JP5332011B2 - B型肝炎ウイルスの高感度免疫学的分析方法及び免疫学的分析用試薬 - Google Patents

B型肝炎ウイルスの高感度免疫学的分析方法及び免疫学的分析用試薬 Download PDF

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Description

本発明は、B型肝炎ウイルスの高感度免疫学的分析方法及び免疫学的分析用試薬に関する。本発明によれば、サポニンの存在下で、抗原抗体反応を行うことにより、被検試料(以下、検体と称することもある)中のB型肝炎ウイルス(以下、「HBV」と称する)抗原を高感度で検出又は定量することが可能である。
輸血に用いる血液は、しばしば輸血後感染症の原因となることがある。HBVは、輸血後肝炎の原因ウイルスであり、手術時などの輸血によって感染する。そのため、輸血用血液のスクリーニングによって、血液のウイルス等への感染の有無を診断することは極めて重要である。
このような感染の診断法としては、被検試料中に存在するウイルスに対する抗体を検出する抗体検査法、及びウイルス等の抗原を検出する抗原検査法のような免疫学的分析方法、又はウイルス等の遺伝子を検出する遺伝子検出法がある。
これらの診断法のうち、免疫学的分析方法は感度と特異性の高い方法であるが、遺伝子検出法と比較すると感度が低く、感染症のスクリーニングやモニタリングの目的において未だ十分とは言えない状況にある。例えば、献血血液のスクリーニングにおいて、HBV感染症を診断するために、HBs抗原検査、HBs抗体検査、及びHBc抗体検査に加え、献血血液20本をプールして1検体とし、核酸増幅検査(Nucleic acid Amplification Test:以下、NATと称する。)によるスクリーニングが行われており、HBs抗原検査法により陰性と判定されたが、NATによりHBV陽性と判定される血液が見出されている。
遺伝子検出法には、前記NATやDNAプローブ法があり、現在広く臨床現場で用いられている。PCR法及びTMA法等のNAT検査法は、遺伝子断片を検出するための高感度な検出方法である。しかしながら、例えば、検体中からHBVゲノムDNAを抽出する場合は、用手法で処理時間が2時間も必要であり、また複数回の操作工程を含むため、非常に煩雑である。更に、操作が複雑であるために、他の陽性検体などとのコンタミネーションの機会が増え、疑陽性検体が生じる可能性を増加させている。また、安定した定量値を得るためには操作をする人の熟練を要するという問題もある。近年、自動化機器の開発により、コンタミネーションの防止対策やDNA抽出の処理時間の短縮がなされてきたが、依然として高価な機器を必要とするため、検体を多量処理する施設以外には一般には普及していない。更に、DNAプライマーが標的遺伝子と一致しなければならないため、プライマーを数種類も使用する必要があり、検査あたりのコストが免疫学的分析方法と比較して高くなるといった問題点がある。
このような問題点をもつ遺伝子検査法と比較して、免疫学的分析方法は、コンタミネーションの問題も少なく、安定した結果が得られること、自動化が進んでおり操作にそれほど熟練を要しないこと、そしてコストが安価であるなどの長所がある。しかしながら、遺伝子検出法と比較すると検出感度が低いという問題があり、反応の感度を上昇させるための様々な方法が検討されてきている。免疫学的分析方法の感度を上昇させるための方法としては、例えば、抗体検査法では抗体を検出するための抗原の改良が行われ、抗原検査法においては抗原と結合する抗体の改良が行われてきた。また、検出工程においては、発色基質及び発光基質を改良することによって、感度の上昇が試みられてきた。
更に、抗原及び抗体を反応させる工程において、様々な化合物を添加することによって、感度を上昇させる方法も考えられている。例えば、ポリビニルピロリドン(特許第3468763号)、プルラン(特許第3396231号)等の親水性ポリマーを添加することによって、免疫反応の測定感度が上昇することが報告されている。これらの親水性ポリマーを抗原と抗体とが接触する工程に添加することによって、反応液中の抗原・抗体濃度が濃縮されることが予測され、その結果、反応液中の抗原及び抗体の接触効率が高まり、感度が向上することが考えられる。しかしながら、これらの方法は、非特異性シグナルも同時に上昇させることが考えられ、充分な感度の上昇を得ることができない。
特許第3468763号公報 特許第3396231号公報
従来のB型肝炎ウイルス免疫学的分析方法は、遺伝子検出法と比較して感度が低く、免疫学的分析法によって、B型肝炎が陰性と判定された血液に実際には少量のウイルスが混入していることがあった。このような偽陰性の血液が輸血に用いられることにより、輸血後感染を引き起こす可能性がある。本発明者らは、このような免疫学的分析方法の偽陰性を減少させるために、B型肝炎ウイルス免疫学的分析方法の高感度化について、鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに、サポニン又は胆汁酸の存在下で、抗原と抗体とを接触させる抗原抗体反応を行うことによって、免疫学的分析方法の感度が上昇することを見出した。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
従って、本発明は、サポニン又は胆汁酸塩の存在下で、B型肝炎ウイルス抗原と抗B型肝炎ウイルス抗体とを接触させる工程を含む、サンドイッチ法によるB型肝炎ウイルス免疫学的分析方法に関する。
本発明による免疫学的分析方法の好ましい態様においては、前記抗B型肝炎ウイルス抗体が可溶性抗体である。
本発明による免疫学的分析方法の別の好ましい態様においては、前記サポニンがトリテルペノイドサポニンである。
また、本発明は、サンドイッチ法によるB型肝炎ウイルス免疫学的分析用試薬であって、B型肝炎ウイルス抗原と抗B型肝炎ウイルス抗体とを接触させる試薬にサポニン又は胆汁酸塩を含むことを特徴とする、B型肝炎ウイルス免疫学的分析用試薬にも関する。
本発明による試薬の好ましい態様においては、前記抗B型肝炎ウイルス抗体が可溶性抗体である。
本発明による試薬の別の好ましい態様においては、前記サポニンがトリテルペノイドサポニンである。
更に、本発明は、B型肝炎ウイルス免疫学的分析用試薬を含むB型肝炎ウイルス免疫学的分析キットにも関する。
なお、本明細書における「分析」には、分析対象化合物の存在の有無を判定する「検出」と、分析対象化合物の存在量を決定する「定量」との両方が含まれる。また、本明細書における「検査」も抗原や抗体の存在の有無を判定する「検出」と、抗原や抗体の存在量を決定する「定量」との両方が含まれる。
また、本発明による「B型肝炎ウイルス免疫学的分析方法」は、「B型肝炎ウイルスの診断方法」として用いることが可能である。
