JP5343373B2 - セキュリティデバイス及びラベル付き物品 - Google Patents

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Description

本発明は、偽造防止技術に関する。
偽造防止には、潜像を利用することがある。潜像は、例えば、万線モアレ又は凹版印刷を利用して形成することができる。
万線モアレを利用した潜像は、潜像とすべき像と、高密度に配列した多数の線とを重ねることにより得られる。この像は、肉眼で観察した場合には多数の線が識別を困難とし、それら線を隠すことにより識別が容易になる。
凹版印刷を利用した潜像は、インキ層に凹パターン及び/又は凸パターンを設けることにより得られる。凹パターン及び/又は凸パターンが形成している像は、正面から観察した場合には識別が困難であり、斜めから観察することにより可視化する。
万線モアレ又は凹版印刷を利用した偽造防止技術は、真偽判定が比較的容易である。しかしながら、これらの方法で形成した像は、肉眼で観察した場合に識別が不可能な訳ではない。そのため、これら潜像は、それ自体の存在を悟られ易い。
潜像は、蛍光インキ及び赤外線吸収インキなどの特殊インキを使用して形成することもできる。蛍光インキは、紫外線を照射することにより発光するインキであって、これを用いて形成した潜像は、紫外線照射により可視化する。赤外線吸収インキは、赤外線吸収率が高いインキであって、これを用いて形成した潜像は、例えば、赤外線カメラで観察することにより可視化する。
特殊インキを使用して形成した潜像は、それ自体の存在を悟られ難い。しかしながら、その可視化には、紫外線ランプ又は赤外線カメラなどの装置が必要である。
潜像は、液晶材料を使用して形成することもできる。例えば、光反射性を有する基材上に、高分子液晶材料などの固化した液晶材料からなる薄膜を形成する。液晶分子のメソゲン基は、例えば、薄膜の下地にラビング処理又は光配向処理などの配向処理を施しておくことにより、略一方向に配向させる。
このようにして形成したパターンは、肉眼で観察した場合には、光学的に等方性の層と同様に見える。それゆえ、このパターンで潜像を構成することができる。そして、このパターンを形成した薄膜は位相差層として機能するので、偏光子を介して観察した場合には、その遅相軸と偏光子の光透過軸とが為す角度に応じた明るさの変化を生じる。即ち、この薄膜に形成された潜像は、偏光子を介して観察することにより可視化する。
液晶材料を使用して形成した潜像は、それ自体の存在が悟られ難い。加えて、この潜像は、偏光フィルムなどの偏光子で可視化することができ、大きな装置は不要である。そのため、液晶材料を使用した偽造防止技術は、高い関心を集めている。例えば、特許文献1には、ホログラムなどのOVD(optically variable device)層と高分子液晶材料からなる潜像形成層とを積層することが記載されている。
しかしながら、潜像の形成に利用する液晶材料は高価である。それゆえ、液晶材料を使用して潜像を形成する偽造防止技術には、コストの点で改善の余地がある。
特開2001−63300号公報
本発明の目的は、液晶材料を使用して潜像を形成する偽造防止技術において低コストを実現可能とすることにある。
本発明の第1側面によると、液晶材料を固化してなる複屈折性層と、前記複屈折性層と向き合い、光透過性樹脂と金属粒子とを含んだ混合物からなる反射層とを具備し、前記反射層は前記複屈折性層と接触しており、前記反射層の前記複屈折性層と向き合った主面は1つ以上の配向領域を含み、前記1つ以上の配向領域の各々には、長さ方向が揃い且つ前記長さ方向と交差する方向に隣り合った複数の溝が設けられており、前記複屈折性層の前記配向領域と向き合った主面には前記複数の溝に対応したレリーフ構造が設けられていることを特徴とするセキュリティデバイスが提供される。
本発明の第2側面によると、第1側面に係るセキュリティデバイスと、前記セキュリティデバイスを支持した物品とを具備したことを特徴とするラベル付き物品が提供される。
本発明によると、液晶材料を使用して潜像を形成する偽造防止技術において低コストを実現することが可能となる。
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は、本発明の第1態様に係るセキュリティデバイスを概略的に示す平面図である。図2は、図1に示すセキュリティデバイスのII−II線に沿った断面図である。
なお、図1では、セキュリティデバイス10をその表示面側から観察した様子を描いている。また、図1及び図2では、表示面に平行であり且つ互いに直交する方向をX方向及びY方向とし、表示面に垂直な方向をZ方向としている。
図1及び図2に示すセキュリティデバイス10は、真正品であることが確認されるべき物品に支持させる表示体である。このセキュリティデバイス10は、配向層11と複屈折性層12と反射層13とを含んでいる。セキュリティデバイス10の前面は、配向層12側の面である。
配向層11は、光透過性の層である。典型的には、配向層11は、透明であり、光学的に等方性である。
配向層11の材料としては、例えば樹脂を使用することができる。この樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂、セルロース樹脂、アセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、オレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂又はメラミン樹脂を使用することができる。
