ところで、上述した静電霧化装置は、ペルチェ素子、霧化電極、相手電極などを備えるブロック(一体化した装置)の形で提供され、種々の機器(ヘアドライヤ、空気清浄器、ユニットバス等)にブロックとして組み込まれる。したがって、静電霧化装置がブロックとして機能するか否かを検査することが要求される。
この種の検査では、静電霧化装置をブロックとして組み立てた後に、電気的特性を検査するほか、実使用を想定した規定の環境下で静電霧化装置に通電して実際に動作させ、期待した性能が得られるか否かを判断する必要がある。つまり、霧化電極から帯電微粒子水が放出されるか否かを検査する必要がある。
電気的特性の検査には、抵抗・耐圧・絶縁検査、動作時における霧化電極の電流値検査などの検査項目があり、これらの検査項目については他の電気機器と同様の検査を行うことができる。しかしながら、帯電微粒子水が放出されるか否かの検査については、検査項目が確立されておらず、実際に動作させたときに帯電微粒子水が発生しているか否かを目視検査しているのが現状である。
目視検査では、検査員の熟練度の個人差や体調によって、判断にばらつきを生じる可能性があり、また目視検査は検査員の疲労度を高めるから、帯電微粒子水が正常に発生するか否かの検査を自動化することが望まれている。
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、霧化電極を撮像した画像に基づいて、静電霧化装置において霧化電極に適正量の水分を付着させる冷却の機能と、霧化電極に付着した水分を空中に飛散させる放電の機能との検査を行うことにより、静電霧化装置の動作に関する検査の自動化を可能にした静電霧化装置の検査方法およびその装置を提供することにある。
請求項1の発明では、周囲に強電界を形成するよう電圧が印加され表面に付着している水分への強電界の作用により先端部から帯電微粒子水を発生させる霧化電極と、霧化電極を冷却することにより空気中の水分を霧化電極の表面に凝結させる冷却手段とを有している静電霧化装置の検査方法であって、実使用を想定した環境下で動作させた状態で撮像装置により霧化電極を撮像する過程と、撮像した画像内で放電光に相当する画素の画素数が規定した第1の閾値を超えているときに、コロナ放電が正常に行われたと判断する放電光検査の過程と、撮像した画像内で霧化電極への水分の付着を反映する属性を持った画素の画素数が規定した第2の閾値を超えているときに帯電微粒子水を発生させる水分が霧化電極に正常に付着していると判断する水滴付着検査の過程とを有することを特徴とする。
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記水滴付着検査は、前記霧化電極において前記冷却手段側である基部の画像を用いる基部検査過程を有し、基部検査過程では水分の付着を反映する前記属性は濃度勾配の方向に対応付けた方向値であることを特徴とする。
請求項3の発明では、請求項2の発明において、前記第2の閾値は、前記霧化電極の前記基部に設定した検査領域内において所定の方向値を持つ画素の画素数に対して設定され、検査領域内において当該画素数が第2の閾値を超えているときに、水分が霧化電極に正常に付着していると判断することを特徴とする。
請求項4の発明では、請求項1の発明において、前記水滴付着検査は、前記霧化電極の先端部の画像を用いる先端部検査過程と、霧化電極において前記冷却手段側である基部の画像を用いる基部検査過程とを有し、水分の付着を反映する前記属性は、先端部検査過程では濃淡画像を2値化した2値画像から得られるサイズであり、基部検査過程では濃度勾配の方向に対応付けた方向値であることを特徴とする。
請求項5の発明では、請求項4の発明において、前記第2の閾値は、前記先端部検査過程では前記霧化電極の先端部を含むように設定した第1の検査領域内においてサイズを表す画素数に対して設定され、基部検査過程では霧化電極の前記基部に設定した第2の検査領域内において所定の方向値を持つ画素の画素数に対して設定されており、第1の検査領域と第2の検査領域との少なくとも一方において当該画素数が第2の閾値を超えているときに、水分が霧化電極に正常に付着していると判断することを特徴とする。
請求項6の発明では、請求項4又は5の発明において、前記先端部検査過程では、前記2値画像において隣接する画素とは画素値が異なる画素を輪郭線上の画素とし、前記サイズは前記先端部を囲む輪郭線を追跡して求めた輪郭線上の画素数であることを特徴とする。
請求項7の発明では、請求項4又は5の発明において、前記先端部検査過程では、前記2値画像において隣接する画素とは画素値が異なる画素を輪郭線上の画素とし、前記サイズは前記先端部を囲む輪郭線に囲まれた領域内の画素数であることを特徴とする。
請求項8の発明では、請求項4〜7のいずれかの発明において、前記先端部検査過程では、前記濃淡画像内において凹凸のない面の濃度値の平均値を用いて濃淡画像の2値化のための閾値を浮動的に設定することを特徴とする。
請求項9の発明では、請求項4〜7のいずれかの発明において、前記先端部検査過程では、濃淡画像の2値化のための閾値は前記霧化電極に付着した水分からの反射光に相当する画素の濃度値と、霧化電極の周囲の背景に相当する画素の濃度値との間の値に設定されることを特徴とする。