本発明によれば、サンドイッチ法によるB型肝炎ウイルス免疫学的分析方法において、HBVの抗原又は抗体を高感度に検出及び定量することが可能である。また、本発明によれば、抗原と抗体との非特異的な結合を増加させずに、B型肝炎ウイルス免疫学的分析方法の感度を上昇させることが可能である。
サポニンは、広く植物体に含まれている配糖体の一群であり、トリテルペン骨格又はステロイド骨格にオリゴ糖が結合した構造を有しており、例えば、ジギタリス、ダイズ、ムクロジ、トチノキ、サボンソウ、ブドウ、オリーブ、オタネニンジン、キキョウ、セネガ、セイヨウキズタ、イトヒメハギ、ミシマサイコ、カンゾウ、ヒロハセネガ、トチバニンジン、ヒナタイノコズチ、アケビ、ミツバアケビ、エゴノキ、モダマ、ナツメ、茶種子、キラヤ、などに含まれている。サポニンはサポゲニンの種類により、トリテルペノイドサポニンとステロイドサポニンに大別される。サポゲニンは、サポニンのアグリコン(非糖部分)であり、トリテルペンとステロイドがある。
トリテルペノイドサポニンは、炭素数30のテルペン炭化水素、アルコールなどのトリテルペン(トリテルペノイドと呼ばれることもある)をアグリコンとする配糖体である。また、トリテルペノドサポニンは、トリテルペンサポニンとも呼ばれることがある。トリテルペンに結合している糖としては、グルコース、ラムノース、アラビノース、ガラクトース、キシロース、ペントース、及びヘキソースなどを挙げることができる。本発明の方法に使用することのできるトリテルペノイドサポニンとしては、トリテルペンの配糖体であれば、特に限定されないが、具体的には、セイヨウキズタ由来サポニン、ダイズ由来サポニン、イトヒメハギ由来サポニン、ミシマサイコ由来サポニン、キキョウ由来サポニン、カンゾウ由来サポニン、ヒロハセネガ由来サポニン、オタネニンジン由来サポニン、トチバニンジン由来サポニン、ヒナタイノコズチ由来サポニン、アケビ由来サポニン、ミツバアケビ由来サポニン、エゴノキ由来サポニン、モダマ由来サポニン、ナツメ由来サポニン、茶種子由来サポニン、キラヤ由来サポニン等を挙げることができる。特には、キラヤ由来サポニン、茶種子由来サポニンが好ましい。
ステロイドサポニンは、ステロイドをアグリコンとする配糖体であり、特にユリ科、ヒガンバナ科、ヤマノイモ科などの植物に多く分布している。ステロイドに結合している糖としては、グルコース、ラムノース、アラビノース、ガラクトース、キシロース、ペントース、及びヘキソースなどを挙げることができる。本発明の方法に使用することのできるステロイドサポニンとしては、ステロイドの配糖体であれば、特に限定されないが、具体的には、アモロニン、ジギトニン、ジオスシン、ギトニン、カンモニン、ノロニン、サルササポニン、スミロニン、チゴニン、トリラリン、トリリン、ユコニン、を挙げることができる。また、ステロイドサポニンには、窒素原子を含むステロイドであるステロイドアルカロイドをアグリコンとする配糖体も含まれる。
本発明のB型肝炎ウイルス免疫学的分析方法に使用することのできるサポニンの、抗原と抗体を接触させる反応液中の濃度は、特に限定されないが、好ましくは、下限は0.001%(質量/容量パーセント)以上であり、上限は反応液に溶解することのできる濃度である。また、好ましくは0.01〜10%(質量/容量パーセント)であり、より好ましくは、0.02〜5%(質量/容量パーセント)であり、最も好ましくは、0.03〜3.2%質量/容量パーセント)である。広い濃度範囲で抗原と抗体の反応を増強させることができる。
本発明のB型肝炎ウイルス免疫学的分析方法において、胆汁酸の存在下で、抗原及び抗体を接触させる工程を行うことによっても、B型肝炎ウイルス免疫学的分析方法の感度を上昇させることが可能である。胆汁酸は、哺乳動物、両生類、は虫類、鳥類又は魚類などの肝臓で産生され、ナトリウム塩の形で、胆汁の主な成分として胆嚢に蓄えられており、その界面活性作用により脂肪をミセル化することによって、腸管からの脂肪の吸収を助けている。胆汁酸は、ステロイド骨格に水酸基が結合した構造を有しており、疎水性のステロイド骨格と水酸基などの親水基を同一分子内に有しているため、界面活性作用を示す。本発明のB型肝炎ウイルス免疫学的分析方法に使用することのできる胆汁酸としては、具体的には、コール酸、デオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、リトコール酸、タウロコール酸、タウロデオキシコール酸、アポコール酸、グリココール酸、グリコデオキシコール酸、タウロケノデオキシコール酸、タウロデヒドロコール酸、タウロリソコール酸、タウロウルソデオキシコール酸等を挙げることができ、これらの塩としては、ナトリウム塩を挙げることができる。特に好ましくは、コール酸、及びデオキシコール酸、並びにその塩を挙げることができる。
本発明のB型肝炎ウイルス免疫学的分析方法に使用することのできる胆汁酸の抗原と抗体を接触させる反応溶液中の濃度は、特に限定されないが、好ましくは、下限は0.001%(質量/容量パーセント)以上であり、上限は溶液に溶解することのできる濃度である。また、好ましくは0.01〜10%(質量/容量パーセント)であり、より好ましくは、0.02〜5%(質量/容量パーセント)であり、最も好ましくは、0.03〜3.2%質量/容量パーセント)である。広い濃度範囲で抗原と抗体の反応を増強させることができる。
本発明のB型肝炎ウイルス免疫学的分析方法において、B型肝炎ウイルス抗原と抗B型肝炎ウイルス抗体とを接触させる工程を、サポニン、コール酸、及び陰イオン性界面活性剤のうちの2種以上の混合物の存在下で行うことによって、B型肝炎ウイルスの抗原を、更に、高感度に測定することが可能になる。特には、サポニン及び陰イオン性界面活性剤の混合物が好ましい。サポニンの添加によって得られる効果及び陰イオン性界面活性剤の添加によって得られる効果の相加的な効果が得られ、場合によっては、相乗的な効果が得られることも考えられる。
混合物に用いるサポニンは、単独で使用することのできるサポニンのすべてを使用することが可能である。また、サポニンの濃度は、単独で使用する濃度と同じ濃度で使用することができる。混合物に用いる陰イオン性界面活性剤は、例えば、アルキルベンゼン系のアルキルアリールスルホン酸塩、高級アルコール系のアルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、及びモノアルキルリン酸エステル塩、アルファオレフィン系のアルファオレフィンスルホン酸塩、ノルマルパラフィン系のアルカンスルホン酸塩などを挙げることができる。好ましくは、ラウリル硫酸ナトリウム(NLS)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1−オクタンスルホン酸ナトリウム、1−デカンスルホン酸ナトリウム、1−ウンデカンスルホン酸ナトリウム、1−ドデカンスルホン酸ナトリウムなどを挙げることができる。混合物に用いる陰イオン性界面活性剤の抗原と抗体を接触させる反応液中の濃度は、特に限定されないが、下限は0.001%(質量/容量パーセント)以上であり、上限は溶液に溶解することのできる濃度であり、好ましくは0.01〜10%(質量/容量パーセント)であり、より好ましくは、0.02〜5%(質量/容量パーセント)であり、最も好ましくは、0.05〜0.8%(質量/容量パーセント)である。