配向層11の一方の主面は、配向領域110a及び110bを含んでいる。領域110aは、星形状を有している。領域110bは、領域110aを取り囲んでいる。以下、セキュリティデバイス10のうち領域110a及び110bに対応した部分を、それぞれ表示部100a及び100bと呼ぶ。また、複屈折性層12のうち領域110a及び110bに対応した部分を、それぞれ複屈折性部分120a及び120bと呼ぶ。
領域110a及び110bの各々には、長さ方向が揃い且つこの長さ方向と交差する方向に隣り合った複数の溝が設けられている。領域110aに設けられている溝と、領域110bに設けられている溝とは、それらの長さ方向が互いに異なっている。ここでは、一例として、領域110aに設けられている溝の長さ方向はX方向に平行であり、領域110bに設けられている溝の長さ方向はY方向に平行であるとする。そして、ここでは、一例として、配向層11のうち領域110aに対応した部分と領域110bに対応した部分とは、Z方向から見た形状及び溝の長さ方向が異なっていること以外は同様であるとする。
領域110a及び110bには、様々な構造を採用することができる。例えば、領域110a及び110bの各々には、複数の溝を幅方向に等間隔で平行に並べた構造を採用することができる。
領域110a及び110bの各々において、これら溝は、互いに平行でなくてもよい。但し、これらの溝が平行に近いほど、領域110a及び110bに対応した複屈折性層12の各々の部分において、メソゲンの長軸が揃い易くなる。これらの溝が為す角度は、例えば5°以下とし、好ましくは3°以下とする。
領域110a及び110bの各々において、これら溝は、縦横に並べてもよい。また、溝の長さは、互いに等しくてもよく、互いに異なっていてもよい。また、長さ方向に隣り合う溝間の距離は均一であってもよく、不均一であってもよい。更に、幅方向に隣り合う溝間の距離は均一であってもよく、不均一であってもよい。
例えば、領域110a及び110bの各々には、互いに長さが等しい溝を縦横に並べてもよい。溝を略平行とし且つピッチを適宜設定することなどにより、これら溝で回折格子を構成することができる。
或いは、領域110a及び110bの各々には、様々な長さの溝をランダムに並べてもよい。この場合、これら溝で一方向性拡散パターンを形成することができる。なお、この一方向性拡散パターンは、溝の長さ方向に垂直な面内での拡散能が、Z方向及び溝の長さ方向に平行な面内での拡散能と比較してより大きい光拡散特性、即ち、光散乱異方性を示すパターンである。ここでは、一例として、領域110a及び110bの各々に設けられた溝は、回折格子を構成していることとする。
配向層11は、例えば、感光性樹脂材料に、二光束干渉法を用いてホログラムパターンを記録する方法や、電子ビームによってパターンを描画する方法により形成することができる。或いは、表面レリーフ型ホログラムの製造で行われているように、微細な線状の凸部を設けた金型を樹脂に押し付けることにより形成することができる。例えば、配向層11は、基材上に形成された熱可塑性樹脂層に、線状の凸部が設けられた原版を、熱を印加しながら押し当てる方法、即ち、熱エンボス加工法により得られる。或いは、配向層11は、光透過性基材上に紫外線硬化樹脂を塗布し、これに原版を押し当てながら基材側から紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させ、その後、原版を取り除く方法により形成することも可能である。
なお、通常は、原版の凹凸構造を転写して反転版を製造し、この反転版の凹凸構造を転写して複製版を製造する。そして、必要に応じ、複製版を原版として用いて反転版を製造と、この反転版の凹凸構造を転写して複製版を更に製造する。実際の製造では、通常、このようにして得られる複製版を使用する。
これらの方法によれば、1つの面内に、溝の長さ方向、ピッチ、深さ、幅及び長さの少なくとも1つが異なる複数の配向領域を形成することができる。
先の原版は、例えば、二光束干渉法を用いてホログラムパターンを記録する方法、電子ビームによってパターンを描画する方法、又はバイトによって切削する方法により得られた母型の電鋳を行うことにより得られる。配向層に上記のような多様性をもたせない場合は、ラビング加工により溝を形成してもよい。
これら溝の深さは、例えば0.05μm乃至1μmの範囲とし、典型的には1μm乃至1μmの範囲とする。また、溝の長さは、例えば0.1μm乃至1μmの範囲内とし、典型的には0.5μm乃至1μmの範囲内とする。溝のピッチは、例えば0.1μm以上であり、典型的には0.75μm以上である。また、溝のピッチは、例えば10μm以下であり、典型的には2μm以下である。メソゲンを高い秩序度で配向させるには、溝のピッチは小さいことが有利である。
領域110aと領域110bとは、それらに設けられている溝のピッチ、幅及び深さの少なくも1つが更に異なっていてもよい。領域110aと領域110bとで溝のピッチ、幅及び深さの少なくも1つが更に異なっている場合、領域110aと領域110bとは、それらに設けられている溝の長さ方向が等しくてもよい。或いは、領域110a及び110bの一方から溝を省略してもよい。
配向層11のうち領域110aに対応した部分と領域110bに対応した部分とは、厚さが等しくてもよく、異なっていてもよい。配向層11に、領域110aに対応した部分と領域110bに対応した部分とで厚さが異なっている構造を採用した場合、複屈折性層12のうち領域110aに対応した部分と領域110bに対応した部分とで厚さを異ならしめることができる。即ち、複屈折性層12のうち領域110aに対応した部分と領域110bに対応した部分とでリターデイションを異ならしめることができる。なお、この場合、領域110a及び110bは、溝の構造及びそれらの配列構造が等しくてもよく、異なっていてもよい。