請求項10の発明では、請求項2〜9のいずれかの発明において、前記基部は円柱状であって、前記基部検査過程では、基部の長手方向に直交する方向の濃度勾配を表す方向値を持つ画素を除去して画素数を計数することを特徴とする。
請求項11の発明では、請求項1〜9のいずれかの発明において、前記放電光検査では、前記撮像装置により撮像した画像内で膨張処理を施し、膨張処理後において放電光に相当する画素の画素数を前記第1の閾値と比較することを特徴とする。
請求項12の発明では、請求項1〜9のいずれかの発明において、前記放電光検査では、前記撮像装置により撮像した濃淡画像を前記霧化電極の周囲の背景に相当する画素の濃度値と前記放電光に相当する画素の濃度値との間の値に設定した閾値で2値化した後に膨張処理を施した後、放電光に相当する画素の画素数を前記第1の閾値と比較することを特徴とする。
請求項13の発明は、請求項1〜12のいずれか1項に記載の静電霧化装置の検査方法に用いる検査装置であって、前記撮像装置は近紫外領域に感度を有し、撮像装置の感度領域に発光のピーク波長を有し前記霧化電極を照明する照明装置を備えることを特徴とする。
請求項14の発明では、請求項13の発明において、前記霧化電極に対して前記照明装置の反対側に配置され照明装置から照射された近紫外線を低反射率で反射する背景板が付加され、前記水滴用撮像装置は照明装置と同じ側からから霧化電極を撮像することを特徴とする。
請求項1の発明によれば、実使用を想定した環境下で動作させた状態で撮像した画像を用いて、帯電微粒子水を発生させる水分が霧化電極に正常に付着しているか否かを判断する水滴付着検査と、霧化電極においてコロナ放電が正常に行われたか否かを判断する放電光検査とを行うから、静電霧化装置の検査を目視によらずに自動化することができる。言い換えると、霧化電極に適正量の水分を付着させるための冷却手段と、霧化電極に付着した水分を空中に飛散させるための電圧を印加する手段とが霧化電極に対して正常に機能するか否かの検査を、霧化電極の画像に基づいて定量的に行うから、静電霧化装置の動作に関する検査を自動化することができる上に検査結果のばらつきが防止される。
請求項2の発明によれば、水滴付着検査において霧化電極の基部に付着する水分を画像内の方向値によって検出するから、結露する程度に霧化電極が冷却手段で冷却されるか否かを確認することができる。すなわち、霧化電極の冷却を開始してから比較的短い時間内に付着する少量の水滴を検出することができ、霧化電極への水分の付着に関して短時間で検査を行うことができる。
請求項3の発明によれば、霧化電極の基部において所定の方向値を持つ画素の画素数により水分の付着を確認するから、水分の付着量が適正量か否かを判断することができる。
請求項4の発明によれば、霧化電極の先端部と基部とのそれぞれについて水分の付着を検査するから、霧化電極に水分が付着しているか否かを精度よく検査することができる。とくに、基部検査過程では霧化電極への結露の有無により冷却手段が正常に動作しているか否かを評価することができ、先端部検査過程では空中に飛散させるのに必要な量の水分が霧化電極の先端部に付着しているか否かを評価することができるから、静電霧化装置に関して水分の付着に関して信頼性の高い検査を行うことができる。
請求項5の発明によれば、先端部検査過程と基部検査過程との少なくとも一方において合格すれば霧化電極への水分の付着に関して正常と判断するから、霧化電極への水分の付着に関して冷却開始から短時間が経過した後の状態と長時間が経過した後の状態とにかからわず検査することができる。つまり、実際に動作させた状態での経過時間にかかわらず水分の付着の良否を検査することができる。
請求項6の発明によれば、先端部検査過程では、霧化電極の先端部に付着した水分を含む輪郭線上の画素数を用いて水分の付着を判断しており、霧化電極の先端部に水が付着することに伴う輪郭線長の増加に着目しているから、水分の有無および水分量を評価する良否検査が可能になる。
請求項7の発明によれば、先端部検査過程では、霧化電極の先端部に付着した水分を含む輪郭線内の画素数を用いて水分の付着を判断しており、霧化電極の先端部に水が付着することに伴う輪郭線内の画素数の増加に着目しているから、水分の有無および水分量を評価する良否検査が可能になる。
請求項8の発明によれば、先端部検査過程において濃淡画像を2値化する際に、画像内で凹凸のない面の濃度値の平均値から求めた閾値を用いるから、2値化のための閾値を照明条件(照明の劣化による照明光量のばらつきなど)や露光タイミングの差などに応じて浮動的に設定することができ、照明条件などに影響されない2値画像を得ることができる。したがって、先端部検査過程において照明条件などの環境に依存しないように輪郭線を抽出することが可能になり、信頼性の高い検査結果を得ることができる。
請求項9の発明によれば、先端部検査過程において濃淡画像を2値化する際に、霧化電極に付着した水分からの反射光に相当する画素の濃度値と、霧化電極の周囲の背景に相当する画素の濃度値との間の値を閾値に用いるから、霧化電極の先端部において水分を含む輪郭線を背景から確実に分離することができる。