本発明のサンドイッチ法によるB型肝炎ウイルス免疫学的分析方法は、サポニン又は胆汁酸の存在下でB型肝炎ウイルス抗原と抗B型肝炎ウイルス抗体とを接触させる工程を含む。抗体と抗原とが結合する液相にサポニン又は胆汁酸が存在することによって、抗原と抗体の結合が増強される。本発明のB型肝炎ウイルス免疫学的分析法において、抗原は、担体に固相化されている抗原でも、可溶性の抗原でもよい。また、抗体も、担体に固相化されている抗体でも、可溶性の抗体でもよいが、好ましくは、可溶性の抗体である。本願明細書において、「可溶性抗体」とは、担体に固相化されていない抗体を意味する。
本発明のサンドイッチ法によるB型肝炎ウイルス免疫学的分析方法には、検体中の測定対象の観点から、抗原に対する特異的な抗体を用いて抗原を測定する抗原検査法、及び抗原に対する特異的な抗体を測定する抗体検査法に分類することが可能である。また、サンドイッチ法のステップの観点から、1ステップ法と2ステップ法に分類することが可能である。更に、2ステップ法はフォワードサンドイッチ法とリバースサンドイッチ法に分類することが可能である。
抗原測定法の手順は、被検試料中の抗原を検出又は測定する方法であれば、特に限定されないが、例えば、以下のように行うことができる。
まず、マイクロプレートやビーズなどの担体に、測定対象の抗原と結合する捕捉抗体を固相化する。その後、捕捉抗体や担体への非特異的な吸着を防ぐために、牛血清アルブミンなどでブロッキングを行う。捕捉抗体が固相化されたプレートやビーズに、測定する抗原が含まれる被検試料を一次反応液と一緒に加え、捕捉抗体と目的の抗原を接触させ、結合させる(抗原検査一次反応工程)。この後、捕捉抗体に結合しなかった抗原や夾雑物を洗浄液で洗浄する。次に捕捉された抗原を認識する抗体と西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)などの酵素が結合した標識抗体を添加し、捕捉された抗原に標識抗体を結合させる(抗原検査二次反応工程)。この反応により、捕捉抗体−抗原−標識抗体の免疫複合体がマイクロプレート等の担体上に形成される。結合しなかった標識抗体を洗浄液で洗浄し、標識抗体の酵素に対する発色基質や発光基質を添加し、酵素と基質を反応させることによりシグナルを検出することが可能になる。
前記サポニン又は胆汁酸の存在下で、固相化された捕捉抗体と被検試料中の抗原が接触する工程(抗原検査一次反応工程)を行うことにより、抗原抗体反応の反応性を増強することができる。また、前記サポニン又は胆汁酸の存在下で、捕捉抗体によって捕捉された抗原と標識抗体とが接触する工程(抗原検査二次反応工程)を行うことにより、抗原抗体反応の反応性を増強することができる。但し、抗体が可溶性である場合の方が、サポニンなどによる増強効果が強いため、抗原検査一次反応工程よりも、抗原検査二次反応工程において、前記サポニン又は胆汁酸を存在させることが好ましい。前記抗原検査一次反応工程及び抗原検査二次反応工程は、通常抗原抗体反応に用いられる反応液中で行うことが可能である。反応液に用いる緩衝液は、抗原抗体反応に必要な構成成分を安定に保つことができ、且つ抗原抗体反応を阻害しないものであれば特に限定されないが、具体的には、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、グリシン緩衝液又はヘペス緩衝液など、従来公知の緩衝液から適宜選択することができる。また反応液には、その他の成分、例えば、抗原や抗体を安定化させるための、ウシ血清アルブミンなどのキャリアータンパク質、アジ化ナトリウムなどの防腐剤、また非特異反応を抑えるための界面活性剤などを含有させることも可能である。
抗体検査法の手順は、被検試料中の抗体を検出又は測定する方法であれば、特に限定されないが、例えば以下のように行うことができる。
まず、マイクロプレートやビーズなどの担体に、測定対象の抗体と結合する捕捉抗原を固相化する。その後、捕捉抗原や担体への非特異的な吸着を防ぐために、牛血清アルブミンなどでブロッキングを行う。捕捉抗原が固相化されたプレートやビーズに、測定する抗体が含まれる被検試料を一次反応液と一緒に加え、捕捉抗原と目的の抗体を接触させ、結合させる(抗体検査一次反応工程)。この後、捕捉抗原に結合しなかった抗体や夾雑物を洗浄液で洗浄する。次に捕捉された抗体を認識する抗体と西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)などの酵素が結合した標識抗体を添加し、捕捉された抗体に標識抗体を結合させる(抗体検査二次反応工程)。この反応により、捕捉抗原−抗体−標識抗体の免疫複合体がマイクロプレート等の担体上に形成される。結合しなかった標識抗体を洗浄液で洗浄し、標識抗体の酵素に対する発色基質や発光基質を添加し、酵素と基質を反応させることによりシグナルを検出することが可能になる。
前記サポニン又は胆汁酸の存在下で、固相化された捕捉抗原と被検試料中の抗体が接触する工程(抗体検査一次反応工程)を行うことにより、抗原抗体反応の反応性を増強することができる。抗体測定法においては、抗体検査一次反応工程において、検体中の抗B型肝炎ウイルス抗体は可溶性であり、反応液中に前記サポニン又は胆汁酸を存在させることによって、抗原抗体反応の反応性を増強させることが可能である。また、抗体検査法においても、抗原検査法で使用した緩衝液、キャリアータンパク質、界面活性剤などを使用することが可能である。
抗原検査法及び抗体検査法は、2ステップ法であるフォワードサンドイッチ法、リバースサンドイッチ法、及び1ステップ法で行うことが可能である。前記で例示した抗原検査法及び抗体検査法は、フォワードサンドイッチ法による検査方法である。以下に、抗原検査法を例として、フォワードサンドイッチ法、リバースサンドイッチ法、及び1ステップ法を説明するが、抗体検査法もフォワードサンドイッチ法、リバースサンドイッチ法、及び1ステップ法で行うことが可能である。
