JP5335011B2 - 回転電機 - Google Patents
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Description
そして、回転子側ヨークの対向面には、円筒状の内壁に円周方向に複数の界磁用磁石が配設され、固定子側ヨークの対向面には、回転子側ヨークの円筒状の対向面に対向して複数のティースが放射状に配設されている。そして、それら複数のティースにはコイルが巻回されている。
また、ラジアルギャップ型電動モータではあるが、上記とは逆に、固定子側ヨークが円筒状に形成され、回転子側ヨークが円柱状で且つ固定子側ヨークの筒円内に配置される形状の電動モータもある。
このアキシャルギャップ型回転電機としての例えばアキシャルギャップ型電動モータは、その軸受に支持された回転軸を有する円板状の回転子側ヨークと、その回転軸の軸線を中心とする円板状の固定子側ヨークとが互いに対向して配置される。
本発明の目的は、上記従来の実情に鑑み、安定して磁気抵抗を調節可能であり、それによって、出力特性の制御性が良い回転電機を提供することである。
本発明の回転電機は、磁石を備え、回転軸を中心に回転する回転子と、巻線を備え、該回転子に対向配置された固定子と、を有し、上記固定子が、上記回転子に対向する対向部を含む第1部位と当該対向部を含まない第2部位との少なくとも2つの部位に分割されており、上記第1部位と上記第2部位との間の磁気抵抗を調節可能に構成されている。さらに、この回転電機は、互いに隣接する一対の上記第1部位の対向部同士の間の磁気抵抗を各第1部位と上記第2部位との間の磁気抵抗よりも大きくし、上記磁石のN極とS極との間に形成される磁束を、上記互いに隣接する上記第1部位の対向部同士の間の空間を殆ど透過させずに上記第2部位を透過させ、上記第2部位を介して上記互いに隣接する一対の上記第1部位を流れる磁束流を形成する状態と、互いに隣接する一対の上記第1部位の対向部同士の間の磁気抵抗を各第1部位と上記第2部位との間の磁気抵抗よりも小さくし、上記磁石のN極とS極との間に形成される磁束を、上記第2部位に殆ど流入させずに上記互いに隣接する一対の上記第1部位の対向部同士の間の空間を透過させ、上記一対の上記第1部位の対向部および当該一対の上記第1部位の対向部同士の間の空間を透過する磁束流を形成する状態とに変更可能であり、上記第2部位が上記第1部位に対して移動して、上記第1部位と上記第2部位との間の磁気抵抗を調節可能に構成されている。
上記第1部位と上記第2部位とは、例えばそれらの両方を通る磁束流の方向に分割されていてもよい。また、例えば上記固定子は、上記巻線の外方で上記第1部位と上記第2部位とに分割されていてもよい。また、例えば、上記第1部位と上記第2部位とは、上記回転子と固定子が対向する方向に分割されていてもよい。
また、上記第1部位の対向部側の第1端面は、当該対向部とは反対側の第2端面よりも大きく形成されていることが好ましい。この場合に、上記互いに隣接する一対の上記第1部位の間の間隙が、上記第1端面では狭く、上記第2端面では広くなっていることが好ましい。また、上記互いに隣接する一対の上記第1部位の上記第1端面間の磁気抵抗が、当該隣接する一対の上記第1部位の上記第2端面間の磁気抵抗より小さいことが好ましい。さらに、上記互いに隣接する一対の上記第1部位の上記第1端面間の磁気抵抗が、上記第1端面と上記回転子との間の磁気抵抗より大きいことが好ましい。
(本発明の回転電機を搭載装備した電動二輪車)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係わる回転電機であるアキシャルギャップ型回転電機が搭載された装置の一例としての電動二輪車の側面図である。図1に示すように、本例の電動二輪車1は、その車体前方上部にヘッドパイプ2を備え、このヘッドパイプ2内には、車体方向変更用の不図示のステアリング軸が回動自在に挿通されている。
そして、ヘッドパイプ2の下端から下方に向けて、左右一対のフロントフォーク6が取り付けられている。そのフロントフォーク6の下端に緩衝懸架された状態で、前輪7を回転自在に軸支する前車軸8が挟持されている。
ヘッドパイプ2から側面視で略L字形を成す左右一対の車体フレーム13が車体後方に向かって延設されている。この車体フレーム13は、丸パイプ状であり、ヘッドパイプ2から車体後方に向けて斜め下方に延びた後、後方に向かって水平に延びて側面視略L字状を成している。