請求項10の発明によれば、霧化電極の基部の長手方向に直交する方向の濃度勾配を表す方向値を持つ画素は計数しないから、基部の表面での反射光の成分を除去し、水滴により生じる画素値の変化のみを検出することができる。その結果、基部への水滴の付着をより正確に検出することが可能になる。
請求項11の発明によれば、画像の膨張処理によって画像内で微小領域であるコロナ放電の領域を拡大することになり、コロナ放電が生じているか否かの検証を正確に行うことが可能になる。
請求項12の発明によれば、濃淡画像の2値化により放電光に相当する領域を抽出し、さらに、当該領域の膨張処理を行うことにより放電光に相当する画素を抽出するから、画像内で微小領域であるコロナ放電の領域を拡大することになり、コロナ放電が生じているか否かの検証を正確に行うことが可能になる。
請求項13の発明の構成によれば、近紫外領域の光で霧化電極を照明し、近紫外領域の感度を有する撮像装置により霧化電極を撮像するから、霧化電極の周囲に生じるコロナ放電により生じる近紫外光を検出することにより霧化電極の周囲に強電界が生じていることを検出することができ、霧化電極に正常な電圧が印加されているか否かの検査が可能になる。
つまり、コロナ放電の発生の有無は近紫外光の発光の有無を検出しなければならないから、目視検査では行うことができないが、近紫外領域に感度を有する撮像装置を用いることにより、コロナ放電の発生の有無を検出することができる。また、霧化電極への水分の付着の有無は可視光によらず近紫外光でも検出することができるから、放電光検査と水滴付着検査との両方に撮像装置を兼用することができる。言い換えると、撮像装置を放電光検査と水滴付着検査とに兼用し、放電光検査で用いた濃淡画像を水滴付着検査にも用いることが可能になる。
請求項14の発明の構成によれば、照明装置の前方に背景板を配置することにより、霧化電極の背後から反射光を照射されて霧化電極と背景とのコントラストが強くなり、しかも霧化電極の正面を照明していることで霧化電極の細部が見やすくなるから、先端部の輪郭線長と面積との検出が容易になるとともに、基部に付着している水滴を見分けやすくなる。
以下に説明する実施形態では、背景技術として説明した霧化電極と相手電極とペルチェ素子とを備える静電霧化装置について、帯電微粒子水を放出させる機能に関する検査項目について画像処理技術を用いて検査を実施する技術について説明する。
本発明者は、静電霧化装置が正常に機能するための条件の一つは、帯電微粒子水を生成する際に霧化電極に適正量の結露水が付着していることであると考えた。また、本発明者は、帯電微粒子水が放出される際に霧化電極にコロナ放電が生じているという知見を得た。
そこで、以下では、画像処理技術を用いた検査項目の一つとして、結露水の付着量を判断する技術を提案する。また、他の検査項目として、コロナ放電に伴う発光の有無を判断する技術を提案する。これらの技術は併用するのが望ましいが、少なくとも結露水の付着量が適正であれば、抵抗や電流値を計測する他の電気的特性の検査と併用することによって、帯電微粒子水を放出させる機能の良否を判断することができる。
ただし、以下の実施形態では、静電霧化装置の良否判定を行うための最適な検査項目として図2に示す項目を選択し、図2に示す手順で検査を実施する場合について説明する。すなわち、静電霧化装置の検査を、(1)「抵抗・耐圧・絶縁検査」→(2)「空放電 電流値検査」→(3)「霧化放電30秒後 電流値検査」→(4)「霧化放電60秒後 電流値検査」→(5)「放電光検査」→(6)「水滴付着検査」の順に行う場合を例示する。
「抵抗・耐圧・絶縁検査」は一般的な電気機器の電気的特性の検査において周知の技術である。また、「空放電 電流値検査」「霧化放電30秒後 電流値検査」「霧化放電60秒後 電流値検査」は、帯電微粒子水を発生させる際の電圧を霧化電極に印加することにより霧化電極の周囲にコロナ放電を生じさせた状態において、結露水が付着していない状態での放電開始の直後と、放電開始から30秒後と、放電開始から60秒後とについて、それぞれ霧化電極と相手電極との間に流れる放電電流の電流値を計測することを意味する。
これらの検査項目に関しては、電気的特性の検査として一般的な技術を用いることができる。本実施形態において特徴である検査項目は、「放電光検査」と「水滴付着検査」とであって、以下に説明するように、どちらの検査項目についても画像処理技術を用いた検査を行う。
本実施形態において用いる検査装置は、図3に示すように、撮像対象である霧化電極1を撮像する撮像装置10と、霧化電極1に照明光を照射する照明装置11とを備える。霧化電極1はペルチェ素子を備える冷却装置2に基部である軸部1aの一端が結合されることにより静電霧化装置を構成している。図示例では、軸部1aの他端にヘッド部1bが一体に設けられた例を示している。つまり、ヘッド部1bが霧化電極1の先端部になる。
撮像装置10には、微小な霧化電極1を撮像するために拡大用の撮像光学系10aが装着されている。また、照明装置11は紫外線発光ダイオードを光源に用いたリング照明であり、拡散板を通した光を霧化電極1の周囲から照射する。したがって、霧化電極1は無影照明がなされる。撮像光学系10aは、その光軸が霧化電極1のヘッド部1bの中心を通るように配置される。
