以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は、本発明の第1態様に係るセキュリティデバイスを概略的に示す平面図である。図2は、図1に示すセキュリティデバイスのII−II線に沿った断面図である。
なお、図1では、セキュリティデバイス10をその表示面側から観察した様子を描いている。また、図1及び図2では、表示面に平行であり且つ互いに直交する方向をX方向及びY方向とし、表示面に垂直な方向をZ方向としている。
図1及び図2に示すセキュリティデバイス10は、真正品であることが確認されるべき物品に支持させる粘着ラベルである。このセキュリティデバイス10は、3層以上の多層構造を有している。具体的には、このセキュリティデバイス10は、基材11と配向層12と複屈折性層13と反射層14と接着層15と密着性パターン16とを含んでいる。セキュリティデバイス10の前面は、基材11側の面である。
基材11は、光透過性を有しており、典型的には無色透明又は有色透明である。基材11は、例えば、光透過性を有している樹脂からなるフィルム又はシートである。この樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアセタール、ポリスチレン又はエポキシ樹脂を使用することができる。
基材11は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。基材11は、複屈折性を有していてもよいが、表示に影響を与えないように、複屈折性を有していないことが好ましい。
配向層12は、基材11の背面を被覆している。ここでは、配向層12は、一部が密着性パターン16と接触し、他の一部が複屈折性層13の一部と接触した隣接層である。
配向層12は、光透過性の層である。典型的には、配向層12は、透明であり、光学的に等方性である。配向層12は、偏光性を有している入射光を入射させたときに偏光性を有している透過光及び反射光を射出すれば、透過光及び/又は反射光に散乱性を与えるものであってもよい。
配向層12は、非粘着性である。配向層12の材料としては、例えば樹脂を使用することができる。この樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂、セルロース樹脂、アセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、オレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂又はメラミン樹脂を使用することができる。
密着性パターン16は、配向層12の一部を被覆している。ここでは、密着性パターン16は非粘着性である。密着性パターン16は、セキュリティデバイス10をこれが貼り付けられた物品から剥離しようとした場合に、密着性パターン16の両側で層間剥離が生じるのを防止する役割を果たす。
密着性パターン16の材料は、隣接層、ここでは配向層12の材料に応じて適宜選択する。即ち、密着性パターン16の材料は、密着性パターン16と隣接層との接触部及び密着性パターン16と複屈折性層13との接触部が隣接層と複屈折性層13と比較してより大きい層間接着強さを有するように選択する。例えば、配向層12の材料として、アクリル樹脂、エポキシ樹脂又は塩化ビニル樹脂を使用した場合には、密着性パターン16の材料としてウレタン樹脂を使用することができる。或いは、配向層12の材料としてアクリル樹脂を使用した場合、密着性パターン16の材料として塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を使用してもよい。或いは、配向層12が非粘着性である場合、密着性パターン16の材料として粘着性の樹脂を使用してもよい。
密着性パターン16の表面と配向層12の表面のうち密着性パターン16から露出した領域とは、複屈折性層13のための下地面を構成している。この下地面は、領域Aa乃至Acを含んでいる。領域Aa及びAbの各々は円形である。領域Acは、領域Aa及びAbを取り囲んでいる。領域Aa乃至Acの各々は、他の形状を有していてもよい。
以下、セキュリティデバイス10のうち領域Aa乃至Acに対応した部分を、それぞれ表示部100a乃至100cと呼ぶ。また、複屈折性層13のうち領域Aa乃至Acに対応した部分を、それぞれ部分130a乃至130cと呼ぶ。
領域Aa及びAbの各々には、長さ方向が揃い且つこの長さ方向と交差する方向に隣り合った複数の溝が設けられている。領域Aaに設けられている溝と、領域Abに設けられている溝とは、それらの長さ方向が互いに異なっている。ここでは、一例として、領域Aaに設けられている溝の長さ方向はX方向に平行であり、領域Abに設けられている溝の長さ方向はY方向に平行であるとする。そして、ここでは、一例として、配向層12のうち領域Aaに対応した部分と領域Abに対応した部分とは、寸法及び溝の長さ方向が異なっていること以外は同様であるとする。
領域Aa及びAbには、様々な構造を採用することができる。例えば、領域Aa及びAbの各々には、複数の溝を幅方向に等間隔で平行に並べた構造を採用することができる。
領域Aa及びAbの各々において、これら溝は、互いに平行でなくてもよい。但し、これらの溝が平行に近いほど、領域Aa及びAbに対応した複屈折性層13の各々の部分において、メソゲンの長軸が揃い易くなる。これらの溝が為す角度は、例えば5°以下とし、好ましくは3°以下とする。