そして、この左右一対のシートレール14の間に、バッテリ16が着脱自在に配設されている。このバッテリ16は、充電可能な複数の2次電池を収納して構成されている。
また、シートレール14の後端部には、リヤフェンダ18が取り付けられており、このリヤフェンダ18の後面には、テイルランプ19が取り付けられている。さらに、テイルランプ19の左右には、フラッシュランプ21(右側つまり図1では紙面奥側のフラッシャランプ21は陰になって見えない)がそれぞれ設けられている。
そして、このリヤアーム23の略円形の後端部23aの中心に、駆動輪である後輪25が回転自在に軸支されている。これらのリヤアーム23及び後輪25は、リヤクッション26により緩衝懸架されている。
ここで、本発明の基本となるアキシャルギャップ型電動モータの構成とその動作について説明した後、本発明の第1の実施の形態におけるアキシャルギャップ型電動モータ32の構成とその動作について説明することにする。
(アキシャルギャップ型電動モータの基本構成)
図2は、上記本発明の基本となるアキシャルギャップ型電動モータ(以下、単に電動モータともいう)の構成をリヤアーム23の後端部23a近傍の構成と共に示す断面図である。尚、図2は、図1におけるA矢視断面図(一部側面図)を示している。ただし後輪25は図示を省略している。
上記の電動モータは、図2において、リヤアーム23の後端部20aに対して軸受37a及び37bを介して軸受37a及び37bの中心軸線BOを中心に回転可能に支持された回転子38と、この回転子38に対向してリヤアーム後端部23aの内面に固定された略円環(又はドーナツ)状の固定子39とを備えている。
すなわち、回転子側ヨーク41は、固定子39に対向する円環部41a、この円環部41aの内周縁部からリヤアーム23の後端部23aへ向かって略円錐台状に延在するテーパー部41b、このテーパー部41bの延在端からリヤアーム23の後端部23aに向かって中心軸線BOに沿って凸状に延在する第1の円筒部41c、この円筒部41cの延在端(図2では下端)から中心軸線BOに向かって回転の径方向に延在する円環部41d、及びこの円環部41dの内周縁部から後端部23aに向かって中心軸線BOに沿って凸状に延在する第2の円筒部41eを備えている。
また、回転子38は、回転子側ヨーク41の円環部41aにおける固定子側対向面に固設された複数の界磁用磁石42を備えている。これらの界磁用磁石42は円環部41aの周方向に沿って中心軸線BOに対して同軸な円環形状に展開され、N極とS極とが交互に配置されている。尚、界磁用磁石42は円板又は円環の同一面の周に沿って永久分極された誘電体の部位から成るN極とS極とが交互に着磁された1つの磁石で構成してもよい。
一方、遊星ギア減速機35は、歯付き回転軸43に連結されており、回転子側ヨーク41のテーパー部41b内に組み込まれている。この遊星ギア減速機35と電動モータ(回転子38と固定子39)とは車幅方向において部分的にオーバーラップしている。
図3(図2も参照)において、固定子39は、リヤアーム23の後端部23aに固設されており、例えば円環状鋼板が中心軸方向に積層されて成る積層体構造の固定子側ヨーク46を備えている。固定子側ヨーク46は、中心軸線BOを中心とした逆向きC字形、換言すれば一部を切り欠かれた円の形状を有している。
これらティース47を固定して保持する固定子側ヨーク46の形状が上述したように軸受37a及び37bの中心軸線BOを中心とした一部を切り欠かれた円の形状を有しているために、上記3の倍数の数のティース47の配列も一部を切り欠かれた円の形状に沿って配列されている。これにより、真円状に配列された場合と比較して、円の切り欠き部に対応する3相分(U相、V相、W相)の3つのティースが欠缺されている。以下、上記の円の切り欠き部をティース欠缺部位48という。
フランジ52は、各ティース47及びコイル49を含むモールド部51をリヤアーム23の後端部23aに取り付けるためのボルト孔を備えている。このボルト孔に挿通されたボルト53のリヤアーム23の後端部23aへの螺合により、固定子39がリヤアーム23の後端部23aに固設される。
