JP5333822B2 - めっき用導電性基材、それを用いた導体層パターン若しくは導体層パターン付き基材の製造方法、導体層パターン付き基材及び電磁波遮蔽部材 - Google Patents

めっき用導電性基材、それを用いた導体層パターン若しくは導体層パターン付き基材の製造方法、導体層パターン付き基材及び電磁波遮蔽部材 Download PDF

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Description

本発明は、めっき用導電性基材、パターニングされた導体層パターン若しくは導体層パターン付き基材の製造方法、導体層パターン付き基材及び電磁波遮蔽部材に関する。
電磁波を発生するディスプレイの表示面等を電磁波遮蔽する方法は、従来より種々の提案がなされている。例えば、被遮蔽面上に電磁波遮蔽塗料を全面塗布する方法、被遮蔽面上に金属箔を貼り合わせる方法、金属めっきされた繊維メッシュを樹脂シートにラミネートした電磁波遮蔽シートを被遮蔽面に貼り合わせる方法、導電性繊維をメッシュ状に編んだものを被遮蔽面に貼り合わせる方法等が一般的に行われている。
これらのうち、透明ガラス面、透明樹脂パネル面、陰極線管(CRT)やプラズマディスプレイパネル(PDP)などのディスプレイの表示面等を電磁波遮蔽する場合には、電磁波遮蔽用部材が薄くて、光透過性(透明性)が良好で、これらに相反する電磁波遮蔽性をバランスよく両立させるものとして、金属メッシュを用いた電磁波遮蔽用部材が主流になっている。
金属メッシュを電磁波シールド層として有する電磁波遮蔽用部材の製造法として、特許文献1には、メッシュ状に金属電着が可能な電着基板上に金属電解液を使用して金属を電着し、接着剤を介して電磁波遮蔽基板に接着転写して電磁波遮蔽板を作製する方法(以下、転写法という)が記載されている。上記の電着基板は、金属板等の導電性基板の上に、電着を阻害する絶縁性膜でメッシュパタ−ンと逆パターンを形成し、メッシュ状に金属電着が可能な電着部を露出させるようにして作製される。また、特許文献1には、絶縁層支持体上に凸状の導電性メッシュ層を形成した電着基板を用いる方法が記載されている。
特許文献2には、電子部品の回路パターンやセラミックコンデンサの電極パターンを作製するための金属層転写用ベースシートが開示されている。金属層転写用ベースシートは、ベース金属層および電気絶縁層を備え、ベース金属層の表面には、転写金属層を電解めっきにより形成するための凸状パターンが形成されており、電気絶縁層は、ベース金属層の表面における前記凸状パターンが形成されていない部分に、形成されているものである。金属層転写用ベースシートの製造法として、ベース金属層の表面に、ドライフィルムレジストなどを用いてエッチングレジストを凸状パターンと同一パターンで形成し、エッチングレジストで覆われず露出しているベース金属層の表面をエッチングして凹部を形成し、この後、エッチングレジストを除去し、エッチングされたベース金属層の全表面に電気絶縁層を形成し、次いで、凸状パターンが露出するまで電気絶縁層を研磨する方法が開示されている。このとき、電気絶縁層の表面とベース金属層の凸状パターンの表面は同一平面上に配置され面一となる。また、その作製方法の他の例として、めっきレジストからなる電気絶縁層を、ベース金属層の表面に、ドライフィルムレジストなどを用いて凸状パターンと逆パターン(反転パターン)で形成し、電気絶縁層の間から露出するベース金属層の表面に、電解めっき金属層を凸状パターンで形成するが、このとき、電解めっき金属層の厚みを、電気絶縁層よりも厚くする方法が記載されている。電解めっき金属層の表面を、電気絶縁層の表面よりも高く形成することによって、凸状パターン上に電気めっきにより形成された転写金属層を粘着シートに転写するときに、上記電気絶縁層がこの粘着シートに損傷を与えることを防止することができる旨記載されている。
また、従来、充放電サイクルに優れ、耐電圧が高く、容量の大きい電気二重層キャパシタを得る場合、正極及び負極に予めリチウムイオンを収蔵する必要があるとし(特許文献3)、正極及び負極の集電体にリチウムを収蔵する手段としては、穴の明いた集電体を利用することが有利としている(特許文献4)。ここで、穴明き集電体の具体的な例としては、エキスパンドメタル,パンチングメタル,網,発泡体及びフォトリソグラフィー法による穴明けが上げられる。が、これらの集電体は量産性に問題があるためコスト的に低価格化することが困難であった。
特開平11−26980号公報 特開2004−186416号公報 特許第3689948号公報 特許第3485935号公報
前記特許文献1に記載の転写法は、電磁波遮蔽部材の作製に当たりコスト低減をはかることができる方法として期待できる。
特許文献1には、電着基板の作製に際し、絶縁層をフォトレジストによって、形成することが記載されているが、このような電着基板を用いた場合、数回〜数十回程度の繰り返し使用は可能であるが、数百回〜数千回繰り返し使用が出来ず量産レベルにはならないという問題がある。これは、電着基板上のメッシュパターンを形成する絶縁層が、接着転写により剥離応力を受け、少々の繰り返し使用で導電性基材から絶縁層が剥離してしまうためである。
また、SiOを導電性基材上に作製し、これをフォトエッチングして絶縁層を形成した電着基板が開示されるが、フォトエッチングするので、その電着基板の作製の工程が増えるという問題がある。オーバーエッチングで凹部が開口方向に向かって狭くなるというという問題がある。
また、特許文献1には、金属基板面にフォトリソグラフィーや切削で必要な凹部を形成し、次いで、この凹部の中に強固な絶縁性樹脂を埋め込み、硬化させて、メッシュ状に金属電着が可能な電着部を有する電着基板を作製する方法が開示される。しかし、この方法で金属基板状に凹部を作製することは、パターンの精度、パターンの無欠陥、パターン作製の所要時間等に問題があり、生産性のよい方法とは言えない。また、絶縁層に絶縁性樹脂を使用すると、絶縁層の耐久性に問題がある。
また、特許文献1には、タンタルやチタン等の単体金属板、または、表面がこれらの金属面である場合には、電着部を構成する部分に相当する箇所にのみレジストを形成した後、陽極酸化して酸化チタン、酸化タンタル等の絶縁性酸化物層を形成し、次いでレジストを除去することにより、耐久性が極めて高く、かつ、反復使用性の極めて高い電着基板を作製することができること、陽極金属酸化層は、硬度が高く、傷がつきにくいこと、電着圧着に十分に耐えることができる絶縁性膜を持つことが開示される。
しかし、この場合、また、上記の場合も含めて、形成される凹状のメッシュパターン(電着部)においては、陽極酸化による絶縁性酸化物層は、極めて薄くその幅方向の断面が面一であり、形状的な凹凸を伴わないため、電着層を形状的に成形する作用はない。即ち、電着されるライン形状の制御が困難と言える。また、陽極酸化による絶縁性酸化物層のは耐久性が劣り、連続作業においては実用的に適さない。現に、Niの電鋳においては、毎回、転写前の陽極酸化を余儀なくされている。さらに、陽極酸化による絶縁性酸化物層は、絶縁性が低いため、高速電解めっきには適さない。ただし、アルミの陽極酸化による絶縁性酸化物層の場合は、比較的絶縁性が高いと言えるが、機械的耐久性に劣る。
また、特許文献1には、絶縁層支持体上に凸状の導電性メッシュ層を形成した電着基板を用いる方法が記載されているが、この方法によれば、実際は、導電性メッシュの側面にも金属が電着され、このことがメッシュ状電着金属層の接着転写に対する抵抗となり、剥離ができなかったり、剥離できたとしてもメッシュパターンに折れが発生し、電磁波シールド性が低下するといった不良が起こるという問題があることを、本発明者らは確認した。
特許文献2において、電気絶縁層の材料としては、有機絶縁樹脂が例示される。しかし、このような電気絶縁層の表面とベース金属層の凸状パターンの表面が同一平面上に配置され面一となっている金属層転写用ベースシートを用いて凸状パターン上に形成された転写金属層を粘着シートに転写する場合、電着基板上の電気絶縁層が、接着転写により剥離応力を受け、少々の繰り返し使用で導電性基材から絶縁層が剥離してしまうという問題がある。
また、特許文献2において、電解めっき金属層からなる凸状パターンの表面を電気絶縁層の表面よりも高く形成した金属層転写用ベースシートを用いて凸状パターン上に形成された転写金属層を粘着シートに転写する場合、凸状パターンの側面にも転写金属層がめっきされ、このことが転写金属層の接着転写に対する抵抗となり、転写金属層を凸状パターンから剥離できなかったり、剥離できたとしてもメッシュパターンに折れが発生し、電磁波シールド性が低下するといった不良が起こるという問題がある。
特許文献2において、金属層転写用ベースシートの製造法として、ベース金属層の表面上へのエッチングレジストの形成、エッチングレジストで覆われず露出しているベース金属層の表面のエッチングを含む場合には、その工程数が増え、生産性の良い方法とは言えない。
また、前記した集電体の作製方法では、量産性に問題があるためコスト的に低価格化することが困難であった。例えば、集電体にパンチングによって穴をあける方法においては、直径30μm以下の穴をパンチングによって形成する場合、パンチング金型は数十回〜数百回程度の繰り返し使用は可能であるが、数百回〜数千回の繰り返し使用が出来ず量産レベルにはならないという問題がある。また、集電体への穴明け工程をフォトリソグラフィー法によって行う場合、レジストパターンの形成工程、エッチング工程等の煩雑な工程が、製品の製造に際し、逐一に必要である。
穴パターンその他のパターンが施された金属箔(導体層パターン)は、穴の明いた集電体以外にも種々の態様と用途が考えられるが、その作製には、上記と同様の問題点がある。
本発明は、このような問題点に鑑み、パターニングされた導体層パターン若しくは導体層パターン付き基材を生産性よく製造することができ、しかも、それ自体作製が容易であるめっき用導電性基材及びその製造方法を提供するものである。
その上でさらに、さらに耐久性の優れためっき用導電性基材及びその製造方法を提供するものである。
また、本発明は、そのような導電性基材を用いた導体層パターン若しくは導体層パターン付き基材の製造方法、導体層パターン付き基材及びそれを用いた電磁波遮蔽部材を提供するものである。
本発明は、次のものに関する。
1. 導電性基材の表面に、絶縁層が形成されており、その絶縁層に開口方向に向かって幅広なめっきを形成するための凹部が形成されているめっき用導電性基材で、導電性基材の表面の硬度がHv170以上であり、前記絶縁層が、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)又は無機材料からなり、前記導電性基材の表面の算術平均粗さ(Ra)が0.03μm〜0.6μmで、表面の反射率が5〜60%であることを特徴とするめっき用導電性基材。
.導電性基材の表面を樹脂に転写した際のヘイズが5〜60である項1に記載のめっき用導電性基材。
. めっきを形成するための凹部が絶縁層に幾何学図形を描くように又はそれ自身幾何学図形を描くように形成されている項1又は2に記載のめっき用導電性基材。
. 絶縁層が、DLC、Al又はSiOである項1〜のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
. 絶縁層が、硬度が10〜40GPaのDLCからなる項1〜のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
. 凹部の最小幅が1〜40μm、凹部の最大幅が2〜60μm及び凹部の間隔が50〜1000μmである項1〜のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
. 凹部側面の角度が絶縁層側で30度以上90度未満である項1〜のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
. 凹部側面の角度が絶縁層側で30度以上60度以下である項1〜のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
. 絶縁層の厚さが、0.5〜20μmである項1〜のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
10. 導電性基材と絶縁層の間に、Ti、Cr、W、Siまたはそれらの窒化物又は炭化物のいずれか1以上を含む中間層を介在させている項1〜のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
11. 導電性基材の表面が、鋼又はTiからなる項1〜10のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
12. 導電性のロール(ドラム)またはロールに巻き付けるものである項1〜11のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
13. 項1〜12のいずれかに記載のめっき用導電性基材の凹部にめっきにより金属を析出させる工程を含むことを特徴とする導体層パターンの製造方法。