フォワードサンドイッチ法は、抗原検査法として説明した手順と同様であるが、簡単に説明すると、マイクロプレートやビーズなどの担体に捕捉抗体を固相化する。その後、牛血清アルブミンなどでブロッキングを行う。捕捉抗体が固相化されたプレートやビーズに、測定する被検試料を一次反応液と一緒に加え、捕捉抗体と目的の抗原を接触させ、結合させる(フォワード一次反応工程)。この後、プレートやビーズを洗浄液で洗浄する。次に標識抗体を添加し、捕捉された抗原に標識抗体を結合させる(フォワード二次反応工程)。この反応により、捕捉抗体−抗原−標識抗体の免疫複合体がマイクロプレート等の担体上に形成される。洗浄液で洗浄後に、標識抗体の酵素に対する発色基質や発光基質を添加し、酵素と基質を反応させることによりシグナルを検出する。
リバースサンドイッチ法では、まず、マイクロプレートやビーズなどの担体に、検査対象の抗原と結合する捕捉抗体を固相化する。その後、捕捉抗体や担体への非特異的な吸着を防ぐために、牛血清アルブミンなどでブロッキングを行い、固相化担体を準備する。次に、検査対象の抗原が含まれる被検試料を、反応液中で標識抗体と接触させ結合させる(リバース一次反応工程)。この被検試料中の抗原と標識抗体の免疫複合体が含まれる反応液を、捕捉抗体が固相化された担体と接触させる(リバース二次反応工程)。この反応により、捕捉抗体−抗原−標識抗体の免疫複合体がマイクロプレート等の担体上に形成される。結合しなかった抗体、抗原、標識抗体などを洗浄液で洗浄する。次に、標識抗体の酵素に対する発色基質や発光基質を添加し、酵素と抗体を反応させることによりシグナルを検出することが可能になる。このリバースサンドイッチ法は、フォワードサンドイッチ法におけるフォワード一次反応工程の前に、フォワード二次反応工程を行うので、洗浄工程が一回で済む。
リバースサンドイッチ法では、サポニン又は胆汁酸の存在下で、測定する抗原が含まれる被検試料と反応液中で標識抗体と接触させ結合させる工程(リバース一次反応工程)を行うことにより、抗原抗体反応の反応性を増強することができる。また、前記サポニン又は胆汁酸の存在下で、被検試料中の抗原と標識抗体の免疫複合体が含まれる反応液を、捕捉抗体が固相化された担体と接触させる工程(リバース二次反応工程)を行うことにより、抗原抗体反応の反応性を増強することができる。但し、抗体が可溶性であるリバース一次反応工程において、前記サポニン又は胆汁酸を存在させることが好ましい。
1ステップ法では、まず、マイクロプレートやビーズなどの担体に、測定する抗原と結合する捕捉抗体を固相化する。その後、捕捉抗体や担体への非特異的な吸着を防ぐために、牛血清アルブミンなどでブロッキングを行い、固相化担体を準備する。次に、固相化担体に反応液を添加し、抗原を含む被検試料及び標識抗体を同時に、又は抗原を含む被検試料を加えた後、すぐに、標識抗体を加える。固相化された捕捉抗体、抗原及び標識抗体の接触を同時に行い、反応させる(1ステップ反応工程)。この反応により、捕捉抗体−抗原−標識抗体の免疫複合体がマイクロプレート等の担体上に形成される。次に、結合しなかった抗体、抗原、標識抗体などを洗浄液で洗浄する。最後に標識抗体の酵素に対する発色基質や発光基質を添加し、酵素と基質を反応させることによりシグナルを検出することが可能になる。1ステップ法においても、洗浄工程は一回のみである。
1ステップ法では、サポニン又は胆汁酸の存在下で、捕捉抗体が固相化された担体、抗原を含む被検試料、及び標識抗体が反応する工程(1ステップ反応工程)を行うことにより、抗原抗体反応の反応性を増強することができる。この場合、固相化された捕捉抗体及び被検試料中の抗原の抗原抗体反応、並びに被検試料中の抗原及び標識抗体の抗原抗体反応のいずれの反応性に対しても、サポニン又は胆汁酸の添加は増強効果を示すが、被検試料中の抗原と抗体が可溶性である標識抗体との抗原抗体反応の反応性に対して、より強い増強効果を示すと考えられる。
本発明のサンドイッチ法によるB型肝炎ウイルス免疫学的分析方法で使用することのできるB型肝炎ウイルス抗原は、抗B型肝炎ウイルス抗体の抗原結合部位が結合するエピトープ又は抗原決定基を有する抗原であれば特に限定されない。例えば、抗体検出法で、被検試料中の抗B型肝炎ウイルス抗体を測定するために用いる抗原は、B型肝炎ウイルスのネイティブな抗原を用いることもできるし、大腸菌などを用いて産生した組換えHBV抗原を用いることも可能である。また、抗原検査法で検出されるB型肝炎ウイルス抗原としては、HBs抗原、HBc抗原、HBe抗原及びHBc関連抗原などを挙げることができ、特には、HBs抗原が好ましい。HBs抗原には、389〜400のアミノ酸残基からなるLargeS蛋白、281のアミノ酸残基からなるMiddleS蛋白、及び226のアミノ酸残基からなるSmallS蛋白が含まれる。これらのHBs抗原の抗原決定基又はエピトープには、pre−S1領域、pre−S2領域、共通抗原決定基aなどが含まれる。しかしながら、本発明において利用される抗原決定基又はエピトープは、これらに限定されず、すべてのHBs抗原の抗原決定基又はエピトープを利用することができる。
また、本願発明のサンドイッチ法によるB型肝炎ウイルス免疫学的分析方法で使用される抗B型肝炎ウイルス抗体は、特には限定されない。例えば、HBs抗原、HBc抗原、HBe抗原及びHBc関連抗原を認識する抗体を挙げることができる。HBs抗原に結合する抗体としては、具体的には、226のアミノ酸残基からなるSmallS蛋白の51〜60番のアミノ酸残基からなるペプチドに結合する抗体、例えば、6G6抗体、151〜170番のアミノ酸残基からなるペプチドに結合する抗体、例えば、HBs121抗体、31〜50番のアミノ酸残基からなるペプチドに結合する抗体、例えば、HBs123抗体、111〜130番のアミノ酸残基からなるペプチドに結合する抗体、例えば、HBs136抗体、111〜130番のアミノ酸残基からなるペプチドに結合する抗体、例えば、HBs128抗体、1〜226番のアミノ酸残基からなるHBsの全長ペプチドに結合し、HBs抗原のアミノ酸配列由来の10アミノ酸残基ずつオーバーラップする20アミノ酸残基からなるペプチドとは結合しない、共通抗原決定基aなどの構造エピトープを認識する抗体、例えば、HBs605C3抗体及びSF124CS抗体を挙げることができる。
また抗体の種類は、特に限定されないが、例えば、ヒトやマウスの哺乳動物の血液中のポリクローナル抗体でもよく、ミエローマ細胞との細胞融合によって得られるハイブリドーマ細胞から分泌されるモノクローナル抗体でもよい。抗体はペプシンやパパインといったプロテアーゼを用いて、F(ab’)やFabなどの抗体フラグメントを得ることができる。一般的に抗体の重鎖(H鎖)は、S−S結合により重鎖同士が結合しており、その結合は還元剤にて切断される。本発明における抗体には、これらの抗体フラグメント、例えば、F(ab’)、Fab’、Fab、F(abc’)、Fabc’等を使用することが可能である。
