JP5329915B2 - 非晶質合金箔帯の製造装置および非晶質合金箔帯の製造方法 - Google Patents

非晶質合金箔帯の製造装置および非晶質合金箔帯の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、非晶質(アモルファス)合金箔帯の製造装置および非晶質合金箔帯の製造方法に関し、特に、冷却ロールを備えた非晶質合金箔帯の製造装置および非晶質合金箔帯の製造方法に関する。
従来、トランスやモータの鉄心に、電力損失が少ない鉄基非晶質合金を用いることが検討され、トランスについては一部で実用化されている。しかしながら、モータにおいては全く実用化されておらず、トランスにおいても巻鉄心に限られている。この理由は、工業規模で生産される非晶質合金箔帯の板厚が25μm以下ときわめて薄いことによる。厚い箔帯が工業的に製造されれば、モータや積鉄心トランスへの適用も可能になる。箔帯の厚肉化により鉄心加工工程の作業効率が向上するとともに、占積率が高まる。また、箔帯の剛性が向上することにより鉄心の機械的強度が著しく高まる。すなわち箔帯を積層して鉄心とするモータや積鉄心への適用が可能になる。
非晶質合金のもっとも一般的製造方法は、熱伝導率が高い金属または合金製のロールを高速で回転させながら、合金の溶湯をロールの外周面に接触させることにより、合金溶湯を急速に冷却して箔帯状に凝固させるロール液体急冷法である。しかしながら、ロール液体急冷法で製造できる非晶質合金箔帯の板厚には厳しい制約があり、厚さが十分な厚い箔帯を製造することはできなかった。
そこで、本発明者等は、ロールの周方向に沿って複数本のスリットを配列させた多重スリットノズル法を開発し、特許文献1において開示した。この多重スリットノズル法によれば、各スリットから吐出された合金溶湯はノズルとロールの間の狭い空間にスリットの数に応じた複数の湯溜り(パドル)を形成する。上流から数えて第1のパドルにおけるロールとの接触面の近傍は、ロールの外周面上で冷却され、粘度を増した過冷却流体層がロールにより引き出され、その上に下流側のパドルが重なる。上流のパドルから引き出された流体層は下流のパドルと会合するまでに温度が下がるので、下流のパドルはこの流体層によって冷却され、粘度が高くなった部分が引き出される。これを繰り返すことにより厚い箔帯が形成される。流体層同士は液体状態で重なるので界面は混じりあい、層間の境界のない一体化した非晶質合金の箔帯が得られる。
しかしながら、多重スリットノズル法においても、以下に示すような問題がある。すなわち、ロール液体急冷法には、非水冷ロールを使用する方法と水冷ロールを使用する方法とがある。非水冷ロールは、ロール自体の熱容量によって合金溶湯を冷却する。非水冷ロールを使用する場合、製造初期のロール温度が低い状態においては、合金溶湯を効率的に冷却することができ、ある程度の量の厚い非晶質合金箔帯を製造することができる。しかし、非水冷ロールは、ロールの温度が上がると冷却効率が低下するため、長時間、使用することができない。このため、非晶質合金箔帯を工業的に生産する場合には不向きである。
このような理由で、工業的には、水冷ロールを使用することが好ましい。水冷ロールには水冷機構が内蔵されているため、ロール自体の熱容量が小さくても、冷却水を介して排熱することができる。しかし、水冷ロールでも板厚が25μmをこえる厚肉の非晶質合金を工業的規模で量産することは困難であった。
特開昭60−108144号公報 実開平6−86847号公報 特公昭61−059817号公報
本発明の目的は、板厚の大きな非晶質合金箔帯を工業的な規模で製造することができる非晶質合金箔帯の製造装置および非晶質合金箔帯の製造方法を提供することである。
本発明の一態様によれば、冷却ロールと、前記冷却ロールを回転させる駆動手段と、
前記冷却ロールの外周面に対して合金溶湯を供給する供給手段と、を備え、前記供給手段は、前記冷却ロールの外周部分の一部を構成し前記冷却ロールの周方向に沿って周回する第1の冷却帯、および、前記第1の冷却帯から前記冷却ロールの軸方向において、前記外周部分の他の一部を構成し前記周方向に沿って周回し前記合金溶湯が供給されない禁制帯を挟んで離隔し、前記冷却ロールの周方向に沿って周回する第2の冷却帯に対して、交互に前記合金溶湯を供給することを特徴とする非晶質合金箔帯の製造装置が提供される。2個の冷却帯の間に介在する禁制帯は、冷却帯の間の熱移動を制限するために設けられる。
本発明の他の一態様によれば、冷却ロールを回転させながら、前記冷却ロールの外周部分の一部を構成し前記冷却ロールの周方向に沿って周回する第1の冷却帯に対して合金溶湯を供給する第1工程と、前記冷却ロールを回転させながら、前記第1の冷却帯から前記冷却ロールの軸方向において、前記外周部分の他の一部を構成し前記周方向に沿って周回し前記合金溶湯が供給されない禁制帯を挟んで離隔し、前記冷却ロールの周方向に沿って周回する第2の冷却帯に対して前記合金溶湯を供給する第2工程と、を備え、前記第1工程および前記第2工程を交互に実施することを特徴とする非晶質合金箔帯の製造方法が提供される。