図4は、図3に示す固定子39の要部の概略構成を固定子39に対向配置される回転子38とその回転軸43と共に示す斜視図である。尚、図4には、図2に示したコイル49、図2と図3に示したモールド部51、図3に示したフランジ52、インバータ54、エンコーダ基板55等の図示を省略している。
さらに、各挿入孔58において、固定子側ヨーク46の外周面46a側の内側面58bには、その内側面58bと外周面46aとの間の鋼板部分が切断されて形成され、挿入孔58を固定子側ヨーク46の外側に連通させるスリット59が放射状に貫設されている。
したがって、この15個のティース47の配置間隔内(3個の削除箇所も含めて)に対しては、偶数個の界磁用磁石42または1個の界磁用磁石いずれを用いるにせよ、12極対の磁極が常に対向して存在するように構成されている。
(アキシャルギャップ型電動モータの駆動原理)
次に上記のように構成されるアキシャルギャップ型電動モータの駆動原理を説明する。
図5(a) は、N極の磁石42がU相のティース47uの真上に位置しており、S極の磁石42がV相のティース47vとW相のティース47wの中間に位置しているときの状態を示している。
V相のティース47vのコイル49にはS極性の磁束を発生させる電流が流れており、このS極性の磁束がティース47vにより励磁される。そして、この励磁されたティース47vのS極性の磁束により、同一極性のS極の磁石42が矢印a方向に反発される。
このような反発力と吸引力とによる矢印a方向へのトルクにより回転子38が矢印a方向へ回転して図5(b) の状態になる。すなわち、N極の磁石42がU相のティース47uとV相のティース47vの中間に位置しており、S極の磁石42がW相のティース47wの真上に位置する状態となる。
他方、V相のティース47vのコイル49にはS極性の磁束を発生させるように電流が切り替わっており、このS極性の磁束がティース47vにより励磁され、励磁されたS極性の磁束により、反対極性のN極の磁石42が矢印a方向に吸引される。
そして、この場合も上記の反発力と吸引力とによる矢印a方向へのトルクにより回転子38が矢印a方向へ回転して図5(c) の状態になる。この状態におけるティース47と磁石42との関係は図5(a) の状態と同様であるが、N極及びS極の磁石42に対するティース47の対応関係が、一つずつ矢印a方向にずれている。
この図5(c) の状態におけるティース47v、ティース47w、及び隣接のティース47uにおける電流及びコイル49から発生する磁束の極性は、図5(a) における3相1組のティース47u、ティース47v、及びティース47wにおける電流及びコイル49から発生する磁束の極性と同一である。
すなわち、N極の磁石42がV相のティース47vとW相のティース47wの中間に位置しており、S極の磁石42が隣接の3相1組の中のU相のティース47uの真上に位置する状態となる。
以下同様にして図5(e) の状態に遷移し、更に図5(f) の状態に遷移して、N極の磁石42が、W相のティース47wと隣接の3相1組の中のU相のティース47uとの中間に位置して、図5(a) の左に示した3相1組のU相のティース47u、V相のティース47v、及びW相のティース47wと、2個1対のN極の磁石42及びS極の磁石42との駆動関係が終了する。
また、図5(a) 〜(f) に示した駆動関係は、全ての3相1組のティース47と2個一対の磁石42との間で、且つ隣接するティース及び磁石とも連携しながら、つまり3相1組のティース47の中の2つのティースと隣接する3相1組のティース47の中の1つのティースが次の3相1組となり、2個一対の磁石42の中の1つの磁石と隣接する2個一対の磁石42の中の1つの磁石が次に一対の磁石となって、順次回転方向へ遷移する。
このように、アキシャルギャップ型モータにおいては、回転子38と固定子39との間において磁気回路が形成されており、固定子39の各ティース47に巻回されたコイル49を介して各ティース47に対する励磁を、回転子38側の磁石42のN極、S極に合わせて順次切り替えることにより、回転子38側の磁石42の各ティース47の励磁に対する反発力と吸引力を利用して、回転子38を回転させている。
ところで、上記の基本構成における電動モータには、回転速度において構成上からくる制約が発生し、ある限度以上には回転力が上昇しない。自動二輪車の速度に換算した場合図1に示す車両で走行に問題の無いトルクを出すためには、およそ毎時20km程度が限界である。ただし、これはタイヤの径、駆動系ギア系のギア比、モータの仕様等によって異なることは言うまでもない。