本発明のB型肝炎ウイルス免疫学的分析方法で抗原と結合する抗体の状態は、不溶性担体などに固相化された状態でもよく、可溶性の状態でもよいが、特には、反応液中で可溶性であることが好ましい。本明細書において「可溶性抗体」とは、抗原抗体反応のときに不溶性担体などに固相化されていない抗体を意味する。また、本明細書において、「不溶性担体」とは、プレートやビーズなどの抗体や抗原を固相化する材料を意味しており、標識抗体を作製する場合に、デキストランなどの高分子化合物に、抗体及び標識酵素などを結合させることがあるが、このような高分子化合物は、不溶性担体に含まれない。
本発明のB型肝炎ウイルス免疫学的分析方法に用いる抗体を標識する酵素としては、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)以外にも、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、及びルシフェラーゼなどを挙げることができる。また酵素以外にも、標識物質として、アクリジニウム誘導体などの発光物質、ユーロピウムなどの蛍光物質、I125などの放射性物質などを使用することができる。また、標識物質に会わせて基質や発光誘導物質を適宜選択することができる。
更に、本発明における標識抗体は、検出マーカーとしてハプテンや低分子量のペプチド、レクチンなどの抗原抗体反応のシグナルの検出に利用できる物質を結合させたものも含む。ハプテンにはビオチン、ジニトロフェニル(DNP)、FITCなどが含まれる。例えばビオチンを抗体に結合させ、プローブ複合体を作成した場合、ビオチンに親和性のあるアビジンにHRPなどの酵素、フルオレッセインなどの蛍光物質、又はアクリジニウム誘導体などの発光物質を標識し、プローブ複合体と反応させ発色、蛍光、発光などによりシグナルを検出することができる。
また、抗体の標識方法も特に限定されず、抗体を酵素などの標識物で、直接標識してもよいが、デキストランなどの高分子化合物に抗体と酵素などの標識物を結合させてもよいし、標識抗体をデキストランなどの高分子化合物に結合させてもよい。このような高分子化合物に抗体が結合している場合でも、標識抗体が反応液中で可溶性である限り、本明細書中の「可溶性抗体」に含まれる。
本発明のB型肝炎ウイルス免疫学的分析方法で分析される被検試料は、免疫学的分析方法で測定されるB型肝炎ウイルス抗原又は抗B型肝炎ウイルス抗体を含む可能性のある被検試料である限り、特に限定されるものではなく、臨床診断に一般的に用いられる生体由来液、例えば、血液、血清、血漿、又は尿などを挙げることができる。更に、生体由来液以外にも、B型肝炎ウイルス抗原又は抗B型肝炎ウイルス抗体の含まれる細胞の培養上清なども被検試料に含まれる。
本発明のサンドイッチ法によるB型肝炎ウイルス免疫学的分析用試薬には、前記サポニン又は胆汁酸を含むことができる。また、免疫学的分析試薬はサポニン、コール酸、及び陰イオン性界面活性剤のうちの2種以上の混合物を含むことができる。特には、サポニン及び陰イオン性界面活性剤の混合物を含むこと好ましい。
B型肝炎ウイルス免疫学的分析用試薬は、抗原と抗体を接触させる抗原抗体反応時に用いる試薬であれば特に限定されない。例えば、前記の抗原検査法に用いる試薬でもよく、抗体検査法に用いる試薬でもよい。また、前記フォワードサンドイッチ法、リバースサンドイッチ法、及び1ステップ法に用いる試薬でもよい。B型肝炎ウイルス免疫学的分析用試薬に用いる緩衝液は、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、グリシン緩衝液又はヘペス緩衝液など、従来公知の緩衝液から適宜選択することができる。またB型肝炎ウイルス免疫学的分析用試薬には、その他の成分、例えば、抗原や抗体を安定化させるための、ウシ血清アルブミンなどのキャリアータンパク質、アジ化ナトリウムなどの防腐剤、また非特異反応を抑えるための界面活性剤などを含有させることもできる。更に、抗原抗体反応時に接触させるB型肝炎ウイルス抗原又は抗B型肝炎ウイルス抗体のいずれかを試薬中に含むこともできる。
B型肝炎ウイルス抗原及び抗B型肝炎ウイルス抗体を接触させる反応時における、B型肝炎ウイルス免疫学的分析用試薬のサポニン又は胆汁酸の濃度は、特に限定されないが、好ましくは、下限は0.001%(質量/容量パーセント)以上であり、上限は溶液に溶解することのできる濃度である。また、好ましくは0.01〜10%(質量/容量パーセント)であり、より好ましくは、0.02〜5%(質量/容量パーセント)であり、最も好ましくは、0.03〜3.2%質量/容量パーセント)である。また、サポニン、胆汁酸及び陰イオン性活性剤から選択される2種以上の混合物の場合の、それぞれの物質の濃度は、それぞれの物質を単独で添加する濃度で使用することが可能である。混合物の場合のB型肝炎ウイルス抗原及び抗B型肝炎ウイルス抗体を接触させる反応時における、B型肝炎ウイルス免疫学的分析用試薬の陰イオン性界面活性剤の濃度も、特に限定されないが、好ましくは、下限は0.001%(質量/容量パーセント)以上であり、上限は溶液に溶解することのできる濃度である。また、好ましくは0.01〜10%(質量/容量パーセント)であり、より好ましくは、0.02〜5%(質量/容量パーセント)であり、最も好ましくは、0.05〜0.8%(質量/容量パーセント)である。B型肝炎ウイルス免疫学的分析用試薬中のサポニン又は胆汁酸の濃度は、被検試料との適当な混合比を選択することによって、反応時に前記濃度になるように調整することが可能である。また、被検試料との混合比を指示する使用説明書等を添付することによって、前記濃度で使用することが可能である。
本発明の免疫学的分析キットは、サポニン又は胆汁酸塩を含むB型肝炎ウイルス免疫学的分析用試薬を含むことができる。B型肝炎ウイルス免疫学的分析用試薬は溶液の状態で提供されてよいが、凍結乾燥させた粉末状態で提供されてもよい。本発明の免疫学的分析のキットは、B型肝炎ウイルス抗原、抗B型肝炎ウイルス抗体、抗原又は抗体の固相化されたプレート又はビーズなどの担体、使用説明書などを含むことができる。
以下に実施例及び比較例を示し本発明の具体的な説明を行うが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
以下の、実施例で使用しているモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株HBs121〔国際受託番号FERM BP−10697〕、HBs123〔国際受託番号FERM BP−10698〕、HBs136〔国際受託番号FERM BP−10699〕、HBs605C3〔国際受託番号FERM BP−10701〕、SF124CS〔国際受託番号FERM BP−10703〕は、平成18年10月12日付けで、また、ハイブリドーマ細胞株6G6〔国際受託番号FERM BP−10117〕は、平成16年9月9日付けで、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(あて名:〒305−8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に国際寄託された。