一方、照明装置11は軸部1aを含む霧化電極1の全体を均一に照明する必要があるから、図3(b)に示すように、照明装置11の中心は撮像光学系10aの光軸とは一致していない。図3では、霧化電極1に対して撮像装置10の反対側に背景板12を配置している。背景板12には白色のアクリル板を用いている。背景板12の表面は光沢面となるように仕上げてあるが、白色のアクリル板であるからミラーを用いる場合よりは低反射率になる。
水滴付着検査にあたっては、可視光領域に感度を有する通常のCCDイメージセンサを備える撮像装置10を用いることが可能であり、その場合には、発光領域が可視光領域である照明装置11を用いることができる。ただし、後述するように、放電光検査では放電に伴って生じる近紫外光を検出するから、近紫外領域に感度を有するCCDイメージセンサを用いた撮像装置10を用いるとともに、発光領域が近紫外領域である照明装置11を用いるのが望ましい。撮像装置10が近紫外領域に感度を有することにより、1台の撮像装置10で水滴付着検査と放電光検査とを行うことが可能になる。
なお、水滴付着検査に用いる濃淡画像と放電光検査に用いる濃淡画像とを個別に撮像する場合には、水滴付着検査に用いる水滴用撮像装置と、放電光検査に用いる放電用撮像装置とを別に設けることが可能である。ただし、本実施形態では、水滴用撮像装置と放電用撮像装置とを兼用している例について説明する。
ところで、可視光領域では、撮像対象の背後から照明する背後照明を行うと、写真撮影でいう逆光になるから、撮像対象の正面と背景とのコントラストが強くなり、撮像対象の輪郭線を抽出しやすくなる。しかしながら、近紫外光は可視光に比較して散乱率が高いから、たとえば、400nmをピーク波長とする発光領域の照明装置11を撮像装置10に対置し霧化電極1の背後照明を行うとすると、光が周り込むことにより撮像装置10で撮像した画像内で霧化電極1の輪郭を明確に抽出することが困難になる。
本実施形態では、撮像装置10で撮像する向きから照明装置11による照明光を霧化電極1に照射するとともに(つまり、正面照明を行うとともに)、背景板12で反射された光を霧化電極1の背後から照射することによって(つまり、弱い背後照明を行うことによって)、霧化電極1の輪郭を明確に抽出できるようにしている。霧化電極1に対して正面照明を行うことは、霧化電極1において撮像装置10と対面している部位の細部形状を明瞭にすることになり、その一方で、弱い背後照明を行うことは、回り込みの影響を抑制して輪郭を明瞭にすることになる。
このように撮像装置10による撮像対象である霧化電極1の背後からの照射光量を、正面側(撮像装置10に対面する側)への照射光量よりも小さくするという照明技術を採用することにより、霧化電極1において撮像装置10に対置している正面側の部位の細部形状と輪郭とが撮像装置10により撮像した画像から抽出可能になる。
撮像装置1で撮像された画像は近紫外領域での濃淡画像であって、この濃淡画像は画像処理装置20に入力される。ここに、濃淡画像はデジタル画像であるものとする(必要に応じてA/D変換される)。画像処理装置20は、図1に示すように、濃淡画像の画像データを保持する画像メモリ21を備える。画像メモリ21は、後述する画像処理に伴って生じるデータを保持する作業メモリとしても用いられる。
上述したように、画像処理技術を用いて行う検査は、放電光検査と水滴付着検査とであるが、まず水滴付着検査について説明する。水滴付着検査では、霧化電極1に結露水が付着していることを判断する3種類の検査項目について検査を行い、いずれか1項目でも合格すれば合格とする。
(水滴付着検査)
水滴付着検査における検査項目の一つは、ヘッド部1bに付着した結露水によりテイラーコーンが形成されている状態では、テイラーコーンを含むヘッド部1bの先端部のサイズが結露水の付着していない場合よりも増加することに着目したものである。具体的には、ヘッド部1bとテイラーコーンとを合わせた状態における画像内での輪郭線長および面積をサイズとして評価する。この検査は霧化電極1の先端部であるヘッド部1bに関する検査であるから先端部検査過程になる。
輪郭線長に関する検査項目では、ヘッド部1bの先端部を検査領域とし、検査領域内での輪郭線長が規定の閾値以上であるときに合格と判定する。以下では、この検査項目を「輪郭検査」と呼ぶ。
背景技術として説明したように、ヘッド部1bには種々形状があり、たとえば、図4に示すように、ヘッド部1bが球状であるものや、図5に示すように、ヘッド部1bが洋梨状であるものが提案されており、洋梨状のヘッド部1bでは先端部にニップル部1cが突設されている。
ヘッド部1bが球状である場合には、図4(a)(b)を比較するとわかるように、水が付着してテイラーコーン1dが形成されると、ヘッド部1bとテイラーコーン1dとを合わせた全体の輪郭線の長さは、水の付着量にかかわらず水が付着している場合のほうが増加すると言える。
一方、ヘッド部1bがニップル部1cを有している場合には、図5(a)(b)を比較するとわかるように、水が付着している良品であっても水の付着量によっては、ヘッド部1bとテイラーコーン1dとを合わせた全体の輪郭線の長さが、結露水の付着していない場合に比較して増加しないか場合によっては減少する場合もある。