領域Aa及びAbの各々において、これら溝は、縦横に並べてもよい。また、溝の長さは、互いに等しくてもよく、互いに異なっていてもよい。また、長さ方向に隣り合う溝間の距離は均一であってもよく、不均一であってもよい。更に、幅方向に隣り合う溝間の距離は均一であってもよく、不均一であってもよい。
例えば、領域Aa及びAbの各々には、互いに長さが等しい溝を縦横に並べてもよい。溝を略平行とし且つピッチを適宜設定することなどにより、これら溝で回折格子を構成することができる。
或いは、領域Aa及びAbの各々には、様々な長さの溝をランダムに並べてもよい。この場合、これら溝で一方向性拡散パターンを形成することができる。なお、この一方向性拡散パターンは、溝の長さ方向に垂直な面内での拡散能が、Z方向及び溝の長さ方向に平行な面内での拡散能と比較してより大きい光拡散特性、即ち、光散乱異方性を示すパターンである。ここでは、一例として、領域Aa及びAbの各々に設けられた溝は、回折格子を構成していることとする。
領域Acは、溝が設けられていない領域である。領域Acは、省略することができる。
下地面のレリーフ構造は、例えば、感光性樹脂材料に、二光束干渉法を用いてホログラムパターンを記録する方法や、電子ビームによってパターンを描画する方法により形成することができる。或いは、表面レリーフ型ホログラムの製造で行われているように、微細な線状の凸部を設けた金型を樹脂に押し付けることにより形成することができる。例えば、このレリーフ構造は、基材11上に各々が熱可塑性樹脂からなる配向層12及び密着性パターン16をこの順に形成し、それらの表面に、線状の凸部が設けられた原版を、熱を印加しながら押し当てる方法、即ち、熱エンボス加工法により得られる。或いは、基材11上に紫外線硬化樹脂を塗布し、これに原版を押し当てながら基材11側から紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させ、その後、原版を取り除く方法を利用することも可能である。
なお、通常は、原版の凹凸構造を転写して反転版を製造し、この反転版の凹凸構造を転写して複製版を製造する。そして、必要に応じ、複製版を原版として用いて反転版を製造と、この反転版の凹凸構造を転写して複製版を更に製造する。実際の製造では、通常、このようにして得られる複製版を使用する。
これらの方法によれば、1つの面内に、溝の長さ方向、ピッチ、深さ、幅及び長さの少なくとも1つが異なる複数の領域を形成することができる。
先の原版は、例えば、二光束干渉法を用いてホログラムパターンを記録する方法、電子ビームによってパターンを描画する方法、又はバイトによって切削する方法により得られた母型の電鋳を行うことにより得られる。下地面に上記のような多様性をもたせない場合は、ラビング加工により溝を形成してもよい。
これら溝の深さは、例えば0.05μm乃至1μmの範囲とし、典型的には0.1μm乃至1μmの範囲とする。また、溝の長さは、例えば0.1μm乃至1μmの範囲内とし、典型的には0.5μm乃至1μmの範囲内とする。溝のピッチは、例えば0.1μm以上であり、典型的には0.75μm以上である。また、溝のピッチは、例えば10μm以下であり、典型的には2μm以下である。メソゲンを高い秩序度で配向させるには、溝のピッチは小さいことが有利である。
領域Aaと領域Abとは、それらに設けられている溝のピッチ、幅及び深さの少なくも1つが更に異なっていてもよい。領域Aaと領域Abとで溝のピッチ、幅及び深さの少なくも1つが更に異なっている場合、領域Aaと領域Abとは、それらに設けられている溝の長さ方向が等しくてもよい。或いは、領域Aa及びAbの一方は省略してもよい。
複屈折性層13は、下地面上に形成されている。複屈折性層13は、領域Aa乃至Acを被覆している。複屈折性層13の基材11と向き合った主面には、上記の溝に対応したレリーフ構造が設けられている。
複屈折性層13は、液晶材料を固化してなる。典型的には、複屈折性層13は、流動性を有する重合性液晶材料を紫外線又は熱により硬化させてなる高分子複屈折性層である。この液晶材料は、例えばネマチック液晶材料である。
複屈折性層13のうち、領域Aaを被覆している部分130aと、領域Abを被覆している部分130bと、領域Acを被覆している部分130cは、メソゲンの配向構造及び/又は配向方向が互いに異なっている。複屈折性層13のうち領域Aaを被覆している部分130aでは、メソゲンの配向方向は、領域Aaに設けられている溝の長さ方向とほぼ平行である。複屈折性層13のうち領域Abを被覆している部分130bでは、メソゲンの配向方向は、領域Abに設けられている溝の長さ方向とほぼ平行である。即ち、この例では、複屈折性層13のうち領域Aaを被覆している部分130aでは、メソゲンはX方向に配向している。そして、複屈折性層13のうち領域Abを被覆している部分130bでは、メソゲンはY方向に配向している。
複屈折性層13のこれら部分130a及び130bは、メソゲンが配向しているので、複屈折性を有している。複屈折性部分130aではメソゲンはX方向に配向しているので、そのX方向についての屈折率は異常光線屈折率neであり、Y方向についての屈折率は常光線屈折率noである。屈折率neは屈折率noよりも大きいので、複屈折性部分130aの遅相軸はX方向と平行であり、進相軸はY方向と平行である。また、複屈折性部分130bの遅相軸はY方向と平行であり、進相軸はX方向と平行である。