14. めっきにより析出させる金属の厚さを凹部の深さの2倍以下とする項13記載の導体層パターンの製造方法。
本発明のめっき用導電性基材は、めっきにより金属層が形成される凹部が開口方向に向かった幅広となっているため、めっきにより得られる導体層パターンの剥離が容易である。また、絶縁層をDLC又は無機材料からなるため導電性基材への密着性が優れ、その耐剥離性が優れる。その絶縁層は、中間層により導電性基材と絶縁層の間の密着性を向上させることができ、これにより、めっき用導電性基材の寿命を、さらに長くすることができる。
本発明の開口方向に向かって幅広の凹部を持つめっき用導電性基材は、導電性基材上に凸状のパターンを形成し、絶縁層を形成後に、絶縁層が付着している凸状のパターンを除去することにより凹部を作製することができるため、その製造が容易で、生産性に富む。
本発明のめっき用導電性基材は、導電性基材の硬度が高いため、絶縁層の導電性基材への密着性が向上し、めっき用導電性基材の耐久性に優れる。
本発明のめっき用導電性基材は、導電性基材の硬度が高いため、不要部へ析出した金属の粒などによる引掻き傷が発生しにくく、めっき用導電性基材の耐久性に優れる。
本発明のめっき用導電性基材は、表面の粗化形状が適正化されており、凹部へのめっきの析出性が良好で、かつめっき液中で析出した金属層が剥離するようなことがない。また、粗化により凸状のパターン形成工程が容易である。
本発明の導体層パターン若しくは導体層パターン付き基材の製造法によれば、めっきにより得られる導体層パターンの剥離が容易であるため、導体層パターン若しくは光透過性に優れた導体層パターン付き基材が容易に製造でき、また、電磁波シールド性又は導電性に優れた導体層パターン付き基材を容易に製造できる。さらに、また、このような導体層パターン若しくは導体層パターン付き基材を生産効率よく製造できる。
本発明における電磁波遮蔽部材及び電磁波遮蔽板は、特定の導体層パターンを使用することにより、電磁波シールド性に優れ、また、生産効率よく製造できる。電磁波遮蔽部材及び電磁波遮蔽板は光透過性にできる。
本発明におけるめっき用導電性基材は、パターン状のめっき部を有する導電性基材であって、導電性基材の表面に絶縁層が形成されており、その絶縁層に開口方向に向かって幅広なめっきを形成するための凹部(めっき部)が形成されている。この凹部の底面には導電性材料が露出している。
本発明において、導電性基材に用いられる導電性材料は、その露出表面に電解めっきで金属を析出させるために十分な導電性を有するものであり、金属であることが特に好ましい。また、その基材は表面に電解めっきにより形成された金属層を接着性支持体に転写させることができるように、その上に形成された金属層との密着力が低く、容易に剥離できるものであることが好ましい。このような導電性基材の材料としてはステンレス鋼、クロムめっきされた鋳鉄、クロムめっきされた鋼、チタン、チタンをライニングした材料、ニッケルなどが使用できる。
本発明において、導電性基材に用いられる導電性材料は、Hv170以上の硬度を有するものであることが好ましい。下地となる導電性基材の硬度が上がることにより、硬質皮膜である絶縁層の密着性が向上する。なぜならば、導電性基材の表面は高硬度の絶縁層によって覆われているが、下地となる導電性基材が軟らかいと導電性基材の変形に絶縁層の膜が追従できなくなり、絶縁層も剥離してしまう。導電性基材を硬くすることによってこの現象が抑制され、めっき用導電性基材の繰返し使用時に傷が付きにくくなることが筆者らの最近の検討により判明した。例えば、スクラッチ試験法などで測定することにより、導電性基材の硬度が上がると臨界荷重値が上がることでその効果を定量的に確認することが出来る。このように、導電性基材の表面の硬度を向上させることで、絶縁層の密着性が向上し、めっき用導電性基材の寿命も向上する。
例えば、その寿命向上の効果は、次のような場合に確認することが出来る。電解めっきで金属を析出させる工程において、ピンホールと呼ばれる微小の穴が開いていることがある。このピンホールから析出する金属は、面積が小さいために接着性支持体に転写されず、めっき用導電性基材にそのまま残ることがある。それが複数回の転写工程を経てもめっき用導電性基材上に残る場合、厚く成長し、めっきされた金属の粒となって何かの衝撃で取れることがある。そのめっきされた金属の粒がめっき用導電性基材の表面を引っ掻くことでめっき用導電性基材に傷が入ることが起こり得る。先述の通り、導電性基材を硬くすることによってこの現象が抑制され、傷が発生しにくくなることで、めっき用導電性基材の繰返し使用における寿命が向上する。また別の理由として、基材の高硬度化により、めっき用導電性基材のハンドリング時の傷が発生しにくくなることが挙げられる。
導電性基材に用いられる導電性材料の表面の硬度は、Hv210以上であることがより好ましく、Hv300以上であることがさらに好ましく、Hv350以上であることが最も好ましい。硬度の上限に特に制限はないが、たとえば、製造上、Hv2500までは通常可能である。
基材の硬度は、測定方法、測定条件によって変化するが、本発明において定義される基材の硬度は、微小硬度計により測定したものとする。微小硬さ試験方法の詳細に関してはJIS Z 2251に記載されているが、本発明では、ビッカース硬さ、荷重0.4903N、負荷速度0.04903N/秒、荷重保持時間10秒で測定した値を基材の硬度とする。測定は5点以上行い、最大値と最小値を切り捨てた平均値を採用するものとする。
導電性材料は、材料そのものの硬度がHv170に達していなくても、研磨やブラスト加工といった、加工硬化を利用して、導電性基材表面の硬度を上げても良い。加工硬化とは、研磨などにより金属表面に応力が加わり結晶のすべりが生じ、そのすべり面に対する抵抗が増してくる。その抵抗がある程度大きくなると他の面に移動して塑性変形を起こす。冷間加工により変形が進むほど、抵抗が大きくなり、金属が硬さを増してくる現象である。また導電性材料は、表面の窒化、浸炭処理などにより硬化させることも出来る。窒化や浸炭とは活性化した窒素や炭素を金属の表面に拡散させることにより表面を硬化し、耐摩耗性などを付与する方法である。
本発明において硬度Hv170以上の材料としては、例えばチタンであれば純チタンJIS3種、JIS4種やチタン合金としてJIS 60種(6Al−4V)、61種(3Al−2.5V)などのα−β合金、またβ合金(KS15−3−3−3((株)神戸製鋼所製)、SAT2041(住友金属工業(株)製)などがある)に時効硬化処理を施したもの、JIS13種(0.15Pd)などの耐食性を有するものなどが好適に用いられる。
また、本発明の導電性基材は、表面が粗化されていることが好ましく、その範囲としては表面粗さが算術平均粗さ(Ra)で0.03μm〜0.6μmであることが好ましい。表面粗さが0.03μm未満であると、導電性基材上に析出するめっきの密着性が低下する傾向があり、めっき中に析出しためっきの被膜が液撹拌の勢いで剥離する、といった現象が起きやすくなる傾向がある。逆に表面粗さが0.6μmを超えると、析出しためっき膜と導電性基材との密着性が上がりすぎ、析出させた金属を接着層を有する別の基材に転写する際に、転写が不可能ではないが連続して行っているうちに歩留まりが低下する。表面を粗化する方法としては、研磨やブラストなどの方法を適宜用いるものとする。Raは0.03μm〜0.5μmであることがより好ましく、0.04μm〜0.4μmであることがさらに好ましい。
表面粗さ算術平均粗さ(Ra)の測定方法は、一般的な接触式の表面粗さ計を用い、JIS B0601に従って測定する。
バフ研磨などで表面を粗化させた場合、導電性基材のうねりが発生し接触式の表面粗さ計での測定値が必ずしも表面粗さを反映していない場合がある。そこで、補助的な手段として表面粗さを反映する導電性基材の表面反射率をも測定することが好ましい。導電性基材の入射角5%、反射角5%で測定した反射率が5%〜60%の範囲にあることが好ましい。反射率が60%を超えると、表面が平滑であるため、上記と同様めっきにより析出した金属と導電性基材との密着性が不十分である。また、反射率が5%未満になると、めっきにより析出した金属の転写がしにくくなる。本発明において反射率の測定は、分光光度計を用い、830nmの波長を測定するものとする。一方向の研磨筋を有する研磨仕上げによる粗化の場合、研磨筋に対して直角または平行方向に測定し、低い値のほうを採用するものとする。反射率は5%〜50%であることがより好ましく、10〜50%であることがさらに好ましい。
導電性機材表面の表面粗さを決定する別の方法として、その表面形状を樹脂に転写してその濁度(ヘイズ)を測定する、といった方法を用いることも出来る。ヘイズとは拡散光透過率を全光線透過率で除した値であり、JIS K7105に従って測定する。例えば十分な流動性のある液状(半硬化は削除)の紫外線硬化型樹脂で導電性基材を被覆し、透明フィルムを貼り合わせて紫外線を照射して硬化したもの、またホットメルト樹脂を加熱して導電性基材に押し当て、冷却後に剥離したものなどでヘイズを測定することができる。ただし、上記ヘイズ測定用の紫外線硬化性樹脂及びそれに貼り合わせる基材フィルムの組合せは透明なものでなければならず、樹脂及びそれに貼り合わせる透明フィルムの複合体状態でヘイズが2以下のものを選定するものとする。また、導電性基材の表面を正確に転写するためには、導電性基材の被覆時に樹脂が低粘度である必要がある。液状樹脂であれば100〜3000mPa・sの粘度の樹脂で転写することが好ましい。粘度は、市販の粘度計で測定することができ、測定温度は導電性基材の表面を転写させる際に液状樹脂を塗布する温度で測定すればよい。例えば、30℃で導電性基材の表面に転写用の樹脂を塗布するのであれば30℃での粘度が100〜3000mPa・sであればよい。ホットメルトのように加温して樹脂を導電性基材に圧着するのであれば、圧着する温度において溶融粘度が100〜3000mPa・sになっていれば良い。樹脂で被覆する際にはヘイズに影響を与えないように気泡や異物を巻込まないようにする。本発明においては導電性基材の表面形状を転写した樹脂のヘイズが5〜60であることが好ましい。ヘイズが5未満であると表面が平滑であるため、上記と同様めっきにより析出した金属と導電性基材との密着性が低下する傾向がある。また、ヘイズが60以上になると、めっきにより析出した金属の転写がしにくくなる傾向がある。ヘイズは5〜50であることがより好ましく、10〜40であることがさらに好ましく、10〜30であることが最も好ましい。
前記の導電性基材の形状としては、シート状、プレート状、ロール状、フープ状等がある。ロール状の場合は、シート状、プレート状のものを回転体(ロール)に取り付けたものであってもよい。フープ状の場合は、フープの内側の2箇所から数箇所にロールを設置し、そのロールにフープ状の導電性基材を通すような形態等が考えられる。ロール状、フープ状ともに金属箔を連続的に生産することが可能であるため、シート状、プレート状に比較すると、生産効率が高く、好ましい。導電性基材をロールに巻きつけて使用する場合、ロールとして導電性のものを使用し、ロールと導電性基材が容易に導通するようにしたものが好ましい。
絶縁層の厚さは、凹部の深さに対応する。凹部の深さは、析出するめっきの厚さとも関係するため、目的に応じて適宜決定される。絶縁層の厚さは、0.10μm以上100μm以下の範囲であることが好ましく、0.5μm以上10μm以下の範囲であることがより好ましい。絶縁層が薄すぎると絶縁層にピンホールが発生しやすくなるため、めっきした際に、絶縁層を施した部分にも金属が析出しやすくなる。絶縁層の厚さは、1〜5μmであることが特に好ましい。
上記の絶縁層は、ダイヤモンドに類似したカーボン薄膜、いわゆるダイヤモンドライクカーボン(以下、DLCとする)薄膜のうち、絶縁性を有するものにて形成することができる。DLC薄膜は、特に、耐久性、耐薬品性に優れているため、特に好ましい。
さらに、絶縁層をAl、SiOのような無機材料で形成することもできる。
凹部又は絶縁層の形状は、目的応じて適宜決定されるが、平面形状が、正三角形、二等辺三角形、直角三角形などの三角形、正方形、長方形、ひし形、平行四辺形、台形などの四角形、(正)六角形、(正)八角形、(正)十二角形、(正)二十角形などの(正)n角形(nは3以上の整数)、円、だ円、星型などの幾何学図形があり、これらを適宜組み合わせた模様としてもよい、これらの単位は、単独で又は2種類以上組み合わせて繰り返されることが可能である。一つのめっき用導電性基材において、凹部の形状と絶縁層の形状は、互いに対応した形状となる。
光透過性電磁波遮蔽部材の性能の観点からは溝状の凹部に囲まれる絶縁層を三角形とすることが最も有効であり、可視光透過性の点からは溝状の凹部が同一のライン幅なら、それにより囲まれる絶縁層が(正)n角形のとき、n数が大きいほど導体層パターンの開口率が上がる。
本発明の一例を図面を用いて説明する。