このようなアキシャルギャップ型電動モータの回転特性の弱点を解消して回転力をあげる、すなわち高トルク低速回転から低トルク高速回転に移行させる手段として、弱め界磁制御の方法が知られている。
しかし、図のように、N極の磁石42がティース47の真上にきているときにコイル49に矢印Eで示す方向(S極の磁石42の場合は反対方向)に適度の電流を印加することにより、ティース47に矢印G4で示す向き(S極の磁石42の場合は反対向き)に、N極性の磁束が発生する。
この弱め界磁制御の方法は、図5に示した電磁石42がティース47真上にきたときに電流が0となるタイミングで印加するU相、V相、W相の3相のティース47に印加する交番電流の位相に対し、それより位相のずれた新たな電流、すなわち電流が0となるタイミングのときに電磁石42からコイルに向う磁束を弱める方向に、磁束を発生させるような電流を回転駆動用(トルク発生用)電流に更に加えてコイルに印加する。つまり回転トルクそのものには寄与しない電流を新たに印加している。
しかし、本願発明の発明者は、相対回転している回転子と固定子の間の磁気的ギャップでは磁束流の流れが不安定であることに気づいた。本願発明は、発明者が上記のように相対回転している回転子と固定子の間の磁気的ギャップでは磁束流の流れが不安定であることに気づいたことに始まる。
(本発明の第1の実施の形態に係わるアキシャルギャップ型電動モータの構成と動作)
次に、上記のようなアキシャルギャップ型電動モータの基本構成と駆動原理を踏まえた上で、本発明の第1の実施の形態に係わるアキシャルギャップ型電動モータの構成と動作について説明する。
図10は、第1の実施の形態におけるアキシャルギャップ型電動モータの分解斜視図である。以下、図9及び図10を用いて本例のアキシャルギャップ型電動モータ(以下、単に電動モータという)の構成を述べる。
すなわち、図10において、回転子71、回転軸72、回転子側ヨーク73、円環部74、テーパー部75、第1の円筒部76、円環部77、第2の円筒部78、及び界磁用磁石79は、図2及び図4に示した回転子38、回転軸41e、回転子側ヨーク41、円環部41a、テーパー部41b、第1の円筒部41c、円環部41d、第2の円筒部(回転軸)43、及び界磁用磁石42と同一である。
第1のステータ83は、不図示の保持部材で保持された複数の第1のティース81を有する第1のステータコア80を備えている。第1のティース81は、一方の端面81aを回転軸72の軸方向に沿って回転子71に対向させて配置される。すなわち、第1のティース81は、回転子71に対向する対向部を有している。これらの第1のティース81には、その両端面(81a、81b)を除く側面周囲81cに、巻線82が施される。
この第2のステータ87の第2のティース84は、一方の端部84aを、上記第1のステータ83の第1のティース81の回転子71に対向する対向部側の端面81aとは反対側の端面81b(第2端面)に対向して配置される。
これら第2のティース84と、これら第2のティース84を装着孔86に圧入固定された保持部材85とによって、第2のステータ87が形成される。また、これらの第2のティース84と保持部材85とが一体にモールドされるのが好ましく、本例でもモールドされているが、図10にはモールドは図示を省略している。
第1のステータ83は、その名の通り、特には図示しないが、モールド部に形成された係合部によって図2に示すリヤアーム23の後端部23aに固定されている。これに対して、第2のステータ87は、完全に固定されているわけではなく、詳しくは後述するが、第1のステータ83に対してやや回動する。
減速歯車91の大径歯車は、次段の減速歯車92の小径歯車に噛合し、この減速歯車92の大径歯車は、三段目の減速歯車93の小径歯車に噛合している。そして減速歯車93の大径歯車はモータ94の回転軸先端に固設されたウォームギア95に噛合している。
図12(a),(b),(c) は、上記第2のステータ87により回転子71の回転方向に添って第1のステータ83に対して行われる往復移動の回転角と動作を説明する図である。尚、図12(a),(b),(c) では、第1のステータ83の第1のティース81に対する第2のステータ87の第2のティース84の変位の状態を分かり易く示すため、図11に示した巻線82、スリット89、ギア係合用歯部90、回転制御系等の図示は省略している。