複屈折性層13のうち領域Acを被覆している部分130cでは、メソゲンは、典型的には、複屈折性部分130a及び130bほど高い秩序度で配向していないか、又は、配向していない。ここでは、一例として、この部分130cでは、メソゲンは配向していないこととする。即ち、この部分130cは、光学的に等方性であるとする。なお、この部分130cでは、例えば、領域Acにラビング処理などの配向処理を施すことにより、メソゲンを比較的高い秩序度で配向させることができる。
複屈折性層13は、例えば、以下の方法により形成することができる。まず、光重合性を有するネマチック液晶材料を下地面上に塗布する。次いで、液晶材料に紫外線を照射して、それらの重合を生じさせる。これにより、メソゲンの長軸の向きが固定された複屈折性層13を得ることができる。複屈折性層13の材料として、コレステリック液晶材料やスメクチック液晶材料を用いてもよい。
反射層14は、複屈折性層13を被覆している。反射層14は、例えば、真空蒸着法及びスパッタリング法などの気相堆積法によって得られる金属層である。
反射層14と複屈折性層13との間に、表面にレリーフ構造が設けられた光透過層を介在させてもよい。このような光透過層を設けると、反射層14の複屈折層13と向き合った表面に、回折格子及びホログラムなどの回折構造を形成すること又は光散乱構造を形成することができる。この光透過層の材料としては、例えば、密着性パターン16について上述した材料を使用することができる。
反射層14として金属層を使用する代わりに、単層又は多層の誘電体層を使用してもよい。この場合、反射層14と複屈折性層13との間には、上記の光透過層を介在させてもよく、介在させなくてもよい。多層の誘電体層、即ち誘電体多層膜は、例えば、硫化亜鉛などの高屈折率材料とフッ化マグネシウムなどの低屈折率材料とを交互に蒸着することによって得られる。
反射層14として金属層を使用する代わりに、光透過性樹脂と金属粒子とを含んだ混合物からなる層を使用していてもよい。
光透過性樹脂としては、例えば、天然ゴム、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリエーテル、エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニル、クロロプレンゴム、シリコーン樹脂、ニトリルゴム、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリベンゾイミダゾール、メタクリル樹脂、メラミン樹脂、メラミン樹脂、レゾルシノール樹脂、又はそれらの1つ以上を含んだ混合物を使用することができる。
金属粒子は、金属又は合金からなる。この金属又は合金としては、例えば、アルミニウム、白金、金、銀、銅、チタン、ビスマス、ゲルマニウム、インジウム、錫、又はそれらの1つ以上を含んだ合金を使用することができる。これらの中でも、アルミニウムは、可視域、赤外域及び近紫外域の全体に亘って反射率が高い。しかも、アルミニウムは、酸化に対する耐性が高い。従って、金属粒子として、アルミニウム粒子を使用することが好ましい。
光透過性樹脂と金属粒子とを含んだ混合物からなる反射層14は、偏光を照射した場合、この偏光を、その偏光性をほぼ維持したまま反射する。即ち、この反射層14は、例えば、真空蒸着法及びスパッタリング法などの気相堆積法によって得られる金属層とほぼ同様に機能させることができる。
加えて、この場合、反射層14として金属層を使用した場合と比較して、複屈折性層13と反射層14との接触部及び/又は反射層14と接着層15との接触部においてより高い層間接着強さを達成できる。即ち、この場合、反射層14として金属層を使用した場合と比較して、複屈折性層13と反射層14との界面及び/又は反射層14と接着層15との界面における剥離を生じ難くすることができる。
また、アルミニウムなどの金属は、アルカリ溶液に可溶である。そのため、反射層14として金属層を使用した場合は、その端面から金属が溶解する可能性がある。これに対し、反射層14として光透過性樹脂と金属粒子とを含んだ混合物からなる層を使用した場合、金属粒子の溶解は樹脂によって防止される。即ち、光透過性樹脂と金属粒子とを含んだ混合物からなる反射層14は劣化を生じ難い。
しかも、光透過性樹脂と金属粒子とを含んだ混合物からなる反射層14は、例えば、金属粒子の粒径、形状及び含有率の少なくとも1つを変更すると、その光散乱能が変化する。
反射層14として金属層を使用する代わりに、上記の光透過性樹脂と非金属粒子とを含んだ混合物からなる層を使用していてもよい。この場合、反射層14として光透過性樹脂と金属粒子とを含んだ混合物からなる層を使用した場合と同様に、複屈折性層13と反射層14との界面及び/又は反射層14と接着層15との界面における剥離を生じ難くすることができる。また、この場合、反射層14として光透過性樹脂と金属粒子とを含んだ混合物からなる層を使用した場合と比較して、より高い光散乱性を達成できる。非金属粒子の材料としては、例えば、シリカなどの無機材料又はアクリル樹脂などの有機材料を使用することができる。
接着層15は、反射層14を被覆している。接着層15は、セキュリティデバイス10を物品に貼り付けるために使用する。接着層15の材料としては、例えば、感熱接着剤及び感圧接着剤などの接着剤として使用可能な樹脂を使用することができる。
このセキュリティデバイス10では、互いに接触した2つの層から各々がなる複数の接触部のうち、複屈折性層13と隣接層である配向層12との接触部は、残りの接触部と比較して層間接着強さがより低い。即ち、複屈折性層13と配向層12との接触部は、基材11と配向層12との接触部、配向層12と密着性パターン16との接触部、密着性パターン16と複屈折性層13との接触部、複屈折性層13と反射層14との接触部、及び反射層14と接着層15との接触部と比較して層間接着強さがより低い。