本発明によれば、板厚の大きい非晶質合金箔帯を工業的な規模で製造することが可能な非晶質合金箔帯の製造装置および非晶質合金箔帯の製造方法を提供することができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る非晶質合金箔帯の製造装置を例示する正面図であり、
図2は、図1における冷却ロールの構造を例示する断面図であり、
図3は、図1において合金溶湯が冷却ロールと接触する部分を例示する断面図であり、
図4は、図1において冷却ロールを冷却する冷却水の経路を示す概念図であり、
図5は、横軸に時間をとり、縦軸に冷却帯をとって、本実施形態に係る非晶質合金箔帯の製造方法を例示するタイミングチャートである。
図1に示すように、本実施形態に係る非晶質合金箔帯の製造装置1は、主に鉄基の非晶質合金箔帯(以下、単に「箔帯」ともいう)Sを製造するものである。製造装置1においては、内部を冷却水W(図3参照)が流通する肉厚の大きい冷却ロール13が設置されている。冷却ロール13は回転軸部材12aおよび12b(以下、総称して「回転軸部材12」ともいう)により軸支され、回転軸部材12は回転軸を共有する駆動手段11に接続されている。駆動手段11にはモータ(図示せず)が内蔵されており、回転軸部材12を介して冷却ロールを回転させる。回転軸部材12および冷却ロール13は、軸受け41aおよび41bにより支持されている。
図1および図2に示すように、冷却ロール13の外周部分には、禁制帯18をはさんで2個の冷却帯13aおよび13bが設けられている。冷却帯13a、13bは強度の大きな金属合金からなる支持機構31に固定されている。支持機構31はロール駆動手段11に結合されており、冷却帯13a、13bはロール駆動手段11により回転力を付与される。
冷却帯13a、13bは熱伝導率が高い金属または合金により形成されており、例えば、銅または銅合金により形成されている。銅の熱伝導率は、100℃において395W/(m・K)である。また、冷却帯13a、13bはBe−Cu系合金またはCr−Cu系合金により形成されていてもよく、これらの銅合金の熱伝導率は150ないし300W/(m・K)である。一方、禁制帯18は、冷却帯13a、13bと同じ材料により一体的に形成されていてもよく、冷却帯13a、13bとは異なる材料により形成されていてもよい。例えば、禁制帯18が冷却帯13a、13bと異なる材料により形成されている場合、その材料の熱伝導率は例えば10W/(m・K)以上である。禁制帯18を形成する材料としては、例えば、炭素鋼(熱伝導率:48.5W/(m・K))、18−8ステンレス鋼(熱伝導率:16.5W/(m・K))、黄銅(熱伝導率:128W/(m・K))などの銅合金が挙げられる。
また、製造装置1においては、合金溶湯A(図3参照)を保持する坩堝(るつぼ)14が設けられており、坩堝14の下端には、坩堝14内の合金溶湯Aを坩堝14の外部に向けて吐出するノズル15が取り付けられている。ノズル15の吐出口は冷却ロール13の外周面に近接して配置されている。ここで、坩堝は図1に示すものには限定されず、溶湯を蓄え供給する手段をすべて含み、例えば、合金の溶解装置から合金溶湯を受け、ノズルを介して冷却ロールに合金を供給できるものは坩堝と呼ぶ。溶解装置にノズルを設け、直接、溶湯を供給できる装置も含まれる。
ノズル15は、例えば、図3に示すように、多重スリットノズルである。すなわち、ノズル15の吐出口の形状は、冷却ロール13の周方向に沿って複数本、例えば2本のスリット17aおよび17bが配列された形状となっている。各スリット17aと17bの長手方向は、冷却ロール13の軸方向(ロール幅方向)に平行である。また、スリット17aと17bの間の距離は、例えば10mm(ミリメートル)以下であり、例えば6mm以下である。なお、ノズル15として、吐出口に3本以上のスリットが形成された多重ノズルを使用してもよく、1本のスリットのみが形成されたシングルスリットノズルを使用してもよい。
ノズル15は、合金溶湯Aが濡れにくい耐火物によって形成されており、例えば、ボロンナイトライド、ジルコニア、もしくはアルミナなどによって形成されている。これにより、合金溶湯Aによってスリット17が閉塞しにくくなっている。これらの耐火物以外に、合金溶湯と濡れる耐火物であっても、表面に合金溶湯が濡れにくい物質を溶射などによりコーティングすれば、ノズル15の材料として使用することができる。例えば、シリコンナイトライドは、強度および熱衝撃性にすぐれている。また、シリコンカーバイドとボロンナイトライドとの複合材料は、耐熱性のほかに導電性があり、待機中のノズルの温度保持が容易である。ただし、これらの材料は合金溶湯の鉄と反応するため、上述のボロンナイトライド、ジルコニア、もしくはアルミナ等の濡れにくい物質で被覆する必要がある。
また、製造装置1には、坩堝14を冷却ロール13の軸方向に沿って移動させる移動手段16が設けられている。移動手段16は、坩堝14を、ノズル15が冷却帯13aに対向する位置と、ノズル15が冷却帯13bに対向する位置との間で移動させる。