領域110a及び110bの一方は省略してもよい。即ち、配向層11の先の主面は、その全体に亘って均一な構造を有していてもよい。或いは、配向層11の先の主面は、領域110a及び110bに加え、他の配向領域を更に含んでいてもよい。
配向層11には、溝が設けられていなくてもよい。例えば、配向層11として、例えば、ラビング処理及び光配向処理などの配向処理が施された透明樹脂膜を使用してもよい。
複屈折性層12は、配向層11上に形成されている。複屈折性層12は、領域110a及び110bを被覆している。複屈折性層12の配向層11と向き合った主面には、上記の溝に対応したレリーフ構造が設けられている。
複屈折性層12は、液晶材料を固化してなる。この液晶材料は、例えばネマチック液晶材料である。
複屈折性層12のうち、領域110aを被覆している部分と、領域110bを被覆している部分とは、メソゲンの配向構造及び/又は配向方向が互いに異なっている。複屈折性層12のうち領域110aを被覆している部分では、メソゲンの配向方向は、領域110aに設けられている溝の長さ方向とほぼ平行である。複屈折性層12のうち領域110bを被覆している部分では、メソゲンの配向方向は、領域110bに設けられている溝の長さ方向とほぼ平行である。即ち、この例では、複屈折性層12のうち領域110aを被覆している部分では、メソゲンは、領域110aに設けられている溝の長さ方向はX方向に配向している。そして、複屈折性層12のうち領域110bを被覆している部分では、メソゲンはY方向に配向している。
反射層13は、複屈折性層12を被覆している。反射層13は、光透過性樹脂と金属粒子とを含んだ混合物からなる。金属粒子は、反射層13の全体に亘ってほぼ均一に分布している。
光透過性樹脂は、感熱接着剤及び感圧接着剤などの接着剤として使用可能な樹脂である。この光透過性樹脂としては、例えば、天然ゴム、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリエーテル、エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニル、クロロプレンゴム、シリコーン樹脂、ニトリルゴム、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリベンゾイミダゾール、メタクリル樹脂、メラミン樹脂、メラミン樹脂、レゾルシノール樹脂、又はそれらの1つ以上を含んだ混合物を使用することができる。
金属粒子は、金属又は合金からなる。この金属又は合金としては、例えば、アルミニウム、白金、金、銀、銅、チタン、ビスマス、ゲルマニウム、インジウム、錫、又はそれらの1つ以上を含んだ合金を使用することができる。これらの中でも、アルミニウムは、可視域、赤外域及び近紫外域の全体に亘って反射率が高い。しかも、アルミニウムは、酸化に対する耐性が高い。従って、金属粒子として、アルミニウム粒子を使用することが好ましい。
この反射層13は、偏光を照射した場合、この偏光を、その偏光性をほぼ維持したまま反射する。即ち、この反射層13は、例えば、真空蒸着法及びスパッタリング法などの気相堆積法によって得られる金属層とほぼ同様に機能させることができる。加えて、この反射層13は、接着層として使用することができる。それゆえ、このセキュリティデバイス10は、接着層を別途設けることなしに、物品に貼り付けることができる。即ち、反射層13に上述した構造を採用することにより、セキュリティデバイスの部品点数を低減することができる。従って、低コストを実現することができる。
また、この反射層13は、例えば、金属粒子の粒径、形状及び含有率の少なくとも1つを変更すると、その光散乱能が変化する。
また、一般に、液晶材料を固化してなる層は、他の層との密着性が低い。特に、液晶材料を固化してなる層と金属層との密着性は低く、それらは互いから容易に剥離する。上記の通り、この反射層13は、樹脂を含有している。樹脂層と液晶材料を固化してなる層との密着性は、金属層と液晶材料を固化してなる層との密着性と比較してより大きい。従って、このセキュリティデバイス10は、複屈折性層12と反射層13との界面における剥離を比較的生じ難い。
また、アルミニウムなどの金属は、アルカリ溶液に可溶である。そのため、反射層として金属層を使用したセキュリティデバイスは、その端面から金属が溶解する可能性がある。これに対し、この反射層13は、金属粒子と樹脂とを含んだ混合物からなるので、金属粒子の溶解は樹脂によって防止される。即ち、このセキュリティデバイス10は、反射層13の劣化を生じ難い。
次に、このセキュリティデバイス10に白色光を照射し、これを肉眼で観察した場合に見える像について説明する。なお、白色光とは、可視領域内の全ての波長の非偏光からなる光である。
セキュリティデバイス10に略正面方向から白色光を照射し、これを正面から肉眼で観察した場合、図1に示すように、表示部100a及び100bは互いからの判別が不可能又は困難である。これについて、より詳細に説明する。
表示部100aに入射した照明光としての白色光は、図2に示す配向層13に入射する。領域110aに設けられた溝は回折格子を構成しているので、この入射光の一部は、回折光として複屈折性部分120aに入射する。