また、接着層15の或る物品に対する接着強さは、その物品の表面を構成している材料に依存するが、通常、セキュリティデバイス10を貼り付けるべき表面には、高い接着強さを達成可能な材料が選択される。従って、複屈折性層13と配向層12との接触部における層間接着強さは、セキュリティデバイス10が貼り付けられた物品に対する接着層15の接着強さと比較してより低い。
なお、一般に、固化した液晶材料からなる複屈折性層は、他の層との密着性が低い。それゆえ、そのような複屈折性層を含んだ多層構造は、複屈折性層とこれに隣接した層との界面で層間剥離を生じ易い。このセキュリティデバイス10では、密着性パターン16を設けることによって、密着性パターン16の位置における複屈折性層13と配向層12との層間剥離を生じ難くしている。
次に、このセキュリティデバイス10に白色光を照射し、これを肉眼で観察した場合に見える像について説明する。また、ここでは、一例として、配向層12と密着性パターン16とは光学的に等価であるとする。また、上記の通り、ここでは、一例として、反射層14は、光透過性樹脂と金属粒子とを含んだ混合物からなり、光散乱性を有しているとしている。なお、白色光とは、可視領域内の全ての波長の非偏光からなる光である。
図3は、図1及び図2に示すセキュリティデバイスが表示する像の一例を示す平面図である。
セキュリティデバイス10に略正面方向から白色光を照射し、これを正面から肉眼で観察した場合、図3に示すように、表示部100a乃至100cは互いからの判別が不可能又は困難である。これについて、より詳細に説明する。
表示部100aに入射した照明光としての白色光は、図2に示す基材11を透過する。基材11を透過した白色光の一部は、配向層12及び密着性パターン16をこの順に透過して下地面に入射する。基材11を透過した白色光の残部は、配向層12を透過し、密着性パターン16に入射することなしに下地面に入射する。
領域Aaに設けられた溝は、回折格子を構成している。従って、これら入射光の一部は、回折光として複屈折性部分130aに入射する。
複屈折性部分130aを透過した回折光は、反射層14によって反射される。反射層14は光散乱性を有しているので、この反射光は散乱光である。
この散乱光は、複屈折性部分130aを透過する。領域Aaには回折格子が設けられているが、反射層14からの反射光が散乱光であるのに加え、通常の環境中では照明光の入射角も様々である。それゆえ、反射層14からの反射光は、散乱光として密着性パターン16及び配向層12をこの順に透過するか又は配向層12を透過し、次いで、基材11を透過する。観察者は、これら散乱光を表示光として知覚する。従って、表示部100aは銀白色に見える。
なお、上記の通り、配向層16と密着性パターン16とは光学的に等価である。従って、表示部100aのうち密着性パターン16に対応した部分と他の部分とは同じ色に見える。
表示部100bと表示部100aとは、その平面形状を除き、回折格子を構成している溝の長さ方向のみが異なっている。先の説明から明らかなように、表示部100aを肉眼で観察した場合、回折格子は表示色や明るさに影響を与えない。従って、表示部100bも銀白色に見える。
表示部100cは、その平面形状を除き、下地面に溝が設けられておらず、メソゲンが配向していない点でのみ、表示部100aとは異なっている。先の説明から明らかなように、表示部100aを肉眼で観察した場合、回折格子は表示色や明るさに影響を与えない。従って、表示部100cも銀白色に見える。
このように、表示部100a乃至100cは銀白色に見える。そして、表示部100a乃至100cは、明るさがほぼ等しい。従って、セキュリティデバイス10に白色光を照射し、これを正面から肉眼で観察した場合、図3に示すように、表示部100a乃至100cは、互いからの判別が不可能又は困難である。
なお、セキュリティデバイス10に白色光を照射し、これを肉眼で観察する場合、表示部100a乃至100cの表示色は、観察角度を変化させても銀白色のまま変化しない。また、観察角度を傾けたまま、セキュリティデバイス10をその法線の周りで回転させても、表示部100a乃至100cの表示色は銀白色のまま変化しない。
次に、偏光子を介してセキュリティデバイス10を観察した場合に見える像について説明する。ここでは、一例として、偏光子として直線偏光フィルムを使用することとする。
図4は、図1及び図2に示すセキュリティデバイスと直線偏光フィルムとを重ねた場合に観察可能な像の一例を概略的に示す平面図である。
図4では、図1及び図2に示すセキュリティデバイス10と吸収型の直線偏光フィルム50とを、偏光フィルム50側からセキュリティデバイス10を見た場合に、偏光フィルム50の透過軸がX方向に対して反時計回りに45°の角度を為すように重ねている。このような配置を採用し、これを正面から観察すると、図4に示すように、表示部100a及び100bは、表示部100cからの判別が容易であり、互いからの判別が不可能又は困難である。これについて、より詳細に説明する。
直線偏光フィルム50に照明光として白色光を照射すると、直線偏光フィルム50は、その透過軸に平行な偏光面(電場ベクトルの振動面)を有する直線偏光を透過させ、その透過軸に垂直な偏光面を有する直線偏光を吸収する。
表示部100aに入射した直線偏光は、図2に示す基材11を透過する。基材11を透過した直線偏光の一部は、配向層12及び密着性パターン16をこの順に透過して下地面に入射する。基材11を透過した直線偏光の残部は、配向層12を透過し、密着性パターン16に入射することなしに下地面に入射する。