図4は本実施形態に係る非晶質合金箔帯の製造装置における冷却水Wの経路を簡略化して示している。冷却水Wは鋳造中、所定の温度、例えば室温より低く保持するため、冷却水Wの経路の途中、例えば、貯水槽42に冷却水を冷却する冷却手段43を設ける。冷却手段としては、ヒートポンプを応用した機器を設置する方法や、貯水槽42に氷など室温より低い物質を投入する方法などがある。冷却水は貯水槽42から給水管25によって冷却ロール13の水路24に供給され、冷却ロール13内を流通した後、水路24から排水管26を介して貯水槽42に戻される。そして、冷却水は、この循環の途中で冷却手段43によって冷却される。なお、水路24は、冷却帯13aおよび13b内の他に、禁制帯18内にも形成されている。
給水管25および排水管26の構成は、図2に示す構成には限定されず、冷却ロール13に接続可能なあらゆる構成をとることができる。例えば、図2に示すように、給水管25および排水管26は二重管を構成していてもよい。この場合、貯水槽42、冷却手段43、給水管25、水路24および排水管26からなる冷却水循環系は、冷却帯13aおよび冷却帯13bについてそれぞれ独立に設けられている。これは、冷却帯13aと冷却帯13bとを熱的に分離するためである。また、冷却ロール13の軸方向の一端部に給水管25が接続され、他端部に排水管26が接続されていてもよい。この場合は、給水管25は冷却ロール13の支持機構31の中心部分32を軸方向に貫通している。また、例えば、冷却ロール13の軸方向から見ると、給水側の水路は冷却ロール13の中心から外周面に向かって相互に反対の2方向に分岐し、排水側の水路は冷却ロール13の外周面から中心に向かって給水側の分岐が延びる方向に対して直交する2方向から合流している。すなわち、冷却ロール13の軸方向から見て、冷却ロール13の中心部分と外周部分とを結ぶ分岐路は十字形になっている。
次に、上述の如く構成された本実施形態に係る製造装置1の動作、すなわち、本実施形態に係る非晶質合金箔帯の製造方法について説明する。
まず、図1に示すように、駆動手段11を駆動させることにより、回転軸部材12を介して、冷却ロール13を回転させる。次に、冷却ロール13の一方の冷却帯たとえば13aの外周面に、所定の間隔で近接して配置されたノズル15を介して坩堝14から合金溶湯Aを吐出する。これにより、ノズル15と冷却帯13aとの間に、パドルPが形成される。そうすると、パドルPを形成する合金溶湯のうち、冷却帯13aとの接触面の近傍に位置する合金溶湯は冷却されて粘度が高くなり、冷却ロール13の回転によってパドルPから引き出される。引き出された合金は、この時点では過冷却液体であるが、冷却ロール13により急冷されてガラス遷移温度以下になり非晶質合金箔帯Sとなる。パドルPから引き出された箔帯(あるいは過冷却液体)が非晶質化するために必要な冷却速度は、鉄基合金の場合、例えば、1×10℃/秒以上である。
本実施形態においては、図3に示すように、ノズル15にスリット17が2本形成されている。このため、形成される箔帯の板厚は、冷却ロールの周速が同じであっても、シングルスリットを使用する場合に比べて厚くなる。すなわち、生産性が高い。多重スリットノズルがシングルスリットノズルに比べて、同一ロール周速のもとで、板厚が厚くなる理由は、パドルPを複数に分割することにより冷却帯との接触面積が増大して冷却帯に伝達する熱流を分散させることができるからである。
非晶質合金箔帯を形成するために合金溶湯および箔帯から冷却ロール13に伝達された熱は、図4に示すように、冷却帯13aの外周部分からロール内部に伝わり、水路24内を流通する冷却水Wに伝達される。そして、冷却水に伝達された熱は、排水管を介して冷却水と共に貯水槽42に回収される。すなわち、合金溶湯Aの熱は、合金溶湯A→冷却ロール13→冷却水Wの経路で排出される。
そして、箔帯Sの鋳造に伴い、冷却帯13aの温度が所定値(Th)に達したら、ノズル15を閉じ、合金溶湯Aの吐出を停止する。停止したのち迅速に移動手段16が坩堝14を移動させ、冷却帯13bの外周面に近接させる。そして溶湯Aの供給を再開する。これにより、冷却帯13bを用いて箔帯Sを鋳造する。このとき、箔帯Sの鋳造に伴って冷却帯13bは加熱されていくが、冷却帯13aは冷却水により急速に冷却されていく。そして、冷却帯13bの温度が所定値(Th)に達したら溶湯Aの供給を停止して、迅速に坩堝14を移動させ、冷却帯13aの外周面に近接させる。そして再び溶湯の供給を行う。このときまでには、冷却帯13aは十分に冷却されている。例えば、室温に達している。冷却帯13aの温度が再び所定の温度(Th)を超えたら、合金溶湯Aの供給を停止して坩堝14を冷却帯13bに相当する位置まで移動させ、鋳造を続ける。以上の動作を交互に繰り返すことにより非晶質化に必要な冷却速度を確保できる。とくに板厚の大きい箔帯(30μm以上)の製造には有効である。これに対して、これまでは単一冷却帯を有する冷却ロールを使用していたため30μm以上の厚肉箔帯の連続的鋳造はできなかった。
なお、上述の例では、坩堝14を冷却帯13aに対向する位置から冷却帯13bに対向する位置まで移動させる形態を例示したが、冷却ロール13をその回転軸に沿って移動させることにより、ノズルに対面する冷却帯を冷却帯13aから冷却帯13bに移動させることも可能である。