《実施例1》
本実施例1では、サポニンの存在下で、抗原検査法の抗原検査二次反応工程を行い、HBV抗原を測定した。
抗HBsAgモノクローナル抗体(6G6抗体、HBs121抗体、HBs123抗体、及びHBs136抗体の等量混合物)を6μg/mLの濃度で96穴マイクロプレート(FluoroNunk Module,Maxisope surface)の各ウェルに100μL加え、4℃で一晩インキュベートした。10mMリン酸緩衝液pH7.3で2回洗浄後、0.5%カゼインナトリウムを含む10mMリン酸緩衝液を各ウェルに350μL加え37℃で4時間ブロッキングを行った。ブロッキング液除去後、反応緩衝液(1%BSA/2%Mouse serumを含む0.3M BES、pH7.2)25μLと健常人血清又はHBV陽性検体75μLを各ウェルに加え、攪拌しながら室温で1時間反応させた。反応後、0.05%Tween20、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む10mMリン酸緩衝液pH7.3(洗浄液)で8回洗浄した。次に、アルカリホスファターゼ標識した抗HBsAgモノクローナル抗体(SF124CS抗体)を0.5%BSA及び2%マウス血清を含む10mMリン酸緩衝液pH7.3で希釈し、その反応溶液中にサポニン(キラヤ由来;SIGMA)を反応時の濃度が0〜3.2%となるように加えた。この抗体希釈液を、各ウェルに100μL添加し、攪拌しながら室温で1時間反応させた。洗浄液で8回洗浄し、基質溶液(TROPIX,CDP−star with Emerald II)を各ウェルに100μL加え、室温で15分間インキュベートした。ルミノメーター(DIA−IATRON,Luminous CT−9000D)で発光強度を測定した。その結果を表1に示す。表中において、「RLU」はRelative Light Unitを表し、「S/N比」は、HBV陽性検体のRLUを健常人のRLUで除して計算した。
健常人血清は、サポニンの添加によって影響を受けなかった。一方、HBV陽性検体は、サポニン含有反応液を用いた場合に、サポニンを含まない反応液の2.2−3.0倍反応性が向上した。
Figure 0005332011
《実施例2》
本実施例2では、胆汁酸の存在下で、抗原検査法の抗原検査二次反応工程を行い、HBV抗原を測定した。
抗HBsAgモノクローナル抗体(6G6抗体、HBs121抗体、HBs123抗体、及びHBs136抗体の等量混合物)を、6μg/mLの濃度で96穴マイクロプレート(FluoroNunk Module,Maxisope surface)の各ウェルに100μL加え、4℃で一晩インキュベートした。10mMリン酸緩衝液pH7.3で2回洗浄後、0.5%カゼインナトリウムを含む10mMリン酸緩衝液を各ウェルに350μL加え37℃で4時間ブロッキングを行った。ブロッキング液除去後、反応緩衝液(1%BSA/2%Mouse serumを含む0.3M BES、pH7.2)25μLと健常人血清又はHBV陽性検体75μLを各ウェルに加え、攪拌しながら室温で1時間反応させた。反応後、0.05%Tween20、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む10mMリン酸緩衝液pH7.3(洗浄液)で8回洗浄した。次に、アルカリホスファターゼ標識した抗HBsAgモノクローナル抗体(SF124CS抗体)を0.5%BSA及び2%マウス血清を含む10mMリン酸緩衝液pH7.3で希釈し、その反応溶液中にコール酸ナトリウム(WAKO)又はデオキシコール酸ナトリウム(WAKO)を反応時の濃度が0−0.40%となるように加えた。この抗体希釈液を、各ウェルに100μL添加し、攪拌しながら室温で1時間反応させた。洗浄液で8回洗浄し、基質溶液(TROPIX,CDP−star with Emerald II)を各ウェルに100μL加え室温で15分間インキュベートした。ルミノメーター(DIA−IATRON,Luminous CT−9000D)で発光強度を測定した。結果を表2に示す。「RLU」及び「S/N比」は、実施例1と同じように計算した。
健常人血清は、コール酸ナトリウム、又はデオキシコール酸ナトリウムの添加によって影響を受けなかった。一方、コール酸ナトリウム、又はデオキシコール酸ナトリウム含有反応液を用いた場合に、HBV陽性検体の反応性が向上した。
Figure 0005332011
参考例1
参考例1では、陰イオン性界面活性剤の存在下で、抗原検査法の抗原検査二次反応工程を行い、HBV抗原を測定した。
抗HBsAgモノクローナル抗体(6G6抗体、HBs121抗体、HBs123抗体、及びHBs136抗体の等量混合物)を、6μg/mLの濃度で96穴マイクロプレート(FluoroNunk Module,Maxisope surface)の各ウェルに100μL加え、4℃で一晩インキュベートした。10mMリン酸緩衝液pH7.3で2回洗浄後、0.5%カゼインナトリウムを含む10mMリン酸緩衝液を各ウェルに350μL加え37℃で4時間ブロッキングを行った。ブロッキング液除去後、反応緩衝液(1%BSA/2%Mouse serumを含む0.3M BES、pH7.2)25μLと健常人血清又はHBV陽性検体75μLを各ウェルに加え、攪拌しながら室温で1時間反応させた。反応後、0.05%Tween20、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む10mMリン酸緩衝液pH7.3(洗浄液)で8回洗浄した。次に、アルカリホスファターゼ標識した抗HBsAgモノクローナル抗体(SF124CS抗体)を0.5%BSA及び2%マウス血清を含む10mMリン酸緩衝液pH7.3で希釈し、その反応溶液中にNLS(WAKO)を反応時の濃度が0−0.8%となるように、又はSDS(WAKO)を反応時の濃度が0−0.4%となるように加えた。この抗体希釈液を、各ウェルに100μL添加し、攪拌しながら室温で1時間反応させた。洗浄液で8回洗浄し、基質溶液(TROPIX,CDP−star with Emerald II)を各ウェルに100μL加え室温で15分間インキュベートした。ルミノメーター(DIA−IATRON,Luminous CT−9000D)で発光強度を測定した。その結果を表3に示す。「RLU」及び「S/N比」は、実施例1と同じように計算した。
健常人血清は、陰イオン性界面活性剤であるNLS、SDSのいずれかの添加によって影響を受けなかった。一方、NLS又はSDS含有反応液を用いた場合に、HBV陽性検体の反応性が向上した。