つまり、ニップル部1cを備えるヘッド部1bについて輪郭検査を行っただけでは、結露水が付着しているにもかかわらず不合格と判定される可能性がある。ただし、結露水が付着していれば、輪郭線長は増加していなくとも画像内に占める面積は増加していると考えられる。そこで、サイズに関する第2の検査項目としてヘッド部1bの先端部の面積に関する合否判定を行う。この検査項目を「面積検査」と呼ぶ。
上述した2種類の検査項目は、ヘッド部1bに付着した水に関して水の付着に伴うヘッド部1bのサイズの変化を利用した検査であるが、テイラーコーンが形成されていない状態であっても、軸部1aに結露水が付着している場合があり、軸部1aに結露水が付着していれば、いずれはテイラーコーンが形成されると考えられる。したがって、軸部1aにおける結露水の付着の有無に関する合否判定を水滴付着検査での第3の検査項目としている。この検査項目を「軸部検査」と呼ぶ。
以下では、水滴付着検査についてさらに詳しく説明する。水滴付着検査では、上述のようにヘッド部1bと軸部1aとを対象として検査を行うから、ヘッド部1bと軸部1aとについて、それぞれ検査領域を設定する必要がある。ヘッド部1bに関しては、霧化電極1と撮像装置10との相対的な位置関係が略一定であることを利用し、図6に示すように、画像内でヘッド部1aが存在すると推定される領域よりも水平方向に広げた矩形状の第1の検査領域D1を設定する。第1の検査領域D1は輪郭検査に用いる。
また、輪郭検査を実施すると、第1の検査領域D1の中で輪郭線上の画素の水平方向および垂直方向の端点が求められるから、これらの端点で囲まれる矩形領域に対して水平方向および垂直方向にそれぞれ数画素ほど広げた矩形領域を設定し、この矩形領域を面積検査のための第2の検査領域D2とする。
さらに、軸部1aについては、水平方向における軸部1aの左端縁の位置を求め、求めた位置を基準として図7のように軸部1aの中に矩形領域である第3の検査領域D3を設定する。第3の検査領域D3は軸部検査に用いる。第1の検査領域D1、第2の検査領域D2、第3の検査領域D3は、領域設定部22により設定される。この検査は霧化電極1の基部である軸部1aに関する検査であるから基部検査過程になる。
(水滴付着検査の手順)
図8を参照して水滴付着検査の処理手順を説明する。水滴付着検査は上述したように放電光検査の後に行われ、後述するように放電光検査では濃淡画像を画像メモリ21に取り込むから、水滴付着検査では、放電光検査の際に画像メモリ21に取り込んだ濃淡画像に対して、第1の検査領域D1を定める(S3)。第1の検査領域D1は画像内での領域があらかじめ規定されている。
輪郭検査および面積検査には、輪郭線の位置を規定する必要がある。輪郭線を抽出するには、画像処理装置20の2値化部23において濃淡画像を浮動2値化する(S5)。浮動2値化は、2値化の際に用いる閾値を固定せずに撮像時の条件に応じて変化させる2値化処理であり、2値化のための閾値は濃淡画像の中で表面に凹凸のない面の濃度値の平均値を用いて浮動的に設定される。たとえば、画像内に冷却装置2の一部が含まれるように霧化電極1を撮像し、冷却装置2の表面の濃度値に基づいて閾値を設定すれば(S4)、撮像時の条件による濃度値の変化の影響を除去して2値化した2値画像を得ることができる。2値化部23において生成した2値画像は画像メモリ21に格納される。
2値化のための閾値は、上述のように、凹凸のない面の濃度値の平均値を用いるほか、霧化電極1に付着した水分からの反射光に相当する画素の濃度値と、霧化電極1の周囲の背景に相当する画素の濃度値との間の値を用いるようにしてもよい。
濃淡画像からは、方向値演算部24により画素値が方向値である方向値画像も生成される(S6)。方向値画像は、濃淡画像において各画素ごとに周囲の画素(たとえば、8近傍の画素)から求めた濃度勾配の方向に方向値を対応付け、この方向値を画素値とする画像である。ただし、着目画素の周囲の濃度変化が小さい場合には、当該画素についての方向値はないものとする。つまり、方向値を求めるために微分を行い、微分値が規定の閾値以下である画素については方向値を与えない。
方向値は角度区間ごとに対応付けた整数値であり、たとえば45度の角度区間ごとに右回りに増加する方向値を対応付けると方向値は1〜8の値になる。いま、157.5〜202.5度の角度区間に対して1という方向値を対応付けるとすれば、112.5〜157.5度の角度区間の方向値は2になる。方向値が1である場合は、右に向かって明度が高くなる濃度勾配を有していることを意味する。
2値画像を生成した後には、霧化電極1の輪郭線を抽出する処理を行う(S7)。輪郭線の抽出には、輪郭線追跡部25において輪郭線の追跡を行う。輪郭線追跡部25では、まず第1の検査領域D1の左下角を起点Psにして右向きに探索を行い、このライン(つまり、第1の検査領域D1の下端縁)上でヘッド部1bの輪郭線上の画素(つまり、画素値が反転した画素)を抽出する。画素値が1と0との2種類しかない2値画像では、霧化電極1の輪郭線と背景とが異なる画素値を持つ(白画素の画素値を1とすれば、輪郭線の画素値は0になる)。したがって、起点Psから探索したときに画素値が最初に変化する位置が輪郭線上の画素ということになる。