このように、冷却ロール13を回転させながら、冷却帯13aの外周面に合金溶湯Aを供給する第1工程と、合金溶湯Aの供給を中断して坩堝14を冷却帯13bの外周面に対向する位置に移動させ、冷却帯13bの外周面に合金溶湯Aを供給する第2工程を繰り返すことにより、板厚の大きい箔帯Sをほぼ連続的に工業規模で製造することができる。図5に本実施形態における操業形態を例示する。図5に示すように、一方の冷却帯で鋳造しているとき他方の冷却帯は冷却水による冷却過程にある。
以下、本実施形態における数値例を示す。
図6は、本実施形態において製造される鉄基非晶質合金箔帯の組成を例示する3元系組成図である。本実施形態において製造される鉄基非晶質合金箔帯Sは、その幅が例えば60mm以上であり、厚さ(板厚)が例えば30μm(マイクロメートル)以上、例えば33μm以上、例えば40μm以上である。なお、本明細書において、箔帯の厚さは、重量板厚で定義する。重量板厚とは、箔帯の重量を箔帯の面積および密度で除した値である。
更に、図6に示すように、この鉄基非晶質合金箔帯Sの組成は、例えば、鉄(Fe)に半金属であるシリコン(Si)、および、ホウ素(B)を添加したものである。この箔帯Sを電磁用途に使用する場合には、鉄の濃度を70原子%以上とすることが好ましい。箔帯の組成は、例えば、図6において破線で囲んだ領域R内の組成、すなわち、鉄の含有率が70ないし81原子%であり、シリコンの含有率が3ないし17原子%であり、ホウ素の含有率が9ないし23原子%であり、且つ、ガラス遷移温度Tgが500℃以上となるような組成とする。ここで、鉄、シリコン、ホウ素、および不可避的不純物の総和は100原子%である。なお、鉄の一部は、コバルト(Co)、またはニッケル(Ni)で置換してもよい。置換量は、合計で20原子%以下とする。また、シリコンあるいはホウ素の一部を2.0原子%以下の炭素で置換してもよい。ただし、炭素の置換量は、ガラス遷移温度Tgが500℃以上である範囲とする。すなわち、合金溶湯Aの組成を、鉄の含有量が70ないし81原子%であり、シリコンの含有量が1ないし17原子%であり、ホウ素の含有率が7ないし23原子%であり、炭素の含有量が2原子%以下であり、且つ、ガラス遷移温度Tgが500℃以上となるような組成としてもよい。
ガラス遷移温度Tgを組成選択の要件とする理由は次の通りである。従来、合金の非晶質化容易性(非晶質形成能)は、合金の融点Tmとガラス遷移温度Tgの比、Tg/Tm(ここでは絶対温度)で評価されてきた。しかし、実際には、融点Tmよりガラス遷移温度Tgの寄与のほうが顕著であることから、合金組成の領域RをTgの大きさにより定めた。合金のガラス遷移温度Tgを50℃高めると、非晶質化可能な箔帯の限界板厚は少なくとも10%厚くなる。なお、ガラス遷移温度Tgの測定は鉄基合金においては測定が困難なため、ほぼ同じ温度とされる結晶化ピーク温度Tp1で代用した。図6の数値は結晶化ピーク温度Tp1(℃)を表している。
図6に示す領域R内の組成のうち、飽和磁束密度Bsが比較的高いグループ、すなわち飽和磁束密度Bsが1.5T(テスラ)以上であるグループと、ヒステリシス損が低いグループについてそれぞれ具体的な組成を表1に示す。ヒステリシス損は、周波数50Hz(ヘルツ)、磁束密度1.3Tにおけるヒステリシス損Wh13/50である。表1において、右欄に示した組成のWh13/50はいずれも、最適条件で熱処理するとき、その値は、0.08W/kg以下である。ここで、ヒステリシス損Wh13/50は、単板試料で測定した値である。なお、表1に示す数字は各成分の原子%を示している。
Figure 0005329915
また、箔帯Sには、0.01ないし1.0質量%の錫(Sn)を含有させてもよい。箔帯の結晶化は表面から始まるが、錫は表面に偏析する傾向が強く、箔帯表面層の結晶化を抑制する効果がある。これにより、結晶化に伴う磁気特性の劣化が抑制される。また、錫には磁気特性の経時変化を抑制する効果がある。
次に、本実施形態に係る製造装置および製造方法について詳述する。
冷却帯13a、13bの肉厚はそれぞれ25mm以上であることが好ましい。従来、冷却ロールの肉厚は、連続的な長時間の鋳造を前提に設計されており、その肉厚は薄いほど抜熱には有利とされ、10mm以下が採用されてきた。例えば、特許文献2には、冷却ロール(冷却スリーブ)の肉厚は3〜10mmに規定され、その理由が述べられている。それによると、10mmを超えると、冷却速度の低下が大きく、非晶質合金箔帯の局所脆化が激しくなり、特に、板厚25μm以上の密着曲げできる箔帯が得られないため、とされている。また、3mm以下では、冷却ロールの熱変形が大きく、急冷箔帯の厚みむらが生ずるため、とされている。さらに特許文献2には、非晶質合金箔帯の厚肉化の手段として、冷却水の噴流をロールの内面に衝突させる方法が提案されている。しかし、この方法でも、ロールと水の間の熱伝達率を高める効果は限定的で板厚30μmを超える非晶質合金箔帯を製造することは困難であった。なお、従来の冷却ロールの肉厚は、本実施形態の冷却帯の肉厚に対応する。
肉の薄い従来の冷却ロールで厚い非晶質合金箔帯が得られない理由を、実験的知見と伝熱計算に基づいて説明する。図7(a)は鋳造中の箔帯(未凝固の流体を含む)の温度の時間変化(パドルから下流方向の距離に対応する)を模式的に示し、(b)は冷却帯の表面の温度変化を模式的に示している。図中の曲線は、それぞれ、(1)は肉厚の小さいロール(従来法、例えば10mm)で薄肉の箔帯(例えば、25μm)を製造する場合を表し、(2)は肉厚の小さいロール(従来法、例えば10mm)で厚肉の箔帯(例えば40μm)を製造する場合を表し、(3)は肉厚の大きい冷却帯(本実施形態、例えば30mm)で厚肉の箔帯(例えば、40μm)を製造する場合を表している。