図1は、本発明のめっき用導電性基材の一例を示す一部斜視図である。図2は、図1のA−A断面図を示す。図2の(a)は凹部の側面が平面的であるが、(b)は凹部の側面になだらかな凹凸がある場合を示す。めっき用導電性基材1は、導電性基材2の上に絶縁層3が積層されており、絶縁層3に凹部4が形成されており、凹部4の底部は、導電性基材2が露出している。凹部4の底部は、導電性基材に導通している導体層であってもよい。
この例においては、絶縁層3は、幾何学図形としては正方形であり、この正方形の周りに凹部4が溝状に形成されている。
導電性基材2と絶縁層3の間には、絶縁層3の接着性の改善等を目的として、導電性又は絶縁性の中間層(図示せず)が積層されていてもよい。または、凹部4は、その幅が、開口方向に向かって全体として幅広になっている。図面のよう勾配αで一定に幅広になっている必要は必ずしもない。めっきにより形成される導体層パターンの剥離に問題がなければ、凹部は、開口方向に向かって幅が狭くなっている部分があってもよいが、このような部分がない方が良く、凹部は開口方向に向かって狭まっておらず全体として広がっていることが好ましい。特に、凹部の一側面がその対面と共に、底面に対して垂直となっている部分が高さ方向で1μm以上続く部分がないようにすることが好ましい。このようなめっき用導電性基材であれば、それを用いてめっきを行った後、析出した金属層をめっき用導電性基材から剥離するに際し、金属層と絶縁層との間の摩擦又は抵抗を小さくすることができ、その剥離がより容易になる。
凹部の側面は、必ずしも平面ではない。この場合には、図2(b)に示すように、前記の勾配αは、凹部の高さh(これは、すなわち、絶縁層の厚さとなる)と凹部の側面の幅s(水平方向で凹部の側面の幅方向)を求め、
Figure 0005333822
によってαを決定する。
αは、角度で30度以上90度未満が好ましく、30度以上60度以下が特に好ましい。この角度が小さいと作製が困難となる傾向があり、大きいと凹部にめっきにより形成し得た金属層(導体層パターン)を剥離する際、又は、別の基材に転写する際の抵抗が大きくなる傾向がある。
本発明のめっき用導電性基材における絶縁層の平面形状及びその厚さ若しくは凹部の深さは、本発明のめっき用導電性基材を用いて得られるパターン化金属の用途に応じて適宜決定される。
上記めっき用導電性基材の凹部は、めっきにより生成するパターン化金属の形状に対応するが、同様に導体層パターン付き基材における導体層パターンに対応するものであり、その導体層パターンは、最終的に電磁波遮蔽部材を作製したときの電磁波シールド層に対応するものである。
また、絶縁層の厚さは、前記と同様であるが、これに対応するように、本発明のめっき用導電性基材における凹部4の深さは、0.1〜100μmであることが好ましく、0.5〜10μmであることがより好ましく、1〜5μmであることが特に好ましい。
本発明のめっき用導電性基材を用いて転写法により光透過性電磁波遮蔽部材を作製するために使用するときは、図2に示すような凹部4の幅は、開口部の幅dが2〜60μm、底部の幅d′が1〜40μmで有ることが好ましい。また、凹部4の開口部の幅dは4〜15μm、底部の幅d′は3〜10μmであることが特に好ましい。凹部4の中心間隔(ラインピッチ)は50〜1000μmであることが好ましく、特に100〜400μmであることが好ましい。溝の幅及びその間隔は、導体層パターンの開口率を好ましくは50%以上、特に好ましくは80%以上とすることを考慮して決定する。
なお、本発明において、凹部の中心間隔(ラインピッチ)は、凹部によって形成されている絶縁層の図形パターンが複雑な図形であったり、複数の図形の組み合わせであったりして簡単に決定できない場合は、パターンの繰り返し単位を基準としてその面積を正方形の面積に換算し、その一辺の長さであると定義する。
ディスプレイ用の電磁波遮蔽材における可視光透過性の点からは、電磁波遮蔽材における上記のような幾何学図形を描く導体層パターン開口率は50%以上であることが必要とされ、導体層パターンの開口率は80%以上であることがさらに好ましい。導体層パターンの開口率は、電磁波遮蔽材の有効面積(例えば、上記の幾何学図形が描かれている範囲の面積等電磁波遮蔽に有効に機能する範囲の面積)に対するその有効面積から導電層で覆われている面積を引いた面積の比の百分率である。
本発明のめっき用導電性基材を用いて穴明き金属箔を作製するために使用するときは、図2に示すような絶縁層3は、その底面(導電性基材との接触面)の面積が1〜1×10平方ミクロンメートルであることが好ましく、絶縁層の間隔(凸部と凸部の最短距離)が1〜1000μmであることが好ましい。また、絶縁層3は、底面の面積が1×10〜1×10平方ミクロンメートルであることがより好ましく、絶縁層の間隔が10〜100μmであることがより好ましい。絶縁層底面の面積及びその間隔は、導体層パターンの開口率を好ましくは10%以上、特に好ましくは30%以上とすることを考慮して決定する。このような穴明き金属箔は、キャパシタの集電体として有用である。
本発明におけるめっき用導電性基材の製造方法としては、導電性基材の表面に、導電性基材を露出させている凹部によって幾何学図形が描かれるように絶縁層を形成する工程を含む。
この工程は、(A)導電性基材の表面に、除去可能な凸状のパターンを形成する工程、(B)除去可能な凸状のパターンが形成されている導電性基材の表面に、絶縁層を形成する工程
及び
(C)絶縁層が付着している凸状のパターンを除去する工程
を含む。
上記(A)導電性基材の表面に、除去可能な凸状のパターンを形成する工程は、フォトリソグラフ法を利用して、レジストパターンを形成する方法を利用することができる。
この方法は、
(a−1)導電性基材の上に感光性レジスト層を形成する工程、
(a−2)感光性レジスト層を導体層パターンに対応したマスクを通して露光する工程及び
(a−3)露光後の感光性レジスト層を現像する工程
を含む。
また、上記(A)導電性基材の表面に、除去可能な凸状のパターンを形成する工程は、
(b−1)導電性基材の上に感光性レジスト層を形成する工程、
(b−2)感光性レジスト層に導体層パターンに対応した部分にマスクをせずレーザー光を照射する工程
及び
(b−3)レーザー光を照射後の感光性レジスト層を現像する工程
を含む。
感光性レジストとしては、よく知られたネガ型レジスト(光が照射された部分が硬化する)を使用することができる。また、このとき、マスクもネガ型マスク(凹部に対応する部分は光が通過する)が使用される。また、感光性レジストとしてはポジ型レジストを用いることができる。これらの方式の対応して上記a法及びb法における光照射部分が適宜決定される。
具体的方法として、導電性基材上にドライフィルムレジスト(感光性樹脂層)をラミネートし、マスクを装着して露光することにより、凸状パターンとして残存させる部分を硬化状態に不要部を現像可能状態とし、不要部を現像して除去することにより形成することができる。また、凸状パターンは、導電性基材に液状レジストを塗布した後に溶剤を乾燥するかあるいは仮硬化させた後、マスクを装着して露光することにより、凸状パターンとして残存させる部分を硬化状態に不要部を現像可能状態とし、不要部を現像して除去することにより形成することもできる。液状レジストは、スプレー、ディスペンサー、ディッピング、ロール、スピンコート等により塗布できる。
上記において、ドライフィルムレジストをラミネートし、又は液状レジストを塗布した後に、マスクを介して露光する代わりにレーザー光などでマスクを使用せず直接に露光する方法を採用することもできる。光硬化性樹脂にマスクを介して又は介さずして活性エネルギー線を照射することでパターニングできればその態様は問わない。
導電性基材のサイズが大きい場合などはドライフィルムレジストを用いる方法が生産性の観点からは好ましく、導電性基材がめっきドラムなどの場合は、ドライフィルムレジストをラミネートし、又は液状レジストを塗布した後にマスクを介さずにレーザー光などで直接に露光する方法が好ましい。
前記において、感光性レジストの代わりに熱硬化性樹脂を用い、レーザー光の照射により熱硬化性樹脂の不要部を除去する方法によっても行うことができる。
印刷法を用いてレジストパターン(凸状パターン)を形成することができるが、この場合には、レジストパターンの印刷方法としては様々な方法を用いることができる。例えば、スクリーン印刷、凸版印刷、凸版オフセット印刷、凸版反転オフセット印刷、凹版印刷、凹版オフセット印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷などを用いることができる。レジストとしては光硬化性又は熱硬化性の樹脂が使用できる。印刷後、光照射又は熱によりレジストを硬化させる。
本発明におけるめっき用導電性基材の製造方法の一例を図面を用いて説明する。
図3は、めっき用導電性基材の製造方法を示す工程の一例を断面図で示したものである。
導電性基材2の上に感光性レジスト層(感光性樹脂層)5形成されている(図3(a))。この積層物の感光性レジスト層(感光性樹脂層)5に対し、フォトリソグラフ法を適用して感光性レジスト層5をパターン化する(図3(b))。パターン化は、パターンが形成されたフォトマスクを感光性レジスト層5の上に載置し、露光した後、現像して感光性レジスト層5の不要部を除去して突起部6を残すことにより行われる。突起部6の形状とそれからなる凸状パターンは、導電性基材2上の凹部4とそのパターンに対応するよう考慮される。
この時、突起部6の断面形状において、その側面は、導電性基材に対して垂直であること、又は、突起部6が導電性基材2に接する端部に対して、突起部6の側面上方の少なくとも一部がその端部に覆い被さるような位置にあることが好ましい。突起部6の幅で言う場合は、凸状パターン幅の最大値dは、凸状パターンと導電性基材2に接する幅dと等しいか大きくすることが好ましい。これは、形成される密着性のよい絶縁層の凹部幅はdによって決定されるからである。ここで、突起部6の断面形状で、突起部6の幅の最大値dが突起部6と導電性基材2に接する幅dと等しいか大きくする方法としては、突起部6の現像時にオーバ現像するか、形状がアンダーカットとなる特性を有するレジストを使用すれば良い。dは凸部の上部で実現されていることが好ましい。
除去可能な凸部のパターンを形成する突起部6の形状は、凹部の形状に対応づけられるが、その作製の容易性から、最大幅1μm以上、間隔が1μm以上、高さが1〜50μmであることが好ましい。めっき用導電性基材を、光透過性電磁波遮蔽部材用の導体層パターンを作製するために使用するときは、突起部6は、最大幅1〜40μm、間隔が50〜1000μm及び高さ1〜30μmであることがそれぞれ好ましい。特に最大幅3〜10μm、間隔が100〜400μmであることが好ましい。また、めっき用導電性基材を、穴明き金属箔を作製するために使用するときは、前記したような絶縁層3が形成されるように、平面形状が適宜の大きさの円形又は矩形である突起部を適当な間隔に配置する。
前記した(B)除去可能な凸状パターンが形成されている導電性基材の表面に、絶縁層を形成する工程について、説明する。
突起部6からなる凸状パターンを有する導電性基材2の表面に絶縁層7を形成する(図3(c))。
絶縁層としてDLC薄膜を形成する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、アーク放電法、イオン化蒸着法等の物理気相成長法、プラズマCVD法等の化学気相成長法等のドライコーティング法を採用し得るが、成膜温度が室温から制御できる高周波やパルス放電を利用するプラズマCVD法が特に好ましい。
上記DLC薄膜をプラズマCVD法で形成するために、原料となる炭素源として炭化水素系のガスが好んで用いられる。例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等のアルカン系ガス類、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等のアルケン系ガス類、ペンタジエン、ブタジエン等のアルカジエン系ガス類、アセチレン、メチルアセチレン等のアルキン系ガス類、ベンゼン、トルエン、キシレン、インデン、ナフタレン、フェナントレン等の芳香族炭化水素系ガス類、シクロプロパン、シクロヘキサン等のシクロアルカン系ガス類、シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロアルケン系ガス類、メタノール、エタノール等のアルコール系ガス類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系ガス類、メタナール、エタナール等のアルデヒド系ガス類等が挙げられる。上記ガスは単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。また、元素として炭素と水素を含有する原料ガスとして上記した炭素源と水素ガスとの混合物、上記した炭素源と一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス等の炭素と酸素のみからなる化合物のガスとの混合物、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス等の炭素と酸素のみから構成される化合物のガスと水素ガスとの混合物、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス等の炭素と酸素のみからなる化合物のガスと酸素ガスまたは水蒸気との混合物等が挙げられる。更に、これらの原料ガスには希ガスが含まれていてもよい。希ガスは、周期律表第0属の元素からなるガスであり、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等が挙げられる。これらの希ガスは単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。
