰り返し、1ページの印刷を終了すると、全ページの印刷終了でなければ(ステップS120で否定判定)、ステップS10に戻る。この結果、1ページの印刷を終了する度に、次ページの印刷開始に当たり、温度センサー49の検出温度Thを確認し、RAM43の所定記憶領域に記憶する処理が行われる。そして、各ページの印刷で同様の処理(S10〜S120)を行い、全ページの印刷が終了すると(S120で肯定判定)、印刷を終了する。
(1)回路基板35の過熱時(Th>To(=T1))は、キャリッジ14が1パスを終える度に記録ヘッド19の微振動を高周波微振動から低周波微振動に切り換え、CRモーター18の休止期間では記録ヘッド19を低周波微振動させる構成とした。よって、駆動信号生成回路45の休止期間における微振動分の発熱を小さく抑制でき、駆動信号生成回路45の温度を効果的に低下させることができる。よって、過熱時の駆動信号生成回路45の温度が比較的速やかに低下し、印刷中にキャリッジ14の休止が入る回数(頻度)を低減できる。
(2)休止期間が終わってCRモーター18が起動されると、低周波微振動から高周波微振動へ切り換えるので、印字前の期間でノズル内のインクがよく攪拌される。よって、印字の際にノズル内のインクの増粘に起因する例えばインク滴が正規の量より少ない吐出不良やノズル目詰まりに起因するドット抜け不良を効果的に防止することができる。その結果、吐出不良が発生することなく正常な印字(インク吐出)を実現できる。
(第2実施形態)
次に第2実施形態を、図10及び図11に基づいて説明する。本実施形態では、プリンターの構成は前記第1実施形態と同様であり、制御内容のみ第1実施形態と異なっている。第1実施形態と同じ構成については説明を省略し、特に異なる制御内容を中心に説明する。この第2実施形態では、吐出期間を終えると直ちに低周波微振動を開始する点が、前記第1実施形態と異なる。
図10は第2実施形態におけるプリンターの制御内容を示すフローチャートであり、図11はプリンターの制御を示すタイミングチャートである。以下、図10に示すフローチャートに従って、図11を参照しつつ制御部42が行うプリンターの制御について説明する。
図10において、ステップS210〜S240の各処理は、第1実施形態の図9におけるステップS10〜S40の各処理と同様である。このため、図11に示すように、温度確認(S210)の後、CRモーター18が起動され、CRモーター18が加速して定速域に達して印字が開始されるまでの期間においては、第1駆動信号COMAが吐出駆動素子38に印加されてノズル内のインクが高周波数で微振動する。そして、キャリッジ14が印字開始位置に達するまでの期間でノズル内のインクはよく攪拌されるので、印字(S240)は吐出不良などが発生することなく良好に行われる。
そして、ステップS250では、検出温度Thが規定温度Toを超えるか(Th>Toが成立するか)否かを判断する。詳しくは、制御部42は、RAM43の所定記憶領域から検出温度Thを読み出し、Th>Toが成立するか否かを判断する。Th≦Toであった場合(正常温度の場合)はステップS260に進み、記録ヘッド19の高周波微振動を開始する。すなわち、制御部42は駆動信号生成回路45に高周波微振動を指示し、第1駆動信号COMAを吐出駆動素子38に印加させることでノズル内のインクを高周波数で微振動させる。一方、判断の結果、Th>Toであった場合(過熱温度の場合)はステップS280に進み、記録ヘッド19の低周波微振動を開始する。すなわち、制御部42は駆動信号生成回路45に低周波微振動を指示し、第2駆動信号COMBを吐出駆動素子38に印加させることでノズル内のインクを低周波数で微振動させる。
そして、正常温度のときには、ステップS270でCRモーター18を駆動停止する。この場合、1ページの印刷終了前でなければ、次パスのキャリッジ14の起動のためにCRモーター18を駆動開始する(S220)。一方、過熱温度のときには、ステップS290でCRモーター18を駆動停止し(S290)、このキャリッジ14の停止後、検出温度Thに応じた休止時間WTの待機を行う(S300)。この休止時間WTの待機後、1ページの印刷終了前でなければ(S310で否定判定)、次パスのキャリッジ14の起動のためにCRモーター18を駆動開始する(S220)。そして、このキャリッジ14の起動とほぼ同時に記録ヘッド19の高周波微振動が開始される(S230)。以下、同様の処理を繰り返す。