図7(a)に示すように、箔帯の温度変化を示す(1)の曲線は、肉薄ロールで薄肉の箔帯を製造する場合で、合金の融点Tmからガラス遷移温度Tgにいたる時間tがガラス化限界時間tgより十分に短く、箔帯は非晶質化に必要な冷却速度で冷却されている。一方、(2)は同じ肉薄ロールを用いて厚肉箔帯を製造する場合で、ガラス遷移温度Tgに近づくにつれ温度曲線の勾配が(1)の勾配にくらべ減少するため、TmからTgにいたる時間tはtgより長くなる。すなわち、非晶質化に必要な冷却速度が得られない。
一方、本実施形態のように、肉厚の冷却帯を有する冷却ロールを用いて厚肉箔帯を作製する場合の冷却曲線は(3)のようになり、ガラス遷移温度Tg付近における勾配の低下が(2)の条件に比べて小さい。これにより、Tgにいたる時間tはtgより短縮されるので非晶質化に必要な冷却速度で箔帯は冷却され、厚い非晶質合金箔帯が形成される。
冷却帯13a、13bの肉厚29を設計する基準は、製造しようとする非晶質合金箔帯の板厚による。箔帯の板厚に応じて冷却帯の肉厚を厚くする。例えば、箔帯Sの板厚が45μm以下であるときは、冷却帯の肉厚を30mmとし、箔帯Sの板厚が45ないし60μmであるときは、冷却帯の肉厚を50mmとし、箔帯Sの板厚が60ないし120μmであるときは、100mmとする。なお、本明細書において、肉厚の大きな冷却ロール、あるいは単に、肉厚冷却ロールという場合、肉厚が25mm以上の冷却帯を備えた冷却ロールを意味する。また、従来の肉薄ロールというときは、肉厚が10mm程度かそれ以下の冷却ロールを指している。
上述の伝熱挙動の理解を助けるため、図8を用いて説明する。図8は、(a)肉薄冷却ロール(例えば、肉厚10mm)で厚肉箔帯(例えば、板厚40μm)、(b)肉厚冷却帯(例えば、肉厚30mm)を備えた冷却ロールで厚肉箔帯(例えば、板厚40μm)、を作製する際の冷却ロール外周面温度の推移を模式的に示している。温度の測定位置は、パドルの上流、例えばパドルから20cmの位置である。(a)、(b)ともに鋳造の初期は急激に上がり、その後、温度の上昇率は低下するが一定の勾配で直線的に上昇を続ける。なお、鋳造初期の温度上昇率は、肉厚冷却ロールの方が肉薄冷却ロールより低い。
また、形成される箔帯の微視的構造は、肉薄冷却ロールの場合、ロール表面温度Taf1までは非晶質であるが、それを超えると結晶化が始まる。更に、時間が経過すると、Tpb1でパドルブレークが発生し、それ以後は箔帯が形成されなくなる。肉厚冷却ロールの場合も傾向は同じであるが、結晶化が始まるまでの時間、およびパドルブレークが発生するまでの時間が大幅に長くなる。
さらに、結晶化が始まる冷却ロールの表面温度Taf、および、パドルブレークが発生するロール表面温度Tpbは、いずれも肉厚ロールのほうが高い。すなわち、Taf1<Taf2、Tpb1<Tpb2、である。ロール外周面の温度が高くても冷却能が大きい理由は、肉厚のほうが、より3次元的に熱は流れるからである(図9の熱流を表す矢印を参照)。
図9(a)および(b)は、非晶質合金箔帯を鋳造する際の箔帯温度がTmからTgに至る温度区間の1点において、箔帯直下の冷却ロール肉厚方向の温度分布を模式的に示す図であり、(a)は薄肉ロールを示し、(b)は肉厚ロールを示している。図9(a)に示すように、薄肉ロールでは、ロール外周面の温度が高く、冷却水に接するロール内面の温度も高い。一方、図9(b)に示すように、肉厚ロールでは外周面の温度Tr2、内面温度Tw2ともに薄肉ロールのそれらTr1、w2にくらべ低い。これは肉厚ロールにおいては熱が半3次元的に広く拡散するためである。肉厚ロールの内面温度は薄肉ロールにくらべ低いのでロール/冷却水間の排熱量は、Qa>Qbであり冷却水の冷却効率は肉厚ロールのほうが低い。しかし、肉厚冷却帯は肉厚部分に蓄えられる熱量が大きいため、鋳造開始から結晶化が始まるまでの時間は長くなる。
このように、肉厚ロールはそれ自身の熱容量で、一時的に多量の熱を溜めることができる。冷却ロールの肉厚部分に蓄えられた熱の大部分はロールが一周する間に冷却水に伝わり放出される。しかし、熱の一部は冷却ロールに蓄積され、ロール温度を上昇させる。冷却ロールから冷却水Wへの排熱をはやめるには、ロールの直径、幅を大きくするのが効果的である。また、冷却水の温度を低く保持するのが効果的である。これらの手段を講じることにより、連続して鋳造できる時間を長くすることができる。
この伝熱機構をもとに、冷却ロール13の冷却帯13a、13bの熱容量を設計する。すなわち、図8において結晶化が開始するまでの時間を長くし、注湯を停止するまでの時間を長くするためには、冷却帯13a、13bの熱容量を大きくするのが効果的である。これは冷却帯の肉厚、直径、幅を大きくすることにほかならない。