絶縁層は、その全体を、上述した絶縁性のDLC薄膜によって形成してもよいが、当該DLC薄膜の、金属板等の導電性基材に対する密着性を向上させて、絶縁層の耐久性をさらに向上させるためには、この両者の間に、Ti、Cr、W、Siもしくはそれらの窒化物又は炭化物から選ばれる一種以上の成分又はその他よりなる中間層を介挿することが好ましい。
上記SiまたはSiCの薄膜は、例えば、ステンレス鋼などの金属との密着性に優れる上、その上に積層する絶縁性のDLC薄膜との界面においてSiCを形成して、当該DLC薄膜の密着性を向上させる効果を有している。
中間層は、前記したようなドライコーティング法により形成させることができる。
中間層の厚みは、1μm以下であることが好ましく、生産性を考慮すると0.5μm以下であることが更に好ましい。1μm以上コーティングするには、コーティング時間が長くなると共に、コーティング膜の内部応力が大きくなるため適さない。
絶縁層をAl、SiOのような無機材料で形成する場合にも、スパッタリング法、イオンプレーティング法といった物理的気相成長法やプラズマCVDといった化学気相成長法を用いることができる。例えばスパッタリング法で形成する場合には、ターゲットをSiまたはAlにして反応性ガスとして酸素、窒素などの導入することでSiO、Siなどの酸化物、窒化物を成膜することができる。また、イオンプレーティング法を用いる場合にはSiやAlを原料とし、電子ビームをこれらに照射することで蒸発させ、基板に成膜することができる。その際に、酸素、窒素、アセチレンといった反応性ガスを導入することで酸化物、窒化物、炭化物を成膜することができる。
また、CVD法で成膜する場合には金属塩化物、金属水素化物、有機金属化合物などのような化合物ガスを原料とし、それらの化学反応を利用して成膜することでできる。酸化シリコンのCVDは、例えばTEOS、オゾンを用いたプラズマCVDで行える。窒化シリコンのCVDは、例えばアンモニアとシランを用いたプラズマCVDで行える。
次に、前記した(C)絶縁層が付着している凸状パターンを除去する工程について説明する。絶縁層7が付いている状態(図3(c)参照)で、突起部6からなる凸状パターンを除去する(図3(d)参照)。
絶縁層の付着しているレジストの除去には、市販のレジスト剥離液や無機、有機アルカリ、有機溶剤などを用いることができる。また、パターンを形成するのに使用したレジストに対応する専用の剥離液があれば、それを用いることもできる。
剥離の方法としては、例えば薬液に浸漬することでレジストを膨潤、破壊あるいは溶解させた後これを除去することが可能である。液をレジストに十分含浸させるために超音波、加熱、撹拌等の手法を併用しても良い。また、剥離を促進するためにシャワー、噴流等で液をあてることもできるし、柔らかい布や綿棒などでこすることもできる。
また、絶縁層の耐熱が十分高い場合には高温で焼成してレジストを炭化させて除去することもできるし、レーザーを照射して焼き飛ばす、といった方法も利用できる。
剥離液としては、例えば、3%NaOH溶液を用い、剥離法としてシャワーや浸漬が適用できる。
導電性基材2上に形成される絶縁層と、突起部6の側面に形成される絶縁層とでは、性質又は特性が異なるようにする。すなわち、硬度が、前者の方が後者より大きい。DLC膜をプラズマCVD法で形成するときは、このようになる。一般に絶縁膜を形成するときに、絶縁材料の移動速度が例えば90度の角度で異なるような場合に、上記のように形成される膜の性質又は特性が異なるようになる。
突起部6を除去するとき、絶縁層は、この境界で分離され、その結果、凹部の側面が、傾斜角αを有するようになる。傾斜角αは、角度で30度以上90度未満が好ましく、30度以上60度以下がより好ましく、40度以上60度以下が特に好ましく、DLC膜をプラズマCVDで作製する場合、ほぼ40〜60度に制御することが容易になる。すなわち、凹部4は、開口方向に向かって幅広になるように形成される。傾斜角αの制御方法としては、突起部6の高さを調整する方法が好ましい。突起部6の高さが大きくなるほど、傾斜角αを大きく制御しやすくなる。
上記の絶縁層の形成において、導電性基材はレジストの影にならないので、導電性基材上の絶縁層は性質が均一である。これに対し、凸状パターンの側面への絶縁層の形成は、凸状パターンの側面が導電性基材上の膜厚方向に対し角度を有しているため、形成される絶縁層(特にDLC膜)は、導電性基材上の絶縁層と同じ特性(例えば、同じ硬度)の絶縁層が得られない。このような異質な絶縁層の接触面においては、絶縁層の成長に伴い絶縁層の境界面が形成され、しかも、その境界面は絶縁層の成長面であることから、滑らかである。このため、突起部からなる凸状パターンを除去するとき、絶縁層(特にDLC膜)は、この境界で容易に分離される。さらに、この境界面、即ち、凹部側面となる傾斜角αは、導電性基材上の膜厚方向に対し突起部の側面で絶縁層の成長が遅れるため、結果として、境界面の傾斜角は、上記のように制御される。
本発明において導電性基材上に形成された絶縁層の硬度は、10〜40GPaであることが好ましい。硬度が10GPa未満の絶縁層は軟質であり、本導電性基材をめっき用版として用いる際に、繰り返し使用における耐久性が低くなる。硬度が40GPa以上では、導電性基材を折り曲げ等の加工をした際に基材の変形に追随できなくなり、絶縁層にひびや割れが発生しやすくなる。導電性基材上に形成される絶縁層の硬度は、より好ましくは12〜30GPaである。
これに対して、凸部側面に形成される絶縁層の硬度は1〜15GPaであることが好ましい。凸部側面に形成される絶縁層は、少なくとも導電性基材上に形成される絶縁層の硬度よりも低くなるように形成しなければならない。そうすることにより両者間に境界面が形成され、後の絶縁層の付着した突起部からなる凸状パターンを剥離する工程を経た後に、幅広な凹部が形成されることになる。突起部側面に形成される絶縁層の硬度は1〜10GPaであることがより好ましい。
絶縁層の硬度は、ナノインデンテーション法を用いて測定することができる。ナノインデンテーション法とは、先端形状がダイヤモンドチップから成る正三角錐(バーコビッチ型)の圧子を薄膜や材料の表面に押込み、そのときの圧子にかかる荷重と圧子の下の射影面積から硬度を求める。ナノインデンテーション法による測定として、ナノインデンターという装置が市販されている。導電性基材上に形成された膜の硬度はそのまま導電性基材上から圧子を押し込んで測定することができる。また、凸部側面に形成される膜の硬度を測定するためには、導電性基材の一部を切り取って樹脂で注型し、断面から凸部側面に形成された絶縁層に圧子を押し込んで測定することができる。通常ナノインデンテーション法では圧子に1〜100mNの微少荷重をかけて硬度測定を行うが、本発明では3mNの荷重で10秒間負荷をかけて測定した値を硬度の値として記載している。
このようにして、めっき用導電性基材1を作製することができる。
図4は、中間層を有するめっき用導電性基材とその前駆体の断面図を示す。
突起部6からなる凸状パターンが形成された導電性基材2の表面に、絶縁層7を形成する前に、中間層8を形成することが好ましい(図4(c′))。中間層としては、前記したものが使用でき、その形成方法も前記したとおりである。中間層8を形成した場合、得られるめっき用導電性基材は、凹部4の底部は、導電性基材2が露出しており、それ以外では、中間層8の上に絶縁層7が形成されている(図4(d′))。また、中間層は、凸状パターン6の形成前に、導電性基材2の表面に形成しても良い。この後、その表面に、前記したように導電性基材を露出させている凹部によって幾何学図形が描かれるように絶縁層を形成する工程を行っても良い。この場合、中間層として、電界めっきが十分可能な程度に導電性のものを使用した場合、凹部の底部はその中間層のままでよいが、十分な導電性を有していない場合は、ドライエッチング等の方法により、凹部の底部の中間層を除去し、導電性基材2を露出させる。
本発明において、導体層パターン付き基材は、
(イ)前記のめっき用導電性基材の凹部にめっきにより金属を析出させる工程
及び
(ロ)上記導電性基材の凹部に析出させた金属を別の基材に転写する工程
を含む方法により製造される。
本発明におけるめっき法は公知の方法を採用することができる。めっき法としては、電解めっき法、無電解めっき法その他のめっき法を適用することができる。
電解めっきについてさらに説明する。例えば、電解銅めっきであれば、めっき用の電解浴には硫酸銅浴、ほうふっ化銅浴、ピロリン酸銅浴、または、シアン化銅浴などを用いることができる。このときに、めっき浴中に有機物等による応力緩和剤(光沢剤としての効果も有する)を添加すれば、より電着応力のばらつきを低下させることができることが知られている。また、電解ニッケルめっきであれば、ワット浴、スルファミン酸浴などを使用することができる。これらの浴にニッケル箔の柔軟性を調整するため、必要に応じてサッカリン、パラトルエンスルホンアミド、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタリントリスルホン酸ナトリウムのような添加剤、及びその調合剤である市販の添加剤を添加してもよい。さらに、電解金めっきの場合は、シアン化金カリウムを用いた合金めっきや、クエン酸アンモニウム浴やクエン酸カリウム浴を用いた純金めっきなどが用いられる。合金めっきの場合は、金−銅、金−銀、金−コバルトの2元合金や、金−銅−銀の3元合金が用いられる。他の金属に関しても同様に公知の方法を用いることができる。電界めっき法としては、例えば、「現場技術者のための実用めっき」(日本プレーティング協会編、1986年槇書店発行)第87〜504頁を参照することができる。
次に、無電解めっきについてさらに説明する。無電解めっき法としては、銅めっき、ニッケルめっき、代表的であるが、その他、すずめっき、金めっき、銀めっき、コバルトめっき、鉄めっき等が挙げられる。工業的に利用されている無電解めっきのプロセスでは、還元剤をめっき液に添加し、その酸化反応によって生ずる電子を金属の析出反応に利用するのであり、めっき液は、金属塩、錯化剤、還元剤、pH調整剤、pH緩衝材、安定剤等から成り立っている。無電解銅めっきの場合は、金属塩として硫酸銅、還元剤としてホルマリン、錯化剤としてロッセル塩やエチレンジアミン四酢酸(EDTA)が好んで用いられる。また、pHは主として水酸化ナトリウムによって調整されるが、水酸化カリウムや水酸化リチウムなども使用でき、緩衝剤としては、炭酸塩やリン酸塩が用いられ、安定化剤としては、1価の銅と優先的に錯形成するシアン化物、チオ尿素、ビピリジル、O−フェナントロリン、ネオクプロイン等が用いられる。また、無電解ニッケルめっきの場合は、金属塩として硫酸ニッケル、還元剤には、次亜りん酸ナトリウムやヒドラジン、水素化ホウ素化合物等が好んで用いられる。次亜りん酸ナトリウムを用いた場合には、めっき皮膜中にりんが含有され、耐食性や耐摩耗性が優れている。また、緩衝剤としては、モノカルボン酸またはそのアルカリ金属塩を使用する場合が多い。錯化剤は、めっき液中でニッケルイオンと安定な可溶性錯体を形成するものが使用され、酢酸、乳酸、酒石酸、りんご酸、クエン酸、グリシン、アラニン、EDTA等が用いられ、安定化剤としては、硫黄化合物や鉛イオンが添加される。無電解めっき法については上記非特許文献1の第505〜545頁を参照することができる。
さらに、還元剤の還元作用を得るためには、金属表面の触媒活性化が必要になることがある。素地が鉄、鋼、ニッケルなどの金属の場合には、それらの金属が触媒活性を持つため、無電解めっき液に浸漬するだけで析出するが、銅、銀あるいはそれらの合金、ステンレスが素地となる場合には、触媒活性化を付与するために、塩化パラジウムの塩酸酸性溶液中に被めっき物を浸漬し、イオン置換によって、表面にパラジウムを析出させる方法が用いられる。
本発明で利用できる無電解めっきは、例えば、めっき用導電性基材の凹部に、必要に応じてパラジウム触媒を付着させたあと、温度60〜90℃程度とした無電解銅めっき液に浸漬して、銅めっきを施す方法である。
無電解めっきでは、基材は必ずしも導電性である必要はない。しかし、基材を陽極酸化処理するような場合は、基材は導電性である必要がある。
特に、導電性基材の材質がNiである場合、無電解めっきするには、凹部を陽極酸化した後、無電解銅めっき液に浸漬して、銅を析出させる方法がある。