Figure 0005332011
参考例2
参考例2では、陰イオン性界面活性剤の存在下で、抗原検査法の抗原検査二次反応工程を行い、HBV抗原を測定した。
抗HBsAgモノクローナル抗体(6G6抗体、HBs121抗体、HBs123抗体、及びHBs136抗体の等量混合物)を、6μg/mLの濃度で96穴マイクロプレート(FluoroNunk Module,Maxisope surface)の各ウェルに100μL加え、4℃で一晩インキュベートした。10mM リン酸緩衝液pH7.3で2回洗浄後、0.5%カゼインナトリウムを含む10mMリン酸緩衝液を各ウェルに350μL加え、37℃で4時間ブロッキングを行った。ブロッキング液除去後、反応緩衝液(1%BSA/2%Mouse serumを含む0.3M BES、pH7.2)25μLと健常人血清又はHBV陽性検体75μLを各ウェルに加え、攪拌しながら室温で1時間反応させた。反応後、0.05%Tween20、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む10mMリン酸緩衝液pH7.3(洗浄液)で8回洗浄した。次に、アルカリホスファターゼ標識した抗HBsAgモノクローナル抗体(SF124CS抗体)を0.5%BSA、2%マウス血清、及び0.2%のSDS、1−オクタンスルホン酸ナトリウム、1−デカンスルホン酸ナトリウム、1−ウンデカンスルホン酸ナトリウム、又は1−ドデカンスルホン酸ナトリウムを含む10mMリン酸緩衝液pH7.3、で希釈し、各ウェルに100μL加えて攪拌しながら室温で1時間反応させた。洗浄液で8回洗浄し、基質溶液(TROPIX,CDP−star with Emerald II)を各ウェルに100μL加え室温で15分間インキュベートした。ルミノメーター(DIA−IATRON,Luminous CT−9000D)で発光強度を測定した。その結果を表4に示す。「RLU」及び「S/N比」は、実施例1と同じように計算した。
健常人血清は、陰イオン性界面活性剤であるSDS、各種アルキルスルホン酸塩の添加によって影響を受けなかった。一方、SDS又は各種アルキルスルホン酸塩含有反応液を用いた場合に、HBV陽性検体の反応性が向上した。
Figure 0005332011
《実施例5》
本実施例5では、サポニン又はコール酸の存在下で、抗原検査法の抗原検査二次反応工程を行い、HBV抗原を測定した。
抗HBsAgモノクローナル抗体(6G6抗体、HBs121抗体、HBs123抗体、及びHBs136抗体の等量混合物)を6μg/mLの濃度で96穴マイクロプレート(FluoroNunk Module,Maxisope surface)の各ウェルに100μL加え、4℃で一晩インキュベートした。10mMリン酸緩衝液pH7.3で2回洗浄後、0.5%カゼインナトリウムを含む10mMリン酸緩衝液を各ウェルに350μL加え、37℃で4時間ブロッキングを行った。ブロッキング液除去後、反応緩衝液(1%BSA/2%Mouse serumを含む0.3M BES、pH7.2)25μLと健常人血清又はHBV陽性検体75μLを各ウェルに加え、攪拌しながら室温で1時間反応させた。反応後、0.05%Tween20、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む10mMリン酸緩衝液pH7.3(洗浄液)で8回洗浄した。次に、アルカリホスファターゼ標識した抗HBsAgモノクローナル抗体(SF124CS抗体)を0.5%BSA、2%マウス血清及び0.4%サポニン(キラヤ由来;SIGMA及び茶の実由来;WAKO)、0.4%コール酸、0.4%Tween20、又は0.4%CHAPSを含む10mMリン酸緩衝液pH7.3で希釈し、各ウェルに100μL加えて攪拌しながら室温で1時間反応させた。洗浄液で8回洗浄し、基質溶液(TROPIX,CDP−star with Emerald II)を各ウェルに100μL加え室温で15分間インキュベートした。ルミノメーター(DIA−IATRON,Luminous CT−9000D)で発光強度を測定した。その結果を表5に示す。「RLU」及び「S/N比」は、実施例1と同じように計算した。
健常人血清は、各種サポニン、又はコール酸の添加によって影響を受けなかった。一方、各種サポニン、又はコール酸含有反応液を用いた場合に、HBV陽性検体の反応性が向上したが、Tween 20及びCHAPSの添加は、反応性に影響を与えなかった。
Figure 0005332011
《実施例6》
本実施例6では、サポニン及び陰イオン性界面活性剤の存在下で、抗原検査法の抗原検査二次反応工程を行い、HBV抗原を測定した。
抗HBsAgモノクローナル抗体(6G6抗体、HBs121抗体、HBs123抗体、及びHBs136抗体の等量混合物)を6μg/mLの濃度で96穴マイクロプレート(FluoroNunk Module,Maxisope surface)の各ウェルに100μL加え、4℃で一晩インキュベートした。10mMリン酸緩衝液pH7.3で2回洗浄後、0.5%カゼインナトリウムを含む10mMリン酸緩衝液を各ウェルに350μL加え、37℃で4時間ブロッキングを行った。ブロッキング液除去後、反応緩衝液(1%BSA/2%Mouse serumを含む0.3M BES、pH7.2)25μLと健常人血清又はHBV陽性検体75μLを各ウェルに加え、攪拌しながら室温で1時間反応させた。反応後、0.05%Tween20、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む10mMリン酸緩衝液pH7.3(洗浄液)で8回洗浄した。次に、アルカリホスファターゼ標識した抗HBsAgモノクローナル抗体(SF124CS抗体)を0.5%BSA、2%マウス血清並びに0.4%サポニン(キラヤ由来;SIGMA)、0.1%NLS、0.2%デオキシコール酸、0.4%サポニン及び0.1%NLS、又は0.2%デオキシコール酸及び0.1%NLSを含む10mMリン酸緩衝液pH7.3で希釈し、各ウェルに100μL加えて攪拌しながら室温で1時間反応させた。洗浄液で8回洗浄し、基質溶液(TROPIX,CDP−star with Emerald II)を各ウェルに100μL加え室温で15分間インキュベートした。ルミノメーター(DIA−IATRON,Luminous CT−9000D)で発光強度を測定した。その結果を表6に示す。「RLU」及び「S/N比」は、実施例1と同じように計算した。
HBV抗原陽性検体は、サポニン、NLS、デオキシコール酸を含有した溶液で希釈した抗体を用いた場合に、対照溶液よりも高感度に検出することができ、サポニン又はデオキシコール酸にNLSを併用して希釈に用いた場合に各々単独で使用するよりも高感度で検出することができ、特にサポニンと陰イオン性界面活性剤を組み合わせて使用することによる抗原抗体反応の増強効果が認められた。