第2のステータ87の上述した回動によって、第2のティース84は、図12(a) に示す基準位置つまり第1のティース81に対して正対する位置から、図12(b) に示す中間位置を経て、図12(c) に示す最大移動位置つまり第1のティース81と81の丁度中間の位置まで狭い角度内で、回転子71の矢印aで示す回転方向に沿って回動(往復移動)が可能である。尚、図12(b) に示す中間位置は、無段階かつ間歇的な回動の或る任意の位置を示している。
尚、図13(a),(b) には、説明を分かり易く図示するために、第1のティース81に巻回されている巻線82及びモールドの図示は省略している。同様に、第2のティース84と保持部材85のモールドも図示を省略している。
また、図13(a) は、回転子71のi番目の磁石79iが、固定子側の第1のステータ83のi番目の第1のティース81iと正対しており、且つその第1のティース81iに対して固定子側の第2のステータ87のi番目の第2のティース84iが正対している状態を示している。すなわち、図12(a) と同一の状態を示している。
そして、この強力な磁束流が磁気抵抗となって、このままでは電動モータ70が高トルク低速回転から低トルク高速回転に遷移することに早期に限界が生じることは前述した。また、その限界値を伸ばすために、弱め界磁制御の方法があることも前述した。
いま第2のティース84を、図13(a) に示す基準位置から図13(b) に示す最大移動位置まで回動させたとする。このとき第1のティース81と第2のティース84との対向部には、正対していたときの磁気抵抗kよりも大きな磁気抵抗mが形成され、更に第2のティース84は保持部材85よりも突設された形状で配置されているので、第1のティース81と保持部材85間には第1のティース81と第2のティース84と間の磁気抵抗mよりも大きな磁気抵抗nが形成される。
また、同様に磁石79からの磁束が第1のティース81の巻線コア部に殆ど流入することがないので、巻線82に通電されている第1のティース81と磁石79との間に発生する回転子71へのトルクが低下する。すなわち、低トルク高速回転が実現する。
図14(a) 〜(e) は、2部材間の磁気抵抗を変化させる接触面積とギャップとの違いを説明する図である。一般に、磁石から出た磁束流が、磁性体からなる2部材間を流れようとするときは、一部でも磁束の流れが確保されると、磁石は余剰分の磁束を出さなくなることが知られている。
図14(a) は、断面がL字型の2つの磁性体101及び102が密着している状態を示している。磁性体101は、本体部の縦断面は面積A、そして突出部の縦断面は面積Bである。また磁性体102は、本体部の縦断面は面積D、そして突出部の縦断面は面積D−Bである。そして、それら突出部の水平面の面積はそれぞれ同一の面積Cである。
ここで2つの磁性体101及び102が、図14(b) に示すように、水平面の面積C部分を摺接させたまま、縦断面の面積B部分、及び縦断面の面積D−B部分で相対的に距離a及びb(a=b)だけ離隔移動したものとする。
次に、2つの磁性体101及び102が、図14(c) に示すように、更に水平面の面積C部分を摺接させたまま、縦断面の面積B部分、及び縦断面の面積D−B部分で相対的に距離2a及び2bだけ離隔移動したものとする。この場合も縦断面の面積B部分で飽和した磁束流は、面積B=50Sを流れる磁束流のみとなって、摺接面C2(面積C2=100S、B<C2)を経由して磁性体102に流入する。
ここで、更に図14(d) に示すように、2つの磁性体101及び102が、水平面の面積C部分を摺接させたまま、縦断面の面積B部分、及び縦断面の面積D−B部分で相対的に距離3.5a及び3.5bだけ離隔移動したものとする。このとき、水平面の面積C部分を摺接面C3=25Sである。すなわちB>C3となる。したがって、磁束流103は摺接面C3で飽和し、面積25S分だけ磁性体102側に流入する。
この図14(c) から図14(d) における磁気抵抗の変化は、摺接面Cの面積変化(C2→C3の変化)によるものであり、2部材間の離隔距離の変化(2aと2b→3.5aと3.5bの変化)によるものではない。つまり、依然として2部材間の変化した離隔距離3.5a及び3.5bはギャップとはなっていない。