めっきによって出現又は析出する金属としては、銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、ニッケル、鉄、クロム等の導電性を有するものが使用されるが、20℃での体積抵抗率(比抵抗)が20μΩ/cm以下の金属を少なくとも1種類以上含むことが望ましい。本発明により得られる構造体を電磁波遮蔽シートとして用いる場合には電磁波を電流としてアースするためにこれを構成する金属は導電性が高い方が電磁波遮蔽性に優れるためである。このような金属としては、銀(1.62μΩ/cm)、銅(1.72μΩ/cm)、金(2.4μΩ/cm)、アルミニウム(2.75μΩ/cm)、タングステン(5.5μΩ/cm)、ニッケル(7.24μΩ/cm)、鉄(9.0μΩ/cm)、クロム(17μΩ/cm、全て20℃での値)などがあるが特にこれらに限定するものではない。できれば体積抵抗率が10μΩ/cmであることがより好ましく、5μΩ/cmであることがさらに好ましい。金属の価格や入手の容易さを考慮すると銅を用いることが最も好ましい。これらの金属は単体で用いてもよく、さらに機能性を付与するために他の金属との合金でも構わないし、金属の酸化物であってもよい。ただし、体積抵抗率が20μΩ/cmである金属が成分として最も多く含まれていることが導電性の観点から好ましい。
前記した導電性基材の凹部にめっきにより形成される金属層の厚さ(めっき厚さ)は、目的に応じて適宜決定される。めっき厚さは、十分な導電性を示す(このとき電磁波シールド性が十分に発現する)ためには、0.5μm以上であることが好ましく、導体層にピンホールが形成される(このとき、例えば、電磁波シールド性が低下する)可能性を小さくするためには、3μm以上の厚さであることがさらに好ましい。また、めっき厚さが大きすぎると、形成された金属層は幅方向にも広がる。これも目的に応じて、適宜調整される。このように、めっき厚さが大きすぎるとラインの幅が広くなり、得られる金属層を電磁波シールド層に利用するとき、その開口率が低下し、電磁波遮蔽部材の透明性、非視認性を低下させる傾向がある。したがって、電磁波遮蔽部材として、十分な透明性、非視認性を確保するためには、形成された金属層の厚みを20μm以下とすることが好ましく、さらに、めっきの時間を短縮し、生産効率をあげるためには、めっきの厚みは10μm以下であることがさらに好ましい。
前記した別の基材(導体層パターンが転写される基材)としては、ガラス、プラスチック等からなる板、プラスチックフィルム、プラスチックシートなどがある。ガラスとしては、ソーダガラス、無アルカリガラス、強化ガラス等のガラスを使用することができる。 プラスチックとしては、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性ポリエステル樹脂、酢酸セルロース樹脂、フッ素樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリウレタン樹脂、フタル酸ジアリル樹脂などの熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられる。プラスチックの中では、透明性に優れるポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂が好適に用いられる。別の基材の厚みは、0.5mm〜5mmがディスプレイの保護や強度、取扱い性から好ましい。
本発明における別の基材は、プラスチックフィルムが好ましい。このプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、EVAなどのポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂などのプラスチックからなるフィルムで全可視光透過率が70%以上のものが好ましい。これらは単層で使うこともできるが、2層以上を組合せた多層フィルムとして使用してもよい。前記プラスチックフィルムのうち透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、価格の点からポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリカーボネートフィルムが特に好ましい。
上記プラスチックフィルムの厚さは特に制限はないが、1mm以下のものが好ましく、厚すぎると可視光透過率が低下しやすくなる傾向がある。また、薄く成りすぎると取扱い性が悪くなることを勘案すると、上記プラスチックフィルムの厚さは5〜500μmがより好ましく、50〜200μmとすることがさらに好ましい。
これらのプラスチックフィルム等の別の基材は、得られる導体層パターン付き基材をディスプレイの前面からの電磁波の漏洩を防ぐための電磁波シールドフィルムなど透明性を要求される用途に使用するためには、透明であるもの(すなわち、透明基材)が好ましい。
上記の別の基材の導体層パターンが転写される面は、転写する際に粘着性を有していることが必要である。そのためには、基材自体が必要な粘着性を有していてもよいが、転写面に粘着層を積層しておくことが好ましい。
上記の粘着層は、転写時に粘着性を有しているもの又は加熱若しくは加圧下に粘着性を示すものが好ましい。粘着性を有しているものとしては、ガラス転移温度が20℃以下の樹脂が好ましく、ガラス転移温度が0℃以下である樹脂を用いることが最も好ましい。粘着層に用いる材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、活性エネルギー線の照射で硬化する樹脂等を使用することができる。加熱時に粘着性を示す場合、そのときの温度が高すぎると、透明基材にうねりやたるみ、カール等の変形が起こることがあるので、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、活性エネルギー線の照射で硬化する樹脂のガラス転移点は80℃以下であることが好ましい。上記熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、活性エネルギー線の照射で硬化する樹脂の重量平均分子量は、500以上のものを使用することが好ましい。分子量が500未満では樹脂の凝集力が低すぎるために金属との密着性が低下するおそれがある。
上記の熱可塑性樹脂として代表的なものとして以下のものがあげられる。たとえば天然ゴム、ポリイソプレン、ポリ−1,2−ブタジエン、ポリイソブテン、ポリブテン、ポリ−2−ヘプチル−1,3−ブタジエン、ポリ−2−t−ブチル−1,3−ブタジエン、ポリ−1,3−ブタジエン)などの(ジ)エン類、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルヘキシルエーテル、ポリビニルブチルエーテルなどのポリエーテル類、ポリビニルアセテート、ポリビニルプロピオネートなどのポリエステル類、ポリウレタン、エチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリスルホン、ポリスルフィド、フェノキシ樹脂、ポリエチルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリ−2−エチルヘキシルアクリレート、ポリ−t−ブチルアクリレート、ポリ−3−エトキシプロピルアクリレート)、ポリオキシカルボニルテトラメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリイソプロピルメタクリレート、ポリドデシルメタクリレート、ポリテトラデシルメタクリレート、ポリ−n−プロピルメタクリレート、ポリ−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリ−2−ニトロ−2−メチルプロピルメタクリレート、ポリ−1,1−ジエチルプロピルメタクリレート、ポリメチルメタクリレートなどのポリ(メタ)アクリル酸エステルが使用可能である。これらのポリマを構成するモノマーは、必要に応じて、2種以上共重合させて得られるコポリマとして用いてもよいし、以上のポリマ又はコポリマを2種類以上ブレンドして使用することも可能である。
活性エネルギー線で硬化する樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等をベースポリマとし、各々にラジカル重合性あるいはカチオン重合性官能基を付与させた材料が例示できる。ラジカル重合性官能基として、アクリル基(アクリロイル基)、メタクリル基(メタクリロイル基)、ビニル基、アリル基などの炭素−炭素二重結合があり、反応性の良好なアクリル基(アクリロイル基)が好適に用いられる。カチオン重合性官能基としては、エポキシ基(グリシジルエーテル基、グリシジルアミン基)が代表的であり、高反応性の脂環エポキシ基が好適に用いられる。具体的な材料としては、アクリルウレタン、エポキシ(メタ)アクリレート、エポキシ変性ポリブタジエン、エポキシ変性ポリエステル、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、アクリル変性ポリエステル等が挙げられる。活性エネルギー線としては、紫外線、電子線等が利用される。
活性エネルギー線が紫外線の場合、紫外線硬化時に添加される光増感剤あるいは光開始剤としては、ベンゾフェノン系、アントラキノン系、ベンゾイン系、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩、オニウム塩、ハロニウム塩等の公知の材料を使用することができる。また、上記の材料の他に汎用の熱可塑性樹脂をブレンドしても良い。
熱硬化性樹脂としては、天然ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリイソブチレン、ブチルゴム、ハロゲン化ブチル、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリイソブテン、カルボキシゴム、ネオプレン、ポリブタジエン等の樹脂と架橋剤としての硫黄、アニリンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、リグリン樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ホルマリン樹脂、金属酸化物、金属塩化物、オキシム、アルキルフェノール樹脂等の組み合わせで用いられるものがある。なおこれらには、架橋反応速度を増加する目的で、汎用の加硫促進剤等の添加剤を使用することもできる。
熱硬化性樹脂として、硬化剤を利用するものとしては、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、不飽和炭化水素基等の官能基を有する樹脂とエポキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、チオール基等の官能基を有する硬化剤あるいは金属塩化物、イソシアネート、酸無水物、金属酸化物、過酸化物等の硬化剤との組み合わせで用いられるものがある。なお、硬化反応速度を増加する目的で、汎用の触媒等の添加剤を使用することもできる。具体的には、硬化性アクリル樹脂組成物、不飽和ポリエステル樹脂組成物、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂組成物、ポリウレタン樹脂組成物等が例示される。
さらに、熱硬化性樹脂又は活性エネルギー線で硬化する樹脂としては、アクリル酸又はメタクリル酸の付加物が好ましいものとして例示できる。
アクリル酸又はメタクリル酸の付加物としては、エポキシアクリレート(n=1.48〜1.60)、ウレタンアクリレート(n=1.5〜1.6)、ポリエーテルアクリレート(n=1.48〜1.49)、ポリエステルアクリレート(n=1.48〜1.54)なども使うこともできる。特に接着性の点から、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレートが優れており、エポキシアクリレートとしては、1、6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、アリルアルコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル等の(メタ)アクリル酸付加物が挙げられる。エポキシアクリレートなどのように分子内に水酸基を有するポリマは接着性向上に有効である。これらの共重合樹脂は必要に応じて、2種以上併用することができる。
本発明で粘着性を有しているもの又は粘着性を示すもの(以下、これらを、「粘着剤」という)には、必要に応じて、架橋剤、硬化剤、希釈剤、可塑剤、酸化防止剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤や粘着付与剤などの添加剤を配合してもよい。
粘着層の厚さは、薄すぎると十分な強度を得られないため、めっきで形成された金属層を転写する際に、金属が粘着層に密着せず、転写不良が発生することがある。したがって、粘着層の厚みは、1μm以上であることが好ましく、量産時の転写信頼性を確保するためには3μm以上であることが更に好ましい。また、粘着層の厚さが厚いと、粘着層の製造コストが高くなるとともに、ラミネートした際に、粘着層の変形量が多くなるため、粘着層の厚みは30μm以下が好ましく、15μm以下がさらに好ましい。