第1の検査領域D1の中では、霧化電極1を除くと背景板12からの反射光が入射しているから、第1の検査領域D1の下端縁の上の画素には背景板12と霧化電極1とのほかには含まれていないと考えてよい。したがって、とくにノイズ除去の処理は行わなくてもよいが、ノイズ除去の処理が必要であれば、霧化電極1の輪郭線上の画素の方向値の範囲や同一ライン上で同じ画素値を持つ画素が連続する個数などの情報を用いることにより、霧化電極1かノイズかを判断してもよい。
2値画像内で第1の検査領域D1の下端縁上で探索することにより霧化電極1の左側の輪郭線上の画素が抽出されると、図9(a)のように、当該画素を着目画素(図9の各升目は画素を表しており、着目画素は斜線を付した画素)として、着目画素の8近傍の画素について、着目画素の左隣りの画素Aから始めて右回りで着目画素と同じ画素値を持つ画素を探索する(図示例では画素D)。このようにして求められる画素Dは輪郭線上の画素と考えられるから、図9(b)のように、探索により検出された画素を次の着目画素とし(1つ前の着目画素は斜線を付した画素Hの位置)、着目画素の8近傍の画素について、左回りに90度分回転させた位置の画素(つまり、前画素と着目画素とを結ぶ向きに対して左隣りの画素であり、図9(b)では画素B)から始めて右回りで着目画素と同じ画素値を持つ画素を探索する。図示例では画素Eが輪郭線上の次の画素として抽出される。
上述の処理を繰り返すことにより霧化電極1の輪郭線上の画素を追跡することができる。輪郭線上の画素の追跡は、第1の検査領域D1の範囲内で行い、霧化電極1の輪郭線の追跡中に検査領域D1から出ると、その時点で輪郭線の追跡は終了する。また、輪郭線の追跡が終了した時点で第1の検査領域D1の下端縁に戻ってきていない場合には、輪郭線の追跡に失敗したと判断し、第1の検査領域D1を設定を変更する。
霧化電極1の輪郭線を追跡することにより、輪郭線上の画素数を求めることができるから、輪郭線長検出部26では、この画素数を輪郭線長とする(S8)。輪郭線長として求める画素数の中に第1の検査領域D1の下端縁を含まないことはいうまでもない。また、輪郭線を求めたことにより、輪郭線上の水平方向の座標値の最大値および最小値と、輪郭線上の垂直方向の座標値の最大値および最小値とがわかるから、霧化電極1が含まれる領域を絞り込むことができる。つまり、領域設定部22では、輪郭線に外接する矩形領域を設定し、この矩形領域に対して上下左右に規定画素ずつ膨張させた矩形領域を設定して第2の検査領域D2とする(S9)。
第2の検査領域D2が求められると、第2の検査領域D2の中で霧化電極1の輪郭線に囲まれた範囲内の画素数を求め、面積検出部27では、この画素数を第2の検査領域D2の中での霧化電極1の面積として用いる(S10)。面積として求める画素数の中には第2の検査領域D2の下端縁の画素を含んでいてもよい。
次に、領域設定部22では、方向値画像を用いて第3の検査領域D3を設定する(S11)。第3の検査領域D3を設定するには、まず軸部1aの左端縁の位置を求める。つまり、第1の検査領域D1の下方(垂直方向において軸部1aが存在する範囲)においてラスタ走査(水平方向の1ライン上で左端から右向きに走査を行い、1ライン上で右端まで走査すると垂直方向の1ライン下で同様の走査を行うことを意味している)を行ったときに、各ラインごとに方向値が垂直方向である画素が最初に抽出される水平方向の位置を求め、その位置の平均位置を軸部1aの左端縁の位置とする。その後、水平方向における幅寸法が軸部1aよりも小さい規定サイズの矩形領域を、軸部1aの左端縁の位置から規定の画素数分だけ右に位置させることによって、軸部1aの幅寸法内に第3の検査領域D3を設定することができる。
第3の検査領域D3は、軸部1aにおける水滴の付着の程度を求めるために設定される領域であり、軸部1aへの水の付着量が霧化電極1の全体を濡らす程度の量でなければ、軸部1aには多数個の玉状の水滴が付着し、この状態では第3の検査領域D3の中に様々な方向値が現れると考えられる。軸部1aは円柱状であるから、水が付着していなければ、第3の検査領域D3の中には、照明装置11から照射された光を反射することによって生じる垂直方向の縞が含まれているのみであり、水平方向の濃度勾配のみが生じている。したがって、水平方向の濃度勾配に対応した方向値(方向値が3、7)ではない方向値(つまり、方向値が1、2、4〜6、8)を持つ画素が第3の検査領域D3に存在していれば、その画素は軸部1aへの水滴の付着により生じているとみなすことができる。
そこで、水付着量検出部28において、第3の検査領域D3の中で水平方向の濃度勾配に対応する方向値を除く方向値を持つ画素の個数を計数し、求めた画素数を水滴の付着の程度の評価に用いる(S12)。ただし、水付着量検出部28で計数する画素は、着目画素の周囲の濃度勾配が規定値以上になる画素を対象とし、周囲画素の濃度の変化が少ない画素(たとえば、8近傍の画素の濃度値の最大値と最小値との差分が規定値以下になる画素)は計数の対象としない。したがって、方向値が設定される画素の大部分は、2値画像において画素値が反転する部位の画素になる。なお、方向値画像を生成する際に、あらかじめ不要な方向値(図示例では、方向値3、7)の画素を除去しておいてもよい。