よって、図11に示すように、吐出期間が終了したときの判断の結果、過熱温度(Th>To)であれば、その時点で低周波微振動用の第2駆動信号COMBの印加が開始され、記録ヘッド19の低周波微振動が早期に開始される。このため、駆動信号生成回路45の放冷によるその過熱温度の低下が第1実施形態に比べ一層効果的に行われる。その結果、印刷中にキャリッジ14の休止が入る回数(頻度)をより効果的に低減できる。また、第1実施形態と同様に、休止期間が終わってCRモーター18が起動されると、低周波微振動から高周波微振動へ切り換えるので、印字前の期間でノズル内のインクがよく攪拌されるため、吐出不良が発生することなく正常な印字(インク吐出)を行うことができる。
実施形態は上記に限定されず、以下の態様に変更することもできる。
(変形例1)微振動制御用の閾値を複数設定すると共に、温度が超えた閾値のうちの最高の閾値に応じた周波数が設定される構成でもよい。この場合、制御部は温度が超えた閾値(最高の閾値)に応じた周波数を選択する。この構成によれば、温度が超えた閾値に応じて選択された周波数で記録ヘッドの低周波微振動が行われる。このため駆動信号生成回路(電気駆動系)の発熱の程度に応じた周波数で低周波微振動が行われるので、記録ヘッド19の目詰まりを抑えつつその駆動信号生成回路の発熱を抑えることができる。駆動信号生成回路の温度が高ければ記録ヘッド19もその吐出駆動によって発熱している。例えばインク(流体)が粘性を有するもの(樹脂系のもの)であれば、温度が高くなるほどその粘度が低くなりノズル目詰まりが起きにくくなるので、温度が高いほどより低周波数を選択することが望ましい。また、例えばインク(流体)が粘性の低いもの(例えば水性)であれば、温度が高くなるほど溶媒又は分散媒が蒸発(揮発)し易くなって目詰まりが起き易くなるので、温度が高くなるほど高周波微振動から周波数を低くする程度をより小さくするのが望ましい。この後者の場合は、最低の温度閾値が高周波微振動から低周波微振動へ切り換えるための閾値に相当し、これより高温側の閾値は周波数を低くする程度を決めるためのものとなる。そして、検出温度が最低の温度閾値を超える範囲では、高周波微振動より低い周波数の低周波微振動が行われ、その周波数は高温側ほど高くなる。
(変形例2)閾値は複数設定されると共に温度が超えた閾値に応じた異なる微振動実施時間が設定される構成でもよい。この場合、制御部は温度が超えた閾値(詳しくは温度が超えた閾値のうち最高の閾値)に応じた微振動実施時間を選択することが好ましい。この構成によれば、温度が超えた閾値に応じて選択された微振動実施時間だけ記録ヘッドの低周波微振動が行われる。このため駆動信号生成回路(電気駆動系)の発熱の程度に応じた時間だけ低周波微振動が行われるので、記録ヘッド19の目詰まりを抑えつつその駆動信号生成回路の発熱を抑えることができる。駆動信号生成回路の温度が高ければ記録ヘッド19もその吐出駆動によって発熱している。例えばインク(流体)が粘性を有するもの(樹脂系のもの)であれば、温度が高くなるほどその粘度が低くなりノズル目詰まりが起きにくくなるので、温度が高いほどより長い微振動実施時間を選択することが望ましい。また、例えばインク(流体)が粘性の低いもの(例えば水性)であれば、温度が高くなるほど溶媒又は分散媒が蒸発(揮発)し易くなって目詰まりが起き易くなるので、温度が高くなるほどより短い微振動実施時間を選択することが望ましい。なお、低周波微振動の期間は、温度が超えた閾値によらず休止期間は共通に含むようにし、減速過程又は加速過程での低周波微振動の実施期間を可変させることで、微振動実施時間を可変とする構成が好ましい。
(変形例3)温度取得手段による温度取得対象である電気駆動系は、搬送系(紙送り系)の駆動回路又は駆動源、あるいは記録手段を移動させるための移動手段(キャリッジ系)の駆動回路又は駆動源でもよい。例えばCRモーター18又はそのモーター駆動回路51の検出温度が閾値(第2閾値)を超えると、キャリッジ14を1パス終える度に一時的な休止時間を付与する構成や、PFモーター25又はそのモーター駆動回路52の検出温度が閾値(第2閾値)を超えると、キャリッジ14を1パス終える度に一時的な休止時間を付与する構成でもよい。そして、少なくともこの休止期間において、記録ヘッド19の微振動制御として、検出温度が閾値を超えないときの微振動(高周波微振動)より低周波数の微振動(低周波微振動)を行う構成も採用できる。キャリッジ系と紙送り系のうち少なくとも一方の駆動回路又は駆動源の検出温度が閾値を超えているときには、記録ヘッドの駆動系も過熱している可能性が高いので、この構成の採用により、例えば記録ヘッドの電気駆動系の温度検出を行わないプリンターにおいて、記録ヘッドの電気駆動系の過熱を抑制することができる。