別の基材に粘着剤を塗布して形成した粘着層を有するフィルムを、金属層が形成されている面に貼り合わせる際には、粘着剤の特性に応じて、必要ならば加熱される。
粘着剤は、導体層パターン付き基材が透明性を要求される用途に使用されるためには、透明であるものが好ましい。
最終的に得られる導体層パターン付き基材の導体層パターン(金属パターンを黒化処理したときは黒化処理された導体層パターンを意味する)のライン幅は、40μm以下、ライン間隔は50μm以上の範囲とすることが好ましい。また、導体層パターン(幾何学図形)の非視認性の観点からライン幅は25μm以下、可視光透過率の点からライン間隔は120μm以上がさらに好ましい。ライン幅は、あまりに小さく細くなると表面抵抗が大きくなりすぎて遮蔽効果に劣るので1μm以上が好ましい。ライン間隔は、大きいほど開口率は向上し、可視光透過率は向上する。本発明によって得られる導体層パターンをディスプレイ前面に使用する場合、開口率は50%以上が必要であるが、60%以上がさらに好ましい。ライン間隔が大きくなり過ぎると、電磁波遮蔽性が低下するため、ライン間隔は1000μm(1mm)以下とするのが好ましい。なお、ライン間隔は、幾何学図形等の組合せで複雑となる場合、繰り返し単位を基準として、その面積を正方形の面積に換算してその一辺の長さをライン間隔とする。
また、本発明によって得られる導体層パターン付き基材をディスプレイ前面用途に使用する場合、可視光透過率の点から、電磁波シールド機能を担わせる部分の開口率は50%以上が必要であるが、60%以上が好ましく、特に80%以上が好ましい。開口率が大きすぎるとライン幅が小さくなりすぎるため、開口率は97%以下であることが好ましい。ライン間隔という観点からは、ライン間隔は1000μm(1mm)以下とするのが好ましい。ライン間隔が大きくなり過ぎると、電磁波遮蔽性が低下する傾向がある。なお、ライン間隔は、幾何学図形等の組合せで複雑となる場合、繰り返し単位を基準として、その面積を正方形の面積に換算してその一辺の長さをライン間隔とする。可視光透過率の点からライン間隔は、50μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、120μm以上が特に好ましい。ライン間隔は、大きいほど開口率は向上し、可視光透過率は向上する。
また、導体層パターンの厚みは100μm以下が好ましく、ディスプレイ前面の電磁波遮蔽シートとして適用した場合、厚みが薄いほどディスプレイの視野角が広がり電磁波遮蔽材料として好ましく、また、金属層をめっきにより形成させるのにかかる時間を短縮することにもなるので40μm以下とすることがより好ましく、18μm以下であることがさらに好ましい。あまりに厚みが薄いと表面抵抗が大きくなりすぎて電磁波遮蔽効果に劣るようになり、また、導体層パターンの強度が劣り、転写時の導電性基材からの剥離が困難になるため0.5μm以上が好ましく、さらに1μm以上がさらに好ましい。
析出する金属層の厚さに対して相対的に凹部がより深くなることにより、析出する金属層をより形状的に規正することができるという観点から、めっきにより形成される金属箔の厚さを絶縁層の高さの2倍以下とすることが好ましく、特に1.5倍以下、さらに1.2倍以下とすることが好ましいが、これに制限されるものではない。
めっきの程度を、析出する金属層が凹部内に存在する程度とすることができる。このような場合であっても、凹部形状が開口方向に幅広であるため、さらには、絶縁層により形成される凹部側面の表面を平滑にできるため、金属箔パターンの剥離時のアンカー効果を小さくできる。また、析出する金属層の幅に対する高さの割合を高くすることが可能となり、透過率をより向上させることができる。
上記のめっき用導電性基材を用いた導体層パターン付き基材の作製例を次に示す。
図5は、導体層パターン付き基材の作製例の前半を示す断面図である。また、図6はその後半を示す断面図である。
上記のめっき用導電性基材1上に、前記しためっき工程により、凹部4内にめっきを施し、導体層パターン9を形成する(図5(e))。ついで、別個に準備された転写用基材10、これは、別の基材(透明基材)11に粘着剤層12が積層されている。導体層パターン8が形成されためっき用導電性基材1に転写用基材10を粘着剤層12を向けて圧着する準備を行う(図5(f))。
ついで、導体層パターンが形成されためっき用導電性基材1に転写用基材9を粘着剤層12を向けて圧着する(図6(g))。このとき、粘着剤層12が絶縁層7に接触してもよい。
ついで、転写用基材10を引きはがすと導体層パターン9は、その粘着剤層12に接着してめっき用導電性基材1の凹部4から剥離され、この結果、導体層パターン付き基材13が得られる(図6(h))。
図7は、めっき用導電性基材の凹部内にめっきにより導体層パターンを形成した状態を示す断面図、図8は、その凹部内の導体層パターンを転写して得られた導体層パターン付き基材の断面図を示す。
めっき用導電性基材にめっきした際、めっきは等方的に生長するため、導電性基材の露出部分から始まっためっきの析出は、それが進むと凹部からあふれて絶縁層に覆い被さるように突出して析出する。転写用基材への貼着の観点から、突出するようにめっきを析出させることが好ましい。しかし、このとき、めっきの析出を凹部4内に収まる程度に施しても良い。この状態を図7に示す。この場合でも、図8に示すように、転写用基材を圧着することにより、導体層パターン9を粘着剤層12に転着して、めっき用導電性基材1から導体層パターン9を剥離して、導体層パターン付き基材13を作製することができる。
本発明により得られる導体層パターン付き基材の導体層パターンを黒化処理して、黒化処理された導体層パターンを有する導体層パターン付き基材とすることができる。このためには、上記図6(h)又は図8に示すような導体層パターン付き基材13の導体層パターン9を黒化処理する方法、めっき用導電性基材1の凹部4に形成された導体層パターン9をそれが、転写される前に黒化処理する方法及びこれらの両方の黒化処理を行う方法がある。
このように黒化処理された導体層パターンを有する導体層パターン付き基材を電磁波遮蔽部材としてディスプレイの前面において利用するときは、一般に、黒色層を設けた方の面がディスプレイの視聴者側に向くようにして用いられる。
上記の黒化処理の方法は、金属パターンに黒色層を形成する手法であるが、このためには、金属層にめっきや酸化処理、印刷などの様々な手法を用いることができる。
本発明における導体層パターン付き基材を電磁波遮蔽体として用いる場合は、そのまま、ディスプレイ画面に適宜別の接着剤を介して又は介さないで貼着して使用することができるが、他の基材に貼着してからディスプレイに適用してもよい。他の基材は、ディスプレイの前面からの電磁波を遮断するために使用するには透明であることが必要である。
図9に導体層パターン付き基材が他の基材に貼着されて得られた電磁波遮蔽部材の断面図を示す。図9において、基材(別の基材)11に積層されている粘着剤層12上に金属からなる導体層パターン9が貼り付けられ、この上に他の基材13が積層されており、導体層パターン9は、粘着剤層12に埋設されている。これは、導体層パターン付き基材の導体層パターン9側を他の基材13に加熱又は非加熱下に加圧することにより作製することができる。この場合、粘着剤層12が十分な流動性を有するものであるか十分な流動性を有するうちに、適度な圧力を加えることにより導体層パターンを粘着剤層12に埋設する。基材(別の基材)11及び基材(他の基材)13として、透明性を有し、しかもその表面の平滑性が優れるものを使用することにより、透明性が高い電磁波遮蔽部材を得ることができる。
図10に導体層パターン付き基材が保護樹脂で覆われた電磁波遮蔽部材の断面図を示す。基材(別の基材)11に積層されている粘着剤層12上に金属からなる導体層パターン9が貼り付けられており、これらは、透明な保護樹脂14によって被覆されている。
図11は、別の態様の電磁波遮蔽体の断面図を示す。この電磁波遮蔽体は、図10の電磁波遮蔽部材が、基材11の導体層パターン9がある面とは反対の面で、接着剤層15を介して他の基材16が貼り合わされたものである。
図12は、さらに、別の態様の電磁波遮蔽体の断面図を示す。図11において、基材(別の基材)11に粘着剤層12を介して金属からなる導体層パターン9が接着されており、その上を透明樹脂からなる接着剤又は粘着剤17により被覆され、さらにその上に保護フィルム18が積層されている。基材11のもう一方の面には接着剤層15を介してガラス板等の他の基材16が貼着されている。この電磁波遮蔽部材では、基材(別の基材)11に粘着剤12を介して接着されている導体層パターン9を有する導体層パターン付き基材の導体層パターン9が存在する面を、透明な接着剤または粘着材17によりコーティングし、さらに保護フィルム18を積層し、ついで、得られた積層物の基材11のもう一方の面(何も積層されていない面)に接着剤を塗布して接着剤層12を形成し、これを他の基材16に押しつけて接着することにより作製することができる。上記の透明樹脂17としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のほかに活性エネルギー線で硬化する樹脂をを主成分とする接着剤または粘着剤を用いることもできる。活性エネルギー線で硬化する樹脂を用いることは、それが瞬時に又は短時間に硬化することから、生産性が高くなるので好ましい。
また、本発明で用いられる導電性基材として、回転体(ロール)を用いることができることは前記したが、さらに、この詳細を説明する。回転体(ロール)は金属製が好ましい。さらに、回転体としてはドラム式電解析出法に用いるドラム電極などを用いることが好ましい。ドラム電極の表面を形成する物質としては上述のようにステンレス鋼、クロムめっきされた鋳鉄、クロムめっきされた鋼、チタン、チタンをライニングした材料などのめっき付着性が比較的低い材料を用いることが好ましい。導電性基材として回転体を用いることにより連続的に作製して巻物として導体層パターン付き基材を得ることが可能となるため、この場合、生産性が飛躍的に大きくなる。
回転体を用いて、電界めっきにより形成されたパターンを連続的に剥離しながら、構造体を巻物として得る工程を、図13を用いて説明する。図13は、導電性基材としてドラム電極を用いた場合に、ドラム電極を回転させつつ、金属を電界めっきにより連続的に析出させ、また、析出した金属を連続的に剥離する装置の概念を示す断面図(一部正面図)である。
すなわち、電解浴100内の電解液101が陽極102とドラム電極などの回転体103の間のスペースに配管104とポンプ105により供給されるようになっている。陽極102と回転体103の間に電圧をかけ、回転体103を一定速度で回転させると、回転体103の表面に金属が電解析出し、電解液101の外で、回転体103表面の導電性の凹部に析出した金属106に、粘着層を形成したフィルム107の粘着層を圧着ロール108で圧着し、連続的に回転体103から金属106を剥離しつつ粘着層を形成したフィルム107にその金属106を転写し、導体層パターン付き基材109とする。これはロール(図示せず)に巻き取ることができる。このようにして導体層パターン付き基材109を製造することができる。なお、上記の回転体103の表面には、凹部とそれにより描かれている幾何学図形状の絶縁層が形成されている。また、回転中の回転体103から、凹部に析出した金属106が剥離させられた後で、電解液101に浸かる前に、回転体103表面をエッチング洗浄したり(図示せず)してもよい。なお、図示していないが陽極102の上端には高速で循環している電解液が上方へ噴出するのを防ぐために水切りロールを設置しても良く、水切りロールによってせき止められた電解液は陽極102の外部から下の電解液の浴槽へと戻り、ポンプにより循環される。また、図示しないがこの循環の間に消費された銅イオン源や添加剤等を必要に応じて追加する態様を加えることが好ましい。
さらに、本発明で用いられる導電性基材として、フープ状の導電性基材を用いることができることは前記したが、さらに、この詳細を説明する。
フープ状の導電性基材に関しては、帯状の導電性基材の表面に絶縁層と凹部を形成した後、端部をつなぎ合わせるなどして作製できる。導電性基材の表面を形成する物質としては上述のようにステンレス鋼、クロムめっきされた鋳鉄、クロムめっきされた鋼、チタン、チタンをライニングした材料などのめっき付着性が比較的小さい材料を用いることが好ましい。フープ状の導電性基材を用いた場合には、黒化処理、防錆処理、転写等の工程を、1つの連続した工程で処理可能となるため導電性パターン付き基材の生産性が高く、また、導電性パターン付き基材を連続的に作製して巻物として製品とすることができる。フープ状の導電性基材の厚さは適宜決定すればよいが、100〜1000μmであることが好ましい。