本実施形態では、1対の冷却帯13aおよび13bの直径は、0.4ないし2.0mとすることが好ましい。冷却帯の直径を0.4m以上とすることにより、冷却帯が1回転する間の時間が十分に確保される。この結果、合金溶湯から冷却帯の外周面に伝わった熱は、効率よく冷却水に排出される。一方、冷却帯の直径を2.0m以下とすることにより、製造装置1が過度に大型化することを避け、操業が容易になると共に、冷却ロール13の軸受等、機械部分の強度を確保することが容易になる。
また、冷却帯13a、13bの幅は、例えば、それぞれ製造しようとする箔帯Sの幅の1.5倍以上とすることが好ましい。これにより、合金溶湯Aから冷却帯13a、13bに伝達された熱が、幅方向にも拡がり冷却ロール1回転ごとの冷却水への排熱量が増大する。
冷却ロールの冷却効率をさらに高めるため、冷却水Wを冷却する。冷却ロール13内に供給する冷却水Wの温度は、20℃以下とすることが好ましく、10℃以下とすることがより好ましい。冷却水の温度が低いほど、冷却帯13a、13bを効率的に冷却することができ、製造可能な非晶質合金箔帯の板厚が増大するからである。
更に、冷却水に溶質を溶解させて凝固点を降下させたうえで、冷却ロール13内に供給する際の冷却水Wの温度を0℃以下としてもよい。
冷却ロール13に供給する冷却水Wの温度を室温以下に保持するために、図4に例示する冷却水Wの経路の途中、例えば貯水槽42に、冷却手段43、例えば、冷蔵冷凍設備や空調設備に使われているヒートポンプを設置してもよい。貯水槽42に、氷を投入する手段でもこの目的は達成できる。なお、冷却ロールの外周面の温度が室温より低くなると、結露する恐れがある。結露を防止するためには、冷却ロールの外周面に乾燥空気、窒素など水分を含まないガスを吹付ければよい。ガスの吹き付けは、鋳造開始前から行なう。鋳造が開始されると、冷却ロールの外周面温度はすぐに室温を超えるため、ガスの吹き付けは不要になる。
冷却水Wの冷却効果をさらに高めるため図10のような冷却フィン28を設けることが好ましい。冷却帯と冷却水との接触面積が増加することにより冷却水の排熱量が増加するし、鋳造切り替えまでの時間を延長できる。
更に、冷却帯13aおよび13bの材料は、熱伝導率が大きいことが好ましく、例えば、250W/(m・K)、よりも熱伝導率が大きい材料であることが好ましい。300W/(m・K)以上であればより好ましい。冷却帯13a、13bの肉厚を厚くすることにより、従来の肉薄ロールで問題となっていたロールの不均一な熱変形が生じにくいため、機械的強度よりも熱伝導率を重視する材料選定ができる。しかし、熱伝導率の大きな材料は、耐摩耗性が劣る傾向がある。耐摩耗性を保持するために、冷却ロール外周部の表面層のみを硬化させる処理を施せば耐摩耗性と高熱伝導率を両立させることができる。表面層の硬化は、例えば、イオン注入等によって実現できる。この場合、熱応力によるクラックの発生を防止するために、注入するイオンに濃度勾配をつけることが好ましい。
冷却帯間に介在する禁制帯18は、交互鋳造によって生じる冷却帯内の幅方向の温度分布を均一にし、形成される非晶質箔帯への影響を極力抑えるために設けるものである。禁制帯18の材質は冷却帯の材質より熱伝導率の低いことが好ましいが、同じ熱伝導率でもよい。禁制帯18の材質が冷却帯の材質と同じ場合、禁制帯18は、2個の冷却帯の間に介在し、冷却ロールの外周面が溶湯と接触しない冷却ロールの肉厚部分を意味する。
禁制帯18の熱伝導率が冷却帯の熱伝導率と同等である場合、禁制帯18の幅は大きいほど好ましい。熱伝導率が同じ場合、禁制帯18の幅は、少なくとも非晶質合金箔帯Sの幅の3分の1以上であることが好ましい。図11に示すように、禁制帯の幅fが箔帯Sの幅cの3分の1を下回ると、形成される非晶質合金箔帯の板厚が幅方向に傾斜する。なお、図11において、板厚偏差とは箔帯の幅の両端の板厚t1、の差|t−t|の幅方向板厚の平均tに対する100分率である。また、図11は、箔帯の幅cが150mmである場合を示し、禁制帯の幅fが50mm以下、すなわち箔帯の幅cの3分の1以下になると、急激に板厚偏差が増加する。なお、板厚の測定はマイクロメータにより行い、箔帯の幅両端付近の面積が1cmの領域で測定した値の平均である。箔帯に板厚偏差が生じると、コアの占積率の低下やコア巻きの工程で巻きくずれなどの不具合が生じるので好ましくない。
本実施形態の非晶質合金箔帯の製造において用いるノズル15はスリットノズルであり、冷却ロール13の周方向に測ったスリットの幅は、0.2ないし1.2mmであり、例えば、0.3ないし0.8mmである。ノズルのタイプは、単スリットでもよいが、生産性の点で多重スリットがより好ましい。経験によると、板厚はロール周速に反比例する。したがって、単スリットノズルの場合、多重スリットノズルにくらべて周速は遅目に設定する必要がある。冷却ロール13の周速は、例えば10ないし30m/秒とし、例えば15ないし25m/秒とする。ノズル15と冷却ロール外周面の間の距離(ギャップ)は、例えば0.1ないし0.5mmであり、例えば、0.15ないし0.25mmである。また、合金溶湯Aの吐出圧は、例えば10ないし40kPaとし、例えば、20ないし30kPaとする。