領域Aaに設けられた溝は、回折格子を構成している。従って、これら直線偏光の一部は、回折光として複屈折性部分130aに入射する。
複屈折性部分130aでは、メソゲン基はX方向と略平行に配向している。即ち、偏光フィルム50側から見て、複屈折性部分130aの遅相軸は、偏光フィルム50の透過軸に対して時計回りに45°回転させた方向に平行である。そして、この入射光は、散乱光であるので、正面方向へ進行する光成分と、斜め方向へ進行する光成分とを含んでいる。従って、例えば、先の直線偏光は、複屈折性部分130aの複屈折性と光路長とに応じて、円偏光、楕円偏光又は直線偏光へと変換される。ここでは、複屈折性部分130aが射出した光のうち、左円偏光及び左楕円偏光についてのみ説明する。
これら左円偏光及び左楕円偏光は、反射層14によって反射される。左円偏光及び左楕円偏光は、それぞれ、反射層14によって反射されることにより、右円偏光及び右楕円偏光へと変換される。また、反射層14は光散乱性を有しているので、この反射光は散乱光である。
この散乱光としての右円偏光及び右楕円偏光は、複屈折性部分130aに入射する。この入射光は、散乱光であるので、正面方向へ進行する光成分と、斜め方向へ進行する光成分とを含んでいる。正面方向へ進行する光成分のうち、特定波長λ0の右円偏光は、複屈折性部分130aを透過することにより偏光面が偏光フィルム50の透過軸に対して垂直な直線偏光へと変換される。そして、残りの光成分は、複屈折性部分130aを透過することにより、左楕円偏光若しくは左円偏光又は右楕円偏光若しくは円偏光へと変換される。
複屈折性部分130aが射出した反射層14からの反射光の一部は、密着性パターン16と配向層12と基材11とをこの順に透過する。複屈折性部分130aが射出した反射層14からの反射光の残部は、配向層12と基材11とをこの順に透過する。配向層12の背面には回折格子が設けられているが、反射層14からの反射光が散乱光であるのに加え、通常の環境中では照明光の入射角も様々である。それゆえ、反射層14からの反射光は、散乱光として基材11から射出される。
これから明らかなように、偏光フィルム50の透過軸に対して平行な偏光面を有する光成分のみに着目した場合、表示部100aに入射する光成分の強度に対する表示部100aが射出する光成分の強度の比は、波長依存性を有することとなる。換言すれば、偏光フィルム50に入射する照明光の強度に対する偏光フィルム50が射出する表示光の強度の比は、波長依存性を有することとなる。従って、表示部101は、着色して見える。なお、表示部100aが着色して見える理由については、後で数式を参照しながら説明する。
表示部100bと表示部100aとは、その平面形状を除き、回折格子を構成している溝の長さ方向が90°異なっている点でのみ相違している。それゆえ、表示部100bは、円偏光又は楕円偏光の偏光面の回転方向が逆であること以外は、表示部100aについて説明したのと同様に振舞う。従って、表示部100bは、表示部100aと同様に着色して見える。
表示部100cは、その平面形状を除き、密着性パターン16を含んでおらず、配向層12に溝が設けられておらず、メソゲンが配向していない点でのみ、表示部100aとは異なっている。従って、表示部100cが射出する光は、理想的には、偏光フィルム50によって吸収されることなく、偏光フィルム50を透過する。それゆえ、表示部100cは、銀白色に見える。
このように、表示部100a及び100bは着色して見え、表示部100cは銀白色に見える。そして、表示部100a及び100bは、明るさがほぼ等しい。従って、セキュリティデバイス10に偏光フィルム50を重ね、これに白色光を照射して正面から観察した場合、図4に示すように、表示部100a及び100bは、表示部100cからの判別が容易であり、互いからの判別が不可能又は困難である。
ここで、表示部100aが着色して見える理由について、数式を参照しながら説明する。なお、複屈折性部分130aは、波長λ0の光に対して四分の一波長板としての役割を果たすとする。
偏光フィルム50が法線方向に射出した波長λ0の直線偏光は、偏光面がX方向に垂直な直線偏光成分と偏光面がY方向に垂直な直線偏光成分との和であると考えることができる。上記の通り、複屈折性部分130aのX方向についての屈折率は異常光線屈折率neであり、Y方向についての屈折率は常光線屈折率noである。従って、複屈折性部分130aは、これら直線偏光成分に、往路と復路との各々でλ0/4の位相差を与える。即ち、複屈折性部分130aは、これら直線偏光成分に合計でλ0/2の位相差を与える。そのため、表示部100aが法線方向に射出する波長λ0の光は、偏光フィルム50を透過できない。
ところで、リターデイションReは、下記等式(1)に示すように、複屈折性層の膜厚dとその複屈折性Δnとに依存する。
Re=Δn×d …(1)
ここで、Δn=ne−noである。
一対の直線偏光フィルムをそれらの透過軸が直交するように向かい合わせ、それらの間に複屈折性層をその光学軸が直線偏光フィルムの透過軸に対して角度θを為すように介在させる。一方の直線偏光フィルムをその法線方向から波長λの光で照明した場合、複屈折性層に入射する光の強度をI0とし、他方の直線偏光フィルムを透過する光の強度をIとすると、強度Iは、下記等式(2)で表すことができる。
I=I0×sin2(2θ)×sin2(Re×π/λ) …(2)
複屈折性Δnは波長依存性を有しており、複屈折性Δnと波長nとは比例関係にはない。それゆえ、等式(2)から明らかなように、透過光のスペクトルは、入射光のスペクトルとは異なるプロファイルを有することとなる。