前述したように、2部材がギャップで完全に分断されたとき、磁石の磁束流は一番流れ易いところ、すなわち一番狭い距離C4のところを流れる。つまり磁気抵抗は距離C4の部分に生じており、この距離C4が磁気抵抗ギャップである。すなわち磁気抵抗は距離C4の部分の距離の変化に応じて変化する。
本実施の形態においては、上述したように、固定子を少なくとも2つの部位に分けて、一方の部位に対し他方の部位を、回転子の回転方向すなわち回転子から巻線の巻かれたコア内に流れる磁束流の方向と直角な方向に移動させることにより、可変ギャップを形成し、これにより、トルクに寄与しない電力を消費することなく回転電機の出力特性を大きく可変することができる。
(本発明の第2の実施の形態に係わるラジアルギャップ型電動モータの構成)
図15は、第2の実施の形態に係わるラジアルギャップ型電動モータの構成を示す断面図である。
同図に示すように、このラジアルギャップ型電動モータは、回転軸(図では回転中心117で示す)を中心に回転する円筒状の回転子73と、この回転子73の円筒状の内側において、回転子73に対し一方の端面81aを対向して配置され且つ両端面81a及び81bを除く側面周囲に巻線82を施された複数の第1のティース81を備えた円筒状の第1のステータコア83を備えている。
このラジアルギャップ型電動モータにおいて、第2のステータコア87は、第1のステータコア83の巻線82に通電されて発生して第1のティース81内を透過する磁束流の方向と直交する方向、すなわち図の時計回り方向又は反時計回り方向に移動する。これにより、図13(a),(b) に説明したと同様の界磁制御が可能となる。
(本発明の第3の実施の形態に係わるラジアルギャップ型電動モータの構成)
図16は、第3の実施の形態に係わるラジアルギャップ型電動モータの構成を示す断面図である。
同図に示すように、このラジアルギャップ型電動モータは、回転軸72を中心に回転する円柱又は円筒状の回転子73と、この回転子73の輻射方向外側において、回転子73に対し一方の端面81aを対向して配置され、且つ両端面81a及び81bを除く側面周囲に巻線82を施された複数の第1のティース81を備えた第1のステータコア83を備えている。
このラジアルギャップ型電動モータにおいて、第2のステータコア87は、第1のステータコア83の巻線82に通電されて発生して第1のティース81内を透過する磁束流の方向と直交する方向、すなわち図の時計回り方向又は反時計回り方向に移動する。これにより、図13(a),(b) に説明したと同様の界磁制御が可能となる。
図17に示すように本例の回転子108は、先ず、第1の回転子108−1の回転子ヨークの円環部109に固設された複数の磁性体111を備えている。
磁性体合体型磁石114は、磁性体111側に向けて対向配置された磁性体112と、図示を省略した固定子側に向けて対向配置された界磁用磁石113とが重ねられて形成されている。
これにより、界磁用磁石113の磁束は、一方の磁極からの磁束は合体型の磁性体112と、これに上方で対向する磁性体111とにより収束されて流れが整えられた後、円環部109及び隣接の磁性体111及びその磁性体111に下方で対向する磁性体112により収束されてここでも流れが整えられ、その磁性体112と合体型の界磁用磁石113に流れる。
すなわち、界磁用磁石113の磁束は、合体型の磁性体112、磁性体111、円環部109、隣接の磁性体111、その磁性体111に対向する磁性体112、これと合体型の界磁用磁石113、固定子のティース、固定子側ヨーク、隣接のティース、これに対向する合体型の界磁用磁石113と流れて、固定子のティースに捲着されたコイル内を還流する。
図18は、上記アキシャルギャップ型電動モータの構成において、高速・低トルク回転時の、第1の回転子108−1と第2の回転子108−2との回転位相のずれの関係を示す図である。図18は、第1の回転子108−1と第2の回転子108−2との回転位相のずれが最大となっている状態を示している。
図18に示す位相が15度ずれた状態では、磁性体112と磁性体111との間の磁気ギャップが極めて大きい。したがって、磁性体112の磁束流は磁性体111へは殆ど流れず、遮断されている状態となる。
換言すれば、図17の状態から図18の状態まで、適宜の位置に、第1の回転子108−1と第2の回転子108−2との回転位相のずれを制御することにより、鎖交磁束の量を制御して、界磁制御のための無用の電力を使用することなく、回転速度と回転トルクの関係を制御することができる。