複屈折性部分120aを透過した回折光は、反射層13によって反射される。反射層13は光散乱性を有しているので、この反射光は散乱光である。この散乱光は、複屈折性部分120aを透過する。配向層11の背面には回折格子が設けられているが、反射層13からの反射光が散乱光であるのに加え、通常の環境中では照明光の入射角も様々である。それゆえ、反射層13からの反射光は、散乱光として配向層11を透過する。観察者は、この散乱光を表示光として知覚する。従って、表示部100aは銀白色に見える。
表示部100aと表示部100bとは、その平面形状を除き、回折格子を構成している溝の長さ方向のみが異なっている。先の説明から明らかなように、表示部100aを肉眼で観察した場合、回折格子は表示色や明るさに影響を与えない。従って、表示部100bも銀白色に見える。
このように、表示部100a及び100bは、銀白色に見える。そして、表示部100a及び100bは、明るさがほぼ等しい。従って、セキュリティデバイス10に白色光を照射し、これを正面から肉眼で観察した場合、図1に示すように、表示部100a及び100bは、互いからの判別が不可能又は困難である。
なお、セキュリティデバイス10に白色光を照射し、これを肉眼で観察する場合、表示部100a及び100bの表示色は観察角度を変化させても銀白色のまま変化しない。そして、観察角度を傾けたまま、セキュリティデバイス10をその法線の周りで回転させても、表示部100a及び100bの表示色は銀白色のまま変化しない。
次に、偏光子を介してセキュリティデバイス10を観察した場合に見える像について説明する。ここでは、一例として、偏光子として直線偏光フィルムを使用することとする。
図3は、図1及び図2に示すセキュリティデバイスと直線偏光フィルムとを重ねた場合に観察可能な像の一例を概略的に示す平面図である。
図3では、図1及び図2に示すセキュリティデバイス10と吸収型の直線偏光フィルム50とを、偏光フィルム50の透過軸がX方向に対して45°の角度を為すように重ねている。このような配置を採用し、これを正面から観察すると、図3に示すように、表示部100a及び100bは、互いからの判別が不可能又は困難である。これについて、より詳細に説明する。
直線偏光フィルム50に照明光として白色光を照射すると、直線偏光フィルム50は、その透過軸に平行な偏光面(電場ベクトルの振動面)を有する直線偏光を透過させ、その透過軸に垂直な偏光面を有する直線偏光を吸収する。
表示部101に入射した直線偏光は、図2に示す配向層11を透過する。領域110aに設けられた溝は回折格子を構成しているので、この入射光の一部は、回折光として複屈折性部分120aに入射する。
複屈折性部分120aでは、メソゲンはX方向と略平行に配向している。即ち、複屈折性部分120aの遅相軸は、偏光フィルム50の透過軸に対して45°の角度を為している。そして、この入射光は、散乱光であるので、正面方向へ進行する光成分と、斜め方向へ進行する光成分とを含んでいる。従って、例えば、先の直線偏光は、複屈折性部分120aの複屈折性と光路長とに応じて、円偏光、楕円偏光又は直線偏光へと変換される。ここでは、複屈折性部分120aが射出した光のうち、円偏光及び楕円偏光についてのみ説明する。
これら円偏光及び楕円偏光は、反射層13によって反射される。円偏光及び楕円偏光は、それぞれ、反射層12によって反射されることにより、電場ベクトルの回転方向が逆向きの円偏光及び楕円偏光へと変換される。また、反射層13は光散乱性を有しているので、この反射光は散乱光である。
この散乱光としての円偏光及び楕円偏光は、複屈折性部分120aに入射する。この入射光は、散乱光であるので、正面方向へ進行する光成分と、斜め方向へ進行する光成分とを含んでいる。正面方向へ進行する光成分のうち、特定波長λ0の円偏光は、複屈折性部分120aを透過することにより偏光面が偏光フィルム50の透過軸に対して垂直な直線偏光へと変換される。そして、残りの光成分は、複屈折性部分120aを透過することにより、楕円偏光又は円偏光へと変換される。
複屈折性部分120aが射出した反射層13からの反射光は、配向層11を透過する。配向層11の背面には回折格子が設けられているが、反射層13からの反射光が散乱光であるのに加え、通常の環境中では照明光の入射角も様々である。それゆえ、反射層13からの反射光は、散乱光として配向層11から射出される。
これから明らかなように、偏光フィルム50の透過軸に対して平行な偏光面を有する光成分のみに着目した場合、表示部100aに入射する光成分の強度に対する表示部100aが射出する光成分の強度の比は、波長依存性を有することとなる。換言すれば、偏光フィルム50に入射する照明光の強度に対する偏光フィルム50が射出する表示光の強度の比は、波長依存性を有することとなる。従って、表示部100aは、着色して見える。なお、表示部100aが着色して見える理由については、後で数式を参照しながら説明する。
表示部100aと表示部100bとは、その平面形状を除き、回折格子を構成している溝の長さ方向が90°異なっている点でのみ相違している。それゆえ、表示部100bは、円偏光又は楕円偏光の偏光面の回転方向が逆であること以外は、表示部100aについて説明したのと同様に振舞う。従って、表示部100bは、表示部101と同様に着色して見える。
このように、表示部100a及び100bは、同じ色に着色して見え、明るさがほぼ等しい。従って、セキュリティデバイス10に偏光フィルム50を重ね、これに白色光を照射して正面から観察した場合、図3に示すように、表示部100a及び100bは、互いからの判別が不可能又は困難である。