冷却帯の一方、例えば冷却帯13aの外周面にノズル15を介して合金溶湯Aの供給(注湯)を始めると、冷却ロール外周面の温度は、注湯開始直後は急速に上昇し、その後、上昇速度は減少し、やがて一定の速度で緩やかに上昇する。冷却ロール13の表面温度が上昇しても、例えば200℃以下であれば、箔帯の板厚はほぼ一定であり、非晶質化に必要な冷却速度は確保される。すなわち非晶質合金箔帯が得られる。ここで、冷却帯外周面の温度の計測は、例えば、冷却帯の幅の中央、パドルPの上流側、例えば20cmの位置で行なう。冷却ロールの外周面温度の計測には、例えば、接触式温度計を用いる。具体例は、特許文献3に記載されている。
冷却帯間の鋳造切り替えのタイミングは、形成される箔帯Sの表面温度を計測することによっても決めることができる。計測位置は、箔帯Sが冷却ロールから剥離する前の適当な位置が好ましい。箔帯Sの表面温度を計測する温度計には接触式温度計を使用できるが、Fe基合金の場合、赤外線放射温度計も利用できる。箔帯Sの温度の監視は、鋳造中の箔帯の非晶質性を判断するうえで、より直接的手段である。所定の位置の冷却帯外周面の温度を監視する方法も採用できる。装置が同じであれば良好な箔帯が得られる鋳造時間をもって鋳造切り替えの時間を設定することもできる。製造する非晶質合金箔帯のサイズ(板厚、幅)、合金組成などが同じであれば、事前に計測した時間を基準に切り替えることも可能である。
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態においては、非晶質合金箔帯の製造装置1の冷却ロール13には2個の冷却帯13a、13bが設けられており、これらを交互に使用して箔帯Sを鋳造する。これにより、1つの冷却帯については鋳造と冷却が繰り返されることになり、ロール温度を所定値以下に抑えることができる。この結果、板厚の大きい非晶質合金箔帯を工業的規模で製造することができる。このような非晶質合金箔帯は、例えば、電力用トランスおよびモータのコアとして使用することができる。また、磁気シールド材としても使用することができる。
また、本実施形態においては、冷却帯13aと冷却帯13bとを相互に離隔して配置し、冷却帯間に所定の幅を持つ禁制帯18を介在させ、禁制帯18には合金溶湯を供給しないことにより、冷却帯13aと冷却帯13bとを熱的に相互に独立させることができる。これにより、冷却速度を確保して厚い箔帯を高い生産性で製造できると共に、一方の冷却帯の存在により他方の冷却帯の温度が幅方向に傾斜することを抑制し、箔帯に板厚偏差が生じることを防止できる。
更に、本実施形態においては、ノズル15として多重スリットノズルを使用しているため、箔帯Sの板厚を均一化すると共に、ピンホールの発生を低減することができる。パドルPの微小な振動や冷却ロール13の局所的な欠陥などにより、箔帯Sの表面性状は微視的には乱れており、乱れが大きいとフィッシュスケールと呼ばれる魚鱗状の縞模様やピンホールが箔帯Sに形成され、肉眼でも観察できる。多重スリットノズル法を使うと、上流側のパドルから引き出された流体層に形成されたこれらの欠陥が、下流側のパドルで補償されるので、表面性状が良好でピンホールのきわめて少ない箔帯Sが製造できる。
前述のように、多重スリットノズル法で製造された非晶質合金箔帯の表面は平滑でピンホールがきわめて少ない。箔帯におけるピンホールの数密度は、例えば、25個/m以下であり、例えば、10個/m以下であり、例えば、皆無である。ピンホールの減少、および表面平滑化などにより箔帯を積層したときの占積率が向上する。例えば、本実施形態において、板厚が33μm以上の薄帯を製造し、この箔帯で巻鉄心を作製すると、その占積率は80%以上であり、板厚が40μm以上の箔帯を製造し、この箔帯によって鉄心を作製すると、その占積率は85%以上となる。板厚が例えば、45μm以上の場合、その占積率は90%以上となる。また、例えば、50μm以上の箔帯では、その占積率は93%以上となる。表面が平滑でピンホールの少ない箔帯は、磁壁移動の障害が少ないためヒステリシス損が小さく、電磁用の鉄心材料として好ましい。更に占積率を高めることは飽和磁束密度Bsを高めることと同じ意義がある。例えば、占積率を80%から90%に高めることは、Bsを1.60Tから1.78Tに高めることと実用上同じ意義がある。
また、本実施形態においては、肉厚の大きな冷却帯を使用するので、従来の肉薄ロールでしばしば発生するロールの不均一な熱変形に起因する諸問題が解消される。例えば、箔帯の冷却むらによる箔帯Sの局所脆化や磁気特性のバラツキなどが生じない。
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、前述の実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除もしくは設計変更、または、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
例えば、冷却帯を一対以上備えた冷却ロール、および従来の単一冷却帯を有する冷却ロールと本発明の冷却ロールの組み合わせ、それら3個以上の冷却帯に順次合金溶湯を供給する装置、および方法も本発明の範囲に含まれる。
溶湯供給手段についても、冷却帯の外周面に対面する複数のノズルを有するタンディッシュを用いることもできる。更に、3個以上の冷却帯を備えた冷却ロールも技術思想は同じで、本発明の範囲に含まれる。