1.回転軸を中心に回転する回転子と、
該回転子に対向配置された固定子と、
を有し、
前記回転子又は前記固定子のいずれかが、対向部を含む第1部位と対向部を含まない第2部位の少なくとも2つの部位に分割され、前記第2部位が前記第1部位に対して移動して、前記第1部位と第2部位の間の磁気抵抗を調節可能なギャップを変更可能に構成される、ことを特徴とする回転電機。
2.前記第1部位と前記第2部位が、それぞれの内部を通る磁束流の方向に分割される、ことを特徴とする項1に記載の回転電機。
3.前記第1部位と前記第2部位は、コイルを備えた固定子であり前記コイルの外方で分割される、ことを特徴とする項2に記載の回転電機。
4.前記第1部位と前記第2部位は、前記回転子と前記固定子が対向する方向に分割される、ことを特徴とする項1、2または3に記載の回転電機。
5.前記第2部位は、前記第1部位に対して該第1部位の内部を通る磁束流の方向と交差する方向に移動する、ことを特徴とする項1または2に記載の回転電機。
6.前記第2部位は、前記第1部位に対して前記回転子の回転方向へ位相のずれた位置に移動する、ことを特徴とする項5に記載の回転電機。
7.同一回転中心を中心に回転する円環部を有し、位相のずれた位置に相対的に移動可能に構成された外側部位と内側部位の2つの部位を有する回転子と、
該回転子の前記内側部位に対し前記回転子の回転軸に直交する面で一方の端部を対向して配置され、両端部を除く側周面に巻線を施され、他方の端部を保持部材に保持された複数のティースを備えた固定子と、
を有し、
前記回転子の前記外側部位と前記内側部位の相対的移動方向は、前記巻線に通電されて発生し前記ティース内を透過する磁束流の方向と直交する方向である、ことを特徴とする回転電機。
8.同一回転中心を中心に回転する円環部を有し、位相のずれた位置に相対的に移動可能に構成された外側部位と内側部位の2つの部位を有する回転子と、
該回転子の前記内側部位に対し前記回転子の回転軸に平行する面で一方の端部を対向して配置され、両端部を除く側周面に巻線を施され、他方の端部を保持部材に保持された複数のティースを備えた固定子と、
を有し、
前記回転子の前記外側部位と前記内側部位の相対的移動方向は、前記巻線に通電されて発生し前記ティース内を透過する磁束流の方向と直交する方向である、ことを特徴とする回転電機。
9.同一回転中心を中心に回転する円環部を有し、位相のずれた位置に相対的に移動可能に構成された外側部位と内側部位の2つの部位を有する回転子と、
該回転子の前記外側部位に対し前記回転子の回転軸に平行する面で一方の端部を対向して配置され、両端部を除く側周面に巻線を施され、他方の端部を保持部材に保持された複数のティースを備えた固定子と、
を有し、
前記回転子の前記外側部位と前記内側部位の相対的移動方向は、前記巻線に通電されて発生し前記ティース内を透過する磁束流の方向と直交する方向である、ことを特徴とする回転電機。
2 ヘッドパイプ
3 ハンドル
4 ハンドル支持部
5 グリップ
6 フロントフォーク
7 前輪
8 前車軸
9 メータ
11 ヘッドランプ
12 フラッシャランプ
13 車休フレーム
14 シートレール
14a 後方側端部
15 シート
16 バッテリ
17 シートステー
18 リヤフェンダ
19 テイルランプ
21 フラッシュランプ
22 リヤアームブラケット
23 リヤアーム
23a 後端部
24 ピボット軸
25 後輪
26 リヤクッション
27 フートステップ
28 サイドスタンド
29 軸
31 リターンスプリング
32 アキシャルギャップ型電動モータ
33 駆動ユニット
34 ギアカバー
35 遊星ギア減速機
36 コントローラ
37a、37b 軸受
BO 回転中心軸線
38 回転子
39 固定子
41 回転子側ヨーク
41a 円環部
41b テーパー部
41c 第1の円筒部
41d 円環部
41e 第2の円筒部
42 界磁用磁石(磁石)
43 歯付き回転軸
44 後車軸
44a 先端部
45 ナット
46 固定子側ヨーク
46a 外周面
47(47u、47v、47w) ティース
48 ティース欠缺部位
49 コイル
51 モールド部
52 フランジ
53 ボルト
54 インバータ
55 エンコーダ基板
56 ワイヤハーネス
57a、57b、57c 磁極検出素子