フープ状の導電性基材を用いて、電界めっきにより形成された導体層パターンを連続的に剥離しながら、構造体を巻物として得る工程を、図14を用いて説明する。図14は、導電性基材としてフープ状導電性基材を用いた場合に、連続的に導体層パターンを電界めっきにより析出させながら剥離する装置の概念図である。
フープ状の導電性基材110を、搬送ロール111〜128を用い、前処理槽129、めっき槽130、水洗槽131、黒化処理槽132、水洗槽133、防錆処理槽134、水洗槽135を順次とおり、周回運動するように設置する。前処理槽129で導電性基材110の脱脂もしくは酸処理等の前処理を行う。その後、めっき槽130で、導電性基材110上に金属を析出させる。この後に、水洗槽131、黒化処理槽132、水洗槽133、防錆処理槽134、水洗槽135を順次通して、それぞれで、導電性基材110上に析出した金属の表面を黒化し、さらに防錆処理する。各処理工程後にある水洗槽は、1槽しか図示していないが、必要に応じて複数の槽を用いたり、各処理工程の前に他の前処理槽等があってもよい。次いで、接着層を積層したプラスチックフィルム基材136を導電性基材110の導電性の凹部に析出した金属が転写されるように搬送ロール128上の導電性基材110と圧着ロール137の間を通し、上記金属をプラスチックフィルム基材136に転写して、導体層パターン付き基材138を連続的に製造することができる。得られる導体層パターン付き基材138は、ロール状に巻き取ることができる。必要に応じて、圧着ロール137を加熱することもできるし、図示はしないが、プラスチックフィルム基材136を、圧着ロールを通過させる前にプレヒート槽を通して予備加熱してもよい。また、転写したフィルムの巻取りには、必要に応じて、離型PET等を挿入してもよい。
さらに、金属が転写された後、フープ状導電性基材は、上記の工程を繰り返すこととなる。このようにして、連続的に、高い生産性で導体層パターン付き基材を製造することができる。
上記のようにして得られる導体層パターン付き基材を電磁波遮蔽部材として用いる場合には、反射防止層、近赤外線遮蔽層等をさらに積層してもよい。導電性基材に析出した金属を転写する基材そのものが反射防止層、近赤外線遮蔽層等の機能層を兼ねていてもよい。さらに、導体層パターンに保護層を形成する際に用いられるカバーフィルム(例えば、図12の保護フィルム18)が、反射防止層、近赤外線遮蔽層等の機能層を兼ねていてもよい。
また、本発明における導体層パターン付き基材は、上記のような回転ロールやフープを利用した連続的なめっき方法に限らず枚葉で作製することも可能である。枚葉で行った場合、めっき用導電性基材の作製時の取扱が容易であり、同一のめっき用導電性基材を繰り返し使用した後に一箇所だけ絶縁層が剥離した、といった場合でもドラム状やフープ状の基材であると特定部分だけの抜き取りあるいは交換は困難であるが、枚葉であれば不良が発生しためっき用導電性基材のみを抜き取りあるいは交換することが可能である。このように枚葉で作製することにより、めっき用導電性基材に不具合が発生したときの対応が容易である。枚葉状の導電性基材の厚みは適宜決定すればよいが、めっき槽内で液の攪拌等に左右されない十分な強度を持たせることを考慮すると厚みは20μm以上が好ましい。厚すぎると重量が増え取扱が困難であるため10cm以下の厚みであることが好ましい。
本発明における導体層パターン付き基材において、導体層パターンの開口率を高くすることができ、これにより透光性を優良にできる。本発明における導体層パターン付き基材は、透光性電磁波遮蔽部材として使用することができる。
以上で詳細に説明しためっき用導電性基材は、開口方向に幅広な凹部のパターン及びそれに対応した絶縁層を有し、適当な広さで作製される。電磁波遮蔽部材要の導体層パターンを作製する場合、その領域を領域Aとすると、本発明に係るめっき用導電性基材には、そのまわりに、電磁波遮蔽部材のアース部に対応する領域(領域Bという)を備えることができる。領域Aと領域Bは同一の導体層パターンを有するものであってもよい。また、領域Aにおける絶縁層の面積比率(平面図で見たときに、全面積に対する凹部を除いた部分の面積の比率)は、領域Bにおける絶縁層の面積比率よりも大きくされていてもよく、好ましくは10%以上大きくされていてもよい。また、領域Bの絶縁層比率を0としてもよいが、この場合には、めっき用導電性支持体上にめっきによりベタの金属膜が周辺に形成される。ベタの金属膜は転写に際し、割れやすいので、望ましくは、領域Bの絶縁層の面積率は40%以上とすることが好ましく、また、97%未満であることが好ましい。
領域Bにおいて、凹部のパターンによって描かれる幾何学図形状としては、
(1)メッシュ状幾何学的模様
(2)所定間隔で規則的に配列された方形状幾何学的模様
(3)所定間隔で規則的に配列された平行四辺形模様
(4)円模様又は楕円模様
(5)三角形模様
(6)五角形以上の多角形模様
(7)星形模様等がある。
また、領域Bにおける凹部の形成、絶縁層の形成等は、前記した領域Aと同様に行うことができる。さらに、凹部の深さ、凹部が開口方向に幅広であることも領域Aと同様にされることが好ましい。
また、接地機能を担わせる部分の導体層パターンのラインの厚みは、十分な電気抵抗を確保するために、同様に0.5μm以上が好ましく、さらに1μm以上がさらに好ましい。さらに、電磁波シールド機能を担わせる部分の導体層パターンのラインの厚みとの差が大きいと,転写する際に段差となるために、境目の部分が転写されなかったり、折れが発生しやすくなるため、電磁波シールド機能を担わせる部分の導体層パターンのラインの厚みとの差は10μm以下が好ましく、5μm以下がさらに好ましい。
以上説明した、導体層パターン付き基材の製造法において、
転写に際し使用する別の基材を剥離用粘着フィルムとして使用して、上記導電性基材の凹部に析出させた金属を剥離するために利用し、転写された導体層パターンをこの別の基材からさらに剥離して使用しても良い。
また、以上説明した、導体層パターン付き基材の製造法において、
(ロ)上記導電性基材の凹部に析出させた金属を別の基材に転写する工程の代わりに(ロ′)上記導電性基材の凹部に析出させた金属を粘着フィルムを使用せず、それ自体を剥離する工程とすることにより、パターン化された金属箔(導体層パターン)を製造することができる。
(凸部パターンの形成)
レジストフィルム(フォテックRY3415、15μm厚、日立化成工業株式会社製)を150mm角のチタン板(JIS3種、片面バフ研磨仕上げ、厚さ0.5mm、(株)神戸製鋼所製、研磨後Hv250、表面粗さRa0.11μm、反射率22%、樹脂に転写したヘイズ17)の両面に貼り合わせた(図3(a)に対応する)。貼り合わせの条件は、ロール温度105℃、圧力0.5MPa、ラインスピード1m/minで行った。次いで、光透過部のライン幅が15μm、ラインピッチが300μm、バイアス角度が45°(正四角形のなかに、ラインが正四角形の辺に対して45度の角度になるように配されている)で、格子状にパターンが120mm角のサイズで形成されているネガフィルムを、チタン板の片面(研磨面)に静置した。紫外線照射装置を用いて、600mmHg以下の真空下において、ネガフィルムを載置したチタン板の上下から、紫外線を120mJ/cm照射した。さらに、1%炭酸ナトリウム水溶液で現像することで、チタン板の上にライン幅16〜18μm、ラインピッチ300μm、バイアス角度45度のレジスト膜からなる格子状パターンを形成した。なお、パターンが形成された面の反対面は、全面露光されているため、現像されず、全面にレジスト膜が形成されている(図3(b)に対応する)。導電性基材の硬度は、微小硬度計のビッカース圧子(MHT−4、ジャパンハイテック(株)製)を用い、荷重0.4903N、負荷速度0.04903N/秒、荷重保持時間10秒で測定した。測定点は5点とし、最大値と最小値を除く3点の平均値をとった。表面粗さは、表面粗さ計(SE−3F、(株)小坂研究所製)を用い、カットオフ値0.8mm、測定長さ8mmで測定した。反射率は分光光度計(V−550、日本分光(株)製)を用い、入射角5°、反射角5°の反射率を830nmの波長で測定した。樹脂に転写したヘイズは、導電性基材にUV硬化型樹脂ヒタロイド7983AA3(日立化成工業(株)製)を20μm厚コーティングし、PETフィルム(A4100、東洋紡績(株)製、100μm厚)でカバーした後、紫外線を1J/cm照射し、導電性基材から剥離して得たものを濁度計(NDH200、日本電色工業(株)製)で測定した。
(絶縁層の形成)
PBII/D装置(TypeIII、株式会社栗田製作所製)によりDLC膜を形成する。チャンバー内にレジスト膜が付いたままのチタン基板を入れ、チャンバー内を真空状態にした後、アルゴンガスで基板表面のクリーニングを行った。次いで、チャンバー内にヘキサメチルジシロキサンを導入し、膜厚0.1μmとなるように中間層を成膜した。次いで、トルエン、メタン、アセチレンガスを導入し、膜厚が5〜6μmとなるように、中間層の上にDLC層を形成した(図3(c)に対応する)。
(凹部の形成;絶縁層の付着した凸部パターンの除去)
絶縁層が付着したチタン基板を水酸化ナトリウム水溶液(10%、50℃)に浸漬し、時々揺動を加えながら8時間放置した。凸部パターンを形成するレジスト膜とそれに付着したDLC膜が剥離してきた。一部剥がれにくい部分があったため、布で軽くこすることにより全面剥離し、めっき用導電性基材を得た(図3(d)に対応する)。
凹部の深さは5〜6μmであった。また、凹部の底部での幅は、16〜18μm、開口部での幅(最大幅)は26〜30μmであった。
(銅めっき)
さらに、上記で得られためっき用導電性基材のパターンが形成されていない面(裏面)に粘着フィルム(ヒタレックスK−3940B、日立化成工業(株)製)を貼り付けた。この粘着フィルムを貼り付けためっき用導電性基材を陰極として、また、含燐銅を陽極として電解銅めっき用の電解浴(硫酸銅(5水塩)250g/L、硫酸70g/L、キューブライトAR(荏原ユージライト株式会社製、添加剤)4ml/Lの水溶液、30℃)中に浸し、両極に電圧をかけて電流密度を10A/dmとして、めっき用導電性基材の凹部に析出した金属の厚さがほぼ7μmになるまでめっきした。めっき用導電性基材の凹部の中とそれからあふれるようにめっきが形成された。
(転写用粘着フィルムの作製)
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(A−4100、東洋紡績株式会社製)の表面にプライマー(HP―1、日立化成工業株式会社製)を厚さ1μm)に、粘着層としてアクリルポリマー(HTR−280、長瀬ケムテック(株)製)を厚さ10μmに順次塗布して転写用粘着フィルムを作製した。
(転写)
上記転写用粘着フィルムの粘着層の面と、上記めっき用導電性基材の銅めっきを施した面を、ロールラミネータを用いて貼り合わせた。ラミネート条件は、ロール温度25℃、圧力0.1MPa、ラインスピード1m/minとした。次いで、めっき用導電性基材に貼り合わせた粘着フィルムを剥離したところ、上記めっき用導電性基材上に析出した銅が粘着フィルムに転写されていた。これにより、ライン幅30〜34μm、ラインピッチ300±2μm、導体層厚さ(最大)7〜8μmの格子状金属パターンからなる導体層パターン付き基材が得られた。導体層の形状は、凹部の形状を反映して、図5(h)に示されるように下部から上部(粘着層)に向かって幅広になっており、さらに凹部からあふれた部分が傘のように広がっていた。
転写後のめっき用導電性基材の表面を観察した結果、絶縁層が剥離している箇所はなかった。ライン幅、導体層厚さの測定は、得られた導体層パターン付き基材を一部切り取って樹脂で注型し、倍率は3000倍で断面をSEM観察することにより実測した。測定点は5点で、最大値と最小値を採用した(以下も同様)。ラインピッチの測定は、顕微鏡(デジタルマイクロスコープVHX−500、キーエンス(株)製)を用いて、倍率200倍で観察して測定し、測定は、無作為の5点で行った(以下も同様)。
(保護膜の形成)
上記で得られた導体層パターン付き基材の導体層パターンが存在する面に、UV硬化型樹脂ヒタロイド7983AA3(日立化成工業(株)製)をコーティングし、ポリカーボネートフィルム(マクロホールDE、バイエル株式会社製、75μm)でラミネートして導体層パターンをUV硬化型樹脂中に埋没させた後、紫外線ランプを用いて1J/cmの紫外線を照射してUV硬化型樹脂を硬化させて、保護膜を有する導体層パターン付き基材を得た。
(繰り返し使用)
次いで、上記のめっき用導電性基材を用いて、銅めっき及び転写の工程を上記と同様にして600回繰り返した結果、銅めっきの転写性に変化なく絶縁層の剥離箇所も観測されなかった。
(めっき及び転写性)
600回繰り返した際に、特に銅めっき及び転写の工程に不具合は殆ど発生せず、めっき及び転写の可否に関して、歩留まりは100%であった。
(銅粒掻き落し)
10回繰返しごとに、めっき用導電性基材清掃の目的で、めっき用導電性基材のピンホールから析出した銅粒をへらを用いて掻き落したところ、めっき用導電性基材への傷もDLCの剥離もみられなかった。
(絶縁層のスクラッチ試験)