軸部1aに水が付着していない場合には、図10(a)のように濃淡画像において照明光を反射することにより明度の高い部位が筋状に生じるが、この部位の画素は方向値が3または7であるから、図10(b)のように、方向値3、7の画素を除去した方向値画像では、第3の検査領域D3には画素がほとんど残らない。
一方、軸部1aに水滴1eが付着した状態では、図11(a)のように濃淡画像において水滴1eによる様々な微細形状が生じているから、図11(b)のように、方向値3、7の画素を除去した方向値画像では、第3の検査領域D3に多数個の画素が残ることになる。したがって、第3の検査領域D3に残された画素数を計数することにより、軸部1aに水滴1eが生じているか否かを判断することが可能になる。
ところで、軸部1aに付着する水の量は、霧化電極1の冷却を開始してからの時間の経過に伴って増加する。軸部1aに付着する水の量が増加すると、水は玉状ではなくなり軸部1aの表面の全面を一様な厚みで覆うようになるから、軸部1aに水が付着していない場合と同様に、濃度勾配が水平方向以外にはほとんど生じなくなる。つまり、水の付着量が増加すると、方向値の種類が少なくなる。
したがって、第3の検査領域D3の中で方向値を付与した画素のうち、水平方向の濃度勾配に相当する方向値を持つ画素を除いた方向値を持つ画素数は、図12の曲線ロに示すように、水の付着量が少ない場合と多い場合とにおいてともに画素数が少なくなる。言い換えると、第3の検査領域D3において規定の方向値を持つ画素の個数を計数する処理は、霧化電極1の冷却を開始してから適正な時間内で行うことにより、水が付着しているか否かの判断に用いることができることになる。
さらに具体的に言えば、図13(a)のようにヘッド部1bに水分が付着していない場合には、図13の左端部のように直線イと曲線ロとのいずれも画素数が少ないから、水が付着していないと判断することができる。
一方、図13(b)のように水滴が付着している状態では、ヘッド部1bの輪郭線長や面積の増加は少ないが、軸部1aに水滴が付着することによって、曲線ロに対応する画素数が増加することで、水の付着を検出することができる。
図13(c)のように軸部1aに水滴が残りながらもヘッド1bの水が連続し始めると曲線イ、ロともに画素数の多い状態になり、どちらの判断によっても水の付着を検出することが可能になる。
さらに、水の付着量が増加すると、図13(d)のように軸部1aの水滴が消滅し曲線ロでは画素数が減少するが、テイラーコーン1dの形成により輪郭線長と面積とがともに増加するから、直線イの画素数が増加することで水が付着していることを判別することが可能になる。
なお、図12の直線イは、水の付着量とヘッド部1bの輪郭線長との関係を示しており、第1の検査領域D1で求めた輪郭線長は水の付着量の増加に略比例して(あるいは、単調に)増加する。第2の検査領域D2で求めた面積も同様の傾向を示す。したがって、輪郭検査および面積検査を軸部検査と併用することにより、それぞれの合否結果を補う検査が可能になり、霧化電極1への水の付着を確実に検出することが可能になる。
上述のようにして、ヘッド部1bの輪郭線長と、ヘッド部1bの面積と、軸部1aにおける水の付着の有無とを検出することができるから、判定部29において、これらの値がヘッド部1bに水が付着していない状態に基づいて規定した基準値に対して適正範囲か否かを判定することにより、「輪郭検査」(S13)、「面積検査」(S14)、「軸部検査」(S15)を実施することができる。本実施形態では、これらの3種類の検査のうちのいずれか1種類において合格すれば、水の供給に関しては良品と判定する(S16)。つまり、判定部29は水滴判定部として機能する。
また、判定部29では、3種類の検査を行うとはいえ、1回ずつの検査では水の供給が可能な良品を不良品と判定する可能性があるから、画像メモリ21に取り込んだ濃淡画像に対して第1の検査領域D1を定めるステップS3からの処理を複数回(図示例では3回)繰り返し(S2、S17)、複数回の検査を行った後に3種類の検査のいずれにも合格しない場合には不良品と判断する(S18)。なお、ステップS3におけるMは繰り返し回数を計数するカウンタであり、図示しない初期化の際に0に設定される。また、1回目の検査では放電光検査により画像メモリ21に取り込んだ濃淡画像を用いるが、2回目以降は画像の撮像を毎回行う(S1)。
上述したように、水滴付着検査を複数回行うことにより、良品と判断される確率を高めることができるから、いわゆる無駄はねの発生が抑制される。とくに、水滴付着検査において軸部1aへの水の付着を検出していることにより、霧化電極1に付着した水の量が微量であっても検出が可能であり、ステップS16における軸部検査の際の閾値を適宜に設定することにより、水が付着している場合の正当率を100%近くまで高めることができた。
(放電光検査)