58 挿入孔
58a、58b 内側面
59 スリット
61、62 磁束流
70 アキシャルギャップ型電動モータ(電動モータ)
71 回転子
72 回転軸
73 回転子側ヨーク
74 円環部
75 テーパー部
76 第1の円筒部
77 円環部
78 第2の円筒部
79 界磁用磁石
80 第1のステータコア
81 第1のティース
81a、81b 端面
81c 側面周囲
82 巻線
83 第1のステータ
84 第2のティース
84a、84b 端部
85 保持部材
86 装着孔
87 第2のステータ(コア)
88 固定子(ステータ)
89 スリット
90 ギア係合用歯部
91、92、93 減速歯車
94 モータ
95 ウォームギア
96 電源
97 コントローラ
98a、98b 磁束流
99a、99b 磁束流
101、102 磁性体
103 磁束
108 回転子
108−1 第1の回転子
108−2 第2の回転子
109 回転子ヨークの円環部
111 磁性体
112 磁性体
113 界磁用磁石
114 磁性体合体型磁石
Claims (11)
- 磁石を備え、回転軸を中心に回転する回転子と、
巻線を備え、該回転子に対向配置された固定子と、
を有し、
前記固定子が、前記回転子に対向する対向部を含む複数の第1部位と当該対向部を含まない第2部位との少なくとも2つの部位に分割されており、
前記第1部位と前記第2部位との間の磁気抵抗を調節可能に構成されており、
互いに隣接する一対の前記第1部位の対向部同士の間の磁気抵抗を各第1部位と前記第2部位との間の磁気抵抗よりも大きくし、前記磁石のN極とS極との間に形成される磁束を、前記互いに隣接する前記第1部位の対向部同士の間の空間を殆ど透過させずに前記第2部位を透過させ、前記第2部位を介して前記互いに隣接する一対の前記第1部位を流れる磁束流を形成する状態と、
互いに隣接する一対の前記第1部位の対向部同士の間の磁気抵抗を各第1部位と前記第2部位との間の磁気抵抗よりも小さくし、前記磁石のN極とS極との間に形成される磁束を、前記第2部位に殆ど流入させずに前記互いに隣接する一対の前記第1部位の対向部同士の間の空間を透過させ、前記一対の前記第1部位の対向部および当該一対の前記第1部位の対向部同士の間の空間を透過する磁束流を形成する状態と
に変更可能であり、
前記第2部位が前記第1部位に対して移動して、前記第1部位と前記第2部位との間の磁気抵抗を調節可能に構成されている、ことを特徴とする回転電機。 - 前記第1部位は、前記巻線を含み、前記第2部位は、前記巻線を含まない、請求項1に記載の回転電機。
- 前記第1部位は、その対向部側の第1端面と当該対向部とは反対側の第2端面との間に前記巻線を有する、請求項1または2に記載の回転電機。
- 前記第2端面が前記第2部位に対向している、請求項3に記載の回転電機。
- 前記第1部位と前記第2部位とが、それらの両方を通る磁束流の方向に分割されている、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の回転電機。
- 前記固定子は、前記巻線の外方で前記第1部位と前記第2部位とに分割されている、ことを特徴とする請求項5に記載の回転電機。
- 前記第2部位は、前記第1部位および前記第2部位の両方を通る磁束流の方向と交差する方向に移動可能である、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の回転電機。
- 前記第1部位の対向部側の第1端面は、当該対向部とは反対側の第2端面よりも大きく形成されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の回転電機。
- 前記互いに隣接する一対の前記第1部位の間の間隙が、前記第1端面では狭く、前記第2端面では広くなっている、請求項8に記載の回転電機。
- 前記互いに隣接する一対の前記第1部位の前記第1端面間の磁気抵抗が、当該隣接する一対の前記第1部位の前記第2端面間の磁気抵抗より小さい、請求項8または9に記載の回転電機。
- 前記互いに隣接する一対の前記第1部位の前記第1端面間の磁気抵抗が、前記第1端面と前記回転子との間の磁気抵抗より大きい、請求項8〜10のいずれか一項に記載の回転電機。
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