なお、このとき、表示部100a及び100bの互いからの判別は、理論的には不可能である。しかしながら、偏光フィルム50や配向層11に設けた溝の精度に起因して、表示部100a及び100b間で、表示光のスペクトルに相違を生じ、その結果、それらを互いから判別可能となることがある。
ここで、表示部100aが着色して見える理由について、数式を参照しながら説明する。なお、複屈折性部分120aは、波長λ0の光に対して四分の一波長板としての役割を果たすとする。
偏光フィルム50が法線方向に射出した波長λ0の直線偏光は、偏光面がX方向に垂直な直線偏光成分と偏光面がY方向に垂直な直線偏光成分との和であると考えることができる。複屈折性部分120aのX方向についての屈折率は異常光線屈折率neであり、Y方向についての屈折率は常光線屈折率noである。従って、複屈折性部分120aは、これら直線偏光成分に、往路と復路との各々でλ0/4の位相差を与える。即ち、複屈折性部分120aは、これら直線偏光成分に合計でλ0/2の位相差を与える。そのため、表示部100aが法線方向に射出する波長λ0の光は、偏光フィルム50を透過できない。
ところで、リターデイションReは、下記等式(1)に示すように、複屈折性層の膜厚dとその複屈折性Δnとに依存する。
Re=Δn×d …(1)
ここで、Δn=ne−noである。
一対の直線偏光フィルムをそれらの透過軸が直交するように向かい合わせ、それらの間に複屈折性層をその光学軸が直線偏光フィルムの透過軸に対して角度θを為すように介在させる。一方の直線偏光フィルムをその法線方向から波長λの光で照明した場合、複屈折性層に入射する光の強度をI0とし、他方の直線偏光フィルムを透過する光の強度をIとすると、強度Iは、下記等式(2)で表すことができる。
I=I0×sin2(2θ)×sin2(Re×π/λ) …(2)
複屈折性Δnは波長依存性を有しており、複屈折性Δnと波長nとは比例関係にはない。それゆえ、等式(2)から明らかなように、透過光のスペクトルは、入射光のスペクトルとは異なるプロファイルを有することとなる。
このように、複屈折性層を一対の直線偏光フィルムで挟むと、入射光とはスペクトルのプロファイルが異なる透過光を得ることができる。これと同様に、複屈折性層を直線偏光フィルムと反射層とで挟んだ場合にも、入射光とはスペクトルのプロファイルが異なる反射光を得ることができる。このような理由で、表示部100aは着色して見える。
図4は、図1及び図2に示すセキュリティデバイスが表示する像の他の例を示す斜視図である。
図4に示すように、図3に示す状態から観察方向をX方向に垂直な面内で傾けると、表示部100a及び100bの表示色が互いに異なる色へと変化する。その結果、表示部100a及び100bの互いからの判別が容易になる。例えば、法線方向から観察した場合に表示部100a及び100bはオレンジ色に見えていたとすると、観察方向をX方向に垂直な面内で傾けることにより、表示部100aは赤色へと変化し、表示部100bは緑色へと変化する。表示部100a及び100bで生じる色変化の理由を以下に説明する。
観察角度θを傾けると、複屈折性層の実効的な複屈折性Δn’が複屈折性Δnから変化するのに加え、以下の等式(3)に示す複屈折性層の実効的な膜厚d’が複屈折性層の実際の膜厚dの2倍よりも大きくなる。
d’=2d/cosθ …(3)
即ち、観察角度に応じて、上記等式(1)に示すリターデイションReが変化し、それゆえ、上記等式(2)に示す強度Iが変化する。その結果、観察角度に応じて、表示光のスペクトルのプロファイルが変化する。
複屈折性Δn’は、照明光の入射角と、照明光の伝搬方向に平行な直線の複屈折性層主面上への投影が複屈折性層の光学軸に対して為す角度とに依存する。具体的には、複屈折性部分120aの複屈折性Δn’は、その光学軸はX方向と平行であるので、観察方向をX方向に垂直な面内で傾けても変化しない。これに対し、複屈折性部分120bの複屈折性Δn’は、その光学軸はY方向に平行であるので、観察方向をX方向に垂直な面内で傾けるのに伴って変化する。
このように、表示部100aは、観察方向をX方向に垂直な面内で傾けた場合、実効的な膜厚d’の変化に起因した色変化を生じる。これに対し、表示部100bは、観察方向をX方向に垂直な面内で傾けた場合、実効的な膜厚d’の変化と実効的な複屈折性Δn’の変化とに起因した色変化を生じる。このため、観察方向をX方向に垂直な面内で傾けると、表示部100a及び100bの表示色は互いに異なる色へと変化し、その結果、表示部100a及び100bの互いからの判別が容易になる。
図5は、図1及び図2に示すセキュリティデバイスが表示する像の更に他の例を示す斜視図である。
図5には、図4に示す状態から、セキュリティデバイス10を偏光フィルム50と重ねたまま、その法線の周りで90°回転させた場合に観察可能な像を描いている。
観察方向を斜めとしたまま、セキュリティデバイス10を偏光フィルム50と共にその法線の周りで90°回転させると、表示部100a及び100bとの間で表示色が入れ替わる。なお、この色変化は、図4に示す状態から、セキュリティデバイス10のみをその法線の周りで90°回転させた場合にも生じる。
このセキュリティデバイス10は、例えば、転写箔の形態で使用可能である。
図6は、図1及び図2に示すセキュリティデバイスを含んだ転写箔の一例を概略的に示す断面図である。
この転写箔は、セキュリティデバイス10と基材20とを含んでいる。セキュリティデバイス10は、その配向層11側の主面が基材20と向き合うように、基材20に剥離可能に支持されている。なお、典型的には、セキュリティデバイス10と基材20との間には、図示しない剥離保護層が介在している。