(変形例4)前記実施形態では、規定温度Toを、過熱抑制制御のための温度閾値Tsのうち最低温度の温度閾値T1と等しい値に設定したが、これに限定されない。規定温度Toを、最低の温度閾値T1よりも高温に設定してもよく、例えば他の温度閾値(例えばT2,T3,…,Tn)と等しい値に設定してもよい。さらには、規定温度Toを最低の温度閾値T1未満の値に設定し、キャリッジ14を休止させないときにも、検出温度Thが規定温度To(<T1)を超えると、高周波微振動から低周波微振動へ切り換える構成も採用できる。
(変形例5)休止期間中はその開始から終了までほぼ全期間で低周波微振動を行ったが、休止期間の一部だけに低周波微振動を行ってもよい。
(変形例6)第2実施形態では、吐出期間の終了直後に低周波微振動を開始したが、例えばキャリッジ14の減速途中から低周波微振動に切り換えてもよい。
(変形例7)前記各実施形態では、休止期間終了後直ちに高周波微振動を開始したが、例えばキャリッジ14の加速途中で低周波微振動から高周波微振動へ切り換えてもよい。この場合、低周波微振動の実行期間がより長くなって、休止の頻度をより低減できる。
(変形例8)微振動周波数の切換え制御の適用は、印字外の微振動に限定されない。例えば印字中の微振動に周波数切換え制御を適用してもよい。例えば印字中の駆動信号COMPに高周波微振動用と低周波微振動用の2種類のパルスを用意し、検出温度が閾値を超えないうちは、高周波微振動用のパルスを選択し、検出温度が閾値を超えると、低周波微振動用のパルスを選択する構成とする。例えば増粘しにくいインクであれば印字中の微振動を低周波にしても特に問題はない。
(変形例9)キャリッジ起動後からインク吐出開始までの期間は高周波微振動を行う構成としたが、吐出性能に影響が出なければ、キャリッジ14の加速途中まで、あるいはインク吐出開始までの期間で低周波微振動を行ってもよい。この場合、吐出開始位置に達する直前のごく短い期間に入ると、高周波微振動に切り換える構成も採用できる。
(変形例10)印刷モードに応じて低周波微振動の周波数を異ならせてもよい。例えば高品質印刷モードの場合は、高めの低周波数微振動を行い、高速印刷モード(ドラフト印刷モード)の場合は、低めの低周波微振動を行う構成としてもよい。
(変形例11)温度取得手段は温度センサー49等の温度検出手段に限定されない。特許文献2に記載されたように、温度を演算により求める温度取得手段でもよい。
(変形例12)記録装置は、シリアルプリンターに限定されず、ラインプリンターでもよい。ラインプリンターの場合は、検出温度Thが閾値を超えた場合は、1ページの印刷が終了して次ページへ移る過程で、次ページの用紙(媒体)の搬送開始を待機させることで記録ヘッドの休止を入れて、その休止期間中に記録ヘッドの高周波微振動を低周波微振動に切り換える構成とすればよい。
(変形例13)前記実施形態では、記録装置をインクジェット式プリンターとして具体化したが、インク以外の他の流体(但し気体を含まない)を吐出する液体吐出装置を採用してもよい。微小量の液滴を吐出させる液体吐出ヘッド等を備える各種の液体吐出装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体吐出装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体吐出装置が吐出させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体吐出装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を吐出する液体吐出装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を吐出する液体吐出装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を吐出する液体吐出装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を吐出する液体吐出装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に吐出する液体吐出装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を吐出する液体吐出装置を採用してもよい。このように本発明における記録装置が行う記録とは、印刷の域を超えて、液体や液状体の滴を媒体に吐出すること全般をも含む。そして、これらのうちいずれか一種の液体吐出装置に本発明を適用することができる。