このように、複屈折性層を一対の直線偏光フィルムで挟むと、入射光とはスペクトルのプロファイルが異なる透過光を得ることができる。これと同様に、複屈折性層を直線偏光フィルムと反射層とで挟んだ場合にも、入射光とはスペクトルのプロファイルが異なる反射光を得ることができる。このような理由で、表示部100aは着色して見える。
図5は、図1及び図2に示すセキュリティデバイスが表示する像の他の例を示す斜視図である。
図5に示すように、図4に示す状態から観察方向をX方向に垂直な面内で傾けると、表示部100a及び100bの表示色が互いに異なる色へと変化する。その結果、表示部100a及び100bの互いからの判別が容易になる。例えば、法線方向から観察した場合に表示部100a及び100bはオレンジ色に見えていたとすると、観察方向をX方向に垂直な面内で傾けることにより、表示部100aは赤色へと変化し、表示部100bは緑色へと変化する。表示部100a及び100bで生じる色変化の理由を以下に説明する。
観察角度θを傾けると、複屈折性層の実効的な複屈折性Δn’が複屈折性Δnから変化するのに加え、以下の等式(3)に示す複屈折性層の実効的な膜厚d’が複屈折性層の実際の膜厚dの2倍よりも大きくなる。
d’=2d/cosθ …(3)
即ち、観察角度に応じて、上記等式(1)に示すリターデイションReが変化し、それゆえ、上記等式(2)に示す強度Iが変化する。その結果、観察角度に応じて、表示光のスペクトルのプロファイルが変化する。
複屈折性Δn’は、照明光の入射角と、照明光の伝搬方向に平行な直線の複屈折性層主面上への投影が複屈折性層の光学軸に対して為す角度とに依存する。具体的には、複屈折性部分130aの複屈折性Δn’は、その光学軸はX方向と平行であるので、観察方向をX方向に垂直な面内で傾けても変化しない。これに対し、複屈折性部分130bの複屈折性Δn’は、その光学軸はY方向に平行であるので、観察方向をX方向に垂直な面内で傾けるのに伴って変化する。
このように、表示部100aは、観察方向をX方向に垂直な面内で傾けた場合、実効的な膜厚d’の変化に起因した色変化を生じる。これに対し、表示部100bは、観察方向をX方向に垂直な面内で傾けた場合、実効的な膜厚d’の変化と実効的な複屈折性Δn’の変化とに起因した色変化を生じる。このため、観察方向をX方向に垂直な面内で傾けると、表示部100a及び100bの表示色は互いに異なる色へと変化し、その結果、表示部100a及び100bの互いからの判別が容易になる。
図6は、図1及び図2に示すセキュリティデバイスが表示する像の更に他の例を示す斜視図である。
図6には、図5に示す状態から、セキュリティデバイス10を偏光フィルム50と重ねたまま、その法線の周りで90°回転させた場合に観察可能な像を描いている。
表示部100a及び100bは、この回転角を変化させると、回折格子の実効的な格子定数が変化する。そして、観察方向を斜めとしたまま、セキュリティデバイス10を偏光フィルム50と共にその法線の周りで90°回転させると、表示部100aと表示部100bとの間で表示色が入れ替わる。なお、図6を参照しながら説明した色変化は、図5に示す状態から、セキュリティデバイス10のみをその法線の周りで90°回転させた場合にも生じる。
このセキュリティデバイス10は、様々なラベル付き物品において使用することができる。
図7は、ラベル付き物品の一例を概略的に示す平面図である。
このラベル付き物品は、ID(identification)カードである。このラベル付き物品は、セキュリティデバイス10と、これを支持した物品30とを含んでいる。
物品30は、カードである。この物品30は、カード基材31と印刷層32a及び32bとを含んでいる。カード基材31は、例えば、プラスチックからなる。印刷層32a及び32bは、カード基材31上に形成されている。セキュリティデバイス10は、カード基材31に貼り付けられている。
IDカードは、上述したセキュリティデバイス10を含んでいる。それゆえ、このIDカードの偽造は困難である。また、このIDカードは、セキュリティデバイス10を含んでいるので、真正品であるかが不明の物品を真正品と非真正品との間で判別することも容易である。しかも、このIDカードは、セキュリティデバイス10に加えて、印刷層32a及び32bを更に含んでいるため、それらを利用した偽造防止対策を採用することができる。
なお、図7には、ラベル付き物品としてIDカードを例示しているが、ラベル付き物品は、これに限られない。例えば、ラベル付き物品は、IC(integrated circuit)カード、磁気カード及び無線カードなどの他のカードであってもよい。或いは、ラベル付き物品は、商品券及び株券などの有価証券であってもよい。或いは、ラベル付き物品は、紙幣又は預金若しくは貯金通帳であってもよい。このように、セキュリティデバイス10は、様々な印刷物に適用することができる。
また、ラベル付き物品は、印刷物でなくてもよい。即ち、印刷層を含んでいない物品にセキュリティデバイス10を支持させてもよい。例えば、セキュリティデバイス10は、美術品などの高級品に支持させてもよい。
このセキュリティデバイス10は、物品30から剥離しようとした場合に、以下に説明する破壊を生じる。
図8は、破壊されたセキュリティデバイスの一例を概略的に示す断面図である。