図1及び図2に示すセキュリティデバイス10には、様々な変形が可能である。
図7は、図1及び図2に示すセキュリティデバイスの一変形例を概略的に示す断面図である。図8は、図1及び図2に示すセキュリティデバイスの他の変形例を概略的に示す断面図である。
図7に示すセキュリティデバイス10は、配向層11と複屈折性層12との間に着色層14が介在していること以外は図1及び図2を参照しながら説明したセキュリティデバイス10と同様である。図8に示すセキュリティデバイス10は、複屈折性層12と反射層13の間に着色層14が介在していること以外は図1及び図2を参照しながら説明したセキュリティデバイス10と同様である。このように、着色層14を設けると、セキュリティデバイス10の意匠性を向上させることができる。
領域110aと領域110bとで溝の長さ方向を等しくし、配向層11の領域110aに対応した部分と領域110bに対応した部分とで厚さを異ならしめてもよい。即ち、複屈折性部120aと複屈折性部120bとでメソゲンの配向方向を等しくし、複屈折性部120aと複屈折性部120bとでリターデイションを異ならしめてもよい。この場合、反射層13の散乱能が小さくても、表示部100a及び100bは、肉眼で観察したときに同じ色に見える。そして、偏光フィルム50を介して観察した場合には、表示部100a及び100bを互いから容易に判別できる。
液晶材料としてネマチック液晶材料を使用する代わりに、コレステリック液晶材料を使用してもよい。コレステリック液晶材料を使用した場合、選択反射性及び円偏光選択性を利用した表示が可能である。
選択反射性とは、コレステリック液晶材料が入射光のうち特定の波長帯にある光を強く反射する性質である。コレステリック液晶材料が選択反射を生じる波長帯の中心波長λsと、コレステリック液晶材料が選択反射を生じる波長帯幅Δλとは、コレステリック液晶材料の平均屈折率をnmとすると、それぞれ下記等式(4)及び(5)によって与えられる。
λs=nm×P …(4)
Δλ=Δn×P/nm …(5)
ここで、平均屈折率nmは[(no 2+ne 2)/2]1/2であり、Δnはne−noである。
等式(4)及び(5)から明らかなように、中心波長λs及び波長帯幅Δλは、螺旋ピッチPに依存している。従って、螺旋ピッチPを適切に設定することにより、色純度が高い反射光を得ることができる。
なお、等式(4)及び(5)は、メソゲンが形成している螺旋構造の螺旋軸に対して平行な方向から光を照射する場合に適用可能である。光の入射方向を螺旋軸に対して傾けると、見かけ上の螺旋ピッチPが大きくなる。その結果、中心波長λsは短波長側へシフトし、波長帯幅Δλは狭くなる。従って、観察方向と螺旋軸とが為す角度を大きくすると、表示色は短波長側へとシフトする。
円偏光選択性とは、コレステリック液晶材料が、右円偏光及び左円偏光の一方のみを反射し、他方を透過させる性質である。例えば、コレステリック液晶材料のメソゲンが形成している螺旋構造が右回りである場合、このコレステリック液晶材料は、右円偏光のみを反射し、左円偏光を透過させる。なお、このときの反射光は右円偏光である。
次に、本発明の第2態様について説明する。
図9は、本発明の第2態様に係るセキュリティデバイスを概略的に示す断面図である。
図9に示すセキュリティデバイス10は、粘着ラベルである。
このセキュリティデバイス10は、以下の構成を採用したこと以外は、図1及び図2を参照しながら説明したセキュリティデバイス10と同様である。即ち、このセキュリティデバイス10は、配向層11及び反射層13の代わりに、基材15と反射層16と保護層17と接着層18とを含んでいる。
基材15は、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂からなるフィルム又はシートである。基材15は、光透過性を有していてもよく、有していなくてもよい。また、基材15は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
反射層16は、基材15の一方の主面上に形成されている。反射層16は、光透過性樹脂と金属粒子とを含んだ混合物からなる。金属粒子は、反射層16の全体に亘ってほぼ均一に分布している。
光透過性樹脂及び金属粒子としては、例えば、反射層13について説明したのと同様の材料を使用することができる。なお、このセキュリティデバイス10では、一般に接着剤として使用されない材料も光透過性樹脂として使用可能である。
反射層16の表面には、配向層11について説明したのと同様の溝が設けられている。即ち、このセキュリティデバイス10では、反射層16は、配向層としての役割を更に果たしている。
複屈折性層12は、反射層16上に形成されている。この複屈折性層12は、図1及び図2を参照しながら説明した複屈折性層12と同様である。
保護層17は、複屈折性層12上に形成されている。保護層17は、光透過性材料からなる。典型的には、保護層17は、光学的に等方性の透明樹脂からなる。保護層17は、省略することができる。
接着層18は、基材15の反射層16が形成された面の裏面を被覆している。接着層18の材料としては、例えば、光透過性樹脂について例示した接着剤を使用することができる。なお、接着層18は、光透過性を有している必要はない。また、接着層18は、省略することができる。