Figure 0005332011
《実施例7》
本実施例7では、サポニンの存在下で、抗原検査法の抗原検査一次反応工程を行い、HBV抗原を測定した。
96穴マイクロプレート(FluoroNunk Module,Maxisope surface)に、抗HBsAgモノクローナル抗体(HBs605C3抗体、HBs123抗体、及びHBs128抗体の等量混合物)を3μg/mLの濃度で各ウェルに150μL加え、4℃で一晩インキュベートした。10mMリン酸緩衝液pH7.3で2回洗浄後、0.5%カゼインナトリウムを含む10mMリン酸緩衝液を各ウェルに350μL加え37℃で4時間ブロッキングを行った。ブロッキング液除去後、1.0%、若しくは2.0%(反応液の最終濃度は、0.25%若しくは0.5%)の3−(N,N−Dimethylmyristyl−ammonio)propanesulfonate(C14APS;SIGMA)、又は1.0%、若しくは2.0%(反応液の最終濃度は、0.25%若しくは0.5%)のサポニン(キラヤ由来:SIGMA)を含む反応緩衝液(1%BSA/2%Mouse serumを含む0.3M BES、pH7.2)25μLと健常人血清又はHBV陽性検体75μLを各ウェルに加え、攪拌しながら室温で1時間反応させた。反応後、0.05%Tween20、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む10mMリン酸緩衝液pH7.3(洗浄液)で8回洗浄した。次に、アルカリホスファターゼ標識した抗HBsAgモノクローナル抗体(SF124CS抗体)を0.5%BSA及び2%マウス血清を含む10mMリン酸緩衝液pH7.3で希釈し、各ウェルに100μL加え、攪拌しながら室温で1時間反応させた。洗浄液で8回洗浄し、基質溶液 TROPIX,CDP−star with Emerald II)を各ウェルに100μL加え室温で15分間インキュベートした。
ルミノメーター(DIA−IATRON,Luminous CT−9000D)で発光強度を測定し、その結果を表7に示す。「RLU」及び「S/N比」は、実施例1と同じように計算した。
HBV抗原陽性検体は、サポニンを含有する反応緩衝液存在下で固相化抗体との反応を行った場合に、サポニンを含まない反応緩衝液で反応を行った場合と比較して反応性が向上した。一方、C14APSの添加によって、反応性は向上しなかった。
Figure 0005332011
《実施例8》
本実施例8では、サポニンの存在下で、抗原検査法の抗原検査一次反応工程を行い、HBV抗原を測定した。
96穴マイクロプレート(FluoroNunk Module,Maxisope surface)に、抗HBsAgモノクローナル抗体(HBs605C3抗体、HBs123抗体、及びHBs128抗体の等量混合物)を3μg/mLの濃度で各ウェルに150μL加え、4℃で一晩インキュベートした。10mMリン酸緩衝液pH7.3で2回洗浄後、0.5%カゼインナトリウムを含む10mMリン酸緩衝液を各ウェルに350μL加え37℃で4時間ブロッキングを行った。ブロッキング液除去後、0−10%(反応液での最終濃度0〜2.5%)のサポニン(キラヤ由来;SIGMA)を含む反応緩衝液(1%BSA/2%Mouse serumを含む0.3M BES、pH7.2)25μLと健常人血清又はHBV陽性検体75μLを各ウェルに加え、攪拌しながら室温で1時間反応させた。反応後、0.05%Tween20、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む10mMリン酸緩衝液pH7.3(洗浄液)で8回洗浄した。次に、アルカリホスファターゼ標識した抗HBsAgモノクローナル抗体(SF124CS抗体)を0.5%BSA及び2%マウス血清を含む10mMリン酸緩衝液pH7.3で希釈し、各ウェルに100μL加え、攪拌しながら室温で1時間反応させた。洗浄液で8回洗浄し、基質溶液(TROPIX,CDP−star with Emerald II)を各ウェルに100μL加え、室温で15分間インキュベートした。ルミノメーター DIA−IATRON,Luminous CT−9000D)で発光強度を測定し、その結果を表8に示す。「RLU」及び「S/N比」は、実施例1と同じように計算した。
HBV抗原陽性検体は、サポニンを含有する反応緩衝液存在下で固相化抗体との反応を行った場合に、サポニンを含まない反応緩衝液で反応を行った場合と比較して反応性が向上した。
Figure 0005332011
本発明は、血中のB型肝炎ウイルスの抗原を高感度に検出又は定量するためのサンドイッチ法によるB型肝炎ウイルス免疫学的分析方法を提供するものであり、血液のB型肝炎ウイルスによる感染の有無を診断し、輸血用血液のスクリーニングを迅速的確に行うことができる。また、本発明は、高感度なB型肝炎ウイルス免疫学的分析用試薬やB型肝炎ウイルス免疫学的分析キットを提供することができる。
以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は本発明の範囲に含まれる。

Claims (9)

  1. サポニン又は胆汁酸塩の存在下で、B型肝炎ウイルス抗原と抗B型肝炎ウイルス抗体とを接触させる工程を含む、サンドイッチ法によるB型肝炎ウイルス免疫学的分析方法。
  2. 前記抗B型肝炎ウイルス抗体が可溶性抗体である、請求項1に記載のB型肝炎ウイルス免疫学的分析方法。
  3. 前記サポニンがトリテルペノイドサポニンである、請求項1又は2に記載のB型肝炎ウイルス免疫学的分析方法。
  4. 前記B型肝炎ウイルス抗原と抗B型肝炎ウイルス抗体とを接触させる工程を、陰イオン性界面活性剤の共存下で行う、請求項1〜3のいずれか一項に記載のB型肝炎ウイルス免疫学的分析方法。
  5. サンドイッチ法によるB型肝炎ウイルス免疫学的分析用試薬であって、B型肝炎ウイルス抗原と抗B型肝炎ウイルス抗体とを接触させる試薬にサポニン又は胆汁酸塩を含むことを特徴とする、B型肝炎ウイルス免疫学的分析用試薬。
  6. 前記抗B型肝炎ウイルス抗体が可溶性抗体である、請求項5に記載のB型肝炎ウイルス免疫学的分析用試薬。
  7. 前記サポニンがトリテルペノイドサポニンである、請求項5又は6に記載のB型肝炎ウイルス免疫学的分析用試薬。
  8. 前記B型肝炎ウイルス抗原と抗B型肝炎ウイルス抗体とを接触させる試薬が、さらに陰イオン性界面活性剤を含む、請求項5〜7のいずれか一項に記載のB型肝炎ウイルス免疫学的分析用試薬。
  9. 請求項5〜8のいずれか一項に記載のB型肝炎ウイルス免疫学的分析用試薬を含むB型肝炎ウイルス免疫学的分析キット。
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