図1及び図2を参照しながら説明した通り、このセキュリティデバイス10では、互いに接触した2つの層から各々がなる複数の接触部のうち、隣接層と複屈折性層13の接触部は、残りの接触部と比較して層間接着強さがより低い。この例では、配向層12と複屈折性層13との接触部は、残りの接触部と比較して層間接着強さがより低い。
従って、セキュリティデバイス10を物品30から剥離しようとすると、配向層12と複屈折性層13との界面で層間剥離を生じる。即ち、セキュリティデバイス10を物品30から剥離しようとすると、セキュリティデバイス10が破壊される。このような破壊を生じたセキュリティデバイス10は、不正行為が行われたことを容易に認識できる。
また、このとき、先の層間剥離に伴って、例えば、複屈折性層13と反射層14とが、図8に示すように密着性パターン16の輪郭に沿って破断し得る。このような破断を生じたセキュリティデバイス10は、不正行為が行われたことを更に容易に認識できる。
従って、このセキュリティデバイス10は、高い偽造防止効果を達成する。
図1及び図2に示すセキュリティデバイス10には、様々な変形が可能である。
図9は、図1及び図2に示すセキュリティデバイスの一変形例を概略的に示す断面図である。図9に示すセキュリティデバイス10は、密着性パターン16が複屈折性層13と反射層14との間に介在していること以外は、図1乃至図6を参照しながら説明したセキュリティデバイス10と同様である。
このセキュリティデバイス10では、反射層14が隣接層である。即ち、互いに接触した2つの層から各々がなる複数の接触部のうち、反射層14と複屈折性層13との接触部は、残りの接触部と比較して層間接着強さがより低い。
従って、このセキュリティデバイス10を物品30に貼り付けてなるラベル付き物品は、セキュリティデバイス10を物品30から剥離しようとすると、反射層14と複屈折性層13との界面で層間剥離を生じる。そして、この層間剥離に伴って、例えば、反射層14が密着性パターン16の輪郭に沿って破断し得る。
図10は、図1及び図2に示すセキュリティデバイスの他の変形例を概略的に示す断面図である。図10に示すセキュリティデバイス10は、以下の構成を採用したこと以外は、図1乃至図6を参照しながら説明したセキュリティデバイス10と同様である。
即ち、このセキュリティデバイス10では、領域Aaと領域Abとで溝の長さ方向を等しくし、基材11に対する下地面の高さを配向層12の領域Aaに対応した部分と領域Abに対応した部分とで異ならしめている。換言すれば、複屈折性部130aと複屈折性部130bとでメソゲンの配向方向を等しくし、複屈折性部130aと複屈折性部130bとでリターデイションを異ならしめている。
このような構造を採用した場合、反射層13の散乱能が小さくても、表示部100a及び100bは、肉眼で観察したときに同じ色に見える。そして、偏光フィルム50を介して観察した場合には、表示部100a及び100bを互いから容易に判別できる。
また、このセキュリティデバイス10を物品30に貼り付けてなるラベル付き物品は、セキュリティデバイス10を物品30から剥離しようとすると、図8を参照しながら説明したのと同様に、配向層12と複屈折性層13との界面で層間剥離を生じる。そして、この層間剥離に伴って、複屈折性層13と反射層14とが密着性パターン16の輪郭に沿って破断し得る。
図11は、図1及び図2に示すセキュリティデバイスの更に他の変形例を概略的に示す断面図である。図12は、破壊されたセキュリティデバイスの他の例を概略的に示す断面図である。
図11に示すセキュリティデバイス10は、以下の構成を採用したこと以外は、図1乃至図6を参照しながら説明したセキュリティデバイス10と同様である。
即ち、このセキュリティデバイス10では、反射層14を省略している。そして、このセキュリティデバイス10は、着色層17を更に含んでいる。このセキュリティデバイス10によると、透過型の表示が可能である。
着色層17は、複屈折性層13と接着層15との間に介在している。そして、着色層17は、領域Abと向き合っている。着色層17を設けると、セキュリティデバイス10の意匠性を向上させることができる。
また、このセキュリティデバイス10を物品30に貼り付けてなるラベル付き物品は、セキュリティデバイス10を物品30から剥離しようとすると、図8を参照しながら説明したのと同様に、例えば、配向層12と複屈折性層13との界面で層間剥離を生じる。そして、この層間剥離に伴って、例えば、図12に示す破断を生じ得る。
着色層17が密着性パターン16と接着層15との間に介在しており且つ着色層17が密着性パターン16と向き合った部分と密着性パターン16と向き合っていない部分とを含んでいる場合、着色層17が破断し得る。この場合、着色層17のうちの一部のみが剥離したセキュリティデバイス10に残留する。それゆえ、このような破壊を生じたセキュリティデバイス10は、不正行為が行われたことを比較的容易に認識できる。
なお、透過型の表示を行う場合、セキュリティデバイス10を貼り付ける物品は、光透過部を含んでいる必要がある。光透過部は、光学的に異方性であってもよいが、典型的には光学的に等方性である。
この光透過部の材料としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂、セルロース樹脂、アセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、オレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂又はメラミン樹脂を使用することができる。この光透過部の材料として、ガラス及び石英などの無機材料を使用してもよい。