導電性基材と同じ表面粗さの30mm□の試験片を別途準備し、絶縁層形成の際に同時にDLCをコーティングした。その試験片を用いてスクラッチ試験を行った。臨界荷重値は18Nであった。スクラッチ試験にはRSTX(CSM INSTRUMENT社製)を用い、荷重負荷速度は10mm/min、で1Nから30Nまで荷重をかけて測定し、Lc(AE−III)の値をリン化荷重の値として採用した。
(凸部パターンの形成)
150mm□のチタン合金板(KS15−3−3−3、(株)神戸製鋼所製)を480℃で12時間、時効硬化処理を施し、片面を鏡面研磨した後ブラスト処理した。次いで、液状レジスト(ZPN−2000、日本ゼオン株式会社製)を150mm角の上記チタン板(厚さ0.5mm、ブラスト後Hv440、表面粗さRa0.04μm、反射率27%、樹脂に転写したヘイズ12)に両面塗布した。4回塗布することで厚み8μmのレジスト膜を得た。110℃で1分プリベークした後、光透過部のライン幅が5μm、ラインピッチが300μm、バイアス角度が45°(正四角形のなかに、ラインが正四角形の辺に対して45度の角度になるように配されている)で、格子状のパターンが110mm角のサイズで形成されているネガのクロムマスクを、チタン板の片面(ブラスト面)に静置した。紫外線照射装置を用いて、600mmHg以下の真空下で基板を吸着し、クロムマスクを載置したチタン板の上から、紫外線を200mJ/cm照射した。また、裏面はマスクを載せずに200mJ/cm照射した。115℃で1分間加熱した後、2.38%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)で現像することで、チタン板の上にライン幅7〜10μm、ラインピッチ300μm、バイアス角度45°のレジスト膜からなる格子状パターンを形成した。導電性基材の硬度、表面粗さ、反射率、樹脂に転写したヘイズの測定は実施例1と同様に行った。
(絶縁層の形成)
実施例1と同様に中間層までコーティングした後、DLCを膜厚が2〜3μmになるようにコーティングした。
(凹部の形成;絶縁層の付着した凸部パターンの除去)
絶縁層が付着したチタン基板をアセトン(室温)に浸せきし、揺動させながら2時間放置した。凸部パターンを形成するレジスト膜とそれに付着したDLC膜が剥離してきた。一部剥がれにくい部分があったため、布で軽くこすることにより全面剥離し、めっき用導電性基材を得た。
凹部の深さは2〜3μmであった。また、凹部の底部での幅7〜10μmは、開口部での幅(最大幅)は11〜15μmであった。凹部のピッチはピッチ300μmであった。
(銅めっき)
さらに、上記で得られためっき用導電性基材のパターンが形成されていない面(裏面)に粘着フィルム(ヒタレックスK−3940B、日立化成工業(株)製)を貼り付けた。この粘着フィルムを貼り付けためっき用導電性基材を陰極として、また、銅板を陽極として電解銅めっき用の電解浴(ピロリン酸銅:100g/L、ピロリン酸カリウム:250g/L、アンモニア水(30%):2mL/L、pH:8〜9、浴温:30℃)中に浸し、両極に電圧をかけて陰極電流密度を5A/dmとして、めっき用導電性基材の凹部に析出した金属の厚さがほぼ3.5μmになるまでめっきした。めっき用導電性基材の凹部の中とそれからあふれるようにめっきが形成された。
(転写)
めっき用導電性基材上に形成された銅のパターンを、実施例1と同様に粘着フィルムに転写した。ライン幅13〜18μm、ラインピッチ300±2μm、導体層厚さ3〜4μmの格子状金属パターンからなる導体層パターン付き基材が得られた。導体層の形状は、凹部の形状を反映して、図5(h)に示されるように下部から上部(粘着層)に向かって幅広になっており、さらに凹部からあふれた部分が傘のように広がっていた。
転写後のめっき用導電性基材の表面を観察した結果、絶縁層が剥離している箇所はなかった。
さらに実施例1と同様にして保護膜の形成を行い、保護膜を有する導体層パターン付き基材を得た。
(繰り返し使用)
次いで、上記のめっき用導電性基材を用いて、銅めっき及び転写の工程を上記と同様にして500回繰り返した結果、銅めっきの転写性に変化が無く、絶縁層の剥離箇所も観測されなかった。
(めっき及び転写性)
500回繰り返した際に、特に銅めっき及び転写の工程に不具合は殆ど発生せず、めっき及び転写の可否に関して、歩留まりは100%であった。
(銅粒掻き落し)
10回繰返しごとに、めっき用導電性基材清掃の目的で、ピンホールから析出した銅粒をへらを用いて掻き落したところ、めっき用導電性基材への傷もDLCの剥離もみられなかった。
(絶縁層のスクラッチ試験)
実施例1と同様に試験を行った。臨界荷重値は20Nであった。
(比較例1)
(凸部パターンの形成)
導電性基材を150mm角のチタン板(JIS1種、バフ研磨仕上げ、厚さ0.5mm、住友金属(株)製、研磨後Hv250、表面粗さRa0.11μm、反射率22%、樹脂に転写したヘイズ17)とした以外は、実施例1と同様にパターン形成、各特性の測定を行った。
(絶縁層の形成)
実施例1と同様に中間層0.1μm、DLCを5〜6μmとなるようにコーティングした。
(凹部の形成;絶縁層の付着した凸部パターンの除去)
絶縁層が付着したチタン基板を水酸化ナトリウム水溶液(10%、50℃)に浸漬し、時々揺動を加えながら8時間放置した。凸部パターンを形成するレジスト膜とそれに付着したDLC膜が剥離してきた。一部剥がれにくい部分があったため、布で軽くこすることにより全面剥離し、めっき用導電性基材を得た(図3(d)に対応する)。
凹部の深さは5〜6μmであった。また、凹部の底部での幅は、16〜19μm、開口部での幅(最大幅)は26〜31μmであった。
(銅めっき)
さらに、上記で得られためっき用導電性基材のパターンが形成されていない面(裏面)に粘着フィルム(ヒタレックスK−3940B、日立化成工業(株)製)を貼り付けた。この粘着フィルムを貼り付けためっき用導電性基材を陰極として、また、含燐銅を陽極として電解銅めっき用の電解浴(硫酸銅(5水塩)250g/L、硫酸70g/L、キューブライトAR(荏原ユージライト株式会社製、添加剤)4ml/Lの水溶液、30℃)中に浸し、両極に電圧をかけて電流密度を10A/dmとして、めっき用導電性基材の凹部に析出した金属の厚さがほぼ7μmになるまでめっきした。めっき用導電性基材の凹部の中とそれからあふれるようにめっきが形成された。
(転写)
めっき用導電性基材上に形成された銅のパターンを、実施例1と同様に粘着フィルムに転写した。ライン幅30〜35μm、ラインピッチ300±2μm、導体層厚さ7〜8μmの格子状金属パターンからなる導体層パターン付き基材が得られた。導体層の形状は、凹部の形状を反映して、図5(h)に示されるように下部から上部(粘着層)に向かって幅広になっており、さらに凹部からあふれた部分が傘のように広がっていた。
転写後のめっき用導電性基材の表面を観察した結果、絶縁層が剥離している箇所はなかった。
さらに実施例1と同様にして保護膜の形成を行い、保護膜を有する導体層パターン付き基材を得た。
(繰り返し使用)
次いで、上記のめっき用導電性基材を用いて、銅めっき及び転写の工程を上記と同様にして500回繰り返した結果、絶縁層の剥離箇所も観測されなかった。
(めっき及び転写性)
500回繰り返した際に、特に銅めっき及び転写の工程に不具合は殆ど発生せず、めっき及び転写の可否に関して、歩留まりは100%であった。
(銅粒掻き落し)
10回繰返しごとに、めっき用導電性基材清掃の目的で、ピンホールから析出した銅粒を、へらを用いて掻き落したところ、導電性基材が軟らかいため、500回目の段階で銅粒で表面を引掻いて下地の導電性基材に微小の傷が見られ、その傷に沿って数mmにわたってDLCの欠けが見られた。
(絶縁層のスクラッチ試験)
実施例1と同様に試験を行った。臨界荷重値は7Nと低かった。
実施例1、2及び比較例1で得られためっき用導電性基材の特性値、めっき条件、導体層パターンの特性等を表1に示す。
Figure 0005333822
本発明のめっき用導電性基材の一例を示す斜視図。 図1のA−A断面図。 めっき用導電性基材の製造方法を示す工程の一例を断面図。 中間層を有するめっき用導電性基材とその前駆体の断面図を示す。 導体層パターン付き基材の作製例の前半を示す断面図。 導体層パターン付き基材の作製例の後半を示す断面図。 めっき用導電性基材の凹部内にめっきにより導体層パターンを形成した状態を示す断面図。 図7に示す凹部内の導体層パターンを転写して得られた導体層パターン付き基材の断面図。 導体層パターン付基材が他の基材に貼着された電磁波遮蔽部材の一例を示す断面図。 導体層パターン付基材が他の基材に貼着された電磁波遮蔽部材の一例を示す断面図。 導体層パターン付基材が他の基材に貼着された電磁波遮蔽部材の一例を示す断面図。 導体層パターン付基材が他の基材に貼着された電磁波遮蔽部材の一例を示す断面図。 回転体を用いて導体層パターン付き基材を連続的に作製するための装置の概念断面図。 フープ状のめっき用導電性基材を用いて導体層パターン付き基材を連続的に作製するための装置の概念断面図。
符号の説明
1:めっき用導電性基材
2:導電性基材
3:絶縁層
4:凹部
5:感光性レジスト層(感光性樹脂層)
6:突起部
7:DLC膜
8:中間層
9:導体層パターン
10:転写用基材
11:別の基材
12:粘着剤層
13:他の基材
14:保護樹脂
15:接着剤
16:他の基材
17:接着剤又は粘着剤
18:保護フィルム
100:電解浴
101:電解液
102:陽極
103:回転体
104:配管
105:ポンプ
106:金属
107:フィルム
108:圧着ロール
109:導体層パターン付き基材
110:フープ状の導電性基材
111〜128:搬送ロール
129:前処理槽
130:めっき槽(電解浴槽)
131:水洗槽
132:黒化処理槽
133:水洗槽
134:防錆処理槽
135:水洗槽
136:プラスチックフィルム基材(接着フィルム)
137:圧着ロール
138:導体層パターン付き基材

Claims (14)

  1. 導電性基材の表面に、絶縁層が形成されており、その絶縁層に開口方向に向かって幅広なめっきを形成するための凹部が形成されているめっき用導電性基材で、導電性基材の表面の硬度がHv170以上であり、前記絶縁層が、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)又は無機材料からなり、前記導電性基材の表面の算術平均粗さ(Ra)が0.03μm〜0.6μmで、表面の反射率が5〜60%であることを特徴とするめっき用導電性基材。
  2. 導電性基材の表面を樹脂に転写した際のヘイズが5〜60である請求項1に記載のめっき用導電性基材。
  3. めっきを形成するための凹部が絶縁層に幾何学図形を描くように又はそれ自身幾何学図形を描くように形成されている請求項1又は2に記載のめっき用導電性基材。
  4. 絶縁層が、DLC、Al又はSiOである請求項1〜のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
  5. 絶縁層が、硬度が10〜40GPaのDLCからなる請求項1〜のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
  6. 凹部の最小幅が1〜40μm、凹部の最大幅が2〜60μm及び凹部の間隔が50〜1000μmである請求項1〜のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
  7. 凹部側面の角度が絶縁層側で30度以上90度未満である請求項1〜のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
  8. 凹部側面の角度が絶縁層側で30度以上60度以下である請求項1〜のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
  9. 絶縁層の厚さが、0.5〜20μmである請求項1〜のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
  10. 導電性基材と絶縁層の間に、Ti、Cr、W、Siまたはそれらの窒化物又は炭化物のいずれか1以上を含む中間層を介在させている請求項1〜のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
  11. 導電性基材の表面が、鋼、Tiからなる請求項1〜10のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
  12. 導電性のロール(ドラム)またはロールに巻き付けるものである請求項1〜11のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
  13. 請求項1〜12のいずれかに記載のめっき用導電性基材の凹部にめっきにより金属を析出させる工程を含むことを特徴とする導体層パターンの製造方法。
  14. めっきにより析出させる金属の厚さを凹部の深さの2倍以下とする請求項13記載の導体層パターンの製造方法。
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