上記の通り、このセキュリティデバイス10では、反射層16は、光透過性樹脂と金属粒子とを含んだ混合物からなる。それゆえ、気相堆積法によって得られる金属層とは異なり、平坦な下地上に形成した場合であっても、その表面にレリーフ構造を設けることができる。また、反射層16は、樹脂を含有しているため、ラビング処理などの配向処理を施すことも可能である。即ち、反射層16に上述した構造を採用すると、これに配向層としての役割を更に担わせることができ、それゆえ、セキュリティデバイスの部品点数を低減することができる。従って、低コストを実現することができる。
また、このセキュリティデバイス10では、複屈折性層12と反射層16とは接触しており、反射層16は樹脂を含有している。従って、このセキュリティデバイス10は、複屈折性層12と反射層16との界面における剥離を比較的生じ難い。
また、このセキュリティデバイス10では、反射層16は金属粒子と樹脂とを含んだ混合物からなるので、金属粒子の溶解は樹脂によって防止される。即ち、このセキュリティデバイス10は、反射層16の劣化を生じ難い。
そして、このセキュリティデバイス10は、図1及び図2を参照しながら説明したセキュリティデバイス10と同様の表示性能を有している。即ち、このセキュリティデバイス10は、図1及び図3乃至図5を参照しながら説明した画像を表示可能である。
図1乃至図9を参照しながら説明したセキュリティデバイス10は、様々なラベル付き物品において使用することができる。
図10は、ラベル付き物品の一例を概略的に示す平面図である。
このラベル付き物品は、ID(identification)カードである。このラベル付き物品は、セキュリティデバイス10と、これを支持した物品30とを含んでいる。
物品30は、カードである。この物品30は、カード基材31と印刷層32a及び32bとを含んでいる。カード基材31は、例えば、プラスチックからなる。印刷層32a及び32bは、カード基材31上に形成されている。セキュリティデバイス10は、カード基材31に貼り付けられている。
IDカードは、上述したセキュリティデバイス10を含んでいる。それゆえ、このIDカードの偽造は困難である。また、このIDカードは、セキュリティデバイス10を含んでいるので、真正品であるかが不明の物品を真正品と非真正品との間で判別することも容易である。しかも、このIDカードは、セキュリティデバイス10に加えて、印刷層32a及び32bを更に含んでいるため、それらを利用した偽造防止対策を採用することができる。
なお、図10には、ラベル付き物品としてIDカードを例示しているが、ラベル付き物品は、これに限られない。例えば、ラベル付き物品は、IC(integrated circuit)カード、磁気カード及び無線カードなどの他のカードであってもよい。或いは、ラベル付き物品は、商品券及び株券などの有価証券であってもよい。或いは、ラベル付き物品は、紙幣又は預金若しくは貯金通帳であってもよい。このように、セキュリティデバイス10は、様々な印刷物に適用することができる。
また、図10では、セキュリティデバイス10をカード基材31に貼り付けているが、図9を参照しながら説明したセキュリティデバイス10は、他の方法で基材に支持させることができる。例えば、基材として紙を使用した場合、セキュリティデバイス10を紙に漉き込み、セキュリティデバイス10の表示面の位置で紙を開口させてもよい。
セキュリティデバイス10は、真正品であることが確認されるべき物品に他の方法で支持させてもよい。例えば、セキュリティデバイス10でタグを構成し、これを、例えば紐、鎖及び金輪などの留め具を介して、真正品であることが確認されるべき物品に支持させてもよい。
また、ラベル付き物品は、印刷物でなくてもよい。即ち、印刷層を含んでいない物品にセキュリティデバイス10を支持させてもよい。例えば、セキュリティデバイス10は、美術品などの高級品に支持させてもよい。
以下、本発明の例を説明する。
<例1>
本例では、まず、図9に示すセキュリティデバイス10を製造した。ここでは、複屈折性層12の材料として光硬化型のネマチック液晶材料を使用し、金属粒子としてはアルミニウム粒子を使用した。また、ここでは、保護層17は省略した。
次に、以下の方法により、反射層16の密着性について調べた。まず、このセキュリティデバイス10を平板に貼り付け、このセキュリティデバイス10にナイフで十字に切れ目を設けた。次に、このセキュリティデバイス10に粘着テープを貼り付け、消しゴムで擦ることによりそれらを十分に密着させた。その後、粘着テープの一端を平板の主面に垂直な方向に引き上げ、0.1秒以下の時間で粘着テープを平板から剥離した。
その結果、セキュリティデバイス10の構成要素が粘着テープと共に剥れることはなく、セキュリティデバイス10は、その全体が平板上に残ったままであった。
<比較例1>
反射層16の代わりにアルミニウムからなる反射層と透明樹脂からなる配向層との積層体を含んでいること以外は例1で製造したのと同様のセキュリティデバイスを製造した。ここでは、反射層は、真空蒸着法により形成した。配向層は、反射層と複屈折性層との間に介在させた。
次に、例1で説明したのと同様の方法により反射層の密着性について調べた。その結果、このセキュリティデバイスのうち粘着テープを貼り付けた部分の全体で、セキュリティデバイス10の構成要素が粘着テープと共に剥れた。具体的には、反射層の位置で剥離を生じた。
<例2>
本例では、例1で製造したのと同様のセキュリティデバイスを製造した。次に、以下の方法により、反射層16の密着性について調べた。
まず、このセキュリティデバイス10の両面に、粘着テープを貼り付けた。これら粘着テープは、それらの長さ方向が平行になるようにセキュリティデバイス10に貼り付けた。