液晶材料としてネマチック液晶材料を使用する代わりに、コレステリック液晶材料を使用してもよい。コレステリック液晶材料を使用した場合、選択反射性及び円偏光選択性を利用した表示が可能である。
選択反射性とは、コレステリック液晶材料が入射光のうち特定の波長帯にある光を強く反射する性質である。コレステリック液晶材料が選択反射を生じる波長帯の中心波長λsと、コレステリック液晶材料が選択反射を生じる波長帯幅Δλとは、コレステリック液晶材料の平均屈折率をnmとすると、それぞれ下記等式(4)及び(5)によって与えられる。
λs=nm×P …(4)
Δλ=Δn×P/nm …(5)
ここで、平均屈折率nmは[(no 2+ne 2)/2]1/2であり、Δnはne−noである。
等式(4)及び(5)から明らかなように、中心波長λs及び波長帯幅Δλは、螺旋ピッチPに依存している。従って、螺旋ピッチPを適切に設定することにより、色純度が高い反射光を得ることができる。
なお、等式(4)及び(5)は、メソゲンが形成している螺旋構造の螺旋軸に対して平行な方向から光を照射する場合に適用可能である。光の入射方向を螺旋軸に対して傾けると、見かけ上の螺旋ピッチPが大きくなる。その結果、中心波長λsは短波長側へシフトし、波長帯幅Δλは狭くなる。従って、観察方向と螺旋軸とが為す角度を大きくすると、表示色は短波長側へとシフトする。
円偏光選択性とは、コレステリック液晶材料が、右円偏光及び左円偏光の一方のみを反射し、他方を透過させる性質である。例えば、コレステリック液晶材料のメソゲンが形成している螺旋構造が右回りである場合、このコレステリック液晶材料は、右円偏光のみを反射し、左円偏光を透過させる。なお、このときの反射光は右円偏光である。
このように、液晶材料としてネマチック液晶材料を使用する代わりに、コレステリック液晶材料を使用すると、選択反射性及び円偏光選択性を表示に利用することができる。例えば、図11を参照しながら説明したセキュリティデバイス10において、液晶材料としてコレステリック液晶材料を使用すると、透過光の色と反射光の色との相違を利用した真偽判定が可能である。即ち、この場合、真偽判定に偏光子を使用する必要がない。なお、図11を参照しながら説明したセキュリティデバイス10において、液晶材料としてコレステリック液晶材料を使用した場合、偏光子を用いて真偽判定を行ってもよい。
コレステリック液晶材料を使用する場合、螺旋ピッチPは、例えば可視光域内とする。一般に、螺旋ピッチPが380nm乃至780nmの範囲内にある場合、目視による真偽判定が可能である。そして、一般に、螺旋ピッチPが400nm乃至700nmの範囲内にある場合、目視による真偽判定が容易である。
コレステリック液晶材料を使用する場合、複屈折性層13は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。後者の場合、螺旋ピッチPが異なる複数の層を積層することにより、肉眼で観察したときに、例えば、単層構造では表現できない色調を表現することが可能となる。そして、円偏光子を用いて観察したときには、この円偏光子の特徴、例えば、この円偏光子が透過させる円偏光の設計波長及びその電場ベクトルの回転方向に応じて、異なる色を表示させることが可能である。
コレステリック液晶材料を使用する場合、複屈折性層13は、右円偏光を選択反射する複屈折性部分と、左円偏光を選択反射する複屈折性部分とを含んでいてもよい。前者における螺旋ピッチPと後者における螺旋ピッチPとが互いに等しい場合、それら複屈折性部分に対応した表示部を、肉眼で互いから判別することは不可能又は困難である。そして、この場合、それら複屈折性部分に対応した表示部は、円偏光子を用いて観察することにより、互いから判別することが容易になる。
また、コレステリック液晶材料を使用する場合、多層構造は黒色層又は着色層を含んでいてもよい。黒色層又は着色層を設けることにより、鮮明な像を得ることができることができる。
以下に、当初の特許請求の範囲に記載していた発明を付記する。
[1]固化した液晶材料からなる複屈折性層と、一方の主面が前記複屈折性層の一部と接触した密着性パターンと、一部が前記密着性パターンの他方の主面と接触し、他の一部が前記複屈折性層と接触した隣接層とを含んだ3層以上の多層構造を有し、前記多層構造において、互いに接触した2つの層から各々がなる複数の接触部のうち、前記複屈折性層と前記隣接層とを含んだ接触部は、残りの接触部と比較して前記2つの層の層間接着強さがより低いことを特徴とするセキュリティデバイス。
[2]前記多層構造は反射層を含んでいることを特徴とする項1に記載のセキュリティデバイス。
[3]前記反射層は光透過性樹脂と金属粒子とを含んだ混合物からなることを特徴とする項2に記載のセキュリティデバイス。
[4]前記多層構造は黒色層又は着色層を含んでいることを特徴とする項1に記載のセキュリティデバイス。
[5]前記多層構造は前記セキュリティデバイスを物品に貼り付けるための接着層を含んでいることを特徴とする項1乃至4の何れか1項に記載のセキュリティデバイス。
[6]項1乃至5の何れか1項に記載のセキュリティデバイスと、前記セキュリティデバイスを支持した物品とを具備したことを特徴とするラベル付き物品。
10…セキュリティデバイス、11…基材、12…配向層、13…複屈折性層、14…反射層、15…接着層、16…密着性パターン、17…着色層、30…物品、31…カード基材、32a…印刷層、32b…印刷層、100a…表示部、100b…表示部、100c…表示部、Aa…領域、Ab…領域、Ac…領域、130a…部分、130b…部分、130c…部分。