冷却帯を増やすことにより、製造できる箔帯の限界板厚を高めることができる。従来の単一冷却帯の冷却ロールでは限界板厚は25μmであったが、2個では50μm、3個では75μm、4個では100μm、の厚肉非晶質合金箔帯がほぼ連続的に製造できる。
本発明の実施形態に係る非晶質合金箔帯の製造装置を例示する正面図である。 図1における冷却ロールの構造を例示する断面図である。 図1において合金溶湯が冷却ロールと接触する部分を例示する断面図である。 図1において冷却ロールを冷却する冷却水の経路を例示する概念図である。 横軸に時間をとり、縦軸に冷却帯をとって、本実施形態に係る非晶質合金箔帯の製造方法を例示するタイミングチャートである。 本実施形態において製造される鉄基非晶質合金箔帯の組成を例示する三元系組成図である。 (a)は鋳造中の箔帯温度の時間変化を例示する模式図であり、(b)は鋳造中のロール外周表面温度の時間変化を例示する模式図である。 厚肉箔帯を鋳造中のロール表面温度の時間変化を、(a)肉薄のロールを使用した場合、(b)肉厚ロールを使用した場合、で比較する模式図である。 (a)および(b)は、非晶質合金箔帯鋳造中の冷却ロール肉厚方向の温度変化を例示する模式図であり、(a)は肉薄ロールを示し、(b)は肉厚ロールを示す。 冷却帯の冷却水に接する内面に設ける冷却フィンを例示する水路の断面図である。 非晶質箔帯の板厚編差におよぼす禁制帯の幅の影響を例示するグラフ図である。
符号の説明
1 製造装置、11 駆動手段、12a、12b 回転軸部材、13 冷却ロール、13a、13b 冷却帯、14 坩堝、15 ノズル、16 移動手段、17a、17b スリット、18 禁制帯、24 水路、25 給水管、26 排水管、28 冷却フィン、29 冷却帯の肉厚、31 支持機構、32 中心部分、41a、41b 軸受け、42 貯水槽、43 冷却手段、A 合金溶湯、P パドル、R 領域、S 箔帯、W 冷却水

Claims (11)

  1. 冷却ロールと、
    前記冷却ロールを回転させる駆動手段と、
    前記冷却ロールの外周面に対して合金溶湯を供給する供給手段と、
    を備え、
    前記供給手段は、前記冷却ロールの外周部分の一部を構成し前記冷却ロールの周方向に沿って周回する第1の冷却帯、および、前記第1の冷却帯から前記冷却ロールの軸方向において、前記外周部分の他の一部を構成し前記周方向に沿って周回し前記合金溶湯が供給されない禁制帯を挟んで離隔し、前記冷却ロールの周方向に沿って周回する第2の冷却帯に対して、交互に前記合金溶湯を供給することを特徴とする非晶質合金箔帯の製造装置。
  2. 前記冷却ロールは、内部に冷却水が流通する水冷ロールであることを特徴とする請求項1記載の非晶質合金箔帯の製造装置。
  3. 前記冷却水を冷却する手段をさらに備えたことを特徴とする請求項2記載の非晶質合金箔帯の製造装置。
  4. 前記冷却ロールの軸方向において、前記禁制帯の幅は前記非晶質合金箔帯の幅の3分の1以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の非晶質合金箔帯の製造装置。
  5. 前記供給手段は、前記冷却ロールの周方向に沿って複数本のスリットが配列されたノズルを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の非晶質合金箔帯の製造装置。
  6. 冷却ロールを回転させながら、前記冷却ロールの外周部分の一部を構成し前記冷却ロールの周方向に沿って周回する第1の冷却帯に対して合金溶湯を供給する第1工程と、
    前記冷却ロールを回転させながら、前記第1の冷却帯から前記冷却ロールの軸方向において、前記外周部分の他の一部を構成し前記周方向に沿って周回し前記合金溶湯が供給されない禁制帯を挟んで離隔し、前記冷却ロールの周方向に沿って周回する第2の冷却帯に対して前記合金溶湯を供給する第2工程と、
    を備え、
    前記第1工程および前記第2工程を交互に実施することを特徴とする非晶質合金箔帯の製造方法。
  7. 前記非晶質合金箔帯の板厚が30μm以上であることを特徴とする請求項6記載の非晶質合金箔帯の製造方法。
  8. 前記合金溶湯の組成を、鉄の含有率が70ないし81原子%であり、シリコンの含有率が3ないし17原子%であり、ホウ素の含有率が9ないし23原子%であり、ガラス転移点が500℃以上となるような組成とすることを特徴とする請求項6または7に記載の非晶質合金箔帯の製造方法。
  9. 前記合金溶湯の組成を、鉄の含有率が70ないし81原子%であり、シリコンの含有率が1ないし17原子%であり、ホウ素の含有率が7ないし23原子%であり、炭素の含有量が2原子%以下であり、ガラス転移点が500℃以上となるような組成とすることを特徴とする請求項6または7に記載の非晶質合金箔帯の製造方法。
  10. 前記合金溶湯に、0.01ないし1.0質量%の錫を含有させることを特徴とする請求項8または9に記載の非晶質合金箔帯の製造方法。
  11. 前記非晶質合金箔帯におけるピンホールの数密度が25個/m以下であることを特徴とする請求項6〜10のいずれか1つに記載の非晶質合金箔帯の製造方法。
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