次に、水滴付着検査の前に行う放電光検査について説明する。放電光検査は、霧化電極1に付着した水を霧化する機能の良否に関する検査であり、具体的には、霧化電極に電圧を印加した状態(実際に動作させた状態)においてコロナ放電に伴う近紫外光が発生するか否かを判断する。近紫外光の検出は、水滴付着検査と同じ撮像装置10を用いる。ただし、放電光検査では、撮像装置10として近紫外領域に感度を有するものを用いることが必須であるから、水滴付着検査と放電光検査とにおいて撮像装置10を共用する場合は、水滴付着検査も近紫外領域で行うことになる。
霧化電極1の周囲のコロナ放電に伴って生じる近紫外光は微弱であって、蛍光灯から放射されている光や太陽光などに含まれる紫外光が存在していると発光の有無を識別することができない。したがって、放電光検査は、自然光や照明光が入らない環境下において照明装置11を消灯した状態で行う。
(放電光検査の手順)
図14を参照して水滴付着検査の処理手順を説明する。霧化電極1に電圧を印加して静電霧化装置の動作(実際の動作)を開始させた後(S1)、撮像装置10により霧化電極1を撮像して画像処理装置20の画像メモリ21に濃淡画像を記憶する(S2)。この濃淡画像に対して以下の処理を行うことにより、放電光の有無を判断する。
上述したように、撮像装置10は撮像光学系10aにより霧化電極1を拡大して撮像しているが、放電光は微弱かつ微小であって、霧化電極1を拡大して撮像しても画像内で放電光が占める領域は、霧化電極1に比較してごく狭い領域になる。一方、撮像装置1は近紫外領域に感度を有しているから、放電光が生じていれば、いずれかの画素において背景とは異なる画素値の領域が生じる。ただし、上述のようにごく狭い領域を占めているに過ぎない。
そこで、強調処理部31において、背景とは異なる画素値を持つ画素の画素数を増加させるように膨張処理を行い(S4)、背景とは異なる画素値を持つ画素の有無を判定しやすくする。膨張処理では、濃淡画像において3×3画素の領域ごとの最大の画素値を当該領域のすべての画素の画素値として適用する処理を行う。3×3画素の領域を1画素ずつずらして膨張処理を行うことを適数回繰り返せば、微小な領域を拡大することができるから、判定処理部32において、膨張処理による拡大後に面積を適宜の閾値と比較することにより(S5)、霧化電極1の周囲にコロナ放電が生じる程度の強電界が生じているか否かを確認することが可能になる。判定処理部32の判定結果は、判定部29での判定結果と統合され、判定部29から結果として出力される。
膨張処理には、濃淡画像を2値化した2値画像を用いてもよい。この場合には、3×3画素の領域内に白画素が含まれていると、3×3画素の領域の全画素を白画素とする。2値画像に対する膨張処理は、画素値が2種類しかない点以外は濃淡画像に対する膨張処理と同様である。膨張処理を行う際の2値画像を生成するための閾値は、霧化電極1の周囲の背景に相当する画素の濃度値と放電光に相当する画素の濃度値との間の値に設定するのが望ましい。このように放電光検査において2値画像を用いる場合に、同じ濃淡画像について、異なる閾値を用いて得られる2値画像を水滴付着検査で用いることで、同じ濃淡画像を放電光検査と水滴付着検査との両方に兼用することが可能になり、撮像回数を低減させて検査効率を向上させることが可能になる。
ところで、放電光は連続的に生じているわけではなく断続的に生じている。とくに、帯電微粒子水を発生させる際に、電界強度が変化しない静電界をテイラーコーンに作用させるよりも電界強度を適宜の時間間隔で変化させるほうが、テイラーコーン内の水分子の運動が激しくなって、帯電微粒子水を発生させやすくなるという知見が得られており、そのため、霧化電極1に対して適宜の時間間隔でパルス状の電圧を印加することが考えられている。このような構成を採用すると、放電光は間欠的にしか生じない。
一方、CCDイメージセンサなどを用いた撮像装置10では、所定の蓄積時間ごとに受光光量に応じた電荷を出力するから、いわば間欠的に撮像していることになり、静電霧化装置が正常に動作していて霧化電極1の周囲にコロナ放電が生じていても、撮像装置10による撮像のタイミングによっては放電光の濃淡画像を得られない場合がある。そこで、図14に示す手順では、複数回(図示例では3回)の撮像を行い(S3、S6)、そのうち1回でも上述の条件を満たす場合には、判定処理部32において、霧化電極1への電圧の印加に関して良品と判断し(S7)、上述の条件を1回も満たさない場合には、判定処理部32において、霧化電極1への電圧の印加に関して不良品と判断する(S8)。なお、ステップS3におけるNは繰り返し回数を計数するカウンタであり、図示しない初期化の際に0に設定される。
上述の構成例では、2値画像と方向値画像とは、濃淡画像の全画素を対象に生成することを想定しているが、2値画像は第1の検査領域D1と第2の検査領域D2との中でのみ求めるようにしてもよい。また、2値画像は濃淡画像の全画素を対象に生成し、方向値画像は霧化電極1の軸部1aの全体を含む程度の大きさの一部領域で行うようにしてもよい。あるいはまた、ヘッダ1bにおける輪郭追跡の開始点を決定する場合と同様に、軸部1aの左端縁の位置を2値画像から求める場合には第3の検査領域D3を2値画像に基づいて設定できるから、2値画像は濃淡画像の全画素を対象にして生成し、第3の検査領域D3の範囲内でのみ方向値画像を生成するようにしてもよい。