次に、これら粘着テープの各々の一端を、これら粘着テープがT字形状を形成するように摘んだ。続いて、それら端を互いから引き離し、これら粘着テープを約0.1秒で互いから剥離した。
その結果、セキュリティデバイス10の一部の構成要素が他の構成要素から剥れることはなく、セキュリティデバイス10は、その全体が一方の粘着テープ上に残ったままであった。
<比較例2>
本例では、まず、例2において複屈折性層12に使用したのと同様の材料からなる複屈折性層を形成した。次いで、この複屈折性層上に、真空蒸着法により、アルミニウムからなる反射層を形成した。
次に、例2で説明したのと同様の方法により反射層の密着性について調べた。その結果、この積層体のうち粘着テープを貼り付けた部分の約20%で、反射層が複屈折性層から剥離した。
以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載していた発明を付記する。
[1]液晶材料を固化してなる複屈折性層と、前記複屈折性層と向き合い、光透過性樹脂と金属粒子とを含んだ混合物からなる反射層とを具備したことを特徴とするセキュリティデバイス。
[2]前記複屈折性層は、メソゲンの配向構造及び/又は配向方向が互いに異なる複数の部分を含んでいることを特徴とする項1に記載のセキュリティデバイス。
[3]前記反射層のうち一部のみが前記複屈折性層と向き合っていることを特徴とする項1に記載のセキュリティデバイス。
[4]前記反射層は前記複屈折性層と接触していることを特徴とする項1乃至3の何れか1項に記載のセキュリティデバイス。
[5]前記反射層は、前記セキュリティデバイスを他の物品に接着するための接着層であることを特徴とする項1乃至4の何れか1項に記載のセキュリティデバイス。
[6]前記複屈折性層を間に挟んで前記反射層と向き合い、前記複屈折性層と向き合った主面が1つ以上の配向領域を含んだ配向層を更に具備し、前記1つ以上の配向領域の各々には、長さ方向が揃い且つ前記長さ方向と交差する方向に隣り合った複数の溝が設けられており、前記複屈折性層の前記配向層と向き合った主面には前記複数の溝に対応したレリーフ構造が設けられていることを特徴とする項1乃至4の何れか1項に記載のセキュリティデバイス。
[7]前記反射層の前記複屈折性層と向き合った主面は1つ以上の配向領域を含み、前記1つ以上の配向領域の各々には、長さ方向が揃い且つ前記長さ方向と交差する方向に隣り合った複数の溝が設けられており、前記複屈折性層の前記配向層と向き合った主面には前記複数の溝に対応したレリーフ構造が設けられていることを特徴とする項1乃至4の何れか1項に記載のセキュリティデバイス。
[8]前記複屈折性層のうち前記複数の溝に対応した部分において前記メソゲンは前記長さ方向に配向していることを特徴とする項6又は7に記載のセキュリティデバイス。
[9]項1乃至8の何れか1項に記載のセキュリティデバイスと、前記セキュリティデバイスを支持した物品とを具備したことを特徴とするラベル付き物品。
本発明の第1態様に係るセキュリティデバイスを概略的に示す平面図。 図1に示すセキュリティデバイスのII−II線に沿った断面図。 図1及び図2に示すセキュリティデバイスと直線偏光フィルムとを重ねた場合に観察可能な像の一例を概略的に示す平面図。 図1及び図2に示すセキュリティデバイスが表示する像の他の例を示す斜視図。 図1及び図2に示すセキュリティデバイスが表示する像の更に他の例を示す斜視図。 図1及び図2に示すセキュリティデバイスを含んだ転写箔の一例を概略的に示す断面図。 図1及び図2に示すセキュリティデバイスの一変形例を概略的に示す断面図。 図1及び図2に示すセキュリティデバイスの他の変形例を概略的に示す断面図。 本発明の第2態様に係るセキュリティデバイスを概略的に示す断面図。 ラベル付き物品の一例を概略的に示す平面図。
符号の説明
10…セキュリティデバイス、11…配向層、12…複屈折性層、13…反射層、14…着色層、15…基材、16…反射層、17…保護層、18…接着層、30…物品、31…カード基材、32a…印刷層、32b…印刷層、50…偏光フィルム、100a…表示部、100b…表示部、110a…配向領域、110b…配向領域、120a…複屈折性部分、120b…複屈折性部分。

Claims (5)

  1. 液晶材料を固化してなる複屈折性層と、前記複屈折性層と向き合い、光透過性樹脂と金属粒子とを含んだ混合物からなる反射層とを具備し、前記反射層は前記複屈折性層と接触しており、前記反射層の前記複屈折性層と向き合った主面は1つ以上の配向領域を含み、前記1つ以上の配向領域の各々には、長さ方向が揃い且つ前記長さ方向と交差する方向に隣り合った複数の溝が設けられており、前記複屈折性層の前記配向領域と向き合った主面には前記複数の溝に対応したレリーフ構造が設けられていることを特徴とするセキュリティデバイス。
  2. 前記複屈折性層は、メソゲンの配向構造及び/又は配向方向が互いに異なる複数の部分を含んでいることを特徴とする請求項1に記載のセキュリティデバイス。
  3. 前記反射層のうち一部のみが前記複屈折性層と向き合っていることを特徴とする請求項1に記載のセキュリティデバイス。
  4. 前記複屈折性層のうち前記複数の溝に対応した部分において前記メソゲンは前記長さ方向に配向していることを特徴とする請求項に記載のセキュリティデバイス。
  5. 請求項1乃至の何れか1項に記載のセキュリティデバイスと、前記セキュリティデバイスを支持した物品とを具備したことを特徴とするラベル